(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンピュータデバイスは、それぞれのヘミディビジョンの半メリジアンCorT乱視値を表す、全ての環に対する求和された平均ベクトル値を得て、2つのヘミディビジョンの半メリジアンCorT値の減算を実行して、2つのヘミディビジョン間のトポグラフィ差異の値を得るように構成される、請求項1に記載の装置。
ステップbが、患者の眼全体が多数の同心環に分割されていると見なすことを備え、ステップdが、角膜パラメータの和をベクトル的に求め、患者の眼全体のCorT値を得ることを備える、請求項5に記載の方法。
ステップbが、患者の眼の一部が多数の同心環に分割されていると見なすことを備え、ステップdが、眼の一部のCorT値を得ることを備える、請求項5に記載の方法。
眼の前記部分が、眼のヘミディビジョン両方から形成され、前記眼の両方のヘミディビジョンが多数の同心環に分割されていると見なし、それぞれの環の角膜トポグラフィに合致し、それぞれの環を備えるトポグラフィマップを提供する球円柱面を用いて球円柱面として、それぞれの環に対する前記曲面が形成され、対応するそれぞれのヘミディビジョンの全ての環の角膜パラメータがベクトル的に加算され、平均値が得られたときに、それぞれのヘミディビジョンに対してCorT乱視値が得られることにより、それぞれの環が角膜パラメータを提供する、請求項7に記載の方法。
2つのヘミディビジョンの半メリジアンCorT乱視値間の差を決定して、角膜のトポグラフィ不規則性の尺度である2つのヘミディビジョン間のトポグラフィ差異(TD)を得ることを含む、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
コンピュータ支援ビデオケラトグラフィ(computer assited videokeratography)(CAVK)の進歩は、角膜の形状に関する詳細な情報を提供することで外科医を支援している。トポグラファによって提供される角膜曲率測定図(
図1)は、角膜の異なる同心ゾーンの角膜屈折力および曲率半径を示し、対称屈折矯正角膜治療を提供するレーザに対して現在必要な情報よりも多くの情報を提供する。この角膜曲率測定図は、慣例に従って、1980年代のCAVK技術の導入時の角膜曲率測定の等価物を得る試みとして、3mmゾーンにおける角膜乱視の定量的記述子である模擬角膜曲率測定(Sim K)値も提供する。
【0020】
Sim K値にまつわる一般的に遭遇する1つの難点は、ボータイ(bow tie)が非直交特性を示す場合に、メリジアンを選択するアルゴリズムがときおり不安定(erratic)になることである。トポグラフィデバイスは、ボータイメリジアンまたは中間の別の位置からのメリジアンの選択において一貫性を欠くことがある。本明細書に記載された技法は、角膜曲率測定図の3つの(内、中間および周縁)ゾーンからベクトル的に求和された平均マグニチュードおよびメリジアンを得ることによって、角膜トポグラフィ乱視値(corneal topography astigmatism value)(CorT)の適合性(relevance)および一貫性(consistency)を提供する。
【0021】
現在、角膜の2つの半メリジアンを有用に表す一貫した値はトポグラファによって提供されていない。中心付近のわずか3mmの領域がSim Kマグニチュードおよびメリジアン値によって利用されている以外、角膜全体を表す乱視値も存在しない。これらの2つのベクトル半メリジアン値は、角膜全体の乱視を定量化するこの単一の値を導き出すのに必要かつ有用なパラメータである。これらの2つのベクトル半メリジアン値はさらに、不規則性を測定し、乱視矯正結果の成功を角膜パラメータによって定量化する非対称治療プロセスのベクトルプランニングのために必要不可欠である。本発明は、
図1に示されているような角膜トポグラファマップの現在利用可能なデータからこれらの値を導き出すことを追求する。
【0022】
角膜の中心軸の周囲に画定された3mm、5mmおよび7mmゾーン(すなわちそれぞれ0〜3mm、3〜5mmおよび5〜7mmのエリア)からの角膜曲率測定パラメータを使用して、角膜トポグラフィ乱視のメリジアンおよびマグニチュードをベクトル求和プロセスによってより高い信頼性で識別するように、半メリジアン値を改良することができる。
【0023】
図1のトポグラフィマップは、3つのそれぞれのゾーンについて、フラットな2つの角膜曲率測定マグニチュードおよびスティープな2つの角膜曲率測定マグニチュードを、それらの対応するそれぞれのメリジアンとともに示す。治療を計画し潜在的な乱視矯正結果を査定するのに最も適切なトポグラフィの示度(reading)は3mmゾーンのそれである。これは、瞳および視軸と主に一致するのがこのゾーンであるためである。3mmゾーンに対して最も適当な角膜曲率測定パラメータのペアリング(pairing)を、2つのペアの角膜不規則性またはTDのマグニチュードが小さい方を確定することによって決定する。すなわち、フラット/スティープの一方の組合せを使用してTDを決定し、そのTDのマグニチュードを、もう一方のフラット/スティープの組合せのマグニチュードと比較して、これらの2つの選択肢のうち小さい方の組合せを見つけ出す(
図2a、bおよびc)。
【0024】
3mmゾーンに対する適当なペアリングを確定した後、5mmゾーンのそれぞれのスティープメリジアンと上記のステップ1で決定した3mmスティープメリジアンとの間の最も小さい角度差を計算することによって、5mmゾーンの対応するスティープメリジアンを決定する。次いで7mmゾーンに対してこれを繰り返し、5mmゾーンのパラメータと角度差を比較する。次いで、同じプロセスをフラットメリジアンに対して適用する。それぞれのゾーンの乱視のマグニチュードは、それぞれゾーンのフラットパラメータとスティープパラメータの算術差によって決定され、その方位は、最もスティープなメリジアンの方位である。
【0025】
結果は、角膜の上半メリジアン(3、5および7mmゾーン)に対する3つの乱視値および角膜の下半メリジアン(3、5および7mmゾーン)に対する3つの乱視値である。外科治療パラダイム(paradigm)における3mm、5mmおよび7mmゾーンの重要性に基づいて、それぞれのゾーンに重みを与えることができ、適当には、内ゾーンに対しては値を大きくし、外ゾーンに対しては小さくし、中間ゾーンに対しては変更しない:(最も適用性が高い)3mmゾーンに対しては1.2倍、5mmゾーンに対しては1.0倍、(最も適用性が低い)7mmゾーンに対しては0.8倍(
図3aおよび4a)。
【0026】
図5aの極座標図は、眼の表面に現れた場合の求和された2つのベクトル平均、すなわち上半メリジアンの1つの乱視および下半メリジアンの別の乱視を示す。これらのトポグラフィ乱視値はベクトルプランニングにおいて使用される。これについては後述する。
【0027】
角膜全体の不規則性を決定するため、上で論じた3、5および7mmゾーンに対する重み付けを考慮に入れ、DAVD上の軸を再び2倍にすることによってこれらの2つの乱視間のベクトル差を計算する(
図5b)。TDの最終的なメリジアンは、DAVD上で上平均乱視から始まり下平均乱視で終わる合成ベクトルを結び、次いで、その実際の方向を決定するためにそのベクトルを原点に戻し、半分にすることによって決定される。このようにして定量化された角膜不規則性はトポグラフィ差異(TD)と呼ばれ、ジオプトリおよび度で表現される。TDは、それが眼の表面に現れた場合の値を提供する(
図5c)。
【0028】
角膜全体を表すものとして全角膜トポグラフィ乱視(CorT)を決定するため、重み付けされたT
sup値およびT
INF値を使用して、求和されたベクトル平均を計算する(
図6aおよび6b)。このCorTは、角膜全体を、この例で提示した重みなどの適当な重みが3、5および7mmゾーンに与えられた角膜トポグラフィによって定量化されたものとして記述する。CorTは、完全に3mmゾーンだけから導き出され、時に変動性および一貫しないバイアスが選択されたメリジアン内に示される模擬角膜曲率測定値(Sim K)よりも好ましい。
【0029】
トポグラフィマップによって提供される同心の角膜ゾーン(すなわち3mm、5mmおよび7mm)を使用して、それぞれが角膜の半分を表す2つの半メリジアン値を得、それぞれのゾーンの適合性に重み付けし、次いで角膜不規則性を決定する。この技法は、720度倍角ベクトル図(DAVD)上の上値の表示と下値の表示の間の屈折光学距離として計算される不正乱視のベクトル尺度である、トポグラフィ差異(TD)を査定する。TDの増大と眼残余乱視(ORA)との間には正比例関係があることが観察されている。
