(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記外筒の内側に配置され、軸線方向に延びる筒状部、及び該筒状部から径方向内側に延出する延出部を有すると共に、自身の先端向き面が前記セパレータの後端向き面に当接する内筒を備え、
前記シール部材の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接する請求項1記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴム製のグロメットが経年変化すると弾力が低下し、押圧力が弱くなってセパレータの保持力が低下する場合がある。そうした場合、セパレータとグロメットとの摩擦力が弱くなってしまい、セパレータが周方向に回転するおそれがある。
又、高温の排気ガスに晒されるセンサ素子からの熱がセパレータに伝わるため、セパレータも高温となる。そのため、セパレータをグロメットで押圧する構造を採ると、セパレータの熱がグロメットに伝わってグロメットの劣化を早めるおそれがある。
又、特許文献1記載の技術の場合、セパレータを先後2つに分割し、各セパレータを先後方向から2つの保持金具で挟むようにして保持しているが、セパレータや保持金具の部品点数が増える。
一方、単にグロメットをセパレータから離間させて熱の伝達を防止しようとすると、セパレータがグロメットで保持されないために周方向に回転し、端子金具と電極パッドとの接続に影響を与えたり、リード線を損傷させるおそれがある。
そこで、本発明は、シール部材の熱劣化を抑制すると共に、セパレータの周方向の回転を容易に規制することができるガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に検出部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の外周面を囲む筒状の主体金具と、鍔部を有し、前記センサ素子を囲むと共に前記主体金具と離間する筒状のセパレータと、前記セパレータを覆い前記主体金具の後端側に配置される筒状の外筒であって、前記セパレータの後端向き面に当接して前記セパレータの後端側への移動を規制する内側凸部を有する外筒と、前記セパレータの後端側に配置され、該セパレータと離間しつつ前記外筒の後端側に収容されるシール部材と、前記鍔部の先端向き面の少なくとも一部をなす当接面に当接しつつ前記外筒に固定される環状の留め金具と、を備えるガスセンサであって、前記セパレータには、自身の周方向の回転を規制する回転規制部が形成されており、前記留め金具には前記回転規制部と当接する係合部が形成されていることを特徴とする。
このガスセンサによれば、シール部材をセパレータから離間させてシール部材の熱劣化を抑制することができる。又、シール部材の代わりに、外筒の内側凸部がセパレータの後端向き面に当接してセパレータの後端側への移動を規制するので、留め金具と内側凸部との間にセパレータを容易かつ確実に保持することができる。さらに、留め金具とセパレータとに、それぞれ係合部と回転規制部を設けることで、回転規制のために別部材を用意しなくとも、シール部材をセパレータから離間させたことに起因するセパレータの周方向の回転を容易に規制することができる。
【0006】
請求項1記載のガスセンサにおいて、前記鍔部の前記先端向き面には、前記当接面が周方向に断続して複数形成されると共に、前記回転規制部は隣接する前記当接面同士の間に形成されていてもよい。
このガスセンサによれば、係合部と回転規制部が周方向に複数当接するので、セパレータの周方向の回転をより確実に規制することができる。
【0007】
請求項1記載のガスセンサにおいて、さらに、前記外筒の内側に配置され、軸線方向に延びる筒状部、及び該筒状部から径方向内側に延出する延出部を有すると共に、自身の先端向き面が前記セパレータの後端向き面に当接する内筒を備え、前記シール部材の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接するようにしてもよい。
このガスセンサによれば、シール部材とセパレータとの間に内筒が配置されているが、内筒とセパレータとの間の接触面積は小さい。このため、セパレータからシール部材への熱の伝達は減少し、シール部材の熱劣化を抑制することができる。又、内筒を介してセパレータをシール部材で先端側に押圧するので、留め金具と内筒との間にセパレータを容易かつ確実に保持することができる。
