(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下に本発明の第1実施形態について、
図1乃至
図13を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して模式的に示している。
【0010】
図1に示す成形装置10は、ガラス素材等の被成形材1を、加熱処理により軟化させ、プレス処理により成形し、成形品として例えばスマートフォンやタブレット端末用のカバーガラス等に代表される成形品2を製造する成形装置10である。
【0011】
図1乃至
図3に示すように、成形装置10は、金型組20と、プレスユニット40と、加熱ユニット30と、徐冷ユニット50(冷却ユニット)と、急冷ユニット60(冷却ユニット)と、搬送ユニと70と、搬入ユニット80及び搬出ユニット90と、隔離チャンバ11と、制御部12とを備える。
【0012】
金型組20は、被成形材1または成形品としての成形品2を保持する。プレスユニット40は、金型組20を加圧して被成形材1をプレス成形処理する。加熱ユニット30は、プレス成形処理の前に金型組20を加熱して被成形材1を加熱処理する。徐冷ユニット50は、プレスユニット40にて成形処理された後の成形品2を保圧しながら徐冷処理する。急冷ユニット60は、徐冷処理された成形品2を急冷処理する。搬送ユニット70は、金型組20を搬送する。搬入ユニット80及び搬出ユニット90は、図中矢印に沿う搬送経路Aの両端にそれぞれ設けられ。隔離チャンバ11は、これらユニット20,30,40,50,60,70,80,90を収容するとともに外部の大気から隔離する。制御部12は、各ユニット20,30,40,50,60,70,80,90及び隔離チャンバ11の動作を制御する
加熱ユニット30が複数連続して並列配置された加熱ステーション、プレスユニット40が複数連続して並列配置されたプレスステーション、徐冷ユニット50が配置された徐冷ステーション、急冷ユニット60が配置された急冷ステーション、が搬送経路に沿って配置されている。
【0013】
各ステーションにおける各ユニットの下側のプレートが搬送経路に沿って連続して並列している。プレートの列上には金型組20が通過する通路が形成されている。搬送ユニット70により、このプレート列上の通路に沿って、順次上流側から下流側に複数の金型組20が移動させられる。
【0014】
隔離チャンバ11は、略直方体などの箱型状に構成され、内部に密閉された空間を形成する。隔離チャンバ11には、隔離チャンバ11の内部の気体を排出可能な真空ポンプと窒素ガスを供給する窒素ガス供給ユニットが接続されている。これらにより、隔離チャンバ11は高温にされる金型組20が酸化することを防止するように、大気に対して隔離された状態の真空雰囲気か、または不活性ガス雰囲気に置換可能に構成されている。
【0015】
複数のユニット30,40,50,60は、X軸に沿う搬送方向の一端側(
図1中右側)から順番に、搬入ユニット80、4つの加熱ユニット30、3つのプレスユニット40、1つの徐冷ユニット50、2つの急冷ユニット60、搬出ユニット90、の順で同じ間隔(ユニットピッチ)P1で並列されている。これら各ユニット30,40,50,60は組み替え及び増減可能に構成されている。
【0016】
図1及び
図5に示すように、各金型組20は、上金型21(上型)と、下金型22(下型)と、スリーブ23と、ダイプレート24と、を備えている。上金型21は、成形品2の上側の形状に対応して形成される。下金型22は、上金型21に対向して配置されるとともに成形品2の下側の形状に対応して形成される。スリーブ23は、上金型21及び下金型22の外側を囲み支持する。ダイプレート24は、下金型22の下側を支持する。スリーブ23はダイプレート24にボルト等で固定されていてもよい。またスリーブ23とダイプレート24を一体にしてもよい。
【0017】
上金型21及び下金型22は閉状態で成形品の形状に対応したキャビティを有する所定サイズの矩形状を成している。上金型21及び下金型22の材料は対耐熱性に優れ、高温化の材料強度がある材料を用いる。例えば、カーボン、ガラス状カーボン、超硬、SiCなどを用いる。
【0018】
上金型21及び下金型22はともに矩形状のスリーブ23に挿入支持されている。この上金型21と下金型22との間に例えば板状の被成形材1が配置される。
【0019】
