(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934781
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/58 20060101AFI20160602BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20160602BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20160602BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160602BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20160602BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/565 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20160602BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20160602BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20160602BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
A61K31/58ZMD
A61K8/63
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/70
A61K31/506
A61K31/565
A61K47/10
A61P17/14
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61Q7/00
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-508290(P2014-508290)
(86)(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公表番号】特表2014-516362(P2014-516362A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】KR2012003200
(87)【国際公開番号】WO2012148174
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2013年10月25日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0038660
(32)【優先日】2011年4月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】61/515,523
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513269701
【氏名又は名称】パーク、ジュン−ヒョン
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ジュン−ヒョン
【審査官】
鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−173610(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0048598(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/036947(WO,A1)
【文献】
米国特許第05407944(US,A)
【文献】
特表2001−515026(JP,A)
【文献】
特表2004−538243(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0020038(US,A1)
【文献】
特開2010−241824(JP,A)
【文献】
Journal of Dermatological Treatment,1997年,Vol.8,p.189-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/58
A61K 8/63
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/12
A61K 9/70
A61K 31/506
A61K 31/565
A61K 47/10
A61P 17/14
A61P 43/00
A61Q 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5α−レダクターゼ抑制剤及びミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩を含むことを特徴とする脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物であって、5α−レダクターゼ抑制剤が、フィナステライド、デュタステライドまたは薬理学的に許容されるそれらの塩であり、当該組成物は経皮投与され、5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量が0.8μg〜0.12mgである脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物。
