【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0052】
[1]メンソール含有組成物(スラリー)1〜3の調製
メンソール含有組成物(スラリー)1の組成(多糖類としてカラギーナンを使用)
水 10リットル
カラギーナン(CS-530/三栄源エフ・エフ・アイ) 500グラム
レシチン(サンレシチンA-1/太陽化学(株)) 200ミリリットル(5%水溶液)
メンソール(高砂香料工業株式会社) 2500グラム
メンソール含有組成物(スラリー)2の組成(多糖類としてゲランガムを使用)
水 10リットル
ゲランガム(ゲルコゲル/三栄源エフ・エフ・アイ) 300グラム
レシチン(サンレシチンA-1/太陽化学(株)) 120ミリリットル(5%水溶液)
メンソール(高砂香料工業株式会社) 1500グラム
メンソール含有組成物(スラリー)3の組成(多糖類としてゲランガムおよびタマリンドガムを使用)
水 10リットル
ゲランガム(ゲルコゲル/三栄源エフ・エフ・アイ) 150グラム
タマリンドガム(ビストップD-2032/三栄源エフ・エフ・アイ) 150グラム
レシチン(サンレシチンA-1/太陽化学(株)) 120ミリリットル(5%水溶液)
メンソール(高砂香料工業株式会社) 1500グラム
上記組成のメンソール含有組成物(スラリー)1〜3を下記のとおり調製した。
【0053】
水(10 L)を80℃に保持し、ミキサー(PRIMIX T.K. AUTO MIXER Model 40/溶液攪拌ローター装着/2000 rpm)で攪拌しつつ、多糖類(メンソール含有組成物1の場合カラギーナン(500g)、メンソール含有組成物2の場合ゲランガム(300g)、メンソール含有組成物3の場合ゲランガム(150g)およびタマリンドガム(150g))をダマにならないように少量ずつ溶解し(所要時間20分程度)、メンソール(メンソール含有組成物1の場合2500g、メンソール含有組成物2および3の場合1500g)を添加した。
【0054】
攪拌ミキサーからホモジナイザー(PRIMIX T.K. AUTO MIXER Model 40/ローター−ステーターヘッド装着/4000 rpm)に交換して10分間乳化を行い、更にレシチン(メンソール含有組成物1の場合200mL(5%水溶液)、メンソール含有組成物2および3の場合120mL(5%水溶液))を添加して10分間、乳化を続けてメンソール含有組成物(スラリー)を得た。
【0055】
得られたメンソール含有組成物(スラリー)1〜3を、下記の実験で使用した。
【0056】
[2]香料担持シガレット構成部材の調製
[2−1]香料担持たばこ刻の調製
Mild Seven Super Lights製品(日本たばこ産業株式会社)のたばこ刻(100重量部)に対し、メンソール含有組成物(スラリー)(20重量部)(約60℃、ゾル状態)を均一になるように適用した。ここでは、移送ポンプ(兵神装備株式会社製 ヘイシンモーノポンプ 2NVL06F)を用いて、メンソール含有組成物(スラリー)をたばこ刻に添加した。
【0057】
メンソール含有組成物(スラリー)が添加されたたばこ刻は、10℃冷風(冷風発生機器;スイデン SS-25DD-1)により、メンソール含有組成物を添加したたばこ刻の温度が20℃以下になるまで一旦冷却(品温計測機器;オプティックス株式会社製、PT-7LD)した。
【0058】
その後、冷却されたたばこ刻を、ベルトコンベア移送型熱風乾燥機(熱風温度条件;110℃、2.5分→100℃、5分→80℃、2.5分)により、メンソール含有組成物を添加したたばこ刻の水分含有量が12重量%程度になるまで乾燥させ(後述の「水分含量の測定」を参照)、フロッキングしているたばこ刻をほぐして「本発明の香料担持たばこ刻」を調製した。メンソール含有組成物1を適用したたばこ刻を「本発明の香料担持たばこ刻1」、メンソール含有組成物2を適用したたばこ刻を「本発明の香料担持たばこ刻2」、メンソール含有組成物3を適用したたばこ刻を「本発明の香料担持たばこ刻3」と称する。本発明の香料担持たばこ刻1〜3の水分含有量は、いずれも12重量%〜13重量%であった。
【0059】
これに対し、通常の手法によりたばこ刻にメンソールを添加したものを、たばこ刻の対照試料とした。すなわち、香料(メンソール)のエタノール溶液をたばこ刻に噴霧することによりたばこ刻を加香した。たばこ刻は、メンソール量がたばこ刻重量当たり1.0重量%となるように加香した。
【0060】
[2−2]香料担持シートたばこの調製
