特許第5934596号(P5934596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934596ベルトコンベア装置及び被搬送物の搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934596
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ベルトコンベア装置及び被搬送物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/14 20060101AFI20160602BHJP
   B65G 21/12 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B65G15/14
   B65G21/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-165707(P2012-165707)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-24630(P2014-24630A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228707
【氏名又は名称】日本コンベヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 信行
(72)【発明者】
【氏名】池松 建治
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 康
(72)【発明者】
【氏名】巽 成一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝博
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−165009(JP,A)
【文献】 特開昭49−044473(JP,A)
【文献】 特開平10−218332(JP,A)
【文献】 特開平08−133487(JP,A)
【文献】 米国特許第04730716(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/00−15/28;15/60−16/64
B65G 21/00−21/22
B65G 67/00−67/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面する第1ベルト及び第2ベルトと、
前記第1ベルトの面に交差する方向に前記第1ベルトを押圧する複数の第1キャリアローラと、
前記第2ベルトの面に交差する方向に前記第2ベルトを押圧する複数の第2キャリアローラと、を備え、
前記第1ベルト及び前記第2ベルトによって被搬送物を挟持しながら下方位置から上方位置に搬送するベルトコンベア装置であって、
複数の前記第1キャリアローラ及び複数の前記第2キャリアローラをそれぞれ回転可能に支持するフレーム部材を備え、
前記フレーム部材は、前記下方位置における前記被搬送物の積み込み位置に配置された下部水平フレームと、
前記上方位置に設定された略水平軸周りに揺動可能とされ、前記下部水平フレームで積み込まれた前記被搬送物を揚送する傾斜フレームと、
を有しており、
前記積み込み位置における前記第1ベルト、前記第2ベルト側に向けて凸となる曲面とされ、
前記積み込み位置における前記第2ベルト、前記第1ベルトに対する接線方向に沿って配置され、
前記下部水平フレームは、前記傾斜フレームに対して水平方向に移動可能であり、
前記下部水平フレームに対する前記傾斜フレームの傾斜角度を変化させた際に、前記傾斜角度の変化に前記下部水平フレームの位置を追従させることにより、前記第2ベルトが前記第1ベルトに対する接線方向に沿って配置された状態を維持することを特徴とするベルトコンベア装置。
【請求項2】
前記曲面は側面視において前記傾斜フレームの前記傾斜角度の可動範囲角度より大きな円弧角を有する円弧をなす請求項1に記載のベルトコンベア装置。
【請求項3】
前記第2ベルトが、前記積み込み位置に接続されるスロープ面を形成し、
前記スロープ面の水平面に対する傾斜角度は13°以下である請求項1又は2に記載のベルトコンベア装置。
【請求項4】
前記傾斜フレームが、主フレームと、前記主フレームの前記下方位置側の端部において前記主フレームに対して回転可能に接続される端部フレームとを有し、
