(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記更なる液体培地が、懸濁液中の薬物を保持できる医薬的に許容可能な培地であり、薬物粒子を含む生成された前記組成物が医薬的に許容可能な液体培地中の前記薬物の懸濁液である、請求項1に記載の方法。
前記第1の液体培地中の前記懸濁液を第2の液体培地に対してクロスフロー濾過することによって第2の液体培地中の懸濁液が得られ、ここで、前記第2の液体培地は前記第1の液体培地および前記懸濁液中の薬物を保持できる医薬的に許容可能な培地の両方と混合可能な液体培地であり、
第2の液体培地中の前記懸濁液を、前記薬物を懸濁液として保持できる前記医薬的に許容可能な液体培地に対してクロスフロー濾過する、請求項3に記載の方法であり、
但し、第2の液体培地は、前記更なる液体培地を構成する成分とは異なる。
第2の液体培地がエチルオレエートおよびミグリオールからなる群から選択され、前記薬物を懸濁液として保持できる前記医薬的に許容可能な液体培地が液体パラフィンである、請求項4に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
当業界においてクロスフロー濾過(別称:透析濾過)技術は、世界的に普及し、主として水溶性原液(aqueous feed streams)を処理する目的に応用されている。水を精製する場合は、従来の蒸着法に比べて極めて費用効果的であり得る。医薬製造における或る有機合成工程から次の工程までで、或る有機溶剤耐性膜を用いた透析濾過による溶液中の非熱的溶媒交換(Sheth J.P.,et al,Journal of Membrane Science 211(2003),251−261)が示唆されてきた。
【0003】
一方、薬物を合成によって加工して粒状形態で得られるように加工する際、または薬物を含む製剤を直接生産する場合に、医薬懸濁液間の液体培地交換用クロスフロー濾過技術を利用することによって粒子を最初に単離する工程を迂回できることは、かつて記述されてこなかった。
【0004】
薬物を医薬懸濁液中に粒子、特に結晶粒子の形態で、比較的小さいサイズ、かつ所望の粒度分布で提供することが、一般に要望されている。薬物粒子は、最終的に前記粒子の懸濁液の形態で医薬品に調合される。
【0005】
所望の粒子径を形成する際、医薬的に許容可能な液体培地中に安定な懸濁液を得ることを求めるうえで、いくつかの技術的課題が提示される。1つは、粒子(特に結晶粒子)を得るには、溶液または懸濁液からの析出を制御された方法で行う必要があるという点である。この目的を果たすために、例えば、セフキノム硫酸塩の場合、水、または水およびアセトンの混合物にアセトンを添加することによって、強制的に析出を行う。これにより、溶媒(もっと正確に言えば、抗溶剤アセトン)が比較的多量に生成されてしまい、その結果、商業的に実現可能なバッチサイズでの生産が不経済な方向に動くことになる。
【0006】
ゆえに、実質的に体積を減らした抗溶剤を基に所望の粒子径の粒子(特に結晶粒子)を得るための方法を提供することが要望されている。
【0007】
粒子が必然的にそのように分離されている場合はまた、粒子同士を凝集して大型の粒子集合にして濾過工程を容易にするための方法を提供することも要望される。
【0008】
