(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セラミックホルダには、周方向に亘って、前記主体金具の前記後端向き面と前記小径孔の内面とが繋がる周縁の位置よりも軸線方向先端側へ突出する突出部が形成されている請求項1に記載のガスセンサ。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気管等に取り付けられて使用され、排気ガス中の特定ガス(例えばNOx(窒素酸化物)や酸素など)の濃度に応じて、大きさの異なる起電力が生じたり、抵抗値が変化したりするセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。センサ素子の先端側には特定ガス成分を検出する検知部が設けられており、ヒータ等によって加熱されることで、検知部が特定ガス成分を検出している。ところが、センサ素子の検知部が加熱により高温になっているときに、排気ガスに含まれる水滴が検知部に付着(被水)すると、熱衝撃によってセンサ素子にクラック等の破損が生ずるおそれがある。そこで、センサ素子の検知部を多孔質の保護層で覆い、センサ素子を被水から保護するガスセンサが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8に示すように、特許文献1のガスセンサは、絶縁材(セラミック、例えばアルミナ)からなるセラミックホルダ300の挿通孔320にセンサ素子21を挿通させて保持し、このセラミックホルダ300を主体金具1100の内側に配置した構造になっている。また、センサ素子21の先端側の検知部は保護層25で覆われている。
主体金具1100は先後に貫通する内孔1100hを有し、セラミックホルダ300から先端側に突出したセンサ素子21の保護層25の後端部26が、内孔1100h内に収容されている。さらに、主体金具1100の先端には金属製のプロテクタ510、610が装着され、センサ素子21を保護している。
なお、センサ素子21をセラミックホルダ300の挿通孔320に通して組付ける際に、保護層25が挿通孔320に衝突して損傷することを防止するため、保護層25の後端部26を、挿通孔320の先端よりも先端側に離間させている。このため、挿通孔320と後端部26との間に、保護層25で保護されないセンサ素子21の側面Pが介在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図8のガスセンサにおいて、プロテクタ510、610の通気孔560、670からプロテクタ510の内部に水Wが侵入した場合、主体金具1100の内面1100iとセンサ素子21(保護層25)との隙間が比較的大きいため、水Wは主体金具1100の内孔1100hの内面1100iを伝ってセラミックホルダ300側へ上ってくる。その上、セラミックホルダ300の先端向き面300aがセンサ素子21の側面Pの位置で径方向に延びている(水平面状である)ので、先端向き面300aからセンサ素子21へ向かって容易に水Wが移動し、センサ素子21の側面Pに水Wが付着し易くなる。しかしながら、上述のように、側面Pには保護層25が形成されていないため、熱衝撃によってセンサ素子21にクラック等の破損が生ずるおそれがある。
そこで、例えば
図9に示すように、主体金具1200の内孔1200hを縮径させることが考えられる。これにより、内面1200iとセンサ素子21(保護層25)との隙間が小さくなり、主体金具1200の内孔1200h内に水Wが侵入し難くなる。また、主体金具1200の先端向き面1200kが、センサ素子21の保護層25が設けられている位置で径方向に延びているため、先端向き面1200kからセンサ素子21へ向かって容易に水Wが移動したとしても、保護層25に水Wが付着することとなる。その結果、保護層25が形成されていない側面Pへの被水を抑制することができる。しかしながら、この場合、主体金具1200の内面1200iとセンサ素子21(保護層25)との隙間が小さくなったことで、センサ素子21から内孔1200hを介して金属製の主体金具1200への熱逃げが促進され、センサ素子21を高温に保ち難くなって検知性能が低下したり、高温にするための消費電力がより必要となる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、保護層よりも後端側におけるセンサ素子への被水を抑制し、かつ検知性能の低下を抑制したり、消費電力の低減を行うことができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、先端側に被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部を有するセンサ素子であって、該検知部を覆う多孔質の保護層を有するセンサ素子と、前記センサ素子の前記保護層よりも後端側の部位を挿通させ、該センサ素子の径方向周囲を取り囲む挿通孔を有する筒状のセラミックホルダと、先端側に設けられた小径孔、及び該小径孔よりも後端側に設けられ、当該小径孔よりも径大な大径孔を備える内孔を有し、前記小径孔の内面と前記大径孔の内面とを繋ぐ後端向き面に前記セラミックホルダの先端向き面の一部を係合させて前記セラミックホルダの径方向周囲を取り囲む主体金具と、を備え、前記セラミックホルダには、前記先端向き面から後端側へ向かって凹み、前記挿通孔の先端に連通すると共に該挿通孔より径大な凹孔が形成され、前記保護層の後端部は、該凹孔の内周面と隙間を設けて前記凹孔内に収容され、前記凹孔の前記内周面と