【0030】
眼の内部収差を定量化するORAは、角膜乱視パラメータと屈折乱視パラメータのベクトル差として計算され、ジオプトリで表されるマグニチュードおよび度で表される方位を有する。
【0031】
手術前の健康な100例の乱視角膜のグループにおいて、TDとORAのこの関係は有意であることが示されている。0.75D以下のORAマグニチュードおよびTDマグニチュードは正常であるとみなされ、良好な乱視矯正結果を達成する障害にはならない。一方、1.00Dを超えるマグニチュードは、よくない矯正結果を与える可能性がある過度の内部収差または過度の角膜不規則性に対する重大な懸念を示す可能性があり、そのため、乱視矯正で達成可能な矯正結果に関して、乱視を矯正するための屈折矯正レーザ手術または切開手術が制限される可能性がある。そのため、外科医は、治療を実施しないことに決め、またはこのような場合に結果として残る角膜乱視の量を最適化し低減させるための治療パラダイムとしてベクトルプランニングを使用しないことに決めることがある。
【0032】
図6cは、重み付けされ求和されたベクトル平均(T
SUPavおよびT
INFav)の重要性を示す。下半メリジアンの7mmゾーンの調整されていない乱視マグニチュードは1.74Dであり、上半メリジアンの対応する1.06Dに比べて比較的に大きい。調整されていないパラメータについて言えば、7mm乱視値は、上半メリジアンと下半メリジアンの両方で3mm乱視値および5mm乱視値よりも大きい。求和された平均ベクトルの重要性は下半メリジアンでの0.06Dの「減衰」によって強調されるが、上半メリジアンではわずかに0.01Dだけである。
【0033】
重み付けされた2つの半メリジアン値T
SUPavとT
INFavの求和されたベクトル平均を決定して(
図6d)、ここではCorT値(0.91D@91)として記載されている有効な全角膜トポグラフィ乱視を計算することができる。Sim K(0.88D@102)とCorT値の関係を調べるとマグニチュードが類似している(両方ともに算術平均よりも小さい)ことが分かる。これはおそらく、3つのゾーンのスティープメリジアンが一線上にない結果として角膜トポグラフィ乱視を推定する類似の効果である。しかしながら、CorT値のメリジアンの方が、時計回り方向にT
SUP(85度)およびT
INF(275度)の近くに整列し、その結果、CorT値のメリジアンはおそらく、7mmゾーンの方位の影響を考慮に入れることにより全角膜乱視メリジアンをより良好に表す。この約10度の差(CorTメリジアンの91度に対してSim Kメリジアンは102度)は、外科的切開プランニングまたはレーザプランニング中に考慮すべき重大な量であろう。
【0034】
3つのゾーンにおける個々のそれぞれの成分の直線性の不足が大きいほど、Sim KまたはCorTによって表される有効な正乱視は小さくなることに留意することは重要である。内ゾーンでの1単位からの20%の値の増大および外ゾーンでの1単位からの20%の値の低減は、この段階で経験的に推定した例であり、将来的には、経験および集団研究(population study)に基づいて変更することができる。3.0Dの重み付けされた3つのゾーン値の和は、調整されていない3つの1単位の値の和に等しく、そのため、この調整プロセスによって乱視の正味の増大または低下は生じない。
【0035】
Sim Kマグニチュードと重み付けされたCorTマグニチュードとが近いことはさらに、この非直線現象の効果がパラレルであることを示し、さらにCorTがどれほど効果的に角膜全体を表すのかを示す。CorTの特に有利な点は、T
supおよびT
INF半メリジアン成分のベクトル和および平均を使用することによって最も適切なメリジアンを識別する際の正確さおよび一貫性である。
【0036】
ベクトルプランニングを使用する屈折矯正治療計画に角膜パラメータが含まれる場合、この技法は追加の安全性を提供する。多数の値の平均をベクトル的に算出すると、CAVKなどの自動化された測定プロセスで生じる可能性がある測定アーチファクトまたは実際の異常値の影響が低減する。
【0037】
半メリジアン値を計算して角膜乱視を定量化するこの方法は、角膜の両半分の3mm、5mmおよび7mmゾーンのそれぞれのゾーンの角膜曲率測定マグニチュードおよびメリジアンを含む。これらの2つの半メリジアン値をベクトル求和にかけて、角膜トポグラフィによって決定される眼の全角膜乱視を定量化する角膜トポグラフィ乱視値、CorTを提供することができる。この値は、現在使用されているSim K値よりも有利であることがある。計算された半メリジアン値は、角膜不規則性に対するベクトル値、トポグラフィ差異も提供することができる。診察室において、このトポグラフィ差異を、基本的な術前パラメータとしてORA値とともに使用して、患者適合性、および乱視を矯正する屈折矯正手術を計画するときに良好な視力矯正結果(visual outcome)が得られる可能性を判定することができる。
【0038】
記載された技法はさらに、測定されたメリジアンにおける値のマグニチュードにより大きな適合性またはより小さな適合性を配分する係数を提供することによって、視軸により近い値または視軸からより遠い値に調整された重みを与えることを可能にする。ベクトルプランニング治療プロセスにおいて屈折パラメータを用いて解決する必要がある角膜乱視を正確に定量化するために、それぞれが角膜の半分を表す導き出された半メリジアン値を治療パラメータとして組み込むことができる。これらの半メリジアン値を使用して特発性不正乱視を即時治療するベクトルプランニングプロセスにおいて角膜パラメータと屈折パラメータを結合することによって、潜在的に、角膜乱視矯正結果の一貫性を潜在的に高めることができ、このことは、日常のレーザ視力矯正プロセスにおいて全体的な視力矯正結果の質をさらに向上させる機会を提供する。
【0039】
図1のパラメータを使用して、
ステップ1.フラットおよびスティープメリジアンの適当なペアリングを決定する。
(i)フラットおよびスティープパラメータの適当なペアリングを決定するため、3mmゾーンの値から最小TDマグニチュードを計算する。
第1のペアリング(
図2a、2bおよび2c)
40.46/41.23@90(0.77D@90)上半メリジアン
40.68/41.54@294(0.86D@294)下半メリジアン
TD=0.67D
代替ペアリング
40.68/41.23@90(0.55D@90)上半メリジアン
40.46/41.54@294(1.08D@294)下半メリジアン
TD=0.82D
【0040】
第1のペアリングの方が不規則性値が小さく、そのため、ゾーンに対する調整された乱視値を提供する目的にこのペアリングを選択する。
【0041】
ステップ2.(i)で選択したフラット/スティープパラメータに適当な重みを与える(
図3aおよび4a)。
3mmゾーン:
0.77D@90(上半メリジアン)×1.2(3mmゾーンに対する重み)=0.92D@90
0.86D@294(下半メリジアン)×1.2(3mmゾーンに対する重み)=1.03D@294
【0042】
ステップ3.3mmゾーンのスティープおよびフラット角膜曲率測定示度に分離角で最も近いスティープおよびフラット角膜曲率測定示度を選択することによって、5mmゾーンの対応するスティープおよびフラット角膜曲率測定示度を組み合わせる。
5mmゾーン:
41.13/41.87@100(0.74D@100)上半メリジアン
0.74D@100×1.0(5mmゾーンに対する重み)=0.74D@100
41.17/42.45@276(1.28D@276)下半メリジアン
1.28D@276×1.0(5mmゾーンに対する重み)=1.28D@276
【0043】
ステップ4.さらに、5mmゾーンのスティープおよびフラット角膜曲率測定示度に分離角で最も近いスティープおよびフラット角膜曲率測定示度を選択することによって、7mmゾーンの対応するスティープおよびフラット角膜曲率測定示度を組み合わせる。
7mmゾーン:
42.18/43.24@66(1.06D@66)上半メリジアン
1.06D@66×0.80(7mmゾーンに対する重み)=0.85D@66
42.30/44.04@260(1.74@260)下半メリジアン
1.74D@260×0.80(7mmゾーンに対する重み)=1.39D@260
【0044】
ステップ5.ヘッドツーテール求和を使用して、合成された上および下半メリジアン平均乱視を計算する(
