特許第5934637号(P5934637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934637
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20160602BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   E02F9/00 B
   E02F9/08 Z
   E02F9/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-270120(P2012-270120)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-114623(P2014-114623A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 航
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−262616(JP,A)
【文献】 特開2001−323501(JP,A)
【文献】 特開2007−170129(JP,A)
【文献】 特開平10−096248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が搭乗するキャブを前部にカウンタ・ウエイトを後部に有しエンジンが搭載される上部旋回体と、この上部旋回体に取り付けたフロントと、前記上部旋回体の下方に位置する下部走行体と、前記キャブ内に設けられ前記フロント及び上部旋回体の各動作を指令するための操作レバーと、前記操作レバーの付け根部に設けられ前記操作レバーの操作により作動するパイロット弁と、前記パイロット弁と配管接続され前記フロントの動作を制御する油圧制御弁と、前記パイロット弁と前記油圧制御弁の間に設けられ前記操作レバーによる前記フロント及び前記上部旋回体の各動作の指令内容を切り換えるための切換え弁とを備え、
前記上部旋回体の基礎を構成する旋回フレームが、左右1対配置されたサイドフレームと、このサイドフレーム間であって前記サイドフレームにほぼ平行に配置された1対のセンターフレームと、前記サイドフレームと前記センターフレーム間を接続する複数の補強ビームとにより構成される建設機械において、
前記複数の補強ビームは、前記キャブの背面側に配置されユーティリティ室を区画する仕切り壁が取り付けられる第1の補強ビームとこの第1の補強ビームと隣り合い前記カウンタ・ウエイト側に配置された第2の補強ビームとを有し、
前記第1の補強ビームと前記第2の補強ビームとの間には、ブラケットを配置し、このブラケットに前記切換弁を載置し、この切換弁を覆う切換弁カバーを前記ブラケットに取り付けたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ブラケットよりも前記センターフレーム側であって前記第1の補強ビームと前記第2の補強ビーム間に第2のブラケットを配置し、このブラケットに前記切換弁に接続するワイヤハーネスまたは油圧ホースの少なくともいずれかを保持するクランプを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ブラケットの一端側は前記第1の補強ビームに固定され、前記ブラケットの他端側は前記第2の補強ビームよりも前記カウンタ・ウエイト側へ延在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ブラケットの前記カウンタ・ウエイト側への延在部に、前記切換弁カバーの前記ブラケットへの取り付け部を取り付けたことを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記切換弁のカバーは、箱型に形成されたカバー、または分割型のカバーで一方が前記ブラケットに取り付けられており他方がこのブラケットに取り付けられた部分に係合する蓋形状であるカバーのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械及に係り、特に中小型の建設機械が備える切換弁とそれに接続される油圧ホース及びワイヤハーネスの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械では、キャブ内に設けられた複数の操作レバーの操作によりパイロット弁が作動し、パイロット弁に配管接続された油圧制御弁が動作してブームやバケット等の各種作動部を作動させる。その際、パイロット弁と油圧制御弁との間に、手動でまたは電気的に操作レバーの動作内容を切り替える切換弁を配置する。そして、この切換弁を作業前に切換え、アクチュエータの作動を作業者が慣れ親しんだ操作レバーの操作方向に対応させている。
