(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、
図1に示す油圧シリンダ(流体圧シリンダ)1について説明する。この油圧シリンダ1に後述する本発明のねじ緩み止め構造が設けられる。
【0014】
油圧シリンダ1は、筒状をしたシリンダチューブ4と、このシリンダチューブ4の内側に摺動自在に収容されるピストン6と、このピストン6に連結されるピストンロッド7と、ピストンロッド7を摺動自在に支持するシリンダヘッド5と、を備える。
【0015】
シリンダチューブ4の内側は、ピストン6によってヘッド側室2とボトム側室3に仕切られる。ヘッド側室2は、ピストンロッド7がシリンダチューブ4から突出するヘッド側に設けられ、シリンダチューブ4とピストン6とピストンロッド7とシリンダヘッド5とによって画成される。ボトム側室3は、シリンダチューブ4のボトム側に設けられ、シリンダチューブ4とピストン6とによって画成される。
【0016】
油圧シリンダ1の伸長作動時に、油圧源のポンプ側から供給される作動油(作動流体)がボトム側通路(図示省略)を通ってボトム側室3に流入し、ピストン6がヘッド側(
図1において上方)に移動するのに伴って、ヘッド側室2の作動油がヘッド側通路(図示省略)を通って油圧源のタンク側へと流出する。
【0017】
一方、油圧シリンダ1の収縮作動時に、油圧源のポンプ側から供給される作動油がヘッド側室2に流入し、ピストン6がボトム側(
図1において下方)に移動するのに伴って、ボトム側室3の作動油が油圧源のタンク側へと流出する。
【0018】
こうして、油圧シリンダ1が伸縮作動することにより、ピストンロッド7が連結される図示しない駆動体に対してシリンダチューブ4が連結される被駆動体を駆動する。
【0019】
以下、シリンダチューブ4にシリンダヘッド5を結合する構造について説明する。
【0020】
シリンダチューブ4及びシリンダヘッド5は、円筒状に形成される。シリンダチューブ4の内周には、雌ねじ12が形成される。シリンダヘッド5の外周には、雄ねじ11が形成される。雌ねじ12に雄ねじ11が螺合することにより、シリンダチューブ4にシリンダヘッド5が締結される。シリンダチューブ4とシリンダヘッド5の間にシールリング13、14が介装される。なお、本実施の形態では、シールリング13、14としてOリングを採用しているが、Oリングに限らない。他に例えばXリングなど、適宜シール部材を採用してもよい。
【0021】
シリンダヘッド5、シリンダチューブ4が、ねじ11、12を介して螺合する第一、第二部材を構成する。シリンダチューブ4及びシリンダヘッド5の間には、両者の相対回転を規制するねじ緩み止め構造15が設けられる。
【0022】
ねじ緩み止め構造15は、シリンダヘッド5に形成される第一穴16及び第一貫通孔21と、シリンダチューブ4に形成される第二穴17と、第一穴16と第二穴17に渡って挿入されるピン18と、第二穴17に介装されてピン18を第二穴17から第一穴16へと押し出す方向に付勢するスプリング19と、を備える。スプリング19の付勢力によってピン18が第一穴16と第二穴17に渡って挿入されることにより、シリンダチューブ4及びシリンダヘッド5の相対回転が規制される。なお、本実施の形態では、単一のねじ緩み止め構造15が設けられているが、数は1つに限らない。本実施の形態及び後述する他の実施の形態も含め、所定のねじ緩み止め性能を得るべく、ねじ緩み止め構造15を複数設けてもよい。
【0023】
図2にも示すように、円柱状のピン18は、その中心軸方向に延びる円筒面状の外周面18Aと、その両端部にテーパ状(円錐台状)に形成される傾斜端部18B、18Cと、その両端に中心軸と直交する平面状に形成される端面18D、18Eと、を有する。
【0024】
なお、ピン18の端部は、上記傾斜端部18B、18C、端面18D、18Eを形成する構成に限らず、例えば球面状に形成してもよい。
【0025】
第一穴16と第二穴17は、それぞれの内径がピン18の外径より所定のハメアイ隙間だけ大きく形成される。これにより、ピン18が第一穴16と第二穴17に渡って摺動自在に挿入される。
【0026】
スプリング19は、コイル状の金属製バネが用いられ、第二穴17の底部17Cとピン18の端面18Eとの間に圧縮して介装される。スプリング19は、ピン18を第二穴17から押し出す方向に付勢する付勢部材を構成する。
