(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934701
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】音響光学システム、顕微鏡、および音響光学システムの使用方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/11 20060101AFI20160602BHJP
G02F 1/33 20060101ALI20160602BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20160602BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
G02F1/11 502
G02F1/33
G02B21/06
G01N21/64 E
【請求項の数】28
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-513701(P2013-513701)
(86)(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公表番号】特表2013-534643(P2013-534643A)
(43)【公表日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2011059595
(87)【国際公開番号】WO2011154501
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】13/151,055
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/353,163
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500178876
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィツゴウスキー ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ビルク ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ザイフリート フォルカー
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−260026(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/060027(WO,A1)
【文献】
特開平04−267228(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/009174(WO,A1)
【文献】
特開昭56−001923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/29−1/33
G01N 21/64
G02B 21/06
G02F 1/00−1/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端にて入力光を受信し、かつ出力端から出力光を送信する水晶(3)に装着された少なくとも1つのトランスデューサ(2)を有する少なくとも1つの音響光学素子(1)と、前記音響光学素子(1)を通して送信される光を修正する、前記音響光学素子(1)を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットとを備えて構成される、音響光学システムであって、
前記トランスデューサ(2)が、アナログ電子駆動信号を受信し、音波を発生し、かつこれら音波を前記水晶(3)に送信するように構成され、
前記駆動ユニットが、デジタル組み合わせ信号を発生するためのデジタルデータ処理ユニット(35)と、前記デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器(32)と、前記アナログ電子駆動信号になるように前記初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器(25、33)とを備えて構成され、
前記デジタルデータ処理ユニットが、前記トランスデューサ(2)によって特定の音響周波数を発生するための基礎をそれぞれが形成する少なくとも2つの初期デジタル信号を、計算して発生するためのデジタル周波数計算ユニット(26)と、前記少なくとも2つの初期デジタル信号を1つの単一デジタル組み合わせ信号(31)に組み合わせる重ね合わせユニット(30)とを備えて構成される、
音響光学システム。
【請求項2】
特定の音響周波数を発生するための基礎を形成する少なくとも1つの修正されたデジタル信号へ前記2つの初期デジタル信号の少なくとも1つを修正するように構成されたデジタル修正ユニット(29)をさらに含む、請求項1に記載の音響光学システム。
【請求項3】
前記修正ユニット(29)が、前記少なくとも1つのトランスデューサ(2)によって、異なる位相の特定の音響周波数を発生するための基礎を形成する2つの修正されたデジタル信号へ前記2つの初期デジタル信号を修正するように構成される、請求項1または2に記載の音響光学システム。
【請求項4】
前記デジタルデータ処理ユニット(35)が、前記アナログ電子駆動信号に依存する音響応答における非線形性を補償するために前記デジタル組み合わせ信号を修正するための補償ユニット(34)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項5】
前記デジタル−アナログ変換器(32)、前記増幅器(25、33)、前記トランスデューサ(2)および前記水晶(3)からなる群のコンポーネントのうちの1つにおける温度の少なくとも1つを測定し、かつ前記アナログ電子駆動信号における、温度に基づいた偏差を補償するために、温度に基づいた制御信号を前記補償ユニット(34)に供給する温度センサをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項6】
ただ1つの音響光学素子(1)の前記水晶(3)に両方とも装着された少なくとも第1および第2のトランスデューサ(2)を含み、前記第1のトランスデューサ(2)が、第1のアナログ電子駆動信号によって生成された第1の音響信号を前記音響光学素子(1)の前記水晶(3)に送信するように構成され、前記第2のトランスデューサ(2)が、第2のアナログ電子駆動信号によって生成された第2の音響信号を前記音響光学素子(1)の前記水晶(3)に送信するように構成された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項7】
水晶(3)および前記水晶(3)に装着されたトランスデューサ(2)をそれぞれ有する少なくとも第1および第2の音響光学素子(1)を含み、前記第1の音響光学素子(1)の前記トランスデューサ(2)が、第1の周波数の第1の音響信号を前記第1の音響光学素子(1)の前記水晶(3)に送信するように構成され、前記第2の音響光学素子(1)の前記トランスデューサ(2)が、第2の周波数の第2の音響信号を前記第2の音響光学素子(1)の前記水晶(3)に送信するように構成され、前記第1および第2の周波数が、同じであっても、互いに異なってもよい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項8】
前記第1の音響光学素子(1)が、前記第2の音響光学素子(2)と異なる、請求項7に記載の音響光学システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの音響光学素子(1)が、音響光学可変フィルタAOTF(19)、音響光学変調器AOM、音響光学偏向器AOD、音響光学ビームスプリッタAOBS、音響光学ビームマージャAOBM、および周波数シフタからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項10】
