特許第5934790号(P5934790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934790噴霧ノズル装置、噴霧プロセス、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934790
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】噴霧ノズル装置、噴霧プロセス、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/04 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   B05B7/04
【請求項の数】33
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-519514(P2014-519514)
(86)(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公表番号】特表2014-527903(P2014-527903A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】EP2012063358
(87)【国際公開番号】WO2013007673
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/506,306
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11176306.6
(32)【優先日】2011年8月2日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サウンダース,ジヨージ
(72)【発明者】
【氏名】キトリツジ,ライアン
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−114673(JP,A)
【文献】 特公昭58−045299(JP,B1)
【文献】 実開平02−108756(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0040260(US,A1)
【文献】 実開昭61−204667(JP,U)
【文献】 特開2010−184169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜3/18
7/00〜9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル先端(1)と、
ノズル先端(1)の基端側に接続された、ノズル先端(1)よりも大きな内径を有する筐体(3)と、
ノズル先端(1)および筐体(3)を互いに流体接続する収束エアヘッダであって、筐体(3)からノズル先端(1)にかけて内径が減少する空気遷移円錐(A)を備える収束エアヘッダと、
空気遷移円錐(A)に対する位置を相対的に変化可能に筐体(3)の内部に収められた液体ノズル(2)と
を含んで構成され、
液体ノズル(2)は、中央ランス管(4)によって支持されて、流入口(6)から中央ランス管(4)を通じて供給された液体を液滴の状態で噴霧し、
筐体(3)は、ノズル先端(1)に空気遷移円錐(A)を通じて気体を供給するための、少なくとも1つの空気流入口(9)をさらに備え、
空気遷移円錐(A)に対する液体ノズル(2)の位置が調整可能であり、
空気遷移円錐(A)に対する液体ノズル(2)の調整が、液体ノズル(2)を担持する中央ランス管(4)を前後に移動させること、または取付具(MD1)および(MD2)の間に1つ以上のスペーサ板(S1、S2)を配置すること、またはこれらの組み合わせより選択される手段によって実行される、噴霧装置。
【請求項2】
ノズル先端(1)および空気遷移円錐(A)が互いに接続されている、請求項に記載の噴霧装置。
【請求項3】
空気遷移円錐(A)で接続されたノズル先端(1)が、筐体(3)に可逆的に接続されている。請求項に記載の噴霧装置。
【請求項4】
筐体(3)への可逆的な接続が、収束エアヘッダの大径部を筐体(3)と重ね合わせ、これら2つの重合部分を互いに対して摺動可能に配置することによって確立される、請求項に記載の噴霧装置。
【請求項5】
筐体への接続が、第一部品として取付具(MD1)上に空気遷移円錐(A)に接続されたノズル先端(1)を提供し、第二部品として取付具(MD2)を備える筐体(3)を提供し、取付具(MD1)および(MD2)を介して前記第一部品を前記第二部品に接続することによって確立される、請求項に記載の噴霧装置。
【請求項6】
取付具を介しての組み立てが、ネジ、パイプクランプ、リングスリーブボルト、またはその他の固定手段によってなされることが可能な、請求項に記載の噴霧装置。
【請求項7】
空気遷移円錐(A)と少なくとも1つの空気流入口(9、I)との間に散気板(DP)が存在する、請求項1からのいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項8】
空気遷移円錐(A)が0°よりも大きく、180°よりも小さい開口角を有する、請求項1からのいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項9】
ノズル先端(1)と筐体(3)との直径の比率が1:1から1:10である、請求項1からのいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項10】
ノズル先端が、約50:1から約0.5:1の長さ対直径比を有する、請求項1からのいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項11】
ノズル先端(1)が、噴霧方向を空気遷移円錐(A)の中心軸から180°から90°の範囲で逸脱させる角度オフセットを有する、請求項1から10のいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項12】
液体ノズル(2)を担持する中央ランス管(4)の下流に、液体ノズル(2)に供給される流体を予め混合させるための混合チャンバ(5)をさらに備える、請求項1から11のいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項13】
混合チャンバが、少なくとも1つの相互接続装置(ICD)を介して、ノズル先端(1)、液体ノズル(2)、空気遷移円錐(A)を備える収束エアヘッダを含む噴霧ヘッド(H)に接続された、個別の装置または筐体(M)に収容されている、請求項12に記載の噴霧装置。
【請求項14】
流体をスプレーするための、請求項1から13のいずれか1つに記載の噴霧装置の使用であって、流体は中央ランス管(4)を通じて液体ノズル(2)に供給され、ガスは空気流入口(9)を通じて供給され、前記ガスは、空気遷移円錐(A)を通じて加速されて、ノズルから逃げる噴霧流体と接触し、それによって噴霧器ノズル先端(1)を通じて搬送される液滴を形成する、使用。
