特許第5934602号(P5934602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934602
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   A01G31/00 602
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-169895(P2012-169895)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-27897(P2014-27897A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】593122789
【氏名又は名称】ユーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】濱田 直哉
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−247323(JP,A)
【文献】 実開昭50−9446(JP,U)
【文献】 実開平2−111251(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 − 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーポンプを備える栽培装置本体と、該栽培装置本体に対して出し入れ可能であり苗床が設けられ栽培用養液を貯留したケースと、該ケースに貯留された栽培用養液に前記エアーポンプから空気を供給する給気経路部とを備え、
該給気経路部は、前記栽培装置本体側に設けられ前記エアーポンプに接続された本体側給気経路部と、前記ケース側に設けられたケース側給気経路部とを備え、
前記ケースの出し入れに伴って、前記ケース側給気経路部が前記本体側給気経路部と分離結合されることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記ケース側給気経路部は、前記ケースを前記栽培装置本体に収納した状態で前記本体側給気経路部に接続される一端入口部と、前記ケースの内部に開口する他端出口部と、前記一端入口部および前記他端出口部を連通する連通路とを備え、
該連通路は、前記他端出口部に対して上方に向けて延長され上端部が、前記栽培用養液の液面と同一高さ又はこれより上方位置に設定された逆流防止路を備えている請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記ケースは矩形の底壁と、該底壁の四辺から上方に立設されたケース側壁とを備え、前記ケースは、前記栽培装置本体の前後方向に出し入れ可能に構成され、
前記ケース側給気経路部の連通路は、前記ケースの後壁の内側に設けられていることを特徴とする請求項2記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記ケース側給気経路部は、前記ケース側壁のうちの後壁に設けられており、前記一端入口部は、前記ケースの後壁の下部に配置されている請求項3記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記ケースは矩形の底壁と、該底壁の四辺から上方に立設されたケース側壁とを備え、前記ケースは、前記栽培装置本体の前後方向に出し入れ可能に構成され、前記ケース側給気経路部は、前記ケース側壁のうちの後壁であって該ケースの左右方向の中間部に設けられ、前記ケース側壁のうちの前壁であって左右方向の中間部に前記ケースを出し入れする際に用いる取手が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記ケース側給気経路部の一端入口部は前記ケースの出し入れ方向に沿っており、
前記本体側給気経路部は前記ケースの出し入れ方向に沿う嵌合部を備え、
前記一端入口部と前記嵌合部とが嵌合することで、前記ケース側給気経路部および前記本体側給気経路部が結合され、
前記一端入口部または前記嵌合部のうちの一方が、前記一端入口部または前記嵌合部のうちの他方を案内して嵌合させる案内部を備えている請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内での野菜の栽培が可能な水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の水耕栽培装置として、特許文献1に記載の技術が提案されている。これは、容器に溜められた水が浸水するよう設けられた苗床と、水中に空気を供給するための給気(曝気とも称する)装置とを備えている。給気装置は、容器に取付けられたエアーポンプと、水に浸されるエアーノズルと、給気経路部であってエアーポンプおよびエアーノズルを接続するエアーチューブとを備えている。この水耕栽培装置では、エアーポンプを駆動すると、空気がエアーチューブを通ってエアーノズルから水中に供給されて、栽培している野菜が活性化され、根腐れが抑制できる。
【0003】
また、文献としては示さないが、箱状の栽培装置本体に対して、苗床を設置したケースを引出し・収納可能に構成した水耕栽培装置が提案されている。ケースは、苗床への種子の植付け、野菜の収穫や管理及び苗床やケースの洗浄等のメンテナンスのために、栽培装置本体に対して引出し・収納される。
