(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934796
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】抗炎症補助のための製品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20160602BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20160602BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20160602BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20160602BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20160602BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20160602BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K31/232
A61K31/593
A61P29/00
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/34
A23L1/30 B
A23L1/303
A23L1/30 Z
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-528385(P2014-528385)
(86)(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公表番号】特表2014-529622(P2014-529622A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012042009
(87)【国際公開番号】WO2013032558
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】61/528,380
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514050320
【氏名又は名称】アールシーピー ディベロップメント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ジョニー アール.
【審査官】
近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/042166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/444
A23L 33/10
A23L 33/155
A61K 31/232
A61K 31/593
A61K 47/04
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mg〜10mgの式Iの化合物:
またはその薬学的に許容される塩と、(b)
15IU〜50IUのビタミンD3および/または200IU〜500IUのビタミン
Aとを含む製品であって:
式中、
Rは、水素またはC
1〜C
5アルキルであり;
R’は、水素またはC
1〜C
7アルキルであり;
Xは、ハロゲンまたはC
1〜C
7アルキルであり;かつ
ピペリジン環B内の点線は、炭素/炭素二重結合若しくは炭素/窒素二重結合、または、炭素/窒素二重結合及び炭素/炭素二重結合から独立して選択される二つの共役した二重結合を表し、
炭素/窒素二重結合が存在するとき、Rが存在せず、かつ
以下:
(i)“a”が1〜4の整数であり、かつ“b”が0〜8の整数である;または、
(ii)“a”が0〜4の整数であり、かつ“b”が1〜8の整数である
のいずれかであり、
炭素/窒素二重結合が存在しないとき、Rが存在し、
“a”が0〜4の整数であり、かつ”b”が0〜8の整数である、製品。
【請求項2】
Rが、水素またはC1〜C3アルキルである、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
R’が、水素またはC1〜C4アルキルである、請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
Xが、ハロゲンまたはC1〜C3アルキルである、請求項1、2、または3に記載の製品。
【請求項5】
化合物がアナタビンである、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
化合物が、S−(−)−アナタビンである、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
化合物が、R−(+)−アナタビンである、請求項5に記載の製品。
【請求項8】
200IU〜500IUのビタミンAを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項9】
15IU〜50IUのビタミンD3を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項10】
200IU〜500IUのビタミンAおよび15IU〜50IUのビタミンD3を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
アナタビンが、合成アナタビンである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
