(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空替機能付受湯台車コントローラは、前記フェーディングの開始を検知すると、フェーディングの開始を知らせるフェーディング開始信号またはフェーディングの開始からの経過時間であるフェーディングタイマ信号を他のコントローラに送信する;
請求項2に記載の溶湯搬送システム。
前記注湯機コントローラは、溶湯を注湯した後の前記注湯取鍋内の溶湯の重量が所定の値以下になる前に、前記フェーディング開始信号からカウントした時間または他のコントローラから受信したフェーディングの開始からの経過時間が所定の第2閾値を超える場合にエラー信号を発する;
請求項3に記載の溶湯搬送システム。
前記合金材投入装置は、前記処理取鍋に投入する合金材を貯留する計量ホッパと、前記計量ホッパの合金材の重量を計測する第3重量計測器とを有し、該第3重量計測器で計測された前記合金材の重量は第3重量情報として前記合金材投入装置コントローラに送られ、
前記合金材投入装置コントローラは、前記第3重量情報を前記空替機能付受湯台車コントローラに送信し、
前記第1重量計測器は前記処理取鍋に投入された合金材の重量を計測し第4重量情報として前記空替機能付受湯台車コントローラに送信し、
前記空替機能付受湯台車コントローラは、前記第3重量情報と前記第4重量情報との差が所定の第3閾値を超える場合にエラー信号を発する;
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の溶湯搬送システム。
前記合金材投入装置は、前記合金材を貯留する複数のホッパと、該複数のホッパから前記投入シュートに所定量の合金材を流出するための複数の計量ホッパと、複数の前記第3重量計測器と、該計量ホッパで計量した前記合金材を前記投入シュートに流出させる複数の投入ゲートとを備え、前記第3重量情報は前記複数の第3重量計測器で計測した重量の合計である;
請求項5に記載の溶湯搬送システム。
前記炉から溶湯を受湯した処理取鍋の重量を計測し、重量の変動量に基づき、フェーディングの開始を検知し、フェーディングの開始からの経過時間をカウントする工程と、
溶湯を注湯した後の前記注湯取鍋内の溶湯の重量が所定の値以下になる前にフェーディングの開始からの経過時間が所定の第2閾値を超える場合にエラー信号を発する工程とをさらに備える;
請求項14に記載の溶湯搬送方法。
前記処理取鍋に投入する合金材の重量と、前記処理取鍋の重量を計測することにより計測した投入された合金材の重量とから第2重量差を算定し、該第2重量差が第3閾値を超える場合にエラー信号を発する工程をさらに備える、
請求項14または15に記載の溶湯搬送方法。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第1の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、炉Fから注湯機100に溶湯を搬送する溶湯搬送システム1であって、炉Fから溶湯を受け取り、注湯取鍋60に空け替えるための処理取鍋10と、処理取鍋10に合金材を投入する合金材投入装置50と、処理取鍋10から溶湯を受け取り、注湯機100に搬送する注湯取鍋60と、合金材投入装置50から処理取鍋10に合金材を投入する投入位置P2と、処理取鍋10が炉Fから溶湯を受け取る受取位置P1と、処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替える空替位置P4とに、処理取鍋10を移動させる空替機能付受湯台車20と、注湯取鍋60を注湯機100に渡すために、空替位置P4から注湯取鍋60を移動させる注湯取鍋搬送台車70と、注湯取鍋搬送台車70から注湯取鍋60を受け取り、鋳型Dに溶湯を注湯する注湯機100とを備え;注湯機100は、注湯機100の動作を制御する注湯機コントローラ140を有し;合金材投入装置50は、合金材投入装置50の動作を制御する合金材投入装置コントローラ120を有し;空替機能付受湯台車20は、空替機能付受湯台車20の動作を制御する空替機能付受湯台車コントローラ110を有し;注湯取鍋搬送台車70は、注湯取鍋搬送台車70の動作を制御する注湯取鍋搬送台車コントローラ130を有し;注湯機コントローラ140、合金材投入装置コントローラ120、空替機能付受湯台車コントローラ110および注湯取鍋搬送台車コントローラ130のうち、少なくとも2つのコントローラ間でデータ通信がなされる。
【0010】
このように構成すると、空替機能付受湯台車で処理取鍋を搬送することにより、処理取鍋に合金材投入装置から合金材を投入し、炉から溶湯を処理取鍋に受湯し、処理取鍋から注湯機へ溶湯を空け替えることができる。また、各コントローラ間でデータ通信を行うことにより、例えばフェーディング時間を正確に計測し、球状化不良の発生を防止することもできる。よって、人手を介さず合金材を投入し、安全かつ迅速に処理取鍋から注湯機への溶湯の搬送を行い、品質を管理しながら鋳型へ注湯することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、第1の態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20は、処理取鍋10の重量を計測する第1重量計測器112を備え、第1重量計測器112で計測された処理取鍋10の重量は空替機能付受湯台車コントローラ110に送られ、注湯機100は、注湯取鍋60の重量を計測する第2重量計測器142を備え、第2重量計測器142で計測された注湯取鍋60の重量は注湯機コントローラ140に送られ、空替機能付受湯台車コントローラ110は、処理取鍋10が炉Fから溶湯を受け取り完了したときの処理取鍋10内の溶湯重量を第1重量情報W1として受け取り、注湯機コントローラ140は、処理取鍋10から溶湯を空け替えられた注湯取鍋60内の溶湯の重量を第2重量情報W2として受け取り、さらに、空替機能付受湯台車コントローラ110から第1重量情報W1を受け取り、第1重量情報W1と第2重量情報W2との差が所定の第1閾値T1を超える場合にエラー信号を発する。
【0012】
このように構成すると、処理取鍋から注湯機の注湯取鍋に搬送される間にこぼれたり漏れたりすることにより減少した溶湯の量を確認して、減少した溶湯の量が閾値以上の場合にエラー信号を発することができる。よって、安全確実に溶湯の搬送が行われていることを確認することができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、第2の態様に係る溶湯搬送システム1において、合金材にはマグネシウムを含み、空替機能付受湯台車コントローラ110は、処理取鍋10内でのフェーディングの開始を第1重量計測器112で計測する重量の変動量から検知する。
【0014】
このように構成すると、自動でフェーディング時間の開始を検知することができ、作業者が処理取鍋の近くで監視している必要がなくなり、安全であるとともに、正確にフェーディングの開始を検知できる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、第3の態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車コントローラ110は、フェーディングの開始を検知すると、フェーディングの開始を知らせるフェーディング開始信号またはフェーディングの開始からの経過時間であるフェーディングタイマ信号を他のコントローラ130、140、150、160に送信する。
【0016】
このように構成すると、自動で検知したフェーディング時間の開始に基づくフェーディング経過時間をコントローラで管理することができ、正確にフェーディング経過時間を把握することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、第4の態様に係る溶湯搬送システム1において、注湯機コントローラ140は、溶湯を注湯した後の注湯取鍋60内の溶湯の重量が所定の値以下になる前に、フェーディング開始信号からカウントした時間TFまたは他のコントローラから受信したフェーディングの開始からの経過時間TFが所定の第2閾値T2を超える場合にエラー信号を発する。
【0018】
このように構成すると、正確なフェーディング経過時間に基づき、球状化不良が発生する時間が経過していないことを確認でき、フェーディングによる球状化不良を防止することができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1、
図3および