上金型21の上面及びダイプレート24の下面には、エア抜き用の溝26が、十字状形成されている。この溝26によってプ上金型21の上面やダイプレート24の下面がプレート81、35、46、51,61、91に吸着することを防止し、搬送性能を向上することが可能となる。なお、搬入や搬出に吸着機構を用いる場合等、必要に応じて溝26を省略してもよい。
【0020】
スリーブ23は矩形の枠状に構成され、中央部に上金型21、下金型22が挿入保持される設置部23aが形成されている
スリーブ23の搬送経路方向の両側の端面には、搬送方向に突出する一対の連結ピン25(連結部)が形成されている。連結ピン25は、例えば、熱伝導率の小さな窒化珪素(Si3N4)、ステンレス鋼等の材質で構成される軸体である。隣り合うユニットに配置された連結ピン25同士が搬送方向において連続するように突き当たり、後述する搬送ユニット70による押し出し力を伝達する。連結ピン25は例えば搬送方向両側において、それぞれ搬送経路の幅方向両側に2本ずつ、計4本設けられている。
【0021】
ダイプレート24の下面における搬送方向両端部には上下方向及び搬送方向に対して傾斜するテーパ面を有する案内部27が形成されている。案内部27は例えば10〜20度の傾斜に設定されている。この案内部27によって、隣り合うユニットのプレートの上面の間において金型組20の押し出し搬送がスムーズに行われる。
【0022】
両側の連結ピン25を含むスリーブ23の搬送方向における長さは、搬入ユニット80、加熱ユニット30、プレスユニット40、徐冷ユニット50、急冷ユニット60、搬出ユニット90、のユニット同士の間隔であるユニットピッチP1と同じ長さに設定されている。すなわち、隣り合うユニットに載置される金型組20の連結ピン25同士が互いに当接して連続するように構成されている。
【0023】
なお、成形装置10の付属の構成として、金型組20とは別に、ダミー金型組20Aが必要数備えられている。ダミー金型組20Aは、例えば金型組20と同様の外形を有するブロック28で構成される。ダミー金型組20Aは、成形装置10の停止時、運転終了時や運転開始後に金型組20の代わりに各ユニットに配されて処理される。成形装置10の予熱までの間や停止時に、不要な金型組20を使用することを回避し、コスト削減や金型組20の消耗が抑止される。ダミー金型組20Aは、ブロック28と、連結ピン25とを有する。ブロック28は、金型組20と同様に加熱されるため耐熱性の高い材料からなる。連結ピン25は、熱伝導率の小さな窒化珪素、ステンレス等の材質で構成される軸体材料からなる。並列する複数のユニットの金型組20及びダミーの金型組20Aは、一括で搬送できるようになっている。
【0024】
図4乃至
図9に示すように、搬送方向に並列配置された複数の加熱ユニット30は、それぞれ、金型組20を挟むように上下に配置された上側ヒータ部31及び下側ヒータ部32を備える。上側ヒータ部31及び下側ヒータ部32との間には、金型組20が通過可能な通路30aが形成されている。
【0025】
上側ヒータ部31、下側ヒータ部32は、例えばヒータ機構を支持する加熱支持部33をそれぞれ有している。
【0026】
加熱支持部33は、Si3N4等からなり赤外線ランプ34の上下にそれぞれ配されるベース部33aと搬送経路の両脇に立設された反射壁33bと、をそれぞれ有して構成され、上下に対向配置される。
【0027】
対向配置された一対の加熱支持部33の間に金型組20が通過可能なトンネル状の通路30aが形成され、対向する反射壁33bの端部同士が当接あるいは近接して通路の周囲を囲む。加熱支持部33により赤外線ランプ34の上下及び外側が加熱支持部33に覆われる。このことにより、赤外線ランプ34の熱で内側の金型組20を効果的に加熱することができる。
【0028】
上側の加熱支持部33の下側、下側の加熱支持部33の上側には、ヒータ機構としての赤外線ランプ34がそれぞれ複数列配置されて設置されている。
【0029】
赤外線ランプ34はその軸方向が搬送の幅方向に沿って配置される。赤外線ランプ34の両端が各加熱支持部33に支持されている。赤外線ランプ34は軸方向における両端のワット密度が中央のワット密度より大きくなるように設定されている。赤外線ランプ34を使用することで昇温速度が高く、金型を均一に加熱することが可能となる。また両端の赤外線ランプ34と中央の赤外線ランプ34で別々に電力を与えることによって金型の均一加熱を行ってもよい。