前記第1の音響光学素子(1)が音響光学可変フィルタAOTF(19)であり、前記第2の音響光学素子(1)が音響光学ビームスプリッタAOBSである、請求項8に記載の音響光学システム。
【請求項11】
前記音響光学素子(1)によって修正される光が、連続波(CW)レーザ(18)またはパルスレーザ(18)によって発生される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項12】
前記音響光学素子(1)によって修正される光が、波長の広域連続スペクトルを発生する広帯域光源(18)によって発生される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項13】
前記広帯域光源(18)が、スーパーコンティニューム光源、スーパールミネセンス光源およびLED光源からなる群の1つである、請求項12に記載の音響光学システム。
【請求項14】
前記アナログ電子駆動信号が、光の帯域幅に影響を及ぼすためにチャープされる、請求項12または13に記載の音響光学システム。
【請求項15】
前記音響光学素子(1)によって修正される光が、1つもしくは複数の特定の波長または1つもしくは複数の狭い波長帯域の少なくとも1つにおける光を発生する線スペクトル光源(18)によって発生される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項16】
前記アナログ電子駆動信号が、少なくとも2つの重ね合わされた高調波信号を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の音響光学システム。
【請求項17】
入力端にて入力光を受信し、かつ出力端から出力光を送信する水晶(3)に装着された少なくとも1つのトランスデューサ(2)を有する少なくとも1つの音響光学素子(1)を備えた少なくとも1つの音響光学システムと、少なくとも2つの異なる波長を含む前記入力光を発生する光源(18)と、前記音響光学素子(1)を通して送信される光を修正する、前記音響光学素子(1)を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットと、前記音響光学システムによって修正された光を光学軸に結合するためのインカップリング素子と、対物レンズ(20)とを備えて構成される顕微鏡であって、
前記トランスデューサ(2)が、アナログ電子駆動信号を受信し、音波を発生し、かつこれら音波を前記水晶(3)に送信するように構成され、
前記駆動ユニットが、デジタル組み合わせ信号を発生するためのデジタルデータ処理ユニット(35)と、前記デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器(32)と、前記アナログ電子駆動信号になるように前記初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器(25、33)とを備えて構成され、
前記デジタルデータ処理ユニット(35)が、前記トランスデューサ(2)によって特定の音響周波数を発生するための基礎をそれぞれが形成する少なくとも2つの初期デジタル信号(27、28)を、計算して発生するためのデジタル周波数計算ユニット(26)と、
前記2つの初期デジタル信号(27、28)の少なくとも1つを、特定の音響周波数を発生するための基礎を形成する少なくとも1つの修正されたデジタル信号に修正するように構成されたデジタル修正ユニット(29)と、前記少なくとも1つの修正されたデジタル信号と1つの初期デジタル信号または別の修正されたデジタル信号とを、1つの単一デジタル組み合わせ信号へと組み合わせる重ね合わせユニット(24、30)とを備えて構成され、
前記インカップリング素子が、前記対物レンズ(20)の上流に設けられ、かつ前記少なくとも1つの音響光学素子(1)から出る前記修正された光を受信するように構成され、前記対物レンズ(20)が前記インカップリング素子の下流に設けられる、顕微鏡。
【請求項18】
音響光学可変フィルタAOTF(19)である第1の音響光学素子(1)と、入射光の方向にて前記AOTF(19)の下流で、かつ結像された対象物から放射または反射された光の方向にて前記AOTF(19)の上流に設けられた音響光学ビームスプリッタAOBSである第2の音響光学素子(1)とを備えて構成され、前記AOBSが、対象物(21)から放射または反射された光を、前記結像された対象物(21)の画像を生成するために検出器(22)に送信される第1の有用ビーム(5)と廃棄される第2の不用ビーム(6)に分割する、請求項17に記載の顕微鏡。
【請求項19】
前記検出器(22)が、結像される前記対象物(21)の画像を生成するコンピュータ(38)に接続される、請求項18に記載の顕微鏡。
【請求項20】
前記コンピュータ(38)が、スキャナ(36)に送信されるフィードバック信号を発生する、請求項19に記載の顕微鏡。
【請求項21】
前記コンピュータ(38)が、前記デジタルデータ処理ユニット(35)に接続され、かつそのデジタルデータ処理ユニット(35)に制御信号を送信するように構成される、請求項19または20に記載の顕微鏡。
【請求項22】
水晶(3)に装着された少なくとも1つのトランスデューサ(2)を有する少なくとも1つの音響光学素子(1)と、前記音響光学素子(1)を通して送信される光を修正する、前記音響光学素子(1)を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットとを備えて構成される音響光学システムであって、前記駆動ユニットが、デジタル組み合わせ信号を発生するための少なくとも1つのデジタルデータ処理ユニット(35)と、前記デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器(32)と、前記アナログ電子駆動信号になるように、前記初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器(25、33)とを備える、音響光学システムを操作する方法であって、
2つのそれぞれのアナログ信号を表すビットおよびバイトシーケンスからなる少なくとも2つの初期デジタル信号をデジタルフォーマットで計算するステップであって、そのステップでは前記少なくとも2つの初期デジタル信号を1つの単一デジタル組み合わせ信号に重ね合わせること、
前記デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換するステップと、
前記アナログ電子駆動信号になるように前記初期アナログ駆動信号を増幅するステップと、
音波を生成するために前記トランスデューサ(2)を操作するように、前記アナログ電子駆動信号を前記トランスデューサ(2)に送信するステップと、
を備えて構成される方法。
【請求項23】
1つの単一デジタル組み合わせ信号に組み合わせる前に、前記2つの初期デジタル信号の少なくとも1つを修正することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記デジタル組み合わせ信号における最大振幅を最小値に低減するように前記2つの信号間の位相シフトを計算することと、前記少なくとも2つの初期デジタル信号の位相を互いに対して修正し、その後、それに応じて前記組み合わせ信号に重ね合わせることとをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