図5に示すように、第1ないし第5のいずれかの態様に係る溶湯搬送システム1において、合金材投入装置50は、処理取鍋10に投入する合金材を貯留する計量ホッパ56と、計量ホッパ56の合金材の重量を計測する第3重量計測器122とを有し、第3重量計測器122で計測された合金材の重量は第3重量情報W3として合金材投入装置コントローラ120に送られ、合金材投入装置コントローラ120は、第3重量情報W3を空替機能付受湯台車コントローラ110に送信し、第1重量計測器112は処理取鍋10に投入された合金材の重量を計測し第4重量情報W4として空替機能付受湯台車コントローラ110に送信し、空替機能付受湯台車コントローラ112は、第3重量情報W3と第4重量情報W4との差が所定の第3閾値T3を超える場合にエラー信号を発する。
【0020】
このように構成すると、合金材投入装置から投入される合金材の重量と処理取鍋に投入された合金材の重量との差を求めるので、合金材投入装置から処理取鍋に投入されなかった合金材の重量が分かる。また、その重量が所定の第3閾値を超える場合にエラー信号を発するので、合金材が適切に投入されていることが確認できる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図5に示すように、第1ないし第6のいずれかの態様に係る溶湯搬送システム1において、第1重量計測器112で、合金材を投入される前の処理取鍋10の重量を計測し第5重量情報W5として空替機能付受湯台車コントローラ110に送信し、第1重量計測器112で、注湯取鍋60へ溶湯を空け替えた後の処理取鍋10の重量を計測し第6重量情報W6として空替機能付受湯台車コントローラ110に送信し、空替機能付受湯台車コントローラ110は、第5重量情報W5と第6重量情報W6との差が所定の第4閾値T4を超える場合にエラー信号を発する。
【0022】
このように構成すると、合金材が充分に溶湯に溶解できず、合金材が不足した溶湯で鋳型に注湯することを防止できる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1に示すように、第1ないし第7のいずれかの態様に係る溶湯搬送システム1において、処理取鍋10から注湯取鍋60に空け替えられる溶湯に接種剤を投入する空替接種装置80をさらに備える。
【0024】
このように構成すると、処理取鍋から注湯取鍋へ溶湯を空け替えるときに接種剤を投入することができるので、短時間で均一に接種剤を溶湯に混合することができる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1に示すように、第1ないし第8のいずれかの態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20が移動する、投入位置P2、受取位置P1、空替位置P4の3位置のうち、2つが同じ位置である。
【0026】
このように構成しても、第1ないし第8のいずれかの態様に係る溶湯搬送システムの効果を得ることができる。
【0027】
本発明の第10の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図6に示すように、第1ないし第9のいずれかの態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20には、処理取鍋10を支持すると共に、処理取鍋10を傾動して注湯取鍋60に溶湯を空け替える傾動装置40を備える。
【0028】
このように構成すると、空替機能付受湯台車が傾動装置を備えるので、処理取鍋から注湯取鍋への溶湯の空け替えを自動で安全に行うことができる。
【0029】
本発明の第11の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図7に示すように、第10の態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20は、車輪22を備え軌道R1上を走行する台車本体24と、台車本体24上に設置され、傾動装置40をパンタグラフ式に上下するパンタグラフ式テーブル昇降機28とを備える。
【0030】
このように構成すると、空替機能付受湯台車がパンタグラフ式テーブル昇降機を備えて傾動装置を上下できるので、処理取鍋から注湯取鍋への溶湯の空け替えを自動で安全に行うことができる。また、処理取鍋と注湯取鍋のレベルが異なっていても、容易に溶湯を空け替えることができる。
【0031】
本発明の第12の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図6に示すように、第10の態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20は、車輪22を備え軌道R1上を走行する台車本体24と、台車本体24上に設置されるガイド柱32と、ガイド柱32から水平方向に延び、台車20上で昇降可能なテーブル34であって、傾動装置40を載置する昇降テーブル34と、昇降テーブル34を昇降する昇降テーブル昇降装置36とを備える。
【0032】
このように構成すると、空替機能付受湯台車が傾動装置を載置する昇降テーブルを備えて傾動装置を上下できるので、処理取鍋から注湯取鍋への溶湯の空け替えを自動で安全に行うことができる。また、処理取鍋と注湯取鍋のレベルが異なっていても、容易に溶湯を空け替えることができる。
【0033】
本発明の第13の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図8に示すように、第10の態様に係る溶湯搬送システム1において、空替機能付受湯台車20は、車輪22を備え軌道R1上を走行する台車本体24と、台車本体24上に設置され、処理取鍋10を移動するローラーコンベア41とを備え、傾動装置40は、処理取鍋10を傾動中心で支持する空替軸42と、傾動中心とは異なる位置で処理取鍋10と連結されるセクタギア44と、セクタギア44を駆動するセクタギア駆動装置46とを備える。
【0034】
このように構成すると、空替機能付受湯台車が処理取鍋を移動するローラーコンベアを備え、傾動装置がセクタギアとセクタギアを駆動するセクタギア駆動装置とを備えるので、処理取鍋から注湯取鍋への溶湯の空け替えを自動で安全に行うことができる。
【0035】
本発明の第14の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図3および
図4に示すように、第6の態様に係る溶湯搬送システム1において、合金材投入装置50は、合金材を貯留する複数のホッパ54と、複数のホッパ54から投入シュート52に所定量の合金材を流出するための複数の計量ホッパ56と、複数の第3重量計測器122と、計量ホッパ56で計量した合金材を投入シュート52に流出させる複数の投入ゲート58とを備え、第3重量情報は複数の第3重量計測器で計測した重量の合計である。
【0036】
このように構成すると、計量ホッパで所定量の合金材を計量し、投入シュートから処理取鍋へ投入できるので、迅速に所定量の合金を準備し、正確な量の合金材を投入することができる。また、複数のホッパから合金材を投入できるので、複数種類の合金材を正確な量で投入することができる。
【0037】
本発明の第15の態様に係る溶湯搬送方法は、例えば
図1に示すように、炉Fから注湯機100に溶湯を搬送する溶湯搬送方法であって、炉Fから溶湯を受け取り、注湯取鍋60に空け替えるための処理取鍋10を、合金材を投入する投入位置P2まで移動させる工程と、処理取鍋10に合金材を投入する工程と、合金材が投入された処理取鍋10を、炉Fから溶湯を受け取る受取位置P1まで移動させる工程と、受取位置P1に移動された処理取鍋10に炉Fから溶湯を受湯させる工程と、溶湯を受湯した処理取鍋10を、注湯取鍋60へ溶湯を空け替える空替位置P4に移動させる工程と、空替位置P4に移動された処理取鍋10から、処理取鍋10内の溶湯を注湯取鍋60に空け替える工程とを備え;処理取鍋10の重量を計測することにより計測した処理取鍋10から注湯取鍋60に空け替えられた溶湯の重量と、注湯取鍋60の重量を計測することにより計測した注湯取鍋60に空け替えられた溶湯の重量とから第1重量差を算定し、第1重量差が第1閾値T1を超える場合にエラー信号を発する工程をさらに備える。なお、溶湯搬送方法では、処理取鍋10から溶湯を空け替えられた注湯取鍋60を、注湯機100まで搬送する工程と、注湯取鍋60から鋳型Dに溶湯を注湯する工程とを更に備えてもよい。
【0038】