なお、既存のプロセスにおいて、最終的な医薬品は、プロセスの初期ステージにおいて所望の粒子径で生成された結晶粒子の、医薬的に許容可能な液体培地(例えば、エチルオレエート)中の懸濁液である。ゆえに、全体的なプロセスには、粒子の析出制御だけでなく、単離、乾燥、個装、搬送および調合も必要である。粒子(即ち、懸濁液で)の形成を開始してから完了するまでの間の工程を1つ以上省略し、最終的な製剤(更には懸濁液)の製造をも省略できれば望ましいであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、広義には、薬物懸濁液を調製するときに透析濾過を液体培地交換の方法として使用するという妥当な認識に基づくものである。本発明によれば、本方法は、薬物を合成により粒状形態で得られるように加工する際、または薬物を含む医薬品を直接製造する際のいずれにも応用することが可能であり、この方法で、粒子を最初に単離する工程を迂回できる。医薬懸濁液は、液体培地中の固体薬物粒子の均一な分散液であり、薬物がほとんど溶けない。医薬懸濁液の例としては、例えば、筋内および皮下投与のための抗菌性の注射剤懸濁液、乳房内投与のための抗菌性の懸濁液、制酸性の経口懸濁液、抗菌性の経口懸濁液、鎮痛性の経口懸濁液、駆虫性の経口および皮下注射剤懸濁液、抗痙攣性の経口懸濁液、抗真菌性の経口懸濁液が挙げられる。本明細書において「ほとんど溶けない」という用語は、懸濁培地に本質的に全く溶解されない薬物、またはそのような(可溶性が約10%未満の)培地に少なくとも十分に溶解されない薬物に適用される。
【0016】
一実施形態において医薬懸濁液は、非水溶性の懸濁液、即ち、液体培地は非水溶性(例えば、油性)である。
【0017】
ほとんど溶けない薬物はどのようなものでも、本発明の医薬組成物に有益に使用され得る。この点に関して、本明細書中に、典型的にはほとんど溶解しないと見なされる各種薬物の一覧を示すが、多くの薬物には(ほとんど溶解しないと見なされているかどうかを問わず)、事実上ほとんど溶解されないバージョン(結晶形、多形体、その他)があることを認識すべきである。また、将来開発される薬物でほとんど溶解しないと見なされるものもまた、本発明の範囲内に包含され得ることを認識すべきである。
【0018】
セファロスポリン抗生物質(例えば、セフキノムおよびセファロニウム)に関しては、本発明者らによって本発明の方法の特定の諸利益が確立されてきたが、他の薬物種別、例えば、他の抗生物質、駆虫薬、高血圧治療薬、免疫抑制薬、抗炎症薬、鎮痛薬、利尿薬、抗てんかん薬、コレステロール低下薬、ホルモン血糖降下剤、抗ウイルス薬、鼻充血抑制薬、抗関節炎剤(anti−arrthrytics)、抗癌剤、駆虫薬、タンパク質、ペプチド、CNS刺激薬、CNS抑制剤、5HT阻害剤、抗分裂病患者、抗アルツハイマー薬、抗乾癬剤、ステロイド、オリゴヌクレオチド、抗潰瘍薬、プロトンポンプ阻害剤、抗喘息薬、血栓溶解剤およびビタミンに関しても同様の諸利益が享受されよう。
【0019】
下掲の記述には主として、セファロスポリン抗菌性薬について本発明の実施形態が記述されているが、だからといって、本発明をそれだけに限定してはならないことを認識すべきである。記述された図面は、概略図であるにすぎず非限定的である。図面中の要素によっては、例証の目的に合わせてサイズが誇張され、縮尺とおりに描画されていないものもある。用語「含む(comprising)」が本説明書および特許請求の範囲において使用されている場合、他の要素または工程を除外するものではない。単数形の名詞を指すときに、不特定冠詞または特定冠詞、例えば、「或る(a)」または「或る(an)」、「その(the)」が使用されていて、それ以外に何も具体的に記述されていない場合は、その名詞の複数形が包含される。
【0020】
