特許第5934705号(P5934705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934705
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20160602BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F04C29/00 G
   F04C18/02 311P
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-517523(P2013-517523)
(86)(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公表番号】特表2013-531763(P2013-531763A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】GB2011050947
(87)【国際公開番号】WO2012004579
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】1011524.4
(32)【優先日】2010年7月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】コリー クライヴ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キナード
(72)【発明者】
【氏名】ベドウェル ディヴィッド
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第01331166(GB,A)
【文献】 特開2009−186013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベアリング担持体により担持されたベアリングによって回転可能に支持される軸を備え、前記ベアリング担持体は、ポンプハウジングに対して固定される概ね半径方向外側部分と、ベアリングに対して固定される概ね半径方向内側部分とを有し、前記ベアリングの半径方向の移動を抑制し、旋回スクロールと固定スクロールとの間の半径方向の整列を維持するために、該半径方向内側部分と半径方向外側部分との間において、半径方向に対して堅固であり、軸方向には柔軟とされ、前記ベアリングの軸方向の移動を許容するようにしたことを特徴とするスクロールポンプ。
【請求項2】
前記ベアリング担持体が、前記ベアリングに第1軸方向の軸方向力を付加し、ベアリングの第2軸方向の軸移動に抵抗するように、初期荷重を付与されたことを特徴とする請求項1に記載されたスクロールポンプ。
【請求項3】
前記ベアリング担持体が、前記軸方向の初期荷重を付与するために、内向き方向に付勢されている請求項2に記載されたポンプ。
【請求項4】
前記軸方向の初期荷重を付与するために、ハウジングと前記ベアリング担持体の内側部分の1つ又はベアリングとの間に置かれたバネを有することを特徴とする請求項2に記載されたスクロールポンプ。
【請求項5】
前記ベアリング担持体が、半径方向内側部分と半径方向外側部分との間において、半径方向に堅固であり、軸方向には柔軟である中間部を有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたスクロールポンプ。
【請求項6】
前記中間部が、該ベアリング担持体を貫通する複数の穴によって間隔をもって位置させられた、概ね半径方向に延びる複数の支持部を有するものである請求項5に記載されたスクロールポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプに関し、特に、限定する意味ではないが、スクロールポンプと、それに用いられるベアリング担持体に関する。本発明は、例えば電気モータのような、他の用途も見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
スクロールポンプは、固定スクロール及び旋回スクロールを有する。旋回スクロールは、駆動軸の偏心軸部によって駆動され、固定スクロールに対して旋回する。駆動軸はモータによって駆動される。該駆動軸が回転すると、固定スクロールに相対している旋回スクロールに旋回運動が与えられ、スクロール機構の入口から出口に流体をポンプ圧送する。
【0003】
先行技術によるスクロールポンプの一例が、図6に詳細に示される。分かり易く示すために固定スクロールは省略されている。該ポンプは、同心軸部104と偏心軸部106とを有する駆動軸102を備える。該駆動軸は、ポンプハウジング112に固定された第1部分110と、同心軸部に固定された第2部分114とを備えたモータ108により駆動される。
【0004】
この同心軸部104は、第1ベアリング116と第2ベアリング118とによって支持される。第2ベアリング118が、偏心軸部に対して旋回スクロール120を支持し、相対的な角度方向運動を可能にし、該軸が回転することによって、旋回スクロールの偏心旋回動作が行われる。
【0005】
