特許第5934390号(P5934390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934390硫黄含有ガスストリーム中のΝOx排出物を制御するための選択触媒還元システム及びプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934390
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】硫黄含有ガスストリーム中のΝOx排出物を制御するための選択触媒還元システム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20160602BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160602BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20160602BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160602BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20160602BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20160602BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01D53/86 228
   B01D53/94 222
   B01D53/94 228
   B01J23/652 AZAB
   B01J35/04 301L
   F01D25/30 B
   F02C6/00 E
   F02C7/00 B
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-556797(P2014-556797)
(86)(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公表番号】特表2015-508019(P2015-508019A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013025723
(87)【国際公開番号】WO2013122924
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】61/598,010
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/453,013
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー・ソボレフスキー
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−293385(JP,A)
【文献】 特開平03−221147(JP,A)
【文献】 特表2011−520600(JP,A)
【文献】 特開平05−146634(JP,A)
【文献】 特表2008−529787(JP,A)
【文献】 特開平11−226360(JP,A)
【文献】 特開平08−103633(JP,A)
【文献】 特表2010−524677(JP,A)
【文献】 特開2009−056459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/96
B01J 21/00−38/74
F01N 3/00,3/02
3/04− 3/38
9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア、窒素酸化物(NO)、SO及び水を含むガスストリームにおける、アンモニア塩形成の効果的抑制を伴う窒素酸化物(NO)の選択触媒還元のための方法であって、
第1量のタングステンを含む還元のみの触媒部分を備える触媒ベッド上に前記ガスストリームを通過させることで、アンモニアによってNOを還元するステップと、
前記触媒ベッドにおいて前記還元のみの触媒部分の下流にある還元プラス酸化触媒部分上に前記ガスストリームを通過させることで、同時にNOをさらに還元しながら残存するアンモニアを酸化するステップであって、前記還元プラス酸化触媒部分は前記第1量のタングステンよりも多い第2量のタングステンを含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記還元のみの触媒部分及び前記還元プラス酸化触媒部分はそれぞれ、五酸化バナジウム及び二酸化チタンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元プラス酸化触媒部分はさらに、酸化反応を促進するのに効果的な少なくとも1つのある量の白金族金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2量のタングステンは、前記第1量のタングステンよりも、前記触媒ベッドの2−8wt.