【0004】
植物苗の保管装置として、特許文献2に記載の技術が提案されている。この保管装置では、所定の高さまで水を張るようにした槽と、槽に着脱自在に載置された棚板と、水中に空気を供給する給気装置とを備える。そして、植物苗を植えたポットが、槽に置かれる。
【0005】
この給気装置は、槽の外部に置かれたエアーポンプと、水に浸されるエアーノズルと、給気経路部であってエアーポンプおよびエアーノズルを接続するエアーチューブとを備えている。この保管装置では、エアーポンプを駆動すると、空気がエアーチューブを通ってエアーノズルから水中に供給されて、保管している植物が活性化され、あるいは根腐れが抑制できる。なお、この保管装置では、槽は複数段設けられ、エアーチューブは枝分かれしていることで、各層の水中に空気を供給することができるよう構成されている。
【0006】
特許文献2の保管装置では、給気経路部は一本のエアーチューブによって形成されている。したがって、ポットの設置・取出し、清掃やメンテナンスのために槽を棚板から取外す際、エアーノズルを槽から取出し、取出したエアーノズルは、エアーチューブごと、所定の場所に除けておく必要がある。また、ポットの設置・取出し、清掃やメンテナンスを行った後は、槽を棚板に設置し直し、そのうえで再びエアーノズルを槽に置く必要がある。しかし、このような作業は、作業者にとって面倒で煩わしく、使い勝手が悪い。
【0007】
そして、箱状の栽培装置本体に対して苗床を設置したケースを引出・収納可能に構成した水耕栽培装置に、特許文献2のような、給気経路部が一本のエアーチューブによって形成されている給気装置を適用させた場合でも同様である。すなわち、苗床への種子の植付け、野菜の収穫や管理等のために、ケースを栽培装置本体から引出し・収納する際に、エアーノズルやエアーチューブを所定の場所に除けたり、設置し直したりする作業は、作業者にとって煩わしく、使い勝手が悪い水耕栽培装置になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3103311号公報
【特許文献2】実用新案登録第3067134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、栽培装置本体に対して苗床を設置したケースを引出・収納可能に構成されていても、給気経路部の扱いに手間がかからないことで、使い勝手の良い水耕栽培装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エアーポンプを備える栽培装置本体と、前記栽培装置本体に対して出し入れ可能であり苗床が設けられ栽培用養液を貯留したケースと、該ケースに貯留された栽培用養液に前記エアーポンプから空気を供給する給気経路部とを備え、該給気経路部は、前記栽培装置本体側に設けられ前記エアーポンプに接続された本体側給気経路部と、前記ケース側に設けられたケース側給気経路部とを備え、前記ケースの出し入れに伴って、前記ケース側給気経路部が前記本体側給気経路部と分離結合されることを特徴としている。
【0011】
上記構成において、苗床への種子の植付け、野菜の収穫や管理等の作業のためにケースを栽培装置本体から出し入れする動作に伴って、ケース側給気経路部が本体側給気経路部から分離結合される。これにより、ユーザーは種付け・収穫・管理等の作業でケースを栽培装置本体から出し入れする際に、エアーノズルやエアーチューブを所定の場所に除けたり、設置し直したりする作業をすることなく、しかも栽培用養液に手を触れずに作業することができる。また、苗床やケースの洗浄時に苗床やケースを水洗いし、栽培用養液を貯留した後は、再び手を栽培用養液に触れることもないから、野菜の管理が衛生的に行える。
【0012】
本発明の水耕栽培装置では、前記ケース側給気経路部は、前記ケースを前記栽培装置本体に収納した状態で前記本体側給気経路部に接続される一端入口部と、前記ケースの内部に開口する他端出口部と、前記一端入口部および前記他端出口部を連通する連通路とを備え、該連通路は、前記他端出口部に対して上方に向けて延長され上端部が、前記栽培用養液の液面と同一高さ又はこれより上方位置に設定された逆流防止路を備えた構成を採用することができる。
【0013】
上記構成において、ケース側給気経路部および本体側給気経路部が結合(連通接続)された状態で、本体側給気経路部からケース側給気経路部に空気が供給されていなくても(栽培用養液に空気が供給されていなくても)、連通路の逆流防止路によって、栽培用養液が本体側給気経路部へ逆流しない。ケース側給気経路部が本体側給気経路部から分離(離脱)している場合でも同様である。従って、栽培用養液が本体側給気経路部側(エアーポンプ)に逆流することもなく、また、メンテナンス時に栽培用養液がケース側給気経路部を通過してケースから漏れ出ることもない。
【0014】
本発明の水耕栽培装置では、前記ケースは矩形の底壁と、該底壁の四辺から上方に立設されたケース側壁とを備え、前記ケースは、前記栽培装置本体の前後方向に出し入れ可能に構成され、前記ケース側給気経路部の連通路は、前記ケースの後壁の内側に設けられている構成を採用することができる。
【0015】
上記構成によれば、ケース側給気経路部の連通路は、ケースの後壁の内側に設けられていることで、連通路がケースの後壁の外側へ突出することなく、ケース側給気経路部のケースの後壁外側への突出が最小限に抑えられるため、メンテナンス時にケース側給気経路部を破損することを抑制できる。