前記先端向き面とが繋がる前記セラミックホルダの先端縁は、全体に亘って前記小径孔の前記内面よりも径方向内側に設けられる。
【0008】
このガスセンサによれば、セラミックホルダに、先端向き面から後端側に向かって凹む凹孔が形成されると共に、保護層の後端部が、この凹孔内に隙間を設けて収容され、さらに、セラミックホルダの先端縁が、全体に亘って主体金具の小径孔の内面よりも径方向内側に設けられてなる。
【0009】
つまり、上述のガスセンサは、セラミックホルダに設けられた凹孔の先端縁の内周面とセンサ素子との隙間が主体金具の小径孔の内面とセンサ素子との隙間より小さくする構成となる。これにより、水が、主体金具の小径孔の内面を伝ってセラミックホルダ側へ上ってきたとしても、セラミックホルダの凹孔内に侵入し難くなる。
また、上述のガスセンサは、セラミックホルダの先端向き面が、センサ素子の保護層が設けられている位置で径方向に延びる構成となる。これによりセラミックホルダの先端向き面からセンサ素子に向かって水が移動したとしても、センサ素子に設けられた保護層に水が付着することとなる。
この両者の結果により、センサ素子の保護層よりも後端側への水の付着を抑制することができ、センサ素子への熱衝撃を緩和する。
【0010】
その上、上述のガスセンサは、セラミックホルダに凹孔を設け、センサ素子との隙間を小さくする構成となる。よって、金属製の主体金具とは異なり、センサ素子からセラミックホルダへの熱逃げを抑制でき、センサ素子を高温に維持することができる。よって、検知性能の低下を抑制したり、消費電力の低減を行うことができる。
【0011】
また、本発明のガスセンサにおいては、前記セラミックホルダは、周方向に亘って、前記主体金具の前記後端向き面と前記小径孔の内面とが繋がる周縁の位置よりも軸線方向先端側へ突出する突出部が形成されているとよい。
このガスセンサによれば、小径孔の内面を伝ってセラミックホルダ側へ上ってきた水が、セラミックホルダの先端向き面からセンサ素子に向かって移動する際に、突出部へ伝わることで、軸線方向先端側へ移動するので、セラミックホルダに設けられた凹孔の内周面とセンサ素子との隙間により到達しにくくなり、センサ素子への水の付着をより一層抑制することができる。
【0012】
また、本発明のガスセンサにおいては、前記凹孔の前記内周面は前記軸線方向に平行であるか、又は後端側へ向かって小径となるテーパ状になっていてもよい。この構成を採ることで、セラミックホルダを成型する際、型抜きし易く、セラミックホルダの生産性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、保護層よりも後端側でのセンサ素子への被水を抑制し、かつ検知性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のガスセンサを実施するための形態について、
図1〜
図7に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態は、排気ガス中の酸素濃度を検出する全領域空燃比ガスセンサを具体化したものであり、したがって、まずこのガスセンサ1の全体構成について概略説明し、その後、各部位と共にその構成についてさらに詳細に説明する。
図1において、ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1は、センサ素子21と、センサ素子21を挿通させる挿通孔32を有するセラミックホルダ30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30の先端向き面30aより先端に突出している(
図2参照)。このように挿通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。なお、センサ素子21の後端29を含む後端29寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端29寄り部位に形成された各電極端子24に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端29寄り部位は、保護筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0016】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし(
図3参照)、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層25が被覆され、保護層25の形成部位は、保護層25の厚み分(例えば、0.5〜0.6mm)、横断面が大きくなっている(厚みは誇張して図示している)。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端寄り部位内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端寄り部位には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端29寄り部位において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
