(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有機電界発光装置は、反射電極と、有機電界発光層と、光取出し層と、透明基板とをこの順に少なくとも有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0019】
前記有機電界発光装置は、前記有機電界発光層からの発光を前記透明基板から出射するボトムエミッション型であることが好ましい。トップエミッション型の場合には有機電界発光層からの発光を透過しなければならないので、可視領域(波長域400nm〜700nm)で透明であることが必要である。ボトムエミッション型の場合には特に透明である必要は無いが、有機化合物としてシリコーン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等;無機化合物としてSiNx、SiON、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2層等を幅広く採用でき、素子形成する際の材料の選択性、コスト的にはボトムエミッション型の方が好ましい。
【0020】
本発明においては、前記有機電界発光層から前記透明基板までの合計平均厚みdと、前記有機電界発光層の有効発光領域の外周縁部からはみ出した非発光領域における最小幅wとの比(w/d)が9以上であり、20以上が好ましく、光取出し効率が収束し、より高い光取出し効率が得られる点から、40以上がより好ましい。このように、前記比(w/d)を9以上にすること、即ち、有機電界発光層における有効発光領域の表面積を他の層の表面積より小さく構成することにより、発光した光の損失を小さくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。前記比(w/d)が、9未満であると、最大光取出し効率の0.8倍より低くなり、十分な光取出し効率が得られなくなることがある。
前記有機電界発光層から前記透明基板までの合計平均厚みdは、有機電界発光層、光取出し層、及び透明基板の合計平均厚みであることが好ましい。
ここで、前記有機電界発光層の有効発光領域とは、前記有機電界発光層において、実際に、発光している領域を意味する。
前記有機電界発光層から前記透明基板までの合計平均厚みdは、200μm〜1,500μmが好ましく、500μm〜1,000μmがより好ましい。
前記有機電界発光層の有効発光領域の外周縁部からはみ出した非発光領域における最小幅wは、0.5mm〜50mmが好ましく、2mm〜30mmがより好ましい。
【0021】
<反射電極>
前記反射電極は、光取出し側の反対側に配置される電極であり、該反射電極は、有機電界発光層からの発光を反射する作用を有する。
前記反射電極の材料としては、反射率の点から、銀(Ag)が好適に用いられる。銀(Ag)以外の金属、例えばMgAg、Alなどを反射電極に用いると、光取出し効率の向上を図れないことがある。なお、前記反射電極を銀(Ag)とする場合は、電子輸送層間には電気特性を改善するために光学的に無視できる程度(10nm以下)のAlやLiF層を追加したものも含まれる。
前記反射電極の形成には、例えば真空蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられる。
前記反射電極の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜1μmが更に好ましい。
【0022】
<透明基板>
前記透明基板の屈折率は、前記有機電界発光層の屈折率(微粒子層のポリマーの屈折率)より小さいことが好ましい。また、有機電界発光層の屈折率と同等である微粒子層のポリマーの屈折率よりも小さいことが好ましい。前記透明基板の屈折率が前記有機電界発光層の屈折率より高いと、有機電界発光層に発光される光が透明基板に放射する際、光の層間反射が発生し、反射電極と透明基板の間を往復するうちに、有機電界発光層や反射電極に吸収される成分は損失になり、光取出し効率が低下する原因になる。
前記透明基板の屈折率は、前記有機電界発光層の屈折率より小さければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばガラスの場合には、1.4〜1.8であることが好ましい。
【0023】
前記透明基板としては、その形状、構造、大きさ等を適宜選択すればよく、一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。前記透明基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。前記透明基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機電界発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0024】
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂等の有機材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記基板としてガラスを用いる場合には、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカ等のバリアコートを施したもの(例えば、バリアフィルム基板)を使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0026】
前記熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
これらの中でも、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等の透明な合成樹脂が特に好ましい。
【0027】
前記透明基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラスを用いる場合には、0.2mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0028】
<光取出し層>
前記光取出し層は、光取出し機能を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微粒子層であることが好ましい。
前記微粒子層は、ポリマーと、微粒子とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0029】
前記微粒子層におけるポリマーの屈折率は、前記微粒子の屈折率と異なることが好ましい。
有機電界発光層の屈折率と同等又はそれ以上である屈折率を持つポリマーに、ポリマーの屈折率と異なる屈折率を持つ微粒子が存在する場合、有機電界発光層からポリマーに放射してきた光が微粒子に当たるたびに、ポリマーと微粒子間の屈折率差による、光が散乱され、光の放射角度が変換されるので、元々全反射される高放射角度の光が低放射角度に変換されると、光が透明基板から空気に放射される。また、高放射角度になる光は反射電極方向に散乱され、反射電極に反射されると、再び、微粒子層に放射し、放射角度が変換されるので、ポリマーにポリマーの屈折率と異なる微粒子が存在することによる、有機電界発光装置の光取出し効率を向上させることができる点で好ましい。
【0030】
−微粒子−
前記微粒子としては、屈折率が微粒子層のポリマーの屈折率と異なり、光を散乱可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよく、2種以上の微粒子を含有することが好ましい。
【0031】
前記有機微粒子としては、例えばポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ、などが挙げられる。
前記無機微粒子としては、例えばZrO
2、TiO
2、Al
2O
3、In
2O
3、ZnO、SnO
2、Sb
2O
3、などが挙げられる。これらの中でも、TiO
2、ZrO
2、ZnO、SnO
2が特に好ましい。
【0032】
前記微粒子の屈折率は、前記微粒子層のポリマーの屈折率と異なるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.55〜2.6であることが好ましく、1.58〜2.1であることがより好ましい。
前記微粒子の屈折率は、例えば自動屈折率測定器(KPR−2000、株式会社島津製作所製)を用い、屈折液の屈折率を測定してから、精密分光計(GMR−1DA、株式会社島津製作所製)で、シュリブスキー法により測定することができる。
