【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係るリッツ線の電気特性解析方法は、下記(1)〜(6)を特徴としている。
(1) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線の高周波領域における電気特性を解析するためのリッツ線の電気特性解析方法であって、
解析対象のリッツ線について、その長さ方向と直交する方向のある位置の断面構造のうち、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成ステップと、
前記リッツ線の全体に相当する単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出ステップと、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出ステップの結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出ステップと、
前記素線特性算出ステップで得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線の全体の電気的特性を算出する全体特性算出ステップと
を有すること。
(2) 上記(1)に記載のリッツ線の電気特性解析方法であって、
前記磁束密度算出ステップでは、各々の素線の位置における磁束密度を算出する際に、
前記単線モデルの単線の中心から該当する素線の位置までの距離が大きくなるにつれて磁束密度が比例的に増加するように計算を実施すること。
(3) 上記(1)に記載のリッツ線の電気特性解析方法であって、
前記磁束密度算出ステップでは、各々の素線の位置における磁束密度を算出する際に、前記リッツ線に含まれる全ての素線が存在する状態に相当する条件を適用して計算を実施すること。
(4) 上記(1)に記載のリッツ線の電気特性解析方法であって、
前記磁束密度算出ステップでは、各々の素線の位置における磁束密度を算出する際に、前記リッツ線に直流電流を流す状態に相当する条件を適用して計算を実施し、
前記素線特性算出ステップでは、前記磁束密度算出ステップの結果として得られる直流条件下の磁束密度に応じた振幅の交流磁場を適用して計算すること。
(5) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線を所定のコイル軸の周りを周回するようにコイル状に巻いて形成した電気部品の高周波領域における電気特性を解析するためのリッツ線の電気特性解析方法であって、
解析対象の電気部品の前記コイル軸と平行な方向の断面構造について、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成ステップと、
前記リッツ線の全体を含む単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出ステップと、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出ステップの結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出ステップと、
前記素線特性算出ステップで得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線のコイル1周回毎の電気的特性を算出する周回特性算出ステップと、
前記周回特性算出ステップの結果に基づいて、コイル全体の特性を算出するコイル特性算出ステップと
を有すること。
(6) 上記(5)に記載のリッツ線の電気特性解析方法であって、
前記磁束密度算出ステップでは、リッツ線の周回毎の位置の変化を反映するように、前記断面における磁束密度分布を算出すること。
【0017】
上記(1)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、多数の素線で構成されるリッツ線の特性を解析する場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、計算機を用いて解析を行う場合には大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。
上記(2)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、より正確な磁束密度を算出することができ、リッツ線を構成する素線の数が比較的少ない場合であっても比較的精度の高い計算結果が得られる。
上記(3)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、リッツ線を構成する素線の数が比較的多く、素線1本の影響が比較的小さい場合に、より単純な処理により計算を実行することが可能になる。
上記(4)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、直流の条件下で磁束密度を算出するので、表皮効果の影響を考慮する必要がない。そのため、リッツ線の断面全体の領域をメッシュ状の微小区画毎に区分して、微小区画毎に計算を行う場合には、メッシュの区画数を大幅に減らすことができ、計算の所要時間を大幅に短縮できる。
上記(5)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、リッツ線により構成されるコイル状の電気部品の電気特性を解析できる。また、リッツ線が多数の素線で構成される場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、計算機を用いて解析を行う場合には大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。
上記(6)の構成のリッツ線の電気特性解析方法によれば、コイルの巻数が多い場合や、周回毎にコイル軸から素線までの距離が変化する場合であっても、比較的精度の高い計算結果を得ることができる。
【0018】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気特性解析プログラムは、下記(7)及び(8)を特徴としている。
(7) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線の高周波領域における電気特性を解析するための、所定のコンピュータが実行可能な電気特性解析プログラムであって、