【0027】
なお、付勢部材は、上述した構成に限らず、他の形状の金属製バネを用いたり、例えばゴム等の弾性材を用いてもよい。
【0028】
第一穴16は、円筒面状の内周面16Aと、シリンダヘッド5の接合端面5Aに開口する開口端16Bと、シリンダヘッド5の内部に形成される底部16Cと、を有する。
【0029】
第二穴17は、円筒面状の内周面17Aと、シリンダチューブ4の接合端面4Aに開口する開口端17Bと、シリンダチューブ4の内部に形成される底部17Cと、を有する。
【0030】
第一穴16と第二穴17は、それぞれ中心線が油圧シリンダ1の中心線Oと平行に延び、かつ中心線Oとが互いに等しい距離を持つように形成される。シリンダヘッド5がシリンダチューブ4に所定の締め付けトルクで締結された状態で、第一穴16と第二穴17が互いに合致して同軸上に延びて、第一穴16と第二穴17の開口端が段差なく合致するようになっている。
【0031】
第一貫通孔21は、第一穴16と同軸上に延び、シリンダヘッド5を貫通するように形成される。第一貫通孔21は、その内周に形成される雌ねじ22と、第一穴16の底部16Cに開口する開口端21Aと、シリンダヘッド5の外側端面5Bに開口する開口端21Bと、を有する。
【0032】
図3は、シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に組み付ける様子を示す断面図である。この組み付け時には、第一貫通孔21に挿通されるネジ状の治具25が用いられる。治具25は、その外周に雄ねじ26が形成されるネジ部25Aと、ネジ部25Aの基端部に形成される頭部25Bと、中心軸に直交する平面状に形成されるネジ部25Aの先端25Cと、を有する。治具25は、
図3に示すように、第一貫通孔21に挿通されてシリンダヘッド5に組み付けられた状態で、その先端25Cが第一穴16の開口端16Bの近傍に位置して開口端16Bを塞ぐ長さを有する。なお、本実施の形態では治具25にネジ部25Aを設けていたが、これに限らず、ネジ部25Aを設けなくてもよい。換言すれば、治具25は、第一貫通孔21の軸方向に摺動可能な棒状のものでもよい。
【0033】
シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に組み付ける工程は、以下の各工程によって行われる。
【0034】
〔治具組み付け工程〕
治具25は、ネジ部25Aの雄ねじ26が第一貫通孔21の雌ねじ22に螺合し、その頭部25Bがシリンダヘッド5の外側端面5Bに当接するように、シリンダヘッド5に組み付けられる。これにより、治具25のネジ部25Aが第一穴16に挿入され、ネジ部25Aの先端25Cが第一穴16の開口端16Bの近傍に位置して開口端16Bを塞ぐ。
【0035】
〔部材締結工程〕
シリンダチューブ4の第二穴17にスプリング19とピン18を挿入した後に、シリンダヘッド5の雄ねじ11をシリンダチューブ4の雌ねじ12に螺合し、シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に締結する。シリンダヘッド5をシリンダチューブ4にねじ込む過程で、シリンダヘッド5が1回転する毎に第一穴16と第二穴17が合致するが、治具25の先端25Cが第一穴16の開口端16Bを塞いでいるため、ピン18の第一穴16への進入が規制される。
【0036】
上記の動作について詳述する。ピン18は、スプリング19の付勢力によって第二穴17から押し出され、その傾斜端部18Bが第一穴16の開口端16Bに摺接して第一穴16に進入するが、その端面18Dが治具25の先端25Cに当接することにより、第一穴16へそれ以上に進入することが規制される(
図3参照)。シリンダヘッド5をねじ込むトルクによって傾斜端部18Bが第一穴16の開口端16Bに摺接することにより、第一穴16に進入していたピン18の先端部が第一穴16から抜け出し、シリンダヘッド5をねじ込む動作が続けられる。このようにして、ねじ緩み止め構造15は、シリンダヘッド5が1回転する毎にシリンダヘッド5の回転を係止するディテント機構として機能する。
【0037】
〔緩み止め工程〕
