特許第5934346号(P5934346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934346
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ノズルユニット
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/08 20060101AFI20160602BHJP
   D01D 4/00 20060101ALI20160602BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20160602BHJP
   C22C 1/10 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C03B37/08
   D01D4/00 B
   C22C5/04
   C22C1/10 J
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-509711(P2014-509711)
(86)(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公表番号】特表2015-502308(P2015-502308A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012058459
(87)【国際公開番号】WO2012152794
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】11165372.1
(32)【優先日】2011年5月9日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/457,688
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・ジンガー
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03150225(US,A)
【文献】 国際公開第2011/050965(WO,A1)
【文献】 特開平08−217483(JP,A)
【文献】 特開2003−261350(JP,A)
【文献】 特開2002−012926(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0227195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクから折り曲げられた、溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングであって、ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながり、フランジがそれぞれ一体でつながった直立側壁および直立端部壁とを有し、前記一体ブランクは、前記ブッシングの展開図と合致し、前記ベースプレート、側壁、端部壁、およびフランジのための領域を有し、隣接する前記フランジが共に溶接されるように構成される、ブッシング。
【請求項2】
側壁は、隅部でそれぞれ前記一体ブランクの端部壁につなげられる、請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記一体ブランクの側壁および端部壁は、単に前記ベースプレートで互いにつなげられる、請求項1に記載のブッシング。
【請求項4】
折り曲げ可能な貴金属平材料からなる前記一体ブランクは、様々な領域に様々な厚さを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項5】
互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジは共に溶接される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項6】
互いに隣接し、溶接によって連結される部分は、前記溶接箇所の厚さが同じである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項7】
前記フランジおよび前記側壁と一体でつながるカバープレートを備え、前記カバープレートは前記側壁と前記フランジとの間に配置される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項8】
前記貴金属は、PtAu5、PtIr1、PtRh5、PtRh10、PtRh20、PtIr3、PtIr5、純プラチナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項9】
前記貴金属は、酸化物分散強化(ODS)貴金属である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項10】
前記貴金属は、1つまたは複数の酸化物により強化された酸化物分散強化(ODS)貴金属である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項11】
溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングを作製する方法であって、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、前記ブッシングの前記展開図に合致する一体ブランクを作製するステップと、
− 前記一体ブランクを折り曲げるステップと、
− 隣接する前記フランジが共に溶接されるように構成され、ベースプレートに一体でつながったフランジを提供するステップと、
いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含み、
前記ブッシングの前記展開図は、溶接部が、前記ブッシングの、最も大きい機械的負荷がかかる部分から、より小さい負荷がかかる部分に再配置されるように考案される、方法。
【請求項12】
溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングを作製する方法であって、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、前記ブッシングの前記展開図に合致する複数のブランクを作製するステップと
− 前記ブランクを折り曲げ、強制的に連結するステップと、
− 隣接する前記フランジが共に溶接されるように構成され、ベースプレートに一体でつながったフランジを提供するステップと、
いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含み、
前記ブッシングの前記展開図は、溶接部が、前記ブッシングの、最も大きい機械的負荷がかかる部分から、より小さい負荷がかかる部分に再配置されるように考案される、方法。
【請求項13】
さらなる方法ステップにおいて、増設要素が前記ブッシングに取り付けられる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記増加要素が給電装置または支持もしくは補強部片である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記増加要素が給電装置および支持もしくは補強部片である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
様々な厚さの領域を作るために、前記一体ブランクの材料を除去するステップを含む、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ビードを取り付けるステップを含む、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項18】
溶接によって前記強制連結部を封止するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ブッシングの展開図に合致し、ブッシングを作成するのに適した、折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクであって、ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながった側壁および端部壁と、さらに、それぞれ前記壁に一体でつながったフランジとのための領域を有し、隣接する前記フランジが共に溶接されるように構成される、一体ブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、ガラス繊維強化プラスチックで使用するガラス繊維、または玄武岩繊維などの鉱物繊維の製造では、ガラス用の出発原料が加熱炉で溶解され、生成された溶融物は、様々な紡糸位置に送られて、その紡糸位置において、ノズルまたは開口から出てくる。ノズルから出てきたフィラメントは引き延ばされ、空気冷却または水の散布によって冷却されて、共に1つまたは複数の繊維束を形成する。繊維束は、任意選択で所定の大きさとされ、その後、スプールに巻き付けられるか、または切断装置に送られる。この材料は、例えば、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチックの製造における断熱材料として、または熱保護材料として、さらなる加工に適する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第229 648A1号明細書は、ガラス繊維紡糸用の典型的な紡糸ノズルを示している。紡糸ノズルは、ベースプレート内に個々のノズルからなる列を有し、個々のノズルは、ノズルの端部プレート間に直線に沿って配置される。端部プレート上には独立した給電装置がある。溶融ガラスを加熱する電流が、給電装置から紡糸ノズルを流れる。
【0003】
日本特許第1333011号公報は、ガラス繊維紡糸ノズルの製造方法を示している。この場合、個々のノズルは、紡糸ノズルの下加工した穴内のプラチナシムを用いて、作製済みの個々の円錐形ノズルに溶接することで紡糸ノズルに取り付けられる。この場合に、個々のノズルは、それぞれ紡糸ノズルのベースプレートを流れる加熱電流の方向に対して直角に延びる2列にまとめられる。
【0004】