【請求項15】
空気流入口(9)を通じて供給されるガスが、約0.0003m/分から約20m/分の量で供給される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
空気流入口(9)を通じて供給されるガスが、約0.01バールから6バールの圧力を有する、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
ノズルからスプレーされる流体に対する供給空気の体積比が、100:1から約8000:1の比率に保たれる、請求項14から16のいずれか1つに記載の使用。
【請求項18】
ランス管を通じて供給される流体が、約0.05l/分から約5l/分の流量を有する、請求項14から17のいずれか1つに記載の使用。
【請求項19】
流入口によって供給されるガスが、空気、窒素、または希ガス、あるいはそれらの混合物、高温蒸気または水蒸気などの単一ガスまたはガス混合物である、請求項14から18のいずれか1つに記載の使用。
【請求項20】
ランス管を通じて供給される流体が、液体または液体混合物、懸濁液、分散液、または乳状液である、請求項14から19のいずれか1つに記載の使用。
【請求項21】
懸濁液が鉱物質懸濁液である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
分散液が鉱物質分散液である、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
鉱物質が、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物、またはフライアッシュから選択される、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
アルカリ土類炭酸塩が、大理石、白亜、あるいは石灰石などの天然重質炭酸カルシウム(GCC)、アラゴナイト系PCC、バテライト系PCC、および/またはカルサイト系PCCなど、特に角柱、菱面体、または偏三角面体PCCなどの沈降炭酸カルシウム(PCC)、または表面改質炭酸カルシウムなどの合成炭酸カルシウム、およびドロマイトなどの炭酸カルシウムを含有する諸々の類似充填剤または混合炭酸塩系充填剤;タルクまたは同等物などの様々な物質;マイカ、クレイ二酸化チタン、ベントナイト、マグネサイト、サチンホワイト、セピオライト、ハンタイト、珪藻土、ケイ酸塩;およびこれらの混合物を含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
流体を微粒化するプロセスであって、
請求項1から13のいずれか1つに記載の噴霧装置を提供するステップと、
微粒化のための流体を提供するステップと
を含み、
流体は、中央ランス管(4)を通じて液体ノズル(2)に供給され、ガスは、空気流入口(9)を通じて供給され、前記ガスは、空気遷移円錐(A)を通じて加速されて、ノズルから逃げる噴霧流体と接触し、それによって噴霧器ノズル先端(1)を通じて搬送される液滴を形成する、プロセス。
【請求項26】
流体が、液体または液体混合物、懸濁液、分散液、または乳状液を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
液体または液体混合物が、農作物または植物保護剤または肥料である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
流体が消火剤である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
懸濁液が鉱物質懸濁液である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
分散液が鉱物質分散液である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項31】
農作物または植物の保護または肥料散布における、請求項27に記載の液滴の使用。
【請求項32】
消火活動における、請求項28に記載の液滴の使用。
【請求項33】
炉内吸着剤注入法、吹き付け乾燥、または消火活動における、請求項29または30に記載の液滴の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ノズルを含む流体噴霧器に関し、前記液体ノズルは、空気遷移円錐を備える収束エアヘッダおよび収束エアヘッダの下流に接続された噴霧器ノズル先端によって円状に包囲されており、混合チャンバを任意に含み、ノズルオリフィスは任意の混合チャンバに接続され、前記混合チャンバの下流に位置している。
【0002】
液体、ならびに鉱物質スラリなどの固体粒子含有分散液は、液滴比表面積を拡大するために微細な液滴としてスプレーまたは噴霧されるが、これにより、化学的または工学的プロセスの改善をもたらすかも知れない。このため、反応または反応パラメータは、液滴サイズにかなり依存する可能性がある。
【0003】
したがって本発明は、改良型噴霧装置、および液体または固体粒子含有スラリ、分散液、または乳状液の、微粒化液滴としての噴霧を提供する。本発明の文脈において、噴霧器とは、本明細書中で既述の液体のストリームを微細スプレーに変換する装置である。さらに、本発明はまた、このような噴霧装置および微粒化液滴の使用にも関する。このような使用はたとえば、農作物関連製品が種子および/または植物上に微細に分散される必要がある農業の分野、塗装および/またはコーティング、燃焼プロセスの間に生成される汚染物の改良された除去のための前記燃焼プロセス、固体粒子含有スラリまたは分散液の吹き付け乾燥、または消火活動の分野であってもよい。本発明はさらに、本発明の噴霧装置を用いてスプレーされるスラリ、分散液、または乳状液にも関する。
【背景技術】
【0004】
農業の分野では、有利な収穫をもたらすために、農作物および植物の保護ならびに肥料散布が必要な場合がある。費用効率を高めるために、農作物保護剤および肥料は高効率で散布される必要がある。噴霧装置は流体の効率的な分散または噴霧を提供するので、これは本発明によって実現可能である。本発明の文脈において、流体とは、いかなる液状物質、分散液、懸濁液、および乳状液も包含する。
【0005】
消火活動の分野では、消火方法の1つは水を使用することである。水で消火する第一の方法は冷却によるものであり、これは火から熱を除去する。これは、水を水蒸気に転換することによって大量の熱を吸収する、水の能力を通じて可能である。水で消火する第二の方法は、酸素を奪って火を消すことによる。水がその沸点まで加熱されると、水蒸気に転換される。この転換が行われるとき、空気中の酸素を水蒸気で希釈して、火が燃焼するために必要とする元素の1つを除去する。これは泡を用いても実現可能である。したがって、冷却および脱酸素効果のための広い表面積を提供するために、消火剤を可能な限り小さい液滴として分散させることが、最重要である。
