(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934369
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】把持装置またはクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-533938(P2014-533938)
(86)(22)【出願日】2012年10月8日
(65)【公表番号】特表2014-528363(P2014-528363A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012069881
(87)【国際公開番号】WO2013050604
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】202011106379.1
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506117714
【氏名又は名称】シュンク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト スパン−ウント グライフテクニック
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ドラブ ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】クアース マティアス
【審査官】
後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−212688(JP,A)
【文献】
特開昭51−124787(JP,A)
【文献】
特開昭62−015052(JP,A)
【文献】
特開2008−149402(JP,A)
【文献】
米国特許第04707013(US,A)
【文献】
実開平03−060645(JP,U)
【文献】
特開平08−247246(JP,A)
【文献】
特開2000−000790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08−15/12
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式の駆動装置(20)を有し、前記駆動装置(20)は従動シャフト(26)に設けられたピニオン(28)を駆動し、且つ前記ピニオン(28)と運動結合されたジョー案内部(80)を介して基体部分(18)に沿って移動可能であるジョー(12,14)を有する、対象物を把持またはクランプするための把持装置またはクランプ装置(10)において、
前記ジョー案内部(80)はそれぞれの前記ジョー(12,14)の間の領域に設けられた複数の軸受ローラ(42)を有しており、前記軸受ローラ(42)の回転軸がピニオン回転軸(84)に対して平行であって間隔をおいて延びるようになっているとともに、軸受ローラ42の回転軸とピニオン回転軸84は、1つの軸平面92に位置し、且つ
前記ピニオン回転軸(84)は、前記軸受ローラ(42)の回転軸の間に位置することを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
軸平面(92)は前記ジョー(12,14)の間の中心平面を形成することを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記軸受ローラ(42)の中心横平面(82)は、前記ピニオン回転軸(84)に対して垂直に延びるか、または前記ピニオン(28)の中心横平面(82)の領域に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記ピニオンと前記軸受ローラの間には前記ピニオン(28)が前記軸受ローラ(42)と接触するのを防止する保護部材(94)があることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記ジョー案内部(80)は、前記ピニオン回転軸(84)と平行に延びて互いに反対を向く2つのジョー側の案内面区域(86)と、これと協働作用する基体部分側の対応案内面(88)とを含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記案内面区域(86)と前記対応案内面(88)の間にはローラ案内部(90)が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記ローラ案内部(90)と前記軸受ローラ(42)とは、前記ジョー(12,14)と前記基体部分(18)との間に初期応力が作用し、前記ピニオン(28)がラック区域(30)と確実な機能性で噛み合うように配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記ジョー(12,14)は、ジョー本体(33)と、前記ピニオン(28)と協働作用する