【請求項2】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤に含まれて経皮投与される5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量が0.8μg〜0.05mgであることを特徴とする請求項1に記載の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物。
【請求項3】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤に含まれて経皮投与されるミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩の1日投与量が0.008g〜0.12gであることを特徴とする請求項1に記載の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物。
【請求項4】
前記外用剤組成物は、アルファトラジオールをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物 。
【請求項5】
前記外用剤組成物は、炭素数1〜4の低級モノアルコール、多価アルコール及び水を含む溶剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物 。
【請求項6】
前記外用剤組成物の剤形は、ヘアトニック、スカルプトリートメント、ヘアクリーム、一般軟膏剤、化粧水、パウダー、エッセンス、パック、染毛剤、シャンプー、リンス、ローション、ゲル、パッチまたはスプレータイプからなる群より選択される1種であることを特徴とする請求項1に記載の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5α−レダクターゼ抑制剤及びミノキシジルを含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで研究された脱毛の原因では、ホルモン不均衡などの内分泌系異常、自律神経系及び血液循環障害などの循環系異常による過度な皮脂生成、毛根の栄養欠乏、アレルギー、細菌感染、遺伝的要因、精神的ストレス、大気汚染または飲食物などの環境的要因及び老化などが挙げられる。脱毛症は、過去中高年でばかり発生したが、最近には20〜30代の若者及び女性にも頻繁に発生している。
【0003】
毛髪の成長促進または脱毛防止剤として市販される製品が毛髪に及ぼす作用では、成長期誘導効果、毛髪成長期延長効果、5α−レダクターゼ阻害効果、血行促進効果、殺菌効果、頭垢防止効果、保湿効果、抗酸化効果などがあるが、既存の製剤では脱毛防止及び毛髪成長促進効果は十分ではない。
【0004】
男性型脱毛症は、男性ホルモン依存的であるため男性ホルモンの量と直接的な関係があり、これによって、最近男性ホルモン活性抑制剤を通じて脱毛の予防及び治療を目的とする広範な研究が報告されている。男性ホルモンに対する脱毛の機序を簡略に説明すれば次のようである。すなわち、男性ホルモンの一種であるテストステロン(testosterone)は、5α−レダクターゼという酵素により活性型男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone)に転換され、この活性型男性ホルモンが一定の受容体と結合して脱毛を起こすタンパク質を誘導することで脱毛を進行させる。また、このような機序により皮脂を過剰生成してにきびや脂漏性皮膚炎などを起こし、その結果として、頭皮では炎症を伴う脱毛が発生する。結果的に、男性型脱毛症は、5α−レダクターゼの作用によるジヒドロテストステロンの過剰生成により発生するため、5α−レダクターゼの活性を抑制すれば、男性型脱毛症を根本的で効果的に予防及び治療することができる。
【0005】
現在、脱毛治療に一番多く使われる薬物では、FDAで承認を受けた2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイド(「ミノキシジル(Minoxidil)」製剤、アメリカ特許第4,139,619号及び第4,596,812号参照)含有外用製剤とII型5α−レダクターゼ(5α−reductase)の特定抑制剤であるフィナステライド(finasteride)を含有する経口用製剤を挙げることができる。
【0006】
前記ミノキシジルは、高血圧患者の血圧降下を目的で開発されたが、使用中の発毛副作用によりその用途が発毛医薬品に変更されて発毛薬物として多く使用されている。1979年アメリカ食品医薬局(FDA)が脱毛治療剤として市販を許容したミノキシジルの作用機序は明確ではないが、頭皮毛嚢周りの血流を改善させて血流の増加を誘発して毛髪の成長を促進させるという仮説と、直接毛嚢上皮に作用して毛髪の成長を誘発させるという仮説で説明している。しかし、ミノキシジルを含んだ発毛剤は、発毛効果を維持するために一日で数回塗布しなければならないので非常に煩わしく且つ忘れやすくて不規則な塗布と恣意的治療中断により十分な発毛効果が現われない場合が多い。
【0007】
