特許第5934646号(P5934646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934646端子接着用テープの製造方法、および端子接着用テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934646
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】端子接着用テープの製造方法、および端子接着用テープ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20160602BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20160602BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20160602BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01M2/08 K
   H01M2/06 K
   B32B27/16 101
   B32B27/32 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-528663(P2012-528663)
(86)(22)【出願日】2011年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2011068017
(87)【国際公開番号】WO2012020721
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-227760(P2010-227760)
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-180380(P2010-180380)
(32)【優先日】2010年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】折原 正直
(72)【発明者】
【氏名】薗田 和孝
(72)【発明者】
【氏名】竹林 賢三
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−245988(JP,A)
【文献】 特開2008−103294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/08
H01M 2/06
B32B 27/16
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートフィルムとリード端子とを接着するための端子接着用テープの製造方法において、
第1の直鎖状ポリエチレン層と、第2の直鎖状ポリエチレン層と、酸変性ポリエチレン層と、が順に積層された多層フィルムを製膜した後、
前記第1の直鎖状ポリエチレン層側から前記多層フィルムに電子線を照射することを特徴とする端子接着用テープの製造方法であって、
前記第1の直鎖状ポリエチレン層は密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層であり、前記第2の直鎖状ポリエチレン層は密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層であるか、又は、
前記第1の直鎖状ポリエチレン層はMFRが5g/10min以上30g/10min未満の高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層であり、前記第2の直鎖状ポリエチレン層はMFRが0.7g/10min以上6g/10min未満の低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層であり、前記高流動性直鎖状低密度エチレン層と前記低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層とのMFRの差が1.0g/10min以上であることを特徴とする端子接着用テープの製造方法。
【請求項2】
前記第1の直鎖状ポリエチレン層は密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層であり、前記第2の直鎖状ポリエチレン層は密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層であることを特徴とする請求項1記載の端子接着用テープの製造方法。
【請求項3】
前記密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層と、前記密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層との密度差が、10kg/m以上であることを特徴とする請求項2記載の端子接着用テープの製造方法。
【請求項4】