【0003】
切換弁の配置及び構造の従来の例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載の建設機械では、油圧制御弁とパイロット弁との接続関係を変更する切換弁の配置構造を工夫することにより、スペースの有効利用と最適なレイアウトの実現を図っている。すなわち、油圧制御弁をテールフレームの一対のフレーム部材間に配置し、油圧制御弁の各パイロットポートと操作レバーにより操作される複数のパイロット弁との接続関係を手動で切換え可能な切換弁を、フレーム部材の操作レバーに近い側の上フランジ上に配設している。
【0004】
ところで、建設機械には、ユーティリティ室が形成されている場合があり、その場合ユーティリティ室はキャブの後方に形成されていることが多い。ユーティリティ室を有効に利用する例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の建設機械では、エンジンコントローラやエアクリーナをユーティリティ室に設けて、エンジン近傍の温度変化や振動からエンジンコントローラを保護するとともに、エンジン吸気の温度上昇を防止し、メインテナンス性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262616号公報
【特許文献2】特開2007−170129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異なる建設機械を使用する可能性のある場合に、切換弁を有する建設機械を使用して、作業前に切換弁を切換えることは、作業者の作業のやり易さ及び安全性の向上の面からも重要である。そのため、手動切換え弁を使用する場合には、切換弁への作業者のアクセスのし易さが必要になる。一方、電気的に切り替える電磁弁を有する切換弁では、作業前に作業者が直接切換弁にアクセスする必要はないものの、油圧のホースと制御信号用のワイヤハーネスとが狭い空間に共存することとなる。
【0007】
上記特許文献1に記載の建設機械では、油圧制御弁の近くに切換弁を配置したことにより、スペースの有効活用は図られるものの、エンジン等が配置される建設機械のほぼ中央部にあるため、作業者が建設機械のそばの地面に立って作業することは困難である。そのため、作業者は建設機械に登っての作業とならざるを得ない。
【0008】
また、小型の建設機械の場合には、建設機械のそばでの作業も考えられる。しかし、切換弁の切換え時の誤動作を防止するために、容易な切換え防止が設定されており、建設機械のそばから作業しても作業性はそれほど向上しない。逆に小型の建設機械では、切換弁の設置に許容される空間は狭い空間に限定され、設置位置によっては必須である切換え位置の視認も困難になる。
【0009】
このような手動での切換えに伴う要求を満たすため、建設機械のキャブ後方に形成されるユーティリティ室に切換弁を配置すれば、切換弁を作業者が地上に立ったままで切換えることが可能になる。すなわち、特許文献2に記載のようにユーティリティ室を有効に利用すれば、切換弁の切換え動作のしにくさも解消し、切換え内容も確認できる。
【0010】
この特許文献2に記載の建設機械は、比較的大型の建設機械であるので、ユーティリティ室とラジエータやオイルクーラが配置されている部屋とが隔壁で区画されている。そのため、エンジンが配置される機械室等で発生した熱気がユーティリティ室に流入するのが防止され、ユーティリティ室の温度上昇が防止されている。しかしながら、小型の建設機械ではユーティリティ室として区画された部屋を確保しにくく、ユーティリティ室が形成されてもラジエータやオイルクーラが配置される部屋と、一体化された部屋とならざるを得ない。その場合、ユーティリティ室部分に形成される僅かな空間に切換弁を配置することになり、熱侵入防止の対策を施すことが難しくなっている。さらに、電気的に切換える場合には、油圧ホースの他にワイヤハーネスが使用され、狭い空間のさらなる有効活用が必要となる。