【0030】
下側の赤外線ランプ34の列上には、金型組20が載置される載置プレート35が固定されている。載置プレート35は例えば熱伝導性の高いSiC等の材料からなり、矩形の板状に構成されている。載置プレート35は、その周囲の複数箇所において、例えば断熱性を有する窒化珪素で構成された固定部材35aによって、加熱支持部33に固定されている。載置プレート35の上面の搬送方向両脇の側部には、搬送方向に沿う位置規制用の突条35bが形成されている。
【0031】
加熱ユニット30には、金型組20の温度を測定する熱電対36が上下にそれぞれ設けられている。上側の熱電対36は、上側の加熱支持部33の中心部を通って配される支持軸36aの下部に支持される測定盤36bに設けられている。支持軸36aは、例えばSi3N4で構成された管状の軸体であって、弾性を有するばね材36cを介してエアシリンダ等の昇降機構部37に接続されている。測定盤36bは例えばWCまたはW合金等の材料でから構成され、その下面は一定の面積を有する当接面を構成する。熱電対36は支持軸36a内を通ってその先端が測定盤36bに溶接されている。制御部12の制御によって昇降機構部37が駆動されることに伴い、熱電対36は、上下に進退動可能であり、順次搬送される金型組20の上面に接離する。測定盤36bの当接面が金型組20の上面に接触した状態で、熱電対36において金型組20の温度を検出する。このとき、測定盤36bを用いて一定の面積を確保した面接触としたことにより、均一な測定が可能となる。
【0032】
下側の熱電対36は、搬送路の側方から下側の載置プレート35に挿入されて載置プレート35内に設けられ、載置された金型組20の温度を検出する。各熱電対36は制御部12に接続され、検出された温度情報は制御部12におけるフィードバック制御に用いられる。
【0033】
上下の加熱支持部33におけるヒータ34の外側、すなわち、金型組20の反対側には、ウォータジャケット38が設置されている。
【0034】
上下の加熱支持部33の外側には、加熱支持部33の外周面を覆う上下一対のカバー部39がそれぞれ設けられている。カバー部39は例えばステンレス等の材料で構成されている。
【0035】
以上のように構成された加熱ユニット30において、搬送ユニット70により順次送られる金型組20が下側の載置プレート35上に載置された状態で、加熱処理がなされる。このとき、昇降機構部37により熱電対36を金型組20に当接させ上下の熱電対36により温度を検出し、検出した温度に基づいて制御部12によりフィードバック制御により、所望する温度に温調する。上下の赤外線ランプ34は、上下の熱電対36により、それぞれフィードバック制御による温度制御が行われる。
【0036】
図10乃至
図13に示すように、搬送方向に並列配置された複数のプレスユニット40は、それぞれ、金型組20を挟むように配置された上下一対のヒータ部41と、上下のプレス軸42と、上側のプレス軸42に接続された昇降駆動軸43と、を備えている。
【0037】
上側の加熱支持部44は上側のプレスプレート46と一緒に移動できるように固定されている。各プレスプレート46は、矩形の板状に構成され、熱伝導性が良くかつ硬質材である超硬あるいはSiCなどの材料で構成される。このプレスプレート46にはヒータ用の挿通孔46aが形成されており、赤外線ランプ45が挿通されている。
【0038】
下側のプレスプレート46上面の搬送方向両脇の側部には、搬送方向に沿う位置規制用の突条46bが形成されている。
【0039】
上側のプレスプレート46の上側と、下側のプレスプレート46の下側には、それぞれプレス軸42が接続されている。
【0040】
上側のプレス軸42はサーボモータ、エアシリンダなどの昇降機構部43に接続され、制御部の制御に応じて上下動するように構成されている。
【0041】
上下のプレスプレート46には、熱電対47がそれぞれ設けられている。各熱電対47は、搬送路の側方からプレスプレート46に挿入されてプレスプレート46内に設けられ、金型組20の温度を検出する。各熱電対47は制御部12に接続され、検出された温度情報は制御部12におけるフィードバック制御に用いられる。
【0042】
上下の加熱支持部44における赤外線ランプ45の外側、すなわち、金型組20の反対側には、ウォータジャケットが設置されている。
【0043】