また、フィナステライド(Finasteride)が男性ホルモンに作用することに基づいて、フィナステライドの5α−レダクターゼに対する拮抗作用で髪の毛が細くなることを阻んで細くなった毛をまた太くする方法がある。代表的には、アメリカのメルク社が1997年12月アメリカFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬局)から最初の経口脱毛治療剤で薬効と安全性の承認を受けて、その翌年脱毛症治療剤で発売開始されたプロペシア(Propecia)がある。フィナステライドは男性ホルモンの一種であるテストステロン(testosterone)を、脱毛を起こすジヒドロテストステロン(DHT:dihydrotestosterone)に転換する5α−レダクターゼ(5α−reductase)酵素を抑制する薬で、薬を服用することによってDHT生成が抑制されるので、はげ頭状態の産毛が更に太くて長い髪で成長するようにする役目をする。開発当時、1879名を対象として臨床試験を行った結果、2年間持続的に使用した17%はそれ以上脱毛現象が発生しなかったし、83%は治療以後に髪の毛の数が現状を維持するかそれより増えた。しかし、脱毛防止効果の現われるまで数ヶ月がかかるので、女性の場合、服用時胎児に先天的な奇形が発生する可能性が高く、男性の場合には、性欲減退、勃起不能、射精障害などの副作用に対する恐れがあり、一生薬を服用しなければ脱毛防止効果が維持されないという負担により、実際臨床的な使用では多くの制約がある。
【0008】
一方、最近アメリカ食品医薬局(FDA)は、男性型脱毛症治療に使われるフィナステライド1mgを含有した製剤の投薬中断後にも一部性機能関連副作用が持続されることに関して許可事項を改正する一方、医療専門家及び患者に注意勧告をした。これはアメリカFDAの副作用報告システム(AERS)及び品目許可保有社の安全性データベースに報告された市販後事例を検討した結果、一部性機能関連異常反応(性欲減退、射精障害、オルガズム障害など)が投与中断後にも持続された事例が報告されたので行われたことで、同成分含有製剤と性機能副作用との明確な因果関係は確立されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
技術的解決課題
したがって、本発明は上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、
(1)従来の治療剤と比較して1/4以下の5α−レダクターゼ抑制剤を使用すると共に同等以上の脱毛防止及び毛髪成長促進効果を示し、
(2)従来の治療剤が有する副作用がほとんどなくて、
(3)効果が非常に迅速に発現されて治療初期から脱毛を効果的に防止することができ、
(4)脱毛患者の約70%に効果がある従来の処方と異なり、脱毛患者に対してほとんど100%効果を示す脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
技術的解決方法
上述の目的を達成するために本発明は、5α−レダクターゼ抑制剤と、ミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩、を含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物を提供する。
より詳しくは、フィナステライド、デュタステライドまたは薬理学的に許容されるその塩; 及びミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩を含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
有利な効果
本発明の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、
従来の経口用5α−レダクターゼ抑制剤より少ない量(1/4以下)の薬物を使いながらも同等以上の脱毛防止及び毛髪成長促進効果を提供し、
少量の薬物を使用するだけではなく、外用剤形態の剤形を有するので、性欲減退、勃起不能、射精障害などの副作用がほとんどなくて、
従来の経口用5α−レダクターゼ抑制剤及びミノキシジルを各々単独でまたは併用して使用する時より効果の発現が非常に早いので、治療初期から脱毛を効果的に防止することができ、患者の治療コンプライアンスも改善する効果を提供し、脱毛患者の約70%に効果がある従来の処方と異なり、脱毛患者に対してほとんど100%効果を示す。
【0012】
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
本発明は、5α−レダクターゼ抑制剤と、ミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩、を含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物に関するものである。
【0013】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤に含まれて経皮投与される5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量は0.8μg〜0.12mgとして、現在市販中の5α−レダクターゼ抑制剤であるデュタステライド経口剤の1日使用量0.5mg(市販中のフィナステライド経口剤の1日使用量は1mgである)と比較して約1/4以下である。
より好ましくは、前記5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量が0.8μg〜0.05mgであり、さらに好ましくは、前記5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量が、0.001mg〜0.025mgである。
前記5α−レダクターゼ抑制剤の1日投与量が0.8μg未満の場合、効果発現が微かであり、0.12mgを超過する場合、性欲求減退、射精量減少などの副作用が発生する。
【0014】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤に含まれて経皮投与されるミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩の1日投与量は、0.008g〜0.12gである。前記1日投与量が0.008g未満なら、目的する効果を得ることができなくて、0.12gを超過すれば、長期使用時の心拍出量、左心室の拡張末期容積の増加などの副作用を示す。