%多い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2量のタングステンは、前記第1量のタングステンよりも、前記触媒ベッドの3−6wt.%多い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1量のタングステン及び前記第2量のタングステンの全量は、前記触媒ベッドの12−38wt.%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元プラス酸化触媒部分におけるタングステンの全量は、前記触媒ベッドの10−16wt.%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記還元プラス酸化触媒部分に対する前記還元のみの触媒部分の比率は、前記触媒ベッドの60:40(vol.%)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒ベッドが共通のモノリス基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガスストリームは、10−25vol.%の水、5−18vol.%のO及び5−20ppmのSOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1量のタングステン及び前記第2量のタングステンは、酸化タングステンで提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ガスタービンの排ガスストリームの流路に前記触媒ベッドを取り付けるステップであって、前記排ガスストリームは、NO、CO、炭化水素、HO、O及びSOを含む、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ガスタービンに対して水素含有燃料を合成するガス化複合発電(IGCC)プラントにおけるガスタービンの排ガスストリームの流路に、前記触媒ベッドを取り付けるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
少なくともアンモニア、窒素酸化物(NO)、SO及び水を含むガスストリームにおける、アンモニア塩形成の効果的抑制を伴う窒素酸化物(NO)の選択触媒還元のための触媒ベッドであって、
前記ガスストリーム中のNOを還元するための、第1量のタングステンを含む還元のみの触媒部分と、
同時にNOをさらに還元しながら残存するアンモニアを酸化するための、前記触媒ベッドにおいて前記還元のみの触媒部分の下流にある還元プラス酸化触媒部分であって、前記第1量のタングステンよりも多い第2量のタングステンを含む、還元プラス酸化触媒部分と、
を含む触媒ベッド。
【請求項15】
前記還元プラス酸化触媒部分はさらに、酸化反応を促進するのに効果的な少なくとも1つのある量の白金族金属を含み、前記第2量のタングステンは、前記第1量のタングステンよりも、前記触媒ベッドの2−8wt.%多い、請求項14に記載の触媒ベッド。
【請求項16】
前記第2量のタングステンは、前記第1量のタングステンよりも、前記触媒ベッドの3−6wt.%多い、請求項14に記載の触媒ベッド。
【請求項17】
前記第1量及び前記第2量のタングステンは、酸化タングステンに由来する、請求項16に記載の触媒ベッド。
【請求項18】
前記第1量のタングステン及び前記第2量のタングステンの全量は、前記触媒ベッドの12−38wt.%である、請求項14に記載の触媒ベッド。
【請求項19】
前記還元プラス酸化触媒部分に対する前記還元のみの触媒部分の比率は、前記触媒ベッドの60:40(vol.%)である、請求項14に記載の触媒ベッド。
【請求項20】
軸動力を生成するための空気中の燃料と、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素及び炭化水素を含む排ガス流と、を燃焼するためのガスタービンエンジンと、
前記排ガスが大気中に移動する前に前記排ガスを受け取るための処理装置であって、請求項14に記載の触媒ベッドを含む、処理装置と、
を含む発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第61/598,010の出願日である2012年2月13日の利益を主張し、その全体は参照によってここに組み込まれる。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明に対する研究開発は部分的に、米国エネルギー省によって与えられた協定番号DE−FC26−05NT42644によってサポートされた。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、アンモニア(NH)を還元剤として使用する選択接触還元(SCR)によって燃焼排ガス中の窒素酸化物(NO)を還元するためのプロセス及びシステムに関する。本発明はまた、発電の分野に関し、より具体的には、石炭ガス化プラントにおけるガスタービンからなど、電力を発生するための水素を含有する燃料の燃焼からの排ガス中の、NO排出物及びアンモニア塩形成の制御に関する。しかしながら、本発明はまた、内燃エンジン内での硝酸製造中に生じる排出物など、他の源からのNOの除去にも採用され得る。