図3bおよび4b)。
求和されたベクトル平均上乱視=0.74D@85T
SUPav
求和されたベクトル平均下乱視=1.10D@275T
INFav(
図5a)
【0045】
ステップ6.ベクトル差T
SUPおよびT
INF
平均上および下ベクトル平均乱視のメリジアン(T
SUPavおよびT
INFav)を2倍にし、DAVD上でベクトル差を決定して、ジオプトリおよび度で表された角膜不規則性またはTDを提供する。
TD=0.48D Ax111(
図5bおよび5c)
【0046】
ステップ7.CorT値のためのベクトル加算T
SUPおよびT
INF
角膜トポグラフィ乱視値(CorT)を導き出すための上乱視値と下乱視値のヘッドツーテール求和。CorTは、マグニチュードが等しく180度離れた両方の半メリジアン上に表される。
0.91D@91
0.91D@271
【0047】
重大な眼収差は、視力の質および量を低減させることがあり、その結果、グレア(glare)、ハロー(haloes)、夜間の光のスターバースティング(star bursting)および最良に矯正された視覚明瞭度の全体的低減の症状が生じることがある。重大な眼収差は不正乱視の場合に一般的に起こり、これは、収差測定(aberrometry)によって測定および定量化することができる。角膜乱視値と屈折乱視値のベクトル差によって収差の正確な程度を計算して、内部(非角膜)収差を定量化することもできる。
【0048】
このベクトルプランニング技法は、角膜パラメータを屈折パラメータと結合して乱視の治療を最適化することを可能にする系統的パラダイムである。
【0049】
先進のベクトルプランニングは、角膜のそれぞれの半メリジアンに対してLASIKまたはPARKを使用する生来の不正乱視の治療を可能にする。視力矯正結果を向上させるこのプロセスの潜在性は、トポグラフィ屈折値または波面屈折値の排他的使用に勝る。
【0050】
角膜乱視マグニチュードおよび/または軸と屈折乱視マグニチュードおよび/または軸との間には一般に差がある。そのような場合、この差は、眼残余乱視(ORA)によって定量化される。ORAは、トポグラフィ乱視と2次収差測定乱視の差に起因する眼内収差を定量化する計算されたベクトル値である。より大きな量のORAは、角膜不規則性を定量化する計算されたベクトル値として以前に示したより大きな量のトポグラフィ差異(TD)に正比例する。ベクトルプランニングを使用して結果として生じるORAを最小化することにより眼の収差を低減させることによって、眼の視機能を向上させることができる。
【0051】
以下では、角膜のそれぞれの半メリジアンにベクトルプランニングを独立に適用する技法を説明する。
【0052】
エキシマレーザ手術での現在の乱視および視力矯正結果をさらに向上させるためには2つの治療原則が最重要である。第1に、トポグラフィと屈折の両面で検査された総和乱視(total sum astigmatism)を最大限に低減させる(ORAによって定量化される最小限の値にする)。第2に、角膜上に残ったこの最小限の乱視をより好ましい正乱視の状態にする。これらの2つの原理はこれまで、生来の正乱視および不正乱視に関して別々に詳述されてきた。
【0053】
ベクトルプランニングは、結果として生じるトポグラフィ乱視ターゲットと屈折乱視ターゲットの和(すなわちORA)が、その個々の眼の固有のパラメータに対して最小値をとるような方式で、乱視を最大限に低減させることを可能にする。この残った乱視は、トポグラフィモダリティと屈折モダリティの間で、最適化された方式で最もよく配分される。正味の効果は、角膜上に残る乱視がより少なくなり、低次および高次の光学収差が低減されたより良好な視力矯正結果が潜在的に達成されることである。
【0054】
生来の不正乱視は、レーザ手術を受ける集団において広く一般的であり、TD評価を使用して定量化することができる。前に説明したとおり、このベクトル値はマグニチュードおよび軸を有し、ジオプトリで表現され、以前の調査では43%の眼が1.00Dよりも大きな値を有する。この値は、720度倍角ベクトル図(DAVD)上のトポグラフィマップの半分をそれぞれが表す反対側の2つの半メリジアン乱視値間の離隔距離として計算される(
図2a、bおよびc)。角膜の不規則性(TD)が大きいほどORAも大きいという関連する正比例関係が観察されることに留意されたい。
【0055】
乱視を最大限に低減させるため、屈折乱視(顕性または波面)に対する共通の1つの値を、2つの異なるトポグラフィ乱視値を有するように別々に分解することができる。この2つの異なるトポグラフィ乱視値は、例えば
図6aからdに示されているように、角膜のそれぞれの半メリジアンに対して1つ割り当てられる。
図6dは、重み付けされた3mm、5mmおよび7mm値を使用して角膜乱視を最もよく表現するT
SUP AとT
SUP Aの算術平均としてのCorTを示す。波面屈折または顕性屈折を使用する現在の診療様式は、角膜を含む眼全体に対する単一の屈折円柱値を突き止めるだけである。低減されてはいるが依然として不正な結果として生じる角膜乱視を正乱視化する追加のステップは、直交した対称な角膜を達成するのに有益であり、したがって眼に対する最良の視力潜在性を獲得するのに有益である。
【0056】
本発明に基づく治療プロセスは、2つの基本的な治療ステップを順を追って結合して1つのステップにする。最初に、トポグラフィパラメータと波面パラメータの両方を最適化された方式で使用して乱視を最大限かつ最適に低減させ(ステップA−B)、次に、残った角膜乱視を正乱視化する(ステップB−C)。これらの2つの別個のステップを統合して単一ステップ治療プロセスとすることができる。この単一ステップ治療プロセスは、最終的な直交対称ターゲットCにおいて術前の乱視状態Aから計算される。
【0057】
生来の不正乱視に対する治療パラダイム
1.乱視の最適低減(ステップA−B)
図7aは、トポグラフィおよび屈折によって測定した乱視パラメータの360度極座標図(ベクトル図ではない)を示し、この図では、2つの術前測定のマグニチュードまたは方位が互いに一致していない。この角膜乱視は不正乱視である。これは、上トポグラフィ半メリジアン値(T
SUP)のマグニチュードと方位の両方が、
図6に示されているように、下トポグラフィ半メリジアン値(T
INF)とは異なっており、したがってこの乱視が非対称かつ非直交であるためである。波面(2次ゼルニケ(Zernike)3および5円柱乱視)または顕性パラメータを使用した屈折乱視(R)は、上角膜半メリジアンおよび下角膜半メリジアンに対して共通の対称な直交値として示されている。
【0058】
ORAの計算
既存の乱視を最大限に低減させるために計算する必要がある第1のパラメータはORAであり、このパラメータは、角膜平面における屈折乱視と角膜乱視のベクトル差である。
【0059】
既存の乱視は、屈折成分とトポグラフィ成分の単純な算術和によって定量化することができる。この算術和は、矯正すべき総和乱視を定量化し、矯正されない部分はORAによって定量化される。角膜不規則性が存在するときには、ORAを、
図7aに示されているように2つのそれぞれの半メリジアンに対して別々に計算することができ、このとき、ORAは、それぞれの半メリジアンのトポグラフィパラメータと屈折パラメータのベクトル差である。ORAの中和は、角膜の表面または眼鏡で実施なければならず、あるいは、手術パラメータが最適化されている場合にはこれらの2つを組み合わせて実施しなければならない(
図8は対応する治療ベクトルを示す)。ORAの矯正を配分するためにここで選択される重みはトポグラフィ40%および屈折60%であり、この重みは、以前に平均として計算され、ベクトルプランニング研究で使用されたものである。
【0060】
それぞれの配分は場合によって異なることがあり、この配分は、外科医が達成を目指しているプロポーショナルな理論上のトポグラフィターゲットおよび屈折ターゲットに依存する。可能な場合、これらのターゲットは、角膜乱視を0.75Dまで、眼鏡屈折円柱を0.50DC以下まで低減させることを目指すべきである。ORAが1.25Dよりも大きいためにこれが達成できない場合には、以前と同様に別の重点オプションが適当なことがある。ORAを最適に処理する方法に重点を置くかどうかにかかわらず、トポグラフィ乱視ターゲットと屈折乱視ターゲットの和がORAに等しいときには、眼の光学系で最大量の乱視が治療されている。ORAを術前に計算することによって、最大量の乱視を治療すること、および角膜上に残される乱視の量をより受け入れ可能なレベルまで最小化することが可能になる。