粒子生成の工程では懸濁液(特に、無菌懸濁液)を生じるが、粒子を沈殿させるためには、懸濁液の液体培地を交換することによって抗溶剤の効果を高める必要がある(例えば、液体培地がセフキノムサルフェートの場合、抗溶剤はアセトン)。この培地交換は通常、蒸留または蒸発などの熱量単位の作用を利用した溶媒交換によって実現される。このため、液体培地と同程度の高い温度で抗溶剤が沸騰する場合は扱い易いが、生成物が温度感受性であるかまたは抗溶剤が液体培地と同程度の低い温度で沸騰する場合は問題が起きるおそれがある。1つの解決案は、液体培地に多量の抗溶剤を添加して強制的に結晶析出を行うことである。その工程では抗溶剤が比較的多量に必要とされるため、薬物粒子の生成が可能なバッチサイズが著しく縮小されてしまう。本発明者らが発見した方法は、透析濾過(クロスフロー濾過)によって抗溶剤を添加するというもので、この方法の利点は抗溶剤の必要量がはるかに低減し、所望の商業的なバッチサイズで粒子を生成できることにある。
【0021】
ゆえに、一実施形態において本発明は薬物の粒子を含む組成物の製造方法であり、この製造方法においては最初に薬物を第1の液体媒地中に懸濁液の形態で生成し、懸濁液を更なる液体培地に対してクロスフロー濾過し、前記更なる液体培地が、薬物に対する抗溶剤として作用する培地から選択される。
【0022】
「抗溶剤」とは、生成物が溶解されない溶媒を意味する。抗溶剤が公知で、かつ薬物が所定のものである場合、好適な抗溶剤を選択することは当業者の平均的な技術の範囲内である。セフキノムもしくはセフキノムサルフェート、または他の酸添加塩の場合、好適な抗溶剤はアセトン、または水およびアセトンの混合物であり、アセトンは主要成分である。他の好適な抗溶剤は、当業者の技術の範囲内である。
【0023】
本発明の透析濾過を遂行するときは、プロセス中に前記更なる液体培地の組成物を、要望とおり、例えば、水およびアセトンの混合物を抗溶剤として使用し、アセトンの量を徐々に増やして変更できる。
【0024】
本実施形態においては、事実上、そのように単離された(沈殿した)粒子が、薬物の粒子を含む組成物に含まれる。一部の懸濁液には薬物の極小粒子が含まれるが、これらの極小粒子は、従来の濾過方法では分離できなかった。微細粒子がフィルターを詰まらせ、濾過時間を長引かせてしまうためである。これらの粒子の粒子径は典型的に、0.05〜50μmの範囲である。本発明の方法によれば、そのような微細粒子の凝集物は、好適な抗溶剤を使用して形成され得る。続いて、そのような凝集物は、従来の濾過方法で分離できる。濾過後に、微細粒子の凝集を、例えば、粒子の懸濁液を撹拌するだけで、または超音波の影響下で、元に戻せることが好ましい。
【0025】
好適な実施形態において、前記更なる液体培地は、薬物を懸濁液として保持できる医薬的に許容可能な培地から選択される。結果として、この実施形態において本発明は、前述した透析濾過を種々の方法で使用する。好ましい実施形態では、既存のプロセス(即ち、粒子の単離工程)における技術を利用する代わりに、薬物粒子の懸濁液の透析濾過を利用して、医薬品の最終的な液体培地、即ち、前述した医薬的に許容可能な懸濁液培地(例えば、油性液体)を添加する。
【0026】
この実施形態において、薬物の粒子を含む組成物は、医薬的に許容可能な液体培地中の薬物の懸濁液の形態を取った医薬組成物である。これにより、薬物粒子の単離に関連するすべてのプロセス工程を不要にできるため、多大な利益につながる。ゆえに、本発明のこの実施形態は、単離、乾燥、粒子径調整(微粉化)、個装、搬送、および懸濁液として改良する工程を含めるよりはむしろ、無菌結晶懸濁液から直接的に最終的な医薬品懸濁液に向かう工程を可能にする。
【0027】
そのような薬物の懸濁液は、例えば、エチルオレエートなどの油中に懸濁された注入用製剤として提示されるか、またはミグリオール(Miglyol)という商標名で公知の種類の、飽和ココナツおよびパーム核油由来のカプリル酸およびカプリン脂肪酸とグリセリンまたはプロピレングリコールとのエステルで提示される。
【0028】
