特許第5934667号(P5934667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934667
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/08 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   F16L19/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-53272(P2013-53272)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-178009(P2014-178009A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037774
【氏名又は名称】井上スダレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】井上 智史
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−94996(JP,U)
【文献】 特開昭55−47084(JP,A)
【文献】 特開平7−167357(JP,A)
【文献】 特開2005−308034(JP,A)
【文献】 特開2002−310362(JP,A)
【文献】 米国特許第4556242(US,A)
【文献】 特開2007−32632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/00 − 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管又は金属層を有するプラスチック複合管から成る被接続パイプ(P)が差込まれる孔部(7)を有する挿入筒部(4)が突出状に形成されると共に雄ねじ部(2)を有する金属製の継手本体(1)と、該継手本体(1)の上記雄ねじ部(2)に螺着される袋ナット(3)と、を備えた管継手に於て、
上記挿入筒部(4)の外周面(8)に凹溝部(9)が形成され、該凹溝部(9)の奥部には溝底薄壁部(13)を有し、上記挿入筒部(4)の先端面が軸心直交状に形成され、
さらに、上記袋ナット(3)は、上記挿入筒部(4)の上記先端面に対向する軸心直交面が設けられた内鍔部(3A)を有し、
未圧縮状態では、上記挿入筒部(4)の内周面(11)が平滑円周面状であって、上記袋ナット(3)と上記継手本体(1)の上記雄ねじ部(2)を螺着させる際に、上記袋ナット(3)の内鍔部(3A)の上記軸心直交面が上記挿入筒部(4)の軸心直交状の上記先端面を押圧し、上記挿入筒部(4)が上記袋ナット(3)からアキシャル方向の圧縮力(F)を受けて、上記凹溝部(9)の幅寸法(W)が減少しつつ上記溝底薄壁部(13)がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形して、挿入されている上記被接続パイプ(P)の外周面(14)側から食い込んで抜止めするように構成されたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
金属管又は金属層を有するプラスチック複合管から成る被接続パイプ(P)が差込まれる孔部(7)を有する挿入筒部(4)が突出状に形成されると共に雄ねじ部(2)を有する金属製の継手本体(1)と、該継手本体(1)の上記雄ねじ部(2)に螺着される袋ナット(3)と、を備えた管継手に於て、
上記挿入筒部(4)の外周面(8)に凹溝部(9)が形成され、該凹溝部(9)の奥部には溝底薄壁部(13)を有し、上記挿入筒部(4)の先端面が軸心直交状に形成され、
さらに、上記袋ナット(3)は、上記挿入筒部(4)の上記先端面に対向する軸心直交面が設けられた内鍔部(3A)を有し、上記袋ナット(3)の内周面(3B)と、上記挿入筒部(4)の上記外周面(8)との間に、相対的回転滑り助長用円筒状カバー部材(24)が配設され、該カバー部材(24)は、上記挿入筒部(4)の上記先端面と上記袋ナット(3)の内鍔部(3A)の上記軸心直交面の間に介在して摩擦抵抗を低減するための軸心直交状の内鍔部(41)を有し、