上下の加熱支持部44の外側には、加熱支持部44の外周面を覆う上下一対のカバー部49がそれぞれ設けられている。
【0044】
以上のように構成されたプレスユニット40において、一対のプレート46間に設置された金型組20を赤外線ランプ45で加熱処理するとともに、上側のプレスプレート46の昇降動によって上側のプレスプレート46を下降させ、一対のプレスプレート46間の金型組20を加圧するプレス処理がなされる。このとき、上下の熱電対47により温度を検出し、検出した温度に基づくフィードバック制御により所望する温度に温調される。またロードセル等のプレス検出部を設け、所定のプレス力になるようにフィードバク制御を行う。
【0045】
図1及び
図2に示すように、搬送方向に並列配置された徐冷ユニット50は、金型組20を挟むように上下に配置された上下の徐冷プレート51(冷却部)と、上側の徐冷プレート51に接続されるサーボモータあるいはエアシリンダなどの昇降機構部53と、を備えて構成されている。
【0046】
上下の徐冷プレート51は、矩形の板状に構成され、熱伝導性が良くかつ硬質材である超硬あるいはSiC等の材料で構成される。
【0047】
上下の徐冷プレート51には、徐冷用のヒータ機構としての赤外線ランプ56が組み込まれている。上下の徐冷プレート51間には金型組20が通過する通路が形成されている。上下の徐冷プレート51には、複数の熱電対がそれぞれ設けられている。
【0048】
下側の徐冷プレート51は下側のプレスプレート46と同様に構成され、位置規制用の突条が形成されている。
【0049】
上側の徐冷プレート51は上側のプレスプレート46と同様に、プレス軸が接続されており、昇降機構部63によって上下に昇降可能な構成となっている。なお本実施形態では上側のプレス軸は急冷ユニット60の支持軸62と同期して昇降させるため、共通の昇降機構部63を用いたが、これに限られるものではなく、個別に昇降機構部を設けてもよい。
【0050】
昇降機構部63によって上側の徐冷プレート51を下降させ、下側の徐冷プレート51上に置かれた金型組20を加圧することで一定のプレス力を維持する保圧を行いながら、徐冷処理がなされる。このとき、制御部12により、熱電対で検出される温度をフィードバック制御し、所望する温度に温調する。またプレス検出部を設け、所定のプレス力に調節する。
【0051】
図1及び
図2に示すように、第2の冷却ユニットとしての急冷ユニット60は、金型組20を挟むように上下に配置された上下の冷却プレート61(冷却部)と、上側の冷却プレート61に連結して上下方向に延びる支持軸62と、上側の冷却プレート61に接続されるサーボモータあるいはエアシリンダなどの昇降機構部63と、を備えて構成されている。
【0052】
上下の冷却プレート61は、矩形の板状に構成され、熱伝導性が良くかつ硬質材である超硬、SiC、焼き入れされたステンレス等の材料で構成される。冷却プレート61には、冷却触媒を流す流路を構成する冷媒配管が組み込まれている。また、上下の冷却プレート61には、複数の熱電対がそれぞれ設けられている。さらに上側の冷却プレート61は昇降機構部63によって上下に昇降可能な構成となっている。
【0053】
昇降機構部63を駆動して上側の冷却プレート61を下降させ、下側の冷却プレート61上に置かれた金型組20に接触及び加圧することにより急冷処理がなされる。このとき、熱電対での測定温度をフィードバックし、所望する温度にまで低下させる。
【0054】
図1乃至
図3に示すように、搬入ユニット80は搬送方向における一端側、すなわち加熱ユニット30の隣(図中右側)に配置されている。搬入ユニット80は、金型組20を載置し昇降移動する搬入プレート81と、搬入ステーションの上部に設けられたロードロック室82と、搬入プレート81を移動させる昇降機構部83と、ロードロック室82の側部に設けられる移動機構部84と、を備えている。
【0055】
搬出ユニット90は、搬送方向における他端側、すなわち急冷ユニット60の下流側に配置されている。搬出ユニット90は、金型組20を載置し昇降移動する搬出プレート91と、搬出ステーションの上部に設けられたロードロック室92と、搬出プレート91を移動させる昇降機構部93と、ロードロック室92の側部に設けられる移動機構部94と、を備えている。
【0056】