【0061】
最小限のORAを残して乱視を最適に低減させるための治療(TIA)の計算
それぞれの半メリジアンに対する乱視治療のためのターゲット誘導乱視ベクトル(TIA)は急勾配にする効果を有し、したがってTIAは、最大限に削摩されている軸と整列する。TIAはベクトル差、または術前乱視とそれが識別するターゲットとの間に必要な治療である。この治療ベクトルを、それぞれの半メリジアンを表すトポグラフィ値Tが異なるためにマグニチュードとメリジアンの両方が異なるそれぞれの半メリジアンTIA
SUP ABおよびTIA
INF ABに別々に適用することができる。これをDAVD上に表すことができる。すなわち、TIAベクトルの軸をマグニチュードは変化させずに2倍にし、次いでそれを、それらの対応する術前トポグラフィ値(DAVD上ではそれらのスティープメリジアンの2倍のところにある)に適用する。その結果、乱視低減A−Bのトポグラフィターゲット(ターゲットT
SUP BおよびT
INF B)が得られる(
図9a)。それらのターゲットは依然として非対称かつ非直交である。同じプロセスを、治療ベクトルTIA
SUP ABおよびTIA
INF ABを使用して共通の屈折乱視に適用して、それぞれの半メリジアンに対して1つ、合わせて2つの屈折ターゲットを獲得することができる(
図9b)。しかし実際には一方の屈折ターゲットだけが利用される。
【0062】
対称屈折円柱ターゲット(ターゲットR
B)を決定するために、適用されたTIA
INF ABとTIA
SUP ABの和をDAVD上でヘッドツーテール方式で求めることによって、正味の全治療効果(TIA
NET AB×2)を計算する(
図10)。
図10は、屈折乱視に対して適用する平均治療(TIA
NET AB×2)を計算するための最適治療ベクトル(TIA
SUP ABおよびTIA
INF AB)の求和を示すDAVDを示す。次いで、TIA
NET AB×2のマグニチュードを2で割る。これは、このベクトルが、2つのベクトルTIA
SUP ABとTIA
INF ABの加算であるためである。次いで、(2つのパラメータの和であるためマグニチュードが半分にされた)TIA
NET AB×1を、術前円柱形屈折のそれぞれの半メリジアン表示に適用し(
図11aは、直交する対称な「上」および「下」屈折を対として示す。これらの屈折は、360E離れているためDAVD上で互いに重なっている)、その結果として、1つの共通の屈折ターゲット(ターゲットR
B)を得る。これが、合成された屈折/トポグラフィターゲットならびに上および下ORAとともに、
図11bに示されている。
【0063】
この最適化された矯正結果は、最小限の量の乱視が残ることであり、この残る乱視は、通常は眼全体の内部収差に対応し、このケースでは半メリジアンごとに別々に計算された眼残余乱視(ORA)に等しい。
【0064】
最小限に残したORAの正乱視化ステップ(ステップB−C)
次いで、上記の乱視の最適低減によって達成された対応するそれぞれの角膜ターゲット(ターゲットT
SUP BおよびターゲットT
INF B)に、第2の治療(TIA
SUP BCおよびTIA
INF BC)を適用して、対称で直交する角膜乱視矯正結果を達成することができる。これは、最初のステップ(ステップA−B)によって達成された屈折円柱ターゲット(ターゲットR
B)をターゲットとすることによって
図12aに示されているように実行される。上および下半メリジアンに対する合成された屈折ターゲットが
図12bに表示されている。上および下TIA
BCをヘッドツーテール方式で再び平均し、この値(TIA
NET BC×1)をターゲットR
Bに加算することによって、正乱視化する第2のステップ(B−C)による最終的な対称屈折円柱ターゲット(ターゲットR
C)を計算する(
図13aおよび13b)。その結果、
図14に示されているように、共通の屈折円柱とトポグラフィが整列する。
【0065】
治療TIA
NET BC×1によるそれぞれのターゲットR
Bへのこの屈折変化B−Cは、角膜を正乱視化するステップと同じステップで規定される可能な最小値であるそれぞれの別個のORA(ORA
C)を効果的に定量化する(
図14)。
【0066】
図10は、ベクトルの最適治療の求和を、そのマグニチュードおよび軸とともに示すDAVDを示す。
【0067】
1ステップ(A−C)での最適化された最大低減および正乱視化
乱視の最適化された最大低減および対称な直交する角膜を1ステップで達成するのに必要な半メリジアン治療(上半メリジアンに対するTIA
SUP ACおよび下半メリジアンに対するTIA
INF AC)を、既存の角膜不正乱視を最大限かつ最適に低減させる最初のプロセスによって達成されるステップA−Bからのターゲット屈折(ターゲットR
B)をターゲットとすることによって計算する。次いで、これらの治療を、両方の術前角膜値(T
SUP AおよびT
INF A)に
図15に示されているように適用して、1回の外科治療ステップで低減および正乱視化の目標を達成する。
図16は、上および下治療を、1回の外科ステップでの乱視の最大治療および正乱視化後の屈折ターゲットおよびトポグラフィターゲットとともに示す。
【0068】
透明な角膜の機能を、透き通った窓ガラスの特性と比較することができる。平らな窓ガラスの反りが原因で、窓ガラスを通して見たときに透過した輪郭が歪んで見えるのとちょうど同じように、角膜の不規則性も、角膜を通過する平行光線の等間隔の配列を低減させる。既存の高い高次乱視(high order astigmatism)(HOA)を有する角膜を通過した光の像の点像分布関数(point spread function)を使用して、不規則な角膜を通して見たときに見える歪みを収差計(aberrometer)上に表示することができる。
【0069】
一般的に実施されている角膜乱視の対称治療では、その乱視が正乱視であるのかまたは不正乱視であるのかにかかわらず、角膜乱視値と屈折乱視値の間に一般的に差がある。屈折値だけによる従来の治療は、(ORAによって定量化される)非角膜乱視の全てを角膜上に残して眼の内部収差を中和する。これは、近眼および乱視のレーザ視力矯正によって治療された眼の30%超、既存の術前角膜乱視の7%超で1ジオプトリ超に達することがあり、手術の結果として乱視は全体的に増大する。
【0070】
同様に、波面パラメータだけによる治療の正味の効果は、他の方法で残らざるを得ない乱視よりも過剰な乱視を角膜表面上に残すことである。HOAの収差測定治療の第2の望ましくない効果は、角膜を正乱視化することを明確に試みることなく網膜までの光の光学経路上の角膜表面よりも後ろにある不規則性を中和するために、角膜表面に不規則性を生み出さざるを得ないことである。
【0071】
波面収差測定が、非球面角膜を生み出し、大きな瞳孔およびかなりのHOAを有する患者の球面視力矯正結果を改善する重要かつ有用な診断モダリティであることは疑いない。しかしながら、この技術の固有の欠点は、角膜表面で測定され永続的に中和される収差が水晶体に由来し、または知覚的なものであることがあり、そのため、経時的に不安定な変量に基づいて永続的な変化を生み出すことがあることである。
【0072】
これらのより高次の障害の重要性が、視覚皮質における乱視の視覚皮質知覚および/または後頭知覚であることがあり、このことが、顕性屈折が実質的に測定されず、収差測定だけを使用する治療から顕性屈折が排除されることに影響を与えている。顕性屈折が排他的なガイディング(guiding)パラダイムであるときには、これらの非視覚的な乱視の影響が、角膜に適用される治療および結果として生じる角膜の形状に重大な効果を有することがある。従来の屈折矯正治療では、これらの影響が、トポグラフィ入力によって全く緩和されない。
【0073】
治療モダリティとして波面値だけを使用することに依存することには、他の論文発表者によっても認識されている理論上および実用上の大きな障害がある。治療プロセスにおけるベクトルプランニングの鍵となる利点は、術前角膜乱視パラメータを、屈折波面乱視に対するパラメータと系統的に結合することができることである。このようにすると、好ましくないと考えられている(倒乱視、斜乱視などの)乱視から角膜を守ることができ、そのため、そのような場合に残る余分な乱視およびその結果としてのコマ収差、三葉形収差などの高次収差を回避することができる。記載した技法を使用して、角膜上で中和されたまま残る避けられないORAを、直交する対称な(正乱視の)状態にすることができ、その結果、平行光線が角膜を通過するときに光線の歪みを低減させることができる。このようにすると、角膜乱視が低減および正乱視化され、同時に収差が潜在的に低減される最適な視力矯正結果が可能である。