【0017】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側が小径で、後述するプロテクタ51、61を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、
図2に示すように、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18は先端側に設けられた小径孔18a、及び小径孔18aよりも後端側に設けられ、小径孔18aよりも径大な大径孔18bを備えている。そして、小径孔18aの内面17aと、大径孔18bの内面17cとを繋ぐ後端向き面17bを備えている。本例では後端向き面17bは先端へ向かって先細るテーパ状に形成されている。又、内面17a、後端向き面17b、内面17cを合わせて主体金具11の内周面17と表記する。
【0018】
主体金具11の大径孔18bの内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。
図2に示すように、セラミックホルダ30の先端向き面30aは、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された外周側先端向き面30a2と、外周側先端向き面30a2より内周側で平面状の内周側先端向き面30a1とを有している。そして、外周側先端向き面30a2の外周寄りの部位が後端向き面17bに係合しつつ、セラミックホルダ30が主体金具11内に位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、挿通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21のうち保護層25よりも後端側の部位が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0019】
挿通孔32の先端側には、セラミックホルダ30の内周側先端向き面30a1から後端側へ向かって凹み、挿通孔32の先端に連通すると共に挿通孔32より径大な凹孔35が形成されている。本例では、凹孔35は挿通孔32より径大の円形をなし、凹孔35の底面(挿通孔32の先端の位置)35bは平面をなしている。又、本例では凹孔35の内周面35iは軸線O方向に平行になっている。そして、凹孔35の内周面35iと内周側先端向き面30a1とが繋がる位置に先端縁35eが形成されている。なお、内周側先端向き面30a1の先端縁35e側の部位は面取りされている。
センサ素子21は、セラミックホルダ30の挿通孔32に通され、センサ素子21の先端をセラミックホルダ30の先端面向き面30a及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。又、保護層25の後端部26は凹孔35に収容されている。なお、センサ素子21をセラミックホルダ30の挿通孔32に通して組付ける際に、保護層25が挿通孔32に衝突して保護層25が損傷することを防止するため、保護層25の後端部26を、挿通孔32の先端(底面35b)よりも先端側に離間させるとよい。また、保護層25のうち、凹孔35内に収容される後端部26の軸線方向長さが、凹孔35の外側に配置される先端部の軸線方向長さよりも短くされている。これにより、センサ素子21の検出精度の低下を抑制している。
凹孔35の内周面35iは、凹孔35内に収容された保護層25の外周面と離間すると共に、主体金具11の小径孔18aの内面17a及びプロテクタ51の最内周側(素子と直接対向する)となる内側のプロテクタ51の内周面51aよりも全周に亘って径方向内側に位置している。
【0020】
つまり、
図3に示すように、後述するプロテクタ51、61を取り外して、軸線O方向の先端側から主体金具11の小径孔18aを通して見たとき、凹孔35の先端縁35eのすべてが視認可能になっている。このことを
図2を参照して説明する。
図2において、凹孔35の先端縁35eの径方向の位置をL1とし、主体金具11の小径孔18aの内面17aの最内側の位置をL2とする。ここで、本例では、凹孔35の内周面35iは軸線O方向に平行なため、凹孔35の先端縁35eだけでなく、凹孔35の内周面35iのどの位置でもL1は一定である。また、本例では、小径孔18aの内面17aは軸線O方向に平行なため、内面17aのどの位置でもL2は一定であるが、小径孔18aの内面17aが軸線O方向に平行でない場合には、軸線O方向に小径孔18aの内面17aの内径が最小となる位置をL2とする。従って、凹孔35の先端縁35eのすべてが視認可能であるとは、周方向のどの位置においてもL2>L1である、つまり先端縁35eが全体に亘って小径孔18aの内面17aよりも径方向内側にあることを示す。なお、周方向のいずれかの位置において、L2≦L1である場合には、先端縁35eの一部が視認できないことになる。
【0021】
一方、センサ素子21の先端部位には、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61が被せられている。このうち内側のプロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。また、外側のプロテクタ61は、内側のプロテクタ51に外嵌して、同時に円筒部12に溶接されている。外側のプロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、プロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