【0016】
本発明の水耕栽培装置では、前記ケース側給気経路部は、ケース側壁のうちの後壁に設けられており、前記一端入口部は、前記ケースの後壁の下部に配置された構成を採用することができる。
【0017】
上記構成において、苗床の植物(野菜)が育ってその葉が大きく繁った状態でケースの出し入れ動作を行った場合、植物の葉がケースの後側に垂れるようなおそれがあるが、この状態で再びケースを収納しても、一端入口部は、ケースの後壁の下部に配置されていることで、葉によっては、一端入口部は塞がれにくい。
【0018】
本発明の水耕栽培装置では、前記ケースは矩形の底壁と、該底壁の四辺から上方に立設されたケース側壁とを備え、前記ケースは、前記栽培装置本体の前後方向に出し入れ可能に構成され、前記ケース側給気経路部は、前記ケース側壁のうちの後壁であって該ケースの左右方向の中間部に設けられ、前記ケース側壁のうちの前壁であって左右方向の中間部に前記ケースを出し入れする際に用いる取手が設けられた構成を採用することができる。
【0019】
上記構成によれば、ケース側給気経路部は、ケースの後壁であってケースの左右方向の中間部に設けられ、ケースの前壁であって左右方向の中間部にケースを出し入れする際に用いる取手が設けられているので、メンテナンス時のケースの出し入れにおいて、ケースの左右の中心軸上において、取手とケース側給気経路部と本体側給気経路部が一直線に並ぶので、重量物である栽培用養液が溜められたケースを安定してケースの出し入れ作業を行うことができる。
【0020】
本発明の水耕栽培装置では、前記ケース側給気経路部の一端入口部は前記ケースの出し入れ方向に沿っており、前記本体側給気経路部は前記ケースの出し入れ方向に沿う嵌合部を備え、前記一端入口部と前記嵌合部とが嵌合することで、前記ケース側給気経路部および前記本体側給気経路部が結合され、前記一端入口部または前記嵌合部のうちの一方が、前記一端入口部または前記嵌合部のうちの他方を案内して嵌合させる案内部を備えた構成を採用することができる。
【0021】
上記構成によれば、ケースを出し入れする際、ケースを栽培装置本体から引出す動作に伴って、ケース側給気経路部および本体側給気経路部は直線上で分離(離脱)し、あるいはケースを栽培装置本体に収納する動作に伴って、ケース側給気経路部および本体側給気経路部は直線上で結合(連通接続)する。また、ケース側給気経路部および本体側給気経路部を嵌合して連通接続させる場合に、案内部が、ケース側給気経路部および本体側給気経路部の嵌合状態への案内をして、両者が円滑に嵌合される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水耕栽培装置は、ケースを栽培装置本体から引出す動作に伴って、ケース側給気経路部が本体側給気経路部から離脱し、栽培装置本体に対して引出した方向と反対方向に向けてケースを収納すると、その動作に伴って、ケース側給気経路部が本体側給気経路部に連通接続されて、栽培用貯水に空気が供給され得るから、栽培装置本体に対して苗床を設置したケースが引出・収納可能に構成されていても、給気経路部の扱いに手間がかからないことで、使い勝手の良い水耕栽培装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態である水耕栽培装置の一方の側面方向からの斜視図である。
図2】同水耕栽培装置の他方の側面方向からの斜視図である。
図3】同水耕栽培装置の後壁の一部(下部)を省いた状態の下方側からの斜視図である。
図4】同水耕栽培装置の一方向(右側)からの側面図である。
図5】同水耕栽培装置の他方向(左側)からの側面図である。
図6】同水耕栽培装置の平面図である。
図7】同水耕栽培装置の一部を分解した状態の正面上方からの斜視図である。
図8】同水耕栽培装置の底壁側からの斜視図である。
図9】同水耕栽培装置の天壁および通気箱を省略した状態の正面上方からの斜視図である。
図10】同水耕栽培装置の左右方向中心部での側面断面図、および要部拡大図である。
図11】同水耕栽培装置の給気経路部での平面断面図である。
図12】同水耕栽培装置の前後方向中心部での正面断面図である。
図13】同図12におけるA領域の拡大図である。
図14】同図12におけるB領域の拡大図である。
図15】同図13におけるC−C線矢視図である。
図16】同図14におけるD−D線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る水耕栽培装置を説明する。この水耕栽培装置は、ユーザーが室内で野菜の栽培をするのに用いられる。図1ないし図8に示すように、水耕栽培装置1は、箱型の栽培装置本体2を備える。図7に示すように、水耕栽培装置1は、栽培装置本体2に着脱自在に内装されるケース3、ケース3に着脱自在に装着される苗床4を備える。図9に示すように、水耕栽培装置1は光源装置5を備え、図1ないし図8に示すように、通気路を形成するための通気系形成箱6を備える。
【0025】
〔栽培装置本体〕
栽培装置本体2は、平面視して左右方向を長手方向とする矩形の底壁7(特に図7参照)と、底壁7の右側部に立設された右側壁(一方側壁)8と、底壁7の左側部に立設された左側壁(他方側壁)9と、底壁7の後部に立設された後壁10と、右側壁8および左側壁9をこれら上端部で連設する天壁11とを備える。これにより、栽培装置本体2は、直方体形状に形成されている。