前記第1の直鎖状ポリエチレン層はMFRが5g/10min以上30g/10min未満の前記高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層であり、前記第2の直鎖状ポリエチレン層はMFRが0.7g/10min以上6g/10min未満の前記低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層であり、前記高流動性直鎖状低密度エチレン層と前記低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層とのMFRの差が1.0g/10min以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の端子接着用テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルムによって外包された電池やキャパシタにおいて、ラミネートフィルムとリード端子との間に介在させる端子接着用テープの製造方法、および端子接着用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化の要求が高まると共に、その電源として用いられる電池にも小型化、軽量化の要求が強まっている。同時に、電池には高いエネルギー密度、大きいエネルギー容量も求められる。これらの要求を満たすため、近年、ラミネートフィルムの内部に、正極、負極、セパレータおよび非水電解質が封入された非水電解質電池(例えば薄型リチウムイオン電池)の開発が目覚しい。
【0003】
図3は非水電解質電池の一例の模式的縦断面図(A)及びa−a’断面の拡大図(B)である。非水電解質電池30は、ラミネートフィルム32内に正極35、負極36、セパレータ37、非水電解質(図示せず)等の発電要素が収納され、ラミネートフィルム32の周縁部がヒートシールされて封入される。尚、このとき正極35に接続された正極リード端子33及び負極36に接続された負極リード端子34は、それぞれラミネートフィルム周縁部のヒートシール部において端子接着用テープ31を介してラミネートフィルム32に接着され、密閉状態で電池内部から外部に導出される。
ラミネートフィルム32とリード端子33、34との間に端子接着用テープ31を用いる主たる目的は、ラミネートフィルム32とリード端子33、34との接着であるが、その他にも二つの目的がある。一つはリード端子導出部Xにおける密封性の向上である。端子接着用テープ31はラミネートフィルム32がヒートシールされる際に、適度に溶融し、リード端子33、34の側面に回りこみ、ラミネートフィルム32とリード端子33、34との間に生じる間隙を埋め、リード端子導出部Xにおける密封性を向上させる。
もう一つの目的は短絡防止である。ラミネートフィルム32を構成する層の1つであるバリア層は、通常アルミニウム箔等の金属箔からなる為、ラミネートフィルム32のバリア層とリード端子33、34とが近接すると短絡する恐れがある。しかしながら端子接着用テープ31を用いると、該端子接着用テープ31によってラミネートフィルム32のバリア層とリード端子33、34との間隔が維持されるので、近接に起因する短絡を防止できる。
【0004】
ところでリード端子導出部Xの密封性を向上させるためには、ラミネートフィルム32周縁部をヒートシールする際に端子接着用テープ31が適度に溶融し、端子接着用テープ31の一部がリード端子33、34の側面に回り込む必要がある。しかしながら端子接着用テープ31が溶融し過ぎると、ラミネートフィルム32のバリア層とリード端子33,34との間隔が縮まるため短絡の恐れが生じる。よって端子接着用テープ31は、ヒートシール時にリード端子33、34と接する層が適度に溶融し、中間層はあまり溶融しないものが望ましい。このような性能を有する端子接着用テープが特許文献1、2及び3において提案されている。
【0005】
特許文献1には、架橋ポリオレフィン樹脂からなる架橋層と熱可塑性樹脂からなる熱可塑層を有する絶縁体(端子接着用テープ)が記載されている。この端子接着用テープは、熱可塑層がリード端子側に、架橋層がラミネートフィルム側になるように、リード端子とラミネートフィルムとの間に介在させることによって密封性、絶縁性を発揮する。即ち、熱可塑層はヒートシール時に溶融しやすいため、リード端子と端子接着用テープとの接着性はもちろん、リード端子の側面に回りこみ、リード端子導出部における密封性を向上させる。また架橋層はヒートシール時に変形し難いため、ラミネートフィルムとリード端子との間隔を保持し電池の短絡を防止する。しかしながら、該端子接着用テープはラミネートフィルムと架橋層とが接するため、ラミネートフィルムと端子接着用テープとの接着性が不十分であった。
【0006】
特許文献2には、架橋されたポリエチレン系樹脂の片面にポリプロピレン層、他の面に酸変性ポリプロピレン層が形成された多層フィルムからなるリード線用フィルム(端子接着用テープ)が提供されており、端子接着用テープの製造方法として2つの方法が例示されている。第1の方法は、予めポリエチレンフィルムを架橋後、その片面にポリプロピレン、他の面に酸変性ポリプロピレン樹脂をそれぞれ押出ラミネート法を用いて積層する方法(特許文献2、段落番号0018)であり、第2の方法はポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂を共押出し製膜して得られたフィルムを電子線架橋する方法(段落番号0019)である。尚、酸変性ポリプロピレン層は、酸変性ポリプロピレン樹脂のみから形成されている場合には電子線照射によって分解するが、酸変性ポリプロピレンに、ポリエチレン成分、ブテン成分、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー成分等を5%以上添加して電子線架橋すると、分子内で架橋が起こる(段落番号0020)。
【0007】