前記主フレームと前記端部フレームとが、伸縮可能な傾斜角度設定ビームにより接続されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。
【請求項5】
地上面に載置される地上フレームを備え、
前記傾斜フレームは、前記上方位置において建起ピンを介して前記建起ピンの周りに回転可能に前記地上フレームに接続されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。
【請求項6】
互いに対面する第1ベルト及び第2ベルトと、前記第1ベルトの面に交差する方向に前記第1ベルトを押圧する複数の第1キャリアローラと、前記第2ベルトの面に交差する方向に前記第2ベルトを押圧する複数の第2キャリアローラと、を備え、前記第1ベルト及び前記第2ベルトによって被搬送物を挟持しながら下方位置から上方位置に搬送するベルトコンベア装置を利用して、被搬送物を搬送する被搬送物の搬送方法であって、
前記ベルトコンベア装置の傾斜角度を変化させる工程と、
前記傾斜角度を変化させた後に、前記被搬送物を搬送する工程と、を有し、
前記ベルトコンベア装置は、複数の前記第1キャリアローラ及び複数の前記第2キャリアローラをそれぞれ回転可能に支持するフレーム部材を備え、前記フレーム部材は、前記下方位置における前記被搬送物の積み込み位置に配置された下部水平フレームと、前記上方位置に設定された略水平軸周りに揺動可能とされ、前記下部水平フレームで積み込まれた前記被搬送物を揚送する傾斜フレームと、を有しており、前記積み込み位置における前記第1ベルトは、前記第2ベルト側に向けて凸となる曲面とされ、前記積み込み位置における前記第2ベルトは、前記第1ベルトに対する接線方向に沿って配置され、前記下部水平フレームは、前記傾斜フレームに対して水平方向に移動可能であり、
前記傾斜角度を変化させる工程は、前記下部水平フレームと前記傾斜フレームとの固定を解除する工程と、前記傾斜フレームの傾斜角度を変化させる工程と、水平方向に前記下部水平フレームを移動させる工程を含み、
前記下部水平フレームを移動させる工程では、前記傾斜角度の変化に前記下部水平フレームの位置を追従させることにより、前記第2ベルトが前記第1ベルトに対する接線方向に沿って配置された状態を維持する、被搬送物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア装置に係り、特に、地下槽等を建設する工事において、掘削により生じた土砂を搬送するベルトコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下にLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)貯蔵タンクや汚水槽等の地下槽を建設する工事においては、地下の掘削により土砂等が発生する。そのため、掘削により発生した土砂等の被搬送物を、掘削の行われる掘削場所から地表まで搬送するための設備が必要となる。
【0003】
地下の掘削場所と地上との間などの高低差のある地点間において被搬送物を搬送するための装置として、搬送用ベルトと押え用ベルトで被搬送物を挟んで搬送するベルトコンベア装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。このベルトコンベア装置においては、下部カーブローラーと上部カーブローラーとの間に搬送用ベルトと押え用ベルトを並行させ、搬送用ベルトと押え用ベルトとを蛇行させるようにアイドラーが配置されている。隣接するアイドラーはそれぞれ逆の方向に搬送用ベルトと押え用ベルトを押し、搬送用ベルトと押え用ベルトに張力を発生させ、搬送用ベルトと押え用ベルトによって被搬送物を挟持し、鉛直あるいは鉛直に近い急斜面において被搬送物を搬送することを可能としている。
【0004】
ここで、地下の掘削工事においては、工事の進捗に伴い、掘削場所の地上からの深さが増加し、それに伴って、被搬送物の鉛直方向の搬送距離も増加する。したがって、被搬送物を搬送するためのベルトコンベア装置は、被搬送物の鉛直方向の搬送距離の増加に追従可能なものである必要がある。
【0005】