未圧縮状態では、上記挿入筒部(4)の内周面(11)が平滑円周面状であって、上記袋ナット(3)と上記継手本体(1)の上記雄ねじ部(2)を螺着させる際に、上記袋ナット(3)の内鍔部(3A)の上記軸心直交面が、上記カバー部材(24)の上記内鍔部(41)を介して、上記挿入筒部(4)の軸心直交状の上記先端面を押圧し、上記挿入筒部(4)が上記袋ナット(3)からアキシャル方向の圧縮力(F)を受けて、上記凹溝部(9)の幅寸法(W)が減少しつつ上記溝底薄壁部(13)がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形して、挿入されている上記被接続パイプ(P)の外周面(14)側から食い込んで抜止めするように構成されたことを特徴とする管継手。
【請求項3】
上記挿入筒部(4)は、上記袋ナット(3)の圧縮によって塑性変形しやすいように予め軟化処理されている請求項1又は2記載の管継手。
【請求項4】
上記挿入筒部(4)の上記内周面(11)に予め一体にシール層(12)が積層され、上記食い込みの際に密封状態となるように構成された請求項1,2又は3記載の管継手。
【請求項5】
上記挿入筒部(4)の上記内周面(11)にシール溝(22)を有し、該シール溝(22)内にシール材(23)を内装している請求項1,2,3又は4記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管継手の一種として、フレア継手が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、図9に示すように、雄ネジ付き継手本体30のテーパ面31と、継手本体30の雄ネジ32に螺着される袋ナット33のテーパ面34の間に、金属製の被接続パイプ35の端部を拡径テーパ状に塑性加工して成るフレア端部37を、挟持させて抜止めし、かつ、その圧接力により密封する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−42858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被接続パイプ35がアルミニウムから成る場合、端部にフレア加工を施すのが困難であった。また、被接続パイプ35が銅から成る場合も、上記フレア加工が配管作業現場の作業能率アップを阻害しているという欠点があった。また、それらの問題を回避するために種々の管継手構造が提案されているが、部品点数が多く、複雑な形状の部品を必要とし、組立時に手間がかかるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、被接続パイプの端部にフレア加工を施す必要がなく、配管作業能率を向上し得る管継手を提供することを目的とする。さらに、シール性能が安定して確実に発揮し得る管継手の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る管継手は、金属管又は金属層を有するプラスチック複合管から成る被接続パイプが差込まれる孔部を有する挿入筒部が突出状に形成されると共に雄ねじ部を有する金属製の継手本体と、該継手本体の上記雄ねじ部に螺着される袋ナットと、を備えた管継手に於て、上記挿入筒部の外周面に凹溝部が形成され、該凹溝部の奥部には溝底薄壁部を有し、上記挿入筒部の先端面が軸心直交状に形成され、さらに、上記袋ナットは、上記挿入筒部の上記先端面に対向する軸心直交面が設けられた内鍔部を有し、未圧縮状態では、上記挿入筒部の内周面が平滑円周面状であって、上記袋ナットと上記継手本体の上記雄ねじ部を螺着させる際に、上記袋ナットの内鍔部の上記軸心直交面が上記挿入筒部の軸心直交状の上記先端面を押圧し、上記挿入筒部が上記袋ナットからアキシャル方向の圧縮力を受けて、上記凹溝部の幅寸法が減少しつつ上記溝底薄壁部がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形して、挿入されている上記被接続パイプの外周面側から食い込んで抜止めするように構成されたものである。
【0007】