電子設定または音響光学設定における非線形性を補償するために、前記デジタル組み合わせ信号をアナログ信号に変換する前に、前記デジタル組み合わせ信号を修正することをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記デジタル−アナログ変換器(32)、前記増幅器(25)、前記トランスデューサ(2)および前記水晶(3)からなる群のコンポーネントの少なくとも1つにおける温度を測定することと、温度の影響を補償するために、前記デジタル組み合わせ信号をアナログ信号に変換する前に、前記デジタル組み合わせ信号を修正することとをさらに含む、請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
光の帯域幅に影響を及ぼすために、前記アナログ駆動信号をチャープすることをさらに含む、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
入力端にて入力光を受信し、かつ出力端から出力光を送信する水晶(3)に装着された少なくとも1つのトランスデューサ(2)を有する少なくとも1つの音響光学素子(1)と、前記音響光学素子(1)を通して送信される光を修正する、前記音響光学素子(1)を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットとを備えて構成される音響光学システムであって、
前記トランスデューサ(2)が、アナログ電子駆動信号を受信し、音波を発生し、かつこれら音波を前記水晶(3)に送信するように構成され、
前記駆動ユニットが、前記トランスデューサ(2)にて2つの異なる周波数の少なくとも2つの異なる音波を発生できるようなアナログ電子駆動信号に変換可能なデジタル組み合わせ信号を発生するためのデジタルデータ処理ユニット(29)と、前記デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器(32)と、前記アナログ電子駆動信号になるように、前記初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器(25、33)とを備えて構成される、
音響光学システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1つもしくは複数の特定の有用な波長か波長帯域の光をフィルタリングアウトすることによってか、または光を偏向する、すなわち、ある波長か波長帯域を選択的に偏向するかもしくは光ビーム全体を偏向することによって、光に影響を及ぼす効率的な方法を提供するための音響光学システムが周知である。
【0002】
音響光学素子が、様々な方法で、特に顕微鏡検査の分野で用いられる。例えば、広視野顕微鏡およびレーザ走査顕微鏡の両方において、結像される対象物を照明するための入射光として、ある波長の混合を含むある光を供給することが望ましい。画像の質を向上させるために、入射光ビームにおいて、色の混合、すなわち光の波長を調整することが有用であろう。
【0003】
共焦点走査顕微鏡検査の分野において、ある波長の強度を調整すること、またはある波長をオンもしくはオフにすることが特に興味深い。特に、共焦点顕微鏡検査または広視野顕微鏡検査のどちらでもよい蛍光顕微鏡検査の分野において、結像される対象物の所望の画像を生成するように検出および使用される光の蛍光放射を達成するために特定の波長で染料を励起することが重要である。多色画像を取得するために、対象物が異なる放射波長の染料で染色される場合に、いくつかの波長が、特に必要とされる。
【0004】
様々なタイプの顕微鏡検査において、例えば誘導放出抑制顕微鏡検査(STED)、すなわち、第1の波長の光が、蛍光団の励起用に使用され、一方で第2の波長の光が、より高い解像度の画像を取得するために、有効に励起されたスポットを狭めるように、励起しているスポットの一部における蛍光団の励起状態を抑制するために用いられる誘導放出抑制顕微鏡検査(STED)の分野で、1を超える波長が必要とされる。いくつかの別個の波長の光を用いる顕微鏡検査の他の分野は、ラマン顕微鏡検査、コヒーレント反ストークスラマン顕微鏡検査(CARS)およびSRS顕微鏡検査である。
【0005】
要約すると、広帯域光もしくは線スペクトル光または別個の波長のレーザ光のフィルタリング、偏向、およびビーム分割の様々な機能が、顕微鏡において音響光学素子によって実行されることが多い。かかる音響光学素子用の例として、音響光学可変フィルタ(AOTF)、音響光学変調器(AOM)、音響光学偏向器(AOD)、音響光学ビームスプリッタ(AOBS)、および音響光学ビームマージャ(AOBM)がある。
【0006】
顕微鏡検査の分野において用いられる全ての様々な音響光学素子のうち、音響光学可変フィルタ(AOTF)は、最も普通に用いられるが、しかしまたAOTFを含む音響光学ビームスプリッタ(AOBS)が、顕微鏡検査の分野において用いられる。これらのタイプの音響光学素子は、光全体に影響を及ぼす例えばAOM、AODおよび周波数シフタとは対照的に、特定の波長の光に影響を及ぼす。
【0007】
音響光学素子の基本構造には、水晶および水晶に装着されたトランスデューサが含まれる。トランスデューサは、典型的には30Mhz〜800Mhzの無線周波数範囲における電子信号を受信するように構成される。トランスデューサは、電子信号に従って物理的に収縮および拡張することによって、電子信号を音響信号に変換する。水晶は、音響信号に従って物理的に発振し、したがって特定の波長の光を選択的に偏向する光回折格子の光学的等価物を形成する。特にAOTFにおいて、水晶の特性は、各音響波長が、特定の光波長だけ、または特に例えば約3nmの狭い光波長帯域幅を偏向することに帰着し、一方でそれぞれの音響周波数に正確に相関する波長だけが100パーセント偏向されるのに対して、狭い3nm帯域内の隣接波長が、より低い割合、例えば50パーセントだけ偏向されることである。
【0008】
音響光学素子の典型的な使用には、トランスデューサを駆動する電子駆動信号を修正することと、したがってトランスデューサによって経時的に生成される音響信号、主に、信号強度を経時的に変化させるための、およびしたがって様々な所望の特定の波長における偏向された光の強度を経時的に変調するための振幅変調を修正することと、が含まれる。
【0009】
いくつかの周波数に同時に影響を及ぼすために、ただ1つの水晶およびただ1つのトランスデューサによっていくつかの波長に影響を及ぼすことが望ましい場合に、無線周波数範囲における電子信号は、1つの信号に組み合わされるかまたは重ね合わされなければならない。様々な電波周波数が、先行技術において、例えば、発振器周波数が電圧入力によって制御される電圧制御発振器(VCO)のような発振回路によって発生される。典型的に用いられる他のタイプの発振器は、位相ロックループ発振器(PLL)またはダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)である。これらの周波数発生器の全ては、それらがアナログ信号を発生し、次にこのアナログ信号が、前述のように、典型的には振幅変調されるという点で共通している。例えば、AOTFにおいて、周波数は、特定の波長に相関し、かつ周波数は、各波長に影響を及ぼすために、それぞれの周波数発生器を必要とし、波長の最大値は、周波数発生器の数によって決定される。それは、特に蛍光顕微鏡検査の分野において、重大な制約である。なぜなら、追加的な励起波長へ使用を拡張することが、それぞれの数の周波数発生器を設けることを必要とするからである。別の欠点は、非線形性を補償するのが難しいことである。
【0010】