第1の方法による端子接着用テープは両表面層が共に架橋されていないため、リード端子導出部における密封性が良好であると共に、端子接着用テープとラミネートフィルムとの接着性及び端子接着用テープとリード端子との接着性が良好であるが、ポリエチレン系樹脂をフィルム状に製膜後、電子線を照射し、更に押出ラミネート法により両表面層を設けるため、製造工程が煩雑であった。
第2の方法は一度の製膜と架橋で端子接着用テープを製造できるので、製造は簡単である。しかしながら酸変性ポリプロピレン層にも電子線が照射されているので、端子接着用テープとリード端子との接着性の低下、リード端子導出部における密封性の低下が懸念される。さらに端子接着用テープのポリプロピレン層にも電子線が照射されるため、ポリプロピレン層が分解し、ラミネートフィルムと端子接着用テープのシール強度が低下する恐れがある。
【0008】
特許文献3には積層体(ラミネートフィルム)と接する層がポリオレフィン、リード線(リード端子)と接する層が金属用熱接着樹脂からなり、ポリオレフィンと金属用熱接着樹脂との間に架橋樹脂を配した多層構成である接着性フィルム(端子接着用テープ)が開示されており(特許文献3、請求項6)、架橋樹脂として活性シラン基を含有するポリオレフィン(段落番号0012)が用いられている。該樹脂は周辺に存在する水分によって架橋が進行するため、端子接着用テープを共押出し製膜した後、中間層のみを架橋させることができる。しかしながら水分によって架橋が進行する活性シラン基を含有するポリオレフィンは、製膜前に水分と接触しないよう、厳重に管理しながら保管する必要があった。また中間層に該樹脂を用いた場合、水分が両外層を透過して中間層に至るまでに時間がかかるため、架橋反応が完了するまでに時間を要するという問題があった。さらに活性シラン基を含有するポリオレフィンは高価であるという問題があった。
【0009】
尚、三層フィルムにおいて両外層の架橋を抑えながら中間層を高架橋させる方法として、中間層にのみ電子線架橋助剤を添加する方法が考えられる。本発明者らは、本発明に先立ち、中間層にのみ電子線架橋助剤を添加した三層フィルムの製膜を試みた。しかしながら得られたフィルムには、多数のゲルの発生が見られた。これは製膜中に、熱と圧力によって架橋剤が中間層を成す樹脂の架橋を引き起こしたためと考えられる。また架橋剤は一般に低分子量である為、架橋剤を配合したフィルムは経時により、未反応の架橋剤がフィルム表面へブリードアウトしてくることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−102016号
【特許文献2】特開2002−279968号
【特許文献3】特開2003−282035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、リード端子導出部を確実に密封でき、リード端子とラミネートフィルムのバリア層とが短絡することを防止し、更にラミネートフィルム及びリード端子の双方と接着性が良好な端子接着用テープの、極めて簡単な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前記課題は、ラミネートフィルムとリード端子とを接着するための端子接着用テープの製造方法において、第1の直鎖状ポリエチレン層と、第2の直鎖状ポリエチレン層と、酸変性ポリエチレン層と、が順に積層された多層フィルムを製膜した後、前記第1の直鎖状ポリエチレン層側から前記多層フィルムに電子線を照射することを特徴とする端子接着用テープの製造方法によって達成される。
【0013】
(実験1)本発明者らは、直鎖状低密度ポリエチレンの「MFR」と「架橋による流動性の変化」について、何らかの相関関係があると考え、下記の実験を行った。
密度がほぼ同じ三種類の樹脂を用意し、Tダイ押出成形法にて各樹脂を厚さ70μmの単層のフィルムに製膜し、同一条件にて電子線架橋を行った。得られたフィルムを試験例1−1〜1−3とする。次いでこれら試験例1−1〜1−3のフィルムについて、電子線照射前と電子線照射後についてフィルムの「残存厚み」を測定し、「架橋による流動性の変化」を確認する。尚、「残存厚み」の測定は、未架橋樹脂の流れ難さが影響しないよう、例えMFRが十分に小さい樹脂であっても未架橋であれば流れ出してしまうような、高温・高圧の条件にて行った。具体的には、試験例1−1〜1−3のフィルムを非加熱のシール用マット状に配置し、上方から240℃に加熱された鉄製の巾10mmのシールバーを、面圧1MPaで10秒間押し当てた。製膜当初70μmであったフィルムの残存厚みを測定し、結果を表1に記す。
【表1】
【0014】
表1より、電子線の照射条件が同じであっても、MFRが小さい程、ヒートシール時の流動性が低下し、残存厚みが大きくなることがわかった。この理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
一般に、樹脂のMFRと分子量とは相関関係が有り、MFRの小さい樹脂は分子量が大きく、MFRの大きい樹脂は分子量が小さいことが知られており、たとえ密度が同じであってもMFRが小さい樹脂ほど一定量あたりの分子数は少ない。そのためMFRが異なる直鎖状低密度ポリエチレンに同じ条件で電子線を照射した場合、一定量あたりの架橋点の数が同じであっても、一分子あたりの架橋点の数は異なってくるのである。即ち、MFRが低く分子量の大きい樹脂は、分子数が少ない為一分子あたりの架橋点が多くなり、逆にMFRが高く分子量が小さい樹脂は、分子数が多い為一分子あたりの架橋点は少なくなる。そのためMFRが低い樹脂は一分子内に多くの架橋点を持ち、隣接する分子と多数の点で固定されるために、架橋により流動性が著しく低下するが、MFRが高い樹脂は一分子内に極わずかの架橋点しか持たず、隣接する分子にほとんど固定されないため、樹脂の流動性が維持されるのである。