各ロードロック室82、92には、窒素供給ポート及び窒素排気ポートが接続されている。ロードロック室82、92を窒素置換することが可能になっている。ロードロック室82、92を介して搬入プレート81または搬出プレート91と金型組20をチャンバ11内の窒素雰囲気を壊すことなく取り出せる構造になっている。
【0057】
移動機構部84はロードロック室82の側部に連続して配置されている。移動機構部84にセットされた金型組20を図中Y方向にスライドすることで、ロードロック室82内にある搬入プレート81上に金型組20をセットする。
【0058】
移動機構部94はロードロック室92の側部に連続して配置されている。ロードロック室92内の搬出プレート91上の金型組20を図中Y方向にスライド移動することで、移動機構部94に金型組20を搬出する。移動機構部84、搬出機構94はベルトコンベアで、金型組20を移動させる。ベルトコンベアではなくエアシリンダで移動させてもよい。
【0059】
なお、搬入プレート81のセット位置は、隣り合う下流側の加熱ユニット30のセット位置と、一定距離離間して設置されるとともに、搬出プレート91のセット位置は上流側に隣接した急冷ユニット60のセット位置と一定距離離間して設置されている。ここでは例えば20mmの間隔となるように設定されている。
【0060】
一方、搬出プレート91のセット位置の上流側の搬送路両脇には、搬送された金型組20を一定距離下流側に送る移動機構部76が設けられている。移動機構部76は例えば回転によりスリーブ23を下流側に一定距離押圧するアーム76aを有する。移動機構部76は、制御部の制御に応じて所定のタイミングでアーム76aを回転駆動することにより、金型組20を隣接するステーションからユニットピッチP1より一定距離大きなストロークP3だけ下流側にずらす。このことにより、移動機構部76は、搬出用のロードロック室92への昇降位置のx座標位置にセットする。
【0061】
金型組20がP1より大きなストロークP3だけ移動されることにより、移動機構部94により金型組20をY方向にスライドさせても、この金型組20は、急冷ユニット60に置かれている金型組20に干渉することなく移動できる。
【0062】
各部の下側の載置プレート35、プレスプレート46、徐冷プレート51、冷却プレート61、搬入プレート81、及び搬出プレート91は、所定の搬送経路に沿って上面が連続するように、一端側から他端側へ並列して配置されている。各プレートの上面は上流側に隣り合う上面よりもわずかに下降した位置に設定されている。例えば隣り合う上面同士が0.1〜1mm程度、望ましくは0.1〜0.3mm程度の段差で並列される。このため、金型組20を水平に押し出すだけの単純な構成でスムーズな搬送が可能となる。
【0063】
搬送ユニット70は、搬送方向に沿って往復動するシリンダ軸71と、制御部に接続されてシリンダ軸71を搬送方向に移動させる押し出し機構としての搬送用エアシリンダ72と、搬送方向下流側において金型組20の位置を規制するストッパ部73と、を備えている。
【0064】
シリンダ軸71は連結ピン25と同軸に延びている。搬送用エアシリンダ72は、隔離チャンバ11の搬入側の端部に設置され、搬送方向に沿って一定ストロークで、連結ピン25を押し出しする機能を有する。押し出される連結ピン25の移動に伴って、各金型組20が搬送経路に沿って押し出しされることにより、複数の金型組20をまとめて一定ストロークで一端側から他端側へ順番に搬送する。
【0065】
ストッパ部73は、搬出側の端部近傍に配置され、搬送の際に金型組20の下流側の位置を規制する。
【0066】
搬送ユニット70は、隣接するユニットから一定距離離れた搬入位置にある金型組20を押し出すため、ユニットピッチP1よりもこの一定距離の分大きなストロークP2で、押し出すように設定される。
【0067】
P2がP1より大きいため、金型組20は、移動機構部84で金型組20をY方向に移動させる時に、加熱ユニットにある金型組20と干渉することはない。
【0068】
さらに、成形装置10の隔離チャンバ11の外には、成形品2を複数保持する成形品ストッカ13、金型組20やダミー金型組20Aを複数保持する金型ストッカ14、被成形材1を保管する素材ストッカ15が設けられている。
【0069】
以下、本実施の形態に係る成形装置10を用いて、被成形材1から成形品2を製造する手順について説明する。成形品2の一例としては、例えば4〜12inサイズ、厚さ0.3〜1.5mm程度のスマートフォンのカバーガラスが挙げられるが、これに限られるものではなく、各種の形状・用途に適用できる。例えばプレート状の被成形材1から、両端部が湾曲した形状や端部の厚みが変化するような形状の成形品2を製造することも可能である。
