特許第5934500号(P5934500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934500
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】電線カバー
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/58 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   H01R13/58
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-265093(P2011-265093)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-118101(P2013-118101A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭史
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−305612(JP,A)
【文献】 特開平11−214080(JP,A)
【文献】 特開2002−343497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56 − 13/595
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングに装着されて前記コネクタハウジングから導出された電線を目的の方向に向けながら囲むカバー本体と、
前記カバー本体に一体形成されて前記電線を挿通する径の異なる複数種のコルゲートチューブの端部がそれぞれ固定される半円筒状のコルゲートチューブ固定部と、
前記コルゲートチューブ固定部の内周方向中央にてその内周方向に沿って突設されて小径の前記コルゲートチューブの外周溝に係合する第1係合突条と、
前記第1係合突条よりも大きい円弧径で前記コルゲートチューブ固定部の内周方向両端側にてその内周方向に沿って突設されて大径の前記コルゲートチューブの外周溝に係合する少なくとも二対の第2係合突条と、
前記コルゲートチューブ固定部の内周側に前記コルゲートチューブを緊締固定する結束部材と、を備え、
前記第1係合突条と前記第2係合突条とが、前記コルゲートチューブ固定部の同一内周方向に沿って突設され、且つ前記コルゲートチューブの軸線方向における異なる複数箇所にてその軸線方向において離散的にそれぞれ平行に設けられることを特徴とする電線カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングから導出された電線を目的の方向に向けながら囲む電線カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
コルゲートチューブをコネクタハウジングに固定するためのカバーを備えたコネクタが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
図5に示すように、この種のコネクタ501は、雌ハウジング(コネクタハウジング)503からは、3本の電線505が引き出されており、引き出された電線505をコルゲートチューブ507によって取り囲んでいる。コルゲートチューブ507は、雌ハウジング503に対してカバー509により固定される。カバー509は、上方へ開放するとともにその開放部分からコルゲートチューブ507を収容可能なカバー本体511と、カバー本体511の開放部分を閉止可能な蓋部513とから構成される。カバー本体511のうち、コルゲートチューブ507が収容されるコルゲート側保持部515は、コルゲートチューブ507を全周(半周以上)収容するような深さに形成されている。
【0003】
蓋部513がカバー本体511に対して正規の閉止状態に保持されると、図6に示すように、コルゲート側保持部515の開放部分が蓋部513によって塞がれる。これと同時に、カバー本体511及び蓋部513の係止部517がコルゲートチューブ507の溝部(外周溝)519に係止することで、コルゲートチューブ507が前後方向及び径方向へ抜け止め状態に強固に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−265765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のカバー509は、適用最大径のコルゲートチューブ507に合わせて係止部517の円弧半径が決定されている。このため、最大径のコルゲートチューブ507使用時は、カバー509にがたつき無く組み付けできるが、小さな径のコルゲートチューブの使用時は、カバー509との間にクリアランスが発生してしまう。すると、振動等が加わった際にはコルゲートチューブがクリアランスの分だけ動いてしまい、電線505も同時に動いてしまう。更に、電線505の動きはコネクタハウジング内の端子の動きを招き、端子の接点摩耗を促進させてしまい接点部の接触信頼性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、径の異なる複数種のコルゲートチューブをがたつき無く固定でき、コルゲートチューブのがたつきを発端とした電線の動きを誘発することがない電線カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
コネクタハウジングに装着されて前記コネクタハウジングから導出された電線を目的の方向に向けながら囲むカバー本体と、
前記カバー本体に一体形成されて前記電線を挿通する径の異なる複数種のコルゲートチューブの端部がそれぞれ固定される半円筒状のコルゲートチューブ固定部と、
前記コルゲートチューブ固定部の内周方向中央にてその内周方向に沿って突設されて小径の前記コルゲートチューブの外周溝に係合する第1係合突条と、