波長ではなく、いくつかの無線周波数が組み合わされる場合、特にいくつかの周波数のアナログ電子信号が重ね合わされる場合、すなわち1つの組み合わせ信号に組み合わされる場合に、最大振幅は、組み合わされた信号の数と共に増加し、より程度の高い非線形性に帰着する。重ね合わせが強度を増加させるので、システムは、ますます非線形性の領域に入る。そうならこれは、多くの場合にクロストークと見なされる。なぜなら、異なる無線周波数が互いに影響を及ぼすようにユーザに見えるからである。それぞれの特定の周波数に関する結果は、1つの単一波長だけを用いることと比較して、より低い音響信号がトランスデューサによって発生されるということである。換言すれば、異なる波長のより多くの信号が重ね合わされるほど、それだけ個別波長の信号強度がある程度低下し、システムの非線形応答に帰着する。すなわち、発生される音波の強度は、電子信号強度の線形関数ではない。先行技術における全ての周波数が、個別周波数発生器によって発生され、次に振幅が個別振幅変調器によって変調されるので、かかるクロストークを補償するのは難しい。なぜなら、それは、それぞれの振幅変調器と組み合わせて他の周波数発生器による信号強度に関する情報の検出を必要とすることになるからである。それは、たとえかかる情報が検出されても、データ処理および次にそれぞれの個別振幅変調器に情報をフィードバックすることを必要とし、その結果、「実時間」補償は不可能であり、信号強度の検出、ならびに他の周波数発生器、すなわちそれらのそれぞれの振幅変調器と組み合わせた他の周波数発生器、および次にこの情報のデータ処理に起因する時間遅延を伴ってのみ可能である。
【0011】
その結果、先行技術において、比較的低強度の信号だけが重ね合わされ、増幅器およびトランスデューサの両方とも、線形領域においてのみこれらの信号を操作するために適切な大きさにされる。すなわち、増幅器およびトランスデューサの両方とも、比較的強力になるような大きさにされ、かつ線形領域内に留まるためには、それらのほんのわずかな能力でのみ操作される。これは、それらのより強力なコンポーネントのより高い価格ゆえに著しい費用劣位を有するだけでなく、高い構造次元、放散させる必要のある発生熱、高エネルギ消費、および不注意な過度の増幅という出来事の場合には音響光学素子の水晶を損傷または破壊さえする危険のような他の技術的困難を引き起こす。
【0012】
一般に、いくつかの重ね合わされた信号の場合に最大振幅をより低いレベルに維持する別の可能性は、それらを重ね合わせる前に互いに対して様々な信号の位相を制御すること、すなわち、好ましくは、他の信号のいずれかまたはいくつかとは異なる位相で組み合わされる各信号を有することである。再び、周波数発生器およびそれらのそれぞれの振幅変調器が、先行技術では個別の素子であるので、これは、様々な位相の検出、および次にそれらの調整を必要とすることになろうが、それは、実時間で行うことはできず、高価な検出およびデータ処理ユニットを必要とすることになろう。
【0013】
先行技術における別の問題は、特に、異なる波長の光に影響を及ぼす異なる使用法のためにより多くの周波数を追加するための柔軟性が望ましい場合における、多数の周波数発生器および振幅変調器のような過剰な数の電子素子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、2以上の信号を処理できる音響光学システム用のコストを低減することである。
【0015】
別の目的は、1つの駆動信号に組み合わされる発生された信号の様々な周波数に関して一層の柔軟性を可能にすることである。
【0016】
本発明の別の目的は、音響光学システムのエネルギ消費を低減することである。
【0017】
本発明の別の目的は、電子コンポーネントの総数を低減することである。
【0018】
本発明の別の目的は、電子コンポーネントをサイズおよび能力において低減し、コストをさらに低減し、かつ過剰寸法のコンポーネントに起因する技術的問題を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の前述および他の目的は、入力端において入力光を受信し、かつ出力端から出力光を送信する水晶に装着された少なくとも1つのトランスデューサを有する少なくとも1つの音響光学素子であって、トランスデューサが、アナログ電子駆動信号を受信し、音波を発生し、かつこれらの音波を水晶に送信するように構成された少なくとも1つの音響光学素子と、音響光学素子を通して送信される光を修正する音響光学素子を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットであって、トランスデューサにおいて2つの異なる周波数の少なくとも2つの異なる音波を発生できるようなアナログ電子駆動信号に変換可能なデジタル組み合わせ信号を発生するためのデジタルデータ処理ユニットと、デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器と、前記アナログ電子駆動信号になるように初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器と、を含む前記駆動ユニットと、を含む音響光学システムにより、本発明の第1の態様に従って達成される。
【0020】
本発明の前述および他の目的は、入力端において入力光を受信し、かつ出力端から出力光を送信する水晶に装着された少なくとも1つのトランスデューサを有する少なくとも1つの音響光学素子であって、トランスデューサが、アナログ電子駆動信号を受信し、音波を発生し、かつこれらの音波を水晶に送信するように構成された少なくとも1つの音響光学素子と、音響光学素子を通して送信される光を修正する音響光学素子を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットであって、デジタル組み合わせ信号を発生するためのデジタルデータ処理ユニットであって、少なくとも2つの初期デジタル信号を計算および発生するためのデジタル周波数計算ユニットであって、2つの初期デジタル信号のそれぞれが、トランスデューサによって特定の音響周波数を発生するための基礎を形成するデジタル周波数計算ユニット、および少なくとも2つの初期デジタル信号を1つの単一デジタル組み合わせ信号に組み合わせる重ね合わせユニットを含むデジタルデータ処理ユニットと、デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器と、前記アナログ電子駆動信号になるように、初期アナログ駆動信号を増幅するための少なくとも1つの増幅器と、を含む駆動ユニットと、を含む音響光学システムにより、本発明の第2の態様に従って達成される。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、前述の目的は、本発明の前述の音響光学システムおよびさらに結像される対象物にわたって光を走査するためのスキャナ、ならびに対物レンズを含む共焦点顕微鏡であって、スキャナが、対物レンズの上流に設けられ、かつ少なくとも1つの音響光学素子から出る修正された光を受信するように構成され、対物レンズがスキャナの下流に設けられた共焦点顕微鏡と、2つのデジタル信号を重ね合わせる前に初期デジタル信号の少なくとも1つを修正するための修正ユニットと、によって達成される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、前述の目的は、水晶に装着された少なくとも1つのトランスデューサを有する少なくとも1つの音響光学素子と、音響光学素子を通して送信される光を修正する音響光学素子を駆動する少なくとも1つのアナログ電子駆動信号を発生するための駆動ユニットであって、デジタル組み合わせ信号を発生するための少なくとも1つのデジタルデータ処理ユニットと、デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換する少なくとも1つのデジタル−アナログ変換器と、前記アナログ電子駆動信号になるように初期アナログ駆動信号を増幅するための増幅器と、を含む駆動ユニットと、を含む音響光学システムを操作する方法であって、2つのそれぞれのアナログ信号を表すビットおよびバイトシーケンスからなる少なくとも2つの初期デジタル信号をデジタルフォーマットで計算することと、少なくとも2つの初期デジタル信号を1つの単一デジタル組み合わせ信号に重ね合わせることと、デジタル組み合わせ信号を初期アナログ駆動信号に変換することと、アナログ電子駆動信号になるように初期アナログ駆動信号を増幅することと、音波を生成するためにトランスデューサを操作するように、アナログ電子駆動信号をトランスデューサに送信することと、を含む前記方法によって達成される。
