特許第5934515号(P5934515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934515
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20160602BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20160602BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F04D29/62 A
   F04D29/42 E
   F04D29/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-32494(P2012-32494)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-167234(P2013-167234A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友也
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275972(JP,A)
【文献】 実開昭57−117789(JP,U)
【文献】 特開2008−291780(JP,A)
【文献】 米国特許第04187053(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/62
F04D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の室内ユニットに装備され、空気調和機の運転時に生じるドレン水を吸い上げて室外へ吐出する排水ポンプであって、
吸込口、吐出口及びそれらに連通するポンプ室を有するポンプ本体と、前記ポンプ室内に配設される回転羽根と、前記回転羽根を回転させるモータと、前記ポンプ本体の上部に組み付けられるとともに前記モータを支持するモータ受け部材とを備え、
前記モータがモールドモータであり、
前記モータ受け部材は、前記ポンプ本体の開口部を覆う蓋部と、前記蓋部と一体成形されるモータ受け部と、前記モータ受け部に一体成形され、前記室内ユニットに取り付けるための複数の取付脚と、前記複数の取付脚に対応する位置に形成された複数の取付穴と、を有し、
前記モールドモータには、前記複数の取付穴に対応する位置に複数の凸部が一体成形されており、
前記複数の取付穴と前記複数の凸部とが結合することにより、前記モールドモータをスナップフィット結合で固定する固定手段を形成することを特徴とする排水ポンプ。
【請求項2】
前記複数の取付穴は、前記モータ受け部と同心の1つの円周上に位置するとともに、前記モータ受け部の中心軸の周りに等角度間隔をおいて配置されることを特徴とする請求項1記載の排水ポンプ。
【請求項3】
前記複数の取付穴を3個備え、1つの第2嵌合部の中心と前記モータ受け部の中心とを通る直線に対して他の2つの取付穴の中心が線対称に配置されることを特徴とする請求項1記載の排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室内ユニットに装備され、空気調和機の運転時に生じるドレン水を吸い上げて室外へ向けて吐出する排水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の天井に取り付けられる空気調和機の室内ユニットは、運転時に生じるドレン水をドレンパンに溜め、その水を排水ポンプで吸い上げて室外へ向けて吐出するようにしている。
【0003】
下記の特許文献1には、この種の排水ポンプの一例が開示されている。この排水ポンプは、吸込口、吐出口及びそれらに連通するポンプ室を有するポンプ本体と、ポンプ室内に配設される回転羽根と、回転羽根を回転させるモータと、ポンプ本体の上部に固着されるとともにモータを支持するモータ受け部材とを備える。
【0004】
モータは、上ケースと下ケースから成る防水構造によって覆われ、下ケースを介してモータ受け部材に支持されている。上ケースには、室内ユニットにねじ止めによって固定するための取付脚が一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−291780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した排水ポンプにあっては、円筒状のモータ受け部材の上部にモータを収容した別体の防水構造物を取り付ける構成となっているため、部品点数と組立工数が多く、製造コストが高騰するという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、モータの防水性を確保しつつ部品点数を削減することができる排水ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の排水ポンプは、空気調和機の室内ユニットに装備され、空気調和機の運転時に生じるドレン水を吸い上げて室外へ向けて吐出する排水ポンプであって、吸込口、吐出口及びそれらに連通するポンプ室を有するポンプ本体と、ポンプ室内に配設される回転羽根と、回転羽根を回転させるモータと、ポンプ本体の上部に固着されるとともにモータを支持するモータ受け部材とを備え、モータがモールドモータであり、モータ受け部材は、ポンプ本体の開口部を覆う蓋部と、蓋部と一体成形されるモータ受け部と、モータ受け部に一体成形され、室内ユニットに取り付けるための複数の取付脚とを有するものである。
【0009】
本発明の排水ポンプは、モールドモータのモータ受け部材への組み付けを容易にするために、モールドモータをスナップフィット結合でモータ受け部に固定する固定手段を有する
【0010】
この場合、前記固定手段を、モールドモータに一体成形される第1嵌合部と、モータ受け部に一体成形されるとともに第1嵌合部と嵌合する第2嵌合部とから成るものとする。
【0011】
また、取付脚を室内ユニットへ固定する際の応力によるモータ受け部の変形を防いで回転羽根とポンプ本体との同心性を向上するために、複数の取付脚の取付孔の中心が、モータ受け部と同心の1つの円周上に位置するとともに、モータ受け部の中心点の周りに等角度間隔をおいて配置されるようにすることが好ましい。
【0012】
なお、取付脚を3個とするとともに、1つの取付脚の取付孔の中心とモータ受け部の中心とを通る直線に対して他の2つの取付脚の取付孔の中心が線対称に配置されるようにしても、同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排水ポンプは、回転羽根を回転させるモータをモールドモータとし、室内ユニットへの取付脚をモータ受け部に一体成形することにより、モータの防水性を確保しつつ部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の排水ポンプの一実施例を示し、(a)は正面図(b)は要部平面図である。