【0008】
又、本発明のガスセンサは、先端側に検出部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の外周面を囲む筒状の主体金具と、鍔部を有し、前記センサ素子を囲むと共に前記主体金具と離間する筒状のセパレータと、前記セパレータを覆い前記主体金具の後端側に配置される筒状の外筒と、前記外筒の内側に配置され、軸線方向に延びる筒状部、及び該筒状部から径方向内側に延出する延出部を有すると共に、自身の先端向き面が前記セパレータの後端向き面に当接する内筒と、自身の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接し、該セパレータと離間しつつ前記外筒の後端側に収容されるシール部材と、前記鍔部の先端向き面の少なくとも一部をなす当接面に当接しつつ前記外筒に固定される環状の留め金具と、を備えるガスセンサであって、前記セパレータには、自身の周方向の回転を規制する回転規制部が形成されており、前記内筒には前記回転規制部と当接する係合部が形成されていることを特徴とする。
このガスセンサによれば、シール部材とセパレータとの間に内筒が配置されているが、内筒とセパレータとの間の接触面積は小さい。このため、セパレータからシール部材への熱の伝達は減少し、シール部材の熱劣化を抑制することができる。又、内筒を介してセパレータをシール部材で先端側に押圧してセパレータの後端側への移動を規制するので、留め金具と内筒との間にセパレータを容易かつ確実に保持することができる。さらに、内筒とセパレータとに、それぞれ係合部と回転規制部を設けることで、回転規制のために別部材を用意しなくとも、シール部材をセパレータから離間させたことに起因するセパレータの周方向の回転を容易に規制することができる。
【0009】
請求項4記載のガスセンサにおいて、前記セパレータの前記後端向き面には、前記当接面が周方向に断続して複数形成されると共に、前記回転規制部は隣接する前記当接面同士の間に形成されていてもよい。
このガスセンサによれば、係合部と回転規制部が周方向に複数当接するので、セパレータの周方向の回転をより確実に規制することができる。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記シール部材は、軸線方向に貫通する通気孔を有し、前記通気孔には、自身の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接する撥水性の通気フィルタが挿入されるようにしてもよい。
また、前記内筒の前記延出部は前記通気孔に連通する貫通孔を有し、前記通気孔には、筒状のフィルタ留め金具がさらに挿入され、前記貫通孔と前記フィルタ留め金具の内部空間とが連通しつつ、前記フィルタ留め金具の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接するようにしてもよい。
さらに、前記通気フィルタは、前記フィルタ留め金具の外側を覆うシート状のフィルタであり、前記フィルタ留め金具は、径方向外側に突出するフランジ部を自身の先端側に備え、前記フランジ部の先端向き面が前記内筒の前記延出部に当接するようにしてもよい。
このガスセンサによれば、外部からシール部材内の通気フィルタを介して基準ガス(大気)をガスセンサ内に導入する際、通気フィルタやフィルタ留め金具、そのフランジ部の先端向き面に内筒の延出部を当接させることで、シール部材内に配置した通気フィルタやフィルタ留め金具の先端側への脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ガスセンサにおけるシール部材の熱劣化を抑制すると共に、セパレータの周方向の回転を容易に規制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、
図1〜
図3を参照し、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)100について説明する。
図1はガスセンサ100の軸線O方向に沿う断面図、
図2はセパレータ70、留め金具80の分解斜視図、
図3はセパレータ70と留め金具80との係合状態を示す平面図である。なお、
図1の下側(センサ素子10の検出部10aが位置する側)を「先端側」と称し、上側(センサ素子10の電極取出部(電極パッド)10eが位置する側)を「後端側」と称する。