【0023】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、修正ユニットは、少なくとも1つのトランスデューサによって、異なる位相の特定の音響周波数を発生するための基礎を形成する2つの修正されたデジタル信号へと2つの初期デジタル信号を修正するように構成される。特に、2つを超える初期デジタル信号を組み合わせる場合に、個別信号の位相を互いに対してシフトすることは、最大振幅を低く保つことに役立つ。互いに対する個別信号の位相シフトが非常に有益である他の理由は、セグメント化されたトランスデューサの場合である。いくつかの用途にとって、少なくとも2つの個別信号の周波数が同じであり、一方で例えばセグメント化されたトランスデューサの場合に、位相が互いに対してシフトされている場合には有益でさえあり得る。しかしながら、ほとんどの場合に、トランスデューサを駆動するために1つの信号に組み合わされる個別信号の周波数は、例えば異なる波長の光に影響を及ぼすように、異なる周波数である。
【0024】
個別デジタル信号の振幅を修正することが好ましいけれども、それらを、経時的に変化する振幅に対して最初から計算することが可能である。すなわち、修正された振幅である。さらに、増幅器によって振幅を修正することが可能である。しかしながら、増幅器によって振幅を修正することだけでは、振幅をデジタル的に修正することほど有利ではない。なぜなら、デジタル変調は、信号がアナログ信号に変換される前でさえ、より速く実時間で達成できるからである。他方で、デジタル−アナログ変換器を出た信号が十分に強いか、またはデジタル−アナログ変換器が内蔵増幅器を含む場合に、システムはまた、他の場合にはデジタル−アナログ変換器の下流に設けられることになる別個の増幅器なしに操作可能である。
【0025】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、デジタルデータ処理ユニットには、さらに、アナログ電子駆動信号に依存する音響応答における非線形性を補償するために信号を修正するための補償ユニットが含まれる。非線形性は、増幅器、トランスデューサおよび結局は水晶を通してインピーダンスを調整するプリント回路板上で、デジタル−アナログ変換器から信号列全体において発生する可能性がある。補償が、信号をアナログ信号に変換する前にデジタル的に実行されるので、かかる補償は、実時間において実行することができる。システムの非線形応答の主な理由は、いくつかの周波数のいくつかの信号を重ね合わせて、各個別周波数用の信号強度をある程度低減することである。アナログ電子駆動信号をトランスデューサに供給する前に、デジタル−アナログ変換器の背後または回路基板の背後においてさえ補償に備えることが可能であろう。補償の最終目標は、所望の音響応答を生成すること、すなわち、光に影響を及ぼす、例えば有用なビームとして特定の波長または波長帯域幅を偏向する所望のレベルにとって望ましい強度の音波を供給することである。
【0026】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、システムには、さらに、デジタル−アナログ変換器、増幅器、AO水晶およびトランスデューサの温度の少なくとも1つを測定し、かつアナログ電子駆動信号における、温度に基づいた偏差を補償するために、温度に基づいた制御信号を補償ユニットに供給する温度センサが含まれる。温度に対する偏差のかかる補償は、クロストークを克服する補償に加えて実行することができる。
【0027】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、システムには、ただ1つの音響光学素子の水晶に両方とも装着された少なくとも第1および第2のトランスデューサであって、第1のトランスデューサが、第1の周波数の第1の音響信号を音響光学素子の水晶に送信するように構成され、第2のトランスデューサが、第2の周波数の第2の音響信号を音響光学素子の水晶に送信するように構成された少なくとも第1および第2のトランスデューサが含まれる。重ね合わせることができ、かつ第1および第2のトランスデューサに送信できる信号の数は、基本的に無制限であるが、しかし実際には、非線形性ゆえに、いくつかの制約を見出すことが可能である。全く同一の水晶上に2つの異なるトランスデューサを設けることは、上記のような補償に加えて、この問題の回避を支援することができる。
【0028】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、音響光学システムには、水晶および水晶に装着されたトランスデューサをそれぞれ有する少なくとも第1および第2の音響光学素子であって、第1の音響光学素子のトランスデューサが、第1の周波数の第1の音響信号を第1の音響光学素子の水晶に送信するように構成され、第2の音響光学素子のトランスデューサが、第2の周波数の第2の音響信号を第2の音響光学素子の水晶に送信するように構成された少なくとも第1および第2の音響光学素子が含まれる。このシステム、例えば、2つの音響光学素子が、互いに独立して駆動される必要がある場合に、有用になり得る。したがって、本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、第1の音響光学素子は、第2の音響光学素子と異なる。
【0029】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの音響光学素子は、AOTF、AOM、AOD、AOBS、AOBM、および周波数シフタからなる群から選択される。特に、本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、第1の音響光学素子はAOTFであり、第2の音響光学素子はAOBSである。
【0030】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、音響光学素子によって修正される光は、波長の広域連続スペクトルを発生する広帯域光源によって発生される。好ましくは、広帯域光源は、スーパーコンティニューム光源(supercontinuum light source)、短パルスレーザ、スーパールミネセンス光源(superluminescence light source)、およびLED光源からなる群の1つである。また、日光が、高輝度ビームにくくることができる選択肢である。好ましい実施形態に従って光の帯域幅をフィルタリングアウトするために、アナログ電子駆動信号は、光の帯域幅に影響を及ぼすようにチャープされる(chirped)。
【0031】
本発明による音響光学システムの好ましい実施形態によれば、音響光学素子によって修正される光は、1つもしくは複数の特定の波長または1つもしくは複数の狭い波長帯域の少なくとも1つにおける光を発生する線スペクトル光源によって発生される。
【0032】
本発明による顕微鏡の好ましい実施形態において、この顕微鏡には、音響光学可変フィルタ(AOTF)である第1の音響光学素子と、入射光の方向においてAOTFの下流に、および結像された対象物から放射または反射された光の方向においてAOTFの上流に設けられた音響光学ビームスプリッタ(AOBS)である第2の音響光学素子であって、AOBSが、対象物から放射または反射された光を、結像された対象物の画像を生成するために検出器に送信される第1の有用なビームおよび廃棄される第2の不用ビームに分割する第2の音響光学素子が含まれる。かかる顕微鏡は、例えば走査顕微鏡、特に蛍光走査顕微鏡であってもよいが、しかしこの好ましい実施形態はまた、広視野顕微鏡またはSTED顕微鏡などの特に高解像度の顕微鏡に適用することができる。