アナタビンが、植物からの抽出物の形態で提供される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項13】
アナタビンを約1mgの量で含む、請求項5〜7、11、または12のいずれか一項に記載の製品。
【請求項14】
ビタミンAを約417IUの量で含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項15】
ビタミンD3を約33IUの量で含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
マンニトール、天然及び/または合成のミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、自然釉、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、BHT、モノグリセリド及びジグリセリド、ならびにポリソルベート80からなる群より選択される、一つ以上の追加の成分をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製品。
【請求項17】
栄養補助食品である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製品。
【請求項18】
薬学的組成物である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製品。
【請求項19】
トローチ剤である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の製品。
【請求項20】
アナタビンを約1mgの量で、レチニル酢酸エステルを約417IUの量で、かつコレカルシフェロールを約33IUの量で含む、請求項19に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2011年8月29日に出願された出願番号61/528,380に基づく優先権を主張するものであり、かつ参照によって組み入れられる。
【発明の概要】
【0002】
[本発明1001]
式Iの化合物:
またはその薬学的に許容される塩と、(b)ビタミンとを含む製品であって:
式中、
Rは、水素またはC1〜C5アルキルであり;
R'は、水素またはC1〜C7アルキルであり;
Xは、ハロゲンまたはC1〜C7アルキルであり;かつ
ピペリジン環B内の点線は、炭素/炭素二重結合若しくは炭素/窒素二重結合、または、炭素/窒素二重結合及び炭素/炭素二重結合から独立して選択される二つの共役した二重結合を表し、
炭素/窒素二重結合が存在するとき、Rが存在せず、かつ
以下:
(i)"a"が1〜4の整数であり、かつ"b"が0〜8の整数である;または、
(ii)"a"が0〜4の整数であり、かつ"b"が1〜8の整数である
のいずれかであり、
炭素/窒素二重結合が存在しないとき、Rが存在し、
"a"が0〜4の整数であり、かつ"b"が0〜8の整数である、製品。
[本発明1002]
Rが、水素またはC1〜C3アルキルである、本発明1001の製品。
[本発明1003]
R'が、水素またはC1〜C4アルキルである、本発明1001または1002の製品。
[本発明1004]
Xが、ハロゲンまたはC1〜C3アルキルである、本発明1001、1002、または1003の製品。
[本発明1005]
化合物がアナタビンである、本発明1001の製品。
[本発明1006]
化合物が、S-(-)-アナタビンである、本発明1005の製品。
[本発明1007]
化合物が、R-(+)-アナタビンである、本発明1005の製品。
[本発明1008]
ビタミンが、ビタミンAである、本発明1001〜1007のいずれかの製品。
[本発明1009]
ビタミンが、ビタミンD3である、本発明1001〜1007のいずれかの製品。
[本発明1010]
ビタミンD3をさらに含む、本発明1001〜1007のいずれかの製品。
[本発明1011]
アナタビンが、合成アナタビンである、本発明1005〜1010のいずれかの製品。
[本発明1012]
アナタビンが、植物からの抽出物の形態で提供される、本発明1005〜1010のいずれかの製品。
[本発明1013]
アナタビンを約1mgの量で含む、本発明1005〜1012のいずれかの製品。
[本発明1014]
ビタミンAを約417IUの量で含む、本発明1001〜1013のいずれかの製品。
[本発明1015]
ビタミンD3を約33IUの量で含む、本発明1001〜1013のいずれかの製品。
[本発明1016]
マンニトール、天然及び/または合成のミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、自然釉、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、BHT、モノグリセリド及びジグリセリド、ならびにポリソルベート80からなる群より選択される、一つ以上の追加の成分をさらに含む、本発明1001〜1015のいずれかの製品。
[本発明1017]
栄養補助食品である、本発明1001〜1016のいずれかの製品。
[本発明1018]
薬学的組成物である、本発明1001〜1016のいずれかの製品。
[本発明1019]
本発明1001〜1018のいずれかの製品を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、抗炎症補助を提供する方法。
[本発明1020]
個体が人である、本発明1019の方法。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】インビトロでのTNFα誘導性NFκB活性についてのアナタビンの効果を示すグラフ。
【
図2】インビトロでのTNFα誘導性NFκB活性についての無煙タバコの粗抽出物の効果を示すグラフ。
