(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934697
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】安定な乳製品の泡を有する飲料製品
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20160602BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20160602BHJP
A23C 9/133 20060101ALI20160602BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20160602BHJP
A23C 13/14 20060101ALI20160602BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20160602BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
A23L2/00 W
A23L2/38 P
A23C9/133
A23F5/24
A23C13/14
A23G1/00
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-508481(P2013-508481)
(86)(22)【出願日】2011年5月3日
(65)【公表番号】特表2013-524843(P2013-524843A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011057073
(87)【国際公開番号】WO2011138339
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】10162291.8
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】シャネ, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】モロー, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】セール, ジャン−エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】マンチョ, ホセ
【審査官】
高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0241333(US,A1)
【文献】
特表2008−502337(JP,A)
【文献】
特開2001−186868(JP,A)
【文献】
特開2004−152313(JP,A)
【文献】
特開2000−011249(JP,A)
【文献】
染川裕,「エスプレッソコーヒー こまち(小町)/ 喫茶店 前橋市本町」,群馬県で働くWebクリエイターsomyuのブログ,[2015年8月5日検索],2008年 1月23日,URL,http://somyu.com/blog/2008/01/post-344.html
【文献】
おむぱん,「茶近:鎌倉」,おむぱん日記,[2015年8月5日検索],2009年10月22日,URL,http://omupan.blog62.fc2.com/blog-entry-126.html
【文献】
カッパ,「夏の秘密兵器」,カッパ 鍵屋の奮闘記!(キーボックス沖縄のブログ),2009年 8月 5日,[2015年8月5日検索],URL,http://kappa.ti-da.net/e2547932.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/40
A23G 1/00−9/30
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)液体(11)を容器(12)に充填するステップと、
ii)90重量%以上のミルク及び乳脂肪、0〜10重量%の甘味料及び0.1〜1.5重量%の安定剤を含む乳製品ベースを調製するステップと、
iii)前記乳製品ベースに通気して泡(17)を生じるステップと、
iv)供給角度がまず容器(12)の内壁(18)を指す供給ノズル(16)を用いて前記容器(12)内の前記液体(11)上に前記泡(17)を塗布することにより、前記泡(17)が前記容器(12)の全周に沿って前記容器の内壁(18)に付着し、次いで、前記泡(17)で前記液体(11)の残りの表面を覆うステップと