一実施形態において薬物は、セファロスポリンである。セファロスポリンは、一般に7−アミノセファロスポラン酸の誘導体であると見なされるβ−ラクタム抗生物質の部類である。多くのセファロスポリンは市場に出回っている。商標未登録の名前は一般に「cef」(時にはceph)で始まる。好ましいセファロスポリンとしては、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフチオフル、セファピリン、セフォタキシム、セファドロキシル、セファレキシン、セフォベクチン(cefovectin)、セファゾリン、セファロチンおよびセフキノムが挙げられる。セファロスポリンは、より好ましくはセフキノムであり、最も好ましくはセフキノム酸付加塩である。
【0029】
セフキノムの酸付加塩を調製するためには、好適な酸をベタイン溶液に添加する。これらの酸は、有機または無機の一塩基酸もしくは二塩基酸であってよく、好ましいのは酸鉱物である。
【0030】
好適な酸としては、例えば、HCI、HBr、HI、HF、H
2NO
3、HClO
4、HSCN、脂肪族モノ−、ジ−、もしくはトリカルボキシル酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸)、または好ましい生理的に許容可能な酸(例えば、モノマレアートアニオンHOOCCH=CHCOO
−を有する塩を生じるマレイン酸)が挙げられる。別の好適な有機酸は、ナフトエ酸である。好ましいセフキノム酸付加塩類としては、セフキノムジヒドロクロリド、セフキノムジヒドロヨージド、セフキノムサルフェート、セフキノム−6−ヒドロキシナフトエート、セフキノムナフトエート、セフキノム2,4ジヒドロキシベンゾエートが挙げられる。別の好適な有機酸は、ナフトエ酸である。最も好ましい塩はセフキノムサルフェートである。
【0031】
セファロスポリンは一般に、医薬的に許容可能な液体培地中の懸濁液として、特に、植物油もしくは鉱物油、またはそれらの混合物、例えば、ピーナッツ油、ヒマシ油、エチルオレエート、液体パラフィン、MCT油(下記参照)もしくはミグリオール(登録商標)(下記参照)といった油性基剤中の懸濁液の形態で出回っている。基剤には、好ましくは、医薬的に許容可能な低粘度の油性培地(例えば、培地鎖トリグリセリドまたは培地鎖トリグリセリドの混合物)が包含される。中間鎖トリグリセリド(MCT油)は、炭素原子数が6から12個である脂肪酸鎖を有する。MCT油のなかでも医学的に精製されたグレードのものは、各鎖の炭素原子数が8から10個である。MCT油は、C8−C10脂肪酸類のトリグリセリド、もしくはこれらの脂肪酸類プロピレングリコールジエステル類のいずれか、またはトリグリセリド類およびプロピレングリコールジエステル類の両方の混合物を含み得る。これらのC8−C10脂肪酸類は、好ましくは完全飽和型、例えばn−カプリル酸およびn−カプリン酸である。これらは、天然由来の野菜(例えば、ココナツ)油を商業的に分別し、続いて、主にC8−C10脂肪酸類を生成した後、これらの酸と選択されたアルコールとをエステル化して、好都合にも調製される。所望の組成を有する分別植物油は市販されている。そのような油脂の登録商標の例は、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドの場合はミグリオール(登録商標)812、およびプロピレングリコールジカプリレート/カプレートの場合はミグリオール(登録商標)840である。最も好ましいのはミグリオール(登録商標)グレード812である。
【0032】
医薬品懸濁液、および薬物結晶懸濁液が生成される液体培地中に用いられる医薬的に許容可能な液体培地に応じて、これらの液体培地は互いに、透析濾過を行える程度に十分混合可能な場合もあれば不可能な場合もある。「混和性」とは、液体培地があらゆる比率で混合し、均一な溶液を形成することを意味する。