【
図3】インビトロでのTNFα誘導性NFκB活性についての無煙タバコのニコチンおよびアルカロイド抽出物の効果を示すグラフ。
【
図4】
図1でアッセイされた細胞由来の上清を用いた、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を測定する細胞毒性試験の結果を示すグラフ。
【
図5】
図2でアッセイされた細胞由来の上清を用いた、細胞毒性試験の結果を示すグラフ。
【
図6】
図3でアッセイされた細胞由来の上清を用いた、細胞毒性試験の結果を示すグラフ。
【
図7】ヒト白血球におけるリポ多糖(LPS)誘導性NFκB活性において、アナタビン、セレブレックス(登録商標)、及びアスピリンの効果を比較するグラフ。
【
図8】ヒト血液細胞由来のインターロイキン1β(IL-1β)の放出における、アナタビン(図中では「アナタブロック」)の濃度増加による効果を示すグラフ。
【
図9】ヒト血液細胞由来のインターロイキン1β(IL-1β)の放出における、アナタビン(図中では「アナタブロック」)の効果の時間経過を示すグラフ。
【
図10】LPSによる全ヒト血液の処置後のIL-1βの蓄積についての、アナタビン、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、及びジクロフェナクの効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
下記の式Iの化合物(例えば、アナタビン)及びビタミンを含む製品は、抗炎症補助のために有用である。本明細書中で使用される「抗炎症補助」なる用語は、身体に過剰な炎症が起こるのを避けるのを助け、身体が低レベルの炎症を維持するのを助け、身体がC反応性タンパク質の健康的なレベルを維持するのを助けること等を含む。本明細書で記載される製品は、例えば、薬学的組成物または栄養補助食品であり得る。本明細書で用いられる「栄養補助食品」は、米国で、1994年の栄養補助食品健康教育法(DSHEA)に「栄養補助食品(dietary supplement)」として規定されたタイプの製品及び、世界の他の地域で、例えば、「栄養補助食品(food supplements)」、「機能性食品(nutraceuticals)」、「機能性食品(functional foods)」、または、単純に「食品」なる用語で規定されるタイプの製品を含む。
【0005】
本明細書で開示される製品は、薬学的組成物及び栄養補助食品を含み、人間及び動物、例えば伴侶動物、介助動物、家畜、動物園の動物等への投与用に提供されうる。そのような動物は、これに限定されないが、イヌ科動物(犬、オオカミを含む)、ネコ科動物(家猫、トラ、ライオンを含む)、フェレット、うさぎ、齧歯動物(たとえば、ラット、ハツカネズミ)、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ウマ、ウシ、ブタ、羊、ヤギ、キリン、及びゾウを含む。
【0006】
いくつかの態様では、製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、下記式Iの化合物:
を含み、該式Iの化合物は、薬学的に許容される塩または食品用の塩として提供されうる。式中、
Rは、水素またはC
1〜C
5アルキルであり、
R'は、水素またはC
1〜C
7アルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはC
1〜C
7アルキルである。
【0007】
いくつかの態様では、
Rは、水素またはC
1〜C
3アルキルであり、
R'は、水素またはC
1〜C
4アルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはC
1〜C
3アルキルである。
【0008】
ピペリジン環内の点線は、その環内の炭素/炭素二重結合若しくは炭素/窒素二重結合、または、その環内の二つの共役した二重結合を表す。二つの共役した二重結合の一つは、炭素/窒素二重結合であり得、あるいは共役した二重結合の両方が、炭素/炭素二重結合であり得る。炭素/窒素二重結合が存在するとき、Rは存在しない;そして、(i)"a"が、1〜4の整数、通常は1〜2であり、かつ"b"が、0〜8の整数、通常は0〜4であるか、または、(ii)"a"が、0〜4の整数、通常は0〜2であり、かつ"b"が、1〜8の整数、通常は1〜4であるか、のいずれかである。炭素/窒素二重結合が存在しないときは、Rが存在し、"a"は、0〜4の整数、通常は1〜2であり、かつ"b"は、0〜8の整数、通常は0〜4または1〜2である。本明細書で使用される「アルキル」なる用語は、直鎖または分枝アルキルの両方を包含する。「ハロゲン」なる用語は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及び ヨウ素(I)を包含する。
【0009】
表1は、式Iの化合物の限定されない例を表す。
【0011】
式Iの化合物は、ラセミ混合物の形態で存在し得、または、いくつかの場合、下記式IA:
に表わされるように、単離されたエナンチオマーとして存在し得る。
【0012】
式Iの化合物の一つの例が、アナタビンである。アナタビン(1,2,3,6-テトラヒドロ-[2,3']ビピリジニル)を以下に示す。ここで*は、不斉炭素を表す。
【0013】
アナタビンは、タバコ、ならびにグリーントマト、グリーンポテト、成熟赤唐辛子、トマティーヨ、及び天日干しトマトを含むある種の食品において、R-(+)-アナタビン及びS-(-)-アナタビンのラセミ混合物として存在する。その構造を以下に示す。
【0014】