抄造プロセスにより調製されたシートたばこ(再生たばこ原料)に、メンソール含有組成物(スラリー)(約60℃、ゾル状態)をなるべく均一になるように適用した。すなわち、フィルムアプリケーターにより、メンソール含有組成物(スラリー)をシートたばこ上にキャスティング(0.2mm厚)して、シートたばこにメンソール含有組成物のスラリーを塗工した。ここでメンソール含有組成物は、シートたばこ(100重量部)に対し、メンソール含有組成物(スラリー)が150重量部となるように塗布した。
【0061】
メンソール含有組成物(スラリー)が塗工されたシートたばこは、10℃の冷風(冷風発生機器;スイデン SS-25DD-1)により、シートたばこに塗工したメンソール含有組成物の温度が20℃以下になるまで一旦冷却した(品温計測機器;オプティックス株式会社製、PT-7LD)。
【0062】
その後、ベルトコンベア移送型熱風乾燥機(熱風温度条件;110℃、2.5分→100℃、5分→80℃、2.5分)により、メンソール含有組成物を塗工したシートたばこの水分含有量が10重量%程度になるまで乾燥させ(後述の「水分含量の測定」を参照)、「本発明の香料担持シートたばこ」を調製した。メンソール含有組成物1を適用したシートたばこを「本発明の香料担持シートたばこ1」、メンソール含有組成物2を適用したシートたばこを「本発明の香料担持シートたばこ2」、メンソール含有組成物3を適用したシートたばこを「本発明の香料担持シートたばこ3」と称する。本発明の香料担持シートたばこ1〜3の水分含有量は、いずれも9重量%〜10重量%であった。
【0063】
これに対し、通常のたばこ刻に対する加香手法をシートたばこに準用したものを、シートたばこの対照試料とした。すなわち、香料(メンソール)のエタノール溶液をシートたばこに噴霧することによりシートたばこを加香した。シートたばこは、メンソール量が、シートたばこ重量当たり5.0重量%となるように加香した。
【0064】
[2−3]香料担持たばこ巻紙の調製
たばこ巻紙(坪量40g/m2、厚み35μm)に、メンソール含有組成物(スラリー)(約60℃、ゾル状態)を、なるべく均一になるように適用した。すなわち、フィルムアプリケーターにより、たばこ巻紙に、0.05mm厚さでメンソール含有組成物(スラリー)を塗工した。ここでメンソール含有組成物は、たばこ巻紙(100重量部)に対し、メンソール含有組成物(スラリー)が40重量部となるように塗工した。
【0065】
メンソール含有組成物(スラリー)が塗工されたたばこ巻紙を、10℃の冷風(冷風発生機器;スイデン SS-25DD-1)により、たばこ巻紙に塗工したメンソール含有組成物の温度が20℃以下になるまで一旦冷却した(品温計測機器;オプティックス株式会社製、PT-7LD)。
【0066】
その後、ベルトコンベア移送型熱風乾燥機(熱風温度条件;110℃、2.5分→100℃、5分→80℃、2.5分)により、メンソール含有組成物を塗工したたばこ巻紙の水分含有量が10重量%程度になるまで乾燥させ(後述の「水分含量の測定」を参照)、「本発明のたばこ巻紙」を調製した。
【0067】
メンソール含有組成物1を適用したたばこ巻紙を「本発明の香料担持たばこ巻紙1」、メンソール含有組成物2を適用したたばこ巻紙を「本発明の香料担持たばこ巻紙2」、メンソール含有組成物3を適用したたばこ巻紙を「本発明の香料担持たばこ巻紙3」と称する。本発明の香料担持たばこ巻紙1〜3の水分含有量は、いずれも6重量%〜7重量%であった。
【0068】
これに対し、通常のたばこ刻に対する加香手法をたばこ巻紙に準用したものを、たばこ巻紙の対照試料とした。すなわち、香料(メンソール)のエタノール溶液をたばこ巻紙に噴霧することによりたばこ巻紙を加香した。たばこ巻紙は、メンソール量が、たばこ巻紙重量当たり1.0重量%となるように加香した。
【0069】
[3]水分含量の測定
シガレット構成部材に適用されたメンソール含有組成物のスラリーの乾燥状況を把握するため、以下の手法に従って水分含量を測定した。
【0070】
[3−1]水分含量測定溶液の調製
調製された香料担持シガレット構成部材0.1gを秤量し、これに10mLのメタノール(試薬特級ないし同等以上のものを、空気中の水分吸収の影響を排除するため、新品を大気に曝さずにディスペンサで分注する)を50mL容量の密閉容器(デシケータ保管したもの)内で加え、振とう機(AS ONE製 SHAKER SRR-2)にて40分間振とうした(直線往復振とう(レシプロ) 3cm振幅 毎分200回)。一晩放置した後、再度40分間振とう(同等条件:200rpm)を行い、静置後の上澄み液を(なるべく大気に曝さずに)バイアルに詰め、水分含量測定溶液とした。
【0071】
[3−2]GC−TCD水分含量測定
