特許第5934336号(P5934336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934336ワックスチクソトロープ剤を含有する高いアスペクト比のスクリーン印刷可能な厚膜ペースト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934336
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ワックスチクソトロープ剤を含有する高いアスペクト比のスクリーン印刷可能な厚膜ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20160602BHJP
   H01B 1/16 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/16 A
   H01B5/14 Z
   H01L21/288 Z
   C09D11/10
【請求項の数】41
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-502812(P2014-502812)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公表番号】特表2014-515160(P2014-515160A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】US2012031311
(87)【国際公開番号】WO2012135551
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/468,621
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ディプターカ・マジャンダー
(72)【発明者】
【氏名】シェン・カー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ショットランド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マカリスター
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/001908(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0120911(US,A1)
【文献】 特表2012−512540(JP,A)
【文献】 特開2010−047716(JP,A)
【文献】 特開2003−123536(JP,A)
【文献】 特表2008−504667(JP,A)
【文献】 特開平05−198207(JP,A)
【文献】 特開2006−165467(JP,A)
【文献】 特開平10−152630(JP,A)
【文献】 特開2005−097326(JP,A)
【文献】 特開2007−194122(JP,A)
【文献】 特開2010−135180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/16−1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50重量%より多い電気伝導性金属粒子と、
110℃より高い融点を有するアミド系ワックスと、
ガラスフリットと、
溶媒と、
樹脂とを含む金属ペーストであって、
25℃で10sec−1で50から250Pa・sの粘度と、少なくとも10の剪断減粘指数もしくは10秒未満の回復時間、またはその両方を有し、
前記樹脂が、リン酸系成分を含まない、金属ペースト。
【請求項2】
電気伝導性金属粒子が、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、コバルト、クロム、白金、タンタル、インジウム、タングステン、スズ、亜鉛、鉛、クロム、ルテニウム、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウムおよびオスミウムの中から選択される金属、およびその組合せまたは合金を含む、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
電気伝導性金属粒子が銀または銀合金を含む、請求項1または2に記載のペースト。
【請求項4】
電気伝導性金属粒子が、立方体、薄片、顆粒、円筒、環、棒、針、角柱、円盤、繊維、角錐、球、回転楕円体、扁長回転楕円体、扁平回転楕円体、楕円体、卵形およびランダム非幾何学的図形の中から選択される形状;および1nmから10μmの間の粒径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項5】
電気伝導性金属粒子が、球、三次元楕円体(obloid)もしくは薄片形状、またはその組み合わせであり、粒子が単峰または双峰分布である粒径分布を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項6】
電気伝導性金属粒子が2.5μm以下のD50を有する、請求項5に記載のペースト。
【請求項7】
電気伝導性金属粒子が10μm以下のD90を有する、請求項5に記載のペースト。
【請求項8】
アミド系ワックスが、第一級、第二級または第三級の脂肪酸アミドまたは脂肪酸ビスアミドを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項9】
アミド系ワックスが120℃を超える融点を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項10】
アミド系ワックスが、ベヘン酸アミド(ドコサンアミド)、カプリン酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、エライジン酸アミド、エルカ酸アミド(シス−13−ドコセンアミド)、エチレンビスオクタデカンアミド、エチレンビス−オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド(ドデカンアミド)、メチレンビスオクタデカンアミド、ミリスチン酸アミド、オレイン酸アミド(シス−9−オクタデケンアミド)、パルミチン酸アミド、ペラルゴン酸アミド、ステアリン酸アミド(オクタデカンアミド)、ステアリルステアリン酸アミド、水素化ヒマシ油/アミドワックスブレンド、もしくはポリアミドワックス、またはそのブレンド、請求項1から9のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項11】
アミド系ワックスが、ペースト組成物の重量に基づいて0.2重量%から2重量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項12】
ガラスフリットが、ビスマス系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラスもしくは無鉛ガラスまたはその組み合わせを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項13】
ガラスフリットが、Al、BaO、B、BeO、Bi、CeO、Nb、PbO、SiO、SnO、TiO、Ta、ZnOおよびZrOの1つまたは複数を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項14】
ガラスフリットが、ペースト組成物の重量に基づいて0.1重量%から10重量%の量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項15】
溶媒が、アセトフェノン、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、3−ブトキシ−ブタノール、ブチルカルビトール、γ−ブチロラクトン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルの二塩基性エステル混合物、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート、エチレングリコール、2,4−ヘプタンジオール、ヘキシレングリコール、メチルカルビトール、N−メチル−ピロリドン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(TXIB)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート(テキサノール)、フェノキシエタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、フェニルカルビトール、プロピレングリコールフェニルエーテル、テルピネオール、テトラデカン、グリセリンおよびトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルならびにこれらの溶媒の混合物の中から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項16】
溶媒が、ペースト組成物の重量に基づいて2重量%から15重量%の量で存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項17】
樹脂が、エチルセルロース樹脂、水素化ロジンのグリセリンエステル、アクリル結合剤およびその組合せの中から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項18】
樹脂が、20,000から40,000の分子量を有するエチルセルロース樹脂である、請求項1から17のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項19】
樹脂が、1,000から2,000の分子量を有するロジンエステル樹脂である、請求項1から17のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項20】
樹脂が、ペースト組成物の重量に基づいて0.01重量%から5重量%の量で存在する、請求項1から19のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項21】
ペースト組成物の重量に基づいて0.1重量%から5重量%の量の分散剤をさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項22】
分散剤が構造
【化2】
[式中、RはHまたはCHであり、nは4から200の整数である。]のポリマー分散剤である、請求項21に記載のペースト。
【請求項23】
ペースト組成物の重量に基づいて0.1重量%から10重量%の量の金属酸化物の粒子をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項24】
金属酸化物が、酸化アルミニウム、五酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化銅、酸化ガリウム、酸化金、酸化ハフニウム、酸化インジウム、酸化鉄、酸化ランタン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化銀、酸化ストロンチウム、酸化タンタル酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、五酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛および酸化ジルコニウムおよびその組み合わせの中から選択される、請求項23に記載のペースト。
【請求項25】
ドーパント、平滑剤、消泡剤および湿潤剤ならびにその組合せの中から選択される添加剤をさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項26】
添加剤が、ペーストの重量に基づいて5重量%未満の量で存在する、請求項25に記載のペースト。
【請求項27】
65℃の温度で1000Pa以上の弾性率を有する、請求項1から26のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項28】
ペーストが、溶媒を除去しガラスフリットを焼結するために焼成された、請求項1から27のいずれか一項に記載の厚膜スクリーン印刷ペーストから基板に形成された電極。
【請求項29】
請求項28に記載の電極を含む半導体素子。
【請求項30】
請求項28に記載の電極を含む光起電力素子。
【請求項31】
請求項1から27のいずれか一項に記載のペーストを含む太陽電池。
【請求項32】
求項1から27のいずれか一項に記載のペーストを含む印刷された基板。
【請求項33】
請求項1から27のいずれか一項に記載のペーストを、太陽電池の前側に塗布することを含む、結晶シリコン太陽電池の前側の金属化の方法。
【請求項34】
請求項1から27のいずれか一項に記載の厚膜スクリーン印刷ペーストを
スクリーン印刷によって基板に塗布し、印刷された基板を形成するステップと、
印刷された基板を乾燥するステップと、
印刷された基板を焼結し伝導性の特徴を形成するステップとを含む、伝導性の特徴を基板に形成する方法。
【請求項35】
焼結が、オーブン中で、または光子硬化方法を用いて処理することによって、または誘導によって行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
オーブンが、伝熱オーブン、炉、対流オーブンまたはIRオーブンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
光子硬化方法が、高度集束レーザーまたはパルス発光焼結システムを用いた処理を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
基板が、シリコン半導体、または被覆していないもしくは窒化ケイ素被覆された多結晶もしくは単結晶のシリコン、またはその組合せを含む、請求項34から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
基板が光起電力素子の一部である、請求項34から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
基板が太陽電池ウエハーである、請求項34から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
伝導性の特徴が、0.3から0.45のアスペクト比(高さ対幅)を有する、100μm未満の幅を有する線を含む。請求項34から40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Diptarka Majumdar, Hsien Ker, Philippe SchottlandおよびMichael McAllisterへのHIGH−ASPECT RATIO SCREEN PRINTABLE THICK FILM PASTE COMPOSITIONS CONTAINING WAX THIXOTROPESと題される2011年3月29日に出願された米国仮出願第61/468,621号に対し、優先権の利益を主張する。許容される場合、上記の仮出願の主題は、その全体が参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えば、スクリーン印刷による堆積を使用して、基板にプリント配線、伝導性の配線もしくは特徴を、および/または、太陽電池素子の前側に伝導面を製造するために基板に堆積することができる銀ペーストなどの厚膜金属ペースト;および厚膜印刷可能な金属ペーストを調製および使用する方法に関する。
【0003】