【0014】
ガスセンサ100は、センサ素子10を組み付けたアッセンブリである。ガスセンサ100は、軸線O方向(
図1の上下方向)に延びる板状のセンサ素子10と、自動車エンジンの排気管に固定される主体金具2とを備えている。主体金具2は略円筒状をなし、排気管に固定されるためのねじ部24が外表面に形成される一方、内孔25を有し、内孔25から径方向内側に突出する棚部2pを先端側に有している。そして、主体金具2はセンサ素子10を内孔25内に収容すると共に、センサ素子10の先端側に設けられた検出部10aと後端側に設けられた電極パッド10eをそれぞれ主体金具2から突出させた状態で、センサ素子10を保持している。また、主体金具2の内周面とセンサ素子10の外周面との間には、センサ素子10の外周面を囲むセラミック製の環状の保持部材21、粉末充填材(滑石リング)22、23、およびセラミック製のスリーブ30がこの順に検出部10a側から積層されている。そして、主体金具2の後端部2aを加締めてスリーブ30を先端側に押し付けることにより、保持部材21が棚部2pに係止されつつ滑石リング22,23が押し潰れて内孔25内に充填され、センサ素子10が主体金具2内の所定位置にしっかりと固定される。滑石リング22,23としては、滑石(セラミック粉末)、ガラス(ケイ酸ガラスまたはケイ酸塩ガラス等のケイ酸化合物)を挙げることができる。
なお、保持部材21及び滑石リング22は金属カップ20を介して主体金具2の内孔25内に収容されている。
【0015】
また、主体金具2の先端側外周には、センサ素子10の検出部10aを囲む金属製の外部プロテクタ4および内部プロテクタ3が取り付けられている。
なお、この例ではセンサ素子10は、固体電解質層表面に一対の電極を配置した構成の酸素センサ素子になっていて、又、セルを活性化させるためのヒータや、固体電解質層を保護するための絶縁層(アルミナ等)が積層されている。さらに、センサ素子10の検出部10aの表面を多孔質保護層12が覆っている。
【0016】
一方、センサ素子10の後端側の両板面にそれぞれ設けられた電極パッド10e(この例では各面に2個ずつ計4個)は、円筒状のセラミック製セパレータ70で囲まれている。後述するように、セパレータ70は、センサ素子10の挿通孔70hを中心に有すると共に、この挿通孔70hに連通して複数の端子金具60(この例では4個)をそれぞれ収容する空孔71h(
図2参照、この例では4個)を有している。そして、それぞれ仕切られた空孔71hに各端子金具60が絶縁を確保してそれぞれ取付けられ、端子金具60がセンサ素子10の各電極パッド10eにそれぞれ電気的に接続されている。
セパレータ70は、先端側に本体部70cが設けられると共に、後端側には、本体部70cから拡径するように突出する鍔部70dが設けられている。そして、本体部70cと鍔部70dとは、先端に向かって縮径する先端向き面70b(テーパー面)により繋がっている。
【0017】
セパレータ70の後端には、円筒状でゴム製のシール部材(グロメット)5がセパレータ70と離間して配置され、セパレータ70とグロメット5が金属製の外筒90に覆われている。外筒90の軸線O方向中央付近には、セパレータ70を保持する環状の留め金具80が加締め固定され、さらに外筒90の上記加締め部より後端部が後端側へ向かって縮径して内側凸部90aを形成している。
図2に示すように、留め金具80は金属製で略円筒状をなし、その後端縁から内面に向かって折り返し面80bを有する長片80sを周方向に等間隔で複数(この例では6個)有している。
そして、留め金具80の折り返し面80bがセパレータ70の先端向き面70bに嵌め込まれると共に、内側凸部90a(の先端向き面)がセパレータ70の後端向き面70aに係止する。これにより、セパレータ70が先端側と後端側の上下で軸線O方向に挟まれつつ、軸線O方向に主体金具2(の後端部2a)と離間して保持される。又、長片80sは本体部70cに当接し、長片80sの弾性力により、外筒90に加えられた衝撃がセパレータ70に直接伝わらないようになっている。
【0018】
セパレータ70内に保持された各端子金具60は先端で内側に折り返され、折り返し部分がセンサ素子10の各電極パッド10eに電気的に接続するようになっている。一方、各端子金具60の後端側はセパレータ70の後端から突出する圧着部65になっている。圧着部65は自身の内側にリード線68を加締め接続している。各リード線68は、グロメット5のそれぞれ別個の貫通孔5h(