【0026】
後壁10、右側壁8、および左側壁9は透明である。また栽培装置本体2は、底壁7、右側壁8、左側壁9、天壁11によって囲繞されることで開放される前部開口12を開閉自在とする前壁(蓋板)13を備える。この前壁13は透明である。
【0027】
図7に示すように、底壁7、右側壁8、左側壁9、天壁11、前壁13によって囲繞される空間が形成され、該空間が栽培室14である。図8に示すように、底壁7の裏側には、前部開口12を開いた後に前壁13を収納する収納部15が設けられている。収納部15は、前壁13を底壁7の壁面に沿って前後方向に案内するガイド16を備える。ガイド16には、収納部15に収納された前壁13を保持する保持部17が一体的に形成されている。
【0028】
〔光源装置〕
光源装置5は、図7および図10に示すように、栽培装置本体2の内部において、栽培室14の上側に配置された光源室18と、光源室18に配置されたLED19とを備える。栽培室14と光源室18とは、透明な区画壁21により上下方向で区画されている。光源室18には、光源であるLED19を左右方向に並べて複数個装着したLED保持体20が配置されている。LED保持体20は左右方向を長手方向としており、本実施形態では、LED保持体20は、光源室18内において、区画壁21寄りにあって、前後方向に離間して三個並設されている。
【0029】
光源室18の前部には、電源装置およびタイマー等の電装部品22が配置され、光源室18の前部において、電源スイッチ(電源操作片)23および時刻設定スイッチ(現在時刻を設定するための操作片)24が左右方向に並べられている(図7参照)。このうち電源スイッチ23は、前壁13の開閉とは無関係に常時的に露出しており、時刻設定スイッチ24は、前壁13を開けた状態でのみ露出するよう構成されている。
【0030】
〔給気経路部(本体側給気経路部)〕
水耕栽培装置1は、ケース3に溜められた栽培用養液Wに空気を供給するための給気経路部を備えている。該給気経路部は、図10および図11に示すように、栽培装置本体2側に設けられた本体側給気経路部25と、ケース3側に設けられたケース側給気経路部26とを備えている。ここでは、本体側給気経路部25について説明する。なお、図10において実線であるX線は、栽培用養液Wを満水にした位置を示し、仮想線であるY線は、栽培用養液Wが不足する位置を示す。また、ケース3に貯留される栽培用養液Wとしては、水または水に肥料を入れた液体などが用いられる。
【0031】
図10に示すように、本体側給気経路部25は、支持壁27を備える。支持壁27は、栽培装置本体2の後壁10の下部を、左右方向略全域に亘って前方に位置ずれさせることで形成されている。本体側給気経路部25は、支持壁27の左右方向中心部において、支持壁27の下部寄りに配置された受口部28を備える。受口部28は、支持壁27から後方に向けて突出する略円筒状の後部29と、支持壁27から前方に向けて突出する略円筒状の前部30とを備える。なお、支持壁27を前方に位置ずれさせることに伴って、後壁10と面一となるカバー31が設けられ、支持壁27とカバー31との間の空間が電装品装着部として用いられている。
【0032】
後部29の後壁には、さらに後方に向けて突出した突出管32が一体的に形成されている。突出管32は、給気管33を介してエアーポンプ(給気ポンプ)APが接続され、図3および図10に示すように、エアーポンプAPの給気口が給気管33に接続されている。
【0033】
前部30、後部29および突出管32の径方向中心部には前後方向で連通する本体側給気経路34が形成されている。本体側給気経路34は、前部30、後部29、および突出管32の順に、段階的に縮径されている。
【0034】
特に前部30の前端部には、本体側給気経路34の径が拡大されるよう、径方向外方に向けて広がる受片35が形成されている。また前部30の内周面に、環状のパッキン36が装着されている。パッキン36は、受片35の奥部に係止されて、受片35により抜止めされている。
【0035】
〔ケース〕
図7に示すように、ケース3は、栽培装置本体2の栽培室14に着脱自在に出し入れされる。ケース3は栽培装置本体2の底壁7である栽培室14の底壁7に載置してスライドして挿入されることで、栽培装置本体2に収納された状態となる。ケース3は、底壁7に沿うようにして引出し・収納可能である。ケース3は、底壁7の平面形状と相対形状である平面視して矩形の底板(底壁)37と、底板37の四辺から一体的に立設された周板(ケース壁)とを備える。周板は、後板38、前板39、右板40、および左板41を備える。また、周板の上部には、四方に沿設した縁部が設けられている。
【0036】
特に、後板38における左右方向中心部は、前方に向けて凸となるよう形成されている。具体的には、後板38の左右方向中心部は、平面視して前方に向けて湾曲する後湾曲板部42とされている。ケース3を栽培装置本体2に装着した状態において、後湾曲板部42と後壁10との間には、ケース側給気経路部26の一部を入り込ませることのできる空間が形成される。また、前板39における左右方向中心部は、後方に向けて凸となるよう形成されている。具体的は、前板39の左右方向中心部は、平面視して後方に向けて湾曲する前湾曲板部43とされている。この前湾曲板部43に指を入れて縁部をつかむことで、前湾曲板部43上部が縁部を取手として使用される。