得られた水分含量測定溶液を、以下のGC−TCDにかけて検量線法により定量した。
【0072】
GC−TCD; Hewlett Packard社製 6890 ガスクロマトグラフ
Column;HP Polapack Q (packed column)
Carrier Gas;He Constant Flow mode 20.0mL/min
Injection;1.0 μL
Inlet;EPC purge packed column inlet Heater;230℃
Inlet Gas;He Total flow;21.1 mL/min
Oven;160℃(hold 4.5min)→(60℃/min)→ 220℃(hold 4.0min)
Detector;TCD検出器 Reference Gas (He) 流量;20 mL/min
make up gas (He) 3.0 mL/min
Signal rate;5 Hz
検量線溶液濃度;0、1、3、5、10、20 [mg-H2O/10mL]の6点。
【0073】
[4]メンソール含有量の測定
「香料担持シガレット構成部材のメンソール含有量」および「主流煙中のメンソール含有量」を以下の手法に従って測定した。
【0074】
調製された香料担持シガレット構成部材のメンソール含有量は、香料の蔵置保香性および香料の配合均一性を調べるために測定した。また、主流煙中のメンソール含有量は、香料の蔵置保香性を調べるために測定した。
【0075】
[4−1]シガレット構成部材のメンソール含有量を測定するための溶液の調製
調製された香料担持シガレット構成部材0.1gを秤量し、これに10mLのメタノール(試薬特級ないし同等以上)を50mL容量の密閉容器(スクリュー管)内で加え、振とう機(AS ONE製 SHAKER SRR-2)にて40分間振とうした(直線往復振とう(レシプロ) 3cm振幅 毎分200回)。一晩放置した後、再度40分間振とう(同等条件:200rpm)を行い、静置後の上澄み液をGC測定に適当な希釈倍率で希釈(ここではx10メタノール希釈)して、GC−FID測定に供するメンソール測定溶液とした。
【0076】
[4−2]主流煙中のメンソール含有量を測定するための溶液の調製
ケンブリッジフィルター抽出溶液を下記のとおり調製し、メンソール測定溶液とした。すなわち、ケンブリッジフィルター試料に10mLのメタノール(試薬特級ないし同等以上)を50mL容量の密閉容器(スクリュー管)内で加え、振とう機(AS ONE製 SHAKER SRR-2)にて40分間振とうした(直線往復振とう(レシプロ) 3cm振幅 毎分200回)。静置後の上澄み液をバイアルに詰め、GC−FID測定に供するメンソール測定溶液とした。
【0077】
[4−3]GC−FIDメンソール含有量測定
得られたメンソール測定溶液を、以下のようにGC−FIDにかけて検量線法により定量した。
【0078】
GC-FID;Agilent社製 6890N ガスクロマトグラフ
Column;DB-WAX 30m x 530μm x 1μm〔Max 220℃〕
Carrier Gas;He Constant Pressure mode 5.5 psi(velocity;50cm/sec)
Injection;1.0μL
Inlet;Spritless mode 250℃ 5.5 psi
Oven;80℃→(10℃/min)→170℃ (hold 6.0min)
Detector;FID検出器 250℃ (H2;40mL/min・air;450mL/min)
Signal rate;20Hz
検量線溶液濃度;0、0.01、0.05、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0 [mg-メンソール/mL]の8点。
【0079】
[5]加速試験
調製された香料担持シガレット構成部材を、50℃恒温器内(ヤマト科学株式会社製 DX600)に入れ、1週間、2週間、または1ヵ月(30日)蔵置した。それぞれの時点におけるメンソール含有量を、上述のとおり測定し、その変化に基づいて蔵置保香性を評価した。
【0080】
[6]シガレットの作成および喫煙実験
本発明の香料担持シガレット構成部材を用いて、下記のとおりシガレットを製造した。
【0081】
シガレットは、Mild Seven Super Lights(日本たばこ産業株式会社)に準拠し、調製した香料担持シガレット構成部材をそれぞれ用いて作成した。
【0082】
具体的には、本発明の香料担持たばこ刻を含むシガレットは、Mild Seven Super Lights製品のたばこ刻を原料として用いて本発明の香料担持たばこ刻を調製し、これにMild Seven Super Lights製造用の各種材料品(巻紙やフィルターなど)を用いて作成した。