【0015】
前記5α−レダクターゼ抑制剤がフィナステライドまたは薬理学的に許容されるその塩である場合、1日投与量は、0.001mg〜0.12mgであり、より好ましくは、0.005mg〜0.05mgであり、さらに好ましくは、0.005mg〜0.025mgである。フィナステライドまたは薬理学的に許容されるその塩の使用量が前記範囲外の場合には、効果が不足であるか副作用が発生する恐れがある。
【0016】
前記5α−レダクターゼ抑制剤がデュタステライドまたは薬理学的に許容されるその塩である場合、1日投与量は、0.8μg〜0.06mgであり、より好ましくは、0.0016mg〜0.025mgであり、さらに好ましくは、0.0016mg〜0.012mgである。デュタステライドまたは薬理学的に許容されるその塩の使用量が前記範囲外の場合には、効果が不足であるか副作用が発生する恐れがある。
【0017】
5α−レダクターゼ抑制薬物は、性欲減退、勃起不能、射精障害などの副作用を有しており、最近、FDAは、このような副作用が投薬中断後にも持続されることと関連して許可事項を改正する一方、医療専門家及び患者に注意勧告をした。
したがって、このような副作用を最小化するために、現実的に5α−レダクターゼ抑制薬物の使用量を減らすことが要求されている。これによって、5α−レダクターゼ抑制薬物を経口で投与して正確なターゲットに到達させるための研究が活発に進行されている。一方、5α−レダクターゼ抑制薬物であるフィナステライドを経皮的に投与しようとする試みが行われたが、有意な効果は得られなかった。
【0018】
本発明の外用剤組成物は、5α−レダクターゼ抑制薬物をミノキシジルとともに溶剤にとかした後経皮的に適用して、これらの相乗効果により5α−レダクターゼ抑制薬物をターゲットに非常に効果的に伝達するようにすることで、(1)脱毛患者に対してほとんど100%効果を示し、(2)従来の処方と比較して1/4以下の一層少ない量の5α−レダクターゼ抑制薬物を使いながらも一層迅速で優秀な効果を提供することを重要な特徴とする。
前記のような著しい効果は、ミノキシジルの血管拡張効果などにより5α−レダクターゼ抑制薬物の経皮的伝達効率が大きく向上されることに起因することで判断される。
【0019】
前記5α−レダクターゼ(還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート:△4−3−ケトステロイド5−α−オキソドレダクターゼ)は、I型とII型のアイソザイム(isozyme)で存在し、テストステロンから5α−ジヒドロテストステロンへの還元的転換を促進させる。テストステロンは、主に男性の内部生殖器構造を決定する役目をし、ジヒドロテストステロンは、外部生殖器の分化において必要である。
【0020】
第I型5α−レダクターゼは、主に皮脂腺を中心として分布し、第II型5α−レダクターゼは、毛嚢の成長に重要な皮膚乳頭部と毛嚢の外側毛根鞘で発見される。5α−レダクターゼにより生成されたジヒドロテストステロン(DHT)は、毛嚢細胞の受容体と結合してDHT−受容体結合物が細胞核内に入ってDNAに毛嚢細胞の増殖及び分化に影響を及ぼす多くの蛋白調節物質の生成を誘導する。DHTにより生成された多くの調節物質は、毛母細胞の増殖を促進させて生長期(生長期1期〜生長期5期)を加速化し、相対的に毛嚢細胞の分化期(生長期6期〜退行期)を短縮させて脱毛増進及び毛髪成長の阻害をもたらすことができる。
【0021】
前記5α−レダクターゼ抑制剤は、フィナステライド、デュタステライドまたは薬理学的に許容されるその塩であることが好ましい。
前記フィナステライドは、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に転換させる酵素である5α−レダクターゼのI型アイソザイムのみを抑制し、前記デュタステライドは、5α−レダクターゼのI型、II型アイソザイムを全て抑制して強力なテストステロンの維持効果を有するので、脱毛を抑制する効果を有する。
【0022】
フィナステライドの構造は、下記化学式1の通りである。
【0023】
【化1】
【0024】
デュタステライドの構造は、下記化学式2の通りである。
【0025】
【化2】
【0026】
前記ミノキシジルは、親油性成分として、他の外用剤に比べて毛根まで侵透する能力が優れ、頭皮毛嚢周りの血流を改善させて毛髪成長に有用な栄養を供給する役目をし、発毛剤及び女性型脱毛症治療剤で唯一FDA承認を受けた局所薬剤である。
ミノキシジルの構造は、下記化学式3の通りである。
【0027】
【化3】
【0028】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、例えば、外用剤組成物100mlに対して、フィナステライドまたは薬理学的に許容されるその塩0.1mg〜5mg、より好ましくは、0.1mg〜2mgを含むように製造することができる。また、前記外用剤組成物100mlに対して、ミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩0.5g〜5gを含むように製造することができる。
【0029】
また、前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、例えば、外用剤組成物100mlに対して、デュタステライドまたは薬理学的に許容されるその塩0.05mg〜2.5mg、より好ましくは、0.1mg〜1.0mgを含むように製造することができる。また、外用剤組成物100mlに対して、ミノキシジルまたは薬理学的に許容されるその塩0.5g〜5gを含むように製造することができる。
【0030】