解析対象のリッツ線について、その長さ方向と直交する方向のある位置の断面構造のうち、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成ステップと、
前記リッツ線の全体に相当する単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出ステップと、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出ステップの結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出ステップと、
前記素線特性算出ステップで得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線の全体の電気的特性を算出する全体特性算出ステップと
を有すること。
(8) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線を所定のコイル軸の周りを周回するようにコイル状に巻いて形成した電気部品の高周波領域における電気特性を解析するための、所定のコンピュータが実行可能な電気特性解析プログラムであって、
解析対象の電気部品の前記コイル軸と平行な方向の断面構造について、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成ステップと、
前記リッツ線の全体を含む単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出ステップと、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出ステップの結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出ステップと、
前記素線特性算出ステップで得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線のコイル1周回毎の電気的特性を算出する周回特性算出ステップと、
前記周回特性算出ステップの結果に基づいて、コイル全体の特性を算出するコイル特性算出ステップと
を有すること。
【0019】
上記(7)の構成の電気特性解析プログラムを実行することにより、多数の素線で構成されるリッツ線の特性を解析する場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。
上記(8)の構成の電気特性解析プログラムを実行することにより、リッツ線により構成されるコイル状の電気部品の電気特性を解析できる。また、リッツ線が多数の素線で構成される場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。
【0020】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気特性解析装置は、下記(9)及び(10)を特徴としている。
(9) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線の高周波領域における電気特性を解析するための電気特性解析装置であって、
解析対象のリッツ線に関する所定の物理的特性パラメータを特定する情報を入力する情報入力部と、
前記物理的特性パラメータに基づき、前記リッツ線の長さ方向と直交する方向のある位置の断面構造のうち、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成部と、
前記物理的特性パラメータに基づき、前記リッツ線の全体に相当する単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出部と、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出部の計算結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出部と、
前記素線特性算出部で得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線の全体の電気的特性を算出する全体特性算出部と
を備えること。
(10) それぞれの表面が電気絶縁された導体で構成される複数の素線を撚り合わせて立体的に構成したリッツ線を所定のコイル軸の周りを周回するようにコイル状に巻いて形成した電気部品の高周波領域における電気特性を解析するための電気特性解析装置であって、
解析対象の電気部品に関する所定の物理的特性パラメータを特定する情報を入力する情報入力部と、
前記物理的特性パラメータに基づき、前記電気部品の前記コイル軸と平行な方向の断面構造について、前記リッツ線を構成する複数の素線の1つに相当する素線モデルを作成する素線モデル作成部と、
前記物理的特性パラメータに基づき、前記リッツ線の全体を含む単線モデルについて、前記断面における磁束密度分布を算出する磁束密度算出部と、
前記リッツ線を構成する複数の素線のそれぞれについて、該当する素線1本の通電電流と、前記磁束密度算出部の計算結果として得られる該当する素線位置の磁束密度と、前記素線モデルとに基づいて、電磁界解析の計算を適用し、所望の周波数における電流密度および電気的損失量を算出する素線特性算出部と、
前記素線特性算出部で得られる各素線の電気的損失量に基づいて、前記リッツ線のコイル1周回毎の電気的特性を算出する周回特性算出部と、
前記周回特性算出部の計算結果に基づいて、コイル全体の特性を算出するコイル特性算出部と
を備えること。
【0021】
上記(9)の構成の電気特性解析装置によれば、設計者等のユーザが必要とされる物理的特性パラメータの情報を入力するだけで計算結果を得ることができ、ユーザの負担を軽減し利便性を高めることができる。また、多数の素線で構成されるリッツ線の特性を解析する場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。
上記(10)の構成の電気特性解析装置によれば、設計者等のユーザが必要とされる物理的特性パラメータの情報を入力するだけでリッツ線により構成されるコイル状の電気部品の電気特性を解析でき、ユーザの負担を軽減し利便性を高めることができる。また、リッツ線が多数の素線で構成される場合であっても、単一の素線モデルだけに基づいて計算結果を得ることができる。従って、大量のメモリを使用する必要がなく、計算機のメモリ容量の制約を受けずに処理できる。