エネルギー、電子機器およびディスプレイ工業は、有機および無機の基板に回路、伝導性の配線または特徴を形成するための、伝導性材料の被覆およびパターニングに依存している。特に約100μmを超える特徴のための有機および無機の基板に伝導性パターンを製造する主要な印刷法の一つは、スクリーン印刷である。銀および銅粒子などの金属粒子は、電子素子および他の使用のための電気伝導性厚膜の製造において広く使用されている。厚膜用途の例は、多重膜コンデンサー中の内部電極;マルチチップ部品中の相互接続;自動曇り取り機/除氷装置、太陽電池モジュール、抵抗器、誘導子、アンテナにおける伝導性配線;電磁遮蔽(携帯電話におけるような)、熱伝導性フィルム;光反射膜;および導電接着剤を含む。
【0004】
電子部品における厚膜導体の使用は、電子分野においてよく知られている。厚膜導体は、貴金属、その金属合金または混合物、および少量の無機結合剤を含む金属の細粒の分散液を含むことができ、いずれも有機媒質に分散しペースト様生成物を形成している。そのようなペーストは、スクリーン印刷などによって、通常基板へ塗布されパターン層を形成する。次いで、パターン化厚膜導体層は、焼成して有機媒質を揮発させ無機結合剤を焼結することができ、これには通常ガラスフリットまたはガラス形成材料を含むことができる。結果として得られた焼成層は、電気伝導性を示すはずであり、印刷された基板に堅く付着するはずである。当業界で公知の厚膜組成物を使用して遭遇する困難の幾つかは、高アスペクト比(高さ:幅、すなわち丈が高い)のパターン、配線またはフィンガーを形成することができないこと;細線またはフィンガーにおける、増えた抵抗および限定された電流の輸送能力;および、複雑な細線パターンを形成する際の困難および/または経費を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、印刷またはパターン化して、電子機器、ディスプレイおよび他の用途において効率的にかつ比較的低費用で使用される、回路、伝導性の配線および/または特徴を有機および無機の基板に形成することができる、高アスペクト比、および/または高めた電流輸送能力および/または低下させた抵抗を有する伝導性の特徴をもたらす、電子機器、ディスプレイおよび他の用途において使用される伝導性の特徴を製作するための厚膜金属ペースト、特に銀ペーストに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、厚膜金属ペースト組成物、ならびに該組成物を使用する電子機器、ディスプレイおよび他の用途で使用される伝導性の特徴の製作のための方法が提供される。本厚膜金属ペースト組成物は、アミドワックスチクソトロープ剤を含んでおり、印刷または堆積させ、幅が70μmもの微細な配線などの微細な特徴の寸法を有する構造を形成し、および/または、0.3から0.45などの高いアスペクト比を有する、配線またはフィンガーなどの構造を形成し、十分な電気的および機械的性質を有する電子機能をもたらすことができる。
【0007】
また、ワックスチクソトロープ剤を含有する、および好ましくは、特定範囲の回復時間、指定範囲の剪断減粘指数(STI)、高いアスペクト比またはその任意の組み合わせを有する厚膜銀ペーストが提供される。本厚膜銀ペーストは、チクソトロピーワックスと組み合わせて原料を注意深く選択することによってこれらの特性を有するように配合することができる。配合者は、これらの特性を作り出すために必要な具体的な輪郭にあてはまる原料を選択する方法に熟達しており、本明細書において非限定的な例が提供される。
【0008】
細線などの特徴を堆積または印刷するために使用された時、本発明の厚膜金属ペースト組成物は、良好な印刷線の寸法安定性を有する良好な印刷適性および高いアスペクト比を維持することが分かった。本発明の厚膜金属ペースト組成物は、例えば、被覆していない、または窒化ケイ素(例えば、SiN)被覆した多結晶シリコンウエハーまたは単結晶シリコンウエハー、およびその組み合わせなどの様々な基板に使用することができる。
【0009】
本明細書において提供されるペーストは、配線抵抗率を下げ、その結果、最終用途の、例えば太陽電池における性能を改善する高いアスペクト比を有する導体グリッドの細線印刷を可能にする。本発明のペーストによって達成可能な印刷されたグリッド線の厚さは、通常のペーストからのものより著しく大きく、より複雑かつ時間浪費する方法を必要とする「ホットメルト」ペーストまたは「二回印刷」技法を使用して達成されたものに匹敵する。この特徴は、接触抵抗が、通常、低いシート抵抗率を有するものより高く、その結果、低い全体直列抵抗を得るためには低い配線抵抗が必要になる、浅いエミッターを有する太陽電池を接触させるためのペーストの配合にとって特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のペースト1〜3および8の剪断応力の回復を示す。ペースト粘度の回復は、2s−1で各3分間2度剪断流動にかけた後の0.1s−1でのプラトー粘度のパーセントとして示される。ペースト1、ペースト2およびペースト3はそれぞれ、速い回復(10秒未満の回復点)を示すが、ペースト3は、緩慢な回復(60秒を超える回復点)を示す。グラフの円で囲まれた領域は、回復点を示す。
図2】チクソトロピーワックスを含有するペースト8を印刷することにより得られた最小の広がりの配線の厚く、高いアスペクト比の導体配線の平面図である(図2A)。幅84.6μmおよび高さ45.9μmを有する図2Aの厚く、高いアスペクト比の導体配線の断面の輪郭である(図2B)。
図3】低い比率のチクソトロピーワックス:樹脂を有するペースト3を印刷することにより得られた低いアスペクト比の導体配線の平面図である(図3A)。図3Aの低いアスペクト比の導体配線の断面の輪郭である(図3B)。
図4】様々なチクソトロピー変性剤を用いて配合されたペースト4から7のペーストの弾性率を示す。好ましい高融点チクソトロピー変性剤、Crayvallac Super(登録商標)を含むペースト4は、他のチクソトロピー剤系のペースト(ペースト4〜6)より高温で高い弾性率を維持する。
図5】チクソトロピー変性剤、例えば、チクソトロピーワックスのスランピングへの効果を例証する。図5Aにおいて、高融点のチクソトロピーワックスを用いて配合されたペースト(ペースト4)から印刷された線は、乾燥およびその後の焼成の間でスランピングを示さない。これは、遅い乾燥速度(図5C)のみならず速い乾燥速度(図5B)で著しくスランピングした、低融点のチクソトロピーワックスを用いて配合されたペースト(例えばペースト7)によって示されるスランピングと比較される。
図6】様々なチクソトロピー変性剤を用いて配合されたペースト4から7のペーストの貯蔵弾性率(G)を示す。好ましい高融点のチクソトロピー変性剤、Crayvallac Super(登録商標)を含むペースト4は、他のチクソトロピー剤系のペースト(ペースト4〜6)より高温で高い貯蔵弾性率を維持する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述の概要および以下の詳細な説明は単なる例示および説明であり、請求されるいかなる主題をも限定しないことが理解されなければならない。
【0012】
本明細書において使用されるセクションの見出しは、構成の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されてはならない。
【0013】
I.定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語はすべて、本発明が属する当業界で一般に理解されているのと同一の意味を有する。本明細書の全開示の全体にわたって参照される特許、特許出願、公開された出願および刊行物、ウェブサイトおよび他の出版物はすべて、他に注釈しない限り、何らかの目的のために参照によってその全体が組み込まれる。
【0014】
本出願において、単数の使用は特に別記しない限り複数を含む。
【0015】
本出願において、「または」の使用は、ほかに明示されない限り、「および/または」を意味する。本明細書において使用される場合、用語「含んでいる」、ならびに「を含む」および「を含んだ」などの他の形態の使用は、非限定的である。
【0016】
本明細書において使用される場合、範囲および量は、「およそ」の特定の値または範囲として表すことができる。「およそ」はまた、正確な量を含むようにも意図される。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」および「5パーセント」をも意味する。「およそ」は、意図される用途または目的に対して通常の実験誤差内であることを意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、「任意選択の」または「場合によって」は、続いて記載される事象または状況が起こるまたは起こらないこと、およびその説明は、前記事象または状況が起こる事例、および起こらない事例を含むことを意味する。例えば、ある系における任意選択の成分は、系にその成分が存在してもよいし、存在しなくてもよいことを意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「分散剤」は、その用語が当業界で公知である通り、微細な、または極端に微細な金属粒子の分散および分離を促進するために懸濁媒質に加えられる界面活性薬剤である分散剤を指す。例示の分散剤は、分枝および非分枝の第二級アルコールエトキシラート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ノニルフェノールエトキシラート、オクチルフェノールエトキシラート、ポリオキシル化アルキルエーテル、アルキルジアミノ第四級塩およびアルキルポリグルコシドを含む。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「界面活性薬剤」は、界面、特に溶媒および/または空気とのその相互作用の特性を修飾する、化学的、特に有機化学的物質を指す。溶媒は任意の流体であってもよい。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「界面活性剤」は、粒子/溶媒、粒子/空気、および/または空気/溶媒界面で吸収し、実質的にその界面エネルギーを減少させる界面活性分子を指す。用語「清浄剤」は、多くの場合、用語「界面活性剤」と交換可能に使用される。界面活性剤は、一般に、界面活性部分の電荷に応じて分類され、陽イオン、陰イオン、非イオンおよび両性の界面活性剤として分類することができる。
【0021】
本明細書において使用される場合、「抗凝集剤」は、少なくともある程度、金属粒子を相互から遮蔽し(例えば、立体的におよび/または電荷作用によって)、それによって個々のナノ粒子間の直接的な接触を実質的に阻止し、それによって凝集を極小化または阻止するポリマーなどの物質を指す。本明細書において使用される場合、用語「吸着された」は、被膜、分散剤または抗凝集剤などの化合物と金属粒子界面との間の何らかの種類の相互作用であって、化合物と金属粒子の表面との間の少なくとも弱い結合において現れる相互作用を含む。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「粒子」は、金属などの任意の材料、例えば、銀、金、銅、鉄およびアルミニウム、アルミナ、シリカ、ガラスまたはその組み合わせ、例えばガラス被覆金属粒子などを含む、伝導性金属から構成することができる、小さい質量体を指し、立方体、薄片、顆粒、円筒、環、棒、針、角柱、円盤、繊維、角錐、球、回転楕円体、扁長回転楕円体、扁平回転楕円体、楕円体、卵形およびランダム非幾何学的図形を含む任意の形状であってもよい。典型的には、粒子は1nmから2500nmの間の直径または幅または長さを有することができる。例えば、粒子は1000nm以下の直径(幅)を有することができる。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「直径」は、その用語が当業界で公知である通り、直径を指し、異方性粒子の幅または長さの測定値を含む。本明細書の全体にわたって使用される場合、他に明示しない限り、直径はD50直径を指す。
【0024】
本明細書において使用される場合、Xが整数である「D」は、粒子直径のメジアン値を指し、記述された値より小さい粒子のXパーセントを規定する。例えば、X=10、かつD10=1μmの場合、粒子の10%のみが1μmより小さい直径を有している。X=50、かつD50=1μmの場合、粒子の50%のみが1μmより小さい直径を有している。X=90、かつD90=1μmの場合、粒子の90%のみが1μmより小さい直径を有している。
【0025】
本明細書において使用される場合、「接着」は、別の物質の界面にくっつくまたは結合する材料の界面の特性を指す。接着は、例えば、ASTM D3359−08によって測定することができる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「回復時間」は、高い速度から低い剪断速度へのジャンプ後の平衡剪断応力値の90%を達成するのに試料がかかる時間を指す。ペーストの「回復時間」は、剪断ジャンプ実験として知られる単純なレオロジー試験によって求めることができる。剪断ジャンプ実験は、剪断応力を記録しながら、試料に最初に高い剪断速度、続いて低い剪断速度を適用することによって行われる。試験の低い剪断速度の部分の間に、チクソトロピー材料は、低い剪断応力から始まり均衡値に徐々に回復する。本厚膜ペーストは、2s−1の高い剪断速度、および0.1s−1の低い剪断速度を使用して試験される。
【0027】
本明細書において使用される場合、「剪断減粘指数(STI)」は、1s−1で測定された粘度と10s−1で測定された粘度との比率を指す。
【0028】
本明細書において使用される場合、「研磨微細度」は、平均粒径でも粒径の集積度でもなく、仕上げた分散液中の最大粒子の大きさを示す、規定された試験条件下で研磨ゲージで得られた読みを指す。研磨微細度(FOG)試験法(ASTM D1316−06(2011))は、研磨微細度を測定するために使用することができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「ドーパント」は、組成物の電気伝導率を変化させることができる添加剤を指す。そのようなドーパントは、電子を受け取るドーパント(すなわち、アクセプター)、および電子を与えるドーパント(すなわち、ドナー)を含む。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「電気伝導性の」は、電荷または電子または電流が材料を通って流れるような電気的性質を有することを指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「チクソトロピー」は、流体の粘度の時間および剪断速度依存性を指す。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「チクソトロピーの」は、剪断応力などの機械的力にさらした時、または揺動した時の流動、および機械的力が除去されるとゲル様の形態への復帰を可能にする、金属ペースト組成物の特性を指す。チクソトロピー流体は、乾燥またはさらに加工される間、流体が流れたり、スランピングしたり、または垂れたりすることなく、様々な方法によって、一般に界面の配向を考慮せずに表面に塗布することができる。
【0033】
本明細書において使用される場合、「チクソトロピー変性剤」は、単独でまたは流体の他の成分と組み合わせて流体組成物に添加された時、流体がチクソトロピーとなるか、またはチクソトロピーを示すように流体のレオロジーを調節する、本明細書において使用されるアミドワックスなどの化合物を指す。チクソトロピー変性剤は、それが添加される組成物の垂れを阻止するために機能することができる。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「アミド系ワックス」は、ポリアミド系ワックス、ならびにアミド系ワックスおよびポリアミド系ワックスのブレンドを含む。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「製造品」は、作製され販売される製品であり、容器および包装、ならびに製品の使用説明書を場合によって含む。