【0074】
図8および9は、乱視の最大低減を示す。理論上、角膜乱視の低減をターゲットとすると、残留する乱視の一部が屈折レベルへシフトする。術後の実際の顕性屈折を測定し評価すると、実際には、このシフトが予想されるものよりも小さいことが示されている。非対称角膜乱視治療を使用するベクトルプランニング技法(
図8)は、ORAによって定量化される非角膜乱視を最小化し、したがって角膜値と屈折値の一致を最大化すること、および知覚される像の光学的な質を潜在的に向上させることを試みる。これらの2つの値間の可能な最良の同等性は、眼内の低次光学収差と高次光学収差の両方を最小化する可能性が高い。
図8を参照すると、最適な非対称治療(TIA
SUP ABおよびTIA
INF AB)をそれぞれの角膜半メリジアンに適用することによって、不正乱視の治療が達成される。乱視のこの最大矯正はステップA−B(AB)として示される。
【0075】
波面測定では、将来的に、半メリジアンごとに1つ、合わせて2つの異なる屈折値を、角膜上の2つの別個のトポグラフィ値とより良好に整合させること、したがってそれぞれの角膜半メリジアンに対して別個の屈折測定およびトポグラフィ測定を使用することが可能になる可能性が高いと予想される。この結合された治療パラダイムは、最もよく補正されたベクトル解析(best corrected vector analysis)(BCVA)を改良することに関して、波面パラメータまたはトポグラフィパラメータを単独で使用するよりも大きな潜在性を有する。不正乱視を効果的に矯正する理想的なアブレーション形状は、それぞれの半メリジアンに対して寸法が変更される楕円によって決定される。それらの楕円を角度的に変位させて、非直交かつ非対称の治療要件を達成することができる。
【0076】
角膜のこれらの非対称で非直交の値に対処するのに必要な治療変更は、角膜の主メリジアン間の輪郭を徐々にうねるように変化させることによって達成される。荒く急激な変化ではないなめらかで連続的な変化は維持されて、与えられた限局された凹凸を時間が経つにつれてなめらかにする可能性が高い自然の上皮治癒力と戦う公算がより大きい。
【0077】
このベクトルプランニング法を、不正乱視の場合に矯正結果を改良するように拡張することができる。角膜の別個のそれぞれの半メリジアンに対する別個の乱視治療計画とともに非対称ベクトルプランニングを利用するとおそらく、球面および不規則な円柱を矯正する単一の角膜手術の完了時に全体の乱視が低減し、角膜プロファイルがより規則的になると考えられる。将来のエキシマレーザ技術にこれらのアルゴリズムを組み込むことによって、レーザ視力矯正での球円柱(spherocylinder)治療によって現在達成されている矯正結果は潜在的に改良されるであろう。
【0078】
乱視の最大低減および角膜の正乱視化のための治療の計算
このプロセスの最初のステップは乱視の最大低減であり、このステップをステップA−B(AB)と呼び、第2のステップは角膜の正乱視化であり、このステップをステップB−C(BC)と呼ぶ。
【0079】
術前パラメータが
図7aに表示されている。
上トポグラフィ 2.600@130
下トポグラフィ 1.900@278
波面屈折 −3.240S 1−1.80DC×18(BVD=12.5mm)
【0080】
別個の半メリジアン乱視の治療(TIA
SUP ABおよびTIA
INF AB)は
図8に示されており、これらの治療は、40%が角膜をスフェリサイズ(sphericize)し、160%が屈折円柱をスフェリサイズする重みに基づいて計算され、上半メリジアンに対する既存のORAは1.82D Ax59である。下半メリジアン治療も、40%が角膜をスフェリサイズし、60%が屈折円柱をスフェリサイズすることに基づき、既存の0.67D Ax340のORAに適用される。ORAに対して選択する重みにかかわりなく、角膜のそれぞれの半メリジアンでは最大量の乱視が治療されている。
【0081】
ORAを中和することに重点を置くことによって決定される術前トポグラフィとターゲットトポグラフィのベクトル差は、それぞれの半メリジアンに対する乱視治療(TIA)に等しい。トポグラフィターゲット(ターゲットT
INF BおよびターゲットT
SUP B)が
図9に示されている。
【0082】
2つの半メリジアン間のTIAが異なるときには、TIAの和(TIA
NET AB)または平均を計算して、屈折乱視に対する合わさった効果を決定する必要がある(
図10)。治療ベクトルの平均、TIA
NET ABは、TIA
SUP ABとTIA
INF ABのヘッドツーテール求和を使用し、次いでこれを2で割ることによって計算される。2で割るのは、この求和計算には2つの値が含まれるためである。
1.87D Ax29+1.71D Ax194=1.730 Ax22
【0083】
この平均治療ベクトルTIA
NET ABを、+1.63 Ax108である2つの半メリジアンに対する屈折値の共通の対のそれぞれの屈折値に加算し(次いで軸を半分にして、眼の表面に現れた場合の極座標に変換して)、
図11に示された屈折円柱ターゲット(R
B)を得る。
1.63 Ax108+[+1.73 Ax22]=+0.25 Ax53(R
B)
【0084】
角膜を正乱視化するため、乱視の最適化された最大低減である最初のプロセス(ステップAB)後のトポグラフィターゲット(ターゲットT
INF BおよびターゲットT
SUP B)は、+0.25D Ax53(
図12に示されたDAVD上の軸106)である初期の屈折円柱結果(ターゲットR
B)をターゲットとするために追加された第2の治療(TIA
SUP BCおよびTIA
INF BC)を有する。
【0085】
この例では、結果として生じるトポグラフィ(ターゲットT
INF CおよびターゲットT
SUP C)と、やはり2つの治療TIA
SUP BCとTIA
INF BCをベクトル的に加算することによって計算される最終的な屈折(ターゲットR
C)とが整列し(
図14)、その結果、結果として生じる正味の屈折変化からターゲットR
BがターゲットR
Cにシフトすると、残留するORAは最小限になる。
【0086】
残留するORA、すなわち最終的なトポグラフィターゲットと屈折円柱ターゲットのベクトル差は最小値をとる。トポグラフィターゲットは0.25D@53に等しく、乱視の最大低減および正乱視化、ならびに角膜を正乱視化するための第2の治療(TIA
SUP BCおよびTIA
INF BC)の効果に由来する。第2のプロセス(BC)のこれらの正乱視化変化は、0.620 Ax53である結果として生じる最終的なORAに等しい量だけシフトすることによって、屈折ターゲット(ターゲットR
B)に影響を及ぼす→7ターゲットR
C=0.870 Ax53。
【0087】
不正乱視の最大低減および正乱視化のための1ステップ治療(ステップA−C)
1つのステップで乱視を最大限に低減させ(AB)、正乱視化する(BC)のに必要な治療は、ステップABから計算される屈折ターゲット(ターゲットR
B)をターゲットとする2つの術前角膜値(T
SUPおよびT
INF)から始まる。ここでの単一ステップ治療(
図15のTIA
SUP ACおよびTIA
INF AC)は、ステップAB(
図9)およびステップBC(
図12)で計算されたTIA上治療ベクトルとTIA下治療ベクトルの加算である。
術前パラメータ
上トポグラフィ 2.600@130
下トポグラフィ 1.900@278
治療
上TIA
AC=2.820 Ax131(TIA SUP AB+BC)
下TIA
AC=1.910 Ax102(TIA INF AB+BC)
ターゲット
上トポグラフィ 0.25D@53
下トポグラフィ 0.25D@233
屈折ターゲット(ターゲットR
C) +0.87D Ax53
【0088】
このようにして、対称で直交する矯正結果が得られる。
【0089】
図17は、本明細書に記載された方法を実行する装置の略図である。
【0090】
この図には、角膜のマップを作成するトポグラファ50が示されており、このマップから、3mm、5mmおよび7mmゾーンの角膜値を得ることができる。
図17はさらに、患者の眼の屈折状態を決定することができる屈折測定装置を示す。トポグラファ50および屈折測定装置51から得られたパラメータはコンピュータ52に供給され、コンピュータ53は、上で説明した演算を実行して、トポグラフィパラメータT