【0033】
トランスデューサを駆動するための発生されたアナログ電子信号は、典型的には高調波であるが、しかし同様に異なる形状、例えば矩形信号であってもよい。矩形信号は、最大強度におけるただ1つの特定の波長ではなく、最大強度を備えた、例えば3nmの特定の波長の帯域幅と、例えばわずか50パーセントのより低い強度におけるその狭い帯域内の他の波長と、をフィルタリングするという利点を提供する。その狭い帯域幅内の全ての波長に対して最大強度を受信することは、特定の用途が、例えば特定の染料を励起するために、基本的に十分な所望の効果で、ある帯域幅を許容する場合には有益であり得る。そのような場合に、帯域幅全体の100パーセントを受信することが望ましい。なぜなら、それが、有用な光の総強度を増加させるからである。
【0034】
デジタル−アナログ変換器用のクロック周波数は、ナイキスト周波数より高い必要がある。デジタル周波数計算ユニット、デジタル修正ユニット、重ね合わせユニット、および任意選択の補償ユニットを含むユニットの群全体を好ましくは実現可能なデジタルデータ処理ユニットは、計算クロック周波数が並列にスケジューリングされるように構成される。トランスデューサは、典型的には、50〜150MHzの周波数範囲で操作されるが、しかし10MHz〜2GHzほどの広さの変化があってもよい。このユニットのデジタル周波数計算ユニット、デジタル修正ユニット、重ね合わせユニット、および任意選択の補償ユニットは、必ずしも全く同一のデジタルデータ処理ユニットに設ける必要はないが、しかしそれは、電子コンポーネント数を低減するための、および計算クロック周波数を並列処理するための特に好ましい実施形態である。
【0035】
本発明による顕微鏡の好ましい実施形態において、検出器は、結像される対象物の画像を生成するコンピュータに接続される。
【0036】
本発明による顕微鏡の好ましい実施形態において、コンピュータは、スキャナに送信されるフィードバック信号を発生する。
【0037】
本発明による顕微鏡の好ましい実施形態において、コンピュータは、デジタルデータ処理ユニットに接続され、かつそのデジタルデータ処理ユニットに制御信号を送信するように構成される。
【0038】
音響光学システムを操作する本発明の好ましい方法には、デジタル組み合わせ信号における最大振幅を最小値に低減するように2つの信号間の位相シフトを計算することと、少なくとも2つの初期デジタル信号の位相を互いに対して修正し、その後、それに応じて組み合わせ信号に重ね合わせることと、が含まれる。
【0039】
音響光学システムを操作する本発明の好ましい方法には、トランスデューサにおける非線形性を補償するために、デジタル組み合わせ信号をアナログ信号に変換する前に、デジタル組み合わせ信号を増大させることが含まれる。
【0040】
音響光学システムを操作する本発明の好ましい方法には、デジタル−アナログ変換器、増幅器、トランスデューサ、および水晶の少なくとも1つにおける温度を測定することと、温度の影響を補償するために、デジタル組み合わせ信号をアナログ信号に変換する前にデジタル組み合わせ信号を増大させることと、が含まれる。
【0041】
音響光学システムを操作する本発明の好ましい方法には、光の帯域幅に影響を及ぼすために、アナログ駆動信号をチャープすることが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の第1の実施形態のブロック図を示す。
【
図2】デジタル修正ユニットをさらに含む本発明の第2の実施形態のブロック図を示す。
【
図3】デジタル修正ユニットおよびデジタル補償ユニットをさらに含む本発明の第3の実施形態のブロック図を示す。
【
図4】アナログ電子信号の強度にわたって電子および/または音響システムの応答における非線形性を表す図を示す。
【
図5】
図3に示す実施形態に従って、トランスデューサを制御する実線のアナログ電子信号、および補償ユニットによって補償された補償アナログ電子信号の図を示す。
【
図6】本発明における代替の第3の実施形態のブロック図を示す。
【
図7】本発明における代替の第4の実施形態のブロック図を示す。
【
図8】共焦点走査顕微鏡において第4の実施形態を実現する、本発明による顕微鏡を示す。
【
図9】先行技術による第1の音響光学素子の概略透視図を示す。
【
図10】
図9に示す音響光学素子の概略側面図を示す。
【
図11】先行技術によるセグメント化されたトランスデューサを含む第2の音響光学素子の概略透視図を示す。
【
図13】先行技術による音響光学素子を用いる共焦点顕微鏡の構造を表すブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図9は、先行技術による第1の音響光学素子1の概略的透視図を示す。音響光学素子1には、水晶3に装着されたトランスデューサ2が含まれる。光は、矢印4によって概略的に示すように水晶3の中へ透過され、2つの別個のビームで水晶を出る。音響光学システムは、任意のタイプとすることができるが、下記において、特にAOTFが、特に顕微鏡において広く用いられる1つの重要なタイプの音響光学素子として、好ましい実施形態で示されている。AOTFにおいて、特定の波長、または例えば3nmの帯域幅を備えた狭い波長帯域の有用なビーム5、および偏向されずに水晶を出る不用ビーム6が発生される。電子信号が、いくつかの電子コンポーネント9を含む電子回路基板8へと、同軸ケーブル7を介して送信される。電子回路基板8において、インピーダンスの調整が、同軸ケーブル7と異なるインピーダンスを含むトランスデューサ2に電子信号を送信する前に行われる。第1のボンドワイヤ11が、トランスデューサ2の陰極に接続され、第2のボンドワイヤ12が、トランスデューサ2の陽極に接続される。この実施形態において、ボンドワイヤ11および12は、電子コンポーネントを含む中間回路基板を介して同軸ケーブル7に接続される。具体的には、第1のボンドワイヤ11は、同軸ケーブルの外側導体に接続され、第2のボンドワイヤ12は、同軸ケーブル7の内側導体に接続される。トランスデューサに送信されたアナログ電子信号に従って、音波が、水晶3に送信されて、次のような方法、すなわち、光学格子が、水晶内で効果的に発生され、特定の音響波長に相関する特定の波長の光を水晶3内で偏向するような方法で水晶を発振させ、その光を、矢印5によって示すように有用なビームとして出力する。
【0044】
図10は、音響光学素子1、特に水晶3、および水晶3に装着されたトランスデューサ2の側面図を示す。トランスデューサ2には、実質的に3つの層、すなわち水晶3に直接装着された金属層の形態をした、トランスデューサ2の陰極13と、水晶3から最も離れた層である別の金属層の形態をした陽極14と、陰極13と陽極14との間に挟まれた圧電層15と、が含まれる。
図9に関連して説明したように、ボンドワイヤ11は、陰極13に接合され、一方でボンドワイヤ12は、陽極14に接合される。圧電層15の圧電材料は、例えばニオブ酸リチウムとすることができ、一方で水晶が作られる材料は、二酸化テルルとすることができる。
【0045】
図11は、
図9に示す実施形態の変形、すなわち、トランスデューサがセグメント化され、かつこの実施形態では2a、2b、2c、2dおよび2eで示された5つのトランスデューサセグメントを含むという点における変形を示す。したがって、いくつかの同軸ケーブル7ならびにボンドワイヤ11および12が設けられる。セグメント化されたトランスデューサを用いることによって、トランスデューサの駆動に関して、例えば、異なる位相の信号を用いたセグメントの駆動に関して一層の柔軟性が可能になる。