【背景技術】
【0004】
石炭ベースのガス化複合発電プラント(IGCC)の技術は、水素及びCOが豊富であり、かつ非常に制限された量のCOを有する燃料を利用するガスタービンでの電力生成を可能にする。燃料の燃焼は、窒素(N)を含む空気などの酸化源を必要とする。結果として、水素含有燃料の燃焼に起因する排ガス中の副生成物は、かなりの量のNOと、一定量のCO及びSOと、である。IGCCプラントのスタートアップの間、またガス化装置のダウンタイムの間、IGCCプラントは天然ガス燃料を使用することで作動している。結果として、燃焼排ガスは、NO、CO及び炭化水素を含有する。排ガス中のΝOは、ガスタービンにおける低ΝO燃焼器を伴った選択触媒還元(SCR)システムを使用することで還元され得る。SCRは、特にアンモニアが還元剤として使用される場合に、非常に効率的なΝO制御装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシステムでは、選択触媒還元は、排ガスを無水アンモニアと混合し、大気に排出する前に150−550℃の間の温度で適切な還元触媒上に排ガスを通過させることで行われる。アンモニアは、燃焼排ガスストリームの自然の部分(natural part)ではなく、以下の還元反応の1つ以上をサポートするという特定の目的のために、触媒元素の上流で排ガスストリームに注入される:
(1)4NH+4NO+O→4N+6H
(2)4NH+2NO+2NO→4N+6H
(3)8NH+6NO→7N+12H
(4)2NH+NO+NO→2N+3H
【0006】
アンモニア以外の、例えばヒドラジン、メチルヒドラジン、モノメチルアミン、及び尿素、若しくはその混合物、又はアンモニアとその混合物などの還元剤もまた採用され得る。
【0007】
上記の通り、IGCC排ガスが高い量のSOを含有することも知られている。レクチゾール(登録商標)プロセス(リンデAG及びルルギAGがともにライセンスを受けている)、セレクソール(現在UOP社がライセンスを受けている)などの商業的プロセスでは、対象ガスから97%を超える硫黄を除去できる。依然として、硫黄の濃度は20ppmに達し得る。窒素での希釈を考慮に入れると、IGCCガスタービンの排ガスにおけるSOの濃度は、5から10ppmのレベルであり得る。CO隔離及びH燃料の燃焼の後、排ガスにおけるHOの濃度は20−25vol.%に達することができ、酸素含量は10−18vol.%に達することができる。これらの条件下、NO、CO及び炭化水素排出物を低減するための燃料フレキシブルプロセス(fuel flexible process)を開発することは、非常に魅力的である。
【0008】
決定的に、排ガス中の高い硫黄含量は、特に高い水濃度の存在下で、過剰なアンモニアとともに以下の反応を促進する(アンモニアスリップ):
(5)NH+SO+HO+1/2O→NHHSO
(6)2NH+SO+HO+1/2O→(NHSO
【0009】
特にアンモニア重硫酸塩(以下「ABS」という)であるこれらの望ましくないアンモニア塩の形成は、SCRの下流にある熱交換素子の激しい腐食をもたらすことがある。さらに、その塩は、アンモニア塩のエアロゾル又はミストであるPM2.5の二次汚染をもたらすことがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様によるガス化複合発電プラントシステムの概略図である。
図2】タングステン担持量に応じたABS濃度(ppb)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、図面を考慮して、以下の記述において説明される。
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、以下で観念的に説明するような、還元のみの部分と、より多くの量のタングステンを有する下流にある第2の還元プラス酸化部分と、を有する触媒システムが排ガスストリームにおいてABSの形成を低減することを見出した。この低減されたABSの形成は、5−20ppmのSO、10−18vol.%のO及び20−25vol.%に達する水の存在下であっても生じる。本発明の一態様では、還元のみの部分及び下流にある還元プラス酸化部分はそれぞれ、ある量のタングステンを含有するが、それは酸化タングステン、例えば酸化タングステン(VI)(WO)などによる。本明細書で使用される「酸化タングステン」との用語は、任意のタングステンの酸化物を意味し、その様々な酸化状態を含むがこれらに限定されるものではない。触媒システムの還元プラス酸化部分における、還元のみの部分と比較して追加的な量のタングステンは、結果として、処理される対象ガスストリームにおいて形成されるABSの量を実質的に低減する。