supおよびT
infならびにTDおよびCorTを生成し、さらに最大限のトポグラフィ低減および最小限のORAを提供する半メリジアンに対するTIA
supおよびTIA
infに対するパラメータを生成する。
【0091】
後に説明する好ましい一実施形態によれば、3、5および7mmゾーンでトポグラフィパラメータを測定する代わりに、角膜全体にわたってトポグラフィパラメータを測定して、眼全体に対するCorT値を得る。このCorT値は、ベクトルプランニングに対して使用し、前述の外科治療のためのTIAベクトルを得るために使用することができる。
【0092】
図18は、患者の眼eの角膜トポグラフィ乱視値を得るためのシステムを概略的に示す。この眼は、多数の同心円状のいわゆるプラシド環(placido ring)r(
図19に示されている)を生成するデバイスdによって照明される。以後、これらのプラシド環を単に環と呼ぶ。デバイスDからの光は、眼の角膜表面から、フォトケラトメータ(photokeratometer)スコープまたはカメラpに反射され、このカメラは、眼のそれぞれの環の角膜表面の形状に対応する環の像を生成する。デバイスdとカメラpを結合して、共通のユニットとすることができる。コンピュータ支援ビデオケラトグラファ(computer assisted videokeratographer)Rなどの別のデバイスが、角膜表面の環から反射された光によって生み出された像をカメラpから読み込んで、全てそれぞれの環に関する多数のパラメータを生成する。これらのパラメータは、コンピュータcの中央処理ユニットに入力され、そこで本発明に従って処理されて、角膜トポグラフィ乱視に関する出力結果が生成される。
【0093】
図19は、多数の環rが示された角膜Cを示す。
【0094】
この特定の例では22個の環が示されているが、この数は変更することができる。しかし、正確な結果を得るためには一般に少なくとも18個はあるべきである。これらの環には、半径方向外側へ向かって0から21までの番号が付けられている。これらの環は、眼の光学中心を中心にして同心であり、デバイスdからの環の間隔は均一である。角膜によって反射される光環は眼の角膜乱視に応じて歪められる。環の幅は比較的に狭く、数分の1ミリメートル程度である。角膜表面の高くなった領域では環の幅が狭められ、環のより平らな領域では環の幅が大きくなる。ビデオケラトグラファkは、環から反射された光のいわゆる軸方向屈折力測定値を生み出す。
【0095】
コンピュータ支援ビデオケラトグラファkを使用して、何人かの患者の環から反射された光の軸方向屈折力測定値を得た。環ごとに、測定点を得、乱視値を計算した。ベクトル求和によってこれらの環乱視値を結合して、角膜トポグラフィ乱視(CorT)と呼ばれる尺度を生成した。このパラメータを、後に示す角膜乱視の他の尺度との比較で、それぞれの尺度が顕性屈折円柱とどれくらいぴったりと整合するのかに関して査定した。
【0096】
さらに、全体のCorTのフラットメリジアンを使用して、角膜を2つのヘミディビジョンに概念的に分割することができる。続いて、角膜のそれぞれのヘミディビジョンに対してヘミディビジョンCorTを計算することができる。
【0097】
要約すると、本発明のCorT値は、患者間の眼残余乱視(ORA)のマグニチュードの分散、眼残余乱視の平均マグニチュードおよび平均乱視測定値のマグニチュードに関して査定したときに、現状技術を代表する3つの他の方法、すなわち用手角膜曲率測定(manual keratometry)、模擬角膜曲率測定および角膜波面よりも良好に顕性屈折円柱と整合した。
【0098】
したがって、CorTとして知られているトポグラフィ測定値から導き出される角膜乱視の本発明に基づく代替尺度は、一般的に使用されている他の尺度よりもよく顕性屈折円柱に一致する。加えて、角膜のそれぞれのヘミディビジョンに対するヘミディビジョンCorTを計算して、不規則な角膜の非直交で非対称な乱視を効果的に表現することができる。
【0099】
屈折矯正レーザ手術で乱視を治療するときには、外科医が、屈折円柱の正確な尺度だけでなく、角膜乱視の正確な尺度も知っていることが重要である。従来のエキシマレーザ手術では、角膜上で削摩されているのは屈折円柱であり、多くの場合、屈折円柱は、マグニチュードおよび/または方位が角膜乱視とは同じではない。これらの差が重大な場合には、最適とは言えない視力矯正結果が得られることがある。角膜乱視のマグニチュードおよび方位と屈折乱視のマグニチュードおよび方位との間の相関関係が良好であるほど、治療後に眼の光学系に全体として残る乱視の量は小さくなる。角膜乱視と屈折乱視の差は眼残余乱視(ORA)によって正確に記述され、角膜平面における角膜乱視と屈折乱視のベクトル差として定義される。一部のケースでは、治療が屈折パラメータだけに基づいており、角膜乱視の量および方位を考慮していないことの結果として、エキシマレーザ手術後に角膜乱視のマグニチュードが増大し、その結果、収差が増大し、達成される視力の質が低下する。
【0100】
これまでの角膜トポグラフィは、慣例的に、1980年代のコンピュータ支援ビデオケラトグラフィ技術の導入時に角膜曲率測定の等価物を得る試みとして使用された3mmゾーン付近の角膜乱視の定量的記述子である模擬角膜曲率測定(Sim K)値を示す。
【0101】
Sim K値にまつわる一般的に遭遇する1つの難点は、デバイスによって計算されるマグニチュードおよびメリジアンが、角膜の3mm領域の幅の狭い環からとられたデータに基づき、したがって、皮質知覚を含む眼の全乱視を測定する屈折円柱で明らかにされる既存の角膜乱視を正確に表していないことがある点である。本明細書では、角膜上の幅の広い環状領域から導き出される角膜トポグラフィ乱視(CorT)を説明する。角膜乱視は視覚系の全乱視の主要な要因の1つであるため、この尺度は屈折円柱に理想的に一致すると考えられる。CorTが、規則的な角膜および不規則な角膜全体の角膜乱視の一貫した尺度を提供することも意図され、次いでこれを角膜切開屈折矯正レーザ手術に実装して、乱視をより良好に矯正することができる。
【0102】
さらに、角膜の2つのヘミディビジョンに対してヘミディビジョンCorTを導出することを可能にするCorTの拡張について説明する。ヘミディビジョンCorTは、トポグラフィ差異(TD)として知られる角膜不規則性の標準化された尺度を、非直交非対称角膜に対して計算することを可能にする。トポグラフィ差異は、720度倍角ベクトル図(DAVD)上の2つのヘミディビジョンCorT間のベクトル差として計算される。ヘミディビジョンCorTは、角膜の特定のセクションを査定したり、角膜の特定のセクションをエキシマレーザで治療したりするときにも必要であり、またはベクトルプランニング非対称治療プロセスに対しても必要である。
【0103】
屈折、角膜曲率測定およびトポグラフィ乱視データを、多数の患者について遡って査定した。角膜曲率測定データは、Topcon(登録商標) OM−4角膜曲率計dを用いて測定した。トポグラフィデータは、Zeiss ATLAS(商標) 9000ケラトグラファkを用いて捕捉し、コンピュータ内のソフトウェアを使用してエクスポートした。エクスポートされたデータは、さまざまな直径(幅)を有する22個の環上の180点の軸方向の曲率測定値を含む。最も内側の環(環0)の角膜上での等価直径は約0.8mmであり、最も外側の環(環21)の角膜上での等価直径は約11mmである。これらの環は、環7とこれに隣接する2つの環との間の離隔距離がわずかに大きいことを除いてほぼ等間隔に配置されている。
【0104】
角膜トポグラフィ乱視(CorT)は、隣接する多数の環から決定された乱視値の求和されたベクトル平均として計算される。本明細書には22個の環を示したが、外側の最後の3つの環19〜21はまつげなどにより収差誤差を有する可能性があり、捨てることができることが分かっている。環12までの最も内側の環は最も正確な結果を提供し、正確な結果のために選択することができることも分かっている。いずれにせよ、選択した一組の環を後に説明するように治療する。
【0105】
最初に、単一のそれぞれの環から得た軸方向屈折力測定値に最もよく当てはまる球円柱を見つけ出すことによって乱視を決定する。この球円柱の表面は、対応するそれぞれの環の角膜表面に合致する。次いで、全ての環の個々の値の求和されたベクトル平均を介して多数の角膜乱視パラメータを結合する。
【0106】
特定の環(環7)に対する軸方向曲率測定値を取得したら、このデータに球円柱を当てはめるために、下の形の最小自乗フィット(least-squares fit)を実行する必要がある。