を含む、飲料製品の製造方法。
【請求項2】
前記乳製品ベースが0.1〜1.0重量%の前記安定剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳製品ベースへの通気が、前記乳製品ベースをホイップすることにより実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記泡(17)が、前記ノズル(16)と前記容器(12)とが互いに円運動することにより前記容器(12)の全周に沿って前記容器の内壁(18)に塗布される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記円運動が、前記ノズル(16)に対して回転する前記容器(12)によるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記乳製品ベースを少なくとも90℃〜150℃に15秒〜6分間加熱するステップと、それに続く、冷却するステップとを、前記乳製品ベースに通気するステップの前に更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却するステップにおいて、少なくとも6℃に冷却する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
容器(12)、液体(11)、及び液体(11)の上にあり液体(11)の表面を覆う乳製品の泡(17)を含む飲料製品であって、
前記乳製品の泡(17)が90重量%以上のミルク及び乳脂肪、0〜10重量%の甘味料、及び0.1〜1.5重量%の安定剤を含み、
前記乳製品の泡(17)がまず前記容器(12)の全周に沿って前記容器(12)の内壁(18)に塗布されてから、前記液体(11)の全面に充填されることにより、乳製品の泡が前記内壁(18)に付着している、飲料製品。
【請求項9】
前記乳製品の泡(17)が0.1〜1.0重量%の前記安定剤を含む、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記容器(12)が、透明又は半透明のカップである、請求項8又は9に記載の製品。
【請求項11】
前記安定剤が、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グリセロールラクトパルミテート乳化剤、カルボキシメチルセルロース乳化剤、及びゼラチン、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
前記液体(11)がコーヒー、チョコレート若しくは乳飲料、又はそれらの組合せである、請求項8〜11のいずれか一項に記載の製品。
【請求項13】
前記液体(11)が発酵させたものである、請求項8〜12のいずれか一項に記載の製品。
【請求項14】
前記乳製品の泡(17)が発酵させたものである、請求項8〜13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項15】
前記液体(11)が1重量%未満の脂肪含量及び/又は75kcal/100ml未満のカロリー量を有する、請求項8〜14のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
前記液体(11)が果実抽出物を含む、請求項8〜15のいずれか一項に記載の製品。
【請求項17】
前記果実抽出物が、マンゴー、イチゴ、若しくはリンゴ、又はそれらの組合せの果実抽出物である、請求項16に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、液体飲料上で耐久性があり安定な乳製品の泡を含む安定な飲料製品及びその飲料製品の製造方法に関する。
【0002】
泡立てられたトッピングを有する飲料は、特に若い消費者の間で非常に人気があり、ストロー若しくはスプーンを使用して飲食するか、泡立てられたトッピングと液体飲料とを混合してから液体飲料を飲むか、又は発泡トッピングを別に消費することが楽しまれている。このような今はやりの製品は、現在、ホット及びコールド飲料、例えば、入れたてのカプチーノ、ラテマキアート並びに他の泡状ミルクシェイク及び飲料を含み、その多くは消費の直前に自宅で又は自宅外で調製される。
【0003】