前記微粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜6μmであることがより好ましい。前記微粒子の平均粒径が、10μmを超えると、光の殆どが前方散乱になり、散乱微粒子による光の角度を変換する能力が低下してしまうことがある。また、上述したとおり、高放射角度の光が有機電界発光層に戻り、反射電極に反射され、再び微粒子層に再放射するが、有機電界発光装置のサイズの有限性と有機電界発光層や反射電極の吸収があるため、光取出し効率が低下することがある。一方、前記微粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレーリー散乱の領域に変化し、微粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、発光素子の色度が大きく変わってしまったり、光取出し効率が低下することが予想される。
前記微粒子の平均粒径は、例えば日機装株式会社製ナノトラックUPA−EX150等の動的光散乱法を利用した装置や、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
【0033】
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、20%〜70%であることが好ましく、30%〜65%であることがより好ましい。前記体積充填率が、20%未満であると、微粒子層に入射してきた光が微粒子に散乱される確率が小さく、微粒子層の光角度を変換する能力が小さいので、微粒子層の厚みを充分に厚くしないと光取出し効率が低下することがある。また、前記微粒子層の厚みを厚くすることはコストの増加に繋がるおそれがある。更に、後方散乱が増えることにより光取出し効率が低下することがある。一方、前記体積充填率が、70%を超えると、最密充填に近くなり、微粒子層の特性を制御しにくくなることがある。
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、例えば重量測定法により測定することができる。まず、粒子比重測定装置(MARK3、株式会社ユニオン・エンジニアリング製)で粒子の比重を測定して、電子天秤(FZ−3000i、エー・アンド・デイ社製)で微粒子の重量を測定する。次に、作製した微粒子層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で微粒子層の厚みを測定し、微粒子層における微粒子の体積充填率を求めることができる。
【0034】
<<ポリマー>>
前記微粒子層におけるポリマーの屈折率は、有機電界発光層の屈折率と同等又はそれ以上であり、1.55〜1.95であることが好ましい。
このような高屈折率のポリマーとしては、該ポリマーを小粒径の高屈折率微粒子で高屈折に調整した高屈折率組成物が好適に用いられる。
前記高屈折率組成物は、前記微粒子と、小粒径の高屈折率微粒子と、マトリックスとを含有し、分散剤、溶媒、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0035】
−高屈折率微粒子−
前記高屈折率微粒子としては、屈折率が1.8〜2.8、更には1.9〜2.8であることが好ましい。;一次粒子の平均粒径が3nm〜100nm、更には5nm〜100nm、特には10nm〜80nmであることが好ましい。
前記高屈折率微粒子の屈折率が1.8以上であれば、微粒子層の屈折率を効果的に高めることができ、前記屈折率が2.8以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。また高屈折率微粒子の一次粒子の平均粒径が100nm以下であれば、形成される微粒子層のヘイズ値が高くなって層の透明性を損なうなどの不都合が生じないので好ましく、3nm以上であれば高い屈折率が保持されるので好ましい。
前記高屈折率微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による平均一次粒子径で表す。平均一次粒子径はそれぞれの微粒子の最大径の平均値で表し、長軸径と短軸径を有する場合、各微粒子の長軸径の平均値を平均一次粒子径とする。
【0036】
前記高屈折率微粒子としては、例えばTi、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,La、W、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。より好ましい高屈折率微粒子としては、Ti、Zr、Ta、In、及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物もしくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0037】
前記高屈折率微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない(以下、このような元素を「含有元素」と称することがある)。
前記含有元素としては、例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの含有元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを5質量%〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0038】
前記高屈折率微粒子は、含有元素としてCo、Zr、及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。これらの中でも、Coが特に好ましい。
Co、Al、及びZrの総含有量は、Tiに対し0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.2質量%〜7質量%であることが更に好ましく、0.3質量%〜5質量%であることが特に好ましく、0.5質量%〜3質量%であることが最も好ましい。
前記含有元素Co、Al、及びZrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部又は表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが更に好ましい。これらの含有元素のうち金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0039】
他の好ましい高屈折率微粒子としては、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、前記酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、例えばTa、Zr、In、Nd、Sb、Sn、Biなどが挙げられる。これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
前記特定の複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が特に好ましい。
【0040】
ドープされた金属イオンは、金属イオンとして、又は金属原子のいずれの形態で存在してもよく、前記複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することができる。複合酸化物の表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0041】
前記高屈折率微粒子は結晶構造を有することが好ましい。前記結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、前記特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率微粒子は、屈折率が1.9〜2.8を有することになり、好ましい。前記屈折率は、2.1〜2.8がより好ましく、2.2〜2.8が更に好ましい。このことにより、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、微粒子層自身並びに微粒子層と接する上/下の両層のそれぞれの耐候性を著しく改良することができる。
【0042】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法;イオン注入法[例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」株式会社シ−エムシー、1989年刊行、青木康、「表面科学」18巻(5)、262頁、1998、安保正一等、「表面科学」20巻(2)、60頁、1999等記載]等に従って製造できる。
【0043】