式IAの化合物の一つの例は、S-(-)-アナタビンである。いくつかの態様では、アナタビンは、アナタビンの薬学的に許容される(または食品用の)塩の形態で提供される。アナタビンは、米国特許第3,901,248に述べられているように、ポリメタクリル酸(アンバーライトIRP64またはピュロライトC115HMR)のような陽イオン交換樹脂に吸着され得る。前記特許の開示は、その全体が参照によって組み入れられる。そのような陽イオン交換樹脂は、例えば、ニコチン置換療法、例えば、ニコチンポラクリレックスにおいて、商業的に使用されてきた。
【0015】
文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「アナタビン」なる用語は、集合的にアナタビンをさし、ラセミ混合物またはエナンチオマー、及びそれらの薬学的に許容される塩または食品用の塩をさす。一般に、塩は、天然型のアナタビンに比べて、向上した、化学的純度、安定性、溶解性、及び/または、生物学的利用能を提供し得る。アナタビンの塩の限定しない可能な例は、P.H.Stahl et al., Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use、Weiheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA,2002に記載されており、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(+)、カンファ-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(DL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(DL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、及びウンデシレン酸の塩を含む。
【0016】
合成でアナタビンを調製するのとは別の方法として、アナタビンは、タバコ、またはナス科のメンバーなどの他の植物から抽出して得ることができ、ナス科のメンバーは、例えば、ダチュラ、マンドレイク、ベラドンナ、トウガラシ、ジャガイモ、ニコチアナ、ナス、及びペチュニアである。例えば、タバコ抽出物は、保存法で熟成されたタバコの茎、葉片、または両方から調製され得る。抽出プロセスにおいて、保存法で熟成されたタバコ材料は、溶媒、典型的には、水、エタノール、蒸気、または二酸化炭素を用いて抽出される。得られた溶液は、アナタビンを含むタバコの可溶成分を含む。アナタビンは、液体クロマトグラフィのような好適な技術を用いて、タバコの他の成分から精製され得る。
【0017】
精製プロセスの一部として、タバコ材料は、ニコチン、ノルニコチン、及びアナバシンのような他のアルカロイドの多くを除去して、実質的に脱ニコチン化されうる。脱ニコチン化は、通常、アナタビンの抽出の前に行われる。タバコ材料の脱ニコチン化に用いられうる方法は、例えば、米国特許第5,119,835に記載されており、この開示は、参照によって組み入れられる。一般に、タバコアルカロイドは、タバコ材料から、超臨界条件の下で、二酸化炭素を用いて抽出されうる。その後、二酸化炭素に、例えば、一クエン酸カリウムの様な有機酸またはその塩を溶解させることによって、タバコアルカロイドは二酸化炭素から分離され得る。
【0018】
いくつかの局面において、単離された形態のアナタビンが使用される。本明細書で使用される「単離された形態のアナタビン」なる語は、合成して調製されたアナタビン、または天然由来の植物材料から実質的に分離されたアナタビンのいずれかをさす。単離された形態のアナタビンは、非常に高純度である(エナンチオマーが使用される場合においては、光学活性純度を含む)べきである。合成アナタビンの場合、例えば、純度は、アナタビンの重量の、最終反応生成物の重量に対する比をさす。例えば植物材料から単離されたアナタビンの場合は、純度は、アナタビンを含む抽出物の総重量に対するアナタビンの重量の比をさす。通常、純度のレベルは、少なくとも約95%、より通常には少なくとも約96%、約97%、約98%、またはそれを超える。例えば、純度のレベルは、約98.5%、約99.0%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、またはそれを越えうる。
【0019】
いくつかの態様では、製品(例えば、薬学的組成物及び栄養補助食品)は、合成アナタビンを含む。いくつかの態様では、製品(例えば、薬学的組成物及び栄養補助食品)は、天然のアナタビン(すなわち、植物から抽出されたアナタビン、詳細は以下に述べる)を含む。
【0020】
ビタミンおよびミネラル
本明細書に開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、また、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンK1(フィロキノン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB9(葉酸)等の、一つ以上のビタミンも含む。ビタミンを合成する方法は公知であり、ビタミンは、信頼の置ける商業的供給源から得られうる。いくつかの態様において、製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、合成のまたは天然のアナタビン(または、式Iの他の化合物)及びビタミンAを含む。いくつかの態様では、製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、ビタミンD3を含む。いくつかの態様では、製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、ビタミンA及びビタミンD3を含む。
【0021】