被搬送物の鉛直方向の搬送距離の増加に対応可能なベルトコンベア装置として、互いに対向する一対のベルトにより二重コンベアを形成し、この二重コンベアにより被搬送物を挟持して搬送するコンベア装置であって、二重コンベア部分の傾斜角度を可変としたものが知られている(たとえば、特許文献2参照)。このコンベア装置においては、コンベア支台上にコンベアブームが起伏可能に枢支され、コンベアブームの部分が二重コンベアとされている。そして、このコンベア装置は、コンベアブームを所定の揚程が得られる傾斜で固定した状態で使用される。さらに、コンベアブームの基端部付近に、下辺が円弧上の笠形フレームが設けられており、コンベアブームの傾斜角度に応じて笠形フレーム及びこの笠形フレームに設けられたプーリが移動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−275906号公報
【特許文献2】特開平8−165009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたコンベア装置は、コンベアブームの基端部付近に笠形フレームを用いているため、コンベアブームの傾斜角度を大きくとることができず、被搬送物の鉛直方向の搬送距離に応じてコンベアブームの傾斜角度を変化させた場合に、コンベアブームの傾斜角度によらず被搬送物を確実に二重コンベアに挟み込むことができるものとはいえなかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、被搬送物の鉛直方向の搬送距離によらず、被搬送物を確実に積み込むことのできるベルトコンベア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るベルトコンベア装置は、互いに対面する第1ベルト及び第2ベルトと、第1ベルトの面に交差する方向に第1ベルトを押圧する複数の第1キャリアローラと、第2ベルトの面に交差する方向に第2ベルトを押圧する複数の第2キャリアローラと、を備え、第1ベルト及び第2ベルトによって被搬送物を挟持しながら下方位置から上方位置に搬送するベルトコンベア装置であって、複数の第1キャリアローラ及び複数の第2キャリアローラをそれぞれ回転可能に支持するフレーム部材を備え、フレーム部材は、下方位置における被搬送物の積み込み位置に配置された下部水平フレームと、上方位置に設定された略水平軸周りに揺動可能とされ、下部水平フレームで積み込まれた被搬送物を揚送する傾斜フレームと、を有しており、積み込み位置における第1ベルトが、第2ベルト側に向けて凸となる曲面とされるとともに、積み込み位置における第2ベルトが、第1ベルトに対する接線方向に沿って配置され、傾斜フレームにおける傾斜角度を変化させた際に、第2ベルトが第1ベルトに対する接線方向に沿って配置された状態を維持するようにされており、下部水平フレームは、傾斜フレームに対して、水平方向に移動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るベルトコンベア装置において、フレーム部材は、上方位置に設定された略水平軸周りに揺動可能とされた傾斜フレームを有している。また、積み込み位置における第1ベルトが、第2ベルト側に向けて凸となる曲面となっており、積み込み位置における第2ベルトは、傾斜フレームにおける傾斜角度を変化させた際に、第1ベルトに対する接線方向に沿って配置された状態を維持するようにされている。そして、下部水平フレームは、傾斜フレームに対して、水平方向に移動可能とされている。このため、傾斜フレームの傾斜角度を変化させた場合に、下部水平フレームを傾斜フレームの傾斜角度の変化に追従させて移動させることにより、積み込み位置において第2ベルトが第1ベルトに対する接線方向に配置された状態を維持することができ、傾斜フレームの傾斜角度を変化させた場合にも被搬送物を第1ベルトと第2ベルトとの間に確実に挟み込むことができる。その結果、被搬送物の鉛直方向の搬送距離によらず、被搬送物を確実にベルトコンベア装置に積み込むことができる。
【0011】
ここで、曲面は側面視において傾斜フレームの傾斜角度の可動範囲角度より大きな円弧角を有する円弧をなすようにすることができる。
【0012】
このように、曲面が側面視において傾斜フレームの傾斜角度の可動範囲角度より大きな円弧角を有する円弧をなしていることにより、傾斜フレームの傾斜角度を可動範囲内のどの角度に変化させた場合にも、積み込み位置において第2ベルトが第1ベルトに対する接線方向に配置された状態を維持することができる。したがって、被搬送物のベルトコンベア装置への積み込みをより確実に行うことができる。
【0013】