【0011】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、切換弁を有する建設機械において、小型の建設機械であっても、切換弁配置部からユーティリティ室(部)及びラジエータ室へ熱風が導入されるのを確実に防止することにある。本発明の他の目的は、上記目的に加え、手動切換えの切換え弁であれば、切換弁へのアクセスを容易にすることであり、電気的に切換える切換弁の場合には、ワイヤハーネスと油圧ホースとを狭い空間にコンパクトに収容することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の特徴は、作業者が搭乗するキャブを前部にカウンタ・ウエイトを後部に有しエンジンが搭載される上部旋回体と、この上部旋回体に取り付けたフロントと、前記上部旋回体の下方に位置する下部走行体とを備えた建設機械において、前記上部旋回体は、左右1対配置されたサイドフレームと、このサイドフレーム間であって前記サイドフレームにほぼ平行に配置された1対のセンターフレームと、前記サイドフレームと前記センターフレーム間を接続する複数の補強ビームとを有し、この複数の補強ビームの中で前記キャブの背面側に配置されユーティリティ室を区画する仕切り壁が取り付けられる第1の補強ビームとこの第1の補強ビームと隣り合い前記カウンタ・ウエイト側に配置された第2の補強ビームとの間にブラケットを配置し、このブラケットに前記フロントの動作を切換えるまたは前記フロントに追加した動作であるアシストの動作を切換える切換弁を載置し、この切換弁を覆う切換弁カバーを前記ブラケットに取り付けたことにある。
【0013】
そしてこの特徴において、前記ブラケットよりも前記センターフレーム側であって前記第1の補強ビームと前記第2の補強ビーム間に第2のブラケットを配置し、このブラケットに前記切換弁に接続するワイヤハーネスまたは油圧ホースの少なくともいずれかを保持するクランプを取り付けるのがよく、前記ブラケットの一端側は前記第1の補強ビームに固定され、前記ブラケットの他端側は前記第2の補強ビームよりも前記カウンタ・ウエイト側へ延在されているのがこのましい。さらに、前記ブラケットの前記カウンタ・ウエイト側への延在部に、前記切換弁カバーの前記ブラケットへの取り付け部を取り付けてもよい。
【0014】
また、前記切換弁のカバーは、箱型に形成されたカバー、または分割型のカバーで一方が前記ブラケットに取り付けられており他方がこのブラケットに取り付けられた部分に係合する蓋形状であるカバーのいずれかであるのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建設機械のキャブの後方に配置される2本のビーム間を接続するブラケットを設け、このブラケットに切換弁を取り付けるようにしたので、切換弁配置部をユーティリティ室(部)から仕切ることが可能になり、切換弁配置部からエアクリーナが配置されるユーティリティ室(部)へ熱風が導入されるのを防止できる。また、ユーティリティ室の下方に切換弁を配置できるので、手動切換えの切換弁であれば、切換弁へのアクセスが容易になる。一方、電気的に切換える切換弁の場合には、ワイヤハーネスと油圧ホースとを狭い空間にコンパクトに収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る建設機械の一実施例の側面図である。
図2図1に示した建設機械の上面図である。
図3図1に示した建設機械が備える上部旋回体のフレーム部分を示す斜視図である。
図4図1に示した建設機械が備えるユーティリティ室周りの斜視図である。
図5図4に示したユーティリティ室の下部の斜視図である。
図6図5に示した切換弁に接続される油圧ホース及びワイヤハーネス用のブラケット周りの斜視図である。
図7図3中のU部の斜視図である。
図8図1に示した建設機械が備える切換弁に付設するカバーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る建設機械の一実施例を、図面を用いて説明する。
図1に本発明に係る油圧ショベル1の側面図を、図2に油圧ショベル1の上面図をそれぞれ示す。油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2とともに油圧ショベル1の車体を構成する上部旋回体3と、この上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられたフロント4とを備えている。そして、この油圧ショベル1は、土砂の掘削作業等に用いられる。
【0018】
上部旋回体3は、旋回の中心となる旋回フレーム5と、この旋回フレーム5の上側であって前方側に搭載されるキャブ6と、旋回フレームの上側であって後方側に搭載されるカウンタ・ウエイト8と、キャブ6とカウンタ・ウエイト8間に位置するエンジン9とを有している。エンジン9の外気吸込み側には、熱交換器12が配置されており、排気側には油圧ポンプユニット19が配置されている。エンジン9等が配置されている部分は機械室を構成しており、この機械室の一部は機械室カバー17で覆われている。一方、油圧ショベル1のキャブ6後方側の側面部は、建屋カバー11で覆われている。建屋カバー11は片開き式であり、キャブ6側端部を回動中心にして開閉可能になっている。
【0019】