前記高屈折率微粒子は表面処理してもよい。前記表面処理とは、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施するもので、これにより、高屈折率微粒子表面の濡れ性が調整され有機溶媒中での微粒子化、高屈折率組成物中での分散性や分散安定性が向上する。粒子表面に物理化学的に吸着させる無機化合物としては、例えば、ケイ素を含有する無機化合物(SiO
2等)、アルミニウムを含有する無機化合物[Al
2O
3、Al(OH)
3等]、コバルトを含有する無機化合物(CoO
2、Co
2O
3,Co
3O
4等)、ジルコニウムを含有する無機化合物[ZrO
2、Zr(OH)
4等]、鉄を含有する無機化合物(Fe
2O
3等)、などが挙げられる。
【0044】
前記表面処理に用いる有機化合物としては、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0045】
具体的には、高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物が挙げられる。前記高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基としては、例えばカルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、これらを分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えばEO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げられる。
【0046】
前記カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。これらの中でも、シランカップリング剤が特に好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報、特開2001−310423号公報の段落番号〔0011〕〜〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの表面処理に用いる化合物は、2種類以上を併用することもできる。
【0047】
前記高屈折率微粒子は、これをコアとして他の無機化合物からなるシェルを形成したコア/シェル構造の微粒子であることも好ましい。前記シェルとしては、Al、Si、及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報に記載の内容が挙げられる。
【0048】
前記高屈折率微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状又は不定形状が好ましい。前記高屈折率微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
前記高屈折率微粒子の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、ポリマーの屈折率を1.55〜1.95とすることができる範囲であることが好ましい。
【0049】
前記マトリックスとしては、(A)有機バインダー、並びに(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物、の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0050】
−(A)有機バインダー−
前記(A)の有機バインダーとしては、(1)従来公知の熱可塑性樹脂、
(2)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(3)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、から形成されるバインダーが挙げられる。
【0051】
前記(1)、(2)又は(3)の有機バインダーと、微粒子と分散剤を含有する分散液から高屈折率組成物が調製されることが好ましい。この組成物は、支持体上に塗布され、塗膜が形成された後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化されて微粒子層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起させる方法が挙げられる。なかでも、前記(3)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0052】
更に、高屈折率組成物を塗布と同時又は塗布後に、微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0053】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が高屈折率微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0054】
{熱可塑性樹脂(A−1)}
前記(1)の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩ビ−酸ビ共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂、などが挙げられる。
【0055】
{反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ(A−2)}
前記(2)の反応性硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。
前記熱硬化型樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
前記電離放射線硬化型樹脂には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0056】
これらの反応性硬化性樹脂に必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊行)記載の化合物が挙げられる。
【0057】
{バインダー前駆体と重合開始剤との組み合わせ(A−3)}
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である前記(3)の組み合わせを用いて、光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0058】
前記バインダーの前駆体である光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性官能基、及びカチオン重合性官能基のいずれでもよい。
【0059】
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましく、分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが特に好ましい。
【0060】
前記ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。これらの中でも、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物が特に好ましい。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)又はそれらの混合物、及びそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0061】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が特に好ましい。
【0062】
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。更に別の例として、前記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0063】
脂肪族多価アルコール化合物としては、例えばアルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
【0064】
その他の重合性エステルとしては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報等に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を有するものなども好適に用いられる。
【0065】
更に脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するものなどが挙げられる。
【0066】
更にまた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻7号300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