【0037】
図7図11に示すように、ケース3の前側の一隅部には、底板37の対角線中心部に向けて湾曲する隅湾曲板部44が形成されている。ケース3の前側の一隅部と隅湾曲板部44とで囲繞される空間にフロート45が装着される。
【0038】
〔給気経路部(ケース側給気経路部)〕
図10および図11に示すように、ケース3は、給気経路部のうちのケース側給気経路部26を備える。ケース側給気経路部26は、ケース3の後板38において、その左右方向略中心部に設けられている。ケース側給気経路部26は、挿入部(一端入口部)46、吐出部(他端出口部)47、および逆流防止部48を備える。
【0039】
挿入部46は、後板38の後面側でその下側寄りにあって、本体側給気経路部25の前部30の本体側給気経路34に対して前後方向で着脱可能に構成されている(例えば、図11の仮想線参照)。挿入部46は、後板38の後面側から、後方へ向けて直線状に突出されている。挿入部46の径方向中心部には、挿入路46aが形成されている。ケース3が栽培装置本体2に装着された姿勢において、挿入部46は、前部30の本体側給気経路34と略同一高さにある。
【0040】
吐出部47は、後板38の前面側でその下側寄りにあって、ケース3の底板37に置かれる不図示の、端部にエアーノズルを設けたエアーチューブ(栽培用養液に浸漬される)に接続される。吐出部47は、後板38の前面側から、前方へ向けて直線状に突出されている。吐出部47は挿入部46に比べて下方に位置付けられている。換言すれば、挿入部46は吐出部47に比べて上方に位置付けられている。吐出部47の径方向中心部には、空気AR1を吐出する吐出路47aが形成されている。なお、後板38の前面において、吐出部47の上方には、庇部材49が形成されている。これは栽培用養液Wの水位が低下して苗床4が下がり、苗床4が吐出部47と接触してエアーチューブが閉塞されるなどして栽培用養液Wに空気を供給できなくなることを防止するためである。
【0041】
連通路(逆流防止部48)は、挿入部46と吐出部47とを連通させる部分である。逆流防止部48は、後板38(後湾曲板部42)の後面に、柱状に一体的に形成されている。逆流防止部48はその内部に、吐出部47の吐出路47aと、挿入部46の挿入路46aとを連通する逆流防止路50が形成されている。逆流防止路50は、縦連通路51,52および横連通路(逆流防止路)53を備える。縦連通路51,52は、吐出路47aおよび挿入路46aのそれぞれの端部から上方に向けて延長されている。横連通路53は、縦連通路51,52どうしのみに、その上端部で連通している。なお、縦連通路51,52は、縦壁54を介して区画されており、縦壁54は前後方向および左右方向の双方に対して傾斜している。横連通路53の高さ位置は、ケース3に貯水される栽培用養液Wの液面に比べて高い位置に設定されている。あるいは、液面と同じ高さであってもよい。
【0042】
〔苗床〕
図7に示すように、苗床4は所定の厚みを有し、平面視して、ケース3の底板37と相対形状の矩形に形成されている。苗床4は、底板37に比べてわずかに小さい面積に形成されている。
【0043】
苗床4は、図7図10ないし図14に示すように、板面に複数の栽培用穴が形成されている。これら栽培用穴は、板面の対角線中心付近に、密になるよう(穴どうしの離間間隔が狭く)配置された内側穴55と、その周りに、内側穴55に比べて疎になるよう(離間間隔が広く)配置された外側穴56とを備える。
【0044】
ここで、内側穴55は、播種時に補助的に使用される栽培用穴である。植物の種子は、発芽率が100%であれば、外側穴56のみに植えつければよいが、実際上は発芽率が100%ということはあり得ない。発芽しない種子や発芽状況の悪い種子があると、他の発芽した種子が成長し収穫するまでの間、その外側穴56は遊び、無駄となる。このような点を考慮し、播種時に内側穴55を利用して外側穴56の個数以上に種子を植付け、発芽状況に応じて間引き、植え替えにより、外側穴56のすべてを植物の成長、収穫に利用し、上記無駄を省く。
【0045】
苗床4の後部における左右方向中心部には、前方に向けて切欠いた後凹部57が形成されている。苗床4をケース3に装着した状態において、後凹部57にケース3の後湾曲板部42が入り込むよう構成されている。苗床4の前部における左右方向中心部には、後方に向けて切欠いた前凹部58が形成されている。苗床4をケース3に装着した状態において、前凹部58にケース3の前湾曲板部43が入り込むよう構成されている。さらに、苗床4における前側の一箇所の隅部には、隅凹部59が形成されている。苗床4をケース3に装着した状態において、隅凹部59にケース3の隅湾曲板60が近接する。
【0046】
苗床4の内部(内側穴55および外側穴56の周囲)に、浮力用空間61が形成されている。この構成により、ケース3に栽培用貯水が貯水されると、ケース3は栽培用養液Wからの浮力を受けて浮く。苗床4は、いわゆるフロート式の苗床である。
【0047】
水耕栽培装置1は、栽培室14の外部(栽培装置本体2の外部)と内部(栽培室14)との間で空気AR1を通気させる第一通気系、および光源室18の外部と内部との間で空気AR2を通気させる第二通気系を備えている。
【0048】
〔通気系形成箱〕