【0015】
これらの知見に基づき、前述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち本発明は、ラミネートフィルムとリード端子とを接着するための端子接着用テープの製造方法であって、高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層、低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層、酸変性ポリエチレン層が順に積層された多層フィルムを製膜した後、高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層側から電子線を照射することを特徴とする端子接着用テープの製造方法を提供する。
また、高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層のMFRが5g/10min以上30g/10min未満であり、低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層のMFRが0.7g/10min以上6g/10min未満であり、高流動性直鎖状低密度エチレン層と低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層とのMFRの差が1.0g/10min以上であることを特徴とする上記端子接着用テープの製造方法を提供する。
また、上記製造方法を用いて製造された端子接着用テープを提供する。
【0016】
(実験2)さらに、本発明者らは、直鎖状低密度ポリエチレンの「密度」と「架橋による流動性の変化」について、何らかの相関関係があると考え、下記の実験を行った。
密度の異なる三種類の樹脂を用意し、Tダイ押出成形法にて各樹脂をそれぞれ厚さ70μmの単層のフィルムに製膜した。次いで各フィルムに同条件で電子線を照射した。得られたフィルムを試験例2−1〜試験例2−3とする。
次に試験例2−1〜2−3のフィルムに、巾10mmのシールバーを上下から当て、その後のフィルムの残存厚みを測定した。尚、シールバーは上方が240℃に加熱された鉄製のもの、下方が加熱されていないゴム製のものを用い、面圧1MPaでフィルムに10秒間押し当てた。結果を表2に記す。
【表2】
【0017】
表2より、電子線の照射条件が同じであっても、樹脂密度が小さくなるにつれ、残存厚みが大きくなっている。これは密度が小さくなるに従い、電子線照射による架橋が進行し、熱流動性が低下したためと推察される。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
直鎖状のポリエチレンは、エチレンに2〜10重量%程度のα−オレフィンを共重合させることによって得られるが、通常、α−オレフィンの配合割合が大きくなる程ポリエチレンの密度は小さくなる。よって直鎖状ポリエチレンは、密度が小さい程側鎖が多く、分子中の三級炭素の割合が増加する。ところでポリエチレン樹脂に電子線を照射すると、三級炭素に結合する水素原子が、他の水素原子よりも主鎖から引き抜かれ易いことが知られている。よって電子線照射量が同じであっても、直鎖状ポリエチレンの密度が小さくなる程、三級炭素の割合が増え、多くの水素原子が主鎖に炭素ラジカルを残して引き抜かれる為、該炭素ラジカルに起因する架橋が多く発生し、樹脂の架橋度が上がると推測される。
これらのことを考慮し、本願発明者らは端子接着用テープを三層構造とし、一方の表面層を密度の高い直鎖状ポリエチレン層、中間層を密度の低い直鎖状ポリエチレン層、他方の表面層を酸変性ポリエチレン層とし、これらの樹脂からなる三層のフィルムを製膜した後、密度の高い直鎖状ポリエチレン層側から電子線を照射することによって、表面層の架橋を抑えながら中間層の架橋度を高め、上記課題が解決できることを見出した。
【0018】
即ち、本発明によるとラミネートフィルムによって外包された非水電解質電池のリード端子導出部において、ラミネートフィルムとリード端子とを接着するための端子接着用テープの製造方法であって、密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層、密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層、酸変性ポリエチレン層が順に積層された多層フィルムを製膜した後、密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層側から電子線を照射することを特徴とする端子接着用テープの製造方法が提供される。