次に、微粒子層のポリマーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0068】
前記カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。前記カチオン重合性有機化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2個〜10個が好ましく、2個〜5個がより好ましい。前記化合物の平均分子量は3,000以下が好ましく、200〜2,000がより好ましく、400〜1,500が更に好ましい。前記平均分子量が該下限値以上であれば、皮膜形成過程での揮発が問題となるなどの不都合が生じることがなく、前記上限値以下であれば、高屈折率組成物との相溶性が悪くなるなどの問題を生じないので好ましい。
【0070】
前記エポキシ化合物としては、例えば脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物などが挙げられる。
【0071】
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。更に、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などが挙げられる。
【0072】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価もしくは多価のフェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加体のモノもしくはポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。前記エポキシ化合物としては、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕に記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0073】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、脂環式エポキシドがより好ましい。前記エポキシ化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
環状チオエーテル化合物としては、前記エポキシ化合物のエポキシ環の代わりに、チオエポキシ環を有する化合物が挙げられる。
【0075】
環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0076】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等に記載の化合物などが挙げられる。
【0077】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",32巻2895頁(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",33巻2493頁(1995年)記載等}、ビニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻1015頁(1996年)、特開2002−29162号公報等}、イソプロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻2051頁(1996年)記載等}等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
また、前記多官能性化合物は、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕に記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0079】
以上述べたラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、質量比率(ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物)が、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0080】
次に、前記(3)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0081】
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記重合開始剤は、光及び/又は熱照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物であることが好ましい。前記光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0082】
前記ラジカルを発生する化合物は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。前記ラジカルを発生する化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、有機過酸化化合物(特開2001−139663号公報等)、アミン化合物(特公昭44−20189号公報)、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、特開平1−304453号公報等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(米国特許第3,479,185号明細書等)、ジスルホン化合物(特開平5−239015号公報、特開昭61−166544号公報等)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機ホウ酸化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0084】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の"Bull.Chem.Soc Japan",42巻2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Hutt,"J.Heterocyclic Chemistry",1巻(3号)、(1970年)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも1つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0085】
前記カルボニル化合物としては、例えば、「最新UV硬化技術」60〜62ページ[株式会社技術情報協会刊、1991年]、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、特開平11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0086】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin,"Rad.Tech'98.Proceeding April 19〜22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0087】
前記ラジカル発生化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル発生化合物の添加量としては、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜25質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記添加量の範囲において、高屈折率組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0088】
次に、光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
前記光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、前記光酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、オニウム化合物などが挙げられる。これらの中でも、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が特に好ましい。前記有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物の具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0089】