特開平02−006350号公報は、紡糸炉用の、単一の金属ストリップから部分的に折り重ねられたノズルボートを示している。
【0005】
特開2008−044801号公報は、ベースプレートの側部が側壁のまわりに曲げられて溶接されたブッシングを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第229 648A1号明細書
【特許文献2】日本特許第1333011号公報
【特許文献3】特開平02−006350号公報
【特許文献4】特開2008−044801号公報
【特許文献5】欧州特許第1268353号明細書
【特許文献6】欧州特許第1441993号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102009051067号明細書
【特許文献8】欧州特許第1781830号明細書
【特許文献9】欧州特許第1295954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記装置の使用時に様々な問題が起こる。
【0008】
頻繁に起こる問題として、紡糸ノズル装置の寿命の短さがある。ノズルまたは開口を設けられるベースプレートは、通常、平面図において長方形であり、4つの側縁部が、長方形の本体およびベースプレートに対向する側壁および端部壁に直接溶接される。重い溶融材料との長期にわたる接触により、大きな曲げ応力が長期にわたってベースプレートに作用するために、時間依存性の塑性変形、すなわちクリープによる曲がり(「たるみ」)が生じる。この曲がりが熱分布を不均一にするので、この曲がりにより損傷を受けるだけでなく、溶接部に機械的な負荷が作用する結果として寿命が短くなる。機械的な負荷は、高い温度と共に金属組織の変化および変形をもたらし、この変形により、特に、溶接部に大きな負荷がかかる。
【0009】
したがって、多くの場合、酸化物を分散させた貴金属が、ノズルユニットを製造する材料として使用される。しかし、融接は、微細に分散した酸化物粒子を凝集させるので、溶接部が周囲の材料よりも構造的に弱くなる。
【0010】
したがって、目的は、これらの欠点を有しないノズルユニット(ブッシングとして公知)を提供することとした。この目的は、溶接を可能な限り回避したブッシングによって達成される。このために、対応するブッシングの展開図が作成され、貴金属の一体ブランクが展開図から作製され、折り曲げられる。続いて、必要に応じて、ブッシングのエッジが封止する態様で溶接される。このようにして、ブッシングの製造時に溶接を回避することも、展開図を巧みに作成して、ほとんど負荷のかからない領域に溶接部を再配置することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクから折り曲げられた、溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングであって、ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながり、フランジがそれぞれ一体でつながった直立側壁および直立端部壁とを有し、一体ブランクはブッシングの展開図と合致し、ベースプレート、側壁、端部壁、およびフランジのための領域を有し、任意選択で、隣接する壁が溶接される、ブッシング。
【0012】
2.側壁は、隅部でそれぞれ一体ブランクの端部壁につなげられる、第1項に記載のブッシング。
【0013】
3.一体ブランクの側壁および端部壁は、単にベースプレートで互いにつなげられる、第1項に記載のブッシング。
【0014】
4.折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクは、様々な領域に様々な厚さを有する、第1〜3項一項以上によるブッシング。
【0015】
5.互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジは共に溶接される、第1〜4項の一項以上によるブッシング。
【0016】
6.互いに隣接し、溶接によって連結される部分は、溶接箇所の厚さが同じである、第1〜5項の一項以上によるブッシング。
【0017】
7.側壁、端部壁、ベースプレート、またはこれらのいくつかはビードを有する、第1〜6項の一項以上によるブッシング。
【0018】
8.フランジおよび側壁と一体でつながるカバープレートは、側壁とフランジとの間に配置される、第1〜6項の一項以上によるブッシング。
【0019】
9.貴金属は、金、イリジウム、プラチナ、ロジウム、およびそれらの合金からなる群から選択される、第1〜7項の一項以上によるブッシング。
【0020】
10.貴金属は、PtAu5、PtIr1、PtRh5、PtRh10、PtRh20、PtIr3、PtIr5、純プラチナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、第1〜8項の一項以上によるブッシング。
【0021】
11.貴金属は、酸化物分散強化(ODS)貴金属である、第1〜8項の一項以上によるブッシング。
【0022】
12.貴金属は、1つまたは複数の酸化物、特に、イットリウム酸化物および/またはジルコニウム酸化物によって強化された酸化物分散強化(ODS)貴金属である、第1〜8項の一項以上によるブッシング。