【0083】
本発明の香料担持シートたばこを含むシガレットは、Mild Seven Super Lights製造用のたばこ刻(85重量部)に、本発明の香料担持シートたばこ(15重量部)を配合し、所定のてん充量とし、これにMild Seven Super Lights製品の各種材料品(巻紙やフィルターなど)を用いて作成した。
【0084】
本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレットは、Mild Seven Super Lights製品のたばこ巻紙を、本発明の香料担持たばこ巻紙に置き換えることにより作成した。シガレットは、タール値がなるべく一定に揃うように調整した。
【0085】
喫煙条件:ISOに規定されている標準喫煙条件(1分間のうち2秒吸煙(58秒待機)、吸煙容量35mL、吸殻長35mm(チップ紙+3mm))により喫煙実験を行った。
主流煙中メンソール含有量は、ケンブリッジフィルター捕集分を上述のとおり抽出し、測定した。
【0086】
[7]結果(たばこ刻)
上記実験手法を用いて、たばこ刻について以下の結果を得た。
【0087】
[7−1]メンソールの蔵置保香性(たばこ刻を用いた評価)
上述のとおり調製された「本発明の香料担持たばこ刻1〜3」および「たばこ刻の対照試料」を用いて、たばこ刻におけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図1に示す。
【0088】
たばこ刻は、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置いた。また、たばこ刻中のメンソール含有量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
図1において、本発明の香料担持たばこ刻1の結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持たばこ刻2の結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持たばこ刻3の結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料の結果は、「コントロール」として示される。メンソール含有量(重量%)は、式:{メンソール含有量の測定値(mg)/たばこ刻の重量(mg)}×100により求められる。
【0089】
対照試料のメンソール含有量は、蔵置開始時点(0日)において0.7重量%程度であった。この対照試料を50℃恒温器内にて蔵置したところ、経時に伴いメンソール含有量が顕著に減少してゆく傾向が認められた。
【0090】
これに対し、本発明の香料担持たばこ刻1〜3は、蔵置開始時点(0日)において1.2〜1.5重量%のメンソール含有量を示し、50℃の加速環境で蔵置した後においても少なくとも1か月間は良好な保香性が認められた。
【0091】
[7−2]メンソールの蔵置保香性(シガレットを用いた評価)
「本発明の香料担持たばこ刻1〜3」を含むシガレットおよび「たばこ刻の対照試料」を含む対照シガレットを用いて、シガレットにおけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図2に示す。
【0092】
たばこ刻は、上述のとおり、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置き、そのたばこ刻を用いたシガレットを作成し喫煙実験を行った。主流煙中のメンソール量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
【0093】
図2において、本発明の香料担持たばこ刻1を含むシガレットの結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持たばこ刻2を含むシガレットの結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持たばこ刻3を含むシガレットの結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料を含むシガレットの結果は、「コントロール」として示される。
図2において、主流煙中メンソール量[mg/cig]は、シガレット1本あたりのメンソール量の測定値(mg)を表す。
【0094】
対照試料のたばこ刻を含むシガレットは、蔵置日数が0日のたばこ刻を用いた場合には、高い主流煙中メンソール量を示したが、蔵置日数が7日のたばこ刻を用いた場合、メンソール量は顕著に低下した。