【0013】
ここで図面を参照すると、図1は、ガス化装置24においてガス化プロセスを使用してH含有燃料26(合成ガス、又はCO捕捉後のH豊富燃料)を作る、ガス化複合発電プラントシステム18を示す。H含有燃料26は窒素20で希釈され得、ガスタービン28での燃焼のために、図のように空気22と組み合わせられ得る。一実施形態では、システム18又はガス化装置24は、少なくとも10vol.%のH及び少なくとも10vol.%のNを含有するH含有燃料26を作る。タービン排ガス29は、熱回収蒸気発生器(HRSG)30に向けられるが、それは触媒又は触媒元素又はベッド、例えば多機能排出物還元触媒システム(Polyfunctional Emission Reduction Catalytic System)ベッド(触媒ベッド又はPERCWベッド32)を含むか、あるいはその上流に位置する。典型的に、触媒ベッド32は望ましいSCR温度作動範囲に適した位置に配置されるが、それは100−500℃、特定の実施形態では250−300℃であり得る。図のように、排ガス29は触媒ベッド32を通過する。触媒ベッド32の上流には、典型的に、排ガス29にある量のアンモニアを導入するためのアンモニア注入装置31がある。触媒ベッド32は、還元のみの部分34と、還元のみの部分の下流にある還元プラス酸化部分36と、を有する触媒システムを含む。場合によっては、水注入システム(図示せず)が、触媒ベッド32内でのΝO還元反応を向上させるために使用され得る。場合によっては、また、1つ以上のコントローラがシステム18を通ってセンサ及びバルブ(図示せず)に接続され得、必要又は所望であるプロセスを感知及び制御する。
【0014】
一実施形態では、触媒ベッド32は、最小の圧力損失を伴った高い汚染物質の除去効率を可能にする幾何学的形態である。ビーズ、押出物、ペレット、顆粒、シリンダーなどが商業的用途で採用される適切な幾何学的形態であるが、モノリスが好ましい形態である。モノリス形態及び触媒キャリアとしてのモノリスの使用は、当業者によく知られている。モノリスは、一連の真っすぐな相互接続しないチャネルから成る。モノリスの壁の上には触媒含有材料の薄層が被覆され、当該分野では「ウォッシュコート(washcoat)」と呼ばれる。触媒活性成分、バインダー、サポーター、及びプロモーター(存在すれば)が位置するのは、ウォッシュコートの孔内部である。従って、一実施形態では、ハニカムモノリスが、本明細書に記載の任意の触媒システムでウォッシュコートされ得る。還元のみの部分34及び還元プラス酸化部分36はモノリス構造として形成され得るか、又はその2つの部分は別個に形成され得ると認められる。
【0015】
触媒ベッド32の還元のみの部分34は、NH還元剤によってNOの還元を促進する1つ以上の触媒成分を含み、それによって主にN及びHOを作り出す。酸素の存在下では、反応は例えば以下のように進められ得る:
(7)4NO+4NH+O→4N+6H
(8)2NO+4NH+O→3N+6H
【0016】
還元のみの部分34のために選択される1つ以上の材料は、NOの還元のための触媒システムを準備するためのサポーター、バインダー、プロモーター、及び触媒又は活性成分など、当該分野で知られている任意の適切な材料を含むことができる。一実施形態では、1つ以上の触媒材料は例えば、タングステン及び1つ以上のバナジウム、モリブデン、シリコン又はシリケート、アルミナ、アルミニウム、鉄、チタニア、ジルコニア、チタニア−ジルコニア、マグネシウム、マンガン、イットリウム、又はそれらの混合物を含む。タングステンは典型的に、酸化タングステン、例えば酸化タングステン(IV)又はWOなどのタングステン化合物によって、又はその一部として提供される。硫酸塩、ランタン、バリウム、ジルコニウムなどの他の又は追加の添加物もまた存在し得る。還元のみの部分34はまた、ゼオライトベースの材料を含むことができる。ゼオライトベースの触媒材料は、少量の卑金属、例えば鉄、コバルト及びニッケルなどで促進されるゼオライトZSM−5、ゼオライトベータ、モルデナイト(mortenite)及びフォージャサイトの酸性化した形態を含む。典型的に、酸化チタン、シリケート、ジルコニア及び/又はアルミナが、還元のみの部分34又は還元プラス酸化部分36のためのサポーターとして使用される(以下に記載されている)。
【0017】
一実施形態では、触媒ベッド32の還元のみの部分34は、酸化タングステンと、二酸化チタン、五酸化バナジウム、シリコン、モリブデン、マグネシウム、アルミニウム、イットリウム、及びその組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの成分と、の混合物を含む。特定の実施形態では、還元のみの部分34及び還元プラス酸化部分36はそれぞれ、(酸化タングステンに加えて)五酸化バナジウム及び二酸化チタンをさらに含む。例えば、本発明で使用する例示的な組成(wt.%)は、1−2wt.%のV/7−10wt.%のW/35−40wt.%のTiである。還元のみの部分34では、タングステンは触媒ベッド32の5−15wt.%の範囲で提供され得る。