また、第2ベルトが、積み込み位置に接続されるスロープ面を形成し、スロープ面の水平面に対する傾斜角度は13°以下であるようにすることができる。
【0014】
このように、第2ベルトが、積み込み位置に接続されるスロープ面を形成し、このスロープ面の水平面に対する傾斜角度が13°以下とされていることにより、第2ベルト上において、被搬送物をスロープ面から積み込み位置へ、滑落させることなく搬送することができる。したがって、被搬送物をより確実にベルトコンベア装置に積み込むことができる。
【0015】
また、傾斜フレームが、主フレームと、主フレームの下方位置側の端部において主フレームに対して回転可能に接続される端部フレームとを有し、主フレームと端部フレームとが、伸縮可能な傾斜角度設定ビームにより接続されているようにすることができる。
【0016】
このように、傾斜フレームを主フレームと、主フレームの下方位置側の端部において主フレームに対して回転可能に接続される端部フレームと、を有するように構成し、主フレームと端部フレームとを伸縮可能な傾斜角度設定ビームにより接続することにより、傾斜角度設定ビームを伸縮させて主フレームに対する端部フレームの角度を傾斜フレームの傾斜角度に応じて調整し、端部フレームの角度を下部水平フレームに沿うようにさせて被搬送物の第1ベルトと第2ベルトとの間への積み込み位置を調整することができる。したがって、傾斜フレームの傾斜角度によらず、被搬送物のベルトコンベアへの積み込みをより確実に行うことが可能となる。
【0017】
また、地上面に載置される地上フレームを備え、傾斜フレームは、上方位置において建起ピンを介して建起ピンの周りに回転可能に地上フレームに接続されているようにすることができる。
【0018】
このように、地上面に地上フレームを載置し、傾斜フレームを、建起ピンを介して、建起ピンの周りに回転可能に地上フレームに接続することにより、傾斜フレームを建起ピンの周りに回転させて傾斜フレームを引き上げることによって、下部水平フレームの載置された略水平面から傾斜フレーム及びこれに接続される下部水平フレームを浮上させることができる。このため、工事の進捗に伴って下部水平フレームの下方に掘削を進める場合に、下部水平フレームを掘削の支障にならない場所に退避させることが可能となり、効率よく掘削作業を進めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被搬送物の鉛直方向の搬送距離によらず、被搬送物を確実に積み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るベルトコンベア装置の斜視図である。
図2】ベルトコンベア装置の側面図である。
図3】ベルトコンベア装置の要部拡大側面図である。
図4】傾斜角度を変化させた場合のベルトコンベア装置の斜視図である。
図5】傾斜角度を変化させた場合のベルトコンベア装置の側面図である。
図6】傾斜角度を変化させた場合のベルトコンベア装置の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0022】
図1は、本実施形態に係るベルトコンベア装置1の斜視図である。ベルトコンベア装置1は、地下を掘削して発生した土砂等の被搬送物を地上に搬送するために用いられるベルトコンベア装置である。ベルトコンベア装置1は、地下の掘削工事によって形成された地下空間の底部に配置される。そして、この地下空間を覆うように、覆工板Bが、地上面と略同一の高さに設けられている。覆工板Bには、開口部Aが形成されている。ベルトコンベア装置1は、開口部Aを通じて、被搬送物を地下の下方位置から地上の上方位置に搬送する。
【0023】
地下空間の底部には、掘削が行われて土砂等の被搬送物が発生する地点からベルトコンベア装置1の積み込み位置まで被搬送物を搬送する前段コンベアC1が配設されている。そして、覆工板Bの上面には、ベルトコンベア装置1から排出された被搬送物を地上において搬送するための後段コンベアC2が配設されている。後段コンベアC2は、地上においてホッパHへ被搬送物を搬送して、図4に示すように、ホッパHの下方に停車したダンプカーDに被搬送物を積載する。
【0024】
次に、図1及び図2を参照して、ベルトコンベア装置1の構成について説明する。図1はベルトコンベア装置1の斜視図であり、図2はベルトコンベア装置1の側面図である。
【0025】
ベルトコンベア装置1は、互いに対面する第1ベルト2及び第2ベルト3を備えている。第1ベルト2及び第2ベルト3は、それぞれ平らな形状のベルトである。第1ベルト2及び第2ベルト3は、被搬送物を挟持しながら、下方位置から上方位置に搬送する。