【0023】
13.溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングを作製する方法であって、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に合致する一体ブランクを作製するステップと、
− 様々な厚さの領域を作るために、任意選択で、一体ブランクの材料を除去するステップと、
− 任意選択でビードを取り付けるステップと、
− 一体ブランクを折り曲げるステップと、
− 任意選択で、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含む方法。
【0024】
14.溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングを作製する方法であって、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に合致する複数のブランクを作製するステップと、
− 様々な厚さの領域を作るために、任意選択で、ブランクの材料を除去するステップと、
− 任意選択でビードを取り付けるステップと、
− ブランクを折り曲げ、強制的に連結するステップと、
− 任意選択で、強制連結部を全面的にまたは部分的に溶接するステップと、
− 任意選択で、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含む方法。
【0025】
15.ブランクの強制的な連結は、縁取りまたは縁曲げによって行われる、第14項による方法。
【0026】
16.折り曲げは、縁曲げまたは3点曲げで行われる、第13〜15項の一項以上による方法。
【0027】
17.一体ブランクの作製および/または材料の除去は、フライス加工、水ジェット切断、レーザカット、打抜き、切削、鋸挽き、平削り、研削、またはそれらの組み合わせで行われる、第13〜16項の一項以上による方法。
【0028】
18.さらなる方法ステップでは、増設要素、特に、給電装置および/または支持もしくは補強部片がブッシングに取り付けられる、第13〜17項の一項以上による方法。
【0029】
19.ブッシングの展開図に合致し、ブッシングを作製するのに適する、折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクであって、ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながった側壁および端部壁と、さらに、それぞれ前記壁に一体でつながったフランジとのための領域を有する、一体ブランク。
【0030】
20.溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングの溶接位置をチェックする方法であって、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に全体として合致する1つまたは複数のブランクを作製するステップと、
− 様々な厚さの領域を作るために、任意選択で、ブランクの材料を除去するステップと、
− 任意選択でビードを取り付けるステップと、
− ブランクを折り曲げ、強制的に連結するステップと、
− 任意選択で、強制連結部を全面的にまたは部分的に溶接するステップと、
− 任意選択で、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含み、
ブッシングの展開図は、溶接部が、ブッシングの、最も大きい機械的な負荷がかかる部分から、より小さい負荷がかかる部分に再配置されるように考案される、方法。
【0031】
21.溶接部は、同一平面内で互いに接する、または重ねた2つの金属板が溶接されるように構成される、第20項による方法。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ブッシングと、このブッシングの一体ブランクの図面とを示している。
図2】別のブッシングと、そのブッシングの一体ブランクの図面とを示している。
図3a】別のブッシングを示している。
図3b】ブッシングの一体ブランクの図面を示している。
図3c】隅部の代替実施形態を示している。
図3d】隅部の代替実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本特許出願は、鉱物繊維を製造するための新規のブッシング、ならびに前記ブッシングおよびブッシングを作製するための中間物を作製するための方法に関する。ブッシングの作製において、貴金属の金属板が使用され、ブッシングの一部は、打抜き、鋸挽き、または何らかの他の方法で貴金属板から除去され、溶接によって互いに連結される。この場合に、溶接部は脆弱箇所に相当する。これは、特に、酸化物分散貴金属の場合に当てはまり、その理由は、融接時に分散物が凝集し、溶接部はもはや分散した酸化物を有さず、結果として、溶接部の材料と他の材料との間で材料特性に大きな違いがあるからである。これらの欠点は、作製されるブッシングの展開図(板金の形態)を作成することで、本発明により解決される。この展開図は、折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に合致する一体ブランクを作製するのに役立つ。ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながり、フランジがそれぞれ一体でつながった直立側壁および直立端部壁とを有し、ブッシングの展開図と合致し、ブッシングを作製するのに適した、折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクも本発明の主題である。