また、前記密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層と、前記密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層との密度差が、10kg/m以上であることを特徴とする前記端子接着用テープの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、ラミネートフィルムとリード端子との間に介在させ、熱融着させることによりリード端子導出部における密封性、短絡防止性、ラミネートフィルム及びリード端子との接着性が良好な端子接着用テープを、極めて簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る端子接着用テープを示す模式的断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る端子接着用テープを示す模式的断面図である。
図3】非水電解質電池の一例の模式的断面図(A)及びa−a’端面の部分拡大図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)以下、本発明の第1実施形態に係る端子接着用テープの製造方法について説明する。尚、本発明は主に非水電解質電池に用いられる端子接着用テープの製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ラミネートフィルムにて外包された電池やキャパシタの端子接着用テープの製造に用いることができる。
以下、本発明においては、「高流動性直鎖状低密度ポリエチレン層」を「高流L−LDPE」と称し、「低流動性直鎖状低密度ポリエチレン層」を「低流L−LDPE」と称し、「酸変性ポリエチレン」を「酸変性PE」と称す。
【0022】
初めに高流L−LDPE、低流L−LDPE、酸変性PEをそれぞれ別々の押出機に供給し、各押出機から各樹脂を一つのダイスに供給する、所謂共押出法を用い、高流L−LDPE層/低流L−LDPE層/酸変性PE層からなる三層フィルムを製膜する。
次に得られた三層フィルムに電子線を照射する。このとき電子線は多層フィルムの高流L−LDPE層側から照射する。また電子線照射条件は、フィルムの膜厚、高流L−LDPEや低流L−LDPEの密度等によって適宜決定するとよいが、低流L−LDPE層の架橋が十分に進むよう設定する。しかしながら、酸変性PE層に電子線が到達すると、酸変性PE層の架橋が進み、端子接着用テープとリード端子との接着性、端子導出部における密封性が低下する。そこで、低流L−LDPE層には電子線が十分に到達し、酸変性PE層には電子線があまり到達しない照射条件を選択することが望ましい。
最後に電子線が照射された多層フィルムを、一定巾にスリット加工し、さらに一定長にカットし、本発明の端子接着用テープは完成する。なお、一定長にカットする工程は、端子と端子接着用テープを貼合した後に行ってもよい。
【0023】
尚、上述した三層フィルムの製膜は、例えば高流L−LDPE、酸変性PEをそれぞれ別々にフィルム状に製膜した後、高流L−LDPEフィルムと酸変性PEフィルムとの間に熱溶融した低流L−LDPEを押出す、所謂押出ラミネート法を用いてもよく、さらには各層をそれぞれ別々のフィルムに製膜したのち貼り合わせる、所謂ラミネート法を用いてもよい。しかしながらTダイ共押出法やインフレーション共押出法に代表される共押出法を用いると、一度の製膜工程で三層のフィルムを製造することができるので、製造工程数を削減することができる。
【0024】
図1は本発明の端子接着用テープ10の模式的断面図である。本発明の端子接着用テープ10は少なくとも一方の表面層が高流L−LDPE層11からなり、他方の表面層が酸変性PE層13からなり、高流L−LDPE層11と酸変性PE層13との間に低流L−LDPE層12が配置されている。そして高流L−LDPE層11と低流L−LDPE層12とは電子線により架橋されている。
【0025】
高流L−LDPE層11には、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得られる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のうち、MFRが5g/10min以上30g/10min未満のものを用いる。MFRが5g/10min以下では、一般的な照射条件にて電子線を照射するとヒートシール時の流動性が低下し、リード端子導出部における密封性、および端子接着用テープ10とラミネートフィルムとの接着性が低下する。尚、MFRが30g/10minを超えるものは、押出成形による製膜には適さない。
【0026】
また低流L−LDPE層12には、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得られる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のうち、MFRが0.7g/10min以上6g/10min未満のものを用いることができるが、電子線架橋によってヒートシール時の流動性を著しく低下させるためには、MFRが0.9g/10min以上4g/10minのものを用いることが特に望ましい。尚、MFRが0.7g/10minを下回ると押出成形が困難となる。また4〜6g/10minを超える場合、特に5〜6g/10minを超える場合は、一般的な照射条件で電子線架橋を行ったのでは流動性を抑制する効果が低下するため、高エネルギーの電子線を照射する必要がある。またこの場合、高流L−LDPE層11の流動性が低下しないよう、高流L−LDPE11には比較的MFRの大きい樹脂を用いる。
【0027】
具体的には、高流L−LDPE層11をなす樹脂と低流L−LDPE層12をなす樹脂とのMFRの差が1g/10min以上、好ましくは3g/10min以上となるようにする。MFRの差が1g/10min未満では電子線照射によるヒートシール時の流動性に差がなくなるため、ヒートシール時に表面層の流動性を維持させたまま中間層の流動性のみを低下させることが、困難となる。