また、金属管又は金属層を有するプラスチック複合管から成る被接続パイプが差込まれる孔部を有する挿入筒部が突出状に形成されると共に雄ねじ部を有する金属製の継手本体と、該継手本体の上記雄ねじ部に螺着される袋ナットと、を備えた管継手に於て、上記挿入筒部の外周面に凹溝部が形成され、該凹溝部の奥部には溝底薄壁部を有し、上記挿入筒部の先端面が軸心直交状に形成され、さらに、上記袋ナットは、上記挿入筒部の上記先端面に対向する軸心直交面が設けられた内鍔部を有し、上記袋ナットの内周面と、上記挿入筒部の上記外周面との間に、相対的回転滑り助長用円筒状カバー部材が配設され、該カバー部材は、上記挿入筒部の上記先端面と上記袋ナットの内鍔部の上記軸心直交面の間に介在して摩擦抵抗を低減するための軸心直交状の内鍔部を有し、未圧縮状態では、上記挿入筒部の内周面が平滑円周面状であって、上記袋ナットと上記継手本体の上記雄ねじ部を螺着させる際に、上記袋ナットの内鍔部の上記軸心直交面が、上記カバー部材の上記内鍔部を介して、上記挿入筒部の軸心直交状の上記先端面を押圧し、上記挿入筒部が上記袋ナットからアキシャル方向の圧縮力を受けて、上記凹溝部の幅寸法が減少しつつ上記溝底薄壁部がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形して、挿入されている上記被接続パイプの外周面側から食い込んで抜止めするように構成されたものである。
【0008】
また、上記挿入筒部は、上記袋ナットの圧縮によって塑性変形しやすいように予め軟化処理されているものである
た、上記挿入筒部の上記内周面に予め一体にシール層が積層され、上記食い込みの際に密封状態となるように構成されたものである。
また、上記挿入筒部の上記内周面にシール溝を有し、該シール溝内にシール材を内装しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管継手によれば、袋ナットを継手本体の雄ねじ部に螺進するだけで、被接続パイプに強力な引抜耐力を発揮し、かつ、確実な密封性を発揮する接続(配管)を迅速・容易に行い得る。即ち、被接続パイプの端部にフレア加工を施す必要がなく、作業効率が良い。袋ナットによる圧縮の際、挿入筒部の軸がブレずに安定して保持され、塑性変形した溝底薄壁部が被接続パイプの外周面側に確実に食い込んで抜止めでき、かつ、密封性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態の未圧縮状態を示す断面正面図である。
図2】圧縮状態を示す断面正面図である。
図3】要部拡大断面図であり、(A)は未圧縮状態の要部拡大断面図であり、(B)は圧縮状態の要部拡大断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の未圧縮状態を示す断面正面図である。
図5】圧縮状態を示す断面正面図である。
図6】別の実施形態を示す要部断面図である。
図7】要部拡大断面図であり、(A)は未圧縮状態の要部拡大断面図であり、(B)は圧縮状態の要部拡大断面図である。
図8】種々の管継手を示した斜視図であり、(A)はエルボ型管継手の斜視図であり、(B)はチーズ型管継手の斜視図であり、(C)はソケット型管継手の斜視図である。
図9】従来例を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1図2に示すように、本発明の管継手は、挿入筒部4が突出状に形成されると共に雄ねじ部2を有する継手本体1と、継手本体1の雄ねじ部2に螺着される袋ナット3と、を備え、金属製の被接続パイプPを接続している。
継手本体1は、例えば、鋼、ステンレス、銅、真鍮、アルミニウム等から成り、所望により2種以上の材質をもって一体に構成しても良い。被接続パイプPは、アルミニウムや銅やステンレス鋼、又は、(金属層を有する)プラスチック複合管から成る。なお、本発明に於て、「アルミニウム」には、アルミニウム合金を含むものとし、また、「銅」には、銅系合金を含むものとする。また、袋ナット3は、鋼、ステンレス、銅、真鍮、アルミニウム等から成る。
【0012】
挿入筒部4は、被接続パイプPが差込まれる孔部7を有し、その外周面8に凹溝部9が形成されている。凹溝部9の奥部には、溝底薄壁部13が形成されている。
図1に於て、挿入筒部4は、所定の長さ寸法Lに設定され、袋ナット3の内部収納空間10に収納されている。袋ナット3の螺進に伴って、袋ナット3の内鍔部3Aが、挿入筒部4に摺接し、挿入筒部4の端面を押圧するように構成されている。凹溝部9の本数は、2本が最も好ましい。図1図2に於て、継手本体1の一部分のみを(断面で)図示しているが、全体としては、図8(A)(B)(C)に示すように、エルボ型管継手、チーズ型管継手、ソケット型管継手等の各種のものであり、また、図1図2に於て、図外の他端部に同様の構造のものを形成しても良い。挿入筒部4の孔部7には、差込まれた被接続パイプPの先端部が当接する突当たり用段部26が形成されている。
【0013】