図2参照)を通されて外部に引き出されている。
さらに、外筒90の後端側が加締められ、グロメット5が外筒90内に保持されている。このようにして内部にセパレータ70及びグロメット5を保持した外筒90は、主体金具2の後端側に嵌合され、嵌合部を全周溶接して両者が接続される。
【0019】
次に、
図2を参照し、セパレータ70及び留め金具80の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、セパレータ70の鍔部70dの先端向き面70bは、留め金具80(の折り返し面80b)との当接面となっている。又、先端向き面70bは周方向に断続して複数形成され(この例では6個)、隣接する先端向き面(当接面)70b同士の間には、先端向き面70bよりも後端側に凹むテーパー面をなす凹面70eが形成されている。そして、先端向き面70bと凹面70eとは周方向に交互に配置され、凹面70eも複数形成されている(この例では6個)。
凹面70eは鍔部70dから先端に向かって縮径して本体部70cに繋がっている。そして、凹面70eと、隣接する先端向き面70bとの間には、軸線O方向に平行な段部をなす回転規制部70fが形成されている。なお、回転規制部70fは、先端向き面(当接面)70bの周方向に対して直角をなしているが、当接面70bの周方向に対して角度を持っていれば(平行でなければ)よく、直角でなくてもよい。
一方、留め金具80の隣接する長片80s同士の間には、折り返し面80bよりも径方向内側に延びる縁部80eが形成されている。そして、折り返し面80bと縁部80eとは周方向に交互に配置され、縁部80eも複数形成されている(この例では6個)。そして、縁部80eの長片80sに向く側端は、当接面70bの周方向に対して角度を持った係合部80fを形成する。
【0020】
そして、
図3に示すように、留め金具80の折り返し面80bにセパレータ70の先端向き面70bを嵌め込むと、凹面70eに縁部80eが入り込み、係合部80fが回転規制部70fに当接(嵌合)する。ここで、留め金具80自身は外筒90に固定されているため、留め金具80によってセパレータ70の周方向の回転が規制される。なお、
図3のハッチングはセパレータ70を示す。
なお、本発明においては、セパレータ70の周方向の回転を完全に防止しなくてもよく、端子金具60と電極パッド10eとの接続に影響を与えない程度の角度で周方向にセパレータ70が多少回転してもよい。この場合、周方向にて凹面70eに縁部80eがぴったりと嵌合せず、両者が周方向に多少の遊びGを設けて遊嵌され、周方向に多少回転したときに係合部80fに回転規制部70fが当接することになるが、工作精度等を考慮すれば、かかる遊びを設けてもよい。
又、本実施形態では、留め金具80の折り返し面80bとセパレータ70の先端向き面70bとが当接せずに隙間Hを生じるように配置されており、少なくとも凹面70eが縁部80eに当接していればよい。
【0021】
以上のように、本実施形態においては、グロメット5をセパレータ70から離間させてグロメット5の熱劣化を抑制することができる。又、グロメット5を押圧する代わりに、外筒90の内側凸部90aがセパレータ70の後端向き面70aを先端側へ押圧するので、留め金具80と内側凸部90aとの間にセパレータ70を容易かつ確実に保持することができる。さらに、留め金具80とセパレータ70とに、それぞれ係合部80fと回転規制部70fを設けることで、回転規制のために別部材を用意しなくとも、グロメット5をセパレータ70から離間させたことに起因するセパレータ70の回転を容易に規制することができる。
【0022】
次に、
図4〜
図6を参照し、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)110について説明する。
図4はガスセンサ110の軸線O方向に沿う断面図、
図5はセパレータ75、留め金具80及び内筒40の分解斜視図、
図6はセパレータ75と内筒40との係合状態を示す平面図である。
なお、第2の実施形態に係るガスセンサ110において、第1の実施形態に係るガスセンサ100と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。一方、ガスセンサ110は、内筒40を有する点、外筒90が内側凸部90aを有しない点、並びにセパレータ75及びシール部材(グロメット)50の構成が第1の実施形態に係るガスセンサ100と異なっている。