【0070】
成形装置10においては、各ユニットに1つずつ金型組20が配置され、複数のユニットでの複数の処理を並行して行うが、以下説明のために1つの金型を中心として手順を説明する。
【0071】
すなわち、1つのユニットにおいて1つの金型組20に対する処理が行われ、他の処理ユニットでは、他の金型組20に対しての処理が行われる。
図1乃至
図2では各ユニットに夫々1つずつ金型組20が配置されている場合を示している。
【0072】
搬入処理として、まず、ロードロック室82内に金型組20をセットし、ロードロック室82内を閉じる。次に昇降機構部83で金型組20を下降させる。下降後、移動機構部84により、金型組20を搬送ユニット70によって押し出しが行われる位置まで水平に移動させる。
【0073】
加熱ユニット30など他のユニットの処理が完了した所定のタイミングで、制御部12はシリンダ軸71を駆動し、金型組20の連結ピン25を押圧して、ユニットピッチP1に一定距離を加算したピッチP2の分下流側に移動させ、金型組20を1つ目の加熱ユニット30の載置プレート35上へ移動する(搬送処理)。同時に下流側に並ぶ複数の金型組20も、連結ピン25によって押し出され、ユニットピッチP1ずつ、下流側に移動する。すなわち、複数の金型の連結ピン25が、下流側の金型組20を押圧することになるため、シリンダ軸71が金型組20を一斉に移動させることになる。このとき、複数の下側のプレート35,46,51,61はわずかに下にずれながら連続して配置されているため、スムーズな移動が可能となる。
【0074】
1つ目の加熱ユニット30において、上下の赤外線ヒータ34で金型組20を加熱し、所定の温度で被成形材1を軟化させる(加熱処理)。並行する複数の処理が終了したタイミングで、上述と同様の搬送処理によって、順次下流側に送り、同様に加熱処理を施す。
【0075】
次に、同様の搬送処理によって複数の金型組20を一括で下流側に移動させ、下流側の加熱ユニット30から1つ目のプレスユニット40へ金型組20を搬送する。
【0076】
制御部12はプレスユニット40の昇降機構部43を駆動して上側のプレスプレート46を下降させ、金型組20を上下のプレスプレート46で挟み込むことにより、被成形材1を加熱しながらプレス成形する(プレス処理)。並行する複数の処理が終了したタイミングで、上述と同様の搬送処理によって、順次下流側に送り、下流側のプレスユニット40において同様にプレス処理を施す。
【0077】
続いて、同様の搬送処理によって、下流側のプレスユニット40から1つ目の徐冷ユニット50へ金型組20を搬送する。徐冷ユニット50では、一対の徐冷プレート51によって保圧しながら、例えばヒータの温度調節により金型組20を所定の温度になるように処理する(徐冷処理)。
【0078】
ついで、上述と同様の搬送処理によって、金型組20を、徐冷ユニット50から急冷ユニット60へ搬送する。制御部12は急冷ユニット60の昇降機構部63を駆動して上側の冷却プレート61を下降させ、金型組20を上下の冷却プレート61で挟み込むことにより、冷媒により、大気中においても酸化されない温度域まで冷却する(急冷処理)。
【0079】
続いて、搬出処理を行う。搬出処理としては、まず移動機構部76によって金型組20を下流側にP3だけ移動させた後、移動機構部94によりロードロック室92の真下の位置まで水平移動させる。その後、昇降機構部93により金型組20を上に移動する。ロードロック室92まで移動したら、ロードロック室92を開放し、金型組20を取り出す。
【0080】
なお、搬出された金型組20は隔離チャンバ外で分解され、取り出された成形品2は成形品ストッカ13にセットされる。使用後の金型組20に新たな被成形材1をセットし、再び上述の成形処理が行われる。
【0081】
以上の説明は被成形材1を保持した金型組20に対する処理手順であるが、これとは別に、本実施形態にかかる成形方法では、運転開始時各ユニットが一定の温度になるまでの間、運転停止時、必要数の成形終了後などに、ダミーの金型組20Aをセットし、同様に搬送、加熱、プレス、徐冷、急冷等の処理を行う。一括搬送では金型組20自体が搬送機能の一部を果たすため、全ステーションに金型組20が必要となるので、金型組20を取り出したい時や金型組20の数を減らしたい時にはこのダミー金型組20Aを代わりに配置することによって、搬送機能を確保することができる。