【0095】
これに対し、本発明の香料担持たばこ刻1〜3を含むシガレットは、50℃の加速環境で蔵置したたばこ刻を用いた場合においても、少なくとも1か月間は良好な保香性が認められた。
【0096】
[7−3]メンソールの配合均一性
本発明の香料担持たばこ刻を含むシガレット10本について、各シガレット間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。また、本発明の香料担持たばこ刻を含むシガレットロッドを3等分に分割し、各部分の間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。結果を、それぞれ「シガレット間のばらつき」および「シガレット内のばらつき」として表1に示す。シガレット内のばらつき(CV%)は、10本のシガレットを計測した平均値である。
【0097】
コントロールについては、本発明の香料担持たばこ刻の代わりに、メンソール含有シートの裁刻物(国際公開2009/142159)をたばこ刻に2重量%の割合で配合して、タール値を揃えて試料シガレットを作成した。この試料シガレットの主流煙中メンソール量は、本発明の香料担持たばこ刻を用いたシガレットとほぼ同等の、一本当0.4mgとなった。
【表1】
【0098】
メンソール含有シートを、たばこ刻と同等の形状に裁刻してたばこ刻に配合した場合の、シガレット間のばらつき(CV%)は34%であり、シガレット内のばらつきは54%であった。このばらつきはメンソール含有シート配合率が低いことに起因し、メンソール含有シート配合率が10重量%以上であれば、ばらつき(CV%)は10%程度まで低下する。一方、本発明の香料担持たばこ刻を用いてシガレットを調製した場合、シガレット間のばらつきおよびシガレット内のばらつきのいずれも、コントロールと比べてその値は顕著に低下した。
【0099】
これらの結果から、メンソール含有シートの裁刻物をたばこ充填材として配合したシガレットより、本発明の香料担持たばこ刻を含むシガレットの方が、シガレット間のメンソール配合量のばらつきを抑えることができるとともに、シガレットロッド内に均一にメンソールを配合できることがわかる。これにより、本発明の香料担持たばこ刻を含むシガレットは、シガレット毎の香喫味の変動や、シガレット喫煙期間にわたる香喫味の変動を抑えることができる。また、本発明では、通常用いるシガレット構成部材に香料組成物を適用するため、シガレット製造は既存の設備で容易に行うことができる。
【0100】
[8]結果(シートたばこ)
上記実験手法を用いて、シートたばこについて以下の結果を得た。
【0101】
[8−1]メンソールの蔵置保香性(シートたばこを用いた評価)
上述のとおり調製された「本発明の香料担持シートたばこ1〜3」および「シートたばこの対照試料」を用いて、シートたばこにおけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図3に示す。
【0102】
シートたばこは、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置いた。また、シートたばこ中のメンソール含有量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
図3において、本発明の香料担持シートたばこ1の結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持シートたばこ2の結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持シートたばこ3の結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料の結果は、「コントロール」として示される。メンソール含有量(重量%)は、式:{メンソール含有量の測定値(mg)/シートたばこの重量(mg)}×100により求められる。
【0103】
対照試料のメンソール含有量は、蔵置開始時点(0日)において3重量%程度であった。この対照試料を50℃恒温器内にて蔵置したところ、経時に伴いメンソール含有量が顕著に減少し、一週間経過後には殆んどゼロになった。
【0104】
これに対し、本発明の香料担持シートたばこ1〜3は、蔵置開始時点(0日)において5〜7重量%程度のメンソール含有量を示し、50℃の加速環境で蔵置した後においてもメンソール含有量は比較的多く、良好な保香性が認められた。
【0105】
[8−2]メンソールの蔵置保香性(シガレットを用いた評価)