【0023】
図4において、外筒90の内側におけるグロメット50とセパレータ75の間には、金属製で後端側が閉じた有底円筒状の内筒40が配置されている。内筒40は軸線方向に延びる筒状部、及び、該筒状部の後端側にて径方向内側に延出する延出部40aを有し、内筒40の先端側には径方向外側に突出するフランジ部40gが形成されている(
図5参照)。フランジ部40gの先端向き面40b(
図5)はセパレータ75の後端向き面75aに当接し、延出部40aはグロメット50の先端向き面50aに当接している。そして、外筒90の後端側が加締められ、グロメット50が外筒90内に保持されると共に、グロメット50が内筒40をセパレータ75に向かって押圧して内筒40が外筒90内に保持されている。
そして、留め金具80の縁部80eがセパレータ75の先端向き面(当接面)75bに係止すると共に、内筒40の先端向き面40bがセパレータ75の後端向き面75aに係止する。これにより、セパレータ75が先端側と後端側の上下で軸線O方向に挟まれつつ、軸線O方向に主体金具2(の後端部2a)と離間して保持される。
図5に示すように、セパレータ75は、セパレータ70と同様、先端側に本体部75cが設けられると共に、後端側には、本体部75cから拡径するように突出する鍔部75dが設けられている。そして、本体部75cと鍔部75dとは、先端に向かって縮径する先端向き面75b(テーパー面)により繋がっている。又、セパレータ75は、センサ素子10の挿通孔75hを中心に有すると共に、この挿通孔75hに連通して複数の端子金具60(この例では4個)をそれぞれ収容する空孔75k(この例では4個)を有している。
以上のように、第2の実施形態においては、グロメット50とセパレータ75との間に内筒40が配置されているが、内筒40とセパレータ75との間の接触面積は小さい。このため、セパレータ70からグロメット50への熱の伝達は減少し、グロメット50の熱劣化を抑制することができる。又、内筒40を介してセパレータ75をグロメット50で先端側に押圧するので、留め金具80と内筒40との間にセパレータ75を容易かつ確実に保持することができる。なお、縁部80eは先端向き面(当接面)75bに当接するが、折り返し面80bは先端向き面75bと隙間を設けて配置されている。これは、折り返し面80bが先端向き面75bと当接すると、ガスセンサの使用時のセパレータ75の振動等によって折り返し面80bが影響を受けるためである。
【0024】
一方、第2の実施形態においては、留め金具80には、回転規制部及び係合部が形成されていない。又、内筒40の先端向き面40bとセパレータ75との接触面積は小さく、両者の摩擦抵抗も小さいため、内筒40の押圧力だけではセパレータ75の周方向の回転を規制することはできない。
そこで、第2の実施形態では、
図5に示すようにセパレータ75と内筒40とに、それぞれ回転規制部75f及び係合部40を設ける。なお、内筒40はグロメット50の先端向き面50aと広い面積で接触しているので、グロメット50との摩擦力によって内筒40自身は周方向に(ほとんど)回転しない。そのため、内筒40によってセパレータ75の周方向の回転が規制される。
【0025】
具体的には、
図5に示すように、セパレータ75の後端向き面75aの外周縁には、周方向に等間隔に複数の矩形片75e(この例では6個)が形成されている。そして、矩形片75eの側壁75fは、先端向き面(当接面)75bの周方向に対して直角をなし、「当接面75bの周方向に対して角度を持った」回転規制部をなしている。但し、回転規制部75fは、先端向き面(当接面)75bの周方向に対して角度を持っていれば(平行でなければ)よく、直角でなくてもよい。
一方、内筒40のフランジ部40gは、径方向内側に凹む複数の切欠き部40n(この例では6個)を周方向に等間隔で有し、フランジ部40gは平面から見て花びら状になっている。そして、切欠き部40nの側端は、当接面75bの周方向に対して角度を持った係合部40fを形成する。
【0026】
そして、
図6に示すように、内筒40をセパレータ70の後端向き面75aに設置すると、切欠き部40nの内側に矩形片75eが入り込み、回転規制部75fが係合部40fに当接(嵌合)する。ここで、内筒40自身は周方向に(ほとんど)回転しないため、内筒40によってセパレータ75の周方向の回転が規制される。なお、
図6のハッチング部分はフランジ部40gを示す。