【0018】
還元プラス酸化部分36は典型的に、還元のみの部分34の下流に位置し、NO除去のための反応を完了させ、CO及び炭化水素排出物を低減し、かつアンモニアスリップを最小限にするように構成される。決定的に、還元プラス酸化部分36は、還元のみの部分34と比較して増加した量のタングステンによって特徴付けられる。追加のタングステンは同様に、酸化タングステン、例えば酸化タングステン(IV)又はWOなどのタングステン化合物によって、又はその一部として典型的に提供される。還元のみの部分34と還元プラス酸化部分36との分離は完全に区別できるものでないことがあるが、触媒ベッド32は、触媒ベッド32の上流部分と比較して下流端部でより高い濃度のタングステンを有するとして特徴付けられることが理解される。
【0019】
還元プラス酸化部分36は、還元のみの部分34に対する上記の還元反応をサポートする(1つ以上の)材料、並びに以下の酸化反応の1つ以上をサポートする(1つ以上の)材料の何れかを含むことができる:
(9)CO+O→CO
(10)C+(a+b/4−y/2)O→aCO+b/2H
(11)4NH+7O→4NO+6H
(12)4NH+5O→4NO+6H
(13)2NH+2O→4NO+3H
(14)4NH+3O→2N+6H
【0020】
一実施形態では、還元プラス酸化部分36は好ましくは、追加的な量のNO生成を最小限にするために、反応(11−13)に対して反応(10)及び/又は(14)をサポートする。従って、還元プラス酸化部分36の酸化触媒材料は、NHを主にNに分解するために提供され得る。本発明は任意の特定の酸化触媒材料に限定されないが、例示的な酸化触媒材料は、銅、白金、パラジウム、クロム、鉄、ニッケル、ロジウム、金、銀、ルテニウム及びその混合物を含み、しかしながらそれに限定されるものではない。一実施形態では、還元プラス酸化部分は少なくとも1つの白金族金属を含む。酸化触媒は、例えば1−10g/ftの白金族金属を含むことができる。
【0021】
本発明者は具体的に、触媒ベッド32の還元プラス酸化部分36における追加的な量のタングステンの存在が触媒ベッド32内及びその下流におけるABSの形成を実質的に低減することを見出した。決定的に、SOからSOへの転換を促進する典型的な条件である、20ppmに達するSO、10−18vol.%のO及び20−25vol.%に達する水の存在下であっても、ABS形成の低減は生じる。SOが形成され、排ガス29中に見られる場合、SOは排ガス29中の任意のスリップしたアンモニアと反応し、非常に望ましくないABSを生成することがある。本発明の態様は実質的に、ガスストリーム中のNO、CO、炭化水素及びアンモニアを含む望ましくない汚染物質の還元及び酸化をしながら、望ましくないABSの生成を最小限にする。
【0022】
一実施形態では、還元プラス酸化部分36は、還元のみの部分34と比較して2−8wt.%追加のタングステン、特定の実施形態では3−6wt.%追加のタングステンを含む。このように、還元プラス酸化部分36では、タングステンは還元プラス酸化部分36において、触媒ベッド32の7−23wt.%の範囲で提供され得る。特定の実施形態では、タングステンは、還元プラス酸化部分36において10−16wt.%の範囲で提供される。従って、触媒ベッド32におけるタングステンの全量は、12−38wt.%のタングステンを含むことができる。還元のみの部分34及び還元プラス酸化部分36について説明するために本明細書で提供される重量パーセンテージ(wt.%)は、特に断りのない限り、触媒ベッド32全体の材料に対するものである。
【0023】
触媒ベッド32内へのタングステンの含有は、タングステン酸アンモニウムでの含浸及び乾燥など、当該分野で既知の任意の方法によって実施され得る。触媒ベッド32の触媒材料の種類、体積及び構造は、特定の用途の要件に応じて異なり得る。多機能触媒の還元のみの部分34は、触媒ベッド32の全触媒体積の10−90%の範囲であり得る。特定の実施形態では、還元のみの部分34は触媒ベッド32の全体積の60%であり、還元プラス酸化部分36は触媒ベッド32の全触媒体積の40%である。
【0024】
上記発明は、ガスタービン排ガスの処理を特に強調して、発電分野との関連で説明されたが、本明細書に記載の新規プロセスは、例えば硝酸プラント及び固定排出源など、異なるシステム構成を有する他のNO汚染源にも適用され得る。以下の実施例は、本発明の特定の態様を示すために提供されるものであり、何れかの点で限定することを目的とするものではない。
【0025】
[実施例1]