「本発明の香料担持シートたばこ1〜3」を含むシガレットおよび「シートたばこの対照試料」を含む対照シガレットを用いて、シガレットにおけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図4に示す。
【0106】
シートたばこは、上述のとおり、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置き、そのシートたばこを用いた試料シガレットを作成した。主流煙中のメンソール量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
【0107】
図4において、本発明の香料担持シートたばこ1を含むシガレットの結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持シートたばこ2を含むシガレットの結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持シートたばこ3を含むシガレットの結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料を含むシガレットの結果は、「コントロール」として示される。
図4において、主流煙中メンソール量[mg/cig]は、シガレット1本あたりのメンソール量の測定値(mg)を表す。
【0108】
対照試料のシートたばこを含むシガレットは、蔵置日数が0日のシートたばこを用いた場合には、本発明の香料担持シートたばこを含むシガレットと同等の主流煙中メンソール量を示したが、蔵置日数が7日のシートたばこを用いた場合、メンソール量は殆んどゼロになった。
【0109】
これに対し、本発明の香料担持シートたばこ1〜3を含むシガレット試料は、50℃の加速環境で蔵置したシートたばこを用いた場合においても、主流煙中メンソール量は比較的多く、良好な保香性が認められた。
【0110】
[8−3]メンソールの配合均一性
本発明の香料担持シートたばこを含むシガレット10本について、各シガレット間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。また、本発明の香料担持シートたばこを含むシガレットロッドを3等分に分割し、各部分の間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。結果を、それぞれ「シガレット間のばらつき」および「シガレット内のばらつき」として表2に示す。シガレット内のばらつき(CV%)は、10本のシガレットを計測した平均値である。
【0111】
コントロールについては、前出の香料担持たばこ刻の項で記述したのと同様に、メンソール含有シートの裁刻物(国際公開2009/142159)をたばこ刻に2重量%の割合で配合して、タール値を揃えて試料シガレットを作成した。
【表2】
【0112】
メンソール含有シートを、たばこ刻と同等の形状に裁刻して刻に配合(2重量%)した場合の、シガレット間のばらつき(CV%)は34%であり、シガレット内のばらつきは54%であった。一方、本発明の香料担持シートたばこを用いてシガレットを調製した場合(配合量は、(総重量に基づいて)15重量%である)、シガレット間のばらつきおよびシガレット内のばらつきのいずれも、コントロールと比べてその値は顕著に低下した。
【0113】
これらの結果から、メンソール含有シートの裁刻物をたばこ充填材として配合したシガレットより、本発明の香料担持シートたばこを含むシガレットの方が、シガレット間のメンソール配合量のばらつきを抑えることができるとともに、シガレットロッド内に均一にメンソールを配合できることがわかる。これにより、本発明の香料担持シートたばこを含むシガレットは、シガレット毎の香喫味の変動や、シガレット喫煙期間にわたる香喫味の変動を抑えることができる。
【0114】
[9]結果(たばこ巻紙)
上記実験手法を用いて、たばこ巻紙について以下の結果を得た。
【0115】
[9−1]メンソールの蔵置保香性(たばこ巻紙を用いた評価)
上述のとおり調製された「本発明の香料担持たばこ巻紙1〜3」および「たばこ巻紙の対照試料」を用いて、たばこ巻紙におけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図5に示す。
【0116】
たばこ巻紙は、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置いた。また、たばこ巻紙中のメンソール含有量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