第2の実施形態においても、セパレータ75が周方向に多少回転してもよい。この場合、周方向にて矩形片75eが切欠き部40nにぴったりと嵌合せず、両者の間に多少遊びGを設けて遊嵌してもよい。又、径方向に矩形片75eが切欠き部40nに当接せずに隙間Hを生じてもよい。
【0027】
以上のように、第2の実施形態においては、グロメット50とセパレータ75との間に内筒40が介装され、セパレータ75からグロメット50への熱の伝達が減少するので、グロメット50の熱劣化を抑制することができる。又、内筒40を介してセパレータ75をグロメット50で先端側に押圧するので、留め金具80と内筒40との間にセパレータ75を容易かつ確実に保持することができる。さらに、内筒40とセパレータ75とに、それぞれ係合部40fと回転規制部75fを設けることで、回転規制のために別部材を用意しなくとも、グロメット50をセパレータ75から離間させたことに起因するセパレータ75の回転を容易に規制することができる。
【0028】
なお、
図5に示すように、第2の実施形態において、グロメット50の中心には軸線O方向に貫通する通気孔50hが形成され、通気孔50hには、筒状のフィルタ留め金具55と、フィルタ留め金具55の外側を覆う撥水性の通気フィルタ52が挿入されている。これにより、グロメット50の外部から基準ガス(大気)をガスセンサ内に導入可能になっている。通気フィルタ52はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂からなり、水滴を通さず大気を通すことができる。
フィルタ留め金具55は、金属製で後端側が閉じた有底円筒状をなしている。フィルタ留め金具55の後端向き面には中心孔55hが形成され、中心孔55hから通気フィルタ52を介して基準大気がガスセンサ内に流入する。一方、フィルタ留め金具55の先端側には径方向外側に突出するフランジ部55fが形成されている。又、グロメット50の先端向き面50a側にて、通気孔50hの周縁が後端側へ凹んで凹部50a1を形成し、フランジ部55fの後端向き面55aが凹部50a1に当接し(凹部50a1に収容され)、フィルタ留め金具55の後端側への脱落を防止する。
【0029】
一方、フィルタ留め金具55の先端側への脱落は、凹部50a1とフランジ部55fとの間の摩擦力によって防止されるが、ガスセンサ使用時の振動等によってフィルタ留め金具55が先端側へ脱落するおそれがある。そこで、フランジ部55fの先端向き面55bに内筒40の延出部40aを当接させることで、フィルタ留め金具55の先端側への脱落を防止することができる。
なお、内筒40の延出部40aには、フィルタ留め金具55の内面に連通する貫通孔40hを設けるが、フィルタ留め金具55が貫通孔40hを通って脱落しないよう、貫通孔40hがフランジ部55fと完全に重ならないようにする必要がある。本実施形態では、フランジ部55fの直径が貫通孔40hの孔径よりも大きく形成されているため、フィルタ留め金具55が貫通孔40hを通って脱落することを防止している。
又、各リード線68は、内筒40の延出部40aを貫通するリード孔40h、及びグロメット50のリード孔51hを通されて外部に引き出される。
【0030】
次に、
図7、
図8を参照し、本発明の第3の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)120について説明する。
図7はガスセンサ120の軸線O方向に沿う断面図、
図8はセパレータ70、留め金具80及び内筒45の分解斜視図である。
なお、第3の実施形態に係るガスセンサ120において、第1の実施形態に係るガスセンサ100及び第2の実施形態に係るガスセンサ110と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
ガスセンサ120は、ガスセンサ100、110を組み合わせた構成になっている。
つまり、ガスセンサ120は、ガスセンサ100と同一のセパレータ70及び留め金具80を有しており、第1の実施形態と同様、留め金具80とセパレータ70とにそれぞれ設けた係合部80fと回転規制部70fとにより、セパレータ70の回転を容易に規制することができる。