【0033】
後者の場合、第1の液体培地(結晶が生成される)および更なる液体培地(医薬品において医薬的に許容可能な液体培地)の両方と混合可能な中間(第2の)液体培地を用い、追加の透析濾過を行うことが好ましい。下表においては、液体を使用するいくつかの実施例に関して、指針が与えられている。想定し得る液体は、本明細書中で言及されている液体だけに限定されるものではない。当業者であれば、液体が混合可能かどうかを容易に判断し、透析濾過を直接または中間液体を介して実行できるかどうかを判断できるであろう。
【表1】
【0034】
本発明において、薬物懸濁液を更なる液体培地に対してクロスフロー濾過し、前記更なる液体培地が、薬物に対する抗溶剤として作用する培地、および薬物を懸濁液として保持できる医薬的に許容される媒地から選択される。医薬的に許容可能な液体培地は一般に、その懸濁液を保持するため、薬物の溶媒でないことを理解されたい。また、中間液体培地を利用する上述の実施形態を鑑み、本発明は初期に得られた懸濁液中の液体培地を最終的な医薬的に許容可能な液体培地と間接的に交換することも理解されたい。
【0035】
クロスフロー濾過(別称:透析濾過)は公知の技術であり、通常は全く異なる目的に使用される。典型的な用途には、廃水の処理、精製水の製造、または塩水の精製が包含される。医薬業界において典型的な用途は、発酵スラリーの富化を目的としたものである。ヘルスケア環境における更に典型的な用途は、ヒト血液の周知の透析である。
【0036】
「濾過・分離辞典」において記載されているように、透析濾過はメンブレンベースの分離であり、プロセス液体または分散液からの塩類および他の小分子汚染物質を低減、除去、もしくは交換することを目的に使用される。本プロセスは、一方の側でメンブレンフィルター全体に給液を渡す工程と、他方の側で反対方向にメンブレンフィルター全体に清浄な液体を渡す工程と、を本質的に含む。デッドエンド濾過を用いるとフィルター表面がたちまち固体材料で塞がれてしまう(目詰まりする)可能性があるため、供給物に小粒子径の固体が高比率で含まれる場合(透過物が最も重要とされるとき)は、この種の濾過が選ばれるのが一般的である。バッチ透析濾過では、「清浄な」液体を使用してプロセス流体を典型的には2倍に希釈し、濾過で元の濃度に戻し、全プロセスを数回繰り返して、所要濃度のコンタミナントを遂行した。連続透析濾過においては、「清浄な」液体を透過物の流れと同じ速度で添加する。
【0037】
クロスフロー濾過は、給液の大半がフィルターに入るよりはむしろフィルターの表面全体を僅かに触れる程度に通過するという事実を指す。このクロスフロー濾過による主な利益は、濾過プロセス中に(フィルターを目詰まりさせる可能性のある)フィルターケークを実質的に洗い落とすことで、フィルター装置の作動可能期間を延ばせることにある。このクロスフロー濾過は、バッチ式のデッドエンド濾過とは異なり、連続プロセスであり得る。
【0038】
本発明が透析濾過の技術を利用するための方法は、その恒常的使用からいくつかの点で逸脱する。或る点に関してこの技術は、本発明において固体(即ち、薬物粒子)を沈殿させる目的に使用され、規範的な濾過においてはそれらの固体を保留物として保持することを意味する。別の点に関して本技術は、薬物粒子を或る懸濁液から別の懸濁液に移動するために使用され、透析濾過で使用されるノーマル(normal)(濾過の種類)とは全くは比べものならない。
【0039】