シリンダヘッド5をその接合端面5Aがシリンダチューブ4の接合端面4Aに所定の面圧をもって当接する位置までねじ込んだ後に、治具25を第一穴16から抜き取る。続いて、所定の締め付けトルクでシリンダヘッド5をねじ込み、シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に対して1回転させる間に、第一穴16と第二穴17を合致させる。第一穴16と第二穴17が合致するのに伴って、スプリング19の付勢力によって第二穴17から押し出されるピン18が第二穴17から第一穴16に渡って挿入される。ピン18は、その中心軸方向について中央部がシリンダヘッド5及びシリンダチューブ4の接合端面5A、4Aに対峙するように配置される(
図2参照)。
【0038】
以上のように、雄ねじ11と雌ねじ12の螺合によってシリンダヘッド5がシリンダチューブ4に締結されると、第一穴16と第二穴17が合致するのに伴って、スプリング19の付勢力によって第二穴17から押し出されるピン18が第二穴17と第一穴16に渡って挿入され、ピン18によってシリンダヘッド5及びシリンダチューブ4どうしの相対回転が規制され、シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に組み付ける工程が完了する。
【0039】
なお、〔緩み止め工程〕は、上述した構成に限らず、以下のようにしもよい。
【0040】
まず、所定の締め付けトルクでシリンダヘッド5をねじ込み、ピン18の傾斜端部18Bを第一穴16の開口端16Bに摺接させて、第一穴16と第二穴17を合致させる(
図3参照)。
【0041】
こうして、第一穴16と第二穴17が合致した状態で、治具25を第一穴16から抜き取る。治具25が第一穴16から抜き取られるのに伴って、スプリング19の付勢力によってピン18が治具25に追従して第二穴17から押し出され、第二穴17と第一穴16に渡って挿入される(
図2参照)。
【0042】
この場合には、第一穴16と第二穴17が最終的に合致する位置でシリンダヘッド5をねじ込む作業が終了し、治具25を第一穴16から抜き取るのに伴って、ピン18が第二穴17と第一穴16に渡って挿入され、シリンダヘッド5をシリンダチューブ4に組み付ける工程が完了する。
【0043】
以上のように、ねじ11、12の螺合によって結合されるシリンダヘッド5(第一部材)及びシリンダチューブ4(第二部材)どうしの相対回転を規制するねじ緩み止め構造15は、シリンダヘッド5に形成される第一穴16と、シリンダチューブ4に形成される第二穴17と、第二穴17に挿入されるピン18と、第二穴17に介装されてピン18を第二穴17から押し出す方向に付勢する付勢部材(スプリング19)と、を備え、ピン18は、シリンダヘッド5とシリンダチューブ4が合致した状態において第一穴16と第二穴17に渡って挿入されるものとした。
【0044】
油圧シリンダ1の作動時に、シリンダヘッド5及びシリンダチューブ4どうしを相対回転させようとするトルクが加わった場合には、ピン18の外周面18Aがこれと同軸上に延びる第一穴16の内周面16Aと第二穴17の内周面17Aのそれぞれに当接して、ピン18にその中心軸と直交する成分の反力が働く。このため、ピン18が破損しない限りは、両者の相対回転を規制し、ねじ11、12の緩み止めが確実に行われる。
【0045】
油圧シリンダ1が振動や衝撃を受ける場合にも、ピン18はスプリング19の付勢力によって第二穴17と第一穴16に渡って挿入された位置に保持され、ねじの緩み止めが行われる。
【0046】
さらに、ねじ緩み止め構造15は、第一穴16に連通する第一貫通孔21がシリンダヘッド5に形成され、外部から第一貫通孔21を挿通して第一穴16内に差し込まれる治具25を用いるものとした。シリンダヘッド5(第一部材)をねじ込む際には、外部から治具が第一貫通孔21を挿通して第一穴16内に差し込まれる。治具25は、先端25Cにて第一穴16の開口端16Bを塞いで、付勢部材(スプリング19)の付勢力によって第二穴17から押し出されるピン18の第一穴16への進入を規制する。
【0047】
シリンダヘッド5及びシリンダチューブ4の締結を解除する場合には、治具25を第一貫通孔21に螺合して第一穴16に挿入し、ピン18をスプリング19の付勢力に抗して第一穴16から押し出す(
図3参照)。こうして、ピン18が第一穴16から抜き取られることにより、シリンダヘッド5及びシリンダチューブ4どうしの相対回転が可能となり、両者の締結を解除できる。したがって、シリンダチューブ4に対するシリンダヘッド5の脱着を繰り返して行うことが可能となる。