前記オニウム化合物としては、例えばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物、などが挙げられる。
【0090】
前記酸発生剤としては、オニウム塩が好適に用いられる。これらの中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から特に好ましい。
【0091】
前記オニウム塩としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩などが挙げられる。
【0092】
前記光酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0093】
前記酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記酸発生剤の添加量は、全カチオン重合性モノマーの全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。前記添加量が、前記範囲において、高屈折率組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0094】
前記高屈折率組成物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5質量%〜10質量%又はカチオン重合開始剤を1質量%〜10質量%の割合で含有していることが好ましく、ラジカル重合開始剤を1質量%〜5質量%、又はカチオン重合開始剤を2質量%〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0095】
前記高屈折率組成物には、紫外線照射により重合反応を行う場合、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。これらの増感剤としては、例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシン等)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミン等)などが挙げられる。
【0096】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10,000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750nm〜1,400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20,000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。
【0097】
前記近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。これらの中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。市販の染料並びに、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)シーエムシー、「特殊機能色素」[池森・柱谷編集、1986年、株式会社シーエムシー発行]、J.FABIAN,"Chem.Rev.",92巻1197〜1226頁(1992年)}、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、並びにExciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ及び特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0098】
−(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物−
前記マトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いて、ゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。
【0099】
前記有機金属化合物としては、例えばSi、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
前記加水分解可能な官能基な基としては、例えばアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。好ましい有機金属化合物は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物及びその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
【0100】
一般式(2):(R
21)
β−Si(Y
21)
4−β
ただし、前記一般式(2)中、R
21は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。Y
21は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR
22基、OCOR
22基を表す。ここで、R
22は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。βは0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは1である。ただし、βが0の場合は、Y
21はOR
22基又はOCOR
22基を表す。
【0101】
前記一般式(2)において、R
21の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。R
21のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0102】
置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0103】
これらの置換基のうちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイル}、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0104】
前記のようにR
22は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、アルキル基は特に限定はないが、例えばR
21の脂肪族基と同じものが挙げられ、アルキル基中の置換基の説明はR
21と同じである。
【0105】
前記一般式(2)の化合物の含有量は、前記高屈折率組成物の全固形分の10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0106】
前記一般式(2)の化合物としては、例えば特開2001−166104号公報の段落番号〔0054〕〜〔0056〕に記載の化合物が挙げられる。
【0107】
前記高屈折率組成物において、有機バインダーは、シラノール基を有するものであることが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、微粒子層の物理強度、耐薬品性、耐候性が更に改良され、好ましい。前記シラノール基は、例えば、高屈折率組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を該高屈折率組成物に配合し、この高屈折率組成物を透明支持体上に塗布して、前記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応又は重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0108】
前記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。前記触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等の金属アルコキシド類;β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類などが挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号〔0071〕〜〔0083〕に記載の化合物などが挙げられる。
【0109】
前記触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜50質量%がより好ましく、0.5質量%〜10質量%が更に好ましい。なお、反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0110】