以下は、還元プラス酸化部分36において追加量のタングステン(W)を有する触媒調製の一例である。溶液が、2000mLビーカーにおいてDI水にメタタングステン酸アンモニウム(アルドリッチ)を添加することで調製された。7wt.%のタングステンを有する押出成形された従来のSCR触媒システムのモノリスコアがその溶液に浸され、10wt.%のタングステン担持を達成した。ブロックはレンジ加熱で乾燥され、450℃で2時間焼成された。パラジウム/白金金属溶液が、テトラアンミン塩化パラジウム(tetraammine palladium chloride)溶液及びテトラアンミン塩化白金(tetraammine platinum chloride)溶液をビーカーに添加することによって調製された。モノリスブロックが前記溶液に浸され、平均5gPtPd/ftを得た。ブロックはさらにレンジ加熱され、乾燥され、450℃で2時間焼成され、焼成後に酸化タングステンを含むPERCW触媒ベッドを提供した。本明細書に記載の触媒ベッドは従って、例えば米国特許第7,390,471号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているような既知のSCR触媒システム又はその成形物に、タングステン及び例えば白金又はパラジウムなどの酸化触媒を本明細書で特定された量で添加することによって提供され得る、と認められる。
【0026】
[実施例2]
表1に示すように、本発明者は、従来の工業的SCR(ベースライン比較触媒)における追加量のタングステンの存在がABSの形成に関連する触媒性能に如何なる顕著な変化ももたらさないことを見出した(表1)。ベースラインSCR比較触媒(SCR)は、以下の組成を有した:1.6%のV/7%のW/3.0%のSi/36.5%のTi。表1に示されるSCR+3.5%Wの触媒システムは、追加のWO(追加の3.5%タングステン)を含有した。SCR触媒ベッドにおける追加のWO含有は、ABSの形成に関連する触媒性能に如何なる顕著な変化ももたらさなかった。PERC触媒システムにおいて、PERCベッドの還元のみの部分34は、ベースラインSCR組成と同一の組成を有したが、PERC触媒の還元プラス酸化部分36は、5g/ftのPd及び5g/ftのPtを追加したベースラインSCR組成を有して提供された。PERCW触媒システムにおいて、追加の3.5%Wが提供された。見られるように、PERCW触媒システムの還元プラス酸化部分36における追加の3.5%W含有は、実質的にABSの形成を低減した。
【0027】
操作条件:GHSV−20,000hr−1、NH:NOモル比−1−1.08、SO−2ppm、HO−20%、温度320°C
【0028】
【表1】
【0029】
[実施例3]
本発明者は、下流にある還元プラス酸化部分における追加のタングステンの含有が結果として、特定の濃度におけるABS形成の実質的な低減をもたらすことを見出した。例えば図2及び表2に示されるように、本発明者は、下流にある還元プラス酸化部分36において、還元のみの部分34と比較して2−8wt.%追加のタングステンが提供されることで、触媒ベッド32全体にわたってタングステンが均一に分散されたものと比べて、ABS形成の顕著な低下(2.0ppb未満、典型的には1.0ppb未満のABS)が結果としてもたらされることを見出した。パイロットスケールの試験用装置(触媒ブロック150×150×300mm)において、IGCC操作条件下で触媒の例示的結果が試験され、以下の表2に示される。この例では、ベースラインSCR比較触媒(表2のSCR)は、以下の組成を有した:1.6%のV/7.2%のW/3.0%のSi/36.5%のTi。触媒ベッド32の還元のみの部分は、ベースラインSCR組成と同一の組成を有し、一方で触媒ベッド32の還元プラス酸化部分36は、5g/ftのPd及び5g/ftのPtを追加したベースラインSCR組成を有した。
【0030】
改善されたPERC(PERCW)組成はまた、還元プラス酸化部分36においてWOを用いて、還元のみの部分34と比較して3.5wt.%追加の(触媒システム全体のwt.%)タングステンを有した。表2及び図2に示される実験条件では、PERCW触媒システムにおける還元のみの部分34と還元プラス酸化部分36との分割は、60:40vol.%であった。図2に示されるように、ABS量を低減するために触媒ベッド32の還元プラス酸化部分36内に含まれる、例えば含浸される追加のWの最適パーセンテージは、3−6wt.%の範囲内であり、それ故に、還元プラス酸化部分におけるWの全パーセンテージが10−16wt.%に達した。
【0031】
操作条件:GHSV−20,000hr−1、NH/NOモル比−1−1.1、HO−20%、温度320°C
【0032】
【表2】
【0033】
本発明の様々な実施形態が本明細書において示され、かつ説明されてきたが、このような実施形態が例示の目的のみで提供されることは明らかである。多くの変動、変化及び置換が、本発明から逸脱することなく行われ得る。従って、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
18 ガス化複合発電プラントシステム
20 窒素
22 空気
24 ガス化装置
26 H含有燃料
28 ガスタービン
29 排ガス
30 熱回収蒸気発生器
31 アンモニア注入装置
32 触媒ベッド
34 還元のみの部分
36 還元プラス酸化部分
図1
図2