(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記期間変更部は、前記スイッチング周波数を変更することで前記デッドタイムの期間を前記第1期間と前記第2期間に変更することを特徴とする請求項1記載の電極故障診断装置。
前記期間変更部は、前記オン期間のデューティ比を変更することで前記デッドタイムの期間を前記第1期間と前記第2期間に変更することを特徴とする請求項1記載の電極故障診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電極故障診断装置には、つぎのような問題があった。すなわち、静電容量式レベルセンサを用いて、導電性のある液体を測定する場合、電極の絶縁被覆が必要となる。この絶縁被膜により電極と液体が絶縁される。
【0007】
しかし、数年の経時変化、製造時の傷、ピンホール等により、絶縁被膜が破損し、電極と液体とが完全に絶縁状態にならず、電極間で導通が起きた場合、適正な出力が得られない。つまり、静電容量の値が小さいのは、検出対象である液体によるものか、それとも導通によるものかを判断することができず、検出される静電容量が正しいものでなくなる。
【0008】
このため、電極間の故障を診断するために、電極部の構成を変更することも考えられるが、複雑なものとなる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極部の構成を変更することなく、簡単に電極間の故障診断を行うことができる電極故障診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電極故障診断装置は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 電極間
に導通があるという故障を診断する電極故障診断装置であって、
前記電極間に直流電圧を印加する印加部と、
前記電極間の静電容量を検出する静電容量検出部と、
前記電極間に対する前記印加部の接続、及び前記電極間に対する前記静電容量検出部の接続を、スイッチング周波数で交互にオンまたはオフに切り替えるスイッチ部と、
前記印加部の接続がオフにされてから前記静電容量検出部の接続がオンになるまでのデッドタイムの期間を第1期間と前記第1期間とは異なる第2期間に変更する期間変更部と、
前記静電容量検出部によって検出される、前記第1期間経過後の静電容量と前記第2期間経過後の静電容量とが略等しいか否かを判別する判別部と、
前記第1期間経過後の静電容量と前記第2期間経過後の静電容量が略等しくない場合、前記電極間
に導通があるという故障を検出する故障検出部と、
を備えること。
(2) 上記(1)の構成の電極故障診断装置であって、
前記期間変更部は、前記スイッチング周波数を変更することで前記デッドタイムの期間を前記第1期間と前記第2期間に変更すること。
(3) 上記(1)の構成の電極故障診断装置であって、
前記期間変更部は、前記オン期間のデューティ比を変更することで前記デッドタイムの期間を前記第1期間と前記第2期間に変更すること。
(4) 上記(1)から(3)のいずれか一つの構成の電極故障診断装置であって、
前記電極の少なくとも一方の表面が絶縁材で覆われ、
導電性を有する液体に前記電極間が浸かっている状態で、前記印加部は前記電極間に直流電圧を印加すること。
【0011】
上記(1)〜(4)の構成の電極故障診断装置によれば、デッドタイムの期間である第1期間経過後の静電容量と第2期間経過後の静電容量が略等しくない場合、電極間
に導通があるという故障を検出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、デッドタイムの期間である第1期間経過後の静電容量と第2期間経過後の静電容量が略等しくない場合、電極間の故障を検出するので、電極部の構成を変更することなく、簡単に電極間の故障診断を行うことができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態における電極故障診断装置について図面を用いて説明する。本実施形態の電極故障診断装置は、タンク内の液体の液面レベル(液位)を検出する静電容量式レベルモニタに適用される。
【0016】
この静電容量式レベルモニタは、液位センサの電極間の静電容量から液面レベルを検出する。また、静電容量式レベルモニタは、誘電率センサの電極間の静電容量から誘電率(比誘電率)を検出し、液面レベルを算出する際の補正に用いる。
【0017】
始めに、静電容量式レベルモニタを用いた静電容量の測定について説明する。
図3は導電性を有する液体に浸漬された静電容量式レベルモニタ1による静電容量の測定を説明する図である。タンク9内には、液位センサ2及び誘電率センサ6が収容されている。液位センサ2は、鉛直方向にそれぞれ延びた、液位検出電極4及び接地電極5を有し、液位検出電極4及び接地電極5間の電圧を測定することにより、その静電容量Csを検出する。液位検出電極4の表面は、絶縁被覆11(絶縁材)で覆われている。なお、液位検出電極4の代わりにあるいは液位検出電極4と共に、接地電極5の表面を絶縁被覆で覆うようにしてもよい。
【0018】