本発明の透析濾過プロセスにおいて、フィルターは好ましくはセラミックメンブレンである。そのようなフィルターは公知であり、例えば、シリコン、シリコンニトリド、シリコンオキシナイトライド、シリコンカーバイド、シリサイド、アルミナ、ジルコニウムオキシド、マグネシウムオキシド、クロムオキシド、チタンオキシド、チタンオキシナイトライド、チタンニトリド、イットリウムバリウム銅オキシドから製造されるか、または無機(例えば、セラミックまたはゼオライト)表層上の複合膜としてポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、エチレン−プロピレンジエン、ポリノルボネン、ポリオクテナマ、ポリウレタン、ブタジエン、ニトリルブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンジフルオリド、誘導体ならびにそれらの混合物を主成分としたポリマーメンブレンから製造される。フィルターメンブレンは、様々な形状(例えば、円盤形または中空管形)を取ることができる。メンブレンは有孔であり、その孔径の選択肢が当業者に与えられることを理解されたい。本発明において下限は直径1nmである。上限は10μmである。
【0040】
透析濾過プロセスは、当分野において公知の機器で遂行できる。機器は典型的に、管状もしくは円盤状の透析濾過メンブレン(2)と、透析濾過される液体の流れ(a)の流入口(3)と、保留物の流れ(b)の流出口(4)と、透過物の流れ(c)の流出口(5)と、を含んでなる濾過装置(1)を具備する。前記濾過装置は混合装置(6)への流体接続(上記の流れaおよびc)を備えて構成されている。混合装置(6)は、撹拌器(8)を備えるベッセル(7)と、抗溶剤の流れ(d)の流入口(9)(図中ではアセトンを参照して指し示されている)と、透過物の流れ(c)の流入口(10)と、ポンプ装置(12)で駆動された液体(a)(即ち、懸濁液)がベッセル(7)から濾過装置(1)へと流れるための流出口(11)と、を具備する。
【0041】
図1では、機器がセフキノム(または他の薬物)の結晶粒子製造における利用に供するものとして提示されており、抗溶剤の流れ(d)としてアセトンの使用が参照されている。この機器は弁(13)を含み、この弁(13)を介して、固体粒子が得られる分離装置(図示せず)、または更に透析濾過を行う濾過装置(1)のいずれかへの液体の流れ(a)が可能になっている。
【0042】
図2では、前述の機器がセフキノム(または他の薬物)医薬品(懸濁液)製造における利用に供するものとして提示されており、抗溶剤の流れ(d)として担体液体の選択肢の使用が参照されている。この機器は弁(13)を含み、この弁(13)を介して、医薬品充填ライン(図示せず)、または更に透析濾過を行う濾過装置(1)のいずれかへの液体の流れ(a)が可能になっている。
【0043】
この方法の選択が妥当なものであれば、懸濁液を医薬品として製造する場合に特に満足な利益が得られる。ゆえに、一態様において本発明はまた、薬物粒子の製造における透析濾過方法の使用に関する。
【0044】
そのような利益が本方法により得られる理由は、とりわけ、懸濁液を医薬品として製造するには、粒子径を調整する工程を必要とし、更には医薬的に許容可能な液体中の懸濁液として医薬品を調合する工程も必要とするためである。前者の工程では一般に、アセトンなどのように医薬的に許容されない液体を使用する必要がある。規範的なプロセスにおいては薬物粒子をまず単離して後で再調合しなければならないが、本発明による透析濾過方法を使用すれば、プロセスがはるかに経済的なものになり、しかも中間生産工程で無菌状態が損なわれるリスクが低下する。
【0045】
この点に関して、更なる実施形態において本発明はまた、薬物懸濁液を調製するときの、透析濾過による液体培地交換の使用に関する。別の態様において本発明は、医薬的に許容可能な液体培地中に薬物懸濁液を含む医薬製剤の製造方法に関し、この製造方法においてはプロセス用液体培地中の結晶懸濁液から製剤を製造し、透析濾過を用いて、前記プロセス用液体培地を医薬的に許容可能な液体培地で置き換える。