【0048】
以上、油圧シリンダ1において、シリンダチューブ4にシリンダヘッド5を結合する構造について説明した。次に、ピストンロッド7にピストン6を結合する構造について説明する。
【0049】
図1に示すように、ピストンロッド7の先端部にピストン6を締結するナット31が設けられる。ピストン6及びナット31は、円筒状に形成される。ピストン6は、ピストンロッド7の先端軸部7Aに嵌合される。ピストンロッド7の先端軸部7Aの外周には雄ねじ32が形成される。ナット31の内周には雌ねじ33が形成される。雌ねじ33に雄ねじ32が螺合することにより、ピストンロッド7にピストン6がナット31を介して締結される。
【0050】
ピストンロッド7、ナット31が、ねじ32、33を介して螺合する第一、第二部材を構成する。ピストンロッド7及びナット31の間には、両者の相対回転を規制するねじ緩み止め構造35が設けられる。
【0051】
図4にも示すように、ねじ緩み止め構造35は、ナット31に形成される第一穴36及び第一貫通孔41と、ピストンロッド7に形成される第二穴37と、第一穴36と第二穴37に渡って挿入されるピン38と、第二穴37に介装されてピン38を第二穴37から第一穴36へと押し出す方向に付勢するスプリング39と、を備える。スプリング39の付勢力によってピン38が第二穴37と第一穴36に渡って挿入されることにより、ピストンロッド7及びナット31の相対回転が規制される。
【0052】
第一穴36と第二穴37は、それぞれの中心線が油圧シリンダ1の中心線Oと直交する方向に延びるように形成され、ナット31がピストンロッド7に締結された状態で、互いに合致して同軸上に延びるように配置される。なお、本実の施形態では、第一穴36と第二穴37の中心線は油圧シリンダ1の中心線Oと交差するように設けられていたが、この構成に限らない。第一穴36と第二穴37の中心線は油圧シリンダ1の中心線Oと交差しないように設けてもよい。
【0053】
第一貫通孔41は、第一穴36と同軸上に延び、ナット31を貫通するように形成される。第一貫通孔41は、その内周に治具(図示省略)が螺合する雌ねじ42が形成される。
【0054】
ピストン6をナット31を介してピストンロッド7に組み付ける工程は、以下の各工程によって行われる。
【0055】
〔部材締結工程〕
ピストンロッド7の第二穴37にスプリング39とピン38を挿入した後に、ナット31の雄ねじ33をピストンロッド7の雌ねじ32に螺合し、ナット31をピストンロッド7に締結する。ナット31をピストンロッド7にねじ込む過程では、第一穴36と第二穴37が合致しないので、ナット31に第一穴36の開口端16Bを塞ぐ治具を組み付ける必要がない。
【0056】
〔緩み止め工程〕
所定の締め付けトルクでナット31をねじ込み、ピン38の先端部を第一穴36の開口端に摺接させて、第一穴36と第二穴37を合致させる。こうして、第一穴36と第二穴37が合致するのに伴って、スプリング39の付勢力によってピン38が第二穴37から押し出され、第二穴37から第一穴36に渡って挿入される。ピン38の中程がナット31及びピストンロッド7の嵌合部に配置されている。
【0057】
以上のように、ねじ緩み止め構造35は、第一穴36がナット31(第一部材)の内周に開口し、第二穴37がピストンロッド7(第二部材)の外周に開口し、ナット31がピストンロッド7にねじ込まれるのに伴って第一穴36が第二穴37に合致する構成とした。このため、ナット31をピストンロッド7にねじ込む際に、ナット31の第一貫通孔41に治具を組み付ける必要がなく、ピン38がナット31及びピストンロッド7どうしの相対回転を規制することにより、ピストン6をピストンロッド7に組み付ける工程が完了する。
【0058】
油圧シリンダ1の作動時に、ナット31及びピストンロッド7どうしを相対回転させようとするトルクが加わった場合には、ピン38の外周面がピン38と同軸上に延びる第一穴36の内周面と第二穴37の内周面のそれぞれに当接して、ピン38にその中心軸と直交する成分の反力が働く。ピン38が破損しない限りは、両者の相対回転を規制し、ねじ33、32の緩み止めが確実に行われる。
【0059】
油圧シリンダ1が振動や衝撃を受ける場合にも、ピン38はスプリング39の付勢力によって第二穴37と第一穴36に渡って挿入された位置に保持され、ねじ33、32の緩み止めが行われる。