少なくとも1つのラック区域(30)とを含んでいることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記ラック区域(30)は前記ジョー本体(33)に対して力伝達方向で相対的に可動であり、前記ジョー本体(33)と前記ラック区域(30)の間には弾性的な可撓性を許容する緩衝部材(38)が設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記ラック区域(30)は、前記緩衝部材(38)の前記ラック区域(30)の前記ジョー本体(33)に対する力伝達方向にそって圧縮する方向の初期応力のもとで前記ジョー本体(33)に配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記緩衝部材(38)はエラストマーダンパとして、特にエラストマーブロック、エラストマーシリンダ、エラストマーボール、エラストマーリング、またはエラストマーホースとして構成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載の装置(10)。
【請求項12】
前記ジョー本体(33)に対する前記ラック区域(30)の相対的な位置を調節するための調節手段(40)が設けられていることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記ジョー本体(33)および/または前記ラック区域(33)は前記ラック区域の運動を案内するための案内区域を有していることを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式の駆動装置を有し、駆動装置は従動シャフトに設けられたピニオンを駆動し、およびピニオンと運動結合された、ジョー案内部を介して基体部分に沿って移動可能であるジョーを有する、対象物を把持またはクランプするための把持装置またはクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような種類の把持装置またはクランプ装置は、
特許文献1のような従来技術から公知である。他の把持装置またはクランプ装置としては、特許文献2及び特許文献3から公知のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US4,707,013
【特許文献2】DE3806148A1
【特許文献3】US5,184,861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような種類の把持装置またはクランプ装置を最適化し、ないしはいっそうコンパクトに構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1の構成要件を備える対象物によって
解決される。それにより、非常にコンパクトな設計形態を実現することができる。それぞれのジョーが軸受ローラを介して相互に支持されるからである。さらに、発生するせん断力も低減される。それにより、この把持装置またはクランプ装置は全体として比較的コンパクトに構成することができる。このときピニオンを有する従動シャフトは電気式の駆動装置のモータシャフトであってよく、または、電気式の駆動装置に後置された伝動装置の従動シャフトであってよい。
【0006】
このとき、互いに向かい合う2つのジョーが設けられており、ピニオンはこれらのジョーの間で中央に配置されている。それにより、それぞれのジョーが接近運動ないし離反運動をするときに同期した力を実現することができる。
【0007】
さらに、軸受ローラの回転軸とピニオン回転軸は1つの軸平面に位置することが意図されていてよい。このこともコンパクトな設計形態に寄与する。このとき軸平面は、それぞれのジョーの間の中心平面を形成するのが好ましい。このことも、少ない設計スペースで好ましい力導出につながる。
【0008】
さらに、ピニオン回転軸に対して垂直に延びる軸受ローラの中心縦平面は、ピニオンの中心横軸に位置しているか、またはその領域に位置していると好ましい。このことも、少ない設計スペースで好ましい力導出につながる。
【0009】
ピニオンと軸受ローラの間には、ピニオンが軸受ローラと接触するのを防止する保護部材があるのが好ましい。このとき保護部材はキャップ状に構成されていてよく、ピニオンを少なくとも部分的に覆う。
【0010】
さらにジョー案内部は、互いに反対を向く、ピニオン回転軸と平行に延びるジョー側の2つの案内面区域と、これと協働作用する基体部分側の対応案内面とを含んでいることが意図されるのが好ましい。したがってジョー案内部は、それぞれジョーにより形成される2つの好ましくは互いに平行に延びる面と、基体部分側の対応案内面とによって構成される。
【0011】