【0036】
本明細書において使用*suedされる場合、樹脂の「分子量」は重量平均分子量を指す。
【0037】
実施例において、および本開示の全体にわたって、特に断らなければ、すべての部およびパーセントは、重量により(重量%または質量%)、すべての温度は℃である。
【0038】
II.スクリーン印刷
先行技術において、従来のペーストおよびスクリーン印刷方法によって達成可能なグリッド線の厚さは極めて限定されており、そのため、例えば太陽電池の効率の、特に浅いエミッターを有する太陽電池に対する改善におけるような各種用途においてその性能を妨害する。これは、スクリーンへのペースト材料の粘着およびスランピングに帰することができ、その結果、印刷後に、およびその後の乾燥、焼結およびプリント加工中に印刷線の望ましくない線の広がりをもたらす。
【0039】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は、スクリーン印刷用に配合することができる。スクリーン印刷用のペーストの好ましい粘度は、平行平板幾何構造粘度計(例えば、TA InstrumentsからのAR2000ex Viscometer)を使用して25℃で測定された、10秒−1での50Pa・sから250Pa・sである。本明細書において提供される厚膜ペースト組成物がスクリーン印刷において使用される場合、スクリーンへのペーストの粘着は極小化され、回復時間が減少され、高い弾性率が高温で維持され、このことは、より速い回復時間および乾燥中の垂れの極小化または解消に匹敵する。好ましくは、高融点のチクソトロピー変性剤、特に、110℃またはその付近の融点を有するワックスチクソトロープ剤は、ペースト配合物へ組み込まれ、乾燥およびその後の焼成を通して維持される、高い(厚さ/幅または高さ/幅)アスペクト比を有する細線印刷を可能にする。
【0040】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は、基板への印刷技術、スクリーン印刷技法を使用して、高密度で細線の特徴を製造するために使用することができる。結果として得られる基板は、高い相互接続密度を有する半導体素子アセンブリ、または太陽電池の構築および製作に適した、配線またはフィンガーなどの印刷された特徴を含む。
【0041】
本明細書において提供されるような厚膜ペースト組成物を使用する印刷のスクリーン印刷法において、当業界で周知の方法を使用して、微細なスクリーンの部分をマスキングまたはブロッキングすることによってスクリーンステンシルを調製することができる。スクリーンが適切に調製されたら、それは基板に印刷するためにステンシルとして使用される。電気伝導性粒子を含有する、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は、基板の表面にスクリーンステンシルを通して押付けられる。次いで、本厚膜ペースト組成物は適切に硬化され、基板に固体導体を形成する。硬化方法は、具体的な導体ペーストの組成物、および使用される基板に応じて変わる。
【0042】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、乾燥および/または焼成で蒸発する。本明細書において提供される厚膜ペースト組成物はまた、一般に、細かく粉砕された溶融ガラス組成物であるか、またはそれを含むガラスフリットを含んでいてもよい。ペースト組成物が基板に「トレース」として印刷されることになっている場合、ガラスフリットは特に厚膜ペースト組成物に含まれている。焼結すると、ガラスフリットは、主としてトレース/基板の表面で溶融および結合し、基板への接着を与える。厚膜ペースト組成物中の伝導性金属粒子は相互に接触し、加熱下で一緒に結合または融合し、電子的な形成または印刷された特徴の伝導特性を与える。焼結は、例えば、伝熱オーブン、IRオーブン/炉を使用して、誘導(電磁波によって誘発される加熱)によって、または高度集束レーザーまたはパルス発光焼結システム(例えばXenon Corporation (Wilmington, MA USA)、またはNovaCentrix (Austin, TX)から入手可能)などの光(「光子」)硬化方法を使用して、達成することができる。
【0043】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、基板上の伝導性グリッド、導体パターンまたは金属接点などの任意の電子機能を形成するために使用することができる。本明細書において提供される導体ペーストによって形成された電子機能は、高い相互接続密度を有する半導体素子アセンブリ、または太陽電池の構築および製作において有用になる幾つかの特質を有する。例えば、導体ペーストは、高密度の純金属の伝導率に近い幾つかの事例において高い伝導率を有し、基板への良好な接着性を示し、様々な基板、特にシリコンに形成することができる電子機能を形成する。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、印刷し、加熱またはレーザー処理によって焼結した後、良好なエッジ解像性および優れた伝導率(バルク導体の抵抗率に近い)を有する細線(例えば、幅が70μmである)を形成することができる。
【0044】
III.伝導性インキおよびペースト
伝電性インキまたはペーストは当業界で公知である。例えば、米国特許第6,517,931号(Fu、2003)は、電極形成のための銀インクを記載している。インクは、パラジウムおよび金を含まない銀粉を含有し、焼成後に誘電体と電極膜との間の接着を促進するチタン酸バリウムなどの粉末化したセラミック金属酸化物インヒビターを含むものとして記載されている。インクはまた、チクソトロープ剤として水素化ヒマシ油ワックスを含有するものとして記載されている。この特許は、多層チップタイプセラミックコンデンサー(MLCC)用の端末ペーストとしての銀インクの使用を記載している。MLCCは、厚膜ペーストまたはインクの堆積(通常スクリーン印刷による)によって形成された、金属(電極)の電気伝導性フィルムの複数に挟まれ互い違いに配列された層、および誘電体セラミック酸化物の電気絶縁層を含む。
【0045】
米国特許第6,982,864号(Sridharanら、2006)は、鉛およびカドミウムを含まないガラスを含む銅端末インク、およびMLCC上でのインクの使用を記載している。インクは、銅粒子、溶媒、樹脂、および水素化ヒマシ油、ケイ酸塩およびその誘導体などのチクソトロピー剤を含有するものとして記載されている。
【0046】
米国特許第7,494,607号(Wangら、2009)は、電子伝導性厚膜組成物、およびそこから形成された電極および半導体素子を記載している。厚膜組成物は、電子伝導性金属粒子、無機結合剤としてのガラスフリット、およびエチルセルロース、エチル−ヒドロキシ−エチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースおよびフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレート、エチレングリコールモノアセタートエステルアルコールのモノブチルエーテル、およびアルファ−テルピネオールまたはベータ−テルピネオールなどのテルペン、または他の溶媒、例えば灯油、フタル酸ジブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセタート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどとのその混合物を含むことができる有機媒質を含有するものとして記載されている。
【0047】
米国特許第7,504,349号(Brownら、2009)は、良好なはんだづけ性および低い焼成温度を示す、無鉛無カドミウムの伝導性銅厚膜ペーストを記載している。厚膜ペーストは、銅粒子および無鉛無カドミウムのガラス粒子を含有するものとして記載されている。Brownらは、一般に使用される水素化ヒマシ油系チクソトロープ剤などのチクソトロピー剤が含有されてもよいが、溶媒/樹脂特性は単独で適切なレオロジー特性を与えるので、チクソトロピー剤を組み込むことが必ずしも必要とは限らないと教示している。
【0048】
米国特許出願公開第2009/0298283号(Akimotoら、2009)は、導電性組成物および半導体素子の製造で使用される方法を記載している。導電性組成物は、電気伝導性の粉末、ガラスフリット、およびビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)−アジパート、二塩基性エステル、オクチル−エポキシ−トーラート、水素化ロジンのイソテトラデカノールおよびペンタエリトリトールエステルの中から選択される有機媒質を含むものとして記載されている。
【0049】
当業界で公知の厚膜組成物を使用して遭遇する困難の幾つかは、高いアスペクト比(高さ:幅、(すなわち丈が高い))のパターン、配線またはフィンガーを形成することができないこと;増える抵抗、不十分な接着または低下する接着性能;細線またはフィンガーにおける限られた電流輸送能力、または低下する電気的性能;および複雑な細線パターンの形成における困難および/または経費を含んでいる。
【0050】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、高いアスペクト比を有する導体グリッドの細線印刷を可能にし、配線抵抗率を下げ、その結果、ペーストを使用して製造された電子機能の性能を改善する。本発明のペーストによって達成可能な印刷されたグリッド線の厚さは、従来のペーストからのものより著しく大きい。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、例えば、被覆していない、もしくは窒化ケイ素被覆した多結晶シリコン基板、または単結晶シリコン基板およびその組み合わせなどの多くの様々な基板にスクリーン印刷などの伝統的な印刷技術を使用して堆積/印刷することができる。
【0051】
特に、本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、シリコン太陽電池の製作用のシリコンウエハーを金属化する(電気伝導性の金属接点を与える)ために使用することができる。電極は、例えば、本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストをスクリーン印刷することによって作製することができる。シリコン太陽電池用の基板は、被覆していない、または窒化ケイ素被覆された多結晶および単結晶のシリコンウエハーを含んでいてもよい。例えば、本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、銀粒子を含むことができ、シリコン*silicone基板の片側にスクリーン印刷し、乾燥して、前面電極を形成することができ、銀粒子または銀とアルミニウム粒子を含有する本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、基板の背面にスクリーン印刷し、乾燥することができる。次いで、基板は当業界で公知の任意の方法を使用して、焼結または焼成することができる。基板を焼成する例示の方法は、赤外炉で500℃から950℃の範囲などの高い温度に数分から1時間またはそれ以上などの、基板に印刷された電子機能を焼結させるのに十分な時間、印刷された基板を曝露することである。そのような用途において、アルミニウムはペーストからシリコン基板中へ拡散することができ、底面領域層を形成するのを助けることができ、それによって、太陽電池のエネルギー変換効率を改善するのを助けることができる。
【0052】
IV.本明細書において提供されるワックスチクソトロープ剤を含有する金属ペースト組成物
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、50重量%を超える電気伝導性金属粒子;110℃より高い融点を有するアミド系ワックスまたはポリアミド系ワックスを含むチクソトロピー変性剤;ガラスフリットおよび樹脂を含み、その印刷用ペーストは、10秒未満の回復時間もしくは10以上の剪断減粘指数またはその両方を有する。本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、分散剤をさらに含むことができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、金属酸化物の粒子をさらに含むことができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、溶媒をさらに含むことができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、ドーパント、接着促進剤、カップリング剤、平滑剤、消泡剤またはその組み合わせの中から選択される化合物をさらに含むことができる。
【0053】
1.電気伝導性金属粒子
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、電気伝導性金属粒子を含む。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト中に含むことができる金属の非限定的な例は、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、パラジウム、白金、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、タンタル、スズ、タングステンおよび亜鉛、その組み合わせまたは合金を含む。約0.5μΩ・cmから50μΩ・cm、好ましくは1μΩ・cmもしくはその付近から30μΩ・cm、または0.5μΩ・cmから5μΩ・cm、最も好ましくは1μΩ・cmもしくはその付近から20μΩ・cmの低いバルク抵抗率を示す金属粒子は、本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト中に含むことができる。例えば、金は2.25μΩ・cmのバルク抵抗率を有する。銅は1.67μΩ・cm.のバルク抵抗率を有する。銀は1.59μΩ・cmのバルク抵抗率を有する。最も伝導性の金属である銀は最も好ましい金属粒子であるが、導体ペースト配合物中に銀の合金の金属粒子を含むこともできる。例示の銀合金は、アルミニウム、銅、金、パラジウム、白金またはその組み合わせを含む。銅または銀の粒子などの金属粒子はまた、金属で被覆することができる。例えば、銅金属粒子は銀で被覆することができ、純粋な銀粒子とのそれほど高価でない代替法を提供し、それは純粋な銅粒子より伝導性で、環境上安定になり得る。被覆として使用することができる他の金属は、金、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、白金およびその組み合わせを含む。
【0054】