【0026】
また、ベルトコンベア装置1は、複数の第1キャリアローラ4及び複数の第2キャリアローラ5を備えている。第1キャリアローラ4は、第1ベルト2の面に交差する方向に第1ベルト2を押圧する。第2キャリアローラ5は、第2ベルト3の面に交差する方向に第2ベルト3を押圧する。
【0027】
図2に示されるように、ベルトコンベア装置1の下方位置における被搬送物の積み込み位置からベルトコンベア装置1の上方位置における被搬送物の排出位置までの間の搬送部においては、第1ベルト2及び第2ベルト3は、重なった状態で第1キャリアローラ4及び第2キャリアローラ5に押圧される。第1ベルト2及び第2ベルト3は、第1ベルト2側に向けて凸となる曲面と、第2ベルト3側に向けて凸となる曲面とを交互に繰り返す形状とされている。第1ベルト2側に向けて凸となる曲面の部分において、第1ベルト2には、第1ベルト2の延びる方向の両側から張力が加えられる。この第1ベルト2の両側からの張力の合力が第2ベルト3側に向いた力となることによって、第1ベルト2は、第2ベルト3との間の被搬送物を第2ベルト3側に押し付ける。このようにして、第1ベルト2と第2ベルト3は、被搬送物を挟持し、被搬送物を大きな傾斜角度で搬送する場合の被搬送物の滑落を防止する。
【0028】
第1ベルト2及び第2ベルト3は、被搬送物の排出位置から被搬送物の積み込み位置まで、ガイドローラ13に案内されて戻るようになっている。また、ベルトコンベア装置1には、図2に示すテイクアップ14が設けられている。テイクアップ14は、第1ベルト2及び第2ベルト3の動く経路の長さを調整することにより、第1ベルト2及び第2ベルト3にかかる張力を調整する。
【0029】
また、ベルトコンベア装置1は、フレーム部材6を備えている。このフレーム部材6は、複数の第1キャリアローラ4及び第2キャリアローラ5をそれぞれ回転可能に支持する。フレーム部材6は、下部水平フレーム7及び傾斜フレーム8を有している。下部水平フレーム7は、地下空間の底面において、被搬送物の積み込み位置に配置され、水平方向に延びるフレームである。傾斜フレーム8は、下部水平フレーム7に接続され、地下空間の底面から上方位置に向けて延びるフレームである。傾斜フレーム8は、下部水平フレーム7において積み込まれた被搬送物を上方位置へと揚送する。また、下部水平フレーム7は、傾斜フレーム8から取り外された場合には、地下空間の底面上において水平方向に移動可能とされている。
【0030】
さらに、ベルトコンベア装置1は、地上フレーム9を備えている。この地上フレーム9は、地上面と略同一に設けられた覆工板Bの上面に載置される。傾斜フレーム8は、建起ピン12を介して地上フレーム9と接続される。建起ピン12は、略水平方向に延びるピンである。傾斜フレーム8は、建起ピン12に沿って延びる略水平軸周りに揺動可能とされて地上フレーム9に接続されている。傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度は、予め定められた最小傾斜角度から最大傾斜角度までの範囲で可変とされている。すなわち、傾斜フレーム8は、水平方向と鉛直方向との間で予め定められた範囲内で、任意の傾斜角度とすることが可能とされている。
【0031】
また、ベルトコンベア装置1には、図5に示す吊り上げロッド15が設けられている。この吊り上げロッド15は、その一端が傾斜フレーム8に接続されるとともに、その他端側において地上フレーム9に接続される。吊り上げロッド15の地上フレーム9に対する接続位置は、可変とされている。傾斜フレーム8の傾斜角度を変更させる際には、吊り上げロッド15によって傾斜フレーム8を吊り上げ、吊り上げロッド15の地上フレーム9との接続位置を調節する。吊り上げロッド15と地上フレーム9との接続位置から吊り上げロッド15と傾斜フレーム8との接続位置までの距離を伸長させることにより、傾斜フレーム8の下端部は地表面から深い位置へ移動し、それに合わせて傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度は増加する。
【0032】
傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度を増加させた場合の下部水平フレーム7及び傾斜フレーム8の概形を図1に2点鎖線で示す。傾斜フレーム8は建起ピン12の周りに回転するため、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度を増加させると、傾斜フレーム8の下端部はより深い位置に移動する。これに合わせて、傾斜フレーム8の下端部に接続される下部水平フレーム7もより深い位置に移動する。このようにして、ベルトコンベア装置1は、掘削工事の進行に伴って、下部水平フレームの設置位置の地上面からの深さを増加させることができる。
【0033】
下部水平フレーム7と傾斜フレーム8とは、フレーム接続ピン11により接続可能とされている。フレーム接続ピン11は、傾斜フレーム8の傾斜角度に応じて差し込み位置を変更可能とされている。
【0034】
ここで、図3及び図6に示されるように、傾斜フレーム8を、主フレーム8A及び端部フレーム8Bの2つの部材を有するように構成するようにしてもよい。この場合、主フレーム8Aと端部フレーム8Bとは、主フレーム8Aの下端部において、不図示の接続ピン及び傾斜角度設定ビーム10によって、互いに接続ピンの周りに回転可能に接続される。傾斜角度設定ビーム10は伸縮可能とされており、傾斜角度設定ビーム10の一端は主フレーム8Aに固定され、傾斜角度設定ビーム10の他端は端部フレーム8Bに固定される。端部フレーム8Bは、傾斜角度設定ビーム10の伸縮に応じて接続ピンの周りに回転することにより、主フレーム8Aとの間の角度を調節することが可能とされる。
【0035】
次に、図3を参照して、ベルトコンベア装置1の下方位置の構成についてより詳細に説明する。図3は、ベルトコンベア装置1の要部拡大側面図である。
【0036】
ベルトコンベア装置1の下方位置における被搬送物の積み込み位置P1において、第1ベルト2は、第1キャリアローラ4に押圧されて、第2ベルト3側に向けて凸となる曲面F1をなす。この曲面F1は、側面視において円弧角θ1を有する円弧をなしている。この円弧角θ1は、傾斜フレーム8の傾斜角度の可動範囲角度より大きな角とされている。例えば、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度が15°から75°までの60°の可動範囲で変化し得る場合、円弧角θ1は可動範囲角度の60°よりも大きな角とされる。そして、この積み込み位置において、第2ベルト3は、第2キャリアローラ5に押圧されて、第1ベルト2に対する接線方向に沿うように配置される。具体的には、第2ベルト3は、積み込み位置P1において第1ベルト2に向けて凸となる曲面を描いており、この曲面の接線が、積み込み位置P1において、第1ベルト2が形成する曲面F1の接線方向に平行となっている。
【0037】
また、第2ベルト3は、第2キャリアローラ5により押圧されることによって、被搬送物の積み込み位置P1に接続されるスロープ面F2を形成する。スロープ面F2は、水平面に対して13°以下の傾斜角度θ2を有している。
【0038】
次に、以上のように構成されるベルトコンベア装置1において、掘削工事の進行に伴って傾斜角度を変化させる場合のベルトコンベア装置1の動作について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、傾斜角度を変化させた場合のベルトコンベア装置1の斜視図であり、図5は、傾斜角度を変化させた場合のベルトコンベア装置1の側面図である。図4(a)〜(d)は、それぞれ図5(a)〜(d)に対応する。
【0039】
図4(a)及び図5(a)は、掘削工事の初期において、土砂が掘削された地下空間の深さが浅い段階を示す。このとき、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度は小さい。
【0040】
この後、掘削工事が進み、地下空間の底面がより深い位置になると、図4(b)及び図5(b)に示すように、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度を大きくする。傾斜フレーム8の傾斜角度を大きくしたときに、第2ベルト3は、被搬送物の積み込み位置において、第1ベルト2に対する接線方向に沿って配置された状態を維持する。具体的には、図6(a)に下部水平フレーム7の周辺を拡大して示すように、下部水平フレーム7と傾斜フレーム8との固定を解除し、傾斜フレーム8の下端部の位置の変化に合わせて、下部水平フレーム7を地下空間の底面上において水平方向に移動させることにより、積み込み位置において第1ベルト2の接線と第2ベルト3の接線とが平行になるようにする。