空気及び/又は蒸気を使用して、通常ミルクから泡を生成する多くの機械的方法及び装置がある。このように機械で生成した泡は、液体飲料上で非常に短時間しか通常持続せず、その後急速に崩壊する傾向がある。特に、ミルクトッピングを有するミルクシェイク等、液体飲料自体が泡状トッピングと同じ又は類似の組成を含有する場合、泡のテクスチャーは通常劣る。
【0004】
ある種の機械的方法には、例えば加圧過熱蒸気を生成し、例えばミルク及び/又はコーヒー飲料を導入しそれらと混合し、粘性のある泡を生成し、次いで該泡を例えばコーヒー等の飲料上に加えるためのかなり大きな装置が関わる。その結果、例えばコーヒーショップにおいて消費者に製造直後に提供される飲料については、十分な時間持続する良好な泡立てられたトッピングを有するカプチーノ等のコーヒー飲料となり、次いで、消費者は泡状トッピングを消費中に味わえる。
【0005】
泡は、例えば粘性を高めるために増粘剤を加えることにより、より安定し得る。しかし、粘性の高い泡は、ねばねばしたテクスチャーを一般に有し、ある種の使用については、例えばコーヒー飲料のトッピングとしては口当たりが良くない。粘性が非常に高い場合、配合物は、むしろゲルのように挙動し、例えば空気を配合物に導入し、実際に泡を生成し、それをトッピングとして飲料液に塗布することが難しくなる。
【0006】
ホイップクリーム様泡は、ヘビークリーム又は他の高脂肪液から調製でき、低温環境では比較的安定である。このようなホイップクリームを、多様な範囲の飲料製品のトッピングとして使用し、塗布することができる。その後、ホイップクリームは、飲料液に溶解し、前記飲料製品のトッピングとして非常に長時間持続することはない。それでもやはり、クリーミーな泡は、消費者に提供され、消費者が消費中に製品を味わうのに十分な時間、液体製品上で持続する。
【0007】
国際公開第2008/018075号パンフレットは、飲料とは独立に商品化し、消費者により又は飲料製品の販売場所で飲料上に浮かべることができる飲料用フロートトッピングについて開示している。開示されたトッピングは、少なくとも最初の10分間は飲料液と混和しない。
【0008】
発泡クリーム等の多くの製品は、泡状トッピングを有する飲料を提供することについての消費者及びコーヒーショップの要求を満たすために市場に出現した。例として、米国特許出願公開第2005/0276898号を本明細書に引用した。このようなクリームは、すぐに使用できる形態で通常提供され、ホット又はコールド飲料に容易に分散し、設備又は装置を使用せずに、液体飲料上にクリーミーな風味及び白い泡をもたらす。したがって、繰り返して言うが、泡状トッピングは、販売場所又は自宅で生成され、製品を提供し消費するのに十分な時間持続する。しかし、この種のトッピングは、消費のかなり前に調製され、小売りを経て販売される製品で用いられるには十分に安定ではない。
【0009】
米国特許出願公開第2007/0065555号は、安定性が高められた口当たりの良い乳製品の泡の配合物について開示している。配合物はミルク、界面活性剤、多糖及び多糖と相互作用できるポリマーを含む。泡は、例えば回転率の高いレストラン及びコンビニエンスストアーにおいて飲料上で使用され得る。泡は、飲料の表面上で数分間「実質的に安定した状態」を保つ。つまり、「泡は5分後その高さの少なくとも約75%を維持している」。繰り返して言うが、泡状トッピングは、販売場所で製造され、製品を提供し消費するのに十分な時間持続するが、数分後にその体積を失い、液体と混合する。
【0010】
上に記載した技術はいずれも、飲料製品が消費場所及び消費時に製造されるだけでなく、乳製品の泡状トッピングを有する飲料製品が別の場所、例えば工場で製造され、該製品が異なる経路を介して消費者に輸送、流通され、次いで該消費者が購入場所又は自宅で製品を消費できる可能性を提供するものではない。
【0011】
したがって、安定なトッピングとして乳製品の泡を有する安定な液体飲料製品であって、該トッピングが、数分間だけでなく何日も、好ましくは数日以上、製品の液相上で持続する安定な液体飲料製品を有することが必要とされている。更に、トッピングは、流通網における輸送及び取扱い中に起こる製品の移動及び振動に耐えられ、崩壊しないものでなくてはならない。これにより、伝統的な流通網を介しても、即ち工場で製造され、流通センターに輸送され、そこで流通されても、消費者にこのように新しい飲料製品が提供されよう。
【0012】
したがって、本発明の目的は、飲料の液相上で耐久性があり安定な乳製品の泡を含む安定な飲料製品、並びに前記飲料製品の製造方法を提供することである。