本明細書において提供される厚膜ペースト中の電気伝導性金属粒子の量は、一般に(ペースト組成物の重量に基いて)50重量%を超える。本明細書において提供される厚膜ペースト中の電気伝導性金属粒子の量は、51重量%から95重量%、より好ましくは60重量%から90重量%の範囲、特に75重量%から90重量%の範囲であってもよい。例えば、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中の電気伝導性金属粒子は、50.5重量%、51重量%、51.5重量%、52重量%、52.5重量%、53重量%、53.5重量%、54重量%、54.5重量%、55重量%、55.5重量%、56重量%、56.5重量%、57重量%、57.5重量%、58重量%、58.5重量%、59重量%、59.5重量%、60重量%、60.5重量%、61重量%、61.5重量%、62重量%、62.5重量%、63重量%、63.5重量%、64重量%、64.5重量%、65重量%、65.5重量%、66重量%、66.5重量%、67重量%、67.5重量%、68重量%、68.5重量%、69重量%、69.5重量%、70重量%、70.5重量%、71重量%、71.5重量%、72重量%、72.5重量%、73重量%、73.5重量%、74重量%、74.5重量%、75重量%、75.5重量%、76重量%、76.5重量%、77重量%、77.5重量%、78重量%、78.5重量%、79重量%、79.5重量%、80重量%、80.5重量%、81重量%、81.5重量%、82重量%、82.5重量%、83重量%、83.5重量%、84重量%、84.5重量%、85重量%、85.5重量%、86重量%、86.5重量%、87重量%、87.5重量%、88重量%、88.5重量%、89重量%、89.5重量%、90重量%、91.5重量%、92重量%、92.5重量%、93重量%、93.5重量%、94重量%、94.5重量%または95重量%である量(ペースト組成物の重量による)で存在することができる。
【0055】
電気導電性金属粒子は任意の幾何構造のものであってもよい。典型的には、粒子は1μmから10nmの間の直径または幅または長さを有することができる。例えば、粒子は、10μm以下の直径(幅)を有することができる。粒子は、6μm以下の直径(幅)を有することができる。粒子は、1μm以下の直径を有することができる。伝導性金属粒子の平均粒径は、約5nmから5000nm、または500nmから1500nmの範囲内であってもよい。銀粒子などの伝導性金属粒子は、D10、D50およびD90での粒径によって記載することができ、これは、粒子のそれぞれ10%、50%および90%が規定された直径未満である粒径に対応する。例示の伝導性金属粒子は、8μmのD90、5.5μmのD90または2.5μmのD90などの1〜10μmのD90を有することができる。例示の伝導性金属粒子は、2.5μmのD50または1.5μmのD50などの0.5〜5μmのD50を有することができる。例示の伝導性金属粒子は、1μmのD10または0.5μmのD10などの0.1〜1.5μmのD10を有することができる。好ましい伝導性金属粒子は、1μmのD10、2.1μmのD50および5.3μmのD90を有する銀粒子である。
【0056】
粒子は、立方体、円筒、円盤、楕円体、繊維、薄片、顆粒、針、角柱、角錐、環、棒、球、回転楕円体(扁長または偏平の)、卵形またはランダム非幾何学的図形であってもよい。特に、粒子は、球、回転楕円体または薄片であってもよい。
【0057】
2.チクソトロピー変性剤
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストはチクソトロピー変性剤を含む。好ましいチクソトロピー変性剤は、高温チクソトロピー変性剤、特に、アミド系ワックス、および/または、ポリアミド系ワックスである。特に好ましいチクソトロピー変性剤は、110℃またはその付近よりも高い融点を有するアミド系ワックスおよび/またはポリアミド系ワックスである。
【0058】
実施例に示されるように、アミドワックス、および/または、ポリアミドワックスチクソトロープ剤ならびにその組み合わせは、チクソトロピーの回復を増強する(回復の時間を短縮する)のに有効であり、特に弾性率に対する温度抵抗力を与えるのに有効である。アミドワックスおよび/または、ポリアミドワックスチクソトロープ剤の温度抵抗力(高い融点)は、高温で乾燥する間に印刷された特徴の垂れまたはスランピングを阻止するのを助ける。
【0059】
アミドワックス、および/または、ポリアミドワックスチクソトロープ剤は、脂肪酸アミドを含むことができる。
【0060】
例示の脂肪酸アミドは、第一級脂肪酸アミド(例えば、非置換モノアミド)、第二級または第三級脂肪酸アミド(例えば、脂肪酸アルカノールアミドを含む置換モノアミド)、および脂肪酸ビスアミド(例えば、置換ビスアミド)を含むがこれらに限定されない。例えば、第一級脂肪酸アミドは、一般式RCONH[式中、Rは、一般に動物または植物源から得られた酸に由来する長鎖炭化水素であり、メチレン、アルキル(例えば、メチル)、メチンまたはアルケン基を含む。]のものである。炭化水素Rは、6〜30の間の炭素、好ましくは12〜24の間の炭素を含むことができる。例えば、脂肪酸アミドは、CH(CHCONH[式中、xは6〜28の間、好ましくは14から22の間である。]であってもよい。ペースト組成物中に含むことができる特定の脂肪酸アミドは、xが16の脂肪酸アミド、ステアリン酸アミド(オクタデカンアミド)である。
【0061】
ワックスチクソトロープ剤組成物中に含むことができる脂肪酸アミドの特定の例は、ベヘン酸アミド(ドコサンアミド)、カプリン酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、エライジン酸アミド、エルカ酸アミド(シス−13−ドコセンアミド)、エチレンビスオクタデカンアミド、エチレンビス−オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド(ドデカンアミド)、メチレンビスオクタデカンアミド、ミリスチン酸アミド、オレイン酸アミド(シス−9−オクタデケンアミド)、パルミチン酸アミド、ぺラルゴン酸アミド、ステアリン酸アミド(オクタデカンアミド)、ステアリルステアリン酸アミド、Thixcin R(ヒマシ油ワックス誘導体)、ASA−T−75F(Itoh Oil Chemical Co., Ltd.からの水素化ヒマシ油/アミドワックス)、CRAYVALLAC SF(Cray Valley, Exton, PAからの水素化ヒマシ油/アミドワックス、)、CRAYVALLAC Super(アミドワックス混合物、大半はオクタデカンアミド、Cray Valley, Exton, PAから)、Rosswax 141(ポリアミドワックス、Frank B Ross, Co., Jersey City, NJ)、Disparlon 6650(ポリアミドワックス、Kusomoto Chemicals, Ltd., Japan)を含む。例示のアミドワックスおよびポリアミドワックスの融点は、以下の表1に示される。アミドワックス、および/または、ポリアミドワックスは、単独でまたは任意の組み合わせで使用することができる。
【0062】
市販のアミドワックスチクソトロピー変性剤の例は、Disparlon(登録商標) 6500、Disparlon(登録商標) 6600、Disparlon(登録商標) 6900−20X、Disparlon(登録商標) 6900−20XN、Disparlon(登録商標) 6900−10X、Disparlon(登録商標) 6810−20X、Disparlon(登録商標) 6840−10X、Disparlon(登録商標) 6850−20X、Disparlon(登録商標) A603−20XおよびDisparlon(登録商標) A650−20X(Kusumoto Chemicals, Ltd.の製品);A−S−A T−1700およびA−S−A T−1800(Itoh Oil Chem icals Co, Ltd.の製品);TALEN VA−750BおよびTALEN VA−780(Kyoeisha Chemical Co, Ltd.の製品);およびCrayvallac SFおよびCrayvallac Super(登録商標)(Cray Valley, Exton, PAの製品)を含む。
【0063】
例示のアミドまたはポリアミドワックスの融点
【0064】
【表1】
水素化ヒマシ油+アミドワックス
アミドワックス混合物(大半はオクタデカンアミド)
ポリアミドワックス
【0065】
好ましい材料は、アミド系ワックスCrayvallac Super(登録商標)(主要な成分はオクタデカンアミドワックスである)、特に前側の厚膜銀ペースト配合物における高融点ワックスチクソトロピー剤である。高融点アミド系および/またはポリアミド系ワックスチクソトロピー変性剤の組み込みは、印刷されたままでのフィンガー配線のアスペクト比を改善し、乾燥および/または焼結中に印刷線のスランピングを阻止する。チクソトロピー変性剤は、≧100℃、または≧110℃、または≧120℃、または≧130℃、または≧140℃、または≧150℃の融点を有するように選択することができる。チクソトロピー変性剤は、乾燥および加工中の垂れを阻止するために、乾燥温度より少なくとも10℃高い融点を有するような、印刷された特徴の加工温度の±10℃内である融点を有するように選択することができる。
【0066】
アミド系ワックスおよび/もしくはポリアミド系ワックス、ならびに/または、アミド系ワックスおよびポリアミド系ワックスを単独でもしくは他のワックスと組み合わせて含有する組成物は、100℃〜180℃、もしくは105℃〜180℃、もしくは110℃〜175℃、もしくは110℃〜170℃、もしくは115℃〜170℃、もしくは120℃〜170℃、もしくは125℃〜165℃、もしくは120℃〜160℃、もしくは125℃〜165℃、もしくは130℃〜170℃、もしくは120℃〜180℃、もしくはその付近の、または≧100℃、もしくは≧105℃、もしくは≧110℃、もしくは≧115℃、もしくは≧120℃、もしくは≧125℃、もしくは≧130℃、もしくは≧135℃もしくは≧140℃の融点を有するように選択することができる。融点は、当業界で公知の任意の方法によって、例えば、Mettler−Toledo International, Inc.(CH−8606 Greifensee, Switzerland)によって販売Model FP83HT Dropping Point Cellなどの滴点装置によって測定することができる。またワックスの融点は、ASTM試験法D−127によって求めることができる。
【0067】
チクソトロピー変性剤、好ましくは100℃〜180℃、またはその付近の、一般には110℃より高い融点を有するポリアミド系ワックスおよび/またはアミド系ワックスなどの高温チクソトロピー変性剤は、ペースト組成物の重量に基いて、0.1重量%から4重量%、またはその付近の範囲で、特に0.2重量%から2重量%の好ましい範囲で、より好ましくは0.4重量%から1.5重量%の範囲で本明細書において提供される厚膜ペースト組成物に組み込むことができる。例えば、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中のチクソトロピー変性剤は、ペースト組成物の重量に基いて、0.1重量%、0.125重量%、0.15重量%、0.175重量%、0.2重量%、0.225重量%、0.25重量%、0.275重量%、0.3重量%、0.325重量%、0.35重量%、0.375重量%、0.4重量%、0.425重量%、0.45重量%、0.475重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%または4重量%である量で存在することができる。
【0068】
3.樹脂
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは樹脂を含む。樹脂は、厚膜ペースト組成物の溶媒にそれを溶解することができるように選択することができる。樹脂は、ペースト組成物の重量に基いて、最大5重量%の量で組成物の溶媒に樹脂が溶解され得る分子量となるように選択することができる。樹脂は、製造中に材料の分散を助けるペースト組成物の粘度を構築するのを助ける。例示の樹脂は、アクリル樹脂、ビスフェノール樹脂、クマロン樹脂、エチルセルロース樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、スチレン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂およびキシレン樹脂などの合成または天然樹脂を含む。好ましい樹脂の例は、エチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、およびロジンエステル樹脂を含む。特に好ましいエチルセルロース樹脂は20,000から40,000の分子量を有する。特に好ましいロジンエステル樹脂は1,000から2,000の分子量を有する。樹脂の分子量は、含むことができる樹脂の量を規定することができる。より低い分子量(2,000未満などの)の樹脂は、より高い分子量(20,000から50,000などの)の樹脂ができるより高い濃度で、本明細書において提供されるペースト濃縮物中に含むことができる。
【0069】
当業者は他の適切な樹脂を容易に特定することができる。本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中に含むことができる樹脂は、以下の特性の1つまたは複数を選択することができる−樹脂:(1)ペースト配合物の選ばれた有機溶媒と親和性がある;(2)ペースト組成物中に低い樹脂含量でワックスチクソトロープ剤と組み合わせて使用された時、ペーストのチクソトロピー指数を上げる;(3)基板に印刷された電子機能を焼結させるのに十分な、数秒から数分から1時間またはそれ以上などの時間、500℃から950℃の範囲でのような、約500℃+/−100℃の温度で5から45秒で起こり得る、または、印刷された基板の高温への暴露を含み得る、高速の熱加工(ペーストの共焼成)の燃焼終了局面の間に電気特性に負の影響を与える残渣を残すことなく急速に分解する;および、(4)印刷、熱加工後、または最終使用の間のいずれかにペーストの伝導率を下げやすい腐食性の化学物質(ハロゲン化物などの)または材料を生成または放出しない(例えばペーストの共焼成後に行われる、加水分解安定性または他の環境安定性試験に関して)。理想的には、選択された樹脂は、ペースト組成物の無機原料との相乗効果が作用して、好適なペーストのレオロジーおよび焼成された導体の特性をもたらす。
【0070】
本明細書において一般に提供される厚膜ペースト中の樹脂の量は、ペースト組成物の重量に基いて5重量%未満、特に0.05重量%から5重量%の範囲、または0.01重量%から2重量%の範囲である。例えば、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中の樹脂は、ペースト組成物の重量に基いて、0.01重量%、0.025重量%、0.05重量%、0.075重量%、0.1重量%、0.125重量%、0.15重量%、0.175重量%、0.2重量%、0.225重量%、0.25重量%、0.275重量%、0.3重量%、0.325重量%、0.35重量%、0.375重量%、0.4重量%、0.425重量%、0.45重量%、0.475重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%、4重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%または5重量%である量で存在することができる。
【0071】
4.分散剤
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは分散剤を含むことができる。当業界で公知の任意の分散剤を使用することができる。例示の分散剤は、共同所有されている米国特許出願公開第2009/0142526号および米国特許第7,254,197号に記載されているものを含み、それらの各開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。分散剤は、ペースト組成物に直接添加することができ、または、粒子は分散剤で表面処理されてもよい。例えば、金属粒子は、有機または高分子化合物で被覆することができる。被覆粒子を分散させるための金属粒子のそのような表面被覆は、分散剤がペースト配合物に直接添加される必要性を極小化または解消することができる。例えば、金属粒子は、抗凝集物質として働く高分子化合物で処理し、粒子のかなりの凝集を阻止することができる。従来の金属のインキまたはペーストにおいて、小さい金属粒子には、通常その高い表面エネルギーのために、凝集し、より大きな二次粒子(凝集体)を形成する強い傾向がある。。抗凝集剤として働く分散剤の立体および/または電子効果によって、分散したポリマー被覆金属粒子は、凝集をそれほど起こしやすくない。凝集のこの極小化または解消はまた、沈降を極小化または阻止する傾向があり、それにより、良好な保管および印刷安定性を示す金属インクまたはペーストを提供する。金属粒子が抗凝集剤として分散剤で表面処理されたペースト組成物において、ペースト組成物において添加される分散剤の必要性は極小化または解消されるが、所望の場合、例えば、ペーストの性能特性をさらに増強するためには、分散剤で表面処理した金属粒子を含有するペースト組成物に分散剤を添加することができることが理解される。