前記高屈折率組成物において、マトリックスは特定の極性基を有することも好ましい。前記特定の極性基としては、例えばアニオン性基、アミノ基、四級アンモニウム基などが挙げられる。前記アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0111】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えばメチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが特に好ましい。なお、ケトン溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
前記ケトン系溶媒の含有量は、前記高屈折率組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
【0112】
特定の極性基を有するマトリックスは、例えば、高屈折率組成物に、高屈折率微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ及び、特定の極性基を有し、かつ架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、更に所望により、特定の極性基及び、架橋又は重合性の官能基を有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマーや多官能オリゴマー及び/又は一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0113】
前記特定の極性基を有する単官能性モノマーは、高屈折率組成物の中で高屈折率微粒子の分散助剤として機能することができ、好ましい。更に、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで微粒子層における高屈折率微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた微粒子層を作製することができる。
【0114】
前記高屈折率組成物中に前記微粒子を添加した塗布液を、前記透明基板上に、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光及び/又は熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化から有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理することも好ましい。
【0115】
光照射の光源は、紫外線光域又は近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0116】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm
2〜100mW/cm
2が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は100mJ/cm
2〜1,000mJ/cm
2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0117】
前記微粒子層の平均厚みは、5μm〜200μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。前記平均厚みが、5μm未満であると、微粒子層による十分な光角度変換がなく、最大な光取出し効率が得られないことがあり、200μmを超えると、光が散乱されすぎて、後方散乱の光が増え、有機電界発光素子内部に戻る光が多くなり、光取出し効率が低下する、また、微粒子層が厚いことは高コストに繋がることがある。
前記平均厚みは、例えば微粒子層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定し、微粒子層の厚みを求めることができる。
【0118】
<有機電界発光層>
前記有機電界発光層は、少なくとも発光層を有し、透明電極、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0119】
−発光層−
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、電界印加時に陽極又は正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に、陰極又は電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものなどを用いることができる。
【0120】
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記発光層の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などの方法が挙げられる。これらの中でも、抵抗加熱蒸着、コーティング法が特に好ましい。
【0121】
−透明電極−
前記透明電極の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば錫ドープ酸化インジウム(ITO)(屈折率(n)=2.0)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、ZnO(屈折率(n)=1.95)、SnO
2(屈折率(n)=2.0)、In
2O
3(屈折率(n)=1.9〜2.0)、TiO
2(屈折率(n)=1.90)などが挙げられる。これらの中でも、ITO、IZOが特に好ましい。
前記透明電極の屈折率は、1.65〜2.2であることが好ましい。
前記透明電極の平均厚みは、20nm〜200nmであることが好ましく、40nm〜100nmであることがより好ましい。
【0122】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の材料としては、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
前記正孔注入層、又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、LB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができる。
前記樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)樹脂、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0124】
−電子注入層、電子輸送層−
前記電子注入層、又は電子輸送層の材料としては、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電子注入層、又は電子輸送層の材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記電子注入層、又は電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層、又は電子輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解乃至分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができ、前記樹脂成分としては、例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
前記電子注入層、又は電子輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0126】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、バリア層、保護層、封止層、TFT基板などが挙げられる。
前記バリア層としては、大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiN、SiON、などが挙げられる。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、7nm〜750nmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記バリア層の厚みが、5nm未満であると、大気中の酸素及び水分の透過を防ぐバリア機能が不充分となることがあり、1,000nmを超えると、光線透過率が低下し透明性を損なうことがある。
また、前記バリア層の光学的性質は、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD法などが挙げられる。