図1図3(A)に於て、袋ナット3を継手本体1の雄ねじ部2に螺着する途中の未圧縮状態を示す。図2図3(B)は、袋ナット3の螺着が完了して挿入筒部4が圧縮された圧縮状態であって、被接続パイプPが引き抜けないように接続した状態を示している。
図1図3(A)の未圧縮状態では、挿入筒部4の内周面11は、平滑円周面状である。
袋ナット3を矢印M(図2参照)のように回して継手本体1の雄ねじ部2に螺着させる際に、図1図3(A)の未圧縮状態から、図2図3(B)に示すように螺進させる。このとき、挿入筒部4の端面が袋ナット3の内鍔部3Aに摺接しつつアキシャル方向の圧縮力Fを受けて、凹溝部9の幅寸法Wが減少しつつ溝底薄壁部13がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形する。凹溝部9の断面形状はU型であって、溝底部位は半円形等の円弧凹状とする。溝底薄壁部13の肉厚寸法は、中央が最小であり、左右端方向に緩やかに増加する。そして、塑性変形した溝底薄壁部13は、孔部7に挿入されている被接続パイプPの外周面14側から食い込んで抜止めする(引抜耐力を有し、引抜けを防止する)。被接続パイプPの内周面もラジアル内方向に塑性変形して小凸条部25を形成する。凹溝部9は、塑性変形の際、幅寸法Wが減少してゼロとなる(すなわち側面15どうしが圧接する)も良い(図示省略)。つまり、挿入筒部4は、袋ナット3の螺着により圧縮されて塑性変形し、図1から図2に示すように長さ寸法Lが短縮される。
【0014】
挿入筒部4は、袋ナット3の圧縮によって塑性変形しやすいように予め軟化処理するのが望ましい。
軟化処理としては、例えば、焼鈍等の方法によって行われる。なお、銅やアルミニウムの材質、あるいは、軟らかい鋼であれば、軟化処理が不要の場合もある。
また、挿入筒部4の内周面11にシール溝22を有し、シール溝22内にシール材23を内装している。
挿入筒部4の塑性変形の際、溝底薄壁部13が被接続パイプPの外周面14に圧着することによる密封作用が働く。しかし、仮に、この溝底薄壁部13の圧着による密封作用が不十分であっても、シール材23によって、確実に密封を行うことができる。
【0015】
図4は、本発明の他の実施形態の未圧縮状態を示している。図5は、圧縮状態を示す。
図4図5では、袋ナット3の内周面3Bと、挿入筒部4の外周面8との間に、相対的回転滑り助長用円筒状カバー部材24を介在させている。
カバー部材24は、ステンレス鋼等の硬質金属(又は硬質プラスチック)とし、かつ、好ましくは、摩擦係数の低い材質から成る。カバー部材24は、挿入筒部4の長さ寸法Lよりも僅かに短いアキシャル方向長さ寸法の円筒部42と、その外端に連設された内鍔部41とを備え、挿入筒部4に外嵌状に取付けられている。カバー部材24は、袋ナット3の内周面3Bと、挿入筒部4の外周面8との摩擦抵抗(圧着による抵抗)を低減し、滑りを助長するためのものであり、即ち、相対的回転滑り助長用として設けられている。このカバー部材24によれば、袋ナット3の螺進に伴って挿入筒部4がアキシャル方向に圧縮変形する際、ラジアル外方への変形を生じて挿入筒部4の外径寸法が増加し、袋ナット3の内周面3Bに強く圧着するのを防止できる。挿入筒部4が袋ナット3の内周面3Bに強く圧着すると、作業者が袋ナット3を回転するのに要するトルクが過大となり、作業性が著しく(急に)悪化するが、このような問題をカバー部材24が防止する。
なお、カバー部材24は、袋ナット3と挿入筒部4の電蝕を防止する機能を発揮する場合もある。さらに言えば、袋ナット3は、挿入筒部4の先端面を、カバー部材24の内鍔部41を介して押圧する為、袋ナット3の内鍔部3Aと挿入筒部4の先端面の(摺接による)摩擦抵抗を低減して、滑り易くする作用もなす。
【0016】
図6図7では、挿入筒部4の内周面11に予め一体にシール層12が積層されている。
シール層12は、例えば、PTFE等のフッ素樹脂を塗装することにより形成される。袋ナット3の螺着の際、図7(A)の未圧縮状態から、図7(B)に示すように、挿入筒部4が袋ナット3からアキシャル方向の圧縮力Fを受けて、凹溝部9の幅寸法Wが減少しつつ溝底薄壁部13がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形する。このとき、塑性変形した溝底薄壁部13は、孔部7に挿入されている被接続パイプPの外周面14にシール層12を有する内周面11を圧接しつつ、外周面14側から食い込んで抜止めする(引抜耐力を有し、引抜けを防止する)。この食い込みの際に、(シール層12によって)密封状態となる。図7(B)に示すように、被接続パイプPの内周面もラジアル内方向に塑性変形して小凸条部25を形成する。