【0072】
分散剤は、イオン性の多価電解質または非イオン性の非電解質を含むことができる。被覆していないまたはガラス被覆金属粒子などの被覆金属粒子の凝集または沈降を低減または阻止する、ペースト配合物中の他の材料と親和性のある任意の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤の例は、リン酸ポリエステル(DISPERBYK(登録商標)111)を含むBYK(登録商標)系列などの酸性基を有するコポリマー、顔料親和性基を有するブロックコポリマー(DISPERBYK(登録商標)2155)、酸性基を有するコポリマーのアルキロールアンモニウム塩(DISPERBYK(登録商標)180)、構造化アクリルコポリマー(DISPERBYK(登録商標)2008)、2−ブトキシエタノールおよび1−メトキシ−2−プロパノールを有する構造化アクリル酸コポリマー(DISPERBYK(登録商標)2009)、Sun Chemical SunFlo(登録商標) P92−25193およびSunFlo(登録商標)SFDR255 (Sun Chemical Corp., Parsippany, NJ USA)を含むJD−5系列およびJT−5系列、超分散性ポリエステルでグラフトした固体ポリエチレンイミン核である、Solsperse(商標)33000、Solsperse(商標)32000、Solsperse(商標)35000、Solsperse(商標)20000を含むSolsperse(商標)超分散性系列(Lubrizol, Wickliffe, OH USA)、および、Ethacryl G(ポリアルキレンオキシドポリマーを含有する水溶性ポリカルボキシラートコポリマー)、Ethacryl M(ポリエーテルポリカルボン酸ナトリウム塩)、Ethacryl1000、Ethacryl 1030およびEthacryl HF系列(水溶性ポリカルボキシラートコポリマー)を含む、Ethacryl系列(Lyondell Chemical Company, Houston, TX USA)中のこれらなどのポリカルボキシラートエーテルを含むがこれらに限定されない。本明細書において提供されるペースト組成物中に含まれるべき特に好ましい分散剤は、SunFlo(登録商標) P92−251 93(Sun Chemical Corp., Parsippany, NJ USA)である。
【0073】
好ましい分散剤は、構造
【0074】
【化1】
【0075】
[式中、RはHまたはCHであり、nは4から200の整数である。]の高分子分散剤であり、これは米国特許第7,265,197号に記載されており、この例は、SunFlo(登録商標)P92−25193 (Sun Chemical Corp., Parsippany, NJ USA)である。
【0076】
存在する場合、ペースト組成物中の分散剤の合計量(伝導性金属粒子の表面に被覆したものを含む)は、1.5重量%未満(ペースト組成物の重量に基いて)である。分散剤は、0.01重量%から1重量%の範囲、特に0.1重量%から0.5重量%の範囲にある量で含むことができる。例えば、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中の分散剤は、ペースト組成物の重量に基いて、0.01重量%、0.025重量%、0.05重量%、0.075重量%、0.1重量%、0.125重量%、0.15重量%、0.175重量%、0.2重量%、0.225重量%、0.25重量%、0.275重量%、0.3重量%、0.325重量%、0.35重量%、0.375重量%、0.4重量%、0.425重量%、0.45重量%、0.475重量%、0.5重量%、0.525重量%、0.55重量%、0.575重量%、0.6重量%、0.625重量%、0.65重量%、0.675重量%、0.7重量%、0.725重量%、0.75重量%、0.775重量%、0.8重量%、0.825重量%、0.85重量%、0.875重量%、0.9重量%、0.925重量%、0.95重量%、0.975重量%および1.0重量%である量で存在することができる。
【0077】
5.金属酸化物
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、金属酸化物の粒子を含むことができる。金属酸化物は焼結助剤として含むことができる。例示の金属酸化物は、酸化アルミニウム、五酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化銅、酸化ガリウム、酸化金、酸化ハフニウム、酸化インジウム、酸化鉄、酸化ランタン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化銀、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、五酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛および酸化ジルコニウムおよびその組み合わせを含む。好ましい金属酸化物は酸化亜鉛である。
【0078】
存在する場合、本明細書において提供される厚膜ペースト中の金属酸化物微粒子の量は、一般に、(ペースト組成物の重量に基いて)10重量%以下、例えば1重量%から10重量%、特に3重量%から7重量%の範囲である。例えば、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物中の金属酸化物粒子は、ペースト組成物の重量に基いて、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%、4重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%、5重量%、5.25重量%、5.5%、5.75重量%、6重量%、6.25重量%、6.5重量%、6.75重量%、7重量%、7.25重量%、7.5重量%、7.75重量%、8重量%、8.25重量%、8.5重量%、8.75重量%、9重量%、9.25重量%、9.5重量%、9.75重量%または10重量%である量で存在することができる。
【0079】
6.ガラスフリット
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、ガラスフリットの粒子を含むことができる。ガラスフリットは焼結助剤として含むことができる。ガラスフリットは、一般に本明細書において提供される厚膜ペーストへの組み込み前に有機媒質に分散されるが、任意の順序で組み込んでもよい。当業界で公知の任意のガラスフリットを厚膜ペースト組成物中に含むことができる。例えば、300〜550℃の範囲の軟化点を有するガラスフリットを選択することができる。より高い融点を有するガラスフリットを選択することができるが、好適な焼結には焼結回数および温度を上げる必要が生じ得る。例示のガラスフリットは、ビスマス系ガラスおよびホウケイ酸鉛系ガラスを含む。ガラスは、1種または複数のAl、BaO、B、BeO、Bi、CeO、Νb,PbO、SiO、SnO、TiO、TaOs、ZnOおよびZrOを含むことができる。他の無機添加物は、場合によって、電気的性能に影響を与えずに、接着を上げるために含むことができる。例示の追加の任意選択の添加剤は、1種もしくは複数のAl、B、Bi、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Ru、Sb、Sn、TiもしくはTiB、またはAl、B、Bi、CO、Cr、CuO、CuO、Fe、LiO、MnO、NiO、RuO、TiB、TiO、SbもしくはSnOなどのAl、B、Bi、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Ru、Sn、SbもしくはTiの酸化物を含む。存在する場合、ガラスフリットおよび/または任意選択の無機添加物の平均直径は、5μm未満、または2μm未満などの、0.5〜10.0μmの範囲にある。存在する場合、任意選択の何らかの無機添加物も、一般に、ペースト組成物の重量に基いて1重量%未満または0.5重量%未満の量で存在する。
【0080】
存在する場合、ガラスフリットは、ペースト組成物の10重量%以下の量で、例えば、0.1重量%から10重量%の範囲、特に1重量%から5重量%の範囲で存在する。例えば、ガラスフリットは、ペースト組成物の重量に基いて、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%、4重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%、5%、5.25重量%、5.5%、5.75重量%、6重量%、6.25重量%、6.5重量%、6.75重量%、7重量%、7.25重量%、7.5重量%、7.75重量%、8重量%、8.25重量%、8.5重量%、8.75重量%、9重量%、9.25重量%、9.5重量%、9.75重量%または10重量%である量で存在することができる。
【0081】
7.溶媒
本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストは、溶媒または溶媒の組み合わせを含むことができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト中の溶媒は、印刷後蒸発する。ある用途において、溶媒は有機溶媒である。ある用途において、低い蒸気圧の溶媒が好ましい。例えば、約1mmHg未満の蒸気圧、好ましくは約0.1mmHg未満の蒸気圧を有する溶媒を選択することができる。1mmHgより高い蒸気圧を有する溶媒もまた、厚膜ペーストにおいて使用することができる。例示の溶媒は、テキサノール、テルピネオール、ブチルカルビトール、1−フェノキシ−2−プロパノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(TXIB)、およびこれらの溶媒の混合物を含む。
【0082】
幾つかの用途に関しては、低い蒸気圧の溶媒を選択することができる。100℃以上の沸点、および1mmHg以下の蒸気圧などの低い蒸気圧を有する任意の溶媒を使用することができる。例えば、100℃以上、または125℃以上、または150℃以上、または175℃、または200℃以上、または210℃以上、または220℃以上、または225℃以上、または250℃以上の沸点を有する低い蒸気圧の溶媒を選択することができる。
【0083】
例示の低い蒸気圧の溶媒は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル;2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート;エチレングリコール;テルピネオール;トリメチルペンタンジオールモノイソブチラート;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート(テキサノール);ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート(DOWANOL(登録商標) DPMA);トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DOWANOL(登録商標)TPnB);プロピレングリコールフェニルエーテル(DOWNAL(登録商標)PPh);ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DOWANOL(登録商標)DPnB);グルタル酸ジメチル(DBE5二塩基性エステル);グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルの二塩基性エステル混合物(DBE 9、二塩基性エステル);テトラデカン、グリセリン;フェノキシエタノール(Phenyl Cellosolve(登録商標));ジプロピレングリコール;ベンジルアルコール;アセトフェノン;γ−ブチロラクトン;2,4−ヘプタンジオール;フェニルカルビトール;メチルカルビトール;ヘキシレングリコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール(商標));2−ブトキシエタノール(Butyl Cellosolve(登録商標));1,2−ジブトキシエタン(Dibutyl Cellosolve(登録商標));3−ブトキシブタノール;およびN−メチル−ピロリドンを含む。
【0084】
より高い蒸気圧を有する溶媒も、本明細書において提供される厚膜ペーストにおいて、単独でまたは低い蒸気圧の溶媒と組み合わせて使用することができる。より高い蒸気圧の溶媒の部分的なリストは、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール;水;酢酸アミル;酢酸ブチル;ブチルエーテル;ジメチルアミン(DMA);トルエン;およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含む。しかし、エアゾールジェットインクにおいては、溶媒は、約1mmHg未満の蒸気圧、より好ましくは約0.1mmHg未満の蒸気圧を有する溶媒に限定されるのが好ましい。
【0085】
厚膜ペースト組成物中に存在する溶媒の量は、単一溶媒または溶媒の混合物として存在しようとも、ペースト組成物の重量によって、1重量%から20重量%の間、特に2重量%から15重量%の範囲、または5重量%から12重量%の範囲である。例えば、本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、ペースト組成物の重量に基いて、1重量%、1.25重量%、1.5重量%、1.75重量%、2重量%、2.25重量%、2.5重量%、2.75重量%、3重量%、3.25重量%、3.5重量%、3.75重量%、4重量%、4.25重量%、4.5重量%、4.75重量%、5重量%、5.25重量%、5.5重量%、5.75重量%、6重量%、6.25重量%、6.5重量%、6.75重量%、7重量%、7.25重量%、7.5重量%、7.75重量%、8重量%、8.25重量%、8.5重量%、8.75重量%、9重量%、9.25重量%、9.5重量%、9.75重量%、10重量%、10.25重量%、10.5重量%、10.75重量%、11重量%、11.25重量%、11.5重量%、11.75重量%、12重量%、12.25重量%、12.5重量%、12.75重量%、13重量%、13.25重量%、13.5重量%、13.75重量%、14重量%、14.25重量%、14.5重量%、14.75重量%、15重量%、15.25重量%、15.5重量%、15.75重量%、16重量%、16.25重量%、16.5重量%、16.75重量%、17重量%、17.25重量%、17.5重量%、17.75重量%、18重量%、18.25重量%、18.5重量%、18.75重量%、19重量%、19.25重量%、19.5重量%、19.75重量%、または20重量%である溶媒の量を含むことができる。
【0086】
8.添加剤
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト、例えば、ドーパント、接着促進剤、カップリング剤、粘性調整剤、平滑剤、消泡剤、焼結助剤、湿潤剤、抗凝集剤およびその任意の組み合わせなどのペースト性能を増強する他の添加剤をさらに含むことができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペーストに含むことができる添加剤の非限定的な例は、次のものを含む:
・ドーパント。当業界で公知の任意のドーパントをペースト組成物に含むことができる。
・粘性調整剤。ある用途において、厚膜ペーストは1種または複数の粘性調整剤を含むことができる。例示の粘性調整剤は、スチレンアリルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、1−メチル−2−ピロリドン(BYK(登録商標)410)、ウレア変性ポリウレタン(BYK(登録商標)425)、変性ウレアおよび1−メチル−2−ピロリドン(BYK(登録商標)420)、SOLSPERSE(商標)21000、ポリエステル、およびアクリルポリマーを含む。
・平滑剤。ある用途において、厚膜ペーストは、表面張力を低下させる平滑剤を含むことができ、それによって、ペーストがペーストの塗布中により容易に流れるようにし、ペーストが基板の表面を濡らす能力を増強することができる。当業界で公知の任意の平滑剤、例えば、含フッ素界面活性剤、有機修飾シリコンもしくはアクリル平滑剤、またはその任意の組み合わせなどを含むことができる。
・焼結助剤。焼結工程中に支援する化合物を厚膜ペースト組成物に含むことができる。含むことができる焼結助剤の例は、ガラスまたは金属の酸化物の粒子である。存在する場合、焼結助剤の平均直径は、0.5〜10.0μmの範囲、5μm未満、または2μm未満である。存在する場合、任意の焼結助剤は、一般に、ペースト組成物の重量に基いて、1重量%未満、または0.5重量%未満の量で存在する。
・湿潤剤。基板の表面の濡れを支援する、または表面張力を修飾することができる化合物は、厚膜ペースト組成物に含むことができる。そのような材料の例は、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK(登録商標)307)、キシレン、エチルベンゼン、キシレンおよびエチルベンゼンのブレンド(BYK(登録商標)310)、オクタメチルシクロ−テトラシロキサン(BYK(登録商標)331)、アルコールアルコキシラート(例えば、BYK(登録商標) DYNWET)、エトキシラートおよび変性ジメチルポリシロキサンコポリマー湿潤剤(Byk(登録商標)336)を含む。
・消泡剤。幾つかの好ましい材料は、ポリシロキサン(BYK(登録商標)067A)、重油ナフサアルキラート(BYK(登録商標)088)、およびポリシロキサン、2−ブトキシエタノール、2−エチル−1−ヘキサノールおよびStoddard solvent(BYK(登録商標)020)のブレンドなどのシリコーン;および、水素化脱硫重油ナフサ、グリコール酸ブチルおよび2−ブトキシエタノール、ならびにその組み合わせ(BYK(登録商標)052、BYK(登録商標)A510、BYK(登録商標)1790、BY(登録商標)354およびBYK(登録商標)1752)などのシリコーンを含まない消泡剤を含む。
・抗凝集剤。抗凝集剤は、一般に金属粒子を相互から少なくともある程度遮蔽すること(例えば、立体的におよび/または電荷効果によって)により作用し、それによって、個々の金属粒子間の直接的な接触を実質的に阻止する。抗凝集剤は、金属粒子の全体表面を取巻く連続被覆として存在する必要はない。むしろ、金属粒子の相当な量の凝集を阻止するために、多くの場合、抗凝集剤が金属粒子の表面の一部のみに存在することで十分である。抗凝集剤は、有機ポリマーなどのポリマーであっても、または、それを含んでもよい。ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。有機ポリマーは還元剤であってもよい。例示の抗凝集剤は、モノマーとしてポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルイミダゾールおよびビニルカプロラクタムの一つまたは組み合わせを含む。
【0087】
伝導率に対する作用を極小化するために、他の化合物は5%未満の量で使用されるのが好ましいが、しかし、幾つかの事例においては、1重量%から15重量%(ペースト組成物の重量に基いて)の間などのより多い量で使用することもできる。ある事例において、他の化合物は、0.1重量%から0.5重量%の間の量でペースト組成物中に存在する。存在する場合、添加剤の量は、ペースト組成物の重量に基いて、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.35重量%、0.4重量%、0.45重量%、0.5重量%、0.55重量%、0.6重量%、0.65重量%、0.7重量%、0.75重量%、0.8重量%、0.85重量%、0.9重量%、0.95重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%または5.0重量%であってもよい。
【0088】
上記の材料および下記の例は、銀の厚膜ペースト組成物などの伝導性厚膜ペーストが使用される用途に使用することができる、ペーストの構成例である。例示の組成物は、1種または複数の上記の成分の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、厚膜ペースト組成物は、50重量%から95重量%の電気伝導性金属粒子、110℃を超える融点を有するアミド系ワックスおよび/またはポリアミド系ワックスを含有する0.2重量%から2重量%のチクソトロピー変性剤、および0.05重量%から5重量%の樹脂、および/または1重量%から20重量%の有機溶媒などの溶媒、および/または0.01重量%から1重量%の分散剤、および/または0.1重量%から10重量%のガラスフリット、および/または、1重量%から10%の金属酸化物、および/またはドーパント、接着促進剤、カップリング剤、粘性調整剤、平滑剤、焼結剤、湿潤剤、消泡剤および抗凝集剤の中から選択される添加剤の0.1重量%から15重量%の、任意の一つまたは組み合わせを含むことができる。厚膜ペースト組成物において成分の組み合わせは、10秒未満の回復時間、もしくは10以上の剪断減粘指数または両方を有する伝導性厚膜印刷法ペーストをもたらす。
【0089】
ある用途に関しては、本ペーストは、スクリーン印刷可能となるように、および、高いアスペクト比を有する細線の特徴の印刷を可能にするレオロジー特性を有するように配合することができる。例えば、本ペーストは、平行平板幾何構造粘度計を使用して25℃で測定した時、10秒−1で50から250Pa・sの粘度を有するように配合することができる。結果として生じたペーストが以下の幾つかの主要パラメーターの少なくとも1つを好ましくは満たす限り他の材料および配合物は可能である:(1)好ましくは10秒未満の回復時間;(2)好ましくは10以上のSTI;および(3)印刷された特徴の高いアスペクト比。
【0090】
厚膜ペースト組成物が上述の回復時間および/またはSTIパラメーターを満たす場合、印刷後平滑化により引き起こされる、印刷されたグリッド線のスランピングが極小化されることが示されている。さらに、高融点チクソトロピー変性剤、特に高融点ワックスチクソトロピー変性剤によって、印刷されたグリッド線および、他の印刷された電子機能は、乾燥およびその後の焼成工程のさらなる線スランピングを阻止しつつ、高温で相当に高い弾性率を維持する。先行技術の金属ペーストと比較して、より高いアスペクト比を有するより微細な印刷されたグリッド線は、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物を使用して、従来のスクリーン印刷方法によって得ることができる。本出願のペーストは、特に結晶シリコン太陽電池の改善された効率を示す電気機能を製造する。
【0091】
本厚膜銀ペーストは、原料、およびチクソトロピーワックスと組み合わせるその比率の注意深い選択によって、特定範囲の回復時間、特定範囲の剪断減粘指数(STI)、高いアスペクト比またはその任意の組み合わせなどの所望の特性を有するように配合することができる。配合者は、必要とされる具体的な輪郭および特性を示し、非限定的な例が本明細書において提供されるように、原料を選択する方法、および、金属ペーストを調節するためにその比率を変化させる方法において熟達している。構成の変動によってSTIまたは回復時間などの性能パラメーターの違いを生じる場合があり、アミドワックス成分に関してなどの成分の量および/または比率の変更によるなどの、金属ペースト組成物の調節、または樹脂の分子量などの成分の選択によって、性能パラメーターを調節することができる。ある範囲のSTIまたはある範囲の回復時間を示すなどのそのような性能変動は、本発明の範囲内である。
【0092】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は、配線抵抗率を低下し、その結果、最終用途、例えば太陽電池の性能を改善する、高いアスペクト比を有する導体グリッドの細線印刷を可能にする。本出願の厚膜ペースト組成物によって達成可能な印刷されたグリッド線の厚さは、従来のペーストからのものより著しく大きく、より複雑かつ時間浪費する方法を必要とする「ホットメルト」ペーストまたは「二回印刷」技法を使用して達成される厚さに匹敵する。この高いアスペクト比の特徴は、接触抵抗は、通常低いシート抵抗率のものより高く、その結果、低い全体直列抵抗を得るためには低い配線抵抗率を必要とする、浅いエミッターを有する太陽電池を接触させるためのペーストの配合にとって特に重要である。
【0093】
本出願の厚膜ペースト組成物はまた、より高いアスペクト比と組み合わせて、より丈が高くより狭い印刷線を達成することができる。このことは、直列抵抗により増える損失を回避しつつ、より丈が高くより狭い配線が陰影を極小化することにより、より良好な電池効率を提供するのを助ける太陽電池の文脈において重要である。
【0094】
本出願の厚膜ペースト組成物は、包装材料、包装材料内に本明細書において提供される厚膜ペースト組成物、およびラベルを含むことができる、製造品として提供することができる。包装材料は当業界でよく知られている。包装材料の例は、例えば、瓶、管、容器、バケツ、ドラム、および選択された配合物に適した任意の包装材料を含む。製造品はまたペーストの使用説明書を含むことができる。
厚膜ペースト組成物のレオロジー
【0095】
厚膜ペースト組成物の粘度は、選択された塗布方法に合わせて調節することができる。好ましい実施形態において、本出願の厚膜ペースト組成物は、スクリーン印刷に適切なレオロジーを有するように配合される。本厚膜ペースト組成物は、ペーストのレオロジー特性を決定することができる粒子または粒子の混合物を含む。粒子は、例えば、電気伝導性材料、電気絶縁材、誘電材料、および半導体材料を含む異なる材料のものであってもよい。加えて、厚膜ペーストは、接着または焼結の支援などの特別目的のための他の化合物を含むことができる。粒子は、有機溶媒などの好適な溶媒を含むビヒクルに担持される。ビヒクル中に一般に見出される他の成分は、樹脂および結合剤、分散剤、湿潤剤、およびレオロジー改質剤を含む。本出願の伝導性厚膜ペーストは、好ましくは溶媒および樹脂、および独自のレオロジー的および印刷特性を与えるレオロジー改質剤を場合によって含む。
【0096】
ペーストが、特に細線パターンに関して、スクリーンメッシュを通して絞り出されるためには、印刷中の低粘度が所望される。しかしながら、印刷線の広がりを回避するためには、印刷後の高粘度が所望される。このことは、高分解能用のスクリーン印刷ペーストが、ペーストの粘度は、ペーストが静止中に高く、ペーストが剪断を受けているときは低いという、剪断減粘挙動を示さなければならないという必要条件に結びつく。細線分解能および高いアスペクト比を維持するために、印刷の高い剪断を経験した後急速に、ペーストが高い静止粘度に「回復する」ことが重要である。粘度のこの時間および剪断速度の依存性は、チクソトロピーとして知られている。ペーストの「回復時間」は、剪断ジャンプ実験として知られる単純なレオロジー試験によって求めることができる。実験は、剪断応力を記録しながら最初に高い剪断速度を、続いて低い剪断速度を試料に適用することにより行われる。図1に示されるように、試験の低い剪断速度の部分の間、チクソトロピー材料は低い剪断応力から始まり、均衡値に徐々に回復する。この回復は、一般に以下の式に示されるような指数関数によってモデル化することができる:
τ=b+(a−b)exp(−t/c)
ここで、τ=剪断応力、aおよびbはあてはめた係数であり、cは回復速度定数である。
【0097】
主要パラメーターは、回復速度定数cであり、cの大きな値は遅い回復時間(または長い回復時間)を示す。データ分析のこの方法に伴う問題は、挙動またはインクまたはペーストなどの流体が、このモデルにあてはまらないことである。この問題を回避するために、高い剪断速度から低い剪断速度へのジャンプ後、試料が平衡剪断応力値の90%を達成するのにかかる時間として、「回復時間」を定義することができる。厚膜ペーストは、2s−1の高い剪断速度、および0.1s−1の低い剪断速度を使用して試験される。
【0098】
チクソトロピーの別の指標は、1s−1で測定された粘度と10s−1で測定された粘度の比率として定義される剪断減粘指数(STI)である。本明細書において提供される厚膜ペーストの粘度測定はすべて、鋸歯付きまたは桟付き平行平板幾何構造を使用して行われる。鋸歯付き幾何構造は、高い固体荷重を伴うペーストにおいて優勢になり得る壁での滑り効果を回避するのに重要である。
【0099】
スクリーン印刷中のペーストの移動は複雑なプロセスである。堆積した含湿ペースト材料の厚さは、下式によって表される算定された含湿フィルム厚さ、twetより通常低い。
【0100】
wet=EOM+2d・χ
【0101】
ここで、EOMはメッシュ上の乳剤厚さであり、dはメッシュワイヤ直径であり、χはメッシュ目開き面積のパーセントである。
【0102】
主な食い違いは、スクリーン印刷中のメッシュワイヤおよび乳剤へのペースト材料の粘着によって引き起こされる。先のレオロジー調査は剪断流動の測定に焦点を当てていたが、粘着という、外延的な流動性は取り組まれていない。ペーストの粘着を試験する方法は、ペーストに挿入された10mmx10mmのスライドガラスを使用し、次いで、例えばTA Instruments Q800 Dynamic Mechanical Analyzerの使用による機械的方法などの当業界で公知の任意の方法を使用して引き離す。各力−変位曲線下の面積は、スライドガラスからペーストを分離するのに必要とするエネルギーに比例し、スクリーン印刷ペーストの移動プロセス中にスクリーン目開きからペーストを分離するために必要なエネルギーと相関する。基板からペーストを分離するのに必要とするエネルギーの低下は、スクリーンへのペースト粘着の傾向が低下しペースト材料のより厚い堆積を可能にすることを意味する。本明細書において提供されるペーストは、改善された外延的な粘度−見かけの外延的な粘度の低下を示し、その結果、ペーストは、きれいにより速やかに表面から崩れる。このことが、スクリーンおよびペーストの粘着量の減少をもたらし、それにより印刷適性が改善される。
【0103】
本出願の厚膜ペーストの別の態様は、ペーストの回復時間を短縮するためにペースト配合物にチクソトロピー変性剤またはチクソトロピー変性剤の組み合わせを組み込むことである。チクソトロピー変性剤が広く採用され、厚膜ペースト配合物において使用されているが、これらの薬剤を添加する主な先行技術の目的の一つは、剪断減粘指数を上げることである。しかしながら先行技術によると、ペースト組成物にチクソトロピー変性剤を組み込むことは必ずしも必要とは限らない。その理由は、粒子の任意の懸濁液に固有の剪断減粘と連結した溶媒/樹脂特性が単独で、この点に関して適している場合があるからである(例えば、米国特許第7,504,349号を参照のこと)。チクソトロピー変性剤の添加において先行技術の別の重要な狙いは、これらのペーストへの、チクソトロピーまたは時間依存性の粘度回復を増強することである。先行技術は、チクソトロピー流体の剪断後の回復時間を伸ばすためにチクソトロピー変性剤の添加を教示している。対照的に、本発明は、ペーストの回復時間を短縮しようとする。高融点ワックスチクソトロピー変性剤の添加は、ペーストの回復時間を短縮することが分かった。スクリーンへの材料の粘着の減少およびより速い回復時間(回復するために必要な時間の短縮)の結果として、40μmより大きい印刷厚さを有するグリッド線を、図2に例示されるように、従来のスクリーン印刷方法の使用により得ることができる。