【0006】
世界中で発電のために発電ボイラを使用する、たとえば石炭発電所などから知られる燃焼プロセスの分野では、地下または露点採掘によって地中から抽出された石炭燃料である、以前は坑口炭またはシーコールと称された石炭が、特定の炉内で燃焼させられる。石炭のタイプ(無煙炭、瀝青炭、準瀝青炭、または亜炭)、ならびに地理的領域内で異なるその存在量に応じて、このような石炭の硫黄含有量は、著しく、上述の順番で増加するように、異なる。このため亜炭は、石炭の重量比で最大10%または場合によりそれ以上の硫黄含有量を有するタイプの石炭である。二酸化炭素(CO)の生成の他に、石炭の燃焼プロセスの間、硫黄は二硫化硫黄(SO)に転化され、酸性雨の生成に寄与して著しい健康問題を引き起こす汚染ガスである、SOの最大の人為的な源を構成するので、硫黄含有量の問題は明らかとなる。窒素酸化物(NO)などの汚染物、塩酸、および水銀、ヒ素、鉛、セレン、およびカドミウムなどの重金属は、このような燃焼プロセスの間にさらに生成および/または蓄積される、有害化合物である。
【0007】
しかしながら燃焼プロセスは、発電所のみに限定されるものではない。いくつかを挙げるだけでも、製紙業、製鋼業、廃棄物焼却業、または鉱物材料製造業者など、ボイラ内での高温プロセスを用いるその他の技術が存在する。
【0008】
何十年もの間、環境問題およびひいてはそれに伴う環境規制は、これら高温プロセス技術における確実な改良をもたらしてきた。具体的には、その大気中への放出を減少してこのようなシステム内の腐食を減少させるために、汚染物質、有害廃棄物、および微粒子を捕捉し、それによって燃焼および/または熱プロセスの排気から除去することが、目標とされてきた。大気中に放出される二酸化炭素を減少させる方法の1つは、石炭の燃焼効率を上げること、または反応プロセスの改良であった。しかしながら、このような汚染物質の形成を回避することは不可能であり、したがって、プロセス中でこのような汚染物質の捕捉を可能にし、このような汚染物質をほとんど含まない排気を提供するために排気からこれらを除去する、大きな需要がまだ存在する。このようなプロセスは当業者にとって周知である。
【0009】
環境規制に準拠し、大気中への汚染物質の放出に影響を及ぼす制限を満足させるために、産業燃焼プロセスにおいて形成された燃焼生成物は、排煙脱硫(FGD)システム内を通される。SOを捕捉するための燃焼排ガスの処理は、しばしば石灰または石灰石ベースの湿式スクラバ内で実行されるが、ここで、燃焼排ガスが大気中に排出される前に、石灰または石灰石スラリは燃焼排ガスと接触させられる。このようなスクラバの有効性は、燃料中に存在する硫黄の1%から2%を捕捉することにおいてはかなり十分であるが、しかしこれらは貴重な投資を必要とする。
【0010】
別の方法は、LIMB(Limestone Injection Multistage Burner:石灰石注入多段バーナ)として知られる技術である、ボイラの高温領域への石灰または石灰石スラリの注入を用いる。しかしながらこの技術は、形成されたSOの60%から65%を超える量を捕捉することはできない。
【0011】
さらなる方法は、10%から60%の硫黄捕捉の有効性で、石灰または石灰石がスラリの形態で炉内に注入される、炉内吸着剤注入法(FSI)である。別の適切な吸着剤はドロマイトであるが、しかしこれは上述の有効性を超えるものではない。
【0012】
微細液滴の形状で液体または固体粒子含有スラリまたは分散液を微細にスプレーするために、2流体ノズルについて言及する米国特許出願第2010/0163647号明細書は、微細液滴噴霧で広いスプレージェット開口角の獲得を可能にする。ノズルの縁における大きい液滴の形成は、混合チャンバを包囲する環状チャンバから直接分岐した二次空気によるノズルの縁における環状間隙噴霧によって、防止される。高速で環状間隙を出る圧力ガスは、発散部のノズルオリフィスの壁上の液膜が引き出されて非常に薄い薄層となり、その後細かい液滴に分解されることを、保証する。このため圧力ガスの一部は混合チャンバ内に迂回され、その一部はノズルオリフィスの縁に迂回される。
【0013】
米国特許出願第2007/0194146号明細書は、液体の複数の噴霧ステップが可能なノズルを提供しており、ここで液体は第一方向に噴霧され、逆流ノズルを形成するために、続く第二方向への同じ液体の後噴霧がなされる。したがって、分注される液体は、少なくとも2つの異なる段階において噴霧される。
【0014】
米国特許第5,004,504号明細書は、吹き付け乾燥による赤色透明酸化鉄の調製について言及している。2つの流体ノズルによって小さい液滴の形状のろ過ケーキが分出され、前記ノズルは、円筒形の中央導管、および円筒形導管を包囲する環状導管を含む。周囲の環状導管を通じて供給される噴霧流体が環状導管を通じて強制的に圧力をかけられている間、黄色透明酸化鉄の水性塊としてのプロセス流体は、中央導管の中を通される。中央導管を通じて黄色透明酸化鉄の水性塊を搬送するために、ほとんどまたはまったく圧力が必要とされない。透明黄色酸化鉄の明らかに厚い水性塊の噴霧は、約5.5バールから約6.8バールまたはそれ以上の圧力の圧縮空気または過熱水蒸気などの高圧噴霧流体を用いた結果として、実現される。
【0015】
このように、噴霧プロセスに関する先行技術は、各々が最適な効率を有するべく、異なる用途において使用される、異なる特注ノズル形状を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0163647号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0194146号明細書
【特許文献3】米国特許第5004504号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、改良型液滴形成、すなわち微粒化体積スループットが向上した、より小さい液滴形成を用いる、新規な単一ステップ噴霧装置を提供し、それにより反応効率またはプロセス効率が向上し、前記微粒化液滴は、たとえば炉内吸着剤注入法、吹き付け乾燥、または上述のその他の用途において、適用可能である。
【0018】
このような炉内吸着剤注入法は、吸着剤の乾燥粉末注入または水性スラリ注入法を含む。このような石炭燃焼発電ボイラの一般原理は、粉末石炭または空気が炉内に導入されて燃焼されることであり、発電機用タービンに動力供給するために水を水蒸気に変換するため二次水回路が加熱されるか、あるいは水蒸気生産のための二次水回路を加熱するために燃焼プロセスの高温空気が燃焼部分の下流で使用される。水蒸気は次に発電機用タービンを駆動するために使用され、その後水蒸気生産に役立つ水回路内への再導入のために冷却される。
【0019】