【0028】
酸変性PE層13には、不飽和カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の酸で変性したポリエチレン系樹脂を用いる。ポリエチレン系樹脂は極性基を有していないので金属との接着性が乏しいが、酸で変性することによって樹脂中に極性基を導入することができ、アルミや銅、ニッケル等からなるリード端子との接着性を向上させることができる。尚、リード端子との接着性、経済性を考慮すると、酸変性PE層13として無水マレイン酸で変性されたポリエチレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0029】
本発明の端子接着用テープ10は、本発明の効果を損なわない範囲で、高流L−LDPE層と低流L−LDPE層との間や、低流L−LDPE層と酸変性PE層との間に、他の層を有していても良い。
【0030】
本発明による端子接着用テープ10は、例えば図3に示すようなラミネートフィルム32によって外包された非水電解質電池のリード端子導出部Xにおいてリード端子33、34とラミネートフィルム32との間に配置されるが、このとき金属との接着性に優れる酸変性PE層13がリード端子33、34と接し、高流L−LDPE層11がラミネートフィルム32と接するように配置される。また本発明による端子接着用テープ10はラミネートフィルム32と接する層が高流L−LDPEからなる為、シーラント層がPE系のラミネートフィルム32を用いた電池の製造に特に好適に用いられる。
【0031】
次に実施例および比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。尚、実施例および比較例の評価は、以下の方法にて行った。
<接着性試験>非水電解質電池の外包材であるラミネートフィルムと端子接着用テープとの接着性を測定した。尚、ラミネートフィルムは「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート/二軸延伸ナイロン/アルミニウム箔/酸変性ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレン」の5層フィルムを用い、該フィルムの直鎖状低密度ポリエチレン層と端子接着用テープの高流L−LDPE層(比較例2においては低流L−LDPE層)とが接するよう、ラミネートフィルムと端子接着用テープとを重ね合わせ、上方からシールバーを当て、ラミネートフィルムと端子接着用テープとをヒートシールした。尚、シール用マットの表面及びシールバーはともに150℃、あるいは170℃になるように加熱し、シール時間は1.0秒、シール圧力は1MPaにてシールを行った。
その後、オートグラフにてT型剥離試験を行い、密着強度を測定した。尚、チャック間距離は40mm、クロスヘッドスピードは300mm/minでおこなった。
【0032】
<絶縁性試験>端子接着用テープをシール用マット上に配置し、上方からシールバーを当てて、その後のテープの「残存厚み」を測定し、絶縁性を評価した。端子接着用テープはシール後の残存厚みが大きいほど、リード端子とラミネートフィルムとの間隔を広げることができるため、絶縁性が良好である。
尚、ヒートシール条件は高温・高圧の条件(シールバー(鉄製):240℃、シール用マット(ゴム製):非加熱、面圧1MPa、シール時間10秒)で行った。
【0033】
(実施例1)高流L−LDPEと低流L−LDPEと酸変性PEをそれぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ共押出法にて高流L−LDPE/低流L−LDPE/酸変性PEの三層フィルムを製膜した。次いで、該三層フィルムに高流L−LDPE層側から電子線を照射した。尚、このとき酸変性PE層には電子線が到達せず、しかしながら低流L−LDPEには電子線が到達する条件にて、電子線照射を行った。得られたフィルムを更に100×15mmに切断して実施例1の端子接着用テープを得た。各層をなす樹脂のMFRおよび層厚みを表3に記す。
得られた端子接着用テープについて、接着性試験、絶縁性試験を行った。結果を表3に記す。
【0034】
(比較例1−1)実施例1と同様にして高流L−LDPE/低流L−LDPE/酸変性PEの三層フィルムを製膜後、電子線を照射せずに100×15mmに切断し、比較例1−1の端子接着用テープを得た。該端子接着用テープについても接着性試験、絶縁性試験を行った。
(比較例1−2)高流L−LDPEに代えて低流L−LDPEを用いたこと以外は、実施例1と同様にして端子接着用テープを得た。比較例1−2の端子接着用テープについても接着性試験、絶縁性試験を行った。結果を表3に記す。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例1の端子接着用テープは、電子線照射が行われていない比較例1−1の端子接着用テープと比較すると、接着性はほとんど同じであった。これは実施例1の端子接着用テープ表面層の高流L−LDPEの流動性が電子線照射によってほとんど低下しなかったためと考えられる。また実施例1の端子接着用テープは比較例1−1の端子接着用テープよりも絶縁性試験における残存厚みが大きく、絶縁性に優れる。これは実施例1の端子接着用テープの中間層が、電子線架橋により流動性が著しく低下したためである。