このように構成すると、処理取鍋を計測することにより計測した注湯取鍋に空け替えられた溶湯の重量と、注湯取鍋の重量を計測することにより計測した注湯取鍋に空け替えられた溶湯の重量との重量差が分かるので、処理取鍋から注湯機の注湯取鍋に搬送される間にこぼれたり漏れたりすることにより減少した溶湯の量を確認して、減少した溶湯の量が閾値以上の場合にエラー信号を発することができる。よって、安全確実に溶湯の搬送が行われる溶湯搬送方法となる。
【0039】
本発明の第16の態様に係る溶湯搬送方法は、例えば
図1に示すように、第15の態様に係る溶湯搬送方法において、炉Fから溶湯を受湯した処理取鍋10の重量を計測し、重量の変動量に基づき、フェーディングの開始を検知し、フェーディングの開始からの経過時間をカウントする工程と、溶湯10を注湯した後の注湯取鍋60内の溶湯の重量が所定の値以下になる前にフェーディングの開始からの経過時間TFが所定の第2閾値T2を超える場合にエラー信号を発する工程とをさらに備える。
【0040】
このように構成すると、正確なフェーディング経過時間に基づき、球状化不良が発生する時間が経過していないことを確認でき、フェーディングによる球状化不良を防止することができる。
【0041】
本発明の第17の態様に係る溶湯搬送方法は、例えば
図1に示すように、第15または第16の態様に係る溶湯搬送方法において、処理取鍋10に投入する合金材の重量と、処理取鍋10の重量を計測することにより計測した投入された合金材の重量とから第2重量差を算定し、第2重量差が第3閾値T3を超える場合にエラー信号を発する工程をさらに備える。
【0042】
このように構成すると、処理取鍋に投入する合金材の重量と処理取鍋に投入された合金材の重量との差を求めるので、処理取鍋に投入されなかった合金材の重量が分かる。また、その重量が所定の第3閾値を超える場合にエラー信号を発するので、合金材が適切に投入されていることが確認できる。
【0043】
本発明の第18の態様に係る溶湯搬送方法は、例えば
図1に示すように、第15ないし第17のいずれかの態様に係る溶湯搬送方法において、投入位置P2、空替位置P4、受取位置P1の3位置のうち、2つが同じ位置であり、処理取鍋10を同じ位置で移動させる工程では処理取鍋を移動させることがない。
【0044】
このように構成しても、第15ないし第17のいずれかの態様に係る溶湯搬送方法の効果を得ることができる。
【0045】
本発明の第19の態様に係る溶湯搬送システムは、例えば
図1および
図5に示すように、炉Fから注湯機100に溶湯を搬送する溶湯搬送システム1であって、炉Fから溶湯を受け取り、注湯取鍋60に空け替えるための処理取鍋10と、処理取鍋10に合金材を投入する合金材投入装置50と、処理取鍋10から溶湯を受け取り、鋳型Dに注湯する注湯取鍋60と、合金材投入装置50から処理取鍋10に合金材を投入する投入位置P2と、処理取鍋10が炉Fから溶湯を受け取る受取位置P1と、処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替える空替位置P4とに、処理取鍋10を移動させる空替機能付受湯台車20と、注湯取鍋60の溶湯を鋳型Dに注湯する注湯機100とを備え;注湯機100は、注湯機100の動作を制御する注湯機コントローラ140を有し;空替機能付受湯台車20は、空替機能付受湯台車20の動作を制御する空替機能付受湯台車コントローラ110を有し;注湯機コントローラ140と空替機能付受湯台車コントローラ110との間でデータ通信がなされる。
【0046】
このように構成すると、空替機能付受湯台車で処理取鍋を搬送することにより、処理取鍋に合金材投入装置から合金材を投入し、炉から溶湯を処理取鍋に受湯し、処理取鍋から注湯機へ溶湯を空け替えることができる。また、注湯機コントローラと空替機能付受湯台車コントローラとの間でデータ通信を行うことにより、例えばフェーディング時間を正確に計測し、球状化不良の発生を防止することもできる。よって、人手を介さず合金材を投入し、安全かつ迅速に処理取鍋から注湯機への溶湯の搬送を行い、品質を管理しながら鋳型へ注湯することができる。
【0047】
本発明は以下の詳細な説明により更に完全に理解できるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、当業者にとって明らかだからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
本明細書あるいは請求の範囲の記載において、名詞及び同様な指示語の使用は、特に指示されない限り、または文脈によって明瞭に否定されない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈すべきである。本明細書中で提供されたいずれの例示または例示的な用語(例えば、「等」)の使用も、単に本発明を説明し易くするという意図であるに過ぎず、特に請求の範囲に記載しない限り本発明の範囲に制限を加えるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態の溶湯搬送システム1を説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置あるいは部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態の溶湯搬送システム1を有する鋳造工場内の平面図である。
図1に示されるように、鋳造工場内には、溶湯を処理取鍋10に受湯させる溶解炉Fや、注湯された溶湯を冷却固化して鋳造品とする鋳型Dと鋳型Dを搬送する鋳型ラインDLが備えられる。なお、溶解炉Fの代わりに保持炉等から処理取鍋10に溶湯を入れてもよい。さらに鋳造工場内には、溶解炉Fから処理取鍋10に溶湯を入れて搬送し、注湯取鍋60に溶湯を空け替えて、注湯機100から鋳型Dに注湯する溶湯搬送システム1が備えられる。搬送システム1は、処理取鍋10と、空替機能付受湯台車20と、合金材投入装置50と、注湯取鍋60と、注湯取鍋搬送台車70と、注湯機100とを備える。更に、空替接種装置80を備えてもよい。
【0050】
図2は、溶湯搬送システム1で用いられる処理取鍋10の一例を示す側面図である。
図2では、断面を破線で示す。処理取鍋10は、炉Fから溶湯を受け取り、注湯取鍋60に空け替えるための取鍋である。処理取鍋10の内部の底面には、溶湯と反応する合金材を予め入れるための窪みであるポケット12が形成される。なお、処理取鍋10にはポケット12が形成されなくてもよい。
【0051】
処理取鍋10は、空替機能付受湯台車20により、(1)溶解炉Fの前である、処理取鍋10が炉Fから溶湯を受け取る受取位置P1、(2)合金材投入装置50の前である、合金材投入装置50から処理取鍋10に合金材を投入する投入位置P2、(3)合金材と溶湯とが反応する反応位置P3、(4)処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替える空替位置P4間で搬送される。なお、空替機能付受湯台車20の詳細は、後述する。また、合金材と溶湯とが反応する反応位置P3には、反応室90を設けるのがよい。反応室90は、処理取鍋10の上方を囲む。処理取鍋10の上方を囲むことにより、反応により溶湯の液滴が処理取鍋10から飛散した場合にも周囲に飛散することを防止できる。また、反応室90には、合金材と溶湯との反応により処理取鍋10から発生する粉じんやガスを排出するダクト(不図示)が接続される。
【0052】
図3は、合金材投入装置50の一例を説明する側面構成図である。合金材投入装置50は、処理取鍋10に、溶湯に添加する合金材を投入するための装置である。ここで、合金材には、マグネシウム、セシウム、カルシウムなどの黒鉛球状化剤を含む。なお、合金材投入装置50で、カルシウムシリコン、フェロシリコン、黒鉛などの接種剤を投入してもよい。通常、溶湯と合金材との反応が激しいので、溶湯を入れる前に、合金材を処理取鍋10に入れる。また、合金材は処理取鍋10中のポケット12に投入されるのがよい。さらに、所定の溶湯が処理取鍋10に満たされるまで反応を抑制するために、ポケット12中の合金材にカバー剤をかぶせるのがよい。カバー剤は、スチールスクラップ、SiC、ウエスカなど、溶湯と合金材の接触を抑えることができ、製品に悪影響を与えない材料であれば、特に限定されない。
図3に示す合金材投入装置50は、合金材を貯留する5つのホッパ54を備える。よって、5種類の合金材を混合して処理取鍋10に投入することができる。なお、ホッパ54の数は、1つでも複数でもよく、用途に応じて任意に変更可能である。
【0053】
ここで、
図4をも参照して、各ホッパ54の出口の詳細を説明する。