キャブ6の右側部であって、フロント4の取付部の真後ろには、旋回モータ3Aが配置されており、この旋回モータ3Aの後方部には、油圧制御弁30が配置されている。油圧制御弁30は、キャブ6の後方に配置された切換弁29に配管接続されている。
【0020】
図3に、上部旋回体3の基礎を構成するフレーム5の構造を斜視図で示す。なお、以下の説明では、フレーム5を床板20で示している。床板20上に間隔を持って立設され、上端部にフロント4の取り付け孔がそれぞれ設けられた2枚の縦板からなるセンターフレーム25と、センターフレーム25の後部に設けられ、上下にそれぞれフランジ23、22が設けられたテールフレーと、センターフレーム25及びテールフレーと並行して設けられるとともに、左右方向の最外側に設けられるサイドフレーム24a、24bと、センターフレーム25及びテールフレー並びにサイドフレーム24a、24bを接続する複数の補強ビームとから構成される。
【0021】
左側のサイドフレーム24aとセンターフレーム25及びテールフレーム23との間に形成される箇所には、最前部にキャブ6の床面を構成する矩形状のキャブ部6Aが形成され、キャブ部6Aの後方にはユーティリティ室部15Aが形成される。キャブ部6Aのさらに最前部には、油圧ショベル1のフロント4及び上部旋回体3の各動作を指令するための操作レバー96、98が左右に平行に配置されている。各操作レバー96、98の付け根部には、パイロット弁ユニット97、99が配置されている。なお、ユーティリティ室部15Aの下部には、補強ビームとしてビーム26b、26cが設けられている。
【0022】
ユーティリティ室部15Aは、サイドフレーム24aとセンターフレーム25を接続する補強ビーム26cに設けられた、一点鎖線で示した仕切り壁14により、区画される。ユーティリティ室部15Aには、切換弁29が配置されており、パイロット弁ユニット97、99と油圧ホースまたはワイヤハーネスにより接続されている。
【0023】
センターフレーム25は、遮熱板の役目も果たしている。センターフレーム25、テールフレーム23及び各補強ビームには、図示しないブラケットが設けられており、熱交換器12やエンジン9、油圧ポンプユニット19等の各部材がそれらブラケットによりフレーム20に固定される。なお、床鋼板21、センターフレーム25、テールフレーム23及び補強ビームには、配管や配線の取り回しの必要に応じて孔が形成されている。
【0024】
図3に示したように、本実施例では、パイロット弁ユニット97、99と油圧制御弁30とを接続する配管系の途中に切換弁29を配置している。この理由は、複数の作業機械がある場合に、操作レバー96、98の操作方向を全ての機械で統一するためや、作業機1を操作する操作者が自身の操作しやすい操作レバー96、98の駆動方向とするため、および付加された操作機能であるアシストの制御のためである。
【0025】
ここで、アシストの制御としては、作業装置として付加されたアタッチメントの操作機能、例えばフロント先端4に取り付けるバケットの回転等の付加機能の制御である。これらの付加機能は、操作レバー96、98自体の操作以外に、操作レバー96、98等に設けられたボタンを操作することで、電気信号が切換弁(電磁弁)29に伝達され、切換弁29により制御された油圧力で動作される。
【0026】
切換弁29をユーティリティ室(部)15に配置すると、油圧ホース配管の取り回しのために床部に孔を開けざるを得ず、その場合、ユーティリティ室(部)15は熱交換器12が配置されている部分と区画されていないので、熱交換器12に高温の空気が入り込むおそれがある。また、ユーティリティ室の上部にはエアクリーナ13が設けられているが、このエアクリーナ13の吸入空気温度が上昇するおそれもある。そこで本実施例では、床鋼板21からの高温空気の侵入を、切換弁29部で留めるようにしている。これにより、エアクリーナ13および熱交換器12へ高温空気が侵入するのを防止している。
【0027】
この切換弁29部の詳細を図4図7を用いて説明する。図4は、キャブ6の後方に仕切り壁14で仕切って形成したユーティリティ室15の斜視図である。この図4では、片開き式の建屋カバー11を取り去った状態で示している。図5は、図4で示したユーティリティ室15の下部の様子を示した図であり、床面に切換弁29を配置した図である。この図5では、切換弁29に取り付けるカバーを取り去って示している。また、図6図3のU部に相当する部分の詳細図であり、切換弁29を下側から見た図である。図7は、切換弁29を配置した部分の斜視図である。
【0028】
キャブ6の後方の空間は従来、前方側のユーティリティ室と後方側のラジエータ室とに壁面部材で区画されていた。本実施例は小型の油圧ショベルなので、キャブ6の後方の空間は壁の無い一体空間となっており、単一のユーティリティ室15を構成している。
【0029】