【0013】
この目的は、独立請求項の内容により実現される。従属請求項は、本発明の概念を更に発展させている。
【0014】
したがって、本発明は、容器、液体、及び液体の上にあり液体の表面を覆う乳製品の泡を含む安定な飲料製品であって、前記乳製品の泡が、90〜約100重量%のミルク及び乳脂肪、0〜10重量%の甘味料及び0.1〜約1.5重量%、好ましくは0.1〜約1.0重量%の安定剤を含み、前記乳製品の泡が液体の全面に充填される前に、まず乳製品の泡が前記容器の全周に沿って容器の内壁に塗布されることにより、乳製品の泡が前記内壁に付着している、安定な飲料製品に関連する。
【0015】
本発明の更なる態様は、i)容器に液体を充填するステップと、ii)90〜約100重量%のミルク及び乳脂肪、0〜10重量%の甘味料及び0.1〜約1.5重量%、好ましくは0.1〜約1.0重量%の安定剤を含む乳製品ベースを調製するステップと、iii)乳製品ベースに通気して泡を生じるステップと、iv)供給角度がまず容器の内壁を指す供給ノズルを用いて容器内の液体上に前記泡を塗布することにより、泡が前記容器の全周に沿って容器の内壁に付着し、次いで、泡で液体の残りの表面を覆うステップとを含む飲料製品の製造方法である。
【0016】
驚くべきことに、本発明者等は、特許請求した組成の乳製品の泡の使用と、残りの液体表面を完成させる前に、まず泡を容器の内側に付着させることによりこのような乳製品の泡を液体飲料上に塗布する特定技術と、を合わせることにより、液体上の乳製品の泡の安定性及び持続性を向上させる強力な相乗効果があることを見出した。これにより、現在、乳製品の泡が溶解又は崩壊せずに飲料液上に存在する時間が有意に延長される。したがって、例えば消費の直前にこのような飲料製品をコーヒーショップ又は自宅で調製する代わりに、例えば泡状トッピングを有する飲料製品を工場で製造した後、小売りを経てそれらを販売することが可能となる。
【0017】
本発明の飲料製品は、乳製品の泡状トッピングが、消耗食品の販売及び流通において経験する製品の取扱い及び輸送の通常の条件下で、長期間にわたって飲料の液相上でその全体的な外観を持続するという意味で安定である。したがって、飲料製品は、液相上で少なくともかなりの部分の乳製品の泡と共にその全体的な外観を維持する。即ち、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも3週間、より好ましくは少なくとも4週間、即ち28日間以上液体に溶解しないか、又は崩壊しない。
【0018】
乳製品の泡は、90〜約100重量%のミルク及び乳脂肪、場合により乳製品ベースに対して最大約10重量%の濃度の甘味料及び0.1〜1.5重量%の安定剤を含む乳製品ベースに通気することにより生成される。ミルク及び乳脂肪は、ベースの乳成分を含み、全脂肪乳、スキムミルク、乳クリーム、粉乳及び水等の市販の材料を合わせることにより構成できる。甘味料は、糖のような天然甘味料、例えばスクロース、若しくは人工甘味料又はそれらの任意の組合せであってよい。
【0019】
液相上の乳製品の泡は、まず全周に沿って容器の内壁に塗布されることにより、泡が内壁に付着する。容器へのこのような付着は、泡を液体と接触させる前に、まず泡を例えばノズルを介して前記容器の壁に直接塗布した後、残りの液体表面に泡を充填することにより実現できる。該理屈に拘束されずに、本発明者等は、この観察された付着が、泡と容器の壁との間の分子間力及び界面張力現象を介した吸着の結果であると考える。
【0020】
この方法の利点は、乳製品の泡が、液体と容器との間の全界面に沿って容器の内壁に十分に付着することである。したがって、該液体が、移動又は振動で、泡を容器の壁から分離するか、又は泡と容器との間に入り込む可能性がない。これにより、液相上の泡の持続性及び耐久性が非常に安定する。
【0021】
製品は、現在、泡立てられたトッピングが液体に溶解することなく数日間保存できる。製品の試行から、このような飲料製品が製品の表面トッピングの有意な変化又は喪失なしに28日間以上8℃の冷蔵下で保存できることが示された。更に、例えば工場からスーパーマーケットへの輸送中に起こる製品の振動でも、表面トッピングは破壊されない。本発明の方法により製造された飲料及びトッピングを有するカップは、製品の全体的な外観を損なうか、又は変えることなく少しの間逆さにすることもできる。
【0022】