このとき、案内面区域と対応案内面の間にローラ案内部および好ましくは交差型ローラ案内部が設けられていると好ましい。このようなローラ案内部を介して、一方では、力を良好に伝達することができる。他方では、ジョーと基体部分との間での軽い動作での運動が可能である。このときさらにピニオンとジョーの間には、ピニオン回転軸に対して垂直に延びる力が存在していてよく、それは、軸受ローラを介しての各ジョーの相互の支持、および適当な初期応力のもとでのピニオンへの各ジョーの当接を実現するためである。このとき特にローラ案内部と軸受ローラは、ジョーが横方向に初期応力のもとで配置されるように相互に適合化される。
【0012】
ピニオンの回転運動をそれぞれのジョーの長手方向運動に変換するために、それぞれのジョーは、ジョー本体と、それぞれのピニオンと協働作用するラック区域とを含んでいることが意図されるのが好ましい。
【0013】
このとき、ラック区域はジョー本体に対して力伝達方向で相対的に可動であり、ジョー本体とそれぞれのラック区域との間には弾性的な可撓性を許容する緩衝部材が設けられていることが考えられる。それにより、同じ工作物寸法をもつ工作物が把持またはクランプされるとき、把持装置の相互に協働作用する各部分が緩衝部材に基づいて低い衝撃力しか受けず、それに伴って少ない磨耗しか受けないことを実現することができる。ジョー本体とラック区域との間の相対運動が許容されることにより、ならびに、緩衝部材が設けられていることにより、発生する衝撃力が減衰される。ジョー本体とラック区域の間に緩衝部材が設けられることに基づき、電気式の駆動装置に関わりなく緩衝が行われる。
【0014】
さらに本発明によると、ラック区域は緩衝部材の初期応力のもとでジョー本体に配置されていることが考えられる。それにより、初期応力が克服されるまではラック区域がジョー本体と同期して動くことを実現することができる。初期応力が克服されたときに初めて、ラック区域とジョー本体との間の相対運動が生じる。
【0015】
さらに緩衝部材はエラストマーダンパとして、特にエラストマーブロック、エラストマーボール、エラストマーシリンダ、エラストマーリング、またはエラストマーホースとして構成されているのが好ましい。エラストマーダンパは、たとえばジョー本体および/またはラック区域の表面に注型されていてよい。特にラック区域が少なくとも部分的にエラストマーダンパの中に注型されていることも考えられる。
【0016】
しかしながら本発明では緩衝部材はばね部材として、特にコイルばねまたは皿ばねとして構成されていてよい。同様に、緩衝部材が空気圧式または油圧式のショックアブソーバとして構成されていることも考えられる。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、ジョー本体および/またはラック区域はラック区域の運動を案内するための案内区域を有していることが意図される。それにより、ジョー本体に関してラック区域の所定の運動軌道が保証される。
【0018】
ジョー本体に対する緩衝部材および/またはラック区域の初期応力を調節するための調節手段が設けられていると、特別に好ましい。それにより、たとえばジョー本体に対して相対的なジョーの運動方向でラック区域の調整が可能となる。このとき調節は、緩衝部材の初期応力に抗して行うこともできる。たとえばそのために、相応に配置された調節ねじを利用することができる。調節ねじは、特にその自由端で直接的または間接的に、たとえば緩衝部材を介して、ラック区域に対して作用することができる。
【0019】
本発明のその他の利点や好ましい実施形態は、本発明の種々の実施形態が詳しく記述、解説される以下の説明から明らかとなる。
【0020】
図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による第1の把持装置を示す正面図である。
【
図2a】
図1のIIa線に沿って把持装置を示す断面図である。
【
図2b】
図1のIIb線に沿って把持装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面に示す把持装置10は、互いに接近および離反するように可動のクランプ区域16を含む2つのジョー12および14を含んでいる。特に
図2aと
図3に示す断面図から明らかなように、把持装置10は基体部分18に配置された駆動装置20を含んでいる。
【0023】
駆動装置20は、電動モータ21と、電動モータ21に後置された多段式のはすば歯車伝動装置24とで構成されている。そのために電動モータ21は、駆動ギヤ24と連結された駆動シャフト22を有している。駆動ギヤ24ないし駆動装置20は、クランプ手段12および14と運動結合された従動シャフト26を有している。このとき運動結合は、従動シャフト26に設けられたピニオン28と、ラック区域30の形態のジョー側の力伝動区域とで構成されている。
図2aに示す断面図から明らかなように、互いに向かい合う2つのラック区域30が設けられている。このときピニオン28はそれぞれのラック区域30の間の中央に配置されており、両方のラック区域30と噛み合っている。
【0024】
同じく