【0104】
さらに、好ましいチクソトロピー変性剤の高い融点は、図4において示されるように、かなり広い温度範囲にわたりペーストの高い弾性率を維持する。ペーストの弾性率は、応力が印加された後、元の粘度へ復帰する能力を表し、応力と歪の比によって表される。より高温で高い弾性率を維持するペーストは、ペーストを使用して印刷された特徴のより速い回復時間および線広がりの減少を示す。65℃の温度で約1000Paより大きい弾性率を示す、高融点ワックスチクソトロピー変性剤を含むペーストは、ペーストを使用して印刷された特徴のより速い回復時間および線広がりの減少を示すことが分かった。
【0105】
50℃の温度または65℃の温度で100%以上の貯蔵弾性率(G’)を示す厚膜ペースト組成物は、より速い回復時間を示すことが分かった(図6を参照のこと)。例えば、高融点ワックスチクソトロピー変性剤(120℃〜130℃の融点を有するCRAYVATTAC Super(登録商標))を用いて配合されたペーストは、乾燥およびその後の焼成中にスランピングを示さない(図5Aに示されたように)が、低融点ワックスチクソトロピー変性剤(62℃〜67℃の融点を有するTryothixA)を用いて配合されたペーストは、遅い乾燥速度でさえ著しいスランピングを起こした(図5Bおよび5Cにおいて示されたように)。低融点ワックスを含有する印刷ペーストの65℃での弾性率は、120℃より高い融点を有する高融点ワックスチクソトロピー変性剤を含有するペーストの弾性率より低い次数であった(図6を参照のこと)。
【0106】
厚膜ペースト組成物のレオロジーは、成分またはペースト中の成分の比率を変えることにより調節することができる。例えば、樹脂の量および/もしくは分子量、またはワックスチクソトロピー変性剤の量および/もしくは種類、またはその組み合わせを変えて、ペーストのレオロジーを調節することができる。約1000から2000の分子量を有するロジンエステル樹脂などの、5,000未満のMWを有する樹脂は、20,000〜40,000のMWを有するエチルセルロース樹脂などの高分子量樹脂より多量に組成物に含むことができる。比較的低いMWを有する樹脂が寄与するペースト中の固形分の量は、より少量のより高分子量の樹脂を含有する同様のペーストのレオロジーとは著しく異なるレオロジーをもたらすことがある。例えば、ペーストの弾性率を増すことが望ましい場合、追加のワックスチクソトロピー変性剤をペースト組成物に含んでもよく、またはより高い融点を有するワックスチクソトロープ剤をペースト組成物に含んでもよい。
焼結
【0107】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、典型的には印刷され、次いで、500から900℃の間の温度で熱処理などによって焼結される。焼結のために使用される時間および温度は、印刷された基板に応じて調節することができる。例えば、ある用途において、焼結(ペーストの共焼成)は、500℃±100℃またはその付近の温度で5から45秒で起こり得る。ある用途において、印刷された電子機能は、700℃から900℃またはその付近の温度で1分から30分またはそれ以上の時間、伝導性の配線または特徴に焼結される。電子機能が印刷された細線である場合、焼結によって、非常に良好なエッジ解像力および優れた伝導率を有する、線が崩れていない70〜150μmの太線を形成する。焼結は、当業界で公知の任意の方法を使用して、例えば、伝熱オーブン、IRオーブン/炉で、または高度集束レーザーまたはパルス発光焼結システムを使用するような光子硬化方法の適用によって、または誘導によって達成することができる。
基板
【0108】
電子機能が印刷され焼成される任意の基板を選択することができる。基板の例は、ウエハーなどの、シリコン半導体用途、および被覆していない、または窒化ケイ素(例えば、SiN)被覆した多結晶の配線および単結晶シリコン基板を含む。基板は、電子素子または光起電力素子などの素子の一部であってもよく、または太陽電池であってもよい。
【0109】
電子機能が塗布される基板は、滑らかなまたは粗い表面を有していてもよい。基板は、電子機能を塗布することができる溝、畝、樋、角錐または他の変形を含むようなテクスチャーに修飾することができる。そのようなテクスチャーは光捕捉技法として使用することができるので、そのようなテクスチャー構造は、太陽電池素子に含まれる基板に使用することができる。太陽電池の1つまたは複数のテクスチャー表面は、異なる角度で入射光を散乱することができ、それにより活性層を通るより長い平均光路が結果として得られる。電池の前面の周期的またはランダムな角錐、および裏の反射または光散乱面などの、表面の微細構造の包含は、効率を改善するために使用することができる。本明細書において提供される金属ペーストは、そのようなテクスチャー構造に塗布し、表面に電子機能を形成することができる。例えば、基板は、効率的な光捕捉のために複数の微細構造領域を含むことができる(例えば、米国特許出願公開第2012/0012741号に記載されているように)。基板は切除し、電極または連絡線などの電子機能を含むようにテクスチャー表面を与えるかまたは樋または通路を生成することができる。例えば、表面を切除し、複数の樋を形成することができ、結果として畝のある表面を有する表面の少なくとも一部が得られる。本明細書において提供される金属ペーストは、そのような畝のある表面に塗布することができる。
印刷線幅
【0110】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、良好な電気的性質を有する、ならびに、例えば太陽電池基板にシード層配線を製造する、伝導性の配線または特徴を形成するために使用することができる。例えば、本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物、および本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物を使用する印刷法は、その特徴が、広範囲の印刷線幅の、例えば約200マイクロメートル(μm)を超えない;約150μmを超えない;約100μmを超えない;約75μmを超えない、特徴の大きさ(すなわち最小寸法の平均幅)を有する、伝導性の特徴を基板に形成するために使用することができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、70μmもの小さい幅を有する、印刷された特徴をもたらすことができる。
印刷線厚さおよびアスペクト比(高さ対幅)
【0111】
印刷線厚さ(高さ)は、ワックスチクソトロープ剤または樹脂または固形分含量またはその任意の組み合わせの選択などの、本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物の配合によって調節することができる。印刷線高さは、例えば、光学式または触針式表面形状測定装置(例えばNanovea, Irvine, CA USAからの)を使用する、当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。
【0112】
スクリーンへのペースト材料の粘着の減少、および短縮した回復時間の結果として、40μmより大きい、または50μmより大きい印刷厚さを有するグリッド線を、図2において例示されるように従来のスクリーン印刷方法を使用して、本明細書において提供される厚膜ペースト組成物の印刷によって得ることができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物を使用する、印刷された特徴の典型的な厚さは、少なくとも5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μm、51μm、52μm、53μm、54μm、55μm、56μm、57μm、58μm、59μm、60μm、61μm、62μm、63μm、64μm、65μm、66μm、67μm、68μm、69μmまたは70μmである厚さを、または印刷高さを有することができる。
【0113】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物によって形成される印刷線は、0.05またはその付近から0.45またはその付近、および特に0.1以上、好ましくは0.15を超える、または特に100μm以下の幅を有する線について、または80μmまたは70μm以下の幅を有する線について、約0.25から0.45の範囲のアスペクト比(高さ対幅)を、また特に0.3から0.45、またはその付近の範囲のアスペクト比(高さ/幅)を有することができる。
伝導率
【0114】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物を用いて印刷することにより形成された電気伝導性の特徴または配線は、優れた電気的性質を有する。非限定的な例として、印刷線は、特に焼結条件が印刷線を抵抗率付与、すなわち基本的な焼結完了への到達を可能にする場合、良好な焼結で、純粋なバルク金属の抵抗率の約5倍以下、または約2から5倍以下である抵抗率を有することができる。印刷された銀インクのシート抵抗は、通常、焼結後、細線として5オーム/スクエア未満、特に1.5オーム/スクエア未満、0.75オーム/スクエア未満である。焼結は、当業界で公知の任意の方法を使用して、例えば、伝熱オーブン、IRオーブンもしくは炉で、ならびに高度集束レーザーを含むまたはパルス発光焼結システムを使用する光子硬化方法によって達成することができる。(例えば、Xenon CorporationまたはNovaCentrixからの、また米国特許第7,820,097号を参照のこと)。
ペースト組成物の調製
【0115】
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物は当業界で公知の任意の方法を使用して作製することができる。例示の方法において、樹脂の完全溶解およびチクソトロピー変性剤の活性化を保証するために、樹脂およびチクソトロピー変性剤は溶媒と混合される。結果として得られた混合組成物に、銀粒子などの電気伝導性粒子、SiO、PbO、ZnO、B2OおよびAlを含有するホウケイ酸鉛ガラスフリットなどのガラスフリット、ならびに、分散剤および酸化亜鉛などの金属酸化物などのペーストの他の成分、および、変性ジメチルポリシロキサンコポリマー湿潤剤などの湿潤剤を一定の混合をしながら添加される。実質的に均質なペーストが得られるまで混合は継続される。
【0116】
組成物が十分に混合され、実質的に均質なペーストが得られた後、ペーストは、媒体ミル、ボールミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ビーズミル、およびエアージェットミル;磨砕機;または液体相互作用室などの、任意の種類の細砕ロールを使用して摩砕される。例えば、ペーストは、三本ロールミル(例えばLehmann Mills, Salem, OH; Charles Ross & Son Company, Hauppauge, New York; またはSigma Equipment Company, White Plains, Y)からの)に繰り返し通すことができる。三本ロールミルを使用して摩砕する間に、15μm以下などの所望の大きさの研磨読み(すなわち、分散液)を達成するために、隙間は20μmから5μmなどのように漸進的に減少させることができる。
粒径および粒径分布の測定
【0117】
体積平均粒径は、Coulter Counter(商標)粒径分析計(Beckman Coulter Inc.によって製造されている)の使用により測定することができる。またメジアン粒径は従来のレーザー回折技法を使用して測定することができる。例示のレーザー回折技法は、Mastersizer 2000粒径分析計(Malvern Instruments LTD., Malvern, Worcestershire, United Kingdom)、特に自動化したHydro S小量一般目的用試料分散液単位装置を使用する。平均粒径はまた、動的光散乱(DLS)方法を使用するZetasizer Nano ZS装置(Malvern Instruments LTD., Malvern, Worcestershire, United Kingdom)を使用して測定することができる。DLS方法は、ストークス−アインシュタイン関係式を利用して、拡散速度を求め、レーザー光線のこれの散乱から大きさを誘導し、粒子からのレーザー光線の散乱を観察することから基本的に構成される。
印刷された配線伝導率を評価する方法
【0118】
印刷線の抵抗率は、Sussマイクロプローブステーションに連結した半導体パラメーター分析計(例えば、Keithley Instruments, Inc., Cleveland, OH USAからのModel 4200−SCS Semiconductor Characterization System)を使用してI−Vモードで測定を行うことができる。導電路(長さL、幅Wおよび厚さt)のシート抵抗は、下式から求めた。
【0119】
R=RシートxL/W
【0120】
式中、抵抗値は装置によって測定され(Ωで)、RシートはΩ/スクエアで表される。
【0121】
太陽電池
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、広範囲の電子および半導体素子において使用することができる。本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、受光素子、特に太陽光発電(太陽電池)において特に有効である。そのような素子は、本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物のいずれかを基板、例えば、SiウエハーなどのSi基板に印刷し、続いて乾燥および焼結することにより形成された電子機能を含むことができる。例えば、乾燥した後、印刷されたSiウエハーは、炉内で500℃から950℃のピーク温度設定で炉の寸法および温度設定に応じて1から10分間焼成し、太陽電池を得ることができる。
【0122】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、基板に電極を形成するために使用することができる。ペースト組成物は、スクリーン印刷などによって基板に堆積することができ、印刷された基板は、続いて焼成などによって乾燥し加熱して溶媒を除去し、ガラスフリットを焼結することができる。そのようにして製造された電極は、半導体素子または光起電力素子に含むことができる。
【0123】
本明細書においてまた提供される伝導性厚膜ペースト組成物は、結晶シリコン太陽電池前側の金属化の方法で使用することができる。ペースト組成物は、スクリーン印刷などによって太陽電池の前側へ堆積することができる。
【0124】
本明細書において提供される伝導性厚膜ペースト組成物はまた、基板上に伝導性の特徴を形成する方法に使用することができる。ペースト組成物はスクリーン印刷によって基板に塗布され、印刷された基板を形成し、これは乾燥され加熱され、伝導性の特徴を形成する。加熱ステップは、当業界で公知の任意の方法、オーブンで焼結するまたは光子硬化方法を用いて処理するなどによって、または誘導によって行うことができる。オーブンが使用される場合、オーブンは伝熱オーブン、炉、対流オーブンまたはIRオーブンであってもよく、光子硬化方法が使用される場合、高度集束レーザーまたはパルス発光焼結システム、またはその組み合わせを使用する処理を含むことができる。