飲料製品の観察された安定性の商業化の可能性を試験するために、本発明による製品160杯を、1週間で1,000km超を冷蔵トラック内のパレット上で輸送した。この試験後、製品の外観は、出発前の製品の外観と同等であった。したがって、現在、乳製品が泡立てられたトッピングを有する飲料製品を、消費される場から離れて、例えば工場で製造し、必要な場合このような製品を数キロメートルにわたって輸送し、例えば流通センター又は任意の他の製品販売店での製品の販売を提案することが可能である。次いで、該製品は、消費者によりこのような販売場所で消費されてもよく、又は例えば自宅に持ち帰られ、後から消費されてもよい。
【0023】
本発明の利点は、長い日数にわたって安定性及び耐久性があり、したがって例えば従来の流通網又は市場を介して商品化できる、少なくとも1つの液相と1つの乳製品の泡の層とを有する多層製品である、新しい飲料製品を提供することである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、製品の容器は、カップ、好ましくは例えばプラスチック材料で作られた透明又は半透明のカップである。
【0025】
それにより、消費者に製品を提示する際に有利である。消費者が購入し消費する製品が、例えばクリーミーな白いトッピングを有する例えば二層の飲料製品であることが分かるため、消費者にとって非常に魅力的であり得る。例えば乳飲料に異なる着色の液相を使用することにより、トッピングと対照を成すことができ、消費者にとって魅力的となり得る。半透明のカップは、二層製品の視覚的外観の利点を失わずに、発酵乳飲料等の光に敏感な飲料製品を良好に保存するために有利に用いられる。
【0026】
更に好ましい実施形態において、容器は、2つの別個の部分からなり、より大きい内部断面を有する部分は、より狭い内部断面を有する部分の上に存在し、容器の内壁の周囲を囲むように出張り(ledge)を形成する。
【0027】
それにより、容器の下部に液体を充填した後、前記容器の上部に本発明による乳製品の泡を塗布することにより、泡は、内壁に付着するだけでなく、容器内の2つの部分の間の出張りにしっかり配置される。これにより、飲料液上の乳製品の泡の安定性及び耐久性が高まる。
【0028】
本発明の更に好ましい実施形態において、該製品は、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グリセロールラクトパルミテート乳化剤、カルボキシメチルセルロース乳化剤及びゼラチン、又はそれらの任意の組合せから選択される安定剤を含む。それにより、カラギーナン、キサンタンガム及びローカストビーンガム、又はそれらの組合せが、例えばコーヒー等の低脂肪液を含む飲料に好ましくは用いられる。乳製品ベースの液体を含有する飲料に関して、グリセロールラクトパルミテート乳化剤と組み合わせたゼラチンの使用は、好ましい組合せである。好ましくは、本発明の製品は、コーヒー、チョコレート又は乳飲料である。例えば、ミルクコーヒー若しくはミルクチョコレート飲料にするために異なる液体を合わせるか、又はコーヒーとチョコレート及び/若しくはミルクを合わせることもできる。
【0029】
より更に好ましい実施形態において、本発明の製品は、液体、乳製品の泡又はそれらの両方、即ち液体及び乳製品の泡が、発酵したものである発酵製品であってよい。それにより、液体は、ヨーグルト又はヨーグルト様飲料と同様に発酵したものであるミルクベースからなるものであってよい。代替的に又は組合せて、乳製品の泡は、発酵乳製品ベースで作られたものであってよい。
【0030】
このような製品は、有利なことに、消費者にこのような二層の市販の飲料製品の範囲の中で新しい味を提供できる。発酵製品は、消費者に新鮮で自然であると通常感知される。更なる利点は、例えば液体中及び/又は乳製品の泡中に発酵プロバイオティック微生物を含有する健康に有益な特性を有する製品を提供することである。このような製品は健康志向の消費者にとって非常に魅力的である。
【0031】
更に好ましい実施形態によれば、液体は、液体に対して1重量%未満の脂肪含量及び/又は75kcal/100ml未満のカロリー量を有する。これは、楽しく健康的な飲料を楽しむことを諦めずに、脂肪及びカロリーの摂取量を低減するか、又は制限することを望む健康志向の消費者にとってやはり非常に魅力的で有益である。
【0032】
より更に好ましい実施形態によれば、液体は、例えばミルクと合わせて、スムージ様テクスチャーにすることができる果実抽出物を含む。適切な果実抽出物は、例えばマンゴー果実、イチゴ若しくはリンゴの抽出物又はそれらの組合せである。他の果実からの抽出物及び/又は組合せも同様に考えることができる。