図6では、継手本体1は、シール溝22及びシール材23を省略しているが、挿入筒部4の内周面11にシール層12を積層することで密封性が保ち得る。なお、図6に於て、図1等に示したシール溝22及びシール材23を付加するも良い。このようにすれば、溝底薄壁部13の圧着による密封と、シール材23による密封とを、両方同時に作用させることができ、より確実な密封作用が期待できる。
【0017】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、図6図7の実施形態に於て、挿入筒部4に(図4等に示した)カバー部材24を取り付けるも自由である。また、挿入筒部4の外周面8に、1本又は3本の凹溝部9を有するも良い。
【0018】
以上のように、本発明に係る管継手は、被接続パイプPが差込まれる孔部7を有する挿入筒部4が突出状に形成されると共に雄ねじ部2を有する継手本体1と、継手本体1の雄ねじ部2に螺着される袋ナット3と、を備えた管継手に於て、挿入筒部4の外周面8に凹溝部9が形成され、凹溝部9の奥部には溝底薄壁部13を有し、未圧縮状態では、挿入筒部4の内周面11が平滑円周面状であって、袋ナット3と継手本体1の雄ねじ部2を螺着させる際に、挿入筒部4が袋ナット3からアキシャル方向の圧縮力Fを受けて、凹溝部9の幅寸法Wが減少しつつ溝底薄壁部13がラジアル内方向へ突出するようにU字状乃至V字状に塑性変形して、挿入されている被接続パイプPの外周面14側から食い込んで抜止めするように構成されたので、袋ナット3を継手本体1の雄ねじ部2に螺進するだけで、被接続パイプPに強力な引抜耐力を発揮し、かつ、確実な密封性を発揮する接続(配管)を迅速・容易に行い得る。即ち、被接続パイプPの端部にフレア加工を施す必要がなく、作業効率が良い。袋ナット3による圧縮の際、挿入筒部4の軸がブレずに安定して保持され、塑性変形した溝底薄壁部13が被接続パイプPの外周面14側に確実に食い込んで抜止めでき、かつ、密封性も優れている。
仮に、小型部品のU字断面円環やV字断面円環を薄板材にて製作して、軸心直交2平面間に挟着保持しつつ、アキシャル方向から圧縮力Fを加えて圧縮させて、パイプ外周面に食い込ませる場合には、軸心直交2平面間にて圧縮する途中で、横断面の姿勢が倒れたり、局部的に異常な塑性変形を発生して、密封性(シール性能)が不安定となり、かつ、引抜耐力も不安定・不十分となる。これに対して、本発明では、十分に大きな部位(即ち、挿入筒部4)の一部分として、溝底薄壁部13が一体形成されているため、塑性変形の途中に於ても、常に安定した姿勢で(正常なU字状乃至V字状に)塑性変形を生じ、小型部品から成るU字やV字断面の上記薄板材にて製作された円環の密封性(シール性能)の不安定の問題、及び、不安定・不十分な引抜耐力の問題を、本発明が簡素な形状をもって解決している。
【0019】
また、挿入筒部4は、袋ナット3の圧縮によって塑性変形しやすいように予め軟化処理されているので、袋ナット3を小さな力で軽く回転させることができ、接続(配管)作業をより迅速に、かつ、容易に行うことができる。
【0020】
また、袋ナット3の内周面3Bと、挿入筒部4の外周面8との間に、相対的回転滑り助長用円筒状カバー部材24を介在させたので、挿入筒部4と袋ナット3が強く圧接するのを防止でき、袋ナット3が小さな力で軽く回転して、接続(配管)作業をより迅速に、かつ、容易に行うことができる。圧縮変形する挿入筒部4を安定姿勢に保持して、確実に配管接続作業を行い得る。
【0021】
また、挿入筒部4の内周面11に予め一体にシール層12が積層され、食い込みの際に密封状態となるように構成されたので、シール性を向上・安定させることができ、外部漏洩を防止できる。
【0022】
また、挿入筒部4の内周面11にシール溝22を有し、シール溝22内にシール材23を内装しているので、シール性を向上・安定させることができ、外部漏洩を防止できる。
【符号の説明】
【0023】
1 継手本体
2 雄ねじ部
3 袋ナット
3A 内鍔部
3B 内周面
4 挿入筒部
7 孔部
8 外周面
9 凹溝部
11 内周面
12 シール層
13 溝底薄壁部
14 外周面
22 シール溝
23 シール材
24 カバー部材
41 内鍔部
P 被接続パイプ
F 圧縮力
W 幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9