【0082】
本実施形態にかかる成形装置10によれば、以下の効果を奏する。すなわち、金型組20において搬送方向に突出する連結ピン25を設けてこれを連続させることで、複数の金型組20を一括で搬送することにより、処理効率を向上できる。
【0083】
また、連結ピン25を断熱材料で構成したことにより、各ユニット間の熱特性を維持できる。
【0084】
複数のユニットを追加や削除して調整することが可能であるため、成形品に応じた適当な設計が容易に実現できる。
【0085】
また、プレスユニット40、徐冷ユニット50、冷却ユニット60の昇降動作は上軸のみで駆動したことにより、軸の原点復帰を待つことなく搬送が可能となる。すなわち、上記実施形態においては下側のプレート上を滑らせるように金型組20を移動させる構成であるため、下側のプレート位置は維持し、上側のみで昇降することにより、待機時間を減らし、生産タクトを向上できる。
【0086】
ヒータ機構として赤外線ランプを用いたことにより、早い昇温と均熱性が確保できる。また、赤外線ランプのワット数の調整により金型の外側と内側での温度ムラを無くし均一な加熱を実現できる。なお、上記実施形態においては、搬送方向と直交する方向を軸方向とし、この軸方向におけるワット数を調整したが、これに限らず、これに代えて、あるいはこれに加えて複数列に並列された赤外線ランプのワット数を調整することで、搬送方向においても均熱が可能となる。
【0087】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0088】
例えば他の実施形態として
図14に示す成形装置100では、隔離チャンバ11内において成形品2の取り出しや被成形材1のセットを行う構成とした。成形装置100は、上記第1実施形態の成形装置10の各ユニット30〜60に加え、金型組20を分解する分解ユニット110と、被成形材1をセットして金型組20を組み付けるセットユニット120と、素材を予熱する予熱機構130と、を隔離チャンバ11内にさらに備えている。
【0089】
本実施形態にかかる成形装置100の処理手順(成形方法)としては、金型組20を、急冷後にチャンバ内11の分解ユニット110に搬送し、金型組20を分解して成形品2を取り出す。取り出された成形品2はロードロック室を介してチャンバ11外に配置されたストッカ13等の保管部に配置する。
【0090】
次に分解後の金型組20をセットユニット120に送り、再び別の被成形材1をセットする。被成形材1は予熱機構130において予め所定温度まで予熱しておく。
【0091】
なお、金型の入れ替え時やメンテナンス時、運転停止時などには、金型組20をロードロック室を介してチャンバ11外に配された金型ストッカ14に移動し、代わりに別のダミー金型組20Aをセットする。
【0092】
本実施形態によれば、同一チャンバ内で成形品の取り出しや被成形材のセットを行うことにより、金型が比較的高温の状態で素材・成形品を入れ替えることができるため、冷却時間分のタクトタイムを短縮できる。また、使用する金型の個数を低減できるため金型コストを削減できる。
【0093】
上記第1実施形態においては、金型組20として、上金型21、下金型22、を組み付けた状態で、搬入、加熱、プレス、冷却、搬出を行うこととしたが、これに限られるものではない。例えば、搬送される金型組20は、被成形材1を保持する下金型22をスリーブ23に保持させたものとし、上金型21はプレスユニット40と保圧する徐冷ユニット50における上側のプレート46、51側に設けてもよい。この場合には、金型組20の上側を開放した状態で、金型組20の搬入、加熱を行い、上金型21が固定されたプレスプレート46を下降させることで嵌合及びプレス処理を行い、同様に上金型21が固定された徐冷プレート51を下降することで嵌合及び保圧を行うことができるため、使用する上金型21の数を減らすことができる。
【0094】
上記第1実施形態においては、直線状の一方向の搬送経路を設定した場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として