図2aから明らかなように、各々のジョー12,14はジョー本体33とラック区域30とで構成されている。このときラック区域30は、それぞれのクランプ部材12,14の運動方向に対して横向きに延びる、互いに向かい合う2つの短辺32をそれぞれ有している。さらにラック区域30は、それぞれのジョー本体33のポケット状の切欠き34の中にそれぞれ配置されている。長手方向では、これらの切欠き34は支持区域36によって区切られている。ジョー側の支持区域36とラック区域30ないしその短辺32との間には、エラストマーシリンダまたはエラストマーボールの形態の緩衝部材38がそれぞれ設けられている。緩衝部材38が設けられていることに基づき、ラック区域30がジョー本体33に対して力伝達方向へ弾性的に可撓にスライド可能なように配置されることが実現される。それにより、ジョー12,14を介して把持装置10へ導入される衝撃力が、緩衝部材38によって減衰されることを実現することができる。それにより、全体として磨耗が低減される。
【0025】
ラック区域30は、緩衝部材38が設けられることで、ジョー12,14の運動方向に初期応力のもとでジョー本体33に配置されている。このときジョー12,14は、駆動装置20により生成される力を把持されるべき対象物に向かって伝達するための力伝達部材を構成する。
【0026】
同じく特に
図2aから明らかなように、ジョー本体33の支持区域36には運動方向に調節可能な調節ねじ40が設けられており、これらの調節ねじは、ラック区域30の互いに向かい合う側面の間に設けられた軸受ローラ42のための、特にニードル軸受ローラのためのワッシャの形態で、軸方向のストッパ43を形成している。さらに、調節ねじ40を介して、ジョー本体33に関するラック区域30の相対的な位置を調節可能であることが考えられる。それにより、一方では製造公差を補償することができる。さらに、クランプ手段12,14のそのつどのストローク最終位置を限定的に調整することができる。
【0027】
ピニオン28と軸受ローラ42の間には、ピニオン28が軸受ローラ42と接触するのを防止する、キャップ状に構成された保護部材94が存在している。
図3から明らかなように、保護部材94はキャップのようにピニオン28の上に装着されて、これをその上面で覆う。保護部材はラック区域30のほうを向く側で開いており、それにより、ピニオン28がラック区域30と協働作用することができる。
【0028】
ジョー本体33に関してラック区域30の運動案内をするために、図面には見ることができない相応の案内部が設けられている。さらに、ボール形の緩衝部材38をラック区域30の短辺32で正確な位置に配置するために、テーパ状の切欠きが設けられている。
【0029】
把持プロセスのとき、ジョー12,14ないしそのクランプ区域16が把持されるべき対象物に当たると、クランプ手段12,14の速度や駆動装置20の駆動力に応じて、把持装置10の内部で衝撃力が発生する。ジョー本体33とラック区域30の間に緩衝部材38を設けることで、このような衝撃力を減衰することができる。
【0030】
特に
図2aおよび
図2bの断面図から明らかなように、ジョーは、ジョー案内部80により、基体部分18に沿って運動方向に案内される。ジョー案内部80は、互いに反対を向く2つのジョー側の案内区域86と、これと協働作用する基体部分側の対応案内面88とを含んでいる。特に
図2bに示す断面図から明らかなように、案内区域86と対応案内面88の間には交差型ローラ90が設けられている。このとき交差型ローラ90はそれぞれ平行に延びる2本の線に沿って、ジョー12および14の運動方向に沿って配置されている。すでに述べたとおり、ジョー12,14の間には軸受ローラ42が設けられている。このとき交差型ローラ90と軸受ローラ42は、ジョー12,14が横方向で初期応力のもとで、対応案内面88を意図している基体部分18の各区域の間に配置されるように、相互に適合化されている。さらに、ピニオン28がラック区域30と確実な機能性で噛み合うことが保証される。
【0031】
さらに、ジョー案内部80の軸受ローラ42は、軸受ローラの回転軸がピニオン回転軸84と平行に延びるように配置されていることが明らかである。このとき軸受ローラ42の回転軸とピニオン回転軸84は、
図2aに見られる軸平面92に位置しており、軸平面92はジョー12,14の間の中心平面を形成している。
【0032】
特に
図2bに示す断面図から明らかなように、軸受ローラ42の中心横平面はピニオン28の中心横平面82に位置している。ピニオン28の中心横平面82は、ピニオン28ないし従動シャフト26の回転軸84に対して垂直に延びている。このとき、さらに中心横平面82は、それぞれ1本の線に沿って設けられた交差型ローラ90の間でピニオン回転軸84に対して垂直に延びている。それにより、ジョー案内部80とピニオン28ないしラック区域30との間では、実質的に、平面82に位置していてピニオン回転軸84の方向に延びる力成分を有さない力だけが伝達されることが実現される。それによって装置10を比較的コンパクトに設計することができ、それにもかかわらず、比較的高い力を伝達することができる。