第1ベアリング116は、軸102に固定される内輪122と、ベアリング担持体126に接して配置される外輪124とを有する。該ベアリング担持体は、ハウジングの一部を構成するものでもよく、又はハウジングに対して取り付けられるものでもよい。多数のボール128が、ベアリング担持体に対する軸の回転を可能にする。
【0006】
締結部材130が、同心軸部の半径方向に延びる肩部に対して所定位置に内輪122を締結しており、該内輪は、半径方向と軸方向の両方で駆動軸に対して固定される。外輪は、ベアリング担持体126に対して軸方向にスライドすることができ、例えば熱により、軸が軸方向に膨張及び縮小できるようにする。また、このスライド移動は、部品の公差に起因する軸方向部品の寸法変動に対しても該機構が順応できるようにする。バネ部材132が、ベアリング担持体の半径方向内向き舌部134と外輪との間に配置され、外輪及び軸を軸方向(図6の右方向)に付勢する。この初期荷重システムによって発生する、線136で示す力が、該軸の軸方向移動する抵抗力となり、軸の前後移動量を減少させる。同様な、しかし補完的な力が、第2ベアリング118に発生する。ベアリング担持体126は固定部材であるので、半径方向の移動を防止する。スクロール構造が潤滑されない場合に特に該当することであるが、効率的なポンプ圧送を行うためには、旋回スクロール120と固定スクロールとの間の軸方向並びに半径方向の隙間が小さいことが要求されるので、軸の半径方向及び軸方向移動が制限されなければならない。
【0007】
しかし、第1ベアリング116とベアリング担持体126に加わる軸方向及び半径方向の力が、典型的には摩耗による損傷の原因となり、ベアリングの定期的な交換が必要となり、維持経費を増加させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポンプ用の改善されたベアリング組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ベアリング担持体に担持されたベアリングによって回転可能に支持された軸を備え、該ベアリング担持体は、ポンプハウジングに対して固定された全体として半径方向外側部分と、ベアリングに対して固定された全体として半径方向内側部分とを有し、該ベアリング担持体は、該半径方向内側部分と半径方向外側部分との間において、半径方向には堅固で、軸方向には柔軟とされ、該ベアリングの半径方向の動きが抑制され、軸方向の動きが可能とされたポンプを提供する。
本発明が充分に理解できるように、例示の目的のみで提供される幾つかの実施形態が以下の図面を参照して説明される。図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スクロールポンプの概念図である。
図2図1のスクロールポンプのより詳細部分を示す。
図3図1のスクロールポンプのベアリング担持体を示す。
図4】代替例のベアリング担持体を示す。
図5】別のスクロールポンプの一部を示す。
図6】先行技術によるスクロールポンプの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
スクロールコンプレッサーすなわちスクロールポンプ10が、図1に示される。ポンプ10は、ポンプハウジング12と、同心軸部15及び偏心軸部16を有する駆動軸14を備える。この駆動軸14は、モータ18により駆動され、その偏心軸部が旋回スクロール20に連結されており、使用時にモータ軸の回転により、固定スクロール22に対して旋回スクロール20を旋回移動させ、該コンプレッサーのポンプ入口24と出口26との間の流体流路に沿って流体をポンプ圧送する。
【0012】
固定スクロール22は、概ね円形の基板30に対して直角に延び、軸方向の端面すなわち端表面29を有するスクロール壁28を備える。旋回スクロール20は、概ね円形の基板36に対して直角に延び、軸方向の端面すなわち端表面35を有するスクロール壁34を備える。旋回スクロールの旋回運動中において、旋回スクロール壁34は、固定スクロール壁28と協働、すなわち噛み合い動作を行う。これらスクロールの相対的な旋回運動により、ある量の気体がこれらスクロール間に捕捉され、入口24から出口26までポンプ圧送が行われる。
【0013】
スクロールポンプは、乾式ポンプで、潤滑がされないものとすることができる。特に潤滑がされない場合には、逆漏れを防止するために、これらスクロール間の軸方向と半径方向との隙間が正確に維持されなければならない。一方のスクロールにおけるスクロール壁の軸方向端部29,35と他方のスクロールの基板30、36との間の隙間は、シール構造により密封され、このシール構造は、一般にチップシールを備える。
【0014】
ポンプは、使用中に温度が上昇するが、ポンプ内の全ての部品が同じ割合で温度上昇する訳ではなく、また熱膨張係数の違いのために、温度変化に対してはモータ軸14がポンプハウジング12より大きく反応する。したがって、同心軸部の第1及び第2ベアリング38、40が、旋回スクロールと固定スクロールとの間の軸方向及び半径方向間隙に影響を与えることなく、軸の膨張及び收縮に順応しなければならない。さらに、第1及び第2ベアリング38、40は、製造公差内において製造された許容長さ範囲内にある、長さの異なる軸にも順応できることが好ましい。
【0015】