【0060】
ねじ緩み止め構造35は、外部から第一穴36内に差し込まれる治具が挿通する第一貫通孔41を備える。第一貫通孔41は、第一穴36に連通してナット31に形成される。ナット31及びピストンロッド7の締結を解除する場合には、ネジ状の治具(図示省略)を第一貫通孔41に螺合して第一穴36に挿入し、ピン38をスプリング39の付勢力に抗して第一穴36からに押し出す。
【0061】
こうして、ピン38が第一穴36から抜き取られることにより、ナット31及びピストンロッド7どうしの相対回転が可能となり、両者の締結を解除できる。したがって、ピストンロッド7に対するナット31の脱着を繰り返して行うことが可能となる。治具は、第一貫通孔41に挿通されてナット31に組み付けられた状態で、その先端が第一穴36の開口端の近傍に位置して開口端を塞ぐ長さを有する。なお、本実施の形態では治具にネジ部を設けていたが、これに限らず、第一貫通孔41の軸方向に摺動可能な棒状のものでもよい。また、上述した構成に限らず、ナット31及びピストンロッド7の締結を解除する必要がない場合には、第一貫通孔41を廃止してもよい。
【0062】
以上、
図1〜4に示す第1実施形態では、ねじ11、12を介して螺合する第一、第二部材(シリンダヘッド5、シリンダチューブ4)の間にピン18が介装されるねじ緩み止め構造15と、ねじ32、33を介して螺合する第一、第二部材(ナット31、ピストンロッド7)の間にピン38が介装されるねじ緩み止め構造35について説明した。
【0063】
(第2実施形態)
以下、
図5を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るねじ緩み止め構造60は、ねじ51、52を介して螺合する第一、第三部材(ボルト55、本体53)の間に第二部材(被締結部材54)が挟持され、第一、第二部材(ボルト55、被締結部材54)の間にピン63が介装される構成とする。
【0064】
本体53に被締結部材54がボルト55を介して締結される。被締結部材54には、ボルト55が挿通するボルト孔56が形成される。ボルト55のネジ部55Bには雄ねじ51が形成される一方、本体53のネジ穴53Aには雌ねじ52が形成される。
【0065】
ボルト55及び被締結部材54の間には、両者の相対回転を規制するねじ緩み止め構造60が設けられる。
【0066】
ねじ緩み止め構造60は、ボルト55の頭部55Aに形成される第一穴57及び第一貫通孔58と、被締結部材54に形成される第二穴59と、第一穴57と第二穴59に渡って挿入されるピン63と、第二穴59に介装されてピン63を第二穴59から第一穴57へと押し出す方向に付勢するスプリング64と、を備える。スプリング64の付勢力によってピン63が第二穴59と第一穴57に渡って挿入されることにより、被締結部材54及びボルト55の相対回転が規制される。
【0067】
第一穴57と第二穴59は、ボルト55の中心軸と平行に延びるように形成され、ボルト55を介して被締結部材54が締結された状態で、互いに合致して同軸上に延びるように配置される。
【0068】
第一貫通孔58は、第一穴57と同軸上に延び、ボルト55の頭部55Aを貫通するように形成される。第一貫通孔58は、その内周にネジ状の治具(図示省略)が螺合する雌ねじ61が形成される。治具は、第一貫通孔58に挿通されてボルト55に組み付けられた状態で、その先端が第一穴57の開口端の近傍に位置して開口端を塞ぐ長さを有する。なお、本実施の形態ではネジ状の治具を用いたが、これに限らず、例えば第一貫通孔の軸方向に摺動可能な棒状のものを用いてもよい。
【0069】
被締結部材54をボルト55を介して本体53に組み付ける工程は、以下の各工程によって行われる。
【0070】
〔治具組み付け工程〕
治具(図示省略)を第一貫通孔58に挿通し、治具の先端によって第一穴57の開口端を塞ぐ。
【0071】
〔部材締結工程〕
被締結部材54の第二穴59にスプリング64とピン63を挿入した後に、ボルト55の雄ねじ51を本体53の雌ねじ52に螺合し、ボルト55を介して被締結部材54を本体53に締結する。
【0072】
〔緩み止め工程〕