このユーティリティ室15にはエアクリーナ13が配置されているので、ユーティリティ室15の温度上昇は、エンジン性能の低下に結びつく。そのため、エンジン9からユーティリティ室15への伝熱を遮断する。上述したように、切換弁29には油圧ホース41bやワイヤハーネス41aが接続されており、エンジン9側の排熱が侵入し易い。そこで、本実施例では以下に示すように、ユーティリティ室15の床面側に配置する切換弁29とこの切換弁29に接続する油圧ホース41b及びワイヤハーネス41aとを切換弁カバー40等で仕切っている。
【0030】
図5図7を用いて、切換弁29をユーティリティ室15の床部に取り付ける詳細を説明する。左サイドフレーム24aとセンターフレーム25間を接続する複数の補強ビームの中で、キャブ背面に設置される断面コの字型の補強ビーム26cには、仕切り壁14が立設されている。補強ビーム26cと平行で、カウンタ・ウエイト8側に配置される補強ビーム26bは、上部水平部26bと、この上部水平部26bからほぼ直角に折れ曲がった垂直部26bと、垂直部26bからほぼ直角に折れ曲がった下部水平部26bを有しており断面乙字型となっている。補強ビーム26bには、ユーティリティ室15の建屋カバー11に面する側に、熱交換器12等を載置するための床部材21aが床部材固定具(ボルト及びナット)50aにより取り付けられている。
【0031】
さらに、平板の一方端側を折り曲げた形状のブラケット21bの折り曲げ端21bを、仕切り壁14を介して補強ビーム26cにブラケット固定具(ボルト及びナット)50bで取り付ける。ブラケット21bの他端側は補強ビーム26bに載置し、ブラケット固定具(ボルト及びナット)56で補強ビーム26bに固定する。このブラケット21bの水平部21bは、切換弁29を搭載するのに用いられる。
【0032】
ブラケット21bの上面には、台形状に折り曲げられた切換弁取付台27の両側の平板部が、切換弁取付台固定具(ボルト及びナット)52a、52bを用いて固定されている。切換弁取付台27には切換弁29が搭載され、切換弁取付台27の裏面側から、切換弁固定具(ボルト及びナット)55により固定される。切換弁取付台27を台形状に形成したので、ボルト55がブラケット21bと干渉するのを防止できる。
【0033】
ブラケット21bの奥側には、配線・配管41を保持するために配線・配管収納部材(ブラケット)28が設けられている。この配線・配管収納部材28は、上方に折れ曲げられた垂直取付け部28aと、この垂直取付部28aからほぼ直角に水平に延びる水平部28bと、水平部28bからほぼ直角に上方に折り曲げられた垂直部28cと、この垂直部28cからほぼ直角に折り曲げられた水平取付部28dとを有する。垂直取付部28aは、配線・配管収納部材固定具(ボルト及びナット)51bを用いて、仕切り壁14を介して補強ビーム26cに取り付けられる。水平取付部28dは、配線・配管収納部材固定具ボルト・ナット)51aを用いて、補強ビーム26bの上部水平部26bの裏面側に固定される。
【0034】
つまり配線・配管収納部材28は、中央部が下に凸の形状をしており、この下に凸の形状部に端部を締結具(ボルト及びナット)35b、36bで固定されたクランプ35a、36aが取り付けられる。クランプ35aはワイヤハーネス41aを、クランプ36aは油圧ホース41bをそれぞれ保持する。配線・配管収納部材28のさらに奥側には、仕切板32が設けられており、ユーティリティ室15をエンジン等が配置される機械室から区画している。仕切板32には、ワイヤハーネス用穴33および油圧ホース用穴34が形成されており、それぞれ操作レバー96、98や油圧制御弁30へワイヤハーネス41aおよび油圧ホース41bを導くのに使用される。
【0035】
このように構成した切換弁29部を仕切るために、上面形状がL字型の切換弁カバー40が設けられている。この切換弁カバー40は、補強ビーム26cと補強ビーム26b間に形成されるユーティリティ室15の床面の隙間を塞いでいる。なお、図7では図示を省略しているが、切換弁カバー40のL字の欠けた部分や、切換弁カバー40の前面側にも床面を塞ぐように板状の閉塞部材が設けられている。
【0036】
図8に、切換弁29の上部を覆うカバーのいくつかの実施例を示す。図8(a)は、切換弁29を覆うカバー40を、ケース取付具(ボルト等)54でブラケット21bに取り付けている。切換弁29が電磁弁タイプの場合には、切換弁29を手動で切換える必要がないのでカバー40の取り外し作業は頻発せず、ユーティリティ室15の床形状に応じた形状にカバー40を構成できるので、機械室等からの熱の侵入を防止するのに好適である。
【0037】