【0034】
得られたブランクはさらに加工することができる。例えば、開口または排出ノズルをベースプレートに取り付けることも、例えば、厚さが異なる領域を作る、不正確さをなくす、または表面もしくはエッジを再加工するために、任意選択で、材料を除去することもできる。続いて、ブランクは、仕上がったブッシングを補強するために、ビード、あるいは折り曲げ部を設けることができる。この再加工の完了後、こうして用意されたブランクは、折り曲げるか、または曲げられ、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジが共に溶接される。折り曲げは、特に、縁曲げ、または3点曲げによって行うことができる。
【0035】
一体ブランクを作製する、かつ/または材料を除去するために、通常、フライス加工、水ジェット切断、レーザカット、打抜き、切削、鋸挽き、平削り、研削、またはそれらの組み合わせなどの方法が使用される。一体ブランクを作製するために、フライス加工、水ジェット切断、レーザカット、打抜き、切削、鋸挽き、およびそれらの組み合わせを特に使用することができる。材料を除去するために、通常、平削り、研削、またはフライス加工を使用することができる。溶接は、例えば、電子ビーム溶接、レーザ溶接、またはTIG(タングステン不活性ガス)溶接などの任意の適切な方法で行うことができる。
【0036】
続いて、さらなる方法ステップで、給電装置、支持部片、保持部片、または補強部片などの増設要素をブッシングに取り付けることができる。適切な給電装置は、例えば、欧州特許第1268353号明細書およびそこで示された明細書に記載されている。補強部片および保持部片の例は、欧州特許第1441993号明細書およびそこで示された文献に記載されている。
【0037】
ブッシングがより複雑な場合に、ブッシングが展開図に展開できなくても、または一体ブランクの折り曲げが不可能な形でしか展開できなくても、本発明の手順は、それでもなお、相応して複数のブランクを作製し、それらのブランクを上記の方法で加工し、次いで、溶接が封止のためだけに必要とされるように、またはブッシングの中の応力が小さい領域、すなわち、ほとんど機械的負荷がかからない領域に溶接部を再配置できるように、材料を接合する態様で(例えば、縁取りまたは縁曲げによって)ブランクを互いに連結することにより、ある種の成功の見込みをもって適用することができる。したがって、本発明はまた、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に全体として合致する複数のブランクを作製するステップと、
− 様々な厚さの領域を作るために、任意選択で、ブランクの材料を除去するステップと、
− 任意選択でビードを取り付けるステップと、
− ブランクを折り曲げ、強制的に連結するステップと、
− 任意選択で、強制連結部を全面的にまたは部分的に溶接するステップと、
−任意選択で、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含む、溶融鉱物材料から繊維を製造するためのブッシングを作製する方法に関する。
【0038】
ブランクの強制的な連結は、例えば、縁取りまたは縁曲げによって行うことができる。さらなるステップでは、強制連結部は、任意選択で、全面的なまたは部分的な溶接によって封止または固定することができる、すなわち、強制連結部は、材料を接合して連結することができる。特に、強制連結部の封止は溶接によって行うことができる。溶接部が、ブッシングの中の最も大きい機械的負荷がかかる箇所に設けられるのではなくて、より小さい機械的負荷がかかる部分に再配置されるのも、この手順によって保証することができる。したがって、例えば、エッジでの溶接、すなわち、ブッシングの中の2つの平坦な金属板が角度をなして接触する箇所での溶接は、平坦な領域に移動することができる。これには、例えば、1つの平面内でエッジが互いに溶接される、互いに接する2つの金属板があり得るし、あるいは金属板は平行な平面で重なり、互いに溶接される。方法のこの変形型の場合、その他の点では、一体ブランクを使用するときと同じ手順が用いられる。この手順は、ブッシングの溶接部の位置がチェックされるのを可能にする。したがって、本特許出願はまた、
− 作製するブッシングの展開図を作成するステップと、
− 折り曲げ可能な貴金属平材料から、ブッシングの展開図に全体として合致する1つまたは複数のブランクを作製するステップと、
− 様々な厚さの領域を作るために、任意選択で、ブランクの材料を除去するステップと、
− 任意選択でビードを取り付けるステップと、
− ブランクを折り曲げ、強制的に連結するステップと、