図5において、本発明の香料担持たばこ巻紙1の結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持たばこ巻紙2の結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持たばこ巻紙3の結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料の結果は、「コントロール」として示される。メンソール含有量(重量%)は、式:{メンソール含有量の測定値(mg)/シートたばこの重量(mg)}×100により求められる。
【0117】
対照試料のメンソール含有量は、蔵置開始時点(0日)において0.7重量%程度であった。この対照試料を50℃恒温器内にて蔵置したところ、経時に伴いメンソール含有量が顕著に減少し、一週間経過後には殆んどゼロになった。
【0118】
これに対し、本発明の香料担持たばこ巻紙1〜3は、蔵置開始時点(0日)において1. 4〜1.7重量%程度のメンソール含有量を示し、50℃の加速環境で蔵置した後においてもメンソール含有量は比較的多く、良好な保香性が認められた。
【0119】
[9−2]メンソールの蔵置保香性(シガレットを用いた評価)
「本発明の香料担持たばこ巻紙1〜3」を含むシガレットおよび「たばこ巻紙の対照試料」を含む対照シガレットを用いて、シガレットにおけるメンソールの蔵置保香性を評価した。その結果を
図6に示す。
【0120】
たばこ巻紙は、上述のとおり、所定の期間(0日、7日、14日、30日)加速環境下に置き、そのたばこ巻紙を用いて、既に記述した通りに試料シガレットを作成した。主流煙中のメンソール量の測定は、上述のとおりGC−FID測定により行った。
【0121】
図6において、本発明の香料担持たばこ巻紙1を含むシガレットの結果は、「カラギーナン」として示され、本発明の香料担持たばこ巻紙2を含むシガレットの結果は、「ゲランガム」として示され、本発明の香料担持たばこ巻紙3を含むシガレットの結果は、「ゲランガム+タマリンドガム」として示され、対照試料を含むシガレットの結果は、「コントロール」として示される。
図6において、主流煙中メンソール量[mg/cig]は、シガレット1本あたりのメンソール量の測定値(mg)を表す。
【0122】
対照試料のたばこ巻紙を含むシガレットは、蔵置日数が0日のたばこ巻紙を用いた場合には、本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレットと同等の主流煙中メンソール量を示したが、蔵置日数が7日のたばこ巻紙を用いた場合、メンソール量は殆んどゼロになった。
【0123】
これに対し、本発明の香料担持たばこ巻紙1〜3を含むシガレットは、50℃の加速環境で蔵置したたばこ巻紙を用いた場合においても、主流煙中メンソール量は比較的多く、良好な保香性が認められた。
【0124】
[9−3]メンソールの配合均一性
本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレット10本について、各シガレット間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。また、本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレットロッドを3等分に分割し、各部分の間に香料の配合量のばらつきがどの程度みられるか調べた。結果を、それぞれ「シガレット間のばらつき」および「シガレット内のばらつき」として表3に示す。シガレット内のばらつき(CV%)は、10本のシガレットを計測した平均値である。
【0125】
コントロールについては、前出の香料担持たばこ刻の項で記述したのと同様に、メンソール含有シートの裁刻物(国際公開2009/142159)をたばこ刻に2重量%の割合で配合して、タール値を揃えて試料シガレットを作成した。
【表3】
【0126】
メンソール含有シートを、たばこ刻と同等の形状に裁刻して刻に配合(2重量%)した場合の、シガレット間のばらつき(CV%)は34%であり、シガレット内のばらつきは54%であった。一方、本発明の香料担持たばこ巻紙を用いてシガレットを調製した場合では、シガレット間のばらつきおよびシガレット内のばらつきのいずれも、コントロールと比べてその値は顕著に低下した。
【0127】