図4は、ホッパ54の出口の詳細を説明する構成図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。各ホッパ54の下部出口には、電磁フィーダ55が備えられる。電磁フィーダ55は、ホッパ54が貯蔵する合金材を計量ホッパ56に所定の流量で搬送する装置である。計量ホッパ56は、各ホッパ54の下方に配置され、電磁フィーダ55で搬送される合金材を貯留するホッパである。各計量ホッパ56の下部は、投入ゲート58で閉塞される。各計量ホッパ56に貯められた合金材の重量は、第3重量計測器としてのロードセル122で計測される。そして、合金材を投入するタイミングになると投入ゲート58が開き、合金材は投入シュート52を通って、処理取鍋10に投入される。複数のホッパ54を備える場合には、投入ゲート58を通過した合金材は、ベルトコンベア51で投入シュート52に搬送されるようにしてもよい。
【0054】
注湯取鍋60は、処理取鍋10から溶湯を受け取り、その溶湯を鋳型Dに注湯するための取鍋である。注湯取鍋60は、注湯機100により傾動されて、鋳型Dに注湯する。
図1では、空替位置P4が注湯機100とは離れた位置で示されるが、空替位置P4が注湯機100と同じ場所であってもよい。すなわち、処理取鍋10が、注湯機100に保持された注湯取鍋60に溶湯を空け替えてもよい。
【0055】
空替接種装置80は、処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替えるときに、接種剤を投入する装置である。空替接種装置80の構成は、基本的に、合金材投入装置50と同じである。処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替えるときに接種剤を投入することにより、短時間で均一に接種剤を溶湯に混合することができる。なお、空替接種装置80を備えずに、人手で接種剤を投入することも可能である。空替接種装置80では、溶湯の重量、すなわち処理取鍋10内の溶湯の重量に応じて各接種剤を投入することができる。処理取鍋10内の溶湯重量を変えることもあり、溶湯の重量に適した重量の接種剤を投入することにより、適切な接種が可能となる。
【0056】
図1に示す溶湯搬送システム1では、注湯取鍋60は注湯取鍋搬送台車70により、空替位置P4から注湯機100まで搬送される。注湯取鍋搬送台車70は、図示は省略するが、レールR2上を走行する台車と、台車上で注湯取鍋60を移動するコンベアとを有する。より詳細には、注湯取鍋60用のレールR2と平行して、注湯機100用のレールR3が配設される。そして、レールR2上の注湯取鍋搬送台車70上の注湯取鍋60を、レールR3上の注湯機100に移送するために、レールR2とレールR3間に実取鍋コンベアS1と空取鍋コンベアS2とが配設される。そして、実取鍋コンベアS1を介して、溶湯を保有する注湯取鍋60を注湯取鍋搬送台車70から注湯機100に移送し、空取鍋コンベアS2を介して、注湯を終えた注湯取鍋60を注湯機100から注湯取鍋搬送台車70に移送する。注湯取鍋搬送台車70、実取鍋コンベアS1および空取鍋コンベアS2の構成は、公知の構成でよく、詳細な説明は省略する。
【0057】
注湯機100は、注湯取鍋60を傾動して、注湯取鍋60内の溶湯を鋳型Dに注湯する装置である。鋳型Dは、鋳型ラインDL上に並んで移動・停止を繰り返す。鋳型Dが停止中に、注湯機100が注湯取鍋60から注湯する。注湯が終了すると、鋳型Dが1枠分移動し、次の空の鋳型Dが注湯機100の前に移動し、停止する。なお、鋳型Dの移動に要する時間が長い場合には、注湯機100が鋳型Dに注湯しつつ、注湯機100がレールR3上を移動し、鋳型Dが鋳型ラインDL上で移動するようにしてもよい。
【0058】
図5は、溶湯搬送システム1の制御系の一例を示す概略構成図である。空替機能付受湯台車20は、空替機能付受湯台車20の走行や空け替え機能を制御する空替機能付受湯台車コントローラ110を備える。合金材投入装置50は、合金材投入装置50の機能を制御する合金材投入装置コントローラ120を備える。注湯取鍋搬送台車70は、注湯取鍋搬送台車70の走行や注湯取鍋60の移送を制御する注湯取鍋搬送台車コントローラ130を備える。注湯機100は、注湯機100の走行や注湯取鍋60の傾動、すなわち注湯を制御する注湯機コントローラ140を備える。
【0059】
空替機能付受湯台車コントローラ110と合金材投入装置コントローラ120と注湯取鍋搬送台車コントローラ130は、搬送ゾーンメインコントローラ150に接続され、通信を行う。また、注湯機コントローラ140は、注湯ゾーンメインコントローラ160に接続され、通信を行う。そして、搬送ゾーンメインコントローラ150と注湯ゾーンメインコントローラ160は接続され、通信を行う。すなわち、各装置のコントローラである空替機能付受湯台車コントローラ110、合金材投入装置コントローラ120、注湯取鍋搬送台車コントローラ130および注湯機コントローラ140が通信可能に接続される。なお、鋳造工場内の各ゾーンのメインコントローラである、搬送ゾーンメインコントローラ150および注湯ゾーンメインコントローラ160は、各ゾーン内の他のコントローラ(不図示)あるいは鋳造工場全体を制御するコントローラ(不図示)と接続されて、通信を行ってもよい。
【0060】
また、ゾーンのメインコントローラである、搬送ゾーンメインコントローラ150および注湯ゾーンメインコントローラ160を備えず、各装置のコントローラである空替機能付受湯台車コントローラ110、合金材投入装置コントローラ120、注湯取鍋搬送台車コントローラ130および注湯機コントローラ140を直接接続し、通信を行ってもよい。また、各装置のコントローラ110、120、130、140は、鋳造工場全体を制御するコントローラを含め他のコントローラ(不図示)と接続されて、通信を行ってもよい。
【0061】
空替機能付受湯台車20には、処理取鍋10内の溶湯、合金材の重量を計測する第1重量計測器112が備えられる。第1重量計測器112で計測した重量は、先ずは空替機能付受湯台車コントローラ110に送られる。合金材投入装置50のロードセル122は、第3重量計測器として、合金材投入装置50の投入用シュート52を通る前の合金材の重量を計測する。第3重量計測器122で計測した重量は、先ずは合金材投入装置コントローラ120に送られる。注湯機100には、注湯取鍋60内の溶湯の重量を計測する第2重量計測器142が備えられる。第2重量計測器142で計測した重量は、先ずは注湯機コントローラ140に送られる。
【0062】
第1重量計測器112は、まず、合金材投入装置50から、処理取鍋10のポケット12に投入された合金材の重量を計測して、その重量を第4重量情報W4として空替機能付受湯台車コントローラ110に送る。なお、合金材の投入箇所は、ポケット12ではなくてもよい。次に、第1重量計測器112は、溶解炉Fから受湯する溶湯の重量を計測し、その重量を空替機能付受湯台車コントローラ110に送る。溶湯を受湯し終わったときの溶湯と合金材の重量(単に「溶湯の重量」ともいう)を第1重量情報W1として、空替機能付受湯台車コントローラ110に送る。さらに、第1重量計測器112は、溶湯と合金材の重量を計測し続け、その重量を空替機能付受湯台車コントローラ110に送る。
【0063】
第1重量計測器112は、合金材投入装置50から、処理取鍋10のポケット12に合金材が投入される前の重量を計測して、その重量を第5重量情報W5として空替機能付受湯台車コントローラ110に送ってもよい。また、処理取鍋10から注湯取鍋60へ溶湯を空け替えた後の処理取鍋10の重量を計測して、その重量を第6重量情報W6として空替機能付受湯台車コントローラ110に送ってもよい。第6重量情報W6と第5重量情報W5との差は、溶解せずに処理取鍋10内に残留した合金材の重量となる。残留した合金材が多いということは、溶湯に合金材が充分に添加されていないことが予想される。よって、第6重量情報W6と第5重量情報W5との差が所定の第4の閾値T4より大きいときには、エラー信号を生成して発する。エラー信号としては、空替機能付受湯台車コントローラ110で警報音を鳴らしたり、警報ランプを点灯したりしてもよいし、エラー信号を他のコントローラに送信してもよい。さらに、注湯取鍋搬送台車コントローラ130にエラー信号を送って、溶湯を空け替えられた注湯取鍋60での注湯を中止させてもよい。このように、第5重量情報W5と第6重量情報W6を用いることにより、合金材不足の溶湯で鋳造することを防止できる。
【0064】