【0127】
本発明の有機電界発光装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成されてもよい。
本発明の有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
【0128】
また、前記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0129】
ここで、
図16は、本発明の有機電界発光装置10の一例を示す概略図である。
この
図16の有機電界発光装置10は、透明電極3の光出射面上に、微粒子層5と、透明基板4とを有している。
一方、透明電極3上に、有機電界発光層3と、反射電極1とを有しており、これらが封止缶8で封止されたものである。
【0130】
本発明の有機電界発光装置は、例えば、各種照明、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0132】
下記モデルを用い、市販の光線追跡ソフト(ZEMAX Development Corporationの製品ZEMAX−EE)で、以下のようにして、シミュレーションを行った。
【0133】
<シミュレーションモデル>
図1に示す、複合反射層5、有機電界発光層(透明電極を含む)2と、微粒子層3と、透明基板4とをこの順に有する有機電界発光装置をシミュレーションモデルとして用意した。
透明基板4としては、ガラス基板(BK7、オハラ社製、屈折率ns=1.5)を用いた。
複合反射層5は、反射電極の種類と厚みで表し、有機電界発光装置の反射電極の物性と有機電界発光層の物性から複合反射率を換算し、反射電極の反射率として表して得られる層である。この複合反射層の反射率は層間屈折率差による有機電界発光層内に戻る光に対する反射率である。
ここでは、反射電極としてはAg、MgAg、又はAlを用意した。
有機電界発光装置の複合反射率は、有機電界発光層(透明電極を含む)、及び反射電極の吸収を考慮して、Ag反射電極の場合:0.87、MgAg反射電極の場合:0.83、Al反射電極の場合:0.77とした。
以下において、複合反射層は簡単に反射電極と表す。例えば複合反射層はAgで、複合反射率が0.87の場合は簡単に反射電極Agで表す。
この有機電界発光装置において、透明基板3の屈折率nsは1.5であり、有機電界発光層の屈折率(1.8)よりも小さい。
また、微粒子層4はポリマーと微粒子で構成され、微粒子としてポリスチレン(屈折率np=1.59、減衰係数k=0)を用いている。
微粒子層のポリマーの屈折率は、有機電界発光層の屈折率と同等或いはそれ以上である。
有機電界発光層(透明電極を含む)2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0)からの光配光分布はランバーシアン分布であることに設定した。
【0134】
<有機電界発光装置の複合反射率の見積もり>
有機電界発光装置の複合反射率の見積もりは、以下の方法で行った。
有機電界発光層での往復の透過率を0.9として、反射電極と有機電界発光層(屈折率n=1.8)の反射率を、典型的なAg(屈折率n=0.058、減衰係数k=3.58)、Mg(屈折率n=0.32、減衰係数k=5.33)、Al(屈折率n=0.93、減衰係数k=6.33)の屈折率、及び減衰係数を用いた。フレネルの式で反射率を計算した。その結果、Agの反射率は0.97、Mgの反射率は0.92、Alの反射率は0.86であった。
【0135】
有機電界発光装置の複合反射率は、以下のとおりに見積もった。
Agの場合:0.97×0.9=0.87
Mgの場合:0.92×0.9=0.828
Alの場合:0.86×0.9=0.77
また、MgAg電極は、MgとAgの合金として、Mg:Ag=10:1(体積比)の電極(MgAg電極)を用いた。このMgAg電極はMgとAgの体積平均と反射率の平均が対応すると、MgAg電極の場合は複合反射率が0.83と仮定した。
【0136】
<有機電界発光素子から透明基板まで放射する光の配光分布>
有機電界発光素子としては、Vol 459/14 May 2009/doi:10.1038/nature08003に開示されている下記の構造のものを用いた。
空気/Glass(BK7、オハラ社製、屈折率1.5、減衰係数k=0、厚み1mm)/ITO(厚み90nm)/MeO−TPD:NDP−2(厚み45nm)/NPB(厚み10nm)/TCTA:Ir(MDQ)
2(acac)(厚み6nm)/TCTA(厚み2nm)/TPBi:FIrpic(4nm)/TPBi(厚み2nm)/TPBi:Ir(ppy)
3/TPBi(10nm)/Bphen:Cs(厚み25nm)/Ag(厚み100nm)
なお、特開2008−70198号公報の段落〔0002〕に記載されているように、発光層から発光し、透明基板内に放射した光の配光分布はランベーシアン分布であるとした。
【0137】
<光取出し効率>
光取出し効率=(空気まで出射される光エネルギー)/(有効発光領域から発光された光エネルギー)
【0138】
<積分効率の倍率>
倍率=(微粒子層がある時の光取出し効率)/(微粒子層がない時の光取出し効率)
【0139】
(実施例1)
<シミュレーション1>
−反射電極別、有効発光領域の大きさの素子の厚みに対する変化が光取出し効率に与える影響−
<<シミュレーションモデル>>
シミュレーションモデルの具体的な構成は
図1に示すように、以下のとおりである。
空気/透明基板4(屈折率ns=1.5、減衰係数k=0、厚み1mm)/微粒子層5(ポリスチレン微粒子:平均粒径φ=2μm、屈折率np=1.59、減衰係数k=0、体積充填率η=50%;ポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、厚み=15μm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み0.2μm)/複合反射層6(Ag:反射率0.87、MgAg:反射率0.83、Al:反射率0.77、厚み100nm)
図1に示すように、有効発光領域が5mm四角であり、有機電界発光層の有効発光領域の外周縁部からはみ出した非発光領域の大きさを変化させて、有効発光領域の外周縁部からはみ出した非発光領域の最小幅をwとし、有機電界発光層、微粒子層、及び透明基板の合計平均厚みをdとし、比(w/d)と光取出し効率との関係について、市販の光線追跡ソフト(ZEMA Development Corporationの製品、ZEMAX−EE)を用いて、シミュレーションした。
【0140】
<<シミュレーション結果>>
図2は、Ag反射電極と、MgAg反射電極、及びAl反射電極について、比(w/d)と光取出し効率との関係を示したグラフである。
図2の結果から、比(w/d)が大きい構成で、Ag反射電極は、MgAg反射電極、及びAl反射電極に比べて、光取出し効率が大きいことが分かった。
図3は、
図2のA部の拡大図である。
図3の結果から、比(w/d)が0の時には反射電極による差はほとんど見られない。一方、比(w/d)が大きい、
図2のB部ではAg反射電極の光取出し効率が最も高くなることが分かった。
【0141】
次に、
図2に表した光取出し効率を以下のように規格化する。
(1)比(w/d)の影響を表すために、反射電極別で、w=0時の光取出し効率をバックグランドとして、光取出し効率から差し引いた(w=0の時、光取出し効率=0にする)。
(2)光取出し効率の上昇が収束した、比(w/d)=100の時の光取出し効率を1に規格化した。この規格化した結果を
図4に示す。
図4の結果から、Ag反射電極は、MgAg反射電極、及びAl反射電極に比べて、同等の光取出し効率の上昇を得るためには、大きい比(w/d)が必要であることが分かった。また、最大上昇率の0.8倍の光取出し効率を得るため、Ag反射電極は、比(w/d)が9以上であることが好ましいことが分かった。
【0142】
(実施例2)
<シミュレーション2>
−反射電極別、微粒子層のポリマーの屈折率、微粒子の平均粒径、微粒子の体積充填率の最適化−
<<シミュレーションモデル>>
シミュレーション1の
図2の結果から、Ag反射電極Ag、MgAg反射電極、及びAl反射電極の光取出し効率の上昇が収束したところを選び、有効発光領域は5mm四角、素子全体は40mm四角で、微粒子層のパラメータを変化させて、光取出し効率に与える影響について、市販の光線追跡ソフト(ZEMAX Development Corporationの製品、ZEMAX−EE)を用いて、シミュレーションを行った。
【0143】
(1)微粒子層なしモデル(
図5参照)
空気/透明基板4(BK7、オハラ社製、屈折率n=1.5、減衰係数k=0、厚み=1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm)/複合反射層6(反射電極Al、反射率0.86×0.9=0.77とした、厚み100nm)