ボルト55をその頭部55Aが被締結部材54に所定の面圧をもって当接する位置までねじ込んだ後に、治具を第一穴57から抜き取る。続いて、所定の締め付けトルクでボルト55をねじ込み、ボルト55を被締結部材54に対して1回転させる間に、第一穴57と第二穴59を合致させる。第一穴57と第二穴59が合致するのに伴って、スプリング64の付勢力によって第二穴59から押し出されるピン63が第二穴59から第一穴57に渡って挿入される。ピン63によって被締結部材54及びボルト55どうしの相対回転が規制されることにより、ボルト55の緩み止めが行われる。
【0073】
なお、〔緩み止め工程〕は、上述した構成に限らず、第一穴57と第二穴59が合致した状態で、治具を第一穴57から抜き取るようにしてもよい。
【0074】
ボルト55による締結を解除する場合には、ネジ状の治具を第一貫通孔58に螺合して第一穴57に挿入し、ピン63をスプリング64の付勢力に抗して第一穴57から押し出す。したがって、ボルト55の脱着を繰り返して行うことが可能となる。
【0075】
(第3実施形態)
以下、
図6を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係るねじ緩み止め構造70は、ねじ51、52を介して螺合する第一、第二部材(ボルト55、本体53)の間に第三部材(被締結部材54)が挟持され、第一、第二、第三部材(ボルト55、本体53、被締結部材54)に渡ってピン73が介装される構成とする。上記第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、上記第2実施形態では、第一部材をボルト55とし、第二部材を被締結部材54とし、第三部材を本体53とした。これに対して、本第3実施形態では、第一部材をボルト55とし、第二部材を本体53とし、第三部材を被締結部材54とする。
【0076】
ボルト55、被締結部材54及び本体53の間には、それぞれの相対回転を規制するねじ緩み止め構造70が設けられる。
【0077】
ねじ緩み止め構造70は、ボルト55の頭部55Aに形成される第一穴57及び第一貫通孔58と、被締結部材54に形成される第三穴79と、本体53に形成される第二穴78と、第一穴57と第三穴79と第二穴78に渡って挿入されるピン73と、第二穴78に介装されてピン73を第二穴78から押し出す方向に付勢するスプリング64と、を備える。スプリング64の付勢力によってピン73が第三穴79と第一穴57に渡って挿入されることにより、被締結部材54及びボルト55の相対回転が規制されるとともに、ピン73が第二穴78と第三穴79に渡って挿入されることにより、本体53及び被締結部材54の相対回転が規制される。
【0078】
第一穴57と第三穴79と第二穴78は、ボルト55の中心軸と平行に延びるように形成され、ボルト55を介して被締結部材54が締結された状態で、互いに合致して同軸上に延びるように配置される。
【0079】
被締結部材54をボルト55を介して本体53に組み付ける工程は、以下の各工程によって行われる。
【0080】
〔治具組み付け工程〕
治具(図示省略)を第一貫通孔58に挿通し、治具の先端によって第一穴57の開口端を塞ぐ。
【0081】
〔部材締結工程〕
本体53の第二穴78にスプリング64を介装するとともに、本体53の第二穴78と被締結部材54の第三穴79に渡ってピン73を挿入した後に、ボルト55の雄ねじ51を本体53の雌ねじ52に螺合し、ボルト55をねじ込む。
【0082】
〔緩み止め工程〕
ボルト55をその頭部55Aが被締結部材54に所定の面圧をもって当接する位置までねじ込んだ後に、治具を第一穴57から抜き取る。続いて、所定の締め付けトルクでボルト55をねじ込み、ボルト55を被締結部材54に対して1回転させる間に、第一穴57を第三穴79及び第二穴78に合致させる。これらが合致するのに伴って、スプリング64の付勢力によって第三穴79から押し出されるピン73が第三穴79と第一穴57に渡って挿入される。ピン73によって本体53と被締結部材54とボルト55の相対回転が規制されることにより、ボルト55の緩み止めが行われるとともに、被締結部材54の位置決めが行われる。
【0083】
なお、〔緩み止め工程〕は、上述した構成に限らず、第一穴57を第三穴79及び第二穴78と合致させた状態で、治具を第一穴57から抜き取るようにしてもよい。
【0084】
ボルト55による締結を解除する場合には、ネジ状の治具を第一貫通孔58に螺合して第一穴57に挿入し、ピン73をスプリング64の付勢力に抗して第一穴57から押し出す。これにより、ボルト55の脱着を繰り返して行うことが可能となる。