また、誘電率センサ6は、タンク9内の液体に常に浸漬されるように、底側に配置され、鉛直方向にそれぞれ延びた、誘電率検出電極7及び接地電極8を有し、誘電率検出電極7及び接地電極8間の電圧を測定することにより、その静電容量Crを検出する。誘電率検出電極7の表面は、絶縁被覆16で覆われている。なお、誘電率検出電極7の代わりにあるいは誘電率検出電極7と共に、接地電極8の表面を絶縁被覆で覆うようにしてもよい。
【0019】
図1は実施形態における電極故障診断装置が適用された静電容量式レベルモニタ1のスイッチトキャパシタCV変換回路10の構成を示す図である。スイッチトキャパシタCV変換回路10は、スイッチトキャパシタを構成する静電容量CsとスイッチSW1、SW2(スイッチ部)の他、オペアンプ12、ドライバ13、平滑回路15、A/Dコンバータ17及びマイクロコンピュータ(MCU)20を有する。
【0020】
また、オペアンプ12の反転入力端子及び出力端子間には、フィードバック抵抗Rfが接続される。液位センサ2の液位検出電極4(
図3参照)と電源電圧V
IN(印加部)との間には、ドライバ13の駆動信号によってオン/オフに切り替えられるスイッチSW1が接続される。液位センサ2の液位検出電極4とオペアンプ12の反転入力端子との間には、ドライバ13の駆動信号によってオン/オフに切り替えられるスイッチSW2が接続される。
【0021】
MCU20は、周知のCPU21、ROM22、RAM23等を有し、液位計測動作や後述する電極間故障診断動作を行う。また、MCU20は、クロックCLKをドライバ13に供給する。ドライバ13は、クロックCLKを分周し、スイッチング周波数fsを生成し、このスイッチング周期(所定の周期)でスイッチSW1、SW2をオン/オフに駆動する。
【0022】
オペアンプ12の出力は、平滑回路15で平滑化され、A/Dコンバータ17によってデジタル値に変換されてMCU20に入力される。
【0023】
図2(A)から
図2(C)はスイッチトキャパシタCV変換回路10の動作及び等価回路を示す図である。スイッチSW1とスイッチSW2は、ドライバ13の駆動信号によって交互にオンまたはオフに切り替えられる。
【0024】
図2(A)はスイッチSW1がオンである場合を示す。スイッチSW1のオン時、スイッチSW2はオフとなり、スイッチSW1を介して電源電圧V
IN(直流電圧)に接続された液位センサ2の電極間に電荷が蓄えられ、静電容量Csの電荷Qは、数式(1)に示す値となる。
Q=Cs×V
IN ……(1)
【0025】
また、静電容量Csに流れる平均電流I
aveは、数式(2)で表される。
I
ave=Q/Δt ……(2)
【0026】
ここで、Δtは、スイッチSW1のオン時間であるので、スイッチング周波数fsを用いると、Δt=1/fsであることから、数式(1)、(2)により数式(3)が得られる。
I
ave=Cs×V
IN×fs ……(3)
【0027】
このように、平均電流I
aveは、スイッチング周波数fsに依存することがわかる。スイッチング周期を長い時間でみると、数式(3)は数式(4)で表される。
V
IN/I
ave=1/(Cs×fs) ……(4)
【0028】
スイッチトキャパシタの抵抗をRcsとすると、Rcs= V
IN/I
aveであるから、抵抗Rcsは、数式(5)で表される。
Rcs=1/(Cs×fs) ……(5)
【0029】
図2(B)はスイッチSW2がオンである場合を示す。スイッチSW1をオフにしてスイッチSW2をオンにすると、液位センサ2の液位検出電極4は、スイッチSW2を介してオペアンプ12の反転入力端子に接続される。このとき、静電容量Csの電荷Qは、オペアンプ12を介して減少する。
【0030】
スイッチトキャパシタの抵抗Rcsが数式(5)で表されるので、スイッチトキャパシタCV変換回路10の等価回路は、
図2(C)に示すようになる。この等価回路では、オペアンプ12は、反転増幅回路を構成し、その出力電圧Voutは、数式(6)で表される。
Vout=−(Rf/Rcs)×V
IN ……(6)
【0031】
さらに、数式(5)、(6)から数式(7)が得られる。
Vout=−Rf×Cs×fs×V
IN
Cs=Vout/(−Rf×fs×V
IN) ……(7)
【0032】
このように、液位センサ2の電極間の静電容量Csは、オペアンプ12の出力電圧Vout、フィードバック抵抗Rfの抵抗値、スイッチング周波数fs及び電源電圧V
INから求まる。
【0033】
従って、MCU20は、液位センサ2の静電容量Csの変化をオペアンプ12(静電容量検出部)の出力電圧Voutの変化として検出し、液位を計測する。ここで、スイッチング周波数fsが変化しても、相応してオペアンプ12の出力電圧Voutも変化するため、フィードバック抵抗Rfと電源電圧V
INが一定であれば求まる静電容量Csは一定である。
【0034】
上記構成を有する静電容量式レベルモニタ1の動作を示す。
図4は液位センサ2の電極間が導通している場合のスイッチトキャパシタCV変換回路10の構成を示す図である。電極の絶縁被膜の破損等、電極間の故障が発生した場合、導電性を有する液体中では、電極間にリーク電流が流れる。このため、等価回路には、液位センサ2の静電容量Csと並列に抵抗Rlが付加される。この抵抗Rlは、タンク9(
図3参照)内の液体の電気抵抗に相当する。
【0035】