前記のように製造した外用剤組成物は、100mlを45日〜60日間、1日1回〜2回または2日1回塗布して使用することが好ましい。
【0031】
本発明のフィナステライド、デュタステライド及びミノキシジルは、薬理学的に許容される塩の形態で使用することができ、塩としては、薬理学的に許容される遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸または亜燐酸のような無機酸類と脂肪族モノ−及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸及びアルカン二酸、芳香族酸類、脂肪族及び芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得る。このような薬理学的に無毒の塩類では、スルフェート、ピロスルフェート、ビスルフェート、スルファイト、ビスルファイト、ニトレート、ホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ジハイドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロライド、ブロマイド、アイオダイド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルマート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオネート、オキサレート、マロネート、サクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マリエート、ブチンー1,4−ジオエート、ヘキサン−1,6−ジオエート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、クシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β−ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレート、タトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタリン−1−スルホネート、ナフタリン−2−スルホネートまたはマンデレートを含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、女性用の場合、エストラジオール(estradiol)をさらに含むことができ、好ましくは、アルファトラジオール(Alfatradiol、17α−estradiol)をさらに含むことができる。
【0033】
前記アルファトラジオールは、エストロゲン誘導体として、テストステロンがジヒドロテストステロンに転換されることを阻んで、毛嚢細胞の増殖を促進させることができる。特に、女性脱毛患者の治療に効果的に利用することができる。
【0034】
前記脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物の溶剤は、当業界で通常的に使用しているものであれば、いずれも利用可能であり、例えば、水; メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールを含む炭素数1〜4の低級モノ−アルコール; エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールを含む多価アルコール; 及びグリセリンからなる群より選択される1種または2種の混合物を使用することができる。
特に、炭素数1〜4の低級モノ−アルコール、多価アルコール及び水を含むことが薬物の効果的な伝達のために好ましい。
【0035】
前記炭素数1〜4の低級モノ−アルコールでは、これに限定されるものではないが、好ましくは、エタノールを使用することができ、多価アルコールでは、これに限定されるものではないが、好ましくは、プロピレングリコールを使用することができる。
【0036】
前記溶剤が炭素数1〜4の低級モノ−アルコール、多価アルコール及び水を含む場合、好ましくは、溶剤総体積に対して炭素数1〜4の低級モノ−アルコール10〜60体積%、多価アルコール3〜20体積%及び残量の水を含み、より好ましくは、炭素数1〜4の低級モノ−アルコール30〜50体積%、多価アルコール5〜15体積%及び残量の水を含むことができる。
溶剤が前記のように組成比を有する場合、薬物の経皮伝達効果が非常に顕著に増加する。
【0037】
本発明の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、液状またはゲルタイプなど頭皮に塗布することができるものであれば、どのような剤形で製造してもよいが、好ましくは、ヘアトニック、スカルプトリートメント、ヘアクリーム、一般軟膏剤、化粧水、パウダー、エッセンス、パック、染毛剤、シャンプー、リンス、ローション、ゲル、パッチまたはスプレータイプからなる群より選択される1種以上の剤形で製造し、より好ましくは、スプレータイプやゲルタイブで製造する。
【0038】
前記フィナステライド、デュタステライド及びミノキシジルなどの成分は、使用量を高めれば、全身吸収量が増加して副作用が発生する可能性が高くなる。本発明は、従来の発毛促進剤で利用されたフィナステライド、デュタステライド及びミノキシジルの使用量に比べて少ない量を使用し、局所的吸収を通じて選択的に投与することで副作用を最小化することができるだけではなく、顕著に早い脱毛防止効果を示し且つ発毛効果も優れる。
【0039】
また、従来の経口投与剤の場合、不規則な投薬による治療失敗率が高い。しかし、本発明の組成物をスプレータイプで塗布する方法は、副作用に対する恐れが減少し、毛髪太さの増加、脱毛減少などの効果が早く発現し、塗布が簡便で患者のコンプライアンスが高いので治療成功率が高い。