図8(b)は、切換弁29を覆うカバーの形状を2分割形状とし、一方のカバー40aをブラケットにケース取付具54で固定子、他方のカバー40bをヒンジ部42で回動可能にしている。2つのカバー40a、40bは、止めねじ(蝶ねじ)43で係止される。油圧ホースが接続される切換弁29であって作業前に手動で切換えが必要な場合等に、カバー40bをヒンジ部42周りに回動させることにより、切換弁29の上方に作業空間を確保できる。
【0038】
図8(c)は、切換弁29を覆うカバーを嵌めこみ構造44とした例である。一方のカバー40cをブラケット21bに固定具54で固定し、他方のカバー40dをキャップ形状として、カバー40cに嵌めこんでいる。キャップとして作用するカバー40dの高さは、図ではカバー40cよりも高くしているが、操作性を考慮して設定するまた、はめ込み構造は必ずしも全周にわたる必要はなく、気密性を確保できれば周の一部だけでも十分である。本実施例の場合には、ワンタッチでカバー40dの着脱が可能になるので、頻繁な切換弁29の手動操作が必要な場合に好適である。
【0039】
図8(d)に、切換弁29を覆うカバーをねじ込み構造45とした例を示す。図8(c)の場合のはめ込み部をねじに変えただけで、その他は図8(c)の例と同様である。キャップ形状のカバー40fの端部に形成したねじと、ブラケット21bに固定したカバー40eの上端に形成したねじとをかみ合わせる。この場合も、キャップ形状のカバー40fの高さは、操作性を考慮して決める。本例ではねじ構造を採用しているので、気密性を確保できる。
【0040】
以上のいずれの場合でも、2つの補強ビーム間に取り付けたブラケットに切換弁を載置し、ブラケットに切換弁カバーを気密に取り付けている。これにより、機械室側からユーティリティ室側への熱の侵入を防止している。また、切換弁カバーをブラケットにねじ止めしねじの締結・解除だけで容易に切換弁にアクセス可能とするか、または切換弁カバーを分割構造にして容易に取り外し取り付け可能にしている。これにより、切換弁の手動切換えへの対応が可能になる。
【0041】
また上記いずれの例でも、箱型の遮熱カバーとしているが、遮熱カバーの形状は箱型に限らず、円筒状等であってもよい。また、遮熱カバーの内面側に断熱材を設ければさらに遮熱効果が増す。さらに、遮熱カバーの上面高さは、作業者が地面に立った状態で上から視認できる高さが望ましく、そのような高さとするかまたは底板高さが調整できることが望ましい。
【0042】
また上記各実施例では、ユーティリティ室とラジエータ室が区画されていない例を取り上げたが、区画されていても切換弁をユーティリティ室に設けることにより、ラジエータ室やエアクリーナに高温空気が流入する恐れのある場合に、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0043】
1…建設機械(油圧ショベル)、2…下部走行体、3…上部旋回体、3A…旋回モータ、4…フロント、5…旋回フレーム、6…キャブ、6A…キャブ部、8…カウンタ・ウエイト、9…エンジン、11…建屋カバー、12…熱交換器、13…エアクリーナ、14…仕切り壁、15…ユーティリティ室(部)、15A…ユーティリティ室部、17…機械室カバー、18…フレーム、19…油圧ポンプユニット、20…床板、21a…床部材、21b…ブラケット、21b…垂直部、21b…水平部、21c…切換弁取付部材、22…下フランジ、23…上フランジ、24a、24b…サイドフレーム、25…センターフレーム、26a…補強ビーム、26b…補強ビーム(第1の補強ビーム)、26b…上部水平部、26b…垂直部、26b…下部水平部、26c…補強ビーム(第2の補強ビーム)、27…切換弁取付台、28…配線・配管収納部材(第2ブラケット)、28a…垂直取付部、28b…水平部、28c…垂直部、28d…水平取付部、29…切換弁、30…油圧制御弁、32…仕切板、33…ワイヤハーネス用穴、34…油圧ホース用穴、35a…クランプ、35b…締結具(ボルト・ナット)、36a…クランプ、36b…締結具(ボルト・ナット)、40、40a〜40f…切換弁カバー、41…配線・配管、41a…ワイヤハーネス、41b…油圧ホース、42…ヒンジ部、43…止めねじ、44…嵌めこみ構造、45…ねじ込み構造、50a…床部材固定具(ボルト・ナット)、50b…ブラケット固定具(ボルト・ナット)、51a、51b…配線・配管収納部材固定具(ボルト・ナット)、52a、52b…切換弁固定部材固定具(ボルト・ナット)、53…切換弁固定具(ボルト・ナット)、54…ケース取付具(ボルト・ナット)、55…切換弁固定具(ボルト・ナット)、56…ブラケット固定具(ボルト・ナット)、96…操作レバー、97…パイロット弁ユニット、98…操作レバー、99…パイロット弁ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8