【0033】
これはやはり、多様な各種の良好で新鮮な味の飲料を有することを望むと同時にビタミン、ミネラル及び繊維の含有量等、毎日の食生活で果実により提供される健康効果から利益を得ることを望む多くの健康志向の消費者に有利に対処できる。
【0034】
本発明の別の目的は、前記飲料製品の製造方法である。本発明の方法に関して、乳製品ベースへの通気は、例えばホイップによるか、又はCO
2、窒素若しくは空気等のガスを注入することにより実現される。しかし、好ましくは、乳製品ベースへの通気は、前記ベースをホイップすることにより実現される。
【0035】
本発明のより更に好ましい実施形態は、泡が、ノズルと容器とが互いに円運動することにより容器の全周に沿って前記容器の内壁に塗布される、方法のステップiv)である。このような解決法は、泡を容器の内壁に付着させるのに特に適しており効率的である。
【0036】
ステップvi)に関する方法のより更なる態様において、円運動は、ノズルに対して回転する容器によるものである。これにより、円運動の技術的実施が促進され、充填手順中に容器を回転させるためのこのような設備と共に既存の装置を使用できる。
【0037】
本発明の方法は、乳製品ベースを15秒〜6分間少なくとも90℃〜150℃に加熱するステップと、それに続く、好ましくは少なくとも6℃に冷却するステップと、その後の、前記乳製品ベースに通気するステップとを更に含む。この方法において、乳由来のタンパク質としての乳製品ベースのある種の成分及び安定剤は、乳製品ベースの組成物の有利な効果を提供するために、互いに良好に混合し、相互作用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】乳製品の泡を容器内の液体上に塗布する第1の段階を示す図である。
【0039】
図1は、第1のステップにおいて、容器12に充填した液体11を示す。容器12は、下部13及び上部14からなり、上部14は、下部13よりも大きい内部断面を有し、したがって容器12の内壁18で周囲を囲むように出張り(ledge)15が形成される。乳製品の泡17を、まず、容器12の全周に沿ったノズル16の円運動Aにおいて容器12の内壁18に乳製品の泡17を向けるように向きが合せられた、ノズル16を用いて液体11上に塗布する。その後、残りの液体表面を、乳製品の泡17で覆い、
図2に示すような最終飲料製品にする。それにより、液体11は、現在、下部13中にあり、乳製品の泡17は、容器12の上部14に位置し、前記容器12の2つの部分の間の出張り15にしっかり配置されている。
【0040】
例1
チルドコーヒー飲料
a)コーヒー液の調製:
乾燥した市販のコーヒー抽出物、スクロース及び乳タンパク質を一緒に混合して、ミルク、乳クリーム及び水を含む液相に加え、標準化させた。水和後、混合物を高温で短時間滅菌した後、均質化した。次いで、得られたコーヒー液を6℃の温度まで冷却し、
図1に示すように透明のプラスチックカップに充填した。
b)乳製品の泡の調製:
乾燥安定剤、カラギーナン150g、キサンタンガム50g及びローカストビーンガム8gの混合物を全脂肪乳、乳クリーム及びスクロース6.5重量%を含む標準化した液体ミルク100Lに加えた。水和後、乳製品ベースの組成物を145℃で60秒間滅菌した。その後、組成物を6℃に冷却した。
次いで、乳製品混合物を、Aeromix(エアロミックス)タイプの標準工業用エアレーターに食品用窒素ガスを注入することにより、8℃の温度にて前記エアレーターでホイップした。その後、得られた乳製品の泡を、コーヒー液を含有する透明のプラスチックカップに非常に衛生的な条件下で
図1に示すように塗布した。
次いで、カップを8℃で30日間保存した後、試験した。
最終製品は、以下の特性を示した:
【表1】
次いで、この製品に、1週間で1,000km超を6℃のトラック内のパレット上で最終飲料製品を輸送することからなる輸送負荷試験を行った。2層の飲料製品の全体的な外観は、輸送試験を開始する前の外観と比較して前記試験後も変化しなかった。即ち、乳製品の泡は、液体コーヒー上で安定した状態を保った。
【0041】
例2
マンゴー風味の発酵乳飲料
a)発酵乳液の調製:
ミルクをスクロースと混合し、92℃で6分間低温殺菌した。その後、発酵用にヨーグルト菌株を接種する前に、ミルク液を均質化し、41℃に達するまで冷却した。pH4.6に達した後、発酵を停止し、マンゴーピューレを液体に加えて混合した。液体を6℃に冷却し、