【0040】
前記フィナステライド及びミノキシジルを含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、主に男性用であり、低濃度フィナステライド及びミノキシジル含み外用剤組成物は、非妊娠女性にも使用することができる。
前記デュタステライド及びミノキシジルを含む脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物は、男性または非妊娠女性に使用することができる。
【0041】
また、前記外用剤組成物は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内で当業界で通常的に利用される賦形剤をさらに含むことができ、好ましくは、pH調整剤、可溶化剤及びこれらの組合せからなる群より選択される薬剤学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことができる。
【0042】
前記pH調整剤は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、塩酸、硫酸及びこれらの組合せからなる群より選択することができるが、これに限定されるものではない。
前記可溶化剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、グリセリン、オクトキシノール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選択することができるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
発明の実施のための形態
以下、実施例及び試験例を通じて本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例及び試験例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲が下記実施例及び試験例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1乃至実施例6:脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物の製造
エタノール、プロピレングリコール及び水を4:1:5の体積比で混合した後、その混合溶液にフィナステライドまたはデュタステライド及びミノキシジルを下記表1の容量でとかして、実施例1乃至実施例6の脱毛防止及び発毛促進用外用剤組成物100mlずつを製造した。
【0045】
【表1】
【0046】
比較例1乃至比較例3
比較例1乃至比較例3は、下記表2に記載したような用量を含有する市販中のフィナステライド経口剤、デュタステライド経口剤及びミノキシジル経皮剤を購入して経口剤と経皮剤を組み合わせて構成するか、経皮剤単独構成を有するように調製した。
【0047】
【表2】
【0048】
試験例1:脱毛防止及び発毛促進効果に対する臨床試験
1)毛髪太さ及び毛髪数の変化評価
前記実施例1乃至実施例6の外用剤組成物100mlをスプレー容器に入れて、1日2回(朝、夕)脱毛症患者の脱毛部位の頭皮にスプレーして、その効果を確認した。前記実施例1乃至実施例6の外用剤組成物100mlは、約45〜60日間使用した。また、全て使った後には前記と同一な方法で製造して使用した。比較例1及び比較例2の処方の場合は、脱毛症患者に1日1回経口投与剤を投与し、1日2回ミノキシジル外用剤を脱毛部位と予想脱毛部位の頭皮に塗布して、その効果を確認した。比較例3の処方の場合は、1日2回ミノキシジル外用剤を脱毛症患者の脱毛部位と予想脱毛部位に塗布して、その効果を確認した。
前記脱毛症患者は、下記表3に記載した選定及び除外基準によって選定し、病院を初めて訪問した時、毛髪状態を診断して脱毛部位を表示記録し、一番ひどい部位に黒い点を入れ墨して測定時ごとに同一部位を測定できるように措置した。そして、simple hand−held phototricho gram(Folliscope、Lead M Co、Seoul、Korea)を利用して脱毛部位の単位面積当たり毛髪数(毛髪個数/cm
2)及び毛髪太さ(μm)を測定した。単位面積当たり毛髪個数は、30倍レンズを利用して表示部分周りの脱毛部位を撮影した後、単位面積内の硬毛(terminal hair)の個数を計算した。毛髪の太さは、200倍レンズを利用して表示部位周辺の5本の太さを測定して平均値とした。
前記脱毛症患者の薬物投与前、薬物投与後の一定時点で測定された毛髪数(毛髪個数/cm
2)の変化及び毛髪太さ(μm)の変化は、下記表4、表5及び表7に示した。これらデータの有意性は、T−TEST(F−TEST含み)により検定された。T−TEST(F−TEST含み)検定結果は、表6及び表8に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4-1】
【0051】
【表4-2】
【0052】
【表4-3】
【0053】
前記表4に示したデータは、本発明の外用剤組成物の迅速な効果発現を確認するための資料である。すなわち、前記表4のデータを参考すれば、本発明の外用剤組成物を投与して2週〜4週が経過した時点で毛髪数及び毛髪太さの変化を測定したほとんど全ての脱毛症患者(実施例2の組成物を投薬した9名)は、毛髪数及び毛髪太さが顕著に増加した。但し、1名の患者は、4週後測定した時点で毛髪数が減少したが、この患者も8週後測定した時点では毛髪数が増加した。
【0054】