また比較例1−2の端子接着用テープは表面層、中間層共に低流L−LDPEからなるため絶縁性試験における残存厚みが非常に大きかったが、接着性試験が不良であった。これは電子線照射により、端子接着用テープの流動性が中間層のみならず表面層(低流L−LDPE層)まで低下したためである。
【0037】
(第2実施形態)以下、本発明の第2実施形態に係る端子接着用テープについて説明する。本発明の端子接着用テープ20の模式的断面図を図2に示す。本発明の端子接着用テープ20は少なくとも一方の表層が密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層21からなり、他方の表面層が酸変性ポリエチレン層23からなり、直鎖状ポリエチレン層21と酸変性ポリエチレン層23との間に密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層22が配置されている。そして表面に位置する密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層21および酸変性ポリエチレン層23は低架橋あるいは無架橋であり、中間に位置する密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層22は高度に架橋されている。
以下、「密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン」を「L−LDPE」と称し、「密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層」を「VLDPE」と称し、「酸変性ポリエチレン」を「酸変性PE」と称す。また本発明の端子接着用テープ20は、本発明の効果を損なわない範囲内で、L−LDPE層21とVLDPE層22との間や、VLDPE層22と酸変性ポリエチレン層23との間に、他の層を有していても良い。
【0038】
L−LDPE層21には、エチレンとαオレフィンとを共重合することによって得られる直鎖状のポリエチレン系樹脂のうち、密度が918〜940kg/mのものを用いる。密度が918kg/mを下回ると電子線照射により架橋し易くなるため、リード端子導出部における密封性、および端子接着用テープ20とラミネートフィルムとの接着性が低下する。また密度が940kg/mを上回ると、製膜時に樹脂が配向し易く端子接着用テープ20が一定方向に裂け易くなる。
VLDPE層22には、エチレンとαオレフィンとを共重合することによって得られる直鎖状のポリエチレン系樹脂のうち、密度が865〜917kg/mのものを用いることができるが、電子線によって良好に架橋を行うためには、密度が865〜905kg/mのものを用いることが特に望ましい。尚、本発明ではVLDPE層22の密度の下限を865kg/mとしたが、密度が865kg/m下回るものは現在入手しがたい。
【0039】
またL−LDPE層21をなす樹脂とVLDPE層22をなす樹脂とは、密度の差が10kg/m以上あることが望ましい。密度の差が10kg/m以下ではL−LDPE層21の架橋を抑えながら、VLDPE層22を高架橋する電子線照射条件が非常に狭くなる。
酸変性PE層23には、不飽和カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の酸で変性したポリエチレン系樹脂を用いる。ポリエチレン系樹脂は極性基を有していないので金属との接着性が乏しいが、酸で変性することによって樹脂中に極性基を導入することができ、アルミや銅、ニッケル等からなるリード端子との接着性を向上させることができる。尚、リード端子との接着性、経済性を考慮すると、酸変性PE層23として無水マレイン酸で変性されたポリエチレン系樹脂を用いることが望ましい。
【0040】
次に本発明による端子接着用テープ20の製造方法について説明する。
本発明によると、まず初めにL−LDPE層、VLDPE層、酸変性PE層からなる多層フィルムを製膜する。製膜方法は特に限定されず、例えばL−LDPE、酸変性PEをそれぞれ別々にフィルム状に製膜した後、L−LDPEフィルムと酸変性PEフィルムとの間に熱溶融したVLDPEを押出す、所謂押出ラミネート法によって製膜することができる。
またL−LDPE、VLDPE、酸変性PEをそれぞれ別の押出機に供給し、各押出機から樹脂を一つのダイスに供給する、所謂共押出法を用いても良い。Tダイ共押出法やインフレーション共押出法に代表される共押出法を用いると、一度の製膜工程で多層フィルムを製造することができるので、製造工程数を削減することができる。
【0041】
次に得られた多層フィルムに電子線を照射する。電子線は多層フィルムのL−LDPE層側から照射する。電子線照射条件は、フィルムの膜厚、L−LDPEやVLDPEの密度等によって適宜決定するとよいが、電子線がVLDPE層の架橋が十分に進むよう、該層に電子線が到達するよう設定する。しかしながら、酸変性PE層に電子線が到達すると、酸変性PE層の架橋が進み、リード端子導出部における密封性が低下する。よって、VLDPE層には電子線が十分に到達し、且つ酸変性PE層には電子線がほとんど到達しない照射条件を選択する。
最後に電子線が照射された多層フィルムを一定巾にスリット加工したり、一定長にカットしたりし、端子接着用テープ20は完成する。
【0042】