本明細書で開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、任意で、パントテン酸、カルシウム、鉄、リン、ヨウ素、マグネシウム、亜鉛、セレン、銅、マンガン、クロム、モリブデン、塩素、カリウム、ホウ素、ニッケル、ケイ素、バナジウム、またはルテインのような、一つ以上の他の栄養素を含みうる。
【0022】
追加の成分
追加の成分は、製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)に、味や安定性を向上させるために添加されてもよい。任意で、甘味料や香味料のような他の成分が添加されうる。追加の成分は、これに限られないが、甘味料、天然風味料、人工風味料、着色料、抗酸化剤、保存料、キレート剤、粘性調整剤、等張剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、増粘剤、及びそれらの混合物を含み、これに限られないが、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロール、結晶セルロース、デンプン、デキストリン、発酵乳清、豆腐、マルトデキストリン、ポリオール(ソルビトールまたはマンニトールのような、糖アルコールを含む)、炭水化物(例えば、乳糖)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジェランガム、グアーガム、ペクチン、トラガカントゴム、アカシアゴム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、天然及び/または合成のミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、自然釉、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、モノグリセリド及びジグリセリド、ポリソルベート80等を含む。
【0023】
形態
本明細書で開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、多くの形態であり得、丸剤、錠剤、カプセル、軟質ゲル、ジェルキャップ、液体、シロップ、懸濁液、粉末、チューズ、トローチ剤、ガム、バー等経口で摂取される形態、または、他の経路、例えば吸入スプレーによるような非経口的に、埋め込み式リザーバーを介して局所的に、等による投与であり得る。本製品は、食品または飲料内に調製され投与され得る。本製品は、使用前に、水または他の好適な媒体(例えば、牛乳、フルーツジュース、等)を用いて再構成される、乾燥または粉末状製品として供給され得る。
【0024】
任意で、本明細書に開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、抗炎症補助を長期間提供する徐放製剤として提供されうる。徐放製剤は、本技術分野において公知である。例えば、膨潤性粒子は、米国特許第5,582,837、5,972,389、及び6,723,340に教示されている。ポリマーマトリックスは、米国特許第6,210,710、6,217,903、及び6,090,411に教示されている。徐放製剤に用いられる典型的な材料は、ポリ(エチレンオキシド)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのポリマーである。徐放のための錠剤製剤は、米国特許第5,942,244にも記載されている。
【0025】
包装
本明細書に開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、抗炎症補助用の使用のために、調製され、包装され、かつ、ラベル付され得る。
【0026】
製品の調製
本明細書で開示される製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)は、本明細書で開示されたように、任意の好適な技術によって調製されてもよく、いかなる特定の製造方法にも限定されない。例えば、アナタビン(または式Iの別の化合物)及びビタミンは、賦形剤及び結合剤と組み合わせ、その後顆粒化され得る。顆粒は、任意の残りの成分と乾式混合され得、錠剤のような固体に圧縮され得る。
【0027】
製品(例えば、薬学的組成物、栄養補助食品)におけるアナタビン(または式Iの別の化合物)及びビタミンの量は、変化しうる。いくつかの態様では、アナタビン(または式Iの別の化合物)の量は、約0.1mg〜約10mg(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、または10mg)である。アナタビン(または式Iの別の化合物)は、遊離塩基として、または、クエン酸塩のような塩の形態で提供され得る。
【0028】
いくつかの態様では、ビタミンAの量は、約200IU〜約500IU(例えば、約200、250、300、350、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、450、475、または500IU)である。ビタミンAは、例えば、レチニル酢酸エステルとして提供され得る。
【0029】
いくつかの態様では、ビタミンD3の量は、約15IU〜約50IU(例えば、約15、20、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、または50IU)である。ビタミンD3は、例えば、コレカルシフェロールとして提供され得る。
【0030】
いくつかの態様では、アナタビン(または式Iの別の化合物)及びビタミンAは、同じ比率(例えば、それぞれ1mg)で提供される。
【0031】