又、ガスセンサ120は、ガスセンサ110の内筒40と同様の内筒45を有しており、内筒45の後端側には筒状部から径方向内側に延出する延出部45aが形成され、内筒45の先端側には径方向外側に突出するフランジ部45gが形成されている。このため、第2の実施形態と同様、グロメット50とセパレータ70との間に内筒45が介装され、セパレータ70からグロメット50への熱の伝達が減少するので、グロメット50の熱劣化を抑制することができる。又、内筒45を介してセパレータ70をグロメット50で先端側に押圧するので、留め金具80と内筒45との間にセパレータ70を容易かつ確実に保持することができる。
さらに、第1の実施形態と同様、外筒90に内側凸部90aを設けているので、内側凸部90aによってもセパレータ70を先端側に押圧し、セパレータ70をより安定して保持することができる。
【0032】
但し、フランジ部45gには切欠き部は形成されず、内筒45は係合部を有していないので、内筒45はセパレータ70の回転を規制する機能を持っていない。
なお、内筒45の延出部45aには、内筒40と同様に、フィルタ留め金具55の内面に連通する貫通孔45hと、各リード線68を通すためのリード孔45kとが形成されている。第3の実施形態においても、フランジ部55fの先端向き面55b(
図5参照)に内筒45の延出部45aを当接させることで、フィルタ留め金具55の先端側への脱落を防止することができる。
【0033】
次に、
図9を参照し、本発明の第4の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)130について説明する。
図9はガスセンサ130の軸線O方向に沿う断面図である。
なお、第4の実施形態に係るガスセンサ120において、ガスセンサ100、110と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
ガスセンサ130は、ガスセンサ100、110を組み合わせた構成になっている。
つまり、ガスセンサ120は、ガスセンサ110と同一のセパレータ75及び内筒40を有しており、第2の実施形態と同様、内筒40とセパレータ75とにそれぞれ設けた係合部40fと回転規制部75fとにより、セパレータ75の回転を容易に規制することができる。
又、第2の実施形態と同様、グロメット50とセパレータ75との間に内筒40が介装され、セパレータ75からグロメット50への熱伝達が減少するので、グロメット50の熱劣化を抑制することができる。又、内筒40を介してセパレータ75をグロメット50で先端側に押圧するので、留め金具80と内筒40との間にセパレータ75を容易かつ確実に保持することができる。
さらに、第1の実施形態と同様、外筒90に内側凸部90aを設けているので、内側凸部90aによってもセパレータ75を先端側に押圧し、セパレータ75をより安定して保持することができる。
【0035】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、セパレータ及び内筒の形状は上記に限定されない。
又、センサとしては、酸素センサの他、NOxセンサ、HC、H
2等のガス濃度を測定するためのガスセンサに適用することもできる。
内筒40の延出部40aの位置も筒状部の後端に限定されない。
又、通気フィルタ52もシート状に限定されず、例えば円柱状や円筒状であってもよい。又、フィルタ留め金具55の直径が貫通孔40hの孔径よりも大きく形成されていれば、フランジ部55fは省略してもよい。この場合、フィルタ留め金具55の先端縁が内筒40の延出部40aに当接する。
【0036】
例えば、第2の実施形態の変形例として、
図10に示すようなセパレータ76及び内筒46を用いてもよい。
図10において、セパレータ76は、セパレータ75と同様、先端側に本体部76cが設けられると共に、後端側には、本体部76cから拡径するように突出する鍔部76dが設けられている。そして、本体部76cと鍔部76dとは、先端に向かって縮径する先端向き面76b(テーパー面)により繋がっている。先端向き面76bは、留め金具80の縁部80e(図示せず)に係止する。そして、セパレータ76の後端向き面76aの外周縁には、互いに180度の位置に1対の矩形片76eが形成され、各矩形片76eの同じ向き(
図10の紙面奥側)の側壁76fは、先端向き面(当接面)76bの周方向に対して直角をなし、「周方向に当接面76bと角度を持った」回転規制部をなしている。
一方、内筒46は内筒40と同様の有底円筒状をなし、内筒46の先端側にはそれぞれ径方向外側に突出する第1フランジ部46g1及び第2フランジ部46g2が形成されている。第1フランジ部46g1及び第2フランジ部46g2はそれぞれ半円弧状をなし、第1フランジ部46g1は第2フランジ部46g2よりも径大となっている。そして、第1フランジ部46g1と第2フランジ部46g2との境界部分の側端は、当接面76bの周方向に対して直角に向く係合部46fを形成する。