静電容量Csに蓄えられた電荷は抵抗Rlを通じて放電されるので、オペアンプ12の出力電圧Voutが低下し、見かけ上、静電容量Csの値が実際より小さくなる。
【0036】
本実施形態の静電容量式レベルモニタ1は、スイッチング周波数fsを液位測定時より低くして計測することで、電極間の故障診断を行う。スイッチング周波数fsを低くすると、スイッチSW1、SW2を切り替える時間が長くなり、一旦蓄えられた電荷の漏れ(リーク)量が増えるので、見かけ上、静電容量Csの値は更に小さくなる。
【0037】
つまり、スイッチング周波数fsを下げて計測した時に算出される静電容量Csの値が変動しない場合、電極間の故障無しと判断することができ、一方、静電容量Csの値が変動した場合、電極間の故障(導通)有りと判断することができる。
【0038】
この故障診断について詳述する。
図5(A)及び
図5(B)はスイッチトキャパシタCV変換回路10における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
図5(A)は第1のデッドタイムTdによる検出、
図5(B)は第2のデッドタイムTdによる検出を示す。
【0039】
前述したように、スイッチSW1のオン時、静電容量Csに電荷が蓄えられ、スイッチSW2のオン時、蓄えられた電荷が放電される。ここで、スイッチSW1、SW2の切り替えタイミングには、デッドタイムTdが存在し、どちらもオフになる期間がある。このオフになる期間は、抵抗Rlによる放電期間となる。
【0040】
スイッチング周波数fsを下げ(期間変更部)、スイッチSW1、SW2のオン時間(T
ON)を固定すると、デッドタイムTdが長くなり、電荷の放電量が増える。
【0041】
液位センサ2の電極間に故障が無い場合、スイッチング周波数fsを変更しても、スイッチSW2がオンになった時に静電容量Csから移動する電荷の量は変わらない。
【0042】
しかし、電極間が故障して導通していると、抵抗Rlによる放電が生じ、スイッチSW2がオンになるまでに、静電容量Csに蓄えられている電荷の量は減少する。
【0043】
従って、電極間が導通しているような場合、オペアンプ12の出力電圧Voutは、スイッチング周波数fsを下げるほど減少する。これにより、電極間の故障診断が可能となる。
【0044】
図6は電極間故障診断の動作を示すフローチャートである。この動作プログラムは、マイクロコンピュータ(MCU)20内のROM22に格納されており、MCU20内のCPU21によって電源オン時に実行される。
【0045】
CPU21は、まず、スイッチング周波数fsを周波数f1に設定して液位計測を行い、静電容量Csの値Cs1を算出する(ステップS1)。さらに、CPU21は、スイッチング周波数fsを周波数f2に設定して液位計測を行い、静電容量Csの値Cs2を算出する(ステップS2)。
【0046】
CPU21は、値Cs1と値Cs2が略等しいか否かを判別する(ステップS3)。等しくない場合、CPU21は、電極間の故障が発生しているとして、警告信号を出力する(ステップS4)。ステップS3、S4の処理はそれぞれ判別部、故障検出部に相当する。
【0047】
一方、ステップS3で値Cs1と値Cs2が略等しい場合、CPU21は、スイッチング周波数fsを周波数f1に設定して通常の液位計測を行い、静電容量Csを算出する(ステップS5)。なお、ステップS5では、静電容量Csとして、ステップS1で算出された値Cs1を用いてもよい。
【0048】
CPU21は、ステップS5で算出された静電容量Csを液位に換算する(ステップS6)。この液位換算では、ROM22に登録されたテーブルを参照して行ってもよい。このテーブルには、液面レベル(液位)に対応する液位センサ2の静電容量Csの値が、液体の比誘電率εごとに登録されている。
【0049】
CPU21は、ステップS6で求められた液位Lを表す信号を出力し(ステップS7)、ステップS5の処理に戻る。
【0050】
本実施形態の静電容量式レベルモニタ1によれば、デッドタイムTdの期間である第1期間経過後の静電容量と第2期間経過後の静電容量が略等しくない場合、電極間の故障を検出する。これにより、電極部の構成を変更することなく、簡単に液位センサ2の電極間の故障診断を行うことができる。また、スイッチング周波数を変えることで、デッドタイムTdの期間を簡単に変更することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、本実施形態の構成が持つ機能を達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、駆動信号のスイッチング周波数fsを変更することで、デッドタイムTdの期間を変更していたが、スイッチング周波数fsを変えることなく、オン期間のデューティ比を変更することで、デッドタイムTdの期間を変更してもよい。スイッチング周波数fsを変えないことで、電子部品に安価なものを使用することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、液位センサ2の電極間の故障を診断する場合を示したが、誘電率センサ6の電極間の故障を検出する場合も同様である。
【0054】
本発明は、電極間の故障を診断する際、電極部の構成を変更することなく、簡単に電極間の故障診断を行うことができ、有用である。