【0085】
以上のように、第3実施形態のねじ緩み止め構造70では、ボルト55(第一部材)と本体53(第二部材)の間に介装される被締結部材54(第三部材)を備え、被締結部材54(第三部材)にピン73が挿通する第三穴79が形成されるため、ねじ51、52を介して螺合するボルト55、本体53の相対回転を規制して、ボルト55の緩み止めをするとともに、被締結部材54の位置決めをすることができる。
【0086】
(第4実施形態)
以下、
図7を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態に係るねじ緩み止め構造80は、ねじ51、52を介して螺合する第二、第一部材(ボルト55、本体53)の間に第三部材(被締結部材54)が挟持され、第二、第三部材(ボルト55、被締結部材54)の間にピン84が介装される構成とする。前記第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、前記第2実施形態では、第一部材をボルト55とし、第二部材を被締結部材54とし、第三部材を本体53とした。これに対して、本第4実施形態では、第一部材を本体53とし、第二部材をボルト55とし、第三部材を被締結部材54とする。
【0087】
ボルト55及び被締結部材54の間には、両者の相対回転を規制するねじ緩み止め構造80が設けられる。
【0088】
ねじ緩み止め構造80は、ボルト55の頭部55Aに形成される第二穴82及び第二貫通孔83と、被締結部材54に形成される第一穴81と、第二穴82と第一穴81に渡って挿入されるピン84と、第二穴82に介装されてピン84を第二穴82から第一穴81へと押し出す方向に付勢するスプリング85と、を備える。スプリング85の付勢力によってピン84が第二穴82と第一穴81に渡って挿入されることにより、ボルト55及び被締結部材54の相対回転が規制される。
【0089】
第二穴82と第一穴81は、ボルト55の中心軸と平行に延びるように形成され、ボルト55を介して被締結部材54が締結された状態で、互いに合致して同軸上に延びるように配置される。
【0090】
第二貫通孔83は、第二穴82と同軸上に延び、ボルト55の頭部55Aを貫通するように形成される。第二貫通孔83に棒状の治具(図示省略)が差し込まれるようになっている。
【0091】
ピン84は、その端面に開口するネジ穴86が形成される。ネジ穴86に治具の先端に形成されるネジ(図示省略)が螺合するようになっている。治具は、第二貫通孔83に挿通されてボルト55に組み付けられた状態で、その先端がピン84に係合する長さを有する。
【0092】
被締結部材54をボルト55を介して本体53に組み付ける工程は、以下の各工程によって行われる。
【0093】
〔治具組み付け工程〕
ボルト55の第二穴82にスプリング85とピン84を挿入した後に、治具が第二貫通孔83及び第二穴82に差し込まれ、治具の先端のネジをピン84のネジ穴86に螺合する。こうしてピン84に連結した治具を引き出すことにより、ピン84が第二穴82内に引き込まれた状態に保持される。
【0094】
〔部材締結工程〕
ボルト55の雄ねじ51を本体53の雌ねじ52に螺合し、ボルト55を介して被締結部材54を本体53に締結する。
【0095】
〔緩み止め工程〕
ボルト55をその頭部55Aが被締結部材54に所定の面圧をもって当接する位置までねじ込んだ後に、治具をピン84から取り外して第二穴82から抜き取る。続いて、所定の締め付けトルクでボルト55をねじ込み、ボルト55を被締結部材54に対して1回転させる間に、第二穴82と第一穴81を合致させる。第二穴82と第一穴81が合致するのに伴って、スプリング85の付勢力によって第二穴82から押し出されるピン84が第二穴82から第一穴81に渡って挿入される。ピン84によって被締結部材54及びボルト55どうしの相対回転が規制されることにより、ボルト55の緩み止めが行われる。
【0096】
なお、〔緩み止め工程〕は、上述した構成に限らず、第二穴82と第一穴81が合致した状態で、治具をピン84から取り外して第二穴82から抜き取るようにしてもよい。
【0097】