ベアリング構造は、図2及び図3を参照して、さらに詳細に説明される。固定スクロール22は、分かり易くするために図2では省略されている。
【0016】
図2に示すように、該駆動軸14は、同心軸部15と偏心軸部13とを有する。該軸は、ポンプハウジング12に固定される第1部分17と、同心軸部15に固定される第2部分19とを有するモータ16により駆動される。第2部分19は、第1部分17に対して軸方向にある程度自由に動くことができる。
【0017】
同心軸部15は、第1ベアリング38と第2ベアリング40とにより回転可能に支持されている。第3ベアリング42は、旋回スクロール20を偏心軸部に対して相対的な角度方向運動ができるように支持しており、該軸の回転によって旋回動作が旋回スクロールに伝えられる。
【0018】
第1ベアリング38は、軸14に対して固定される内輪44と、ベアリング担持体48に固定される外輪46とを有する。多数のボール50によって、ベアリング担持体48に対して軸14が回転できるようにする。該ベアリング担持体48は、ハウジング12に対して固定される半径方向外側部分52と、第1ベアリング38の外輪46に固定される半径方向内側部分54とを有する。この実施形態における半径方向内側部分は、外輪46を固定するための半径方向に延びた舌部58を有する環状座56を備え、半径方向内側部分54により、外輪が担持される。内輪44は、締結部材60と軸の肩部との間で該軸に固定される。
【0019】
図3にもっと詳細に示されるベアリング担持体48は、ベアリング38の半径方向移動を抑制するが、軸方向には動くことができるように構成される。この実施形態におけるベアリング担持体は、該担持体を貫通する複数の穴64の間に形成された、ほぼ柔軟な3つの支持部62を含む中間部を備えており、軸部15の軸Aに沿って該担持体が柔軟であるようにする。しかし、該支持部は半径方向に対しては堅固にされ、これが無ければ、旋回スクロールと固定スクロールが誤整列を起こしうる該軸の半径方向の動きを抑制する。該担持体の内側部分54は、ベアリング38の外輪46(図3では図示されない)に固定されているので、図5に示した先行技術の構造のように、ベアリングが該担持体に対してスライドする必要がなく、ベアリング38が損傷を受けにくくなり、ベアリングの交換間隔をより長くすることができる。
【0020】
代替例であるベアリング担持体78が図4に示される。この構成では、中間部が柔軟な複数の支持部分80を備えたスポーク構造を形成し、該支持部分80の各々は、該担持体を貫通する、複数の隣接した穴82の間に形成され、該担持体が軸部15の軸Aに沿って柔軟であるようにする。しかし、これら支持部分は半径方向には堅固であり、これが無ければ、旋回スクロールと固定スクロールの誤整列を起こしうる該軸の半径方向移動が抑制される。多数の支持部(16個示される)を設けることにより、ベアリング担持体に加わる半径方向の力が周方向周りに分散させられる。
【0021】
図2の構造では、ベアリング担持体が、ベアリング38に対して線66で示す方向に作用するように内向きに付勢されており、これがベアリング38の軸方向A1への軸移動に対する抵抗になる。このようにして、軸は熱膨張することができるが、第2ベアリング40は、線68で示す方向の力が維持され、旋回スクロールと固定スクロールとの間の軸方向隙間がほぼ一定に維持される。ベアリング担持体48は、例えばアルミニウム又は鋼から製造することができるが、上記の材料初期荷重に限定されるものではなく、所定の場所に取り付けられた時にベアリング38に必要な力が付与されるように初期荷重が与えられる。
【0022】
図5に示される別の構造では、該スクロール間の軸方向隙間をほぼ一定に維持するために、ベアリング担持体70が外向きに付勢される。この点に関しては、ベアリング担持体70に初期荷重を与えるために、ベアリング担持体70の内側部分74と固定されたハウジング部分76との間に付勢手段が設けられており、この付勢手段は、図示されたベルビル(Belleville)バネ72その他の適当なバネとすることができる。このベアリング担持体の軸方向の剛さは、該付勢手段より大幅に弱く、僅かの初期荷重しか与えないか又は初期荷重を与えないものである。
【0023】
本明細書で述べたベアリング担持体の形態は、真空ポンプの構成と同様な、軸方向及び半径方向の動きに対する要求があるベアリング構成によって回転可能に支持される軸を備える他の装置にも用途を見出すことができるであろうことを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0024】
10 ポンプ
12 ポンプハウジング
14 駆動軸
15 同心軸部
16 偏心軸部
18 モータ
20 旋回スクロール
22 固定スクロール
24 ポンプ入口
26 ポンプ出口
30 固定スクロールの基板
36 旋回スクロールの基板
38 第1ベアリング
40 第2ベアリング
44 ベアリングの内輪
46 ベアリングの外輪
48 ベアリング担持体
52 ベアリング担持体の半径方向外側部分
54 ベアリング担持体の半径方向内側部分
56 環状座
60 締結部材
62 ベアリング担持体の中間部の柔軟支持部
64 貫通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6