P(θ)≒S+Ccos
2(θ−M)
上式では、メリジアンθにおける測定屈折力Pが、屈折力Sを有する球面成分と屈折力CおよびメリジアンMを有する円柱成分とを有する完全球円柱曲線に当てはめられる。ここで、Cが正である場合、Mはスティープメリジアンを指すが、Cが負である場合、Mはフラットメリジアンを指す。このような当てはめ一例が
図20に示されている。
【0107】
図20では、この球円柱曲線が、環7から得た角膜屈折力データに当てはまる。白抜きの丸はデータ、連続線は球円柱曲線である。このデータは、当てはめられた曲線とは大幅に異なるように見える。これは、角膜の非対称性が大きいためである。
【0108】
本発明者らは当てはめられた球円柱を環.#.Kと呼ぶ(このケースでは環.0.Kから環.21.Kまで)。Zeiss ATLAS(商標) 9000によって生成されたSim Kは環.7.Kと全く同じであることに留意されたい。
【0109】
それぞれの環の角膜乱視を表すマグニチュードおよびメリジアンの単一のパラメータを決定するため、球円柱曲線の峰におけるマグニチュード(最もスティープなマグニチュード)および谷におけるマグニチュード(最もフラットなマグニチュード)の平均値、ならびに峰におけるメリジアンを取得する。
【0110】
CorTを計算するためには、選択した環.#.Kの求和されたベクトル平均を計算する必要がある。このプロセスは数学的には以下のようになる。
【0111】
1.それぞれの環.#.Kの円柱成分を倍角ベクトルとして表現する。メリジアンM
rにおいて円柱成分C
rを有する環.r.Kに対する倍角ベクトルv
rは、
v
r=(C
rcos2M
r,C
rsin2M
r)
である。
【0112】
次に、この倍角ベクトルの求和されたベクトル平均v
Meanを計算する。
【0113】
【数1】
上式で、Rは、選択した環の組であり、p
rは、環rの有効な測定値の割合である。因数p
rの存在は、求和されたベクトル平均上の欠測データの影響を改善する。選択した環のいずれにも欠測値がない場合、求和されたベクトル平均は
【0114】
【数2】
になる。上式で、|R|は、選択した環の数である。
【0115】
2.次いで、この倍角ベクトル平均を再び円柱屈折力およびメリジアンに変換する。
【0118】
3.次に、最終的なCorTの平均角膜曲率測定成分を、選択した環.#.Kの平均角膜曲率測定成分の平均として計算する。
【0120】
「結果」の項では、環の連続した全ての組の完全な比較を実行することによって、使用する環を決定する。
【0121】
多数の環.#.KからのCorT生成の例
環4および8だけを使用してCorTを生成することを望んでいると仮定し、どちらの環にも欠測値はないと仮定する。
【0122】
角膜パラメータのベクトル求和では、環の個々の値の和が順を追って次々と求められるが、隣接する2つの環と環の差異は例示するには明らかに小さすぎると思われるため、以下では、環4および8に対するベクトル求和を例示目的で説明する。
【0123】
環.4.Kは、42D/44D(スティープメリジアン@100)である。
【0124】
環.8.Kは、42D/44.5D(スティープメリジアン@60)である。
【0125】
環.4.Kおよび環.8.Kの円柱成分の倍角ベクトルはそれぞれ(−1.88,−0.68)および(−1.25,2.17)である。平均は、
【0129】
したがって、CorTは、42.26/43.99(スティープメリジアン@77)である。
【0130】
この計算は
図21A〜21Cにも概略的に示されている。
【0131】
これらの図には、求和されたベクトル平均をどのように得るのかが示されている。
図21Aの極座標図に元の環.#.Kが示されている。
図21Bは、環.#.Kを実線として示す倍角ベクトル図を示す。この図では、角度が2倍になっているが、マグニチュードはそのままである。成分が2つのこのケースでは求和されたベクトル平均の長さの2倍である求和されたベクトル和が、破線矢印として示されている。角膜上にある場合の、極座標図上の結果として生じる実際のCorTは、
図21Bに示された長さの半分の長さの破線として示されている。
【0132】
以前の特許において、本発明の発明者は、不規則な角膜を、別個の異なる半メリジアンを有する対応する2つの乱視を有する2つのヘミディビジョンに概念的に分割することを記載した。この表現が全ての角膜に対して一貫していることを保証するためには、不規則な角膜に対しても機能する機能的かつ系統的方法で角膜を分割する必要がある。これらの半メリジアンを2つのスティープメリジアンの方位に整列させることを考えた場合、角膜を等しく分割する有効な方法は、全体のCorTのフラットメリジアンに沿って分割する方法である。角膜を2つのヘミディビジョンに分割した後、ヘミディビジョン環.#.KおよびCorTを計算することができる。ヘミディビジョン環.#.KおよびCorTは、それぞれの計算が一方のヘミディビジョンから取得したデータだけに基づくことを除き、通常の環.#.KおよびCorTと全く同じように計算することができる。ヘミディビジョンCorT間の倍角ベクトル差は、トポグラフィ差異(TD)として知られる角膜不規則性の尺度である。2つのヘミディビジョンCorT成分のベクトル平均はまさしく、角膜全体に対して計算されたCorTであることに留意されたい。
【0133】
角膜乱視の表現を生成する知られている方法は、トポグラファによって生成された模擬角膜波面データのゼルニケ係数
【0135】
【数9】
による方法である。一緒に取得されるゼルニケ係数
【0137】
【数11】
は、円柱成分の倍角ベクトル表現と等価である。円柱屈折力および軸は、
【0140】
この表現を角膜波面乱視(corneal wavefront astigmatism)(CorW)と呼ぶ。
【0141】
以下では、顕性屈折円柱と比較した角膜乱視の諸尺度の評価を示す。
【0142】
用手角膜曲率測定、コンピュータ支援ビデオケラトグラフィ(Sim K)および角膜波面を使用して角膜乱視を測定した。ビデオケラトグラフィによって測定された軸方向屈折力データからCorT値を導出した。角膜乱視のこれらの4つの異なる尺度を評価するため、それらのそれぞれの尺度に対して眼残余乱視(ORA)を計算した。眼残余乱視(ORA)は、角膜平面におけるそれぞれの尺度と顕性屈折円柱のベクトル差である。本発明の発明者らは、全乱視に対するベンチマークとしての顕性屈折円柱の使用を、以下のとおり支持する。
・顕性屈折円柱は、眼(角膜および内部)および知覚(視覚皮質)の全円柱の尺度である。
・大部分のエキシマレーザ治療は現在、顕性屈折パラメータに基づいており、このことは、顕性屈折円柱が、視力矯正の現時点の最も適切な尺度であることを裏付けている。
・眼波面測定から導き出された治療は、顕性屈折を、治療を裏付けるためのベンチマークとして使用している。
・ORAマグニチュードが小さい眼は、屈折矯正手術後の視力矯正結果が良好である傾向がある。
【0143】
次に、角膜乱視と顕性屈折円柱尺度を比較する臨床上適切なパラメータを考える。
【0144】
1.標準偏差(sd)によって決定されるORAマグニチュードの変動性
角膜および屈折査定ならびに角膜および屈折手術において使用することができる角膜乱視の尺度は、(角膜平面において)顕性屈折乱視と好ましく整合するはずである。ORAの正味の極座標値は、ジャバルの規則(Javal's rule)によって平均して記述することができるが、複数の眼の間にはORAの変動性およびORAの正味の極座標値の変動性が存在する。ORAマグニチュードの変動性は、2つの独立した原因によって生じる。複数の眼の間のORAの変動性と、角膜乱視および屈折円柱の測定値の変動性(系統的と確率的の両方)である。所与の一組の眼に関して、それらの眼の間の変動性に影響を与えることはできない。屈折円柱は4つの全ての尺度に対して共通であるため、このことは、この標本に対するORAマグニチュードの変動性の変化が、角膜パラメータの変化に起因するものであるに違いないということを意味する。測定値が変動する傾向は、1つの因子として、その小さなマグニチュードのためにGogginが確率的とした求和されたベクトル平均を調べることによって排除することができる。したがって、ORAマグニチュードの変動性の低下は、異なる患者間の角膜乱視と顕性屈折円柱の間の整合の一貫性の向上を示す。値は小さい方が好ましい。本発明の発明者らは、ブートストラッピング(bootstrapping)を使用して、異なる標本集団間の変動性の量を定量化する。