前記第1係合突条よりも大きい円弧径で前記コルゲートチューブ固定部の内周方向両端側にてその内周方向に沿って突設されて大径の前記コルゲートチューブの外周溝に係合する少なくとも二対の第2係合突条と、
前記コルゲートチューブ固定部の内周側に前記コルゲートチューブを緊締固定する結束部材と、を備え、
前記第1係合突条と前記第2係合突条とが、前記コルゲートチューブ固定部の同一内周方向に沿って突設され、且つ前記コルゲートチューブの軸線方向における異なる複数箇所にてその軸線方向において離散的にそれぞれ平行に設けられることを特徴とする電線カバー。
【0008】
上記(1)の構成の電線カバーによれば、コルゲートチューブ固定部における第1係合突条の円弧径は小径のコルゲートチューブの外径と略同径とされるので、小径のコルゲートチューブが結束部材にてコルゲートチューブ固定部の内周側に緊締固定されると、第1係合突条がコルゲートチューブの外周溝に沿って係合する。コルゲートチューブの外周溝と係合第1係合突条との間にはクリアランスが生じず、小径のコルゲートチューブは軸方向及び径方向へ動くことはない。
また、コルゲートチューブ固定部における第2係合突条の円弧径は大径のコルゲートチューブの外径と略同径とされるので、大径のコルゲートチューブが結束部材にてコルゲートチューブ固定部の内周側に緊締固定されると、第2係合突条がコルゲートチューブの外周溝に沿って係合する。コルゲートチューブの外周溝と第2係合突条との間にはクリアランスが生じず、大径のコルゲートチューブも軸方向及び径方向へ動くことはない。
従って、コルゲートチューブ固定部には、径の異なる複数種のコルゲートチューブをそれぞれがたつき無く固定できる。
【0010】
また、上記(1)の構成の電線カバーによれば、第1係合突条と第2係合突条とが、前記コルゲートチューブの軸線と直交する同一平面上に形成されるので、コルゲートチューブ固定部の軸線方向寸法をコンパクトにできる。
【0012】
また、上記(1)の構成の電線カバーによれば、第1係合突条又は前記第2係合突条が、小径又は大径のコルゲートチューブの軸線に沿う複数箇所で外周溝に係合することができるので、1箇所で係合する場合に比べて係合代を増やし、コルゲートチューブを外れ難くすることができる。特に、半円筒状のコルゲートチューブ固定部における限られた内周方向領域に二対以上の第2係合突条が突設されることにより、それぞれの係合突条の内周方向長さが短くなって係合代が減る場合でも、コルゲートチューブの軸線に沿う複数箇所で外周溝に係合することで係合代を増やすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電線カバーによれば、径の異なる複数種のコルゲートチューブをがたつき無く固定でき、コルゲートチューブのがたつきを発端とした電線の動きを誘発することがない。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る電線カバーの斜視図である。
図2図1に示した電線カバーを電線導出側から見た正面図である。
図3図1に示した電線カバーがコネクタハウジングに装着されてコルゲートチューブを固定した状態の斜視図である。
図4】(a)は小径のコルゲートチューブが第1係合突条に係合された電線カバーの正面図、(b)は大径のコルゲートチューブが第2係合突条に係合された電線カバーの正面図である。
図5】従来のカバーを備えたコネクタの斜視図である。
図6図5に示したカバーの蓋部を閉止した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る電線カバー11は、図3に示すように、相手コネクタ50との挿入力を低減するためのレバー13を備えた例えば低挿入力コネクタ15に適用することができる。
【0017】
低挿入力コネクタ15は、コネクタハウジング17内に図示しない複数の端子を収容する。それぞれの端子には電線19が接続され、電線19は相手コネクタ50との嵌合側と反対側のハウジング後部21から導出される。電線カバー11は、このハウジング後部21に係止部23を係止して装着され、電線19を目的の方向に向けながら囲む。
【0018】
本実施形態では、ハウジング後部21から導出された複数の電線19は、コネクタ嵌合方向(図3の上下方向)と直交する方向に曲げられた状態で電線カバー11によって覆われる。つまり、電線カバー11は、L字状に曲がった電線収容経路25を有している(図1参照)。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の電線カバー11は、コネクタハウジング17に装着されて該コネクタハウジング17から導出された電線19を目的の方向に向けながら囲むカバー本体27と、カバー本体27に一体形成されて電線19を挿通する径の異なる複数種(本実施形態では2種)のコルゲートチューブ47,51の端部がそれぞれ固定される半円筒状のコルゲートチューブ固定部31と、コルゲートチューブ固定部31の内周側に小径のコルゲートチューブ47又は大径のコルゲートチューブ51を緊締固定する結束バンド53(図3参照)とを備える。
【0020】
カバー本体27は、ハウジング後部21から導出された直後の電線19を収容する基端側電線収容部29と、基端側電線収容部29に連設されて直交方向に曲げられた電線19を収容する先端側電線収容部33とを有する。
コルゲートチューブ固定部31は、先端側とコネクタハウジング17に対面する側とが開放された半円筒状に形成されている。コルゲートチューブ固定部31の外周には、結束バンド53を位置決めするための一対の平行な張出壁35が形成される。
【0021】
図2に示すように、コルゲートチューブ固定部31の内周方向中央には、小径のコルゲートチューブ47の外周溝39に係合する第1係合突条45が突設される。また、コルゲートチューブ固定部31の内周方向両端側には、大径のコルゲートチューブ51の外周溝39に係合する一対の第2係合突条49が突設される。本実施形態における第1係合突条45と第2係合突条49とは、コルゲートチューブ固定部31の同一内周方向に沿って突設されている。