【0041】
この後、さらに掘削工事が進み、地下空間の底面がより深い位置になると、図4(c)及び図5(c)に示すように、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度を更に大きくする。そして、図4(b)及び図5(b)の場合と同様に、下部水平フレーム7を水平方向に移動し、第2ベルト3が第1ベルト2の接線方向に沿って配置された位置を維持するようにする。
【0042】
掘削工事の最終段階になると、図4(d)及び図5(d)に示すように、傾斜フレーム8の水平面に対する傾斜角度を、予め定められた最大傾斜角度とする。このとき、ベルトコンベア装置1の鉛直方向の搬送距離は最大となる。この場合にも、下部水平フレーム7を水平方向に移動し、図6(b)に示すように、第2ベルト3が第1ベルト2の接線方向に沿って配置された位置を維持するようにする。
【0043】
このように、ベルトコンベア装置1によれば、傾斜フレーム8の傾斜角度を変化させた場合に、下部水平フレーム7を傾斜フレーム8の傾斜角度の変化に追従させて移動させることにより、積み込み位置において第2ベルト3が第1ベルト2に対する接線方向に配置された状態が維持され、傾斜フレーム8の傾斜角度を変化させた場合にも被搬送物が第1ベルト2と第2ベルト3との間に確実に挟み込まれる。その結果、被搬送物の鉛直方向の搬送距離によらず、被搬送物が確実にベルトコンベア装置1に積み込まれる。
【0044】
また、曲面F1が側面視において傾斜フレーム8の傾斜角度の可動範囲角度より大きな円弧角を有する円弧をなしていることにより、傾斜フレーム8の傾斜角度を可動範囲内のどの角度に変化させた場合にも、積み込み位置において第2ベルト3が第1ベルト2に対する接線方向に配置された状態を維持することができ、被搬送物のベルトコンベア装置1への積み込みをより確実に行うことができる。
【0045】
また、第2ベルト3が、積み込み位置P1に接続されるスロープ面F2を形成し、スロープ面F2の水平面に対する傾斜角度が13°以下とされていることにより、第2ベルト3上において、被搬送物をスロープ面F2から積み込み位置P1へ、滑落することなく搬送されるため、被搬送物が確実にベルトコンベア装置1に積み込まれる。
【0046】
また、地上面に地上フレーム9が載置され、傾斜フレーム8が建起ピン12を介して建起ピン12の周りに回転可能に地上フレーム9に接続されているため、傾斜フレーム8を建起ピン12の周りに回転させて傾斜フレーム8を引き上げることによって、下部水平フレーム7の載置された略水平面から傾斜フレーム8及びこれに接続される下部水平フレーム7が引き上げられる。このため、工事の進捗に伴って下部水平フレーム7の下方に掘削を進める場合に、下部水平フレームが掘削の支障にならない場所に退避され、効率よく掘削作業が進められる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1ベルト2が形成する曲面F1の側面視における形状を円弧状であるとして説明したが、曲面F1の形状はこれに限られず、例えば側面視において楕円の周の一部のような形状であってもよい。また、第2ベルト3が積み込み位置P1において第1ベルト2に向けて凸となる曲面を形成せずに、単に平面を形成していてもよい。要は、第1ベルト2によって形成される曲面F1が、積み込み位置P1において第2ベルト3に向けて凸となっており、また、傾斜フレーム8の傾斜角度を変化させた場合に、第2ベルト3が曲面F1の接線方向に配置された状態を維持することができればよい。また、地上フレーム9を地上面において移動可能なものとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ベルトコンベア装置
2…第1ベルト
3…第2ベルト
4…第1キャリアローラ
5…第2キャリアローラ
6…フレーム部材
7…下部水平フレーム
8…傾斜フレーム
8A…主フレーム
8B…端部フレーム
9…地上フレーム
10…傾斜角度設定ビーム
11…フレーム接続ピン
12…建起ピン
13…ガイドローラ
14…テイクアップ
15…吊り上げロッド
A…開口部
B…覆工板
C1…前段コンベア
C2…後段コンベア
D…ダンプカー
F1…曲面
F2…スロープ面
H…ホッパ
P1…積み込み位置
X…略水平軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6