【0046】
図12は、
図10と似ているが、しかし
図11に示すセグメント化された音響光学素子の側面図を示す。図示のように、両方の層、すなわち陰極層13a、13b、13c、13d、13eおよび陽極層14a、14b、14c、14d、14eは、セグメント化され、一方でセグメント化された電極層間に挟まれた圧電層15は、セグメント化されない。セグメント化されたトランスデューサを設けるために、陰極層13および陽極層14の一方をセグメント化する必要があるだけであることに留意されたい。しかしながら、
図12に示すように、それらの両方をセグメント化することも同様に可能である。セグメント化されたトランスデューサが、例えば、本発明と共通の発明者による米国特許出願公開第2010/0053725号明細書に示されており、その米国特許出願の内容は、これにより、参照によって援用される。
【0047】
図13は、少なくとも1つの音響光学可変フィルタ(AOTF)および音響光学ビームスプリッタ(AOBS)を用いる共焦点顕微鏡の構造を概略的に示す。制御ユニット16が、制御信号を発生して、周波数発生器17を制御する。レーザ光源18が、レーザ光をAOTF19に送るが、AOTF19は、共焦点顕微鏡の光学系を通して混合されて対物レンズ20を通して対象物21に至る入射光として望ましい波長の光を切り離す。対象物21から反射または放射された光は、逆に対物レンズ20を通ってAOBSに移動し、そこで有用なビームが、対象物の画像を生成するための望ましい光を検出する検出器22に到達できるようにされる。
【0048】
図14は、先行技術による音響光学システムを示し、特に、音響光学素子を駆動するためのアナログ電子信号を発生する先行技術の駆動ユニットの構造を示す。この先行技術の例では、8つの周波数発生器FG1−FG8が設けられて、8つの振幅変調器AM1−AM8によって振幅変調される信号を供給し、8つの周波数発生器FG1−FG8および8つの振幅変調器AM1−AM8からの信号は、集合的に23で示されたアナログ乗算器によって乗算される。アナログ乗算器を出た信号は、重ね合わせユニット24において1つの単一組み合わせ信号に組み合わされ、この組み合わせ信号は、増幅器25に送信され、増幅器25は、例えば
図9−12でより詳細に説明したように、組み合わせ信号を音響光学素子に送信する。
【0049】
図9−12における音響光学素子の基本特性および構造、
図13における共焦点顕微鏡の基本構造、ならびに音響光学素子を駆動するためのアナログ電子信号を供給する、
図14における先行技術駆動装置の設計および機能を上記で説明したので、下記では本発明の実施形態を説明する。
【0050】
本発明の第1の実施形態を
図1に示す。データ処理ユニット35内のデジタル周波数計算ユニット26が、第1のデジタル信号27および第2のデジタル信号28を計算する。両方のデジタル信号とも、特定の周波数、振幅、および位相のアナログ信号を表す、デジタルフォーマット形態のビットおよびバイトシーケンスによって表されるが、しかし特に必ずしも高調波発振ではない。データ処理ユニット内で既に計算された初期デジタル信号が、異なる位相および異なる振幅であることもまた可能である。さらに、2つの異なる信号27および28は、特定の使用、例えば特定のタイプ顕微鏡検査に依存し、必要に応じて任意の数になり得る複数の信号、例えば3、4または5つの異なる信号を単に表していると理解されたい。
【0051】
次に、少なくとも2つの信号は、重ね合わせユニット30において重ね合わされる。再び、これは、両方のデジタル信号のビットおよびバイトシーケンスを加算することによって、デジタル的に実行される。重ね合わせユニットによって発生されるデジタル信号は、重ね合わせアナログ信号31を表す。しかしながら、たとえこの重ね合わせアナログ信号31をデジタル的に表しても、デジタル重ね合わせユニットからの出力が、やはりデジタルビットおよびバイトシーケンスであり、デジタル−アナログ変換器32において処理された後で重ね合わせデジタル信号31になるだけであることに留意されたい。増幅器33は、重ね合わせアナログ信号31を増幅する。次に、増幅された信号は、回路基板8を介して、音響光学素子15のトランスデューサ2に送信される。音響光学素子の構造は、
図9−12で詳細に説明した。
【0052】
図1に示す実施形態を、
図14で説明したような先行技術と比較すると、本発明が、多くの利点を提供することが明白になる。第1に、データ処理ユニット26によって発生することができ、次に重ね合わせユニット30によって重ね合わせることができる異なる波長および周波数の信号数は、基本的に無制限であり、デジタル−アナログ変換器32のダイナミックレンジによってか、または1つの信号に重ね合わされる異なる周波数における個別の計算された信号間のクロストークを制限したいという望みによって制限されるだけである。クロストークとして知覚される非線形性の問題を克服することは、
図3に示す本発明の実施形態において取り組まれる。さらに、異なる周波数を表すデジタル信号が計算されるので、周波数は、自由に選択することができる。すなわち、周波数は、ただ1つの特定の周波数をそれぞれ発生できる
図14に示す周波数発生器FG1−FG8によって制限されない。周波数の自由選択は、例えば、特定の顕微鏡を製造する場合に考慮されなかった可能性がある異なる染料または新しく開発された染料を用いるために、蛍光顕微鏡用に特に望ましい。
【0053】
より高い柔軟性に加えて、電子コンポーネント数を著しく低減できることがまた明白になる。すなわち、
図14による先行技術の例に示すように、8つの周波数発生器FG1−FG8、8つの振幅変調器AM1−AM8、8つのアナログ乗算器23、および1つの重ね合わせユニットを有する代わりに、本発明には、ただ1つのデータ処理ユニット、すなわち1つのデジタル周波数計算ユニット、1つのデジタル重ね合わせユニット、および1つのデジタル−アナログ変換器が実現されるただ1つのデータ処理ユニットが含まれる。電子コンポーネント数の著しい低減は、これらのコンポーネント用のコストを節約することとは別に、駆動ユニット全体のエネルギ消費およびその全体的な複雑さを低減する。
【0054】
データ処理ユニットとして、プログラマブル論理を含むフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)ユニットを用いるのが望ましい。この場合に、同じFPGAユニットにおける
図3に示す実施形態を参照することによって以下でより詳細に説明するように、加算器、乗算器およびルックアップテーブルをそのFPGAユニットに実現することによって、デジタル周波数計算ユニット、修正ユニット、および重ね合わせユニット、ならびに存在する場合には補償ユニットを実現し、この組み合わせにより電子コンポーネント数をさらに低減することが容易に可能である。代替において、DSPユニットまたは特定用途向け集積回路(ASIC)などの異なる電子コンポーネントを用いることもまた可能である。
【0055】
図2に示す本発明の実施形態において、さらに、デジタル修正ユニット29が、デジタル周波数計算ユニット26とデジタル重ね合わせユニット30との間に設けられる。2つの初期デジタル信号が発生された後で、これらの信号は修正ユニット29に送信され、そこにおいて一方または両方の初期デジタル信号の振幅か、位相か、または振幅および位相の両方が修正される。
図1に示す実施形態が例示するように、かかる修正ユニット29は、例えばデジタル周波数計算ユニットが、異なる信号を計算し、それらを修正可能な場合には、絶対に必要ではないが、しかし好ましい実施形態によれば、修正ユニットにおいて振幅を修正することによって、特に、電子アナログ信号および結局は発生される音響信号の強度が影響され、したがって特定の波長の光が影響されるかどうか、およびどれほど強く影響されるかが達成される。位相を修正することは、主として重ね合わせ信号の最大振幅に影響を及ぼす。位相を修正することの別の利益は、