【0145】
2.ORAの平均マグニチュード
臨床診療において、ORAのマグニチュードは、マグニチュードと方位の両方を含む角膜乱視と屈折乱視の間の相関関係を査定において評価するための主要な考慮事項である。ORAのマグニチュード値が小さいことは、角膜パラメータと屈折パラメータとが近いことを示している。ORAは、術前乱視のうちのどのくらいの部分を手術によって完全に治療することができるのかを決定する(ORAは、眼の光学系の角膜上または顕性屈折内あるいはその両方に残る乱視の量である)。本発明の発明者らは、4つの異なる角膜乱視尺度およびそれらのメリジアン(Man K、Sim K(環.7.Kと同じである)、CorWおよびCorT)に対応する平均ORAマグニチュードを比較して、顕性屈折円柱との相関関係を、マグニチュードと軸の両方を考慮して決定する。
【0146】
3.顕性屈折円柱と比較した角膜乱視値の平均マグニチュード
本発明の発明者らは、角膜乱視値を顕性屈折円柱のマグニチュードと比較することによって、屈折機能を最もよく表す角膜乱視値を決定する。ここで、本発明の発明者らは特に、角膜乱視マグニチュード測定値が有効であることの更なる証拠として、密接な対応を探す。
【0147】
結果
この項では、右眼データから得られた結果を詳細に示す。パラレルであることが分かった左眼データの結果については、この「結果」の項の終わりに簡単に概要を記す。
【0148】
右眼データ
4つの角膜尺度(Man K、Sim K(環.7.Kと同じである)、CorWおよびCorT)の平均ORA、特に患者間のORAマグニチュードの標準偏差(ORAsd)を比較する。ORAsdが小さいことは、それがより大きい場合よりも、角膜尺度が、顕性屈折円柱の乱視ベンチマークと、よりぴったりとかつより一貫して整合することを示す。さらに、乱視の4つの角膜尺度について、ORAの平均マグニチュードおよび角膜乱視マグニチュードを屈折円柱マグニチュードと比較する。
【0149】
CorTを導出するため、環の連続した全ての組の完全な比較を実行して、最も小さいORAsdを有する環の組を見つけ出した。特定の標本に対するORAsdの依存性を考慮するため、1000のブートストラップ標本からORAsdの分布を推定した。ORAマグニチュードの変動が最も小さい40組の環群を表1に示す。使用可能な全てのデータを使用することに対応する環範囲0−17のORAsdが最も小さい。しかしながら、表1の残りの組の大部分が、最も小さいORAsdと有意差のないORAsdを有する。小さなORAsdを有するこれらの環範囲の全てが環3〜8を含む。本発明の発明者らの解析では、環範囲0−17を用いてCorTを生成する。この環範囲が、範囲の中に全ての環を含み、変動性が最も小さいためである。
【0150】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
表1:ブートストラッピングによって推定した、環の連続したさまざまな組から導出されたCorTのORAマグニチュードの標準偏差。示した40組の環群は、本発明の発明者らのデータセットに対するORAマグニチュードの標準偏差(ORAsd)が最も小さい組である。3列目は、当該環範囲に対するORAsdと環0〜17に対するORAsdとの差の95%信頼区間を示し、4列目は、対応する片側p値を示す。示した大部分の環範囲でp値は0.05よりも大きく、このことは、5%信頼水準において統計的に有意な差がないことを意味する。
【0151】
図22は、環.#.K、Man K、Sim K、CorWおよびCorTに対する(1000回のブートストラップ反復によって推定した)ブートストラップされたORAsd値を示す。内側の環.#.K(環0〜2)に対するORAsd値および外側の環.#.K(環14〜17)に対するORAsd値は、中間の環.#.K(環3〜13)に対するORAsd値よりも大きく、かつより変動性が大きい。
【0152】
図22は、ORAマグニチュードのブートストラップされた標準偏差を示す。0から17と標識されたボックスプロット(boxplot)は、対応する環.#.Kから計算したものである。Man K、Sim K、CorWおよびCorTと標識された4つのボックスプロットはそれぞれ、環0〜17から導出した用手角膜曲率測定、環7、角膜波面およびCorTから計算したものである。これらのボックスプロットは、ブートストラップされた値の四分位値および極値を示す。CorTは最も小さな値を有し、このことは、ORAの変動性がより小さいことに対応する。
【0153】
標準偏差(sd)によって決定されたORAマグニチュードの変動性
表2は、CorTのORAsdとMan K、Sim KおよびCorWのORAsdとの直接比較の信頼区間を示す。CorTのORAsdは、Man KおよびCorW、ならびにSim Kのそれよりも有意に小さい。
【0154】
【表2】
表2:ブートストラッピングによって推定した、CorTのORAsdと他の3つの乱視の角膜尺度のORAsdの差。片側p値は、CorTのORAsdが他のORAsdsよりも小さくないという帰無仮説に対応する。CorTのORAsdは、用手角膜曲率測定(Man K)および角膜波面乱視(CorW)のORAsd、ならびに環7(Sim K)から導出したORAsdよりも有意に小さい。
【0155】
平均ORAマグニチュードを表3に示す。CorTのORA値は、他の角膜尺度のORA値よりも小さくかつ一貫している(変動性がより小さい)傾向がある。求和されたORAベクトル平均と平均ORAマグニチュードが近いことは、ORAに対する強い傾向があることおよび確率的測定誤差がほとんどないことを示している。
【0156】
【表3】
表3:ORA値に対する統計量。1列目は、マグニチュードの平均および標準偏差を示し、2列目は、求和されたベクトル平均を有し、これは、それぞれのORAの方位およびデータの全体の傾向も考慮している。ORAの平均および標準偏差は、角膜トポグラフィ乱視に対するものが最も小さく、このことは、患者間の顕性屈折円柱に対する相関関係が、乱視の他の角膜尺度よりも密接であることを示している。CorTのORAの求和されたベクトル平均が最も小さく、このことは、顕性屈折値と最もよく一致している全体の傾向と合致している。右列の比率は、存在する一貫性の傾向と全て同じ順位である。
【0157】
ORAの平均マグニチュード
表4には、ORAマグニチュードの比較が示されている。CorTのORAマグニチュードは、他の3つの尺度のORAマグニチュードよりも有意に小さい。
【0158】
【表4】
表4:ブートストラッピングによって推定した、CorTから生成されたORAのマグニチュードとMan K、Sim KおよびCorWから生成されたORAのマグニチュードとの差。片側p値は、CorTのORAマグニチュードは他のORAマグニチュードよりも小さくない帰無仮説に対応する。CorTから生成されたORAマグニチュードは、Man K、Sim KおよびCorWから生成されたORAマグニチュードよりも有意に小さい。
【0159】
屈折円柱と比較した角膜乱視の平均マグニチュード
乱視および円柱に対する平均値を表5に示す。CorT乱視値は、乱視の他の角膜尺度よりも有意に小さく、乱視の他の角膜尺度よりも顕性屈折円柱に近い。
【0160】
【表5】
表5:平均乱視値に対する統計量。1列目は、マグニチュードの平均および標準偏差を示し、2列目はp値を有する。角膜トポグラフィ乱視は、有意に小さい乱視マグニチュードを有する(ブートストラップされた全ての未処理のpが<0.001であった)。
【0161】
乱視マグニチュードと屈折円柱の平均差を表6で比較する。CorT乱視マグニチュードと屈折円柱の差は、Man K、Sim KおよびCorW乱視マグニチュードと屈折円柱の差よりも有意に小さい。
【0162】
【表6】
表6:ブートストラッピングによって推定した、角膜平面における角膜乱視の平均マグニチュードと屈折円柱の平均マグニチュードの差。平均CorT乱視マグニチュードと平均屈折円柱マグニチュードの差は他の3つの差よりも有意に小さい。
【0163】
左眼データ
本発明の発明者らは、上で報告した解析を左眼データを用いて繰り返し、パラレルな結果を得た。ORAsd平均を調べることによってCorTを生成する最良の環範囲は0−17であり、最もよい40の環範囲は全て環4〜10を含んでいた。中間環.#.K(環3〜12)のORAsdは、内側環.#.K(環0〜2)のORAsdおよび外側環.#.K(環13〜17)のORAsdよりも小さい。5%信頼水準で、CorTのORAsdは、Man K、