−任意選択で、溶接によって強制連結部を封止するステップと、
−任意選択で、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジのエッジを共に溶接するステップと、
を含み、
ブッシングの展開図は、溶接部が、ブッシングの、最も大きい機械的負荷がかかる部分から、より小さい負荷がかかる部分に再配置されるように考案される、溶融鉱物材料から繊維を製造するためのブッシングの溶接位置をチェックする方法に関する。
【0039】
本発明はまた、折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクから折り曲げることができる、溶融鉱物材料で繊維を製造するためのブッシングであって、ベースプレートと、前記ベースプレートに一体でつながり、フランジがそれぞれ一体でつながった直立側壁および直立端部壁とを有するブッシングに関する。「一体で」とは、本発明において、ブランクが1つの部片から加工され、例えば、溶接によって、複数の個別の部片から組み立てられていないことを意味すると理解されたい。「一体でつながった」という表現は、ここでは、ブッシングの各部分が1つの部片から加工され、側壁、端部壁、カバープレート、およびフランジを曲げることで、展開図に従ったブッシングの形態を得ることができるように互いに連結されることを意味すると理解されたい。側壁およびベースプレートの形態は通常長方形であるが、他の形態も考えられる。
【0040】
端部壁も長方形または正方形の形態とすることができる。ただし、端部壁が三角形、台形、または1つまたは2つの長方形が取り付けられた台形の形態を有するブッシングも存在する。そのような端部壁を有するブッシングの断面が、例えば、独国特許出願公開第102009051067号明細書に示されている。これは、より多数の排出ノズルを有するより大きなベースプレートを得ることができるという利点を有する。この場合に、側壁とフランジとの間に、前記壁およびフランジと一体でつながったカバープレートがさらに配置される。排出ノズルは、単純な穴もしくは開口として、またはそのような穴に固定されたノズル挿入体により構成することができる。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、側壁および端部壁は、単にベースプレートによって互いに連結されるだけである。この場合に、側壁および端部壁を上方に曲げ、隣接するエッジにおいて封止する態様で溶接することができる。
【0042】
本発明のさらに特定の実施形態では、図3に示すように、側壁は、隅部により、それぞれ端部壁に連結されている。端部壁および側壁が上方に曲げられた場合、隅部は折り畳まれ、ブッシングの外側、または特に内側に突出し、必要なら、端部壁または側壁に重ねることもできる。これは、溶接が、側壁と端部壁との間でもはや必要とされないという利点を有する。端部壁が、例えば、上方または下方に長方形が付属する台形の形態を有する場合も同様の手順を用いることができる。この場合に、増設した隅部はまた、端部壁とカバープレートとの間に一体でつながることができるので、溶接は、カバープレートと端部壁との間にももはや必要とされない。ただし、そのような場合に、ベースプレートに対して実質的に平行に配置された、折り畳んだ隅部の上方に開いたエッジを封止する態様で共に溶接するのが好ましい。このようにして、端部壁と側壁との間の隅部にあって機械的負荷がかかる溶接部は、溶接を行う必要がないか、またはほとんど負荷がかからない溶接部しか必要とされないように再配置することができ、これは、ブッシングの寿命を延ばす、または貴金属のより薄い平材料が使用されるという点で、貴金属を節減するために使用することもできる。
【0043】
代替の実施形態では、隅部は端部壁および側壁に連結されるのではなくて、端部壁または側壁だけに連結され、次いで、端部壁、側壁、およびベースプレートによって形成される空洞内に配置されるように折り曲げられ、次いで、隅部は、側壁に連結されている場合に端部壁に重ねることができ、または端部壁に連結されている場合に側壁に重ねることができ、ブッシングを封止するために、隅部のエッジに溶接を施すことができる。この場合もまた、溶接部は、ほとんど負荷がかからない位置に再配置される。
【0044】
さらに特定の実施形態では、溶接部はまた、隅部から側壁または端部壁の領域に再配置することができて、金属板の端部が互いに接して溶接される。このために、ブッシングの展開図は、端部壁または側壁が拡張され、隣接する側壁または端部壁が相応して縮小され、かつ/または端部壁または側壁の拡張された部分が挿入される隙間を設けられるように形成されて、平材料のブランクからのブッシングの折り曲げ時に、側壁と端部壁との間の隅部が折り曲げられ、互いに隣接する端部壁および側壁の板金エッジが1つの平面内で接触する。この実施形態の変形型は、側壁および端部壁を互いに連結しない隅部を設け、代わりとして、エッジが上記のように1つの平面内で互いに接するように、隅部をそれぞれ相補的な側壁または端部壁の対応する隙間に取り付けることである。続いて、この方法で形成された継ぎ目が溶接によって封止される。そのような方法で進めることには、溶接部が、より小さい負荷がかかるブッシングの一部の部分に再配置されるという効果がある。