通気系形成箱6は、導入口形成用縦箱部62と、排気口形成用縦箱部63と、連通用横箱部64とを備える。導入口形成用縦箱部62は、栽培装置本体2の右側壁8に上下方向に沿うよう配置されている。排気口形成用縦箱部63は、栽培装置本体2の左側壁9に上下方向に沿うよう配置されている。連通用横箱部64は、導入口形成用縦箱部62および排気口形成用縦箱部63の上部どうしを栽培装置本体2の天壁11(上部)において連通するよう横方向に沿うよう配置されている。これによって、通気系形成箱6は、正面視して下側開放のコ字形に形成されている。
【0049】
導入口形成用縦箱部62は、栽培装置本体2の右側壁8に比べて前後方向の幅は小さく設定されることで帯状に形成され、右側壁8の前後方向中心部に配置されている。排気口形成用縦箱部63は、栽培装置本体2の左側壁9に比べて前後方向の幅は小さく設定されることで帯状に形成され、左側壁9の前後方向中心部に配置されている。連通用横箱部64は、天壁11に比べて前後方向の幅は小さく設定されることで帯状に形成され、天壁11の前後方向中心部に配置されている。
【0050】
〔第一通気系〕
第一通気系は、通気系形成箱6のうち、導入口形成用縦箱部62および排気口形成用縦箱部63を構成部材として用いている。図8および図11に示すように、導入口形成用縦箱部62では、前側縦壁70、後側縦壁72、および側部縦壁74が一体的に形成されて、栽培装置本体2の右側壁8側を開放した断面略コ字状に形成されている。導入口形成用縦箱部62には、側部縦壁74,75に導入口部76が形成されている。
【0051】
側部縦壁74は、その下部のみに、外側(右側)へ向けて膨出する導入口用膨出部77を備える。導入口用膨出部77は、前側縦壁70、後側縦壁72、および側部縦壁74の一部を用いて形成されている。導入口用膨出部77の上部は、外側ほど下方へ向けて傾斜して形成され、下部は、外側ほど上方へ向けて傾斜して形成され、上下方向途中部分は、上下方向に沿うよう形成されている。
【0052】
導入口部76は、側部縦壁74の上下方向に沿う複数のスリットとして形成されている。導入口部76は複数条のスリットから構成されている。前側縦壁70および後側縦壁72は、補助導入口部78を備える。補助導入口部78は、特に、導入口部76が塞がれた場合に機能する。補助導入口部78は、上下方向に沿う複数条のスリットから構成されている(例えば図3参照)。
【0053】
図13および図15に示すように、第一通気系は、栽培装置本体2の右側壁8に形成された給気用通気孔80を備える。給気用通気孔80は例えば角孔であり、右側壁8の上下方向途中部分に複数形成されている。給気用通気孔80の外側には、給気用フィルタ81が、右側壁8に着脱自在に装着されている。給気用通気孔80は、導入口部76に連通されている。
【0054】
図14および図16に示すように、第一通気系は、栽培装置本体2の左側壁9に形成された排気用通気孔82を備える。排気用通気孔82は、左側壁9の上部に開口された開口部である。図10に示すように、排気用通気孔82は、側面視して、円形の上部を取り除いた形状に形成され、メッシュ状に区切られた小孔の集合とされる。排気用通気孔82の内側には、排気用フィルタ83が、左側壁9に着脱自在に装着されている。
【0055】
第一通気系は、通気用ファン84を備える。通気用ファン84として、その回転中心軸85を横軸とした軸流発生ファンが用いられている。通気用ファン84の回転中心軸85の位置は、排気用通気孔82の中心(円形とした場合の中心)に略一致している。
【0056】
図3および図11に示すように、排気口形成用縦箱部63では、前側縦壁71、後側縦壁73、および側部縦壁75が一体的に形成されて、栽培装置本体2の左側壁9側を開放した断面略コ字状に形成されている。排気口形成用縦箱部63には、側部縦壁75に排気口部86が形成されている。
【0057】
側部縦壁75は、その下部のみに、外側(右側)へ向けて膨出する排気口用膨出部87を備える。排気口用膨出部87は前側縦壁71、後側縦壁73、および側部縦壁75の一部を用いて形成されている。排気口用膨出部87の上部は、外側ほど下方へ向けて傾斜して形成され、下部は、外側ほど上方へ向けて傾斜して形成され、上下方向途中部分は、上下方向に沿うよう形成されている。
【0058】
排気口部86は、側部縦壁75の上下方向に沿う複数のスリットとして形成されている。排気口部86は複数条のスリットから構成されている。前側縦壁71および後側縦壁73は、補助排気口部88を備える。補助排気口部88は、特に、排気口部86が塞がれた場合に機能する。補助排気口部88は、上下方向に沿う複数条のスリットから構成されている(例えば図2参照)。
【0059】
この構成により、通気用ファン84が回転中心軸85回りに回転すると、水耕栽培装置1の外部から空気AR1が、負圧状態になっている導入口部76に導入され、給気用通気孔80を通過して栽培室14内に導入され、その後、排気用通気孔82、通気用ファン84を通過して、排気口部86から排気される。すなわち、空気AR1は、導入口部76、導入口形成用縦箱部62の内部空間、栽培室14、排気用通気孔82、排気口形成用縦箱部63の内部空間および排気口部86によって形成される第一通気系の第一通気路91を流れる。
【0060】
〔第二通気系〕