第2重量計測器142は、処理取鍋10から溶湯を空け替えられた後の注湯取鍋60内の溶湯の重量を計測して、その重量を第2重量情報W2として注湯機コントローラ140に送る。また、注湯取鍋60から鋳型Dに注湯しているときの注湯取鍋60内に残存する溶湯の重量、すなわち注湯機100から鋳型Dに注湯した溶湯の重量を計測する。
【0065】
第3重量計測器122は、合金材投入装置50の投入用シュート52を通る前の軽量ホッパ56内の合金材の重量を計測して、その重量を第3重量情報W3として合金材投入装置コントローラ120に送る。投入用シュート52を通る前の合金材の重量は、合金材投入装置50が投入する合金材の重量を代表する。なお、合金材投入装置50が複数のホッパ54を有し、すなわち、複数の第3重量計測器122を有するときには、各第3重量計測器122が計測した合金材の重量の合計を第3重量情報W3として合金材投入装置コントローラ120に送る。
【0066】
空替機能付受湯台車コントローラ110は、空替機能付受湯台車20の走行を制御する。すなわち、投入位置P2から受取位置P1へ、そして、反応位置P3へ、そして、空替位置P4へ移動する。空替位置P4では、空替機能付受湯台車20の処理取鍋10を上昇させ、その後傾動して、溶湯を注湯取鍋60に空け替える。その後、処理取鍋10を下降させ、空替機能付受湯台車20を投入位置P2へ移動する。そして、この動作を繰り返す。
【0067】
空替機能付受湯台車コントローラ110では、合金材投入装置コントローラ120から、合金材投入装置50が投入する合金材の重量である第3重量情報W3、合金材が複数のホッパ54から投入される場合には、その合計の重量である第3重量情報W3を受信する。本書で、あるコントローラから受信するという場合には、直接そのコントローラから受信する場合のほか、他のコントローラを経由して受信する場合を含む。そして、第1重量計測器112で計測した合金材の重量である第4重量情報W4と比較し、その差である第2重量差が所定の第3閾値T3内であるかを判断する。第2重量差が第3閾値T3より大きいときには、エラー信号を生成して発する。すなわち、第2重量差が大きいときには、合金材がこぼれたりして適切に処理取鍋10に投入されなかったことが予想されるので、エラー信号を生成して発する。エラー信号としては、空替機能付受湯台車コントローラ110で警報音を鳴らしたり、警報ランプを点灯したりしてもよいし、エラー信号を他のコントローラに送信してもよい。なお、空替機能付受湯台車コントローラ110では、第4重量情報W4を、合金材投入装置コントローラ120、その他のコントローラに送信してもよい。
【0068】
空替機能付受湯台車コントローラ110では、溶解炉Fから処理取鍋10に受湯し終わったときの溶湯の重量を第1重量情報W1として注湯機コントローラ140に送信する。さらに、その後も溶湯の重量を監視し続ける。溶解炉Fから処理取鍋10に溶湯が入れられると、処理取鍋10内では、合金材と溶湯との反応が始まる。反応により第1重量計測値112の計測値は振動し始める。すなわち、激しいバブリングが生ずるので、計測値が変動する。特に、合金材にマグネシウム等の球状化元素を含む場合には、溶湯の重量を計測して、計測値の変動量が大きくなり、その後に所定量より小さくなった時点を、フェーディング開始と認識する。空替機能付受湯台車コントローラ110がフェーディング開始を検知したならば、フェーディング開始を知らせるフェーディング開始信号を他のコントローラに送信する。あるいは、空替機能付受湯台車コントローラ110で、フェーディング開始からの経過時間TFをカウントし、カウントした経過時間TFである、フェーディングタイマ信号を送信してもよい。このように、計測値の変動量でフェーディング開始を認識することで、正確にフェーディング開始からの経過時間TFをカウントできる。
【0069】
合金材投入装置コントローラ120は、予め決められた合金材を、1つまたは複数のホッパ54から電磁フィーダ55を介して計量ホッパ56に送り、合金材を投入する準備ができた後に投入ゲート58を開き、投入シュート52から処理取鍋10に投入させる。合金材投入装置コントローラ120は、所定の重量の合金材が計量ホッパに送られるように、電磁フィーダ55を操作する。第3重量計測器122で計測した計量ホッパ56に貯留された合金材の重量を第3重量情報W3として空替機能付受湯台車コントローラ110に送信する。複数のホッパ54から合金材が投入される場合には、複数のロードセル122で計測した重量の合計を、第3重量情報W3として送る。他のコントローラに送信してもよい。空替機能付受湯台車コントローラ110では、第3重量情報W3を用いて、先に説明したように、第1重量計測器112で計測した合金材の重量である第4重量情報W4と比較し、その差、第2重量差が所定の第3閾値T3内であるかを判断する。
【0070】
注湯取鍋搬送台車コントローラ130は、注湯取鍋搬送台車70の走行を制御する。すなわち、注湯取鍋搬送台車70を空替位置P4から注湯機100へ移動する。注湯機100の位置では、コンベアで注湯取鍋60を、注湯機100へ移送する。
図1の溶湯搬送システム1では、溶湯の入った注湯取鍋60を実取鍋コンベアS1に移送する。注湯取鍋を受け取った実取鍋コンベアS1は、注湯取鍋60を注湯機100に移送する。また、注湯機100で注湯が終了した注湯取鍋60は、空取鍋コンベアS2に移送され、空取鍋コンベアS2から、注湯取鍋搬送台車70に移送される。すなわち、注湯取鍋搬送台車70は、実取鍋コンベアS1の位置から、空取鍋コンベアS2の位置へ移動する。このように、実取鍋コンベアS1と空取鍋コンベアS2を備えることで、複数の注湯取鍋60を同時に使用することが可能となり、各装置での待ち時間が短縮され、効率が高くなる。注湯機100から注湯済みの注湯取鍋60を受け取った注湯取鍋搬送台車70は、空替位置P4へ移動し、再び処理取鍋10から溶湯を受け取る。なお、実取鍋コンベアS1および空取鍋コンベアS2の動作は、注湯取鍋搬送台車コントローラ130によって制御されても、注湯機コントローラ140によって制御されても、搬送ゾーンメインコントローラ150によって制御されても、注湯ゾーンメインコントローラ160によって制御されても、あるいは他のコントローラによって制御されてもよい。
【0071】
注湯機コントローラ140は、注湯機100の動作を制御する。すなわち、注湯取鍋60を傾動して、注湯取鍋60から所定量の溶湯を鋳型Dに注入する。その際、第2重量計測器142で注湯取鍋60内の溶湯の重量、すなわち溶湯量を計測しながら鋳型Mに注湯することで、正確な量の溶湯を注湯することができる。
【0072】
注湯機コントローラ140は、溶解炉Fから処理取鍋10に受湯された溶湯の重量を示す第1重量情報W1を空替機能付受湯台車コントローラ110から受信する。さらに、第2重量計測器142で計測した注湯取鍋60に空け替えられた溶湯の重量も第2重量情報W2として受信する。そして、第1重量情報W1と第2重量情報W2との差である第1重量差が所定の第1閾値T1を超える場合には、溶解炉Fから注湯機100まで溶湯を搬送する途中で、溶湯がこぼれるなどして溶湯が減少したことが予想されるので、エラー信号を生成して発する。エラー信号としては、注湯機コントローラ140で警報音を鳴らしたり、警報ランプを点灯したりしてもよいし、エラー信号を他のコントローラに送信してもよい。
【0073】
注湯機コントローラ140は、空替機能付受湯台車コントローラ110からフェーディング開始信号を受信してフェーディング開始からの経過時間TFをカウントする。あるいは、経過時間TFを受信してもよい。これまでの説明からも明らかなように、この経過時間TFあるいはフェーディング開始信号(以降、「経過時間TF」で代表して説明する)は、処理取鍋10毎に定まり、その処理取鍋10から溶湯を空け替えられた注湯取鍋60に引き継がれる。よって、経過時間TFは、注湯機100に移送される注湯取鍋60毎に決まる情報である。すなわち、溶湯搬送システム1において、経過時間TFは1つの情報ではなく、処理取鍋10毎に定まる複数の情報であり、どの処理取鍋10の情報であるかの識別ができるように構成される。注湯機コントローラ140は、注湯機100が保持する注湯取鍋60用の経過時間TFを認識する。
【0074】