これらの結果から、メンソール含有シートの裁刻物をたばこ充填材として配合したシガレットより、本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレットの方が、シガレット間のメンソール配合量のばらつきを抑えることができるとともに、シガレットに均一にメンソールを配合できることがわかる。これにより、本発明の香料担持たばこ巻紙を含むシガレットは、シガレット毎の香喫味の変動や、シガレット喫煙期間にわたる香喫味の変動を抑えることができる。
【0128】
[10]多糖類含有液の温度応答性ゾル−ゲル転移特性
本実験では、下記(1)〜(3)の多糖類含有液(スラリー)の温度応答性ゾル−ゲル転移特性を調べた。
【0129】
[10−1]多糖類含有液の調製
(1)カラギーナン含有液
水 0.1リットル
κ−カラギーナン(カラギニンCS-530/三栄源エフ・エフ・アイ) 5グラム
(2)ゲランガム含有液
水 0.1リットル
ゲランガム(ゲルコゲル/三栄源エフ・エフ・アイ) 5グラム
カラギーナン含有液およびゲランガム含有液については、下記のとおり調製した。
【0130】
水(0.1L)を70℃に保持し、(株)エーテックジャパン 高性能ミキサーDMMで攪拌しつつ、多糖類(5g)をダマにならないように少量ずつ溶解し、多糖類含有液(スラリー)を調製した。
【0131】
(3)ゲランガムとタマリンドガムを含有する液
水 10リットル
ゲランガム(ゲルコゲル/三栄源エフ・エフ・アイ) 250グラム
タマリンドガム(ビストップD-2032/三栄源エフ・エフ・アイ)250グラム
5%レシチン水溶液(サンレシチンA-1/太陽化学(株)) 200ミリリットル
メンソール(高砂香料工業株式会社) 2500グラム
ゲランガムとタマリンドガムを含有する液については、下記のとおり調製した。
【0132】
水(80℃に加熱保温)10リットル(100重量部)をミキサー(PRIMIX T. K. AUTO MIXER Model 40/溶液撹拌ローター装着/2000rpm)で撹拌しつつ、多糖類のゲランガムとタマリンドガムとを、上述の混合比(重量比)とした上で、両多糖類の合計として500グラム(5重量部)をダマにならないように少量ずつ溶解した(所要時間 20分程度)。その温度のまま、2500グラム(25重量部)のl-メンソールを添加した。撹拌ミキサーからホモジナイザー(PRIMIX T. K. AUTO MIXER Model 40/ローター−ステーターヘッド装着/4000rpm)に交換して10分間乳化を行い、更に200ミリリットル(2重量部)の5%レシチン水溶液を添加して撹拌した。メンソールは、ゲランガムとタマリンドガムの混合多糖類水溶液に分散した。
【0133】
[10−2]結果
多糖類含有液(70℃)を降温して、900秒程度かけて25℃にした(0.05℃/秒)。その後、900秒程度かけて昇温して70℃にした。このような温度変化により多糖類含有液の粘度(流動性)がどのように変化したか、レオメータ(Thermo-Haake社製、RheoStress 1)により測定した。
【0134】
カラギーナン含有液の結果を
図7Aおよび7Bに示し、ゲランガム含有液の結果を
図8Aおよび8Bに示し、ゲランガムとタマリンドガムを含有する液の結果を
図9Aおよび9Bに示す。
【0135】
カラギーナン含有液は、
図7Aに示されるとおり、25℃に降温すると、ゾル−ゲル転移温度である約50℃付近まで粘度は低かったが、転移温度より低い温度の下で粘度は急激に上昇した(ゲル化)。このゲルを昇温すると、
図7Bに示されるとおり、転移温度を超えて加熱しても容易にゾルへと戻ることはなく、ゲル状態を維持することができた。
【0136】
ゲランガム含有液は、
図8Aに示されるとおり、25℃に降温すると、50℃まで粘度は低かった(流動性は高かった)が、40℃以下で粘度は急激に上昇した(ゲル化現象)。このゲルを昇温すると、
図8Bに示されるとおり、ゲル化した温度(40℃)を越えても容易にゾルに戻ることはなく、ゲル状態はかなり高い温度まで維持された。
【0137】
ゲランガムとタマリンドガムを含有する液は、
図9Aに示されるとおり、25℃に降温すると、40℃まで粘度は低かったが、35℃以下で粘度は急激に上昇した(ゲル化現象)。このゲルを昇温すると、
図9Bに示されるとおり、ゲル化した温度(35℃)を越えても容易にゾルに戻ることはなく、ゲル状態はかなり高い温度まで維持された。
【0138】
これら結果より、上述の多糖類を含有するスラリーは、一旦冷却してゲル化させると、その後温度を上昇させてもゾルに戻りにくく、ゲル状態を維持できることが分かる。かかる多糖類の性質を本発明で利用して、原料スラリーを乾燥させる前に予備冷却を行うと、予備冷却後の原料スラリーは、乾燥時に温度を上昇させても、そこに含まれる多糖類がゾル化しにくく、かかる多糖類で被覆されたメンソールは、揮散されにくい。