【0022】
又、
図1に示すように、センサ素子21の後端29寄り部位に形成された各電極端子24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1では、異径筒状をなす保護筒(金属筒)81内に配置された絶縁材からなる端子金具保持部材91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、端子金具保持部材91は、保護筒(金属筒)81内に固定された環状支持部材80を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この保護筒81の先端部(大径筒部)82を、主体金具11の後端寄り部位の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。なお、リード線71は保護筒81の後端部の小径筒部83の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
因みに、このシール材85は端子金具保持部材91の後端を先方に押す形で配置されており、これにより、この端子金具保持部材91及びその内部に設けられた端子金具75の取付け安定が図られている。なお、端子金具保持部材91はその外周に形成されたフランジ93を保護筒81の内側に固定された環状支持部材80の上に支持させられており、これにてシール材85の圧縮力を受けている。
【0023】
このようなガスセンサ1によれば、セラミックホルダ30に、先端向き面30aから後端側に向かって凹む凹孔35が形成されると共に、保護層25の後端部26が、この凹孔25内に隙間を設けて収容され、さらに、セラミックホルダ30の先端縁35eが、全周に亘って主体金具11の小径孔18aの内面17aよりも径方向内側に設けられてなる。
【0024】
つまり、実施形態のガスセンサ1は、セラミックホルダ30に設けられた凹孔35の先端縁35eの内周面35iとセンサ素子21との隙間が主体金具11の小径孔18aの内面17aとセンサ素子21との隙間より小さくする構成となる。これにより、プロテクタ51、61の通気孔56、67からガスセンサ内部に侵入した水Wが、主体金具11の小径孔18aの内面17aの内面を伝ってセラミックホルダ30側へ上ってきたとしても、セラミックホルダ30の凹孔35内に侵入し難くなる。
また、実施形態のガスセンサ1は、セラミックホルダ30の先端向き面30aが、センサ素子21の保護層25が設けられている位置で径方向に延びる構成である。これにより、セラミックホルダ30の先端向き面30aからセンサ素子21に向かって水Wが移動したとしても、センサ素子21に設けられた保護層25に付着することとなる。この両者の結果により、側面Pへの水Wの付着を抑制することができる。
【0025】
その上、実施形態のガスセンサ1は、セラミックホルダ30に凹孔35を設け、センサ素子21との隙間を小さくする構成である。よって、金属製の主体金具11とは異なり、センサ素子21からセラミックホルダ30への熱逃げを抑制でき、センサ素子21を高温に維持することができる。よって、検知性能の低下を抑制したり、消費電力の低減を行うことができる。
【0026】
その上、本例では、セラミックホルダ30が、周方向に亘って、主体金具11の後端向き面17bと小径孔18aの内面17aとが繋がる周縁Qの軸線O方向の位置L3よりも、軸線O方向先端側へ突出出する突出部30bを有する。このため、小径孔18aの内面17aを伝ってセラミックホルダ30側へ上ってきた水Wが、先端向き面30aからセンサ素子21に向かって移動する際に、突出部30bへ伝わることで軸線O方向先端側へ移動するので、セラミックホルダ30に設けられた凹孔35の内周面35iとセンサ素子21との隙間により到達しにくくなり、センサ素子21の側面Pへの水Wの付着をより一層抑制することができる。
【0027】
次に、ガスセンサ1へのセンサ素子21の組み付けについて説明する。
本例のガスセンサ1では、上記したように、主体金具11内に設けられているセラミックホルダ30の後端面側にはシール材(本例では滑石)41が充填状態で配置され、そのシール材41の後方にスリーブ43が配置され、リングワッシャ45を介して、主体金具11の後端寄り部位の円筒部15に連設された薄肉のカシメ用円筒部16を内側に折り曲げかつ先端側に圧縮されている。そして、この圧縮により、内部のシール材等を圧縮してセンサ素子21を主体金具11の内側に気密状に固定している。
なお、このようなセンサ素子21の固定は、
図4の左図の上に示したように行う。つまり、センサ素子21の後端29を、セラミックホルダ30、シール材41、及びスリーブ43に設けられた各挿通孔を通して組付け体仕掛品とし、この組付け体仕掛品を
図4の左図の下に示したように、金具本体11の内孔18に挿入(配置)する。そして、スリーブ43の後端であって、主体金具11の後端のカシメ用円筒部16の内側にリングワッシャ45を配置し、センサ素子21の先端23を適量突出させる。次いで、この状態の主体金具11を、
図4の右図に示したようなジグ201にて位置決め支持させる。そして、この支持の際には、主体金具11の多角形部14の下面をジグ201の位置決め部205に当接させる。その後、同図において例示されるようなカシメ用金型210で、カシメ用円筒部16を先端側に圧縮して内側に折り曲げる。これにより、センサ素子21及びセラミックホルダ30等を含む部品は主体金具11の内側に固定され、センサ素子21の先端23のセラミックホルダ30の先端から突出長L4を得る。なお、圧縮前のシール材(滑石成形体)41、及びスリーブ43の中央には、セラミックホルダ30と同様に、軸線O方向からみて横断面がセンサ素子21の横断面に対応する矩形(長方形)穴が設けられている。