注湯機コントローラ140では、経過時間TFが所定の第2閾値T2を超える場合には、フェーディングにより合金材の効果が薄れたことが予想されるので、エラー信号を生成して発する。合金材の効果が薄れると、球状化不良が発生する可能性が高くなるためである。エラー信号が発せられると、典型的には、注湯機コントローラ140は、その注湯取鍋60からの注湯は止め、注湯取鍋60に残っている溶湯をスターティングブロックUに移す。スターティングブロックUは、溶湯を受け入れる容器であり、注湯取鍋60が傾斜して溶湯を注ぐためのシュートを備える。注湯機100により、溶湯を鋳型Dに注湯するのとは逆方向に注湯取鍋60を傾斜させて、注湯取鍋60からシュートを経由して容器に移す。スターティングブロックUに移された溶湯は、炉に運ばれて再利用される。あるいは、注湯機100から注湯取鍋60を廃湯装置(不図示)に運んで処理してもよい。エラー信号としては、注湯機コントローラ140で警報音を鳴らしたり、警報ランプを点灯したりしてもよいし、エラー信号を他のコントローラに送信してもよい。
【0075】
なお、第2閾値T2、すなわちフェーディング開始後に球状化不良が発生するまでの経過時間は、合金材の種類や量によって変化し、また、処理取鍋10の大きさや、運搬方法(処理取鍋の揺れ等)によっても変化すると言われている。そこで、第2閾値T2は、溶湯取鍋60の溶湯に適合した値を用いる必要がある。第2閾値T2は、例えば注湯機コントローラ140に予め記憶しておく。そして、合金材投入装置50から処理取鍋10に投入された合金材の種類や量、処理取鍋10が受湯した溶湯の量等の計測値に基づき、適切な値を用いるようにする。なお、第2閾値T2の設定は、空替機能付受湯台車コントローラ110、合金材投入装置コントローラ120、注湯取鍋搬送台車コントローラ130、その他のコントローラで行ってもよい。
【0076】
次に、溶湯搬送システム1の運転について説明する。まず、空の処理取鍋10を載置した空替機能付受湯台車20が、空替機能付受湯台車コントローラ110に制御されて、投入位置P2に移動する。空替機能付受湯台車コントローラ110は、空替機能付受湯台車20の位置情報を他のコントローラに送信する。
【0077】
合金材投入装置50では、合金材投入装置コントローラ120に制御されて、各ホッパ54から所定量の合金材が計量ホッパ56に貯留される。貯留された合金材の重量は、第3重量計測器122で計測され、合金材投入装置コントローラ120に送られ、さらに合金材投入装置コントローラ120から空替機能付受湯台車コントローラ110に第3重量情報W3として送られる。そして、空替機能付受湯台車20が投入位置P2に移動すると、投入ゲート58が開かれて、合金材が投入用シュート52を通って、処理取鍋10に投入される。
【0078】
処理取鍋10に合金材が投入されると、第1重量計測器112で、投入された合金材の重量が計測される。計測された重量は、第4重量情報W4として空替機能付受湯台車コントローラ110に送られる。空替機能付受湯台車コントローラ110では、第3重量情報W3と第4重量情報W4とを比較し、その差である第2重量差が第3閾値T3を超える場合にアラームを生成し発する。アラームが発せられた場合には、オペレータが判断して、この処理取鍋10の処理を停止してもよいし、次の工程にそのまま進んでもよい。なお、自動的に処理取鍋10の合金材を空にして、初めからスタートするようにしてもよい。第2重量差が第3閾値T3以下の場合には、次の工程に進む。なお、合金材を投入し合金材の重量を計測し終わった後に、合金材投入装置50からカバー剤を処理取鍋10に投入し、合金材を覆ってもよい。
【0079】
合金材を投入された処理取鍋10を載置する空替機能付受湯台車20は、空替機能付受湯台車コントローラ110に制御されて、受取位置P1に移動する。そこで、溶解炉Fから所定量の溶湯が処理取鍋10に注がれる。注がれた溶湯の重量は、第1重量計測器112で計測され、空替機能付受湯台車コントローラ110に送られ、第1重量情報W1として、さらに空替機能付受湯台車コントローラ110から注湯機コントローラ140に送られる。その処理取鍋10の識別も一緒に送られる。また、処理取鍋10内の溶湯の重量は計測され続け、空替機能付受湯台車コントローラ110に送られる。ここで、重量を計測し続けるとは、所定間隔ごとに重量を計測することでよい。
【0080】
処理取鍋10で受湯すると、空替機能付受湯台車20は、空替機能付受湯台車コントローラ110に制御されて、速やかに反応位置P3に移動する。すなわち、溶湯と合金材の反応が激しくなる前に、処理取鍋10を反応室90内に搬送する。溶湯と合金材が反応室90内で反応することにより、激しい反応により溶湯が鋳造工場内に飛散することを防止し、反応により生ずる粉じんやガスをダクトを介して鋳造工場外に排出できる。
【0081】
第1重量計測器112で計測し続ける処理取鍋10内の溶湯の重量から、空替機能付受湯台車コントローラ110は、フェーディングの開始を検知する。溶湯と合金材の激しい反応によるバブリングのため、第1重量計測器112で計測する重量は大きく変動する。また空替機能付受湯台車コントローラ110は、第1重量計測器112で計測し続ける重量の変動量が一定幅(第1段階)に治まると、処理取鍋10をそれ以上反応室90内に留まらせる必要がないので、空替機能付受湯台車20を空け替え位置P4に移動させ始める。このように空替機能付受湯台車20を空け替え位置P4に早めに移動させるのは、フェーディング開始後にできるだけ早く鋳型Dに注湯するためである。
【0082】
さらに第1重量計測器112で計測し続ける重量の変動量が小さくなり、所定幅(第2段階)以下に治まると、溶湯と合金材の反応の終了と認識し、そのタイミングをフェーディング開始とする。空替機能付受湯台車コントローラ110は、フェーディング開始を知らせるフェーディング開始信号とその処理取鍋の識別を注湯機コントローラ140に送信する。あるいは、空替機能付受湯台車コントローラ110は、フェーディング開始を認識したら、フェーディングの開始からの経過時間TFを計測して、その経過時間TFをフェーディングタイマ信号として送信してもよい。
【0083】
空け替え位置P4に移動した空替機能付受湯台車20では、処理取鍋10から注湯取鍋60に溶湯を空け替える。注湯取鍋搬送台車70は、注湯機コントローラ140に制御され、空の注湯取鍋60を載置して、空け替えられる位置に待機する。空替機能付受湯台車20は、後述する傾動装置40(
図6等参照)とパンタグラフ式テーブル昇降機28(
図7参照)または昇降テーブル34(
図6参照)などで、処理取鍋10を上昇して傾動することにより溶湯を空け替える。または、セクタギア44(
図8参照)を用いて処理取鍋10を傾動することにより溶湯を空け替える。溶湯を処理取鍋10から注湯取鍋60に空け替えるときに、たとえば空替接種装置80から接種剤を溶湯に添加してもよい。
【0084】
注湯取鍋60に溶湯が空け替えられると、注湯取鍋搬送台車70は、注湯取鍋60を実取鍋コンベアS1に移送する位置まで移動する。注湯取鍋60は、注湯取鍋搬送台車70から実取鍋コンベアS1に移送される。注湯取鍋60は、実取鍋コンベアS1により注湯機100の位置まで搬送される。そこで、注湯機100に移送される。
【0085】
注湯機100では、注湯取鍋60を受け取ると、第2重量計測器142で注湯取鍋60内の溶湯の重量を計測し、注湯機コントローラ140に第2重量情報W2として送る。併せて、空替機能付受湯台車コントローラ110から当該処理取鍋10の識別番号を受信する。注湯機コントローラ140では、識別番号の一致した処理取鍋10に関する、第1重量情報W1と第2重量情報W2とを比較する。そして、その差である第1重量差が第1閾値T1を超えた場合にアラームを生成し発する。アラームが発せられた場合には、オペレータが判断して、この注湯取鍋60の処理を停止してもよいし、次の工程にそのまま進んでもよい。なお、自動的に注湯取鍋60を空にして、初めからスタートするようにしてもよい。注湯取鍋60を空にするには、注湯機100をスターティングブロックUの前に移動し、注湯取鍋60内の溶湯をスターティングブロックUに移せばよい。第1重量差が第1閾値T1以下の場合には、次の工程に進む。
【0086】
注湯機100では、溶湯を注湯取鍋60から鋳型Dに注湯する。1つの鋳型Dに所定量の溶湯を注湯すると、鋳型ラインDLが鋳型の1枠分の距離だけ動いて、新たな鋳型Dが注湯機100の前に来る。すると、注湯機100は、新たな鋳型Dに注湯する。この間、第2重量計測器142で注湯取鍋60内の溶湯の重量を計測する。すなわち、注湯取鍋60内に残る溶湯の重量を計測する。よって、鋳型Dに注湯している溶湯の重量を実測でき、正確に所定量の溶湯を鋳型Dに注湯できる。さらに、鋳型Dに注湯すべき溶湯の重量を計測しながら注湯できるので、より正確に注湯流量を制御しながら注湯できる。なお、鋳型ラインDLが鋳型の1枠分の距離だけ動くのに時間が掛る場合には、注湯取鍋60から鋳型Dに注湯している間に、注湯機100がレールR3上を、そして、鋳型Dが鋳型ラインDL上を同方向に同速度で移動してもよい。鋳型ラインDLが鋳型の1枠分の距離だけ動くのに時間を無駄にすることがなくなる。この場合、注湯機100は、次の鋳型Dに注湯するためにレールR3上を鋳型の1枠分の距離だけ戻る。あるいは、鋳型Dへの注湯ごとには戻らず、注湯取鍋60から所定の量の注湯を終えた場合に、空取鍋コンベアS2に移送する位置に移動することでもよい。