【0144】
(2)微粒子層を有するモデル(
図6参照)
空気/透明基板4(屈折率ns=1.5、減衰係数k=0、厚み1mm)/微粒子層5(ポリマー:屈折率nb、減衰係数k=0、微粒子層の厚みL;微粒子:屈折率n=1.59、減衰係数k=0、粒子径φ、体積充填率η)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm)/複合反射層6(反射率をAlの場合:0.86×0.9=0.77とした。Agの場合:0.97×0.9=0.87とした。Mgの場合:0.92×0.9=0.828とした。MgとAgの合金としては、Mg:Ag=10:1(体積比)の体積充填率の電極(MgAg電極)を想定した。MgAg電極はMgとAgの体積平均粒径と反射率の平均が対応すると0.83と仮定した:厚み100nm)
微粒子としてはポリスチレン球状粒子(屈折率n=1.59、減衰係数k=0)を用いた。微粒子層のポリマーとしてはウレタン(屈折率n=1.5)に高屈折率ナノ粒子(TiO
2、屈折率n=2.6、平均粒径100nm以下)を分散させたものを用いた。
【0145】
有機電界発光層の有効発光領域から発光した光の配光分布はランバーシアン分布であると仮定し、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子層の厚みL、微粒子の平均粒径φ、微粒子の体積充填率、透明基板の屈折率ns=1.5、Ag反射電極、MgAg反射電極(Mg:Ag=10:1(体積比))、及びAl反射電極について、市販の光線追跡ソフト(ZEMAX Development Corporationの製品、ZEMAX−EE)を用いて、シミュレーションを行い、以下のようにして、光取出し効率及び積分効率の倍率の変化を見積もった。
【0146】
<<シミュレーション結果>>
(1)微粒子層のポリマーの屈折率nbの影響
図7は、Ag反射電極、微粒子層のポリマーの平均粒径2μm、微粒子の体積充填率50%、透明基板の屈折率ns=1.5とし、微粒子層のポリマーの屈折率nbを1.5、1.8、及び2.0に変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図8は、MgAg反射電極、微粒子層のポリマーの平均粒径2μm、微粒子の体積充填率50%、透明基板の屈折率ns=1.5とし、微粒子層のポリマーの屈折率nbを1.5、1.8、及び2.0に変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図9は、Al反射電極、微粒子層のポリマーの平均粒径2μm、微粒子の体積充填率50%、透明基板の屈折率ns=1.5とし、微粒子層のポリマーの屈折率nbを1.5、1.8、及び2.0に変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図7から
図9の結果から、微粒子層のポリマーの屈折率nbが、1.8の時に光取出し効率が最大となり、nb=2.0(有機電界発光層の屈折率の2.0/1.8倍)の場合、光取出し効率が低下することが分かった。
また、微粒子層のポリマーの屈折率nbが大きいほど、微粒子層の厚みが薄いところで最大の光取出し効率が得られることが分かった。
【0147】
図10は、微粒子層のポリマーの屈折率nbを1.8、透明基板の屈折率nsを1.5、微粒子層の平均粒径2μm、微粒子の体積充填率50%とし、Ag反射電極、AgMg反射電極、及びAl反射電極に変えた場合の微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図10の結果から、Ag反射電極は、AgMg反射電極及びAl反射電極と比べて同じ微粒子層で、より大きい光取出し効率が得られることが分かった。
同じ光取出し効率が得られるために、同じ微粒子と微粒子層のポリマーでは、Ag反射電極は、AgMg反射電極、及びAl反射電極と比べて、より薄い厚みの微粒子層で実現できる。即ち、微粒子層のコストダンと微粒子層の製造の歩留まりが達成できることが分かった。
【0148】
<<微粒子の平均粒径、微粒子の体積充填率、及び微粒子層の厚みの影響>>
図11は、微粒子層の微粒子の平均粒径が2μm、Ag反射電極、微粒子層のポリマーの屈折率nbが1.8、及び透明基板の屈折率nsが1.5の場合において、微粒子の体積充填率を10%、20%、30%、50%、及び70%に変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図12は、微粒子層の微粒子の平均粒径が6μm、Ag反射電極、微粒子層のポリマーの屈折率nbが1.8、及び透明基板の屈折率nsが1.5の場合において、微粒子の体積充填率を10%、20%、30%、50%、及び70%に変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図13は、微粒子層における微粒子の体積充填率20%、Ag反射電極、微粒子層のポリマーの屈折率nbが1.8、及び透明基板の屈折率nsが1.5の場合において、微粒子の平均粒径を0.5μm、1μm、2μm、6μm及び10μmに変えたときの微粒子層の厚みLと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
図14は、微粒子層における微粒子の体積充填率50%、Ag反射電極、微粒子層のポリマーの屈折率nbが1.8、及び透明基板の屈折率nsが1.5の場合において、微粒子の平均粒径を0.5μm、1μm、2μm、6μm及び10μmに変えたときの微粒子層の厚みと積分効率の倍率との関係を示したグラフである。
【0149】
図11から
図14の結果から、微粒子層における微粒子の平均粒径と微粒子の体積充填率とに対応させて、微粒子層の厚みを調整し、最適化した光取出し効率を最適化光取出し効率とする。
前記最適化光取出し効率の大きさは、反射電極の材料、透明基板の屈折率と微粒子層のポリマーの屈折率の値で決まり、微粒子の平均粒径が小さいほど、最適な微粒子層の厚みは薄くなる。微粒子の体積充填率が小さいほど、最適な微粒子層の厚みが厚くなることが分かった。
一般に、微粒子層における高屈折率ポリマーは高価な材料なので制御可能な厚みであって薄ければ薄いほど好ましい。前記微粒子の平均粒径が、10μm以上であると、微粒子に当たる光が前方散乱が強く、微粒子による光の角度変換能力が小さくなり、光取出し効率が低下する。一方、前記微粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、ミー散乱がレーリー散乱の領域に変化し、素子の色度が大きく変化することと、光取出し効率が低下することが予想される。従って、前記微粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmであることが好ましいことが分かった。
前記微粒子層の厚みを50μm以下にすると、微粒子の体積充填率が抑えられて低コスト化を図るのに有利である。前記微粒子層の厚みが50μm以下で最大の積分効率の倍率が得られる微粒子の平均粒径は0.5μm〜6μmであることが分かった。
また、微粒子の体積充填率は10%〜70%のいずれであっても微粒子層の厚みを最適に選べば等しい積分効率の倍率が得られる。微粒子層の厚みが50μm以下で最大の積分効率の倍率が得られる微粒子の体積充填率の範囲は20%〜70%である。従って、微粒子の平均粒径が0.5μm〜6μm、微粒子の体積充填率が20%〜70%、微粒子層の厚み50μm以下が好ましい範囲であることが分かった。
【0150】
<<透明基板の屈折率による光取出し効率の影響>>
図15は、
図6に示すシミュレーションモデルで、透明基板の屈折率nsを変化させた場合の光取出し効率の倍率との関係を示すグラフである。
図15の結果から、透明基板の屈折率nsが有機電界発光層の屈折率(1.8)より小さい時は、光取出し効率が大きくなる。これは、微粒子層のポリマーの屈折率(有機電界発光層の屈折率と同等)より小さい屈折率の透明基板が、微粒子層と空気間の屈折率段差Δnを小さくした結果であると考えられる。
一方、微粒子層のポリマーの屈折率(有機電界発光層の屈折率と同等)より大きい屈折率の透明基板を利用すると、透明基板と空気間の屈折率段差をもともとの微粒子層と空気間の屈折率段差より大きくしてしまうので、フレネル反射が大きくなり、光取出し効率が小さくなる。
したがって、透明基板の屈折率nsは微粒子層のポリマーの屈折率nb(有機電界発光層の屈折率と同等)より小さい方が好ましいことが分かった。
【0151】
以上の検討により、
図16に示す反射電極1と、有機電界発光層2と、透明電極3と、微粒子層5と、透明基板4とをこの順に有する有機電界発光装置10の構成を実現することができた。なお、
図16中8は、封止缶である。