図1に示すような透明のプラスチックカップに充填した。
b)発酵乳製品の泡の調製:
グリセロールラクトパルミテート乳化剤500g及び乾燥ゼラチン500gを、乳クリーム5重量%及びスクロース5重量%を含む液体全脂肪乳100Lに加え混合した。
水和後、乳製品ベースを105℃で2分間低温殺菌した後、まず200バールで、第2のステップでは40バールで均質化した。次いで、発酵用にヨーグルト菌株を接種する前に、乳製品ベースを41℃に達するまで冷却した。pH4.6に達した後、乳製品ベースを6℃に冷却することにより発酵を停止させた。
次いで、乳製品混合物を、Aeromixタイプの標準工業用エアレーターに食品用窒素ガスを注入することにより、8℃の温度にて前記エアレーターでホイップした。その後、得られた乳製品の泡を、発酵マンゴー−ミルク液を含有する透明のプラスチックカップに非常に衛生的な条件下で
図1に示すように塗布した。
次いで、カップを8℃で30日間保存した。
最終製品は以下の特性を示した:
【表2】
この製品に、例1で上に示したような輸送負荷試験を行うことに成功した。
2層の飲料製品の全体的な外観は、輸送試験を開始する前の外観と比較して前記負荷試験後も変化しなかった。即ち、乳製品の泡は液体マンゴー風味ミルク上で安定した状態を保った。
【0042】
例3
コーヒー飲料Iの比較例
コーヒー液を調製し、例1のように透明のプラスチックカップに加えた。
乳製品混合物を、例1のように全脂肪乳、乳クリーム及びスクロース6.5重量%を含む同じ標準化した液体ミルクで調製したが、安定剤、カラギーナン、キサンタンガム及びローカストビーンガムは加えなかった。次いで、乳製品混合物を、例1の乳製品混合物と同じ方法で滅菌し、冷却し、ホイップした。
得られた乳製品の泡を、コーヒー液を含有する透明のプラスチックカップに
図1に示すように塗布した。
次いで、カップを8℃で数日間保持し、毎日検査した。それにより、乳製品の泡に安定剤を含有していない飲料製品試料に関して、乳製品の泡は、1日(24時間)後に減少し始めた。即ち、崩壊し液体に混合し始めた。2日目(48時間)には、乳製品の泡は、もはやカップの内壁に付着しておらず、残りの乳製品の泡は、コーヒー液上に浮遊していた。3日目には、泡は完全に崩壊し、乳製品の泡はコーヒー液上にもはや残っていなかった。
【0043】
例4
コーヒー飲料IIの比較例
コーヒー液を調製し、例1のように透明のプラスチックカップに加えた。
乳製品混合物を、例1に示すように乾燥安定剤と、全脂肪乳、乳クリーム及びスクロース6.5重量%を含む標準化した液体ミルクとの同じ混合物で調製した。
次いで、乳製品混合物を、Aeromixタイプの標準工業用エアレーターに食品用窒素ガスを注入することにより、8℃の温度にて前記エアレーター用いてホイップした。
その後、得られた乳製品の泡を、まずカップ内の液体表面の中心の方向を直接指す供給ノズルを用いて該泡を塗布した後、該泡で液体表面全体を覆う従来の方法で、コーヒー液を含有する透明のプラスチックカップに充填した。
次いで、カップを8℃で数日間保持し、定期的に検査した。それにより、この従来の方法で液体表面の中心に直接塗布された乳製品の泡が、数分後にすでに明らかに崩壊し始めたことが観察された。1日(24時間)後、乳製品の泡は全て消失し、コーヒー液に溶解した。
【0044】
結論
実験1、3及び4の結果は、特定の組成の乳製品の泡と、カップ内の液体表面上に該乳製品の泡を塗布する特定の方法とを組み合わせたとき、驚くべき相乗効果があることを明確に示している。乳製品の泡を、安定剤を使用せずに生成し、具体的には特許請求した方法で液体表面に塗布した実験3において、乳製品の泡は、このようなカップ内の液体上で3日間を超えて持続することはなかった。同様に、従来の方法で液体表面上に安定剤と共に乳製品の泡を塗布した結果、即ち、液体表面の中心に直接乳製品の泡を塗布した結果、乳製品の泡状トッピングは数分後すでに崩壊し始め、液体表面上で24時間を超えて持続することはなかった。2つの技術の特徴、即ち該組成の乳製品の泡と特定の供給用途とを組み合わせた場合のみ、得られた飲料製品の乳製品の泡が、液体表面上で長い日数にわたって持続した。実際に、製品を少なくとも28日間保持した場合、製品は変化したようには見えず、乳製品の泡の量の明らかな喪失もなかった。
【0045】
[参照番号]
11 液体
12 容器
13 容器下部
14 容器上部
15 出張り
16 ノズル
17 乳製品の泡
18 容器の内壁