従って、内筒46をセパレータ76の後端向き面76aに設置すると、1対の矩形片76eの紙面奥側に第1フランジ部46g1が位置し、回転規制部76fが係合部46fに当接する。そのため、セパレータ76の周方向の回転が規制される。
【0037】
又、第2の実施形態の変形例として、
図11に示すようなセパレータ77及び内筒47を用いてもよい。
図11において、セパレータ77は、セパレータ75と同様、先端側に本体部77cが設けられると共に、後端側には、本体部77cから拡径するように突出する鍔部77dが設けられている。そして、本体部77cと鍔部77dとは、先端に向かって縮径する先端向き面77b(テーパー面)により繋がっている。先端向き面77bは、留め金具80の縁部80e(図示せず)に係止する。そして、セパレータ77の後端向き面77aの外周縁から先端側に向かい互いに180度の位置から、セパレータ77の側壁に沿って先端向き面77bよりやや後端側まで、2つの溝77sが削られている。そして、溝77sの両側面が先端向き面(当接面)77bの周方向に対して直角をなし、「当接面77bの周方向に対して角度を持った」回転規制部をなしている。
一方、内筒47は内筒40と同様の有底円筒状をなし、内筒47の先端側には径方向外側に突出するフランジ部47gが形成されている。そして、フランジ部47gの互いに180度の位置に対向する1対の部分がコの字状に切り抜かれ、切り抜き部分が先端に向かって折り曲げられて長片47sを有している。長片47sの両側端は、当接面77bの周方向に対して直角に向く係合部47fを形成する。
従って、内筒47をセパレータ77の後端向き面77aに設置すると、1対の溝77sに各長片47sが挿入され、回転規制部77fが係合部47fに当接する。そのため、セパレータ77の周方向の回転が規制される。
【0038】
第1の実施形態の変形例として、
図12に示すようなセパレータ78を用いてもよい。
図12において、セパレータ78は、セパレータ70と同様、先端側に本体部78cが設けられると共に、後端側には、本体部78cから拡径するように突出する鍔部78dが設けられている。そして、本体部78cと鍔部78dとは、先端に向かって縮径する先端向き面78b(テーパー面)により繋がっている。先端向き面78bは、留め金具80の縁部80e(図示せず)に係止する当接面となっている。又、先端向き面(当接面)78bの一箇所から先端向き面78bよりも軸線O方向の後端側に凹むテーパー面をなす1個の凹面78eが形成されている。
凹面78eは鍔部78dから先端に向かって縮径して本体部78cに繋がっている。そして、凹面78eと先端向き面78bとの間には、軸線O方向に平行な内側凸部をなす1対の回転規制部78fが形成されている。回転規制部78fは、先端向き面(当接面)78bの周方向に対して直角をなし、「当接面78bの周方向に対して角度を持っている」。
そして、留め金具80にセパレータ78を嵌め込むと、凹面78eに縁部80eが入り込んで係止し、係合部80fが回転規制部78fに当接する。留め金具80自身は外筒90に固定されているため、セパレータ78の周方向の回転が規制される。
【0039】
第1の実施形態の変形例として、
図13に示すようなセパレータ79を用いてもよい。
図13において、セパレータ79は、セパレータ70と同様、先端側に本体部79cが設けられると共に、後端側には、本体部79cから拡径するように突出する鍔部79dが設けられている。そして、本体部79cと鍔部79dとは、先端に向かって縮径する先端向き面79b(テーパー面)により繋がっている。先端向き面79bは、留め金具80の縁部80e(図示せず)に係止する当接面となっている。又、先端向き面(当接面)79bよりも先端側の本体部79cの一箇所に矩形片79eが突設され、矩形片79eの両側面が先端向き面(当接面)79bの周方向に対して直角をなし、「当接面79bの周方向に対して角度を持った」回転規制部79fをなしている。
そして、留め金具80にセパレータ79を嵌め込むと、隣接する長片80sの間に矩形片79eが入り込み、回転規制部79fが長片80sの側端(係合部)89fに当接する。留め金具80自身は外筒90に固定されているため、セパレータ79の周方向の回転が規制される。