【0046】
更に別の実施形態において本発明はまた、薬物の抗溶剤を添加して、液体培地中の溶液または懸濁液(特に無菌懸濁液)から薬物粒子を単離するための方法を提供しており、この方法においては、透析濾過を用いて抗溶剤が添加される。賢明な洞察に基づいて、既存の透析濾過技術を全く異なる薬物粒子調製分野に移入させれば、或る特定の諸利益がもたらされる。とりわけ抗溶剤は、医薬的に許容されない液体が一般的であるため、その使用量を可能な限り抑えることが望ましい。
【0047】
更に、非経口投与用の薬物の場合、粒子(特に、結晶薬物)の懸濁液の製造においては、無菌状態を維持することが重要である。つまり、同様に、抗溶剤は無菌である必要があるため、使用する機器領域も無菌である必要がある。このため、比較的多量の抗溶剤を使用する必要があるときは、技術的な複雑さが増し、コストが高くつく。
【0048】
要約すれば、本発明は、透析濾過を用いて薬物から粒子を製造するための方法を提示する。抗溶剤を用いて透析濾過を行ってもよく、その場合、そのように粒子の沈殿物が得られる。また、医薬的に許容可能な懸濁液培地を用いて透析濾過を行ってもよい。その場合、粒子の合成で得られた懸濁液を最終的な医薬品製剤に直接変換できるため、粒子の単離、乾燥、運搬といったいくつかの生産工程を回避できる。
【0049】
以下の非限定例、および添付の図面を参照して、本発明を更に例示する。
【実施例】
【0050】
実験の一般的なセットアップ
国際出願PCT/EP2010/060376号明細書に記載されているように、アセトンおよび水を2:1の比率で混合したものに含有率7.5〜8%のセフキノムサルフェートを配合したセフキノムサルフェート懸濁液をベースに、透析濾過試験を行った。
【0051】
懸濁液をジャケット付きの撹拌式貯蔵槽に移した。ポンプ上のスイッチを介してループを開始した。ジャケット付きベッセルを冷却することによって、所望の温度を制御できる。弁位置によると、濃縮工程および透析濾過工程中に、透過物が貯蔵槽に再循環されたかまたは排出された。
【0052】
懸濁液を所望の値まで(通常、初期濃度の2/3または1/2まで)濃縮した。その後、透過物がループを出る速度と同じ速度でアセトンが添加されたため、体積は一定に維持された。添加されたアセトンの量によって、透析濾過係数D(通常、D=2.2)を定量し、最後に、最終的な懸濁液中の残留水分の含有率を定量した。透析濾過が終了した後、懸濁液を濾過して、乾燥させた。
【0053】
懸濁剤(抗溶剤)を変更した場合、対応するステム懸濁液を生成するための適切な薬物(抗溶剤)を用い、アセトン懸濁液を透析濾過した。
【0054】
実施例1
孔が150kDのセラミックメンブレンに対して調査を行った。0.7Lの結晶懸濁液を0.35Lまで濃縮し、安定体積にて0.8Lの純粋なアセトンを用いて透析濾過した。このプロセス工程中には含水率が7.5%まで減少する。圧力フィルターに対する濾過性試験によって、透析濾過の成功を試験した。ゆえに、元の懸濁液の一部をアセトンで希釈し、アセトン/:水を29:1(v/v)の比率に希釈して濾過した。この濾液を混濁させて、濾過時間1.4分/gの固体を観測した。透析濾過した懸濁液も同様に濾過し、透明な濾液および濾過時間0.6分/gの固体を観測した。
【0055】
分析結果
最終的な濾液の含水率:7.5%(濃度測定による)
透析濾過後に結晶を分離するための特定の濾過時間:0.6分/g
結晶をアセトン/水29:1(v/v)に分離するための特定の濾過時間:1.4分/g。
【0056】
実施例2
実施例1に従い、透析濾過係数D=1.5にて実施例2を実施した結果、最終的な懸濁液の含水率が10%になり、濾過速度が1.3分/gになった。
【0057】
実施例3