図15に示す成形装置200では、搬送経路を円形とし、回転するロータリテーブル210上に金型組20を円形にセットするとともに、搬送経路に沿って各処理ユニット設置した。このような構造により金型組20の搬送を不要とすることができる。また、成形装置200では搬出部220と搬入部230を同位置として搬送のストロークを減らすことにより必要な金型の数を減らすことができる。
【0095】
さらに、他の実施形態として
図16に示すように、金型組320を二段構造とし、上金型21、下金型22に加え、中金型27を備え、一つの金型組20に成形品を2つセットする構造としてもよい。
【0096】
また、被成形材1や成形品2も、上記実施形態に限られるものではなく、温度設定も適宜変更可能である。さらに、各ユニットの昇降機構部43、53、63も上記実施形態に限られるものではなく、エアシリンダ、電動アクチュエータや油圧シリンダ等の各種のアクチュエータにて駆動することが可能である。
【0097】
金型組20下面にテーパ状の案内部27を設けたが、これに代え、またはこれに加えて金型組20が載置される下側の搬入プレート81、載置プレート35、プレスプレート46、徐冷プレート51、冷却プレート61、搬出プレート91の上面に、上下方向及び搬送方向に対して傾斜するテーパ面が形成されていてもよい。
【0098】
さらに、上記実施形態においては加熱ユニット30、プレスユニット40、徐冷ユニット50及び急冷ユニット60を備える例について説明したが、急冷ユニット60を備えない成形装置、製造ラインにも本発明を適用することができる。
【0099】
また複数の実施形態の特徴を組み合わせて実施することも可能である。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
以下に、本願出願の当初の特許請求範囲に記載された発明を付する。
[1]
被成形材を保持する金型組と、
前記金型組を加熱して前記被成形材を加熱処理する加熱ユニットと、
前記金型組を加圧して前記被成形材を成形処理するプレスユニットと、
前記成形処理の後に前記金型組を冷却して前記被成形材が前記成形処理された成形品を冷却処理する冷却ユニットと、
前記加熱ユニット、前記プレスユニット、及び冷却ユニットを並列して収容する隔離チャンバと、
前記加熱ユニット、前記プレスユニット、及び冷却ユニットに設けられたプレート上にそれぞれ配置された複数の前記金型組を移動させることにより順次搬送する搬送ユニットと、
を備えることを特徴とする成形装置。
[2]
前記金型組はそれぞれ前記搬送経路に沿って延びる連結部を備え、
前記搬送ユニットは、前記搬送経路に沿って前記連結部を押し出す押し出し機構を備え、
複数の前記金型組は隣り合う前記連結部の端部同士が互いに当接して連続するように配置され、一括して搬送されることを特徴とする[1]記載の成形装置。
[3]
前記連結部は前記被成形材を保持する型部よりも断熱性が高く構成されたことを特徴とする[2]記載の成形装置。
[4]
前記金型組の下部の進行方向に傾斜が形成されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の成形装置。
[5]
前記搬送経路において前記押し出し機構によって前記金型組が押し出される方向に沿って下流端には、前記搬送経路に沿って並ぶ複数の金型組において下流端に配置される金型組を、当該金型組に対して上流に位置する複数の金型組から、並列された前記加熱ユニットと前記プレスユニットと前記冷却ユニットとの互いに隣り合うどうしの間隔よりも一定距離大きいストローク下流側に移動する移動機構を備える
[2]に記載の成形装置。
[6]
前記押し出し機構は、制御装置の指示により、前記金型組の代りに配置された前記金型組と同じ形状のダミー金型組を搬送することを特徴とする[2]に記載の成形装置。
[7]
前記金型組が移動される各前記プレートの上面は、上流側に隣り合う前記プレートの上面より0.1mm以上1mm以下の段差で下降して設置されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の成形装置。
[8]
被成形材を保持する金型組を加熱する加熱ユニットに設けられたプレート上、前記金型組を加圧するプレスユニットに設けられたプレート上、及び前記金型組を冷却する冷却ユニットに設けられたプレート上、を通る所定の搬送路において、前記金型組を順次移動させて搬送し、前記被成形材の加熱、加圧及び冷却を順次行うことを特徴とする成形方法。