いくつかの態様では、1mgアナタビン(または式Iの別の化合物)を含む一つまたは二つのトローチ剤は、一日に一回、二回、または三回摂取されうる。いくつかの態様では、一日のトローチ剤の服用量は、1、2、3、4、5、または6個を超えない。いくつかの態様では、一日のトローチ剤の服用量は、1、2、3、4、5、または6個を超え得る。
【0032】
いくつかの態様では、製品は、1mgのアナタビン(クエン酸アナタビンとして)、417IUのビタミンA(レチニル酢酸エステルとして)、33IUのビタミンD3(コレカルシフェロールとして)、並びに、マンニトール、天然及び人工のミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、自然釉、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、BHT、モノグリセリド及びジグリセリド、及びポリソルベート80を含むトローチ剤の形態である。一つの態様では、この製品は、栄養補助食品(「アナタブロック(ANATABLOC)(登録商標)」)である。
【実施例】
【0033】
実施例1
NFκB媒介転写アッセイ;細胞毒性試験
アナタビン、ニコチン、無煙タバコの粗抽出物、及び無煙タバコのアルカロイド抽出物のある範囲の服用量の効果は、NFκBルシフェラーゼアッセイ(TNFα誘導性NFκB活性の阻害)で試験した。これらの実験で使用される無煙タバコは、地元の販売店で購入した味付けされていない長葉のコペンハーゲンタバコであった。粗抽出物は、メタノール及び水を用いて抽出され、遠心分離及び濾過によって浄化された。アルカロイド抽出物は、水酸化ナトリウム及びメタノール抽出物、有機相分離及び精製から調製された。すべての処理試料は、重量(μg/ml)の関数として調製し、すべての試料は、DMSOで希釈した。希釈は、細胞培養処理の前に速やかに行い、すべての場合において、DMSOの最終量が、細胞培養培地において1%を超えないようにした。
【0034】
NFκBルシフェラーゼリポーターを遺伝子導入されたヒト内皮腎臓細胞(HEK293)が、TNFαで3時間誘導され、その後、誘導された細胞に試料を適用した。結果は、
図1〜3に示されている。
【0035】
処理された細胞由来の上清を用いた細胞毒性試験は、LDH毒性検査キット(Roche)を用いて、製造元の指示に従って行った。結果は、
図4〜6に示されている。
【0036】
図1に示されるように、TNFαは、NFκBが媒介するルシフェラーゼの転写増加を誘導した。アナタビンの投与は、この転写を細胞毒性無しに対照レベルまで減少させ得る(
図4)。無煙タバコの粗抽出物は、細胞に対する毒性はないものの(
図5)、TNFα誘導性のNFκBが媒介する転写を減少させない(
図2)。医薬品としての投与には適さないが、ニコチン及び無煙タバコのアルカロイド抽出物の両方が、TNFα誘導性のNFκBが媒介する転写を減らす(
図3)。高い服用量において、アルカロイド抽出物は、明らかな細胞毒性を示す(
図6)。
【0037】
実施例2
アナタビン、セレブレックス(登録商標)、及びアスピリンのヒト白血球細胞におけるLPS誘導性NFκB活性に対する効果
末梢血単核球は、フィコールプラーク法を用いて、製造元の指示に従って単離した。細胞を10μg/mlのLPSで活性化し、1.25mMのアナタビン、セレコキシブ(セレブレックス(登録商標))、またはアスピリンで処理した。その後細胞を37℃、5%CO
2で、終夜(18時間)、20mg/mlのPHA、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、及び1%のグルタマックスを補充されたRPMI培地でインキュベートし、アッセイでNFκB活性を調べた。結果は、
図7に示されている。
【0038】
実施例3
ヒト血液細胞からのIL-1β放出に関する、アナタビン濃度の増加の効果
LPSを用いたヒト血液細胞の刺激は、インターロイキン1β(IL-1β)の放出を起こす。アナタビンは、
図8に示されるように、濃度に依存して、この放出を阻害する。
図9は、この抑制を時間経過に従って示すグラフである。
【0039】
実施例4
アナタビン、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、及びジクロフェナクの、LPSを用いたヒト全血の処理後のIL-1βの蓄積に関する効果
LPS(IL-1β生産を刺激するため)、及び、アナタビン、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、またはジクロフェナクのいずれかを用いて、ヒト全血を処理した。16時間後、IL-1β放出が測定された。結果が
図10に示されており、他の抗炎症剤を用いて処理された血液に比べ、アナタビンで処理された血液中のIL-1βの蓄積が減少していることを示している。
【0040】
実施例5
栄養補助食品製剤
以下の表2に挙げられた成分を組み合わせることにより栄養補助食品を調製し、1mgのアナタビン、417IUのビタミンA(レチニル酢酸エステルとして)、及び33IUのビタミンD3(カルシフェロールとして)を含む、160mg錠剤を形成した。同時係属中の出願第12/729,346の実施例1〜3に記載されたように、クエン酸アナタビンは合成によって調製され、この出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。顆粒は、1.003mgの遊離塩基アナタビン(ダボス/Anthem)、1.003mgのクエン酸無水物(Spectrum Chemical Mfg.Corp.)、0.090mgのBHT(Spectrum Chemical Mfg.Corp.)、及び17.958mgのマンニトール(Roquette)を含んで作製され、かつ表2の成分と組み合わせられた。
【0041】
【表2】