ボルト55による締結を解除する場合には、治具を第二貫通孔83及び第二穴82に差し込み、治具の先端のネジをピン84のネジ穴86に螺合する。こうしてピン84に連結した治具を引き出すことにより、ピン84が第二穴82内に引き込まれ、第一穴81から抜き取られる。これにより、ボルト55の脱着を繰り返して行うことが可能となる。
【0098】
なお、治具及びピン84は、上述した構成に限らず、フックを介してピン84を第二穴82内に引き込む構成としてもよい。
【0099】
以上のように、
図7に示す第4実施形態のねじ緩み止め構造80は、第二穴82に連通する第二貫通孔83がボルト55に形成され、外部から第二貫通孔83を挿通して第二穴82内に差し込まれる治具が用いられるものとした。ボルト55(第二部材)をねじ込む際には、外部から治具が第二貫通孔83を挿通して第二穴82内に差し込まれる。治具は、ピン84をスプリング85(付勢部材)の付勢力に抗して第二穴82に引き込んで、ピン84の第一穴81への進入を規制するため、ボルト55の脱着を繰り返して行うことが可能となる。
【0100】
(第5実施形態)
以下、
図8を参照して、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態に係るねじ緩み止め構造100は、ねじ102、101を介して螺合する第一、第二部材(ナット103、ボルト104)の間に第三、第四部材(被締結部材105、106)が挟持され、第二、第三部材(ボルト
104、被締結部材105)の間にピン107が介装されるとともに、第一、第四部材(ナット103、被締結部材106)の間にピン108が介装される構成とする。
【0101】
被締結部材105、106がボルト104及びナット103を介して締結される。被締結部材105、106には、ボルト104が挿通するボルト孔115、116がそれぞれ形成される。ボルト104のネジ部104Bには雄ねじ101が形成される一方、ナット103の内周には雌ねじ102が形成される。ねじ緩み止め構造100は、ピン107、108を介してボルト104及びナット103の相対回転を規制する。
【0102】
ピン107は、ボルト104の頭部104Aと被締結部材105に渡って設けられ、両者の相対回転を規制する。
【0103】
ピン108は、ナット103と被締結部材106に渡って設けられ、両者の相対回転を規制する。
【0104】
被締結部材106には、ピン108の基端部及びスプリング109が挿入される形成される第二穴113が形成される。ナット103には、ピン108の先端部が挿入される第一穴111と、第一穴111と同軸上に延びる第一貫通孔112が形成される。
【0105】
ナット103のねじ込み時に、第一貫通孔112に治具(図示省略)が挿通され、治具の先端によって第一穴111の開口端が塞がれる。また、ナット103による締結を解除する場合には、ネジ状の治具を第一貫通孔112に螺合して第一穴111に挿入し、ピン108をスプリング109の付勢力に抗して第一穴111から押し出す。これにより、ナット103の脱着を繰り返して行うことが可能となる。治具は、第一貫通孔112に挿通されてナット103に組み付けられた状態で、その先端が第一穴111の開口端の近傍に位置して開口端を塞ぐ長さを有する。なお、本実施の形態ではネジ状の治具を用いたが、これに限らず、例えば第一貫通孔112の軸方向に摺動可能な棒状のものを用いてもよい。
【0106】
以上のように、ねじ緩み止め構造100では、スプリング109の付勢力によって保持されるピン108によってナット103の回転が規制されるとともに、ピン107によってボルト104の回転が規制される。
【0107】
なお、上述した構成に限らず、ボルト104の回転を規制するピン107も、ピン108と同様にスプリングの付勢力によって保持される構成としてもよい。
【0108】
また、ナット103のねじ緩み止め構造は、
図1に示すねじ緩み止め構造35と同様の構成としてもよい。具体的には、ボルト104のネジ部104Bの外周に開口する第二穴が形成され、この第二穴にスプリング及びピンが収容される一方、ナット103の内周(雌ねじ102)に開口する第一穴が形成される構成としてもよい。この場合には、ナット103がねじ込まれるのに伴ってスプリングの付勢力によってピンが、第二穴と第一穴に渡って挿入され、ナット103の相対回転が規制される。
【0109】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。