【0087】
注湯機コントローラ140では、空替機能付受湯台車コントローラ110から受信した当該溶湯に係るフェーディング開始信号に基づき、フェーディング開始からの経過時間TFをカウントする。あるいは、空替機能付受湯台車コントローラ110から当該溶湯に係るフェーディング開始からの経過時間TFを受信してもよい。そして、この経過時間TFが第2閾値T2を超える場合にアラームを生成し発する。アラームが発せられた場合には、この注湯取鍋60から鋳型Dへの注湯を停止する。オペレータが判断して、そのまま注湯を続けられるようにしてもよい。
【0088】
注湯取鍋60から鋳型Dへの注湯を停止すると、注湯機100をスターティングブロックUの前に移動し、注湯取鍋60内の溶湯をスターティングブロックUに移す。そこで、注湯取鍋60を鋳型Dに注湯するのとは逆方向に傾動して、溶湯をスターティングブロックUに移す。スターティングブロックUに移された溶湯は、炉に戻され再利用される。なお、注湯取鍋60から溶湯をスターティングブロックに移すために注湯取鍋60を傾動する装置である排湯装置(不図示)を備えて、注湯機100から排湯装置に注湯取鍋60を移送後に、溶湯をスターティングブロックに移してもよい。また、注湯取鍋60内に残った溶湯が多い場合などの状況では、クレーンで注湯取鍋60を持ち上げて搬送して、注湯取鍋60内に残った溶湯を炉に直接戻すようにしてもよい。
【0089】
注湯取鍋60が空になると、あるいは、注湯取鍋60内に残留する溶湯の重量が所定の重量以下になると、注湯機100は、注湯取鍋60を空取鍋コンベアS2に移送する位置まで移動する。注湯取鍋60は、注湯機100から空取鍋コンベアS2に移送される。注湯取鍋60は、空取鍋コンベアS2により注湯取鍋搬送台車70の位置まで搬送される。注湯取鍋搬送台車70は、空取鍋コンベアS2で待機している。そこで、注湯取鍋60は、注湯取鍋搬送台車70に移送され、更に、空け替えられる位置に移動する。
【0090】
溶湯搬送システム1によれば、処理取鍋10への合金材の投入を自動化すると共に、処理取鍋10から注湯機100への溶湯の搬送が自動化される。そして、合金材投入装置50の第3重量計測器122で計測した合金材の重量である第3重量情報W3と、空替機能付受湯台車20の第1重量計測器112で計測した処理取鍋10に投入された合金材の重量である第4重量情報W4との差である第2重量差が第3閾値T3を超える場合にはアラームを生成して発する。よって合金材が適切に処理取鍋10に投入されていることが確認される。また、合金材が投入された処理取鍋10に溶湯が注がれると、その後の重量を計測し、重量の変動量からフェーディングの開始を検知する。よって、フェーディング開始を正確に把握できる。また、処理取鍋10で計測した溶湯の重量と、処理取鍋10から空け替えられ注湯取鍋60の溶湯の重量を計測し、それらの第1重量情報W1と第2重量情報W2の差である第1重量差が第1閾値T1を超えるとアラームを生成し発する。よって、溶湯を溶解炉Fから注湯機100へ搬送する過程で溶湯が漏れたりこぼれたりする不具合を見つけだすことができる。さらに、注湯機100は、鋳型Dに注湯している溶湯のフェーディング開始からの経過時間TFが第3閾値T3を超える場合にはアラームを生成し発する。よって、フェーディングによる球状化不良を防止することができる。したがって、安全で、かつ、安定した品質の鋳造品を製造できる。
【0091】
次に、空替機能付受湯台車20の詳細を説明する。
図6は、一実施形態としてのフォーク昇降式の空替機能付受湯台車20Aの側面図である。空替機能付受湯台車20Aは、車輪22を備えてレールR1上を走行する台車本体24を備える。台車本体24上には、台車本体24を走行させるための駆動機構である走行機構26が設置される。また、台車本体24上には一対のガイド柱32が設置される。ガイド柱32に、水平方向に延び、台車本体24上で処理取鍋10を載置して昇降可能な昇降フレーム34が支持される。昇降フレーム34には、処理取鍋10を水平方向(空替機能付受湯台車20Aの走行方向と直交する方向)に移動する取鍋移動機構35が設置される。取鍋移動機構35は典型的には、ローラーコンベアである。取鍋移動機構35により処理取鍋10を水平方向に移動させて、溶解炉Fから適切な距離で受湯し、また、注湯取鍋60に溶湯を空け替えやすい位置に移動する。さらに、空替機能付受湯台車20Aが走行するときには、中央部に移動して、振動を少なく、かつ、空替機能付受湯台車20A全体として安定性をよくすることができる。また、第1重量計測器としてのロードセル112を昇降フレーム34と取鍋移動機構35の間に配置する。典型的には、4箇所にロードセル112を配置する。台車本体24上には、昇降フレーム34を昇降する駆動機構としての昇降フレーム昇降機構36が設置される。
【0092】
昇降フレーム34は、鉛直方向に離間して設置される2つの保持ローラー33を有する。ガイド柱32には、鉛直方向に形成されて保持ローラー33が転がる面を有するローラーガイド31が設けられる。鉛直方向に離間した2つの保持ローラー33がローラーガイド31上で転がるようにすることで、重量物である処理取鍋10を載置することにより昇降フレーム34に生ずるモーメントを受けることが可能になる。昇降フレーム34は、
図6の紙面直交方向に傾かないように、2箇所をチェーン37で吊られる。昇降フレーム昇降機構36は、昇降モータの出力軸に減速装置等を介して接続されたスプロケットを回転することで、チェーン37を巻き取る。よって、チェーン37に吊られて、昇降フレーム34が昇降する。
【0093】
昇降フレーム34には、処理取鍋10を支持し、かつ、傾動させる傾動装置40が設置される。傾動装置40は、典型的には、昇降フレーム34上に設置された架台と、架台上で水平方向に延在し、処理取鍋10を両側から支持する一対の回転軸と、回転軸を回転させる傾動機構とを備える。
【0094】
台車本体24上では、走行機構26や昇降フレーム昇降機構36は、処理取鍋10が設置される場所、具体的には昇降フレーム34の先端側から離れた位置に配置される。このように走行機構26や昇降フレーム昇降機構36を配置することにより、処理取鍋10が経時劣化などをして、処理取鍋10から溶湯が漏れても、修理に時間を要するモータ等が破損を受けず、短時間での修理が可能となる。さらに、走行機構26や昇降フレーム昇降機構36のモータ類は、昇降フレーム34を下降させたときの処理取鍋10の底の高さより高い位置に配置するのがよい。処理取鍋10が経時劣化で損傷するのは、底部近くの場合が多いので、漏れた溶湯がモータに掛らないようにすることができる。昇降フレーム34の上面や台車本体24の床面には、漏れた溶湯が下方へ抜けられる開口が設けられることが好ましい。また、外部からの電力を受電する電力ケーブルや情報を通信する通信ケーブルを引き込むための受電装置38も、処理取鍋10が設置される場所から離れた位置に配置されるのが好ましい。
【0095】
このような空替機能付受湯台車20Aを用いると、昇降フレーム34を上昇することで、容易に処理取鍋10を持ち上げ、持ち上げた状態で、傾動装置40により処理取鍋10を傾動させ、溶湯を注湯取鍋60に空け替えることができる。よって、自動で、安全に溶湯を空け替えることができる。また、全て電動であるため、湯漏れしても火災が発生しにくい。なお、空替機能付受湯台車20Aの走行方向に処理取鍋10を傾動するものとして説明したが、走行方向と直交する方向に処理取鍋10を傾動するように構成してもよい。処理取鍋10を炉F側に傾動可能に構成すると、炉Fからの溶湯の流線に対応した適切な位置に処理取鍋10を配置でき、後述の利点が得られる。
【0096】
なお、空替機能付受湯台車コントローラ112は、レールR1沿いの空替機能付受湯台車20Aの経路の傍に設置されてもよいし、台車本体24に積載されてもよい。台車上に積載される場合には、受電装置38と同様に、処理取鍋10が設置される場所から離れた位置に配置されるのが好ましい。
【0097】