【0125】
基板は光起電力素子の一部であってもよく、これが成分として結晶シリコンを含むことができる。基板は太陽電池ウエハーであってもよい。基板は、シリコン半導体、または被覆していないもしくは窒化ケイ素被覆された多結晶または単結晶シリコン基板またはその組み合わせであってもよい。本方法は、0.3から0.45のアスペクト比(高さ対幅)を有する、100μm未満の幅を有する線を含む伝導性の特徴を基板に製造するために使用することができる。
【0126】
また、スクリーン印刷により基板に塗布された金属伝導性厚膜ペーストの線広がりを極小化する方法が、120℃より高い融点を有する高融点アミドまたはポリアミド系ワックスのチクソトロピー変性剤を厚膜ペーストに含むことによって提供される。120℃より高い融点を有する高融点アミドまたはポリアミド系ワックスのチクソトロピー変性剤は、スクリーン印刷により基板に塗布された金属伝導性厚膜ペーストの線広がりを極小化するために使用することができる。基板は、被覆していないまたは窒化ケイ素被覆した結晶シリコンであっても、または含んでもよく、太陽電池ウエハーであってもよい。
【0127】
太陽電池の効率および曲線因子
本明細書において提供される厚膜ペースト組成物を含む太陽電池の効率および曲線因子を、I−V Testing System(PV Measurements Inc., Boulder, Colorado)を使用して試験した。I−V Testing Systemは、AM1.5太陽光度スペクトル(明走査)ならびに照射しないIV掃引(暗走査)を模倣する、スペクトルを用いて一定の1000W/mで太陽電池を照らす場合の、IV掃引を行うソーラーシミュレーターである。この走査で約−0.1Vから約0.7Vまでを測定し、これで、短絡電流(Isc)開放電圧(Voc)、および効率を測定するのに十分である。IscはV=0で測定された電流であるが、VocはI=0での値である。積、I*Vは出力と等しく、効率は掃引中に測定された最大出力から計算される:
効率=Pmax/(1000*A)、式中、Aは電池の面積(m)である。典型的な電池は240cmすなわち0.024mの程度である。典型的な出力は、4Wの程度である(16.7%の典型的な効率を与える)。
【0128】
さらに、曲線因子を測定することができる。曲線因子は明のIV曲線からのPmax/(Voc*Isc)に等しい。暗のIV曲線をとることによって、一度に電池の抵抗および分路抵抗の両方を測定することができ、このどちらも高い効率の達成に重要である。
【0129】
経時的に一定の効率を維持するために、また照明ランプの老化のような影響を緩和するために、IVが掃引される毎に測定される較正電池がある。較正電池は、その後の測定を一定に維持することができる。2つの方法を用いて電池効率の改善を測定するために、通常、各方法につき10個の電池の集団が使用され、集団の効率が測定される。ウエハーの本質的な差異により、一般に効率の統計的分布が得られ、差異を見出すために分布の平均値を比較することができる。
実施例
【0130】
以下の実施例は、実験および達成した結果を含み、説明の目的のみのために提供され、クレームの主題を限定するものとして解釈するべきではない。
【0131】
実施例1
ペースト組成物の調製
A.一般手順
以下の表1〜5のそれぞれは、以下の一般手順を使用して調製した、厚膜銀ペースト組成物1〜8の各成分の重量パーセント(重量%)を述べる。
【0132】
高分子樹脂(もし含まれていれば)およびチクソトロピー変性剤を、高温(例えば、>50℃)で溶媒、テキサノール(商標)エステルアルコール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ(2−メチル−プロパノアート); Sigma−Aldrich, St. Louis, MO))とまず混合し、樹脂の完全溶解およびチクソトロピー変性剤の活性化を確実にした。次いで、組成物は、銀粒子(D10=1μm、D50=2.1μm、D90=5.3μm、Ames Goldsmith, South Glens Falls, New York);SiO、PbO、ZnO、BおよびAlを含有するホウケイ酸鉛ガラスフリット (Viox Corporation, Seattle, WA);酸化亜鉛(粒径=<5μm、Sigma−Aldrich, St. Louis, MO))SunFlo(登録商標)P92−25193分散剤(Sun Chemical, Parsippany, N.T);および変性ジメチルポリシロキサンコポリマー湿潤剤(BYK Additives and Instruments, Wallingford, CT)と混合した。均質になるように組成物を十分に混合した後、結果として得られたペーストを三本ロールミル(例えばLehmann Mills, Salem, OH; Charles Ross & Son Company, Hauppauge, New York;またはSigma Equipment Company, White Plains, NYからの)に繰り返し通した。摩砕する間に、15μm以下の研磨読み(すなわち、分散液)を達成するために、隙間を20μmから5μmに漸進的に減少させた。
【0133】
銀ペースト組成物の研磨微細度を求めるために研磨微細度(FOG)試験法(ASTM D−06(2011)1316)を使用した。研磨微細度は、平均粒径または粒径の集積度ではなく仕上げた分散液中の最大粒子の大きさを示す、規定された試験条件下で研磨ゲージで得られた読みを指す。ASTM方法はNPIRI Grindometerを使用する。
【0134】
FOG試験を行うために、組成物の小量の試料をゲージの溝の深い端部へ注ぎ、次いで、両手でゲージに直角に保持したかき取りブレードを用いて、ゲージの長手に安定した速度でこすった。十分な下方圧力をかき取り器にかけ、ゲージの基準面を掃除したが、通路は材料で充填しておいた。引き降ろした直後に、長さに対して直角にグレージング角でゲージを観察することにより研磨微細度を求めた。研磨微細度は、材料が顕著に斑点のある外観および目盛線をまず示す、通路に沿った地点となるように決め、その間の、溝を横切る幅3mmのバンドの粒子数は約5から10であった。
【0135】
B.高分子樹脂を含まない銀ペースト組成物
以下の表2は、Crayvallac Super(登録商標)、高融点(120〜130℃)オクタデカンアミドワックスのチクソトロピー変性剤(Cray Valley, Exton, PA)を含み、高分子樹脂は添加していない厚膜銀ペースト組成物(ペースト1)を作製するのに使用した成分を述べる。
【0136】
高分子樹脂を含まない銀ペースト組成物。
【0137】
【表2】
【0138】
以下の表3は、Crayvallac Super(登録商標)、高融点(120〜130℃)オクタデカンアミドワックスのチクソトロピー変性剤(Cray Valley, Exton, PA)、およびEthocel Standard 4、エチルセルロース(EC)高分子樹脂(Dow Chemical, Midland, MI)を含む3つの厚膜銀ペースト組成物の配合物(ペースト2〜4)を述べる。
【0139】
EC樹脂およびオクタデカンアミドワックスチクソトロープ剤を含む銀ペースト組成物。
【0140】
【表3】
【0141】
D.エチルセルロース高分子樹脂ならびに高融点水素化ヒマシ油およびアミドのチクソトロピー変性剤を含む銀ペースト組成物
以下の表4は、高融点水素化ヒマシ油およびアミドのチクソトロピー変性剤Crayvallac SF(登録商標)(ペースト5; 融点130〜140℃; Cray Valley, Exton, PA)またはASA−T−75F(ペースト6; 融点115〜125℃; ITOH Oil Chemical Co, LTD., Japan)のいずれか、およびEthocel Standard 4、エチルセルロース高分子樹脂(Dow Chemical, Midland, MI)を含む、2つの厚膜銀ペースト組成物の配合物(ペースト5および6)を述べる。
【0142】
エチルセルロース(EC)樹脂および水素化ヒマシ油/アミドチクソトロープ剤を含む銀ペースト組成物
【0143】
【表4】
【0144】
E.エチルセルロース高分子樹脂および変性ヒマシ油エステルチクソトロピー変性剤を含む銀ペースト組成物
以下の表5は、Troythix(商標)A、変性ヒマシ油エステルチクソトロピー変性剤(融点62〜67℃; Troy Corp., Florham Park, NJ)、およびEthocel Standard 4、エチルセルロース(EC)高分子樹脂(Dow Chemical, Midland, MI)を含む厚膜銀ペースト組成物の配合物(ペースト7)を述べる。
【0145】
EC樹脂および水素化ヒマシ油/アミドチクソトロープ剤を含む銀ペースト組成物
【0146】
【表5】
【0147】
F.ロジンエステル高分子樹脂および高融点オクタデカンアミドワックスのチクソトロピー変性剤を含む銀ペースト組成物
以下の表6は、Crayvallac Super(登録商標)、高融点(120〜130℃)オクタデカンアミドワックスのチクソトロピー変性剤(Cray Valley, Exton, PA)、およびForalyn 90、水素化ロジン高分子樹脂(Eastman Chemical, Kingsport, TN)のグリセリンエステル含む厚膜銀ペースト組成物の配合物(ペースト8)を述べる。
【0148】
EC高分子樹脂および水素化ヒマシ油/アミドチクソトロープ剤を含む銀ペースト組成物
【0149】
【表6】
【0150】
実施例2
銀ペースト組成物の特性
A.レオロジー特性
ペースト1〜3および8の粘度を、鋸歯付き底板を含む平行平板機構を有するAR2000ex粘度計(TA Instruments, Newcastle, DE)を使用し、1s−1および10s−1の剪断速度で測定した。剪断減粘指数(STI)、1s−1で測定した粘度と10s−1で測定した粘度の比率も計算した。STIは、粘度はペーストが静止中に高く、ペーストが剪断を受けているときは低いという剪断減粘挙動を示す。高いアスペクト比を有する微細な印刷されたグリッド線に関して、ペーストは剪断減粘挙動を示さなければならない。すなわち、スクリーンメッシュを通して絞り出されるためには低粘度を有するが、印刷線の広がりを回避する高い粘度を有する必要がある。結果は以下の表7に示される。
【0151】
チクソトロピーの、または応力の回復時間は、高い剪断速度の揺動を経験した後、静止している粘度への復帰にペースト組成物が要する時間である。回復時間が速いほど、ペーストが示すスランピングは少ない。スランピングは、印刷スクリーンが解放された直後から始まり、印刷線が高さを失い幅が増す場合に起こる。スランピングにより、印刷線幅は、スクリーン中の線幅の1.5倍(またはそれ以上に)なり得る。
【0152】
ペースト1〜3および8の粘度およびSTI値
【0153】
【表7】
【0154】
ペースト組成物の回復時間は、レオロジー試験、剪断ジャンプ実験によって求めた。実験は、剪断応力を記録しながら、試料に最初に高い剪断速度、続いて低い剪断速度を適用することによって行った。試験の低い剪断速度の部分の間、チクソトロピー材料は低い剪断応力から始まり、均衡値に徐々に回復する。ペースト組成物1〜3および8は、2s−1の高い剪断速度で3分間で2度試験した。2s。回復値は、高い剪断応力にかけた後、0.1s−1でのプラトー粘度のパーセントとして計算した。回復値は、プラトー値の90%まで粘度を回復するためにペースト組成物がかかった時間の量である。ペースト1〜3および8の剪断応力回復値は、以下の表8および図1に示される。
【0155】
ペースト1〜3および8の回復時間
【0156】
【表8】
【0157】
業界標準スクリーン(325メッシュ、60〜100μmの線目開き、10〜25μmの乳剤)を使用し、銀ペースト組成物1〜3および8を用いてシリコン太陽電池をスクリーン印刷した。
【0158】
ペースト1は、高融点ワックスチクソトロピー変性剤(CRAYVALLAC Super(登録商標)、主要な成分としてオクタデカンアミドワックスを含む)を含むが、高分子樹脂は含まなかった。ペースト1はチクソトロピーの速い回復示し、印刷後にグリッド線のスランピングを極小化し、スクリーン印刷が可能であった。しかし、樹脂の欠如のために、製造中に粒子成分の分散が困難になり、線が崩れるなどの印刷上の問題が生じた。
【0159】
高融点ワックスチクソトロピー変性剤としてCRAYVALLAC Super(登録商標)も含有するペースト2および8は、エチルセルロース樹脂を含んでいた。ペースト2および8はまた、速いチクソトロピーの回復を示し、印刷後グリッド線のスランピングを極小化した。ペースト2および8を使用する、印刷された特徴は、公称のスクリーン目開きより10%以下大きい印刷線幅を示し、印刷線は、図2Aおよび2Bに示されるような0.4を超えるアスペクト比(線高/線幅)を有していた。印刷したこれらのペーストは、線の崩れなどの欠陥が減少し、製造中に粒子成分の分散に困難はなかった。
【0160】
高融点ワックスチクソトロピー変性剤としてCRAYVALLAC Super(登録商標)およびまたエチルセルロース樹脂を含有するペースト3は、不十分な回復時間を示し、そのため、図3Aおよび3Bに示されるように、公称のスクリーン目開きより50%超広い、0.2未満のアスペクト比(高さ/幅)の印刷線になった。チクソトロピー剤の量は、樹脂の量に対して低すぎ、その結果、低いSTIおよび長い回復時間のペーストになり、線スランピングおよびグリッド線幅の増加をもたらしたと考えられる。エチルセルロース樹脂の量を減少させつつ(0.45重量%から0.04重量%に)ペースト中の高融点ワックスチクソトロピー変性剤の量を増加させる(0.4重量%から0.67重量%に)と、STIが著しく増し、速いチクソトロピーの回復を示し、印刷後グリッド線のスランピングを極小化した。
【0161】
弾性率
ペーストの弾性率は、応力が印加された後、元の粘度へ復帰する能力を表し、応力と歪の比率によって表される。温度の関数としての弾性率測定の結果は、図4に示される。その結果は、少なくともチクソトロープ剤の融点までペーストがその粘度を保持する(温度に対する弾性率の保持によって証拠づけられる)ことを示す。高融点ワックスチクソトロピー変性剤としてCRAYVALLAC Super(登録商標)を含むペースト4は、他のチクソトロピー変性剤(ペースト5〜7)に基づくペーストより高温で高い弾性率を維持し、そのため印刷された特徴のより速い回復時間および線広がりの減少をもたらす。
【0162】
B.太陽電池の性能特性
太陽電池の前側の金属化に使用される場合、厚膜ペースト組成物の特質および効率を求めるために光起電力(PV)電池試験を行った。太陽電池のI−V曲線を測定し、性能パラメーターは、連続ビームを使用するSolar Cell I−V Tester Model IV16 (PV Measurements, Inc., Boulder, CO)によって求めた。
【0163】
ペースト2および8をI−V Testerで試験した。各銀ペースト組成物は、5インチの単結晶ウエハー上で70%を超える曲線因子および15.5%を超える効率を達成した。曲線因子は、実際に入手可能な最大出力と開放電圧と短絡電流の積の比である。ペースト2および8は、70%を超える曲線因子を達成することができたという点で典型的な市販太陽電池に匹敵する。ペースト2および8は太陽電池の前側の金属化に好ましいペーストである。
【0164】
本発明は、その好ましい実施形態を含めて詳細に記載されているが、当業者によって理解されるようにより広く適用可能である。当業者が本開示を考察すれば、本発明の範囲および趣旨内にある、本発明の変形および/または改善をなし得ることは理解されよう。変形が当業者にとって明らかであるので、本発明は以下のクレームの範囲によってのみ限定されることが意図される。
図2A
図2B
図3A
図3B
図1
図4
図5
図6