いずれの場合も、有害廃棄物を捕捉するために、高温の排気は吸着剤で処理されなければならない。これは、噴霧器ノズル先端が燃焼炎と直接接触しないように、石炭燃焼ユニットの点火されたバーナの上に本発明の噴霧器を配置することによって、実現可能である。炉は一般的に、垂直の点火された高い円筒である。高さと直径との比は、点火速度に応じて、毎秒10〜15フィートのガス速度および1から4秒の滞留時間を可能にするように、選択される。設計された炉出口ガス温度は、800℃から1100℃の範囲である。記載された炉は、単に説明目的の特徴を有するのみであって、本発明を限定するように意図されるべきではない。当業者は、異なる点火チャンバを備える別の炉が本発明の噴霧器を備えることも可能であることを、容易に認識するだろう。
【0020】
噴霧器ノズル先端を介しての炉内への吸着剤の注入は、共流注入または逆流注入として実行されることが可能である。本発明の文脈において、共流注入とは、点火燃焼ユニットからの排気ガスと同じ方向に吸着剤が注入またはスプレーされることを意味し、その一方で逆流注入とは、点火燃焼ユニットからの排気ガスの流れ方向とは逆に吸着剤が注入またはスプレーされることを意味する。
【0021】
吸着剤の注入が、発電ボイラユニットの構造に応じて、大気中への排気ガスの放出の前に、燃焼プロセスの下流のいずれの段または位置においても可能であることは、当業者の理解の範囲内であろう。いくつかの発電ボイラは、点火燃焼ユニットの内部または直後、あるいは炉のはるか下流に、水蒸気生産のための水回路を設けるが、ここで温度はまだ水蒸気生産にとって好都合である。特定の発電ボイラはまた、新たな水蒸気生産のための水回路内で−発電機用タービンの後に−凝縮水を予備加熱するための残留熱を活用するため、下流排気ガス温度を利用する。こうして排気ガスは、大気中への放出の前に、さらに冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図2】液体ノズル2の位置が収束空気遷移円錐Aに対して調整可能な、本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図3】筐体が、液体ノズル2に対する収束空気遷移円錐Aの位置を調整するために互いの上を摺動する部品を有する、本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図4】本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図4a図4のノズル先端1の断面図である。
図5】異なる直径比を有する収束空気遷移円錐Aの詳細図を備える、本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図6】異なる円錐角を有する収束空気遷移円錐Aの詳細図を備える、本発明の噴霧器の一実施形態の断面図である。
図7】噴霧器ノズル先端の異なる実施形態の断面図である。
図8】収束空気遷移円錐Aを含むノズルのない、図4による本発明の噴霧器の一実施形態の斜視図である。
図9】散気板の可能な一実施形態の図である。
図10】本発明の図4aによる噴霧器ノズル先端の一実施形態の斜視図である。
図11図4によるS1、S2などのスペーサ板、および図8による空気プレナムキャップAPC内の散気板の孔の配置の、斜視図および端面図である。
図12】本発明の噴霧器の代替構成の断面図である。
図13】HおよびMは相互接続装置ICDを介して接続された2つの個別の物体である、本発明の噴霧器の代替構成の断面図である。
図14】円形から四角形へのノズル遷移要素TEの断面図および斜視図である。
図15】インチでの寸法表示およびインチからmmへの変換表を備える、本発明の噴霧器の代替構成の断面図である。
図16】先行技術によるスプレーシステムと本発明のスプレーシステムとの性能を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鉱物質スラリの液滴の微粒化は、本発明の一実施形態を表す図1に示されるような噴霧装置によって実現可能であり、ここで1は噴霧器ノズル先端であり、2は市販の液体ノズルであり、3は中央ランス管4を介して任意の混合チャンバ5に接続された液体ノズル2を円状に包囲する、空気遷移円錐Aを備える収束エアヘッダであり、前記任意の混合チャンバ5は流入口6によって供給される。前記流入口6は、流体流入口7および/または空気流入口8を備えてもよい。窒素、空気、蒸気、または水蒸気などのガスまたはガス混合物を供給するための空気流入口9は、収束エアヘッダ3に接続されている。この設計は、ノズルの周りの並流リングとして大量の低圧ガスの導入を可能にする。ノズル2の位置は、ノズル2が空気遷移円錐Aの内外に移動できるように調整可能である−実際、空気速度を混合点で、すなわち加速された空気がノズルオリフィスから逃げたスプレー液体と接触する点で、音速まで設定または変更するために流体液滴と一次空気との最適な混合条件を実現するため、空気遷移円錐Aの内部でノズルが調整されることを可能にするいずれの機構も、有利である(図2)。
【0024】
本発明の文脈における低圧ガスまたは低圧空気は、4.0バール、3.0バール、または2.5バールまたは2.0バールまたは1.5バールなど、0.005バールから5.0バール未満までの間の圧力の下で供給されるガスまたは空気、一般的には流体を意味する。
【0025】
収束エアヘッダ内の適切なノズル位置の調整は、重なっている筐体に可動部品を提供することによって、図2に示されるように、ノズルを担持している中央ランスを収束エアヘッダの内部で前後に移動させるなど、いくつかの手段によって実現可能であり、ここで1つの部品は収束エアヘッダを含み、別の部品はノズルを担持している中央ランスを含み、2つの部品は図3に示されるように互いに対して摺動する。
【0026】
さらなる実施形態において、収束エアヘッダ円錐A内の液体ノズル2の位置の調整が、図4に示されている。これにより、1つ以上のスペーサ板S1、S2(図11)は、収束エアヘッダ円錐Aを担持するノズル先端1(図10)と筐体3(図8)との間に配置され、それによって実装されたノズル2を備えるランス4を担持する筐体3は、たとえば接着、ネジ、パイプクランプ、リングスリーブボルト、またはその他の固定手段によってなど、当業者にとって周知のいずれかの手段によって、ノズル先端1に可逆的または不可逆的に接続される。収束エアヘッダ円錐Aの内部のノズル2の位置決めを可能にするいずれの手段または配置も本発明の概念の範囲内であることは、当業者の判断に任せられる。流入口9は、ノズル2の周りの空気、ガス、または水蒸気の並流リングとして配向された大量の空気、ガス、または水蒸気の導入を可能にする、空気、蒸気、水蒸気などのガスまたはガス混合物の供給を行う。
【0027】