第二通気系は、通気系形成箱6を備える。通気系形成箱6は、導入口形成用縦箱部62と、排気口形成用縦箱部63と、連通用横箱部64とを備える。すなわち、導入口形成用縦箱部62および排気口形成用縦箱部63は第二通気系に兼用される。また、通気用ファン84は、第二通気系に兼用される。第二通気系は、導入口形成用縦箱部62および排気口形成用縦箱部63の、それぞれの内部空間を備える。
【0061】
図10に示すように、栽培装置本体2の天壁11の前後方向中心に、左右方向に亘って連通開口部95が形成され、連通用横箱部64は、連通開口部95を覆うように天壁11に取付けられている。すなわち連通用横箱部64は、前側横壁96、後側横壁97、および上部横壁98が一体的に形成されて、連通開口部95を閉じる断面略コ字状に形成されている。
【0062】
区画壁21における排気口形成用縦箱部63側の端部の所定領域は、区画壁21における導入口形成用縦箱部62側の領域に比べて下方に位置ずれされている。具体的には、図12および図14に示すように、排気口形成用縦箱部63側の端部の所定領域に、外側(左側)ほど下方位置になるよう傾斜した傾斜壁99と、傾斜壁99の外側端部から横方向に延長された水平壁100とによって、光源室18の上下方向高さが広げられている。
【0063】
この構成により、水平壁100は、通気用ファン84の上下幅の途中にあって、通気用ファン84の上部は第二通気系における光源室18(通気路)に臨み、通気用ファン84の下部は第一通気系における排気用通気孔82(通気路)に臨むよう配置されている。通気用ファン84が回転中心軸85回りに回転すると、水耕栽培装置1の外部から空気AR2が、負圧状態になっている導入口部76に導入され、給気用通気孔80を通過して光源室18内に導入され、その後、通気用ファン84を通過して、排気口部86から排気される。すなわち、空気AR2は、導入口部76、導入口形成用縦箱部62の内部空間、光源室18、排気口形成用縦箱部63の内部空間および排気口部86によって形成される第二通気系の第二通気路92を流れる。
【0064】
上記構成の水耕栽培装置1の使用方法を説明する。まず、水耕栽培装置1のユーザーは、苗床4の内側穴55、外側穴56にスポンジ等の吸水性材料である苗床部材(図示せず)を詰め、該苗床部材に野菜の種子を植えつける。また、栽培用養液Wをケース3に貯留しておく。そうすると、苗床部材が栽培用養液Wを吸水して、種子に栽培用養液Wが与えられる。
【0065】
ここで、葉が大きく成長する植物(野菜)であれば、外側穴56のうち、苗床部材を詰める間隔を外側穴56穴一つ置きに詰め、該苗床部材に野菜の種子を植えつけるようにしてもよい。そうすることで、植物の成長段階で其々の苗に均等に光源が照射され、また隣の植物どうしの葉が重なりあって密集し成長が抑制されることもなく、収穫される植物の成長度合いに大差はなくなる。尚、発芽期が経過した時点で、発芽しなかった種子や発芽状況の悪いものを間引き、成長期以降は、外側穴56のみを利用する。
【0066】
このようにした状態で、苗床4をケース3に収納し、水耕栽培装置1の前壁13を開放して前部開口12から、ケース3を栽培装置本体2の底壁7に装着する。前壁13は、開かれた後は、栽培装置本体2の底壁7側に設けたガイド16に案内させるよう前壁13を栽培装置本体2の下側へ押し込むと、前壁13はガイド16の保持部17によってその場に保持される。苗床4をケース3に収納する場合では、ケース3の後湾曲板部42が苗床4の後凹部57のガイドとなり、前湾曲板部43が前凹部58のガイドとなる。
【0067】
ケース3は栽培装置本体2に対して後方向に移動させて、栽培装置本体2に装着させる。こうすることにより、ケース3が栽培装置本体2に装着された姿勢において、挿入部46は、前部30の本体側給気経路34と略同一高さにあるよう設定されているから、ケース側給気経路部26の挿入部46が本体側給気経路部25の受口部28に嵌まり込んで、本体側給気経路34と挿入部46の挿入路46aとが連通する。挿入路46aと逆流防止路50と吐出路47aとは連通しているから、本体側給気経路34と挿入部46の挿入路46aとが連通すれば、本体側給気経路34に吐出路47aが連通する。
【0068】
ケース3は栽培装置本体2に対して後方向に移動させて、栽培装置本体2に装着させると、受片35によって挿入部46が案内されて、挿入部46は、円滑に本体側給気経路部25の受口部28に、円滑に嵌まり込む。
【0069】
そして給気ポンプを駆動すると、該給気ポンプの給気口に接続された給気管33から本体側給気経路部25、ケース側給気経路部26を空気AR1が移動して、吐出路47aからエアーノズルを介して空気AR1が気泡として、栽培用養液W内に供給される。このようにすることで、栽培用養液W内が酸素不足となる状態を、常時的に防止することができる。空気AR1は、栽培対象の根に酸素を供給するという役割などを果たしている。
【0070】
ユーザーは、時刻設定スイッチ24を操作して、現在時刻を設定しておく。そして、前壁13を栽培装置本体2の下部から引出して、前部開口12を閉じる。前部開口12を閉じても、電源スイッチ23は露出しているから、ユーザーはこの電源スイッチ23を押すことができる。ユーザーはこの電源スイッチ23を押すと、光源室18に配置されたLED19が点灯する。栽培室14と光源室18とは、透明な区画壁21により上下方向で区画されているから、人工光源であるLED19の光が、種子に照射される。
【0071】