また、前記表4のデータを参考すれば、本発明の外用剤組成物を投与して6週〜8週が経過した時点で毛髪数及び毛髪太さの変化を測定した全ての脱毛症患者(実施例1乃至実施例3の組成物を投薬した13名)も毛髪数及び毛髪太さが顕著に増加した。
【0055】
このような効果は、この分野でよく知られているように、従来の処方で少なくとも3ヶ月が経過してから脱毛防止または発毛効果がどの程度現われることを考慮する時(比較例1のデータ参照)、非常に画期的な水準であると言える。
具体的には、前記表4のデータによれば、本発明の実施例1乃至実施例3の外用剤組成物を投薬した脱毛症患者は、従来の処方である比較例1の処方を投与した脱毛症患者と比較して非常に著しい毛髪数の増加と毛髪太さの増加を示した。すなわち、本発明の外用剤組成物を投与した脱毛症患者は、投与2週が経過した時点から非常に著しい毛髪数及び毛髪太さの増加効果を示した。その効果は時間の経過によって徐々に増加して、8週が経過した時点では比較例1の処方を投与した脱毛症患者と比較して一層著しい効果の差を示した。
前記のような本発明の外用剤組成物の迅速な効果発現は、本発明の外用剤組成物が患者の治療コンプライアンス及び満足度を大きく向上させることを示す。すなわち、従来の処方の場合には、効果があまり遅く現われるので治療を途中であきらめる患者がたくさん発生したが、本発明の組成物を使用する場合、そのような問題が画期的に解消される。
【0056】
また、前記のような臨床試験結果は、本発明の外用剤組成物の局所使用時に得られる優秀な効果だけではなく、従来の経口剤との併用使用可能性も提示しているといえる。
すなわち、従来の処方の場合は使用時点から3ヶ月になる時点までは脱毛防止及び発毛促進効果が充分に発現されないので使用者の満足度が高くない。このような結果は患者の治療コンプライアンスを低下させて治療を放棄させる結果を引き起こす。しかし、本発明の外用剤と従来の経口剤を併用する場合、本発明の外用剤の特性によって治療初期でも迅速な脱毛防止及び発毛促進効果があるので、患者の治療コンプライアンス及び満足度が大きく向上されて治療をあきらめる場合が発生する可能性が大きく減る。
【0057】
【表5-1】
【0058】
【表5-2】
【0059】
【表5-3】
【0060】
【表6】
【0061】
前記表5から確認されるように、本発明の実施例1乃至実施例4の外用剤組成物は、従来の処方である比較例1及び比較例3と比較して、投薬後13週が経過した時点で測定された毛髪数及び毛髪太さの変化において、大部分の場合著しい増加を示した。また、このような結果は、前記表6のTTESTによる検定結果、毛髪太さデータの中で実施例2のデータを除外して全て有意性があることで確認された。
前記臨床試験結果は、本発明の実施例1乃至実施例4の外用剤組成物が従来の処方例と比較してずっと少ない量のフィナステライドを使用しても一層著しい脱毛防止及び発毛促進効果を示したという点で非常に重要な意味を有する。
すなわち、フィナステライド(1mg/1日)経口投与時、性欲減退、勃起不能、射精障害などの副作用が報告されていることを考慮する時、本発明の外用剤組成物は、フィナステライドの投与量を著しく減少させても一層すぐれた効果を提供するので、従来の副作用をはっきりと解決することができる画期的な方案を提示するといえる。
【0062】
【表7-1】
【0063】
【表7-2】
【0064】
【表8】
【0065】
前記表7から確認されるように、本発明の実施例5及び実施例6の外用剤組成物は、従来の処方である比較例2と比較して著しい毛髪数の増加と毛髪太さ(μm)の増加を示した。また、このような結果は、前記表8のTTESTによる検定結果、毛髪太さデータの中で実施例6のデータを除外して全て有意性があることで確認された。
前記臨床試験結果は、本発明の実施例5と実施例6の外用剤組成物が従来の処方例と比較してずっと少ない量のデュタステライドを使用しても一層著しい脱毛防止及び発毛促進効果を示すという点で非常に重要な意味を有する。
すなわち、デュタステライド(0.5mg/1日)経口投与時、性欲減退、勃起不能、射精障害などの副作用が報告されていることを考慮する時、本発明の外用剤組成物はデュタステライドの投与量を著しく減少させるとともに一層すぐれた効果を提供するので、従来の副作用をはっきりと解決することができる画期的な方案を提示するといえる。
また、前記臨床試験で毛髪数と毛髪太さ(μm)の変化が薬物の投与後4〜8週で測定された。本発明の実施例5及び実施例6の外用剤組成物が従来の処方例と比較して非常に著しい効果を示したことは、本発明の外用剤組成物の効果発現が非常に迅速であることを示す。
このような臨床試験結果は、本発明の外用剤組成物が効果の迅速性により患者の治療コンプライアンス及び満足度を大きく向上させることができることを示す。すなわち、従来の処方の場合には、効果があまり遅く現われるので治療を途中であきらめる患者がたくさん発生したが、本発明の組成物を使用する場合、そのような問題が画期的に解消される。
また、前記のような臨床試験結果は、前記実施例1乃実施例4でも言及したように、本発明の外用剤組成物の単独使用時に得られる優秀な効果だけではなく、従来の経口剤との併合使用可能性も提示する。
【0066】
試験例2:効果発現率及び副作用の評価
【0067】
【表9】
【0068】
前記表9に示したように、本発明の実施例1乃至実施例6の外用剤組成物を投与した脱毛患者には100%効果が発現されて、2名の患者から一時的な頭皮掻痒が発生しただけで他の副作用は発生しなかった。
一方、従来の処方である比較例1乃至比較例3の場合、総試験群の個体数(30名)の中で13%(4名)が効果未発現により治療を中途であきらめ、副作用も約3.3%(1名)で観察された。このような比較例1乃至比較例3の結果は、効果未発現及び副作用に関して知られている事実に符合することであると判断される。