実施例1に従い、透析濾過係数D=2.2にて実施例3を実施した結果、最終的な懸濁液の含水率が5%になり、濾過速度が0.2分/gになった。
【0058】
実施例4
実施例1に従い、透析濾過係数D=3.0にて実施例4を実施した結果、最終的な懸濁液の含水率が2%になり、濾過速度が0.1分/gになった。
【0059】
実施例5:スケールアップ
実施例1に従い、実体積5L、表面0.2m
2(ラボスケールの10倍)のメンブレンを使用し、透析濾過係数D=2.5、最終的な懸濁液の含水率2%、濾過速度0.1分/gで実施例5を実施した。比表面積/懸濁液体積の倍加により、該当する実験に関しては、濃縮および透析濾過に必要な時間が半減した。いかなるスケールアップ効果も、検出されなかった。
【0060】
実施例6
実施例5に従い、透析濾過係数D=2.5で実施例6を実施した。その結果、最終的な懸濁液の含水率が2.3%で、濾過速度が0.1分/gになった(ただし、50kDのセラミックメンブレン使用時)。
【0061】
実施例7
実施例1に従い、孔が60nmのセラミック盤および適切な機器を使用して、実施例7を実施した。25Lのアセトンを用いて6.1Lの結晶懸濁液を透析濾過した結果、計算された含水率が1%以下になった。最終的な懸濁液を0.1分/g未満の濾過速度で濾過した。
【0062】
実施例8
アセトン:水を2:1で混合したものにセファロニウムジヒドラートを懸濁させ、10%のセファロニウムジヒドラート(水関連)懸濁液を得た。実施例7に記載のものと同じ濾過設備を使用して、透析濾過プロセスを実施した。
【0063】
4.7Lの懸濁液を23Lのアセトンを用いて透析濾過し、含水率を1%未満にした。最終的な懸濁液を4Lの体積に濃縮し、0.1分/g未満の濾過速度で濾過した。
【0064】
製剤懸濁液への溶媒変更
実施例9:
この実験用の初期懸濁液は、アセトンおよび水を2:1の比率で混合したものに、セフキノムサルフェートを7.5〜8%配合したものである。
【0065】
試験の実施方法は次のとおりである。
【0066】
1.20℃にてX=1.6の初期懸濁液を濃縮する。
【0067】
2.20℃にてD=2.5(残留水分の含有率が3%未満)のアセトンを用いて透析濾過する。
【0068】
3.30℃にてD=5.3(残留アセトンの含有率が1%未満)のエチルオレエートを用いて透析濾過する。
【0069】
メンブレンタイプ:孔150kD;面積220cm
2
アセトンの含有率が0.2%未満、含水率が0.4%未満、セフキノムサルフェートの含有率が8.6%のエチルオレエート懸濁液が得られた。
【0070】
実施例10:
エチルオレエートおよび液体パラフィンを可溶化剤(solutizing agent)として用い、透析濾過した。実施例7に従い、実施例8を実施した。30℃にてD=2.0でエチルオレエートを用いて透析濾過した後、30℃にてD=5.0で液体パラフィンを用いて透析濾過した結果、計算された残留アセトンの含有率が0.15%未満で、計算された残留エチルオレエートの含有率が1%未満のパラフィン懸濁液が得られた。
【0071】
実施例11
ミグリオール(登録商標)および液体パラフィンを可溶化剤(solutizing agent)として用い、透析濾過した。実施例7に従い、実施例9を実施した。30℃にてD=5.0でミグリオール(登録商標)を用いて透析濾過し、計算されたアセトンの含有率が1%未満のミグリオール(登録商標)懸濁液を得た。続いて、ミグリオール(登録商標)懸濁液をアセトンで希釈し、アセトンの含有率を20%(D=2)にして、その後に、30℃にてD=5.0で液体パラフィンを用いて透析濾過し、計算された残留アセトンの含有率が0.15%未満で、計算された残留ミグリオール(登録商標)の含有率が1%未満のパラフィン懸濁液を得た。