図7は、一実施形態としてのパンタグラフ式の空替機能付受湯台車20Bの側面図である。空替機能付受湯台車20Aでは昇降フレーム34で処理取鍋10を昇降するのに代わりに、空替機能付受湯台車20Bではパンタグラフ式テーブル昇降機28で処理取鍋10を昇降する。すなわち、台車本体24上にパンタグラフ式テーブル昇降機28が設置され、傾動装置40がパンタグラフ式テーブル昇降機28に設置される。パンタグラフ式テーブル昇降機28は、
図7に破線で示すように、2対の平行な梁で菱形を形成するようにして、交差する支点を枢動可能に接続したリンク機構29を有する。なお、リンク機構29は、平行な梁を3対以上有してもよい。例えば油圧シリンダで、リンク機構29の任意の2つの支点間の距離を変えることにより、処理取鍋10を昇降することができる。あるいは、モータおよび減速装置から得られる回転運動により、1本の梁の水平面からの角度を変えることにより、処理取鍋10を昇降することができる。よって、簡単な構造で処理取鍋10を昇降することができる。また、油圧シリンダを用いると、大きな力を容易に得ることができ、経済的である。一方、モータおよび減速装置を用いると、全て電動であるため、湯漏れしても火災が発生しにくい。他の構造は、フォーク昇降式の空替機能付受湯台車20Aと同様であるので、重複する説明は省略する。
【0098】
また、この空替機能付受湯台車20Bでは、処理取鍋10を炉F側にも傾動可能に構成されている。炉Fから受湯する際に、処理取鍋10が昇降し炉F側に傾動することにより、炉Fからの溶湯の流線に対応した適切な位置に処理取鍋10を配置できる。そのため、処理取鍋10の側面などに当たることなく、溶湯を底面で受けることができる。よって、処理取鍋10の摩耗を防止することができ、溶湯搬送システム1の信頼性をより高くできる。
【0099】
図8は、一実施形態としてのセクタギア式の空替機能付受湯台車20Cの側面図である。(a)は全体図を示し、(b)はセクタギア44の部分図を示し、(c)は処理取鍋10に設置される取鍋回転支え48を説明するための図である。セクタギア式の空替機能付受湯台車20Cでは、台車本体24上に処理取鍋10を搬送するローラーコンベア41が設置される。
図8(a)では、空替機能付受湯台車20Cの進行方向に処理取鍋10を搬送するように示されるが、進行方向と直交方向に処理取鍋10を搬送するように設置されてもよい。ローラーコンベア41は、フォーク昇降式の空替機能付受湯台車20Aの取鍋移動機構35と同様の目的で処理取鍋10を移動する他、処理取鍋10の取鍋回転支え48を傾動装置40の空替軸42に嵌め合わせる。ローラーコンベア41は、台車本体24の直上ではなく、支柱等を間に介して、配置されてもよい。あるいは、フォーク昇降式の空替機能付受湯台車20Aの昇降フレーム34、パンタグラフ式の空替機能付受湯台車20Bのリンク機構29上に設置されてもよい。ローラーコンベア41と台車本体24との間には、第1重量計測器としてのロードセル112が配置される。
【0100】
傾動装置40は、処理取鍋10を支持し、また、傾動するときの回転中心となる空替軸42と、空替軸42を中心に回動するセクタギア44と、セクタギア44と噛み合って、セクタギア44を回動させるピニオン45と、ピニオン45を駆動する駆動モータ46を備える。セクタギア44は、処理取鍋10と一緒に回動するように、空替軸42とは異なる位置で処理取鍋10と結合される。処理取鍋10と一緒に回動するセクタギア44をピニオン45で駆動するので、小さな動力で処理取鍋10を傾動することができる。また、全て電動であるため、湯漏れしても火災が発生しにくい。他の構造は、フォーク昇降式の空替機能付受湯台車20Aと同様であるので、重複する説明は省略する。
【0101】
図9は、
図1とは別の、本発明の一実施形態の溶湯搬送システム2を有する鋳造工場内の平面図である。溶湯搬送システム2では、空替機能付受湯台車20が走行するレールR1と注湯取鍋搬送台車70が走行するレールR2とが直線上に並ぶ。この場合には、空替機能付受湯台車20が処理取鍋10を走行方向に移動可能であるか、注湯取鍋搬送台車70が注湯取鍋60を走行方向に移動可能であることが好ましい。他の構成は、溶湯搬送システム1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0102】
なお、注湯取鍋搬送台車70を備えずに、空替機能付受湯台車20が実取鍋コンベアS1の位置まで走行し、実取鍋コンベアS1上で待機する注湯取鍋60に溶湯を空け替えてもよい。注湯取鍋60は、注湯機100に移送され、鋳型Dに注湯する。注湯して空になった注湯取鍋60は、実取鍋コンベアS1に移送されて、再度、処理取鍋10から溶湯が空け替えられる。この場合、空取鍋コンベアS2を備えなくてもよい。また、空替接種装置80は、実取鍋コンベアS1のレールR2側に設けられる。
【0103】
これまでの説明では、溶湯搬送システム1、2は、注湯取鍋60を空替位置P4から注湯機100まで搬送する注湯取鍋搬送台車70とレールR2を備えるものとして説明した。しかし、注湯取鍋搬送台車70とレールR2を備えず、処理取鍋10から注湯機100に保持される注湯取鍋60に直接溶湯を空け替えてもよい。すなわち、空替位置P4と注湯機100とが同じ位置であってもよい。
【0104】
また、受取位置P1、投入位置P2、反応位置P3、空替位置P4のいずれかが同じ位置であってもよい。鋳造工場の敷地と、炉Fや鋳型ラインDLの配置によって、溶湯搬送システム1、2の形状は、適宜変更され得る。
【0105】
これまでの説明では、合金材投入装置50には合金材投入装置コントローラ120が備えられるとして説明したが、たとえば1種類の定量の合金材を投入する場合には、合金材投入装置50を単純な構造として、合金材投入装置コントローラ120を備えていなくてもよい。
【0106】
以下に、本明細書と図面で用いた主な符号を示す。
1、2: 溶湯搬送システム
10: 処理取鍋
12: ポケット部分
20、20A、20B、20C: 空替機能付受湯台車
22: 車輪
24: 台車本体
26: 走行機構
28: パンタグラフ式テーブル昇降機
29: リンク機構
31: ローラーガイド
32: ガイド柱
33: 保持ローラー
34: 昇降テーブル
35: 取鍋移動機構
36: 昇降テーブル昇降装置
38: 受電装置
40: 傾動装置
41: ローラーコンベア
42: 空替軸
44: セクタギア
45: ピニオン
46: セクタギア駆動装置
48: 取鍋回転支え
50: 合金材投入装置
51: ベルトコンベア
52: 投入用シュート
54: ホッパ
55: 電磁フィーダ
56: 計量ホッパ
58: 投入ゲート
60: 注湯取鍋
70: 注湯取鍋搬送台車
80: 空替接種装置
90: 反応室
100: 注湯機
110: 空替機能付受湯台車コントローラ
112; 第1重量計測器(ロードセル)
120: 合金材投入装置コントローラ
122: 第3重量計測器(ロードセル)
130: 注湯取鍋搬送台車コントローラ
140: 注湯機コントローラ
142: 第2重量計測器
150: 搬送ゾーンメインコントローラ
150: 注湯ゾーンメインコントローラ
D: 鋳型
DL: 鋳型ライン
F: 溶解炉(炉)
P1: 処理取鍋が炉から溶湯を受け取る受取位置
P2: 合金材投入装置から処理取鍋に合金材を投入する投入位置
P3: 合金材と溶湯とが反応する反応位置
P4: 処理取鍋から注湯取鍋へ溶湯を空け替える空替位置
R1: (空替機能付受湯台車用)レール
R2: (注湯取鍋搬送台車用)レール
R3: (注湯機用)レール
S1: 実取鍋コンベア
S2: 空取鍋コンベア
T1: 第1閾値
T2: 第2閾値
T3: 第3閾値
T4: 第4閾値
TF: フェーディングの開始からの経過時間
U: スターティングブロック
W1: 第1重量情報
W2: 第2重量情報
W3: 第3重量情報
W4: 第4重量情報
W5: 第5重量情報
W6: 第6重量情報
処理取鍋への合金材の投入を自動化すると共に、処理取鍋から注湯機への溶湯の搬送を自動化し、安全で、かつ、安定した品質の鋳造品を製造できる溶湯搬送システムおよび方法を提供する。炉(F)から注湯機(100)に溶湯を搬送する溶湯搬送システム(1)は、処理取鍋(10)と合金材投入装置(50)と注湯取鍋(60)と空替機能付受湯台車(20)と注湯取鍋搬送台車(70)と注湯機(100)とを備え、注湯機は注湯機コントローラを有し、合金材投入装置は合金材投入装置コントローラを有し、空替機能付受湯台車は空替機能付受湯台車コントローラを有し、注湯取鍋搬送台車は注湯取鍋搬送台車コントローラを有し、注湯機コントローラ、合金材投入装置コントローラ、空替機能付受湯台車コントローラおよび注湯取鍋搬送台車コントローラのうち、少なくとも2つのコントローラ間でデータ通信がなされる。