図2図1の排水ポンプの断面図である。
図3図1の排水ポンプの固定手段の説明図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】本発明の排水ポンプの他の実施例を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、2に示すように、排水ポンプ1は、合成樹脂製のポンプ本体10を備えており、ポンプ本体10は、下方に突出する吸込口12と、水平方向に突出する吐出口16と、吸込口12及び吐出口16に連通するポンプ室14とを有する。
【0016】
ポンプ室14内には回転羽根20が配設される。回転羽根20は、取付軸21から径方向に延びる複数の大径羽根(図示せず)と、各大径羽根から下方に向けて軸方向に延びる複数の小径羽根22と、複数の大径羽根の下縁部を連結するとともに中心に開口部を有する円盤23と、複数の大径羽根の外周部を連結するリング24とを備える。取付軸21の中心に形成した取付穴に後述するモールドモータ100の出力軸110が圧入される。モールドモータ100を駆動すると、回転羽根20がポンプ室14内で回転する。
【0017】
ポンプ本体10の上面は開口していて、これを覆うようにモータ受け部材50が取り付けられる。モータ受け部材50は、ポンプ本体10に一体成形された一対のフック状の取付部80によりポンプ本体10に結合される。モータ受け部材50は、ポンプ本体10の開口部を覆う蓋部52を有し、この蓋部52とポンプ本体10との間にはOリング40が配設される。
【0018】
蓋部52は回転羽根20の取付軸21が貫通する開口部54を有し、排水ポンプ1の停止時には、ポンプ室14内の水が開口部54から外部へ噴出するが、取付軸21と出力軸110との間に取り付けられた水切り30により、この水がモールドモータ100側へ飛散するのを防止する。
【0019】
モータ受け部材50の内側には複数の支柱56が形成され、モールドモータ100の下面を支持する。モータ受け部材50の上部には上面が開口するモータ受け部60が形成されている。モータ受け部60は下端部に段付部66を有し、この段付部66でモールドモータ100を支持する。
【0020】
モータ受け部60の上端には上外方へ突出する複数の取付脚70が一体成形される。この取付脚70には、排水ポンプ1を室内ユニットへ固定するためのねじが貫通する取付孔72が形成されている。本実施例にあっては、3個の取付脚70が設けられており、これらの取付脚70の取付孔72の中心は、モータ受け部60と同心の1つの円周上に位置するとともに、モータ受け部60の中心点の周りに等角度間隔をおいて配置されている。
【0021】
そして、モータ受け部60の上端部における各取付脚70に対応する位置に取付穴90(第2嵌合部)が形成されている。図3、4に示すように、本実施例にあっては、この取付穴90は四角穴に形成されている。この取付穴90とモールドモータ100の凸部130(第1嵌合部)とにより、モールドモータ100をモータ受け部60にスナップフィット結合で着脱可能に固定する固定手段を構成する。
【0022】
モールドモータ100は、固定子をBMC等の防水性樹脂で覆ったモータ本体105に上軸受部120及び下軸受部122を介して出力軸110を回転自在に装備したものである。このような構造であると、別体の防水カバーをモータに取り付ける必要がなくなるので、部品点数が低減する。そして、これに伴って、従来は防水カバーに設けていた取付脚70をモータ受け部材50に設けている。
【0023】
そして、モールドモータ100の上部の外周部に3個の凸部130が一体成形されている。図4に示すように、凸部130の下面は傾斜面132とされており、モールドモータ100の各凸部130をモータ受け部60の取付穴90の位置に合わせてモールドモータ100をモータ受け部60内に挿入すると、モールドモータ100の底面がモータ受け部60の段付部66に当接するのとほぼ同時に各凸部130が取付穴90に嵌合してモールドモータ100がモータ受け部60に固定される。
【0024】
凸部130の外径寸法は、取付穴90の内径寸法よりわずかに小さく形成されている。モータ受け部60は樹脂材料で形成されており、径方向に弾性変形する。モールドモータ100をモータ受け部60内に押し込むことにより、凸部130は取付穴90に対していわゆるスナップフィット結合で結合される。
【0025】
上述したように、モータ受け部材50の取付脚70の取付孔72の中心は、モータ受け部60と同心の1つの円周上に位置するとともに、モータ受け部60の中心点の周りに等角度間隔をおいて配置されているため、各取付脚70を室内ユニットへねじ止めするとき、各取付脚70を介してモータ受け部60に作用する応力が相殺されるので、各スナップフィット結合部からモールドモータ100に作用する応力がほぼ均一となる。これにより、モールドモータ100に接続された回転羽根20とポンプ本体10との同心性が向上し、回転羽根20とポンプ本体10との間に形成される隙間がほぼ均一になるので、騒音・振動が低減する。
【0026】
本発明では、回転羽根20を回転させるモータがモールドモータ100であるので、モータを覆う防水カバーが無くても防水性を確保することができる。また、室内ユニットへの取付脚70をモータ受け部材50に一体成形している。したがって、従来に比べて部品点数が少なく、製造コストが低減する。
【0027】
図5は本発明の他の実施例を示す。なお、図1の実施例と同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。本実施例にあってもモータ受け部60はその上端に3個の取付脚70’を備える。そして、1つの取付脚70’の取付孔72の中心とモータ受け部60の中心とを通る直線Lに対して残りの2つの取付脚70’の中心が線対称に配置されている。すなわち、角度αとβが等しくなっている。
【0028】
本実施例においても、各取付脚70’を室内ユニットへねじ止めするとき、各取付脚70’を介してモータ受け部60に作用する応力が相殺されるため、各スナップフィット結合部からモールドモータ100に作用する応力がほぼ均一になり、回転羽根20とポンプ本体10との同心性が向上するので、騒音・振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 排水ポンプ
10 ポンプ本体
12 吸込口
14 ポンプ室
16 吐出口
20 回転羽根
50 モータ受け部材
52 蓋部
60 モータ受け部
70 取付脚
90 取付穴(第2嵌合部)
100 モールドモータ
130 凸部(第1嵌合部)
図1
図2
図3
図4
図5