【0045】
本発明のさらなる実施形態では、折り曲げ可能な貴金属平材料からなる一体ブランクは、様々な領域に様々な厚さを有する。これは、一方で、構造的に補強するのに役立つことができ、他方で、この手順はまた、互いに隣接し、共に溶接される部分が常に同じ厚さを有することを保証するために選択することができる。この方法では、互いに隣接する側壁、端部壁、またはフランジは共に溶接することができ、互いに隣接し、溶接によって連結される部分は溶接箇所で同じ厚さを有する。
【0046】
補強するために、これらのブッシングの場合、先行技術のブッシングの場合と同様に、側壁、端部壁、ベースプレート、またはこれらのいくつかは、一般的にブッシングを補強するのに役立つビードを有することができる。
【0047】
本発明のブッシングは、溶融ガラスの高い温度および高い腐食性に対処するために、貴金属の平材料から作製される。さらなる特定の実施形態では、貴金属は、金、イリジウム、プラチナ、ロジウム、およびそれらの合金からなる群から選択される。貴金属の平材料が特に適しており、貴金属は、PtAu5、PtIr1、PtRh5、PtRh10、PtRh20、PtIr3、PtIr5、純プラチナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。酸化物分散強化(ODS)貴金属が特によく適する。この場合に、貴金属は、1つまたは複数の酸化物、特に、イットリウム酸化物および/またはジルコニウム酸化物によって強化された酸化物分散強化(ODS)貴金属であることが多い。そのような材料は原理的には公知であり、例えば、欧州特許第1781830号明細書または欧州特許第1295954号明細書に記載された方法から得ることができる。
【0048】
図1は、ブッシングと、このブッシングの一体ブランクの図面とを示している。ブッシングは、排出ノズルを設けられたベースプレート101を有し、これらの排出ノズルはブランクの図面ではまだ取り付けられていない。側壁102は、ブッシングの最終形態において、強化ビード106を有し、側壁102は、長方形の端部壁103により良好に溶接するために、同じ厚さを有する厚い部分105を有する。側壁102および端部壁103上にフランジ104が配置されている。一体ブランクの図面は、曲げ線109も示している。別々に溶接しなければならない給電装置、保持部片、または補強部片は、図1に示されていない。
【0049】
図2は、別のブッシングと、そのブッシングの一体ブランクの図面とを示している。ブッシングは、排出ノズルを設けられたベースプレート201を有し、これらの排出ノズルはブランクの図面ではまだ取り付けられていない。端部壁203は台形の形態を有する。側壁202には、側壁の厚い部分205が設けられ、この厚い部分は、周縁に延びるように構成され、したがって、厚さが変化するエッジは、側壁202の領域内に再配置されている。側壁の厚い部分205は、台形の端部壁203と同じ厚さを有する。側壁202および端部壁203上にフランジ204が配置されている。
【0050】
図3aは、別のブッシングを示し、3bではブッシングの一体ブランクの図面を示している。ブッシングはベースプレート301を有する。排出ノズルは、図3a〜3dでは取り付けられていない。端部壁303および側壁302は長方形であるが、大きさが異なる。フランジ304が、端部壁303および側壁302に取り付けられている。端部壁303および側壁302は、隅部307によって互いに連結され、隅部307は、2つの曲げ線309によって2つの三角パネルに分けられている。隅部の代替実施形態が図3cおよび図3dに示されている。
【0051】
図3cでは、隅部307を形成する2つの三角形隅部310、311は直角部を有さず、不規則三角形として形成されている。図3bと対照してみると、側壁302および端部壁303を限定する隅部307の曲げ線間の角度は90°未満であり、そのため、ブッシングの曲げ時に、側壁302および端部壁303は、ベースプレート301と鈍角をなす。
【0052】
図3dでは、端部壁303は隅部307を設けられ、この隅部307は単に三角パネル310からなる。隅部307は、側壁302に連結されていないので、曲げ後、隅部307はブッシングの内側に配置される。このように、その後の溶接時に、溶接部は、側壁302の内側に再配置され、隅に配置されない。
【0053】
本特許出願で提示した文献およびその文献で示された明細書が参照され、それにより、これらの文献および明細書は、本開示の構成要素として本特許出願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0054】
101 ベースプレート
102 側壁
103 端部壁
104 フランジ
105 側壁の厚い部分
106 補強ビード
109 曲げ線
201 ベースプレート
202 側壁
203 端部壁
204 フランジ
205 側壁の厚い部分
209 曲げ線
301 ベースプレート
302 側壁
303 端部壁
304 フランジ
307 隅部
309 曲げ線
310 三角パネル
311 三角パネル
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d