なお、ユーザーが時刻設定スイッチ24を操作して現在時刻を設定し、電源スイッチ23を押すと、本実施形態の水耕栽培装置1では、例えば、LED19が、18時間の点灯、6時間の消灯を順次繰返すよう設定されている。そして、通気用ファン84もまた、LED19の点灯と消灯に同期して駆動・停止する。
【0072】
フロート45(例えばその目盛り)をユーザーが見て、不足した栽培用養液Wを追加したり、交換したりする場合では、前壁13を開けて、前部開口12からケース3を、水耕栽培装置1に対して手前(前方に)引出す。そうすると、図11の仮想線で示すように、ケース側給気経路部26(挿入部46)が本体側給気経路部25から分離(離脱)するから、ケース側給気経路部26に空気AR1が供給されない状態となる。この状態で栽培用養液Wを追加したり、交換したりする場合では、ケース3に貯水された栽培用養液Wが、吐出路47aから後方(挿入路46a)側へ移動させようとする働きが生じる。
【0073】
しかしながら、ケース側給気経路部26は、逆流防止路50を備えていることで、栽培用養液Wが、吐出路47aから後方側へ移動しようとする働きを抑制して、栽培用養液Wが挿入路46aから漏れ出る状態を防止することができる。換言すれば、ケース3における栽培用養液Wが、ケース側給気経路部26からケース3の外部に漏れ出ないように、ケース側給気経路部26は、止水状態で本体側給気経路部25から分離(離脱)する。
【0074】
このように、本実施形態の水耕栽培装置1では、ケース3を引出し・収納する行為のみで、ケース側給気経路部26と本体側給気経路部25とが結合(連通)、分離(離脱)する構成であるから、ユーザーにとって、給気経路(給気ホース等)の面倒な管理が不要であり、利便性に優れ、使い勝手が良好である。
【0075】
また、植物が成長して葉が繁った状態において、ケース3を引出し、栽培用養液Wの追加や交換を終え、再度ケース3を水耕栽培装置1に収納すると、場合によって植物の葉がケース3の後側に回りこんでしまうことが考えられる。しかしながら、本体側給気経路部25の受口部28は、支持壁27の下部寄りに配置され、ケース側給気経路部26の挿入部46は、ケース3の後板38の下部寄りに配置されている。このため、葉が繁っていたとしても、その葉が受口部28や挿入部46に到達してしまう状態を回避し、葉によって給気経路が遮断されてしまう状態を回避することができる。
【0076】
苗床4に形成された内側穴55、外側穴56の利用形態として、播種時に内側穴55を利用して外側穴56の個数以上に苗床部材を詰めて種子を植付け、発芽状況に応じて植物を間引くようにして、内側穴55に詰めた苗床部材を外側穴56に移動させるといった方法が提案できる。このようにすることによって、植物の発芽から育成・収穫までを安定して行うことができる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、逆流防止路は、ケース3に貯留される栽培用養液Wの最高水位よりも低くならなければ、逆流防止機能を有するから、例えば、吐出部(他端出口部)47に対して低い位置や、同等高さに延長された部分を備えていて、しかも栽培用養液Wの最高水位よりも低くならない部分を備えている構成であってもよい。
【0078】
上記実施形態では、ケース3の形状は、矩形の底板(底壁)37と、底板37の四辺から一体的に立設された周板(ケース壁)とを備える例について述べたがこれに限ることは無い。例えば円形の底板(底壁)37と、底板37の外辺から一体的に立設された周板(ケース壁)とを備えるものでもよい。また、上記実施形態では、苗床4がフロート式のものについて述べたが、これに限ることは無く、苗床4をケース3の上に覆いかぶせる蓋状のものであってもよい。
【0079】
栽培装置本体2は特別に光源を設けず、部屋の光源(照明)を利用する構成であってもよい。上記実施形態では、栽培装置本体2は、ケース3の全体を覆う箱状の形態の場合で説明した。しかしながら、必ずしもケース3を覆う構成でなくてもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態では、光源装置としてLED19を用いたがこれに限定されず、光源室18に設置した蛍光灯であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…水耕栽培装置、2…栽培装置本体、3…ケース、4…苗床、5…光源装置、6…通気系形成箱、7…底壁、11…天壁、12…前部開口、13…前壁、14…栽培室、18…光源室、21…区画壁、23…電源スイッチ、25…本体側給気経路部、26…ケース側給気経路部、28…受口部、32…突出管、33…給気管、34…本体側給気経路、38…後板、46…挿入部、47…吐出部、48…逆流防止部、50…逆流防止路、51,52…縦連通路、53…横連通路、54…縦壁、55…内側穴、56…外側穴、62…導入口形成用縦箱部、63…排気口形成用縦箱部、64…連通用横箱部、76…導入口部、77…導入口用膨出部、78…補助導入口部、80…給気用通気孔、82…排気用通気孔、84…通気用ファン、86…排気口部、87…排気口用膨出部、88…補助排気口部、91…第一通気路、92…第二通気路、95…連通開口部、99…傾斜壁、100…水平壁、AR1…空気、AR2…空気、W…栽培用養液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16