【0028】
そして、例えば、
図5に示したように、センサ素子21を含む先端側の半組立体101を製造、組立てる。なお、
図5の半組立体101は、
図4に示した製造工程後に、プロテクタ51、61を主体金具11に溶接し、さらに、ガスケット19を主体金具11に組み付けることで作製できる。一方、それ以外の部分である上記した後端側の部位を半組立て体(仕掛品)102として、別途、製造、組立てておき、その両者を組付けることで、ガスセンサ1が製造される。すなわち、この両者を、
図5に示したように、同軸状に配置し、図示下方の半組立体101において突出する素子21の後端29寄り部位を、端子金具保持部材91内において対向して配置された端子金具75相互間に相対的に挿入して、各端子金具75を素子21の後端29寄り部位に設けられた各電極端子24にバネ性によって圧接させる。そして、保護筒81の先端の大径筒部82を主体金具11の後端寄り部位の円筒部15に外嵌し、同部位において全周をレーザ溶接することで
図1のガスセンサ1として製造される。
【0029】
本発明のガスセンサは、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜にその構造、構成を設計変更して具体化できる。
例えば、セラミックホルダ及びその凹孔、先端向き面の形状、主体金具の内孔の形状等は上記に限られない。
具体的には、
図6に示すように、主体金具110の内周面170のうち、後端向き面170bを水平面状としてもよい。一方でセラミックホルダ130の先端向き面130aを、後端向き面170bに係合する水平面状の外周側先端向き面130a3と、外周側先端向き面130a3より内周側で先端に向かって先細りのテーパ状に形成された中間先端向き面130a2と、中間先端向き面130a2より内周側で水平面状の内周側先端向き面130a1から構成してもよい。
図6の例においても、凹孔135の先端縁135eが、全周に亘って主体金具110の内孔180の小径孔180aの内面170aよりも径方向内側に位置している。つまり、プロテクタ51、61を取り外して軸線O方向の先端側から主体金具110を通して見たとき、凹孔135の先端縁135eのすべてが視認可能になっている。なお、主体金具110の内孔180は小径孔180aと大径孔180bとで形成されている。
【0030】
さらに、
図6の例においても、セラミックホルダ130が、中間先端向き面130a2が、周方向に亘って、主体金具110の後端向き面170bと小径孔180aの内面170aとが繋がる周縁Qの軸線方向の位置L3よりも、軸線O方向先端側へ突出する突出部130bを有する。
又、
図6の例では、凹孔135の内周面135iは後端側へ向かって小径となるテーパ状になっている。通常、セラミックホルダ130はセラミック材料を型抜きした後に焼成して製造されるため、仮に凹孔135の内周面135iが先端側へ向かって小径となるテーパ状になっていると、型抜きが困難になり、分割金型等を使用する必要が生じてコストアップになる。従って、凹孔の内周面は軸線O方向に平行であるか、又は後端側へ向かって小径となるテーパ状になっていることが好ましい。
【0031】
又、上記実施例ではセラミックホルダ30は、先端側から見たときに外周面が円形をなし、しかも、凹孔35の内周面35iも円形を成していることから、肉厚の均一化が図られる。したがって、セラミックホルダ30をセラミック製としたときにおける肉厚不同に起因する焼成歪の発生を抑えられる。
通常、セラミックホルダに設けられる挿通孔は、それを通したとき、略隙間なし(微小隙間)となるように、センサ素子の横断面と形状、大きさが一致するものとされる。すなわち、センサ素子が先後に細長い帯板状(又は角棒状)のものであり、その横断面形状が長方形のものでは、これを通すためのセラミックホルダに設けられる挿通孔は、この素子を微小な隙間嵌めで通すことができる、横断面が長方形の挿通孔(開口)とされるし、素子が丸棒状のものであれば、その挿通孔は、同じ直径の円形の挿通孔とされる。一方、セラミックホルダ自体は、それが電気的絶縁や耐熱性の確保の要請から通常、セラミック製とされ、その形状は、挿通孔を除けば、外観は、先端側から見たときに外周面が円形をなすもの、例えば、円柱状のものとされる。したがって、肉厚の均一化を確保し、セラミックの焼成歪の発生や応力集中をなくすためにも、セラミックホルダは、先端側から見たときに外周面が円形をなし、凹孔の内周面が円筒状をなすように構成するのがよい。
ただし、例えば、
図7に示したように先端側から見たときに、セラミックホルダ230の凹孔235の内周面235iが多角形(長方形)であってもよい。この場合には、なるべく多数の角を持つ円に近い多角形とし、なるべく肉厚の均等化が図られるようにするのが、その強度向上や焼成歪の発生防止上において好ましい。
【0032】
また、上記形態ではセンサ素子を、横断面が長方形(矩形)の帯板状のものとしたが、本発明のガスセンサに使用されるセンサ素子は、横断面が正方形のものであっても、それ以外のものであってもよい。さらに、上記においては全領域空燃比ガスセンサにおいて具体化したが、本発明に係るガスセンサは、その他のガスセンサにおいても具体化できる。