【0022】
コルゲートチューブ固定部31の内方を通る複数の電線19は、一括してコルゲートチューブ47又は51に挿入される。つまり、複数の電線19は、コルゲートチューブ47又は51によって保護される。
これらコルゲートチューブ47,51は、合成樹脂製とされ、外周に周方向の外周溝39と突条部41とを交互に配した蛇腹状をなすとともに可撓性を有しており、その軸線43を湾曲させつつ撓み変形できるようになっている。このコルゲートチューブ47又は51によってハウジング後部21から導出された電線19の周りを囲むことで、電線19が外部に剥き出しにならずに保護される。
【0023】
そして、図4(a)に示すように、小径のコルゲートチューブ47の外周溝39の外径と略同径の円弧径R1を有する第1係合突条45の内周縁は、小径のコルゲートチューブ47の外周溝39に沿って係合することができる。
また、図4(b)に示すように、大径のコルゲートチューブ51の外周溝39の外径と略同径で第1係合突条45よりも大きい円弧径R2を有する一対の第2係合突条49の内周縁は、大径のコルゲートチューブ51の外周溝39に沿って係合することができる。
【0024】
コルゲートチューブ固定部31の外周方向の両端側には、結束バンド53を通すバンド挿通穴54が穿設されている。バンド挿通穴54に挿通された結束バンド53は、コルゲートチューブ固定部31の内周側にコルゲートチューブ37を緊締固定する。
結束バンド53は、合成樹脂からなる可撓性を有する結束帯55の基端に、係止片を内部に備えたバックル部57を有する結束部材である。結束帯55の表面には係止片に係止される複数の係止溝が長手方向に形成されている。結束バンド53は、バックル部57の貫通穴に結束帯55の先端を通すことで、係止片によって抜けが規制され、ループ内に配置した複数部材(コルゲートチューブ固定部31、コルゲートチューブ47又は51)の結束が可能となる。
【0025】
次に、上記構成を有する電線カバー11の作用を説明する。
上記構成を有する電線カバー11では、図3に示した結束バンド53にてコルゲートチューブ固定部31の内側にコルゲートチューブ47又は51が固定される。
先ず、小径のコルゲートチューブ47が結束バンド53にてコルゲートチューブ固定部31の内周側に緊締固定される際には、コルゲートチューブ固定部31における第1係合突条45の円弧径R1が小径のコルゲートチューブ47の外周溝39の外径と略同径とされているので、第1係合突条45が小径のコルゲートチューブ47の外周溝39に沿って係合する(図4(a)参照)。そこで、小径のコルゲートチューブ47の外周溝39と第1係合突条45との間にはクリアランスが生じず、小径のコルゲートチューブ47は軸方向及び径方向へ動くことはない。
【0026】
また、大径のコルゲートチューブ51が結束バンド53にてコルゲートチューブ固定部31の内周側に緊締固定される際には、コルゲートチューブ固定部31における第2係合突条49の円弧径R2が大径のコルゲートチューブ51の外周溝39の外径と略同径とされているので、第2係合突条49が大径のコルゲートチューブ51の外周溝39に沿って係合する(図4(b)参照)。そこで、大径のコルゲートチューブ51の外周溝39と第2係合突条49との間にはクリアランスが生じず、大径のコルゲートチューブ51も軸方向及び径方向へ動くことはない。
【0027】
従って、コルゲートチューブ固定部31には、2種類の径の異なる大径のコルゲートチューブ51と小径のコルゲートチューブ47をそれぞれがたつき無く固定できる。
この結果、本実施形態の電線カバー11は、コルゲートチューブ47,51のがたつきを発端とした電線19の動きを誘発することがなく、コネクタハウジング17内の端子接点部の接触信頼性を確保できる。
【0028】
尚、上述した本実施形態の電線カバー11においては、第1係合突条45と第2係合突条49とが、コルゲートチューブ47,51の軸線43と直交する同一平面上に形成されるので、コルゲートチューブ固定部31の軸線方向寸法をコンパクトにできる。勿論、本発明における第1係合突条45と第2係合突条49とは、コルゲートチューブ47,51の軸線43に沿う方向にそれぞれオフセットして設けることもできる。
【0029】
また、第1係合突条と第2係合突条とを、コルゲートチューブの軸線に沿う方向にそれぞれ平行に複数設けることにより、第1係合突条又は前記第2係合突条は、小径又は大径のコルゲートチューブの軸線に沿う複数箇所でそれぞれ外周溝に係合することができる。そこで、1箇所でそれぞれ外周溝に係合する場合に比べて係合代を増やし、コルゲートチューブを外れ難くすることができる。
【0030】
例えば、半円筒状のコルゲートチューブ固定部における限られた内周方向領域に二対以上の第2係合突条を突設し、3種類以上の径の異なるコルゲートチューブを固定可能とする場合には、それぞれの係合突条の内周方向長さが短くなって係合代が減るので、上記の如く第1係合突条と第2係合突条とは、コルゲートチューブの軸線に沿う方向にそれぞれ平行に複数設けられることが望ましい。
【0031】
なお、本発明の電線カバーは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態においては結束部材として合成樹脂製の結束バンド53を用いたが、コルゲートチューブをコルゲートチューブ固定部に緊締固定できるものであれば、薄板金属製のスチールバンドや粘着テープ等の公知の種々の結束部材を用いることができることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
11…電線カバー
17…コネクタハウジング
19…電線
27…カバー本体
31…コルゲートチューブ固定部
43…軸線
45…第1係合突条
47…小径のコルゲートチューブ
49…第2係合突条
51…大径のコルゲートチューブ
53…結束バンド(結束部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6