図11および12で説明したようなセグメント化されたトランスデューサにとって、全てのセグメントが同じ位相で駆動されることを保証することであり得る。修正が、やはりデジタル的に実行されること、すなわち、ビットおよびバイトシーケンスに帰着し、音響光学素子のトランスデューサを駆動するために結局は必要とされるアナログ信号にまだ帰着するのではないことに留意されたい。修正は、実時間で、すなわち計算ユニットが可能にする限り速く、かつトランスデューサを駆動する前に実行される。すなわち、修正は、どんな閉ループ制御にも起因するであろうような時間遅延にさらされない。
【0056】
図3に示す実施形態は、さらに補償ユニット34が設けられる点で、
図1および2に示す実施形態と異なる。他の全てのコンポーネントは、
図1に示す実施形態と比較して同一である。さらに、修正ユニットからもたらされる信号27、28は、表示目的で、両方の信号の位相が180度だけオフセットされ、一方で両方の信号27、28の振幅および周波数が同じであるように、位相およびその振幅の両方において修正された1つの信号として示される。再び、信号がデジタルであること、すなわち数列の形態を有し、一方で表示目的で図面に示された信号が、この数列が表すアナログ信号であることを理解されたい。
【0057】
補償ユニットの目的は、デジタル−アナログ変換器DAC、増幅器、トランスデューサ2、および水晶のような様々なコンポーネントにおいて、より高い信号強度で発生する非線形性を回避または少なくとも縮小することであり、かつまた音響光学素子の水晶における温度差またはデジタル−アナログ変換器および増幅器の温度などの非線形性の他の原因を考慮する。温度は、必要とされる無線周波数に主に影響を及ぼすが、しかしまた必要とされる信号強度にも影響を及ぼす。
【0058】
非線形性は、
図4に示す図に表されている。理想的には、トランスデューサにおいて発生される音響信号は、デジタル−アナログ変換器32において発生され、かつ増幅器33によって増幅されるアナログ信号の線形関数である。しかしながら、特に、いくつかの信号が重ね合わされる場合に、重ね合わされる個別信号の位相が、最大振幅を低く維持するように制御されない場合にはさらに一層、トランスデューサは、望ましく、かつ理論的に予想されるよりも低い強度の信号を生成する。望ましい線形グラフが、
図4に破線で示され、一方で発生される実際の音響信号は、低い強度において短い距離にわたってのみ、望ましい線形グラフと一致する。補償ユニット34は、この非線形性を補償することができ、
図5に破線において示された経時的なデジタル−アナログ変換器出力によって示すように、デジタル−アナログ変換器出力信号を増大させることができる。
図5における実線は、補償が実行されていない場合における出力を示す。
図5から明白になるように、補償は、特に振幅が高い場所で起こり、したがって音響信号は、
図4に破線で示す理想的な線形グラフより下に留まる。デジタル補償ユニットの好ましいバージョンにおいて、非線形性の知識(
図4を参照)に基づいた補正表が、補正用に使用されるが、しかし計算に基づいた補正法も同様に可能である。補償ユニットは、初期アナログ駆動信号への、デジタル−アナログ変換器における変換の前に、信号をデジタル的に補償し、かつ過大なトランスデューサおよび過大な増幅器を回避できるようにする。過大サイズの回避は、より小さく、したがって低コストの音響光学素子の使用、より小さな増幅器およびデジタル−アナログ変換器の使用を可能にして一層のコスト削減を結果としてもたらし、かつ電子コンポーネントに関する著しい節約とは別に、これらのコンポーネントのエネルギ消費もまた削減する。これらの利点とは別に、より小さな増幅器の他の利点は、特定の使用のためのシステム設定中に音響光学素子を調整している場合に、不注意な高増幅による、音響光学素子における水晶の損傷に対する一層の安全性である。また、電子コンポーネントの構造寸法がより小さく、それは、特に、より小さな増幅器ゆえの機械的な設計上の利点を提供する。また、設計は、コンポーネントを削減することによって単純化され、熱放散を達成する。
【0059】
本発明の代替実施形態を
図6に示す。全ての機能素子、すなわちデジタル周波数計算ユニット26、修正ユニット29、デジタル重ね合わせユニット30、および設けられる場合には補償ユニット34を含むデジタルデータ処理ユニットである。
図1−3に示す実施形態とは対照的に、
図6による音響光学素子において用いられる水晶3には、3つのトランスデューサ2a、2bおよび2cが含まれ、各トランスデューサ2a、2bおよび2cに送信された信号は、それぞれの個別デジタル−アナログ変換器DAC32a、32bおよび32c、ならびにそれぞれの個別増幅器33a、33bおよび33cによって変換される。全く同一の水晶3上に設けられた個別のトランスデューサ2a、2bおよび2cに送信される信号は、重ね合わせ信号または個々の信号であってもよい。
【0060】
本発明の別の実施形態を
図7に示す。
図6に示す実施形態と比較すると、1つの単一水晶上に3つのトランスデューサを設ける代わりに、3つの異なる音響光学素子1a、1bおよびlcが設けられ、それぞれは、それぞれ別個のDAC32a、32bおよび32cならびに増幅器33a、33bおよび33cによって駆動される。
【0061】
図8は、顕微鏡全体、ここでは特に共焦点顕微鏡の概略図を示す。線スペクトル光源18が、入射光を発生し、この入射光は、音響光学可変フィルタAOTFの形態をした音響光学素子によってフィルタリングアウトされる。次に、所望の波長または所望の波長帯域幅の有用な光ビームが、スキャナ36および対物レンズ20を通して対象物21上に送信される。蛍光走査顕微鏡の場合に、蛍光は、対象物21から放射されて混合され、対物レンズを通して逆に音響光学ビームスプリッタに入るが、この音響光学ビームスプリッタは、画像を生成するための有用な光ビームを偏向し、この有用な光ビームを検出器37に送る。検出器37は、コンピュータ38に接続され、コンピュータ38は、一方では線39を通して制御信号を逆にスキャナ36に送信し、他方では所望の波長および強度を示す信号を、デジタルデータ処理ユニット35に供給する。デジタルデータ処理ユニット35は、
図1−3に示す実施形態を参照して詳細に説明したように働く。音響光学ビームスプリッタが2つの音響光学可変フィルタAOTFを含むので、デジタル−アナログ変換器とそれぞれの増幅器の2つの組み合わせ40b、40cが、例えば
図7に示す実施形態でもまた説明されるように、この実施形態において設けられる。デジタル−アナログ変換器とそれぞれの増幅器の別の組み合わせ40aが、アナログ電子駆動信号を、入射光をフィルタリングするAOTFに供給するために設けられる。この実施形態において、様々なセンサが設けられ、温度変動に対する追加的な補償を実行するための信号を、それぞれのデータ線41、42、43を介してデジタルデータ処理ユニット35に供給する。データ線41は、光源18からの温度信号を送信し、データ線42は、入射光をフィルタリングするAOTFからの温度信号を送信し、データ線43は、デジタル−アナログ変換器とそれぞれの増幅器の組み合わせ40aからの温度信号を、デジタルデータ処理ユニット35に送信する。
【0062】
図8に示す顕微鏡の変形、例えば、広視野光学顕微鏡または広視野蛍光顕微鏡が望ましい場合にスキャナを削除することが可能である。共焦点走査顕微鏡において、AOBSは、二色もしくは中性フィルタで取り替えてもよく、かつ/または様々なAOTF/AOMは、異なるレーザ/レーザ線用に同時に用いてもよい。
【0063】
例示目的だけで実施形態を説明したことを理解されたい。本発明の範囲から逸脱せずに、多くの修正および変形が可能である。