本発明による端子接着用テープ20は、例えば図3に示すようなラミネートフィルム32によって外包された非水電解質電池のリード端子導出部Xにおいてリード端子33、34とラミネートフィルム32との間に配置されるが、このとき金属との接着性に優れる酸変性PE層23がリード端子33,34と接し、L−LDPE層21がラミネートフィルム32と接するように配置される。また、本発明による端子接着用テープ20はラミネートフィルム32と接する層がL−LDPEからなる為、シーラント層がPE系のラミネートフィルム32を用いた電池の製造に特に好適に用いられる。
【0043】
次に実施例および比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。尚、実施例および比較例の評価は、以下の方法にて行った。
<接着性試験>非水電解質電池のラミネートフィルムと端子接着用テープとの接着性を測定した。尚、ラミネートフィルムは「二軸延伸PET/二軸延伸NY/アルミニウム箔/酸変性PE/L−LDPE」の5層フィルムを用い、該フィルムのL−LDPE層と端子接着用テープのL−LDPE層或いはVLDPE層とが接するよう、ラミネートフィルムと端子接着用テープとを重ね合わせ、上下からシールバーを当て、ラミネートフィルムと端子接着用テープとを熱融着した。尚、シールバーは上下ともに150℃、あるいは170℃に加熱し、シール時間は1.0秒、シール圧力は1MPaにてシールを行った。
その後、オートグラフにてT型剥離試験を行い、密着強度を測定した。尚、チャック間距離は40mm、引張り速度は300mm/minでおこなった。
【0044】
<絶縁性試験>端子接着用テープに、上下から巾10mmのシールバーを当て、その後のテープの残存厚みを測定し、絶縁性を評価した。端子接着用テープはシール後の残存厚みが大きいほど、リード端子とラミネートフィルムとの間隔を広げることができるため、絶縁性が良好である。
尚、シールバーは上方が240℃に加熱された鉄製のもの、下方が加熱されていないゴム製のものを用い、面圧1MPaでフィルムに10秒間押し当てた。
【0045】
(実施例2)L−LDPEとVLDPEと酸変性PEをそれぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ共押出法にてL−LDPE/VLDPE/酸変性PEの三層フィルムを製膜した。次いで、該三層フィルムにL−LDPE層側から電子線を照射した。尚、このとき酸変性PE層に電子線が到達しないよう、電子線照射を行った。得られたフィルムを更に100×100mmに切断して実施例2の端子接着用テープを得た。各層をなす樹脂の密度および層厚みを表4に記す。
得られた端子接着用テープについて、接着性試験、絶縁性試験を行った。結果を表4に併せて記す。
【0046】
(比較例2−1)実施例2と同様にしてL−LDPE/VLDPE/酸変性PEの三層フィルムを製膜後、電子線を照射せずに100×100mmに切断し、比較例2−1の端子接着用テープを得た。該端子接着用テープについても接着性試験、絶縁性試験を行った。
(比較例2−2)L−LDPEに代えてVLDPEを用いたこと以外は、実施例2と同様にして端子接着用テープを得た。比較例2−2の端子接着用テープについても接着性試験、絶縁性試験を行った。結果を表4に記す。
【表4】
【0047】
実施例2の端子接着用テープは、電子線照射が行われていない比較例2−1の端子接着用テープと比較すると、接着性はほとんど同じであった。これは実施例2の端子接着用テープ表層のL−LDPEが、電子線によってほとんど架橋されなかったためと考えられる。また実施例2の端子接着用テープは比較例2−1の端子接着用テープよりも絶縁性試験における残存厚みが大きく、絶縁性に優れる。これは実施例2の端子接着用テープの中間層が、電子線照射により架橋が進んだためと思われる。
また比較例2−2の端子接着用テープは表層、中間層共に密度の低いVLDPEからなるので絶縁性試験における残存厚みが非常に大きかったが、接着性試験が不良であった。これは電子線照射により、端子接着用テープの中間層のみならず表面層まで架橋が進んだためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ラミネートフィルムによって外包される非水電解質電池において、リード端子とラミネートフィルムとの接着性を向上させる目的で、これらの間に介在させる端子接着用テープを製造する際に用いることができる。しかしながら、本発明は非水電解質電池の端子接着用テープの製造のみに用いられるものではなく、ラミネートフィルムによって外包された電池やキャパシタに使用される端子接着用テープの製造に利用することができる。
尚、本発明による端子接着用テープはポリエチレン系樹脂からなる為、シーラント層がPE系のラミネートフィルムを用いた電池の製造に特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
10 端子接着用テープ
11 高流動性直鎖状ポリエチレン層(高流L−LDPE)
12 低流動性直鎖状ポリエチレン層(低流L−LDPE)
13 酸変性ポリエチレン層(酸変性PE)
20 端子接着用テープ
21 密度918〜940kg/mの直鎖状ポリエチレン層
22 密度865〜917kg/mの直鎖状ポリエチレン層
23 酸変性ポリエチレン層
30 非水電解質電池
31 端子接着用テープ
32 ラミネートフィルム
33 正極リード端子
34 負極リード端子
35 正極
36 負極
37 セパレータ
図1
図2
図3