図4aは、収束空気遷移円錐Aがノズル先端に含まれている、ノズル先端の一実施形態を示す。Pはパイプ長を示し、これは長さx60.96cm(24インチ)のステンレス鋼パイプであって対向するフランジの末端にNPTネジ山が施されており、NPTとはアメリカ管用ネジ(United States National Pipe Thread)を指す。1/8、1/4、3/8、1/2、3/4、1、1−1/4、1−1/2、および2インチに対応する、3.175mm、6.35mm、9.525mm、12.70mm、19.05mm、25.40mm、31.75mm、38.10mm、50.80mmなど、一般的に使用されるNPTネジ山サイズがいくつかある。Lは、存在するクロム(Cr)およびニッケル(Ni)の最小含有量を示す「18/8」鋼としても知られる、3.175mm(1/8インチ)厚のステンレス鋼合金304で作られた収束空気遷移円錐Aの長さを指す。d図5の直径Q1に相当するパイプの内径を指し、dは図5のQ2に相当する収束空気遷移円錐Aの大端部の内径を指す。円錐角は、収束空気遷移円錐Aの側壁によって定義される。本発明における先端形状は、表1に示される値から選択されることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【表1】
【0029】
ノズル先端実装フランジ(NTMF)は、アライメント用ショルダボルト向けに穿孔された4ボルト標準152.4mm(6インチ)パターンを含む12.7mm×190.50mm(1/2インチ×7.5インチ)の寸法を有する。
【0030】
図1から図3または図4からわかるように、収束エアヘッダ円錐Aは、筐体またはノズル先端の一体部品であってもよい。収束エアヘッダ円錐Aがノズル先端の一部であるとき、このような装置設定は、噴霧条件の非常に容易かつ柔軟な適応、したがって様々な用途および使用条件への適応を提供することが、容易にわかるだろう。
【0031】
液体ノズルは、20から80度を形成する円錐角で中実または中空円錐スプレーを形成することが可能な、市販のノズルである。いくつかを挙げるだけでも、1/4M−8、1/4M−4、SpiralJet7(R)またはFlomax0×15(R)などの、このようなノズルは、Spraying Systems Co(R)などの供給元から知られている。
【0032】
液体ノズルは、ノズル先端1の入口の高せん断域内に液滴のスプレーを注入するために使用される。前記せん断域は、ノズルからの液体スプレーが収束エアヘッダAからの空気と接触する領域である。このため、せん断域の位置は、収束エアヘッダ円錐Aの内部のノズルの相対位置から依存する。
【0033】
高せん断域に侵入する液体ノズル2からの液滴は、空気流入口8を通じて大量の低圧空気が供給される収束低圧エアヘッダ3によって供給されたノズル先端内の二次空気に導入される。液体ノズル2からスプレーされる液体に対する収束エアヘッダの二次空気の体積比は、100:1から約4000:1の比率に保たれる。5000:1、6000:1、7000:1、または8000:1などの高比率、あるいはさらに高い比率も、本発明の概念に含まれる。高体積比の結果、衝突を最小限に抑えて液滴の凝集を防止するように、搬送される液滴の間に平均自由行程が生じる。適切な比率は、約200:1または300:1または400:1または500:1または600:1または700:1または800:1または900:1または1000:1からおおむね上記で既述の比率までであってもよく、2000:1または3000:1または4000:1を含むことは、当業者の理解の範囲内である。当業者はまた、100:1から8000:1、およびさらに高い比率も含むいずれの比率も、特定の需要に応じて選択可能であるので、これらの値が限定的な数字ではないことも、認識するだろう。
【0034】
ノズルの噴霧流体のストリームに向かう空気ストリームの迎え角であるアプローチ角は、収束空気遷移円錐Aの角度を変化させることによって、0度以上90度以下の角度で変化することが可能であり、これについては図5を参照されたい。図5に示される例示的なアプローチ角は45度である。本発明の文脈において、収束空気遷移円錐の角度が180度であって、空気圧ヘッダに対して直角であるとき、0度は本発明の文脈において、空気圧ヘッダの筐体と一直線または平行であることを意味する。
【0035】
空気圧ヘッダの直径に対するノズル先端の直径の比率は1:1から1:10の範囲内にあり、その間に空気遷移円錐Aが存在する。前記空気遷移円錐Aは、ノズル先端の直径に等しい小径Q1、および空気圧ヘッダの直径に等しい大径Q2を有する。このため収束空気遷移円錐Aは、180度から0度の開口角を有することができる。さらなる実施形態において、空気圧ヘッダに対するノズル先端の直径比は、たとえば1:4など、Q1:Q2=1:1〜1:7の範囲内で一定に保たれており、空気遷移円錐の角度はたとえば45度の角度などで一定に保たれており(図6参照)、あるいは角度は先に記載されたように変化することも可能である。Q1:Q2の比率がいずれかの方法で、すなわちQ1および/またはQ2の直径を変化させることによって、実現可能であることは、当業者の理解の範囲内である。このため、Q1:Q2=1:1の比率はQ1およびQ2の直径を等しくして実現されるが、しかし以下の非限定例で説明されるように、異なるサイズの直径では実現できない。Q1=Q2=4cmまたは5cmまたは10cm。直径は異なる値を有するが、しかし1:1の同じ比率を有する。
【0036】
ノズル先端は、約50:1から約0.5:1、好ましくは約20:1から約1:1、より好ましくは約15:1から約5:1の、長さ対直径比を有する。ノズル先端は角度オフセット上で曲げられてもよく、角度オフセットは、180度以上約90度以下の範囲を含む角度曲がりと称されることもある。曲がりは、ノズル先端の末端に存在するか、あるいはノズル先端の縁の間のいずれかに含まれてもよい。当業者は、図7にいくつかの例が示されるように、このようなノズル先端の様々な形状を想起することができるだろう。しかしながら、提示された実施形態は限定的な特徴ではなく、むしろ説明例に過ぎない。
【0037】
好適な一実施形態は、10:1のノズル先端長さ対直径比、1:5のノズル先端径対空気圧ヘッダ径比を有し、ここで空気遷移円錐は75度の開口角を有する。
【0038】
散気板(DP)および羽根は、乱流を最小限に抑えて、液体ノズル2から発せられる液体スプレーの周りの空気流の均一な分布を保証するために、空気調整器の役割を果たしてもよく、エアヘッダ筐体3に組み込まれてもよい。このような散気板は、いわゆる空気プレナムキャップ(APC)に組み込まれることも可能であり、これは筐体の取り外し可能部品または固定要素の中に作り込まれることが可能である。図8は、収束エアヘッダ円錐と空気流入口(9,I)との間に存在する少なくとも1つの散気板(DP)を示す。特定の実施形態において、散気板は、取付具MD1およびMD2の間にも存在してよく、したがって散気板およびスペーサの両方の役割を果たすことができる。しかしながら散気板DPの存在は必須ではなく、したがって任意である。さらに図8は、T字型筐体Tが散気板DPを含む空気プレナムキャップAPCを介して空気プレナムAPに接続されていることを示している。ここで図8の筐体の幾何形状および値がさらに記載されるが、ただしこれらの値に限定されるものではない。Tは76.20mm(3インチ)のT字型ASTM A403溶接継手、スケジュール40である。BFは、直径101.6mm(4インチ)×厚さ6.35mm(1/4インチ)の寸法を有するバットフランジを指す。Lは、液体ノズルNおよびスラリ供給装置の実装を可能にするための、381.00mm(15インチ)の長さおよびNPTネジ山を末端に備える、304ステンレス鋼で作られた9.252mm(3/8インチ)スラリパイプを指す。Iは、76.20mm(3インチ)ハーフカップリング、150ポンドねじ込み継手を指す。NTMFは、図10に示されるようなタイプのノズル先端を固定するためのアライメント用ボルトのために直径152.4mm(6インチ)の円内に配置された、4つの固定孔FHを含む、厚さ12.7mm×直径190.50mm(1/2インチ×7.5インチ)のノズル先端実装フランジを指す。したがって、図10のNTMFはMD1と同義である。図8のNTMFである、図10のNTMFの対応物は、MD2と同義である。
【0039】
SFは9.252mm(3/8インチ)150ポンドねじ込み継手を指し、その一方でAPは長さ152.4mm(6インチ)の304ステンレス鋼で作られた、空気プレナム76.20mm(3インチ)、スケジュール40である。直径101.6mm(4インチ)および厚さ6.35mm(1/4インチ)の304ステンレス鋼で作られた、散気板DPを備える空気プレナムキャップAPCは、直径2.54mmの5つの孔、およびL用の中心孔を含む。先に記載された単一部品は、可逆的または非可逆的に互いに相互接続されており、このような接続手段は当業者にとって周知である。非限定例として、溶接または接着がこのような接続手段を呈する。
【0040】
液体の噴霧、すなわち液滴サイズ減少は、液体スプレーおよび空気が近音速まで加速されるときのせん断域における高せん断力により、流入口9からの空気がノズル2から発せられる液体スプレーに衝突する領域であるせん断域で行われる。均質な空気ストリームを提供できるようにする散気板は、異なる幾何形状であってもよい。図9は、非限定的設計と見なされる、例示的な散気板を提供する。
【0041】
存在してもしなくてもよいが、流体混合チャンバ5は、固形物粒子スラリ、高圧空気、および場合によりさらに希釈剤の均質な混合物を生成するために、使用される。混合チャンバは、静的または高せん断力混合装置より選択された混合装置、実際には噴霧に適した材料を提供するのに適したいずれかの混合装置を含む。高加圧空気は、流体混合チャンバ5の前に高圧流入口7を通じて固形物スラリ流入口5内への固形物スラリに導入されてもよく、あるいは代替実施形態として、高圧空気が混合チャンバ自体において高圧流入口を通じて導入されることも可能である。液体ノズル2を介してのスプレーに先立って固形物スラリをさらに調整するために、スラリ流入口6または混合チャンバ5に希釈剤流入口8が存在してもよい。混合チャンバが存在しないときは、スラリ流入口6が中央ランス管4を介して液体ノズルに供給する。
【0042】
本発明の文脈において、高加圧空気とは、ガスまたは空気、一般的には流体が、たとえば5.5バールまたは6.0バールなど5バール以上から、10バールまたは12バールまたは15バールまでの間の圧力の下で供給されることを意味する。必要であれば、さらに高い圧力も適用可能である。
【0043】
図12は、液体ノズルにスラリを供給するための流入口(L、6)が空気流入口(I、9)を通じて形成されている、さらなる実施形態を提供する。前記配置は、本発明の別の実施形態に自由に適用可能である。
【0044】
システムの構成要素が単一のアセンブリで提供される必要がないことは、当業者の理解の範囲内である。さらに好適な実施形態(図13)において、スラリ供給口6、高圧空気流入口7、および希釈流入口8を含むインライン流体混合チャンバまたは静的混合チャンバ5は、管、ホース、またはパイプなどの少なくとも1つの相互接続装置ICDを介して、噴霧器ノズル先端1、液体ノズル2、空気遷移円錐Aを備える収束エアヘッダ筐体3を含む噴霧ヘッドHに接続された、個別の装置または筐体Mに収容されていてもよく、中央ランス管4に接続された液体ノズル2を円状に包囲している。流入口9は、液体ノズル2の周りの空気、ガス、または水蒸気の並流リングとして配向された大量の(低圧)空気、ガス、または水蒸気の導入を可能にする、空気、蒸気、水蒸気などのガスまたはガス混合物の供給を行う。中央ランス管4は、混合チャンバ5を含む装置から供給される、噴霧されるべき適切な製品が、相互接続装置ICDを通じて供給される。図13の9aは、流入口の代替設計を提供する。装置Hは、噴霧器の特定の位置決めが望ましいかまたは必要とされる、たとえば農業用途、スプレー塗装、消火活動、または先に記載されたその他の用途などの特定用途において、自動または手動で、噴霧器の特定の配置を可能にするために、ランス上にさらに実装されることが可能である。装置Hが、装置Mと組み合わせても組み合わせなくても使用可能であることは、当業者の理解の範囲内であろう。相互接続装置ICDに関しては、当業者はこのような手段によって遭遇する問題を十分に把握している。しかしながら、当業者は、いずれの材料、寸法(すなわち直径および壁厚)、ならびにカップリング、クランピング装置、またはクリップカラーなど、いずれタイプの接続手段が、装置HおよびMを可逆的または非可逆的に互いに相互接続するのに適しているかを知っている。
【0045】
噴霧器ノズル先端1は、ノズル先端サイズ、形態、幾何形状、および適用される空気圧に応じて特定の形状および密度を有することが可能な、指向性噴霧液滴雲を提供する。前記空気圧は、0.02バールから4.0バールの間、好ましくは0.04バールから3.0バールの間、より好ましくは0.1バールから2.5バールの間、さらに好ましくは0.5バールから2.0バールの間、特に好ましくは0.8バールから2.0バールの間である。この設計は、標準的なロータリ・ローブ・ブロワまたはファンから圧縮機まで、低圧から高圧までの空気を提供する、あらゆる種類の装置の使用を可能にする。低圧空気を提供する装置は、結果的に資本、運転、および維持コストが低くなるので、好ましい。
【0046】
これに関してさらに、噴霧液滴雲の幾何形状は、ノズル先端1の末端に遷移板または要素TEを実装することによって、変更可能である。このような遷移要素は図14に示されている。このような遷移要素は、円錐形の噴霧流体を、扁平またはカーテン状の噴霧流体に変換できるようにする。このような成形は、噴霧流体が円錐形ではなくむしろカーテン状で必要とされる、特注の用途を可能にする。
【0047】
遷移要素は、多くの異なる設計とすることができる。その目的は、液滴サイズ分布に悪影響を及ぼさずに、たとえば方形円錐形などの所望のスプレーパターンを実現することである。これは、ノズル先端に対する断面積のわずかな縮小を取り入れることによって、達成可能である。面積の縮小は、ガスおよび/または粒子ストリームの特性に応じて、約0%から25%、好ましくは0%から20%、より好ましくは約0%から約10%の範囲である。特定の需要および使用に応じて、その他の幾何形状の遷移要素がノズル先端に実装されてもよい。表2は、非限定的設計と見なされる、遷移要素の異なる幾何形状を提供する。
【0048】
【表2a】
【0049】
ハーフカップリングHCは、パイプサイズに適合された150ポンドのハーフカップリングである。ハーフカップリングは、気密的に遷移板に連続的に溶接されている。気密接続を提供するその他の固定または実装手段も当業者にとって周知であり、したがって本明細書に含まれる。カップリングを中心とする内部接合部は、乱流を最小限に抑えるために平滑でなければならない。遷移板の角は、好ましくは丸みを帯びていてバリが存在しない。遷移出口(方形末端)の寸法公差は、±0.1mmなど、一定の公差の範囲内である。遷移要素は汎用要素であり、12.70mm、19.05mm、25.40mm、31.75mm、または38.10mmに対応する、1/2、3/4、1、1−1/4、1−1/2インチなど、異なるパイプサイズ、すなわち異なるノズル先端径で作られてもよいことは、本発明の概念の範囲内である。これらの値よりも大きいかまたは小さいその他の直径を選択することは当業者の判断に任せられ、異なる直径サイズを選択した結果として遷移板のその他の寸法も相応に適合される必要があるが、これは当業者の権限に含まれる。
【0050】
図15は、適切な寸法をインチ単位で示した、一実施形態の模式図を示す。しかしながら寸法は拘束的であると見なされるべきではない。したがって寸法は、必要に応じて拡大または縮小されてもよい。
【0051】
本発明の噴霧器によって分散されるのに適した固形物含有スラリは、当業者にとって周知であり、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物、またはフライアッシュなどの鉱物質を含む。たとえばアルカリ土類炭酸塩は、大理石、白亜、あるいは石灰石などの天然重質炭酸カルシウム(GCC)、アラゴナイト系PCC、バテライト系PCC、および/またはカルサイト系PCCなど、特に角柱、菱面体、または偏三角面体PCCなどの沈降炭酸カルシウム(PCC)、または表面改質炭酸カルシウムなどの合成炭酸カルシウム、およびドロマイトなどの炭酸カルシウムを含有する諸々の類似充填剤または混合炭酸塩系充填剤;タルクまたは同等物などの様々な物質;マイカ、クレイ二酸化チタン、ベントナイト、マグネサイト、サチンホワイト、セピオライト、ハンタイト、珪藻土、ケイ酸塩;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
噴霧器の所望の用途に応じてその他の固形物含有スラリが選択されてもよく、同様に液体および分散液および乳状液も、その特定の使用にしたがって本発明の噴霧器とともに使用されるのに適している。
【0053】
一般的に、高固体鉱物質スラリは、水性懸濁液の総重量に対して、約30重量%から80重量%、好ましくは約72重量%から約79重量%、より好ましくは約74重量%から約78重量%の固体含有量で、水性懸濁液に含まれる少なくとも1つの鉱物質を含む。大量の固形物の分散液を可能にするので高固体含有量スラリが好ましいが、その一方で5重量%から約30重量%の低固体含有量スラリもまた本発明の噴霧器との使用から除外されるものではない。
【0054】
水性懸濁液は、鉱物質の乾燥重量に対して、約0.01重量%から約2重量%、好ましくは約0.04重量%から約1.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約1重量%、さらに好ましくは約0.3重量%から約0.6重量%の総量で、少なくとも1つの分散剤をさらに含んでもよい。
【0055】
使用されてもよい分散剤は、アクリルまたはメタクリル酸あるいはマレイン酸などのポリカルボン酸の単独または共重合体;および/またはその塩、たとえばナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、および/またはアルミニウム、あるいはこれらの、好ましくはナトリウム、カルシウム、およびマグネシウムの混合物で部分的または完全に中和された酸性塩、またはたとえばアクリルアミドなど、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、またはメタクリル酸メチルなどのアクリル酸エステルに基づくエステルなど、このような酸の誘導体;あるいはこれらの混合物;アルカリ性ポリリン酸塩;これらの混合物からなる群より選択される。
【0056】
このような生成物の重量分子量Mwは、好ましくは1000から15000g/モル、より好ましくはたとえば3500g/モルなど、3000から7000g/モルの範囲、最も好ましくはたとえば5500g/モルなど、4000から6000g/モルの範囲である。
【0057】
水性スラリの鉱物質粒子は、2μm未満、好ましくは1μm未満、さらに好ましくは0.5μm未満の球相当径を有する。したがって球相当径は、約0.1μmから約1.9μmの範囲である。好ましくは約0.4μmから約0.9μmである。
【0058】
室温で、適切なスピンドルを用いて100rpmの回転速度で、RVTモデルのブルックフィールド(TM)粘度計を使用して1分間撹拌した後に、23℃で測定された鉱物質スラリのブルックフィールド粘度は、50から1000mPa・s、好ましくは100から750mPa・s、より好ましくは150から600mPa・s、最も好ましくは200から460mPa・s、たとえば300mPa・sである。
【0059】
このような鉱物質スラリは、OMYAによって供給されるHydrocarb90(R)、Hydrocarb60(R)、Hydrocarb HG(R)、またはその他の鉱物質スラリまたは市販の分散液など、当業者にとって周知であり市場で容易に入手可能である。本発明の文脈において、液体鉱物質は、いかなる種類の固体鉱物質にも、溶剤中に溶解するように対応する。
【0060】
実際的に分散して反応性の増加または処理性の改善を提供するその他の物質もまた、本発明の噴霧器によって液滴として分出されることが可能である。分散液またはスラリが本発明によって噴霧されるのに適した製品であるのみならず、単純な溶液または液体、すなわち液体と、肥料、除草剤、殺菌剤、または消火手段などの溶解される物質との単相混合物もまた本発明によって噴霧可能であることを、当業者は容易に認識するだろう。
【0061】
表3は、ノズルタイプ、液体ノズル2を通じてスプレーされる試験流体の流量、および空気圧ヘッダ4内の空気流量に応じた、液滴サイズへの影響を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
試験は、以下のノズルを使用して行われた:
−流体ノズル1/4M−8および1/4M−4、
−高液体流量条件では、SpiralJetノズルが使用された。
−Flomax X015
【0064】
スプレー試験に使用された材料は、Hydrocarb60(R)、すなわち界面活性剤を用いずに高固体炭酸カルシウムスラリを28重量%まで水で希釈したもの(液体タイプA)である。
【0065】
Flomax X015ノズルは、本発明の噴霧器を用いてなされるその他の市販ノズルによる構成よりも効率的であることがわかった。試験条件(TC)16に見られるように、より少ない空気流量で、より小さい液滴サイズが達成された。
【0066】
これに関してさらに、ノズル先端は用いずに1.6m/分の割合の周囲空気流でスラリがスプレーされるTC9に見られるように、ノズル先端の重要性が明らかになってきた。液滴サイズは、空気流が使用されないTC1と比較して小さい。TC1は、ノズル自体の性能によるスプレー効果を示す。TC10は、収束遷移円錐が存在しないとき、「減少ニップル」が筐体からノズル先端までの急激な遷移を表し、一貫性のない空気ストリームのため液滴サイズが再び増加し、液滴の衝突を促進して、これにより液滴サイズを増加させることを示している。
【0067】
Malvern2600粒子分析器を用いて、液滴サイズ測定がなされた。Malvern分析器は、分析器のサンプリング領域を通る液滴によって生じる回折光のエネルギーに基づいて液滴サイズを測定する、レーザ回折機器である。
【0068】
散乱光強度は、受光ユニットに収容された一連の半円形フォトダイオードを用いて測定される。光強度分布を液滴サイズ分布関数に変換するために、ロージン・ラムラーの分布関数が使用される。
【0069】
試験は、300mm受光レンズを用いて行われた。このレンズ構成は、Malvern2600機器で1.2から564μmの測定範囲を可能にする。全ての試験は、610mmのスプレー距離で行われた。液圧および流量を制御するために、Spraying Systems Co(R)のAutoJet(R)2250Modular Spray Systemが使用された。AutoJet(R)Modular Spray Systemは、スプレーノズルの性能を強化する、自立型のモジュール式スプレーシステムである。電気制御パネルおよび空気制御パネルの2つの基本的構成要素からなっており、モジュール式システムは完全統合システムの力を提供する。
【0070】
好適な実施形態において、ノズルの内部での噴霧は、乾燥圧縮空気を用いて支援される。噴霧空気は、全ての試験において室温(20℃)であった。また、これは試験の間ずっと安定して一定であった。圧縮空気流量は、Endress−Hauser製の校正済み熱質量計を用いて測定された。この計測器は、質量流量を直接判定するために、測定箇所における空気/窒素温度および圧力を測定する。この計測器の高精度(±1%)測定範囲は、0.0003m/分から約12.0m/分であった(これは0.3l/分から約12’000l/分に等しい)。
【0071】
液滴サイズを評価するために、DV0.5、D32、DV0.1、およびDV0.9の直径が使用された。液滴サイズ用語は、以下のとおりである:
V0.5:体積中位径(VMDまたはMVDとしても知られる)。スプレーされた液体の体積に関して液滴サイズを表す手段。VMDは、スプレーされた液体の全体積(または質量)の50%が中間値よりも大きい直径、50%が中間値よりも小さい直径を有する液滴で構成されるという値である。この直径は、試験条件の間で平均の液滴サイズの変化を比較するために、使用される。
32:ザウター平均粒径(SMDとしても知られる)は、スプレーによって生じる表面積に関して、スプレーの微粉度を表す手段である。ザウター平均粒径は、全ての液滴の全表面積に対する全ての液滴の全体積と同じ体積対表面積比を有する液滴の直径である。
V0.1:は、スプレーされた液体の全体積(または質量)の10%がこの値以下の直径を有する液滴で構成されるという値である。
V0.99:は、スプレーされた液体の全体積(または質量)の99%がこの値以下の直径を有する液滴で構成されるという値である。この値はまたDMAXとしても使用可能である。
【0072】
図16は、同じスラリ供給を使用して噴霧装置に取り付けられた同じノズルのもの(TC12)に対する、開放空気中にスプレーする標準的なスプレーシステム1/4M−8ノズル(TC1)の性能の比較を示す。液滴の重大なサイズ減少が認められる。
【0073】
TC15は、TC1と同じ供給条件の下でFlomax X015噴霧ノズルを用いて微細液滴を生じるために利用可能なSpraying Systemの最良の技術の性能を示す。TC12は明らかに、本発明の噴霧装置が、先行技術で利用可能な最良のものと比較して、より小さい液滴サイズ分布を提供することを示している。
【0074】
本発明の噴霧器は、約2μmから約12μmの範囲の直径を有する微粒化液滴を提供する。
【0075】
液体ノズル2はいずれの適切な液体ノズルとも交換可能なので、いずれの市販液体ノズルを噴霧装置に使用するかはユーザの裁量に任されており、本発明の噴霧装置におけるその利用は、その性能を著しく改善することになる。一般的に、いずれのノズルの性能も、前記ノズルが本発明の噴霧装置に取り付けられると、改善されることが可能である。ノズルのサイズとは関係なく、収束エアヘッダ円錐A、筐体、ノズル先端、または特定の実施形態であるがノズル先端1を担持する収束エアヘッダ円錐Aは、選択されたノズルに適合するように、カスタム製造されることが可能である。
【0076】
可能性のある使用の1つはたとえば、燃焼中に発生する燃焼排ガスから酸性または有毒ガスおよび重金属を除去するために、工業用発電および加熱ボイラ内で本発明の噴霧器によって独自の物質が小さい液滴として分出される、吸着剤注入技術での使用であってもよい。このような酸性または有毒ガスは、HCl、SO2、CO、NOxを含む。このような燃焼プロセスで蓄積される重金属の例は、水銀(Hg)である。
【0077】
本発明はまた、流体を微粒化するプロセスであって、本発明の噴霧器を提供するステップと、微粒化のための流体を提供するステップとを含み、流体は中央ランス管(4)を通じて液体ノズル(2)に供給され、ガスは空気流入口(9)を通じて供給され、前記ガスは、ガスの並流リング内の収束空気遷移円錐(A)を通じて加速されて、ノズルから逃げる噴霧流体と接触し、それによって噴霧器ノズル先端(1)を通じて搬送される液滴を形成する、プロセスにも関する。
【0078】
前記流体は、液体または液体混合物、懸濁液、分散液、または乳状液を含み、前記液体または液体混合物、懸濁液、分散液、または乳状液は、農作物または植物保護剤または肥料である。
【0079】
本発明はさらに、流体が消火剤である、流体を微粒化するプロセスにも関する。
【0080】
さらに本発明は、懸濁液は鉱物質懸濁液であり、分散液は鉱物質分散液である、プロセスに関する。
【0081】
本発明はまた、そのような液滴が農作物または植物の保護、肥料散布に使用される、微粒化液滴の使用にも関する。
【0082】
本発明による微粒化液滴のさらなる使用は、消火活動における使用である。
【0083】
このような微粒化液滴のさらなる使用は、流体が鉱物質の分散液または懸濁液である、炉内吸着剤注入法、吹き付け乾燥、または消火活動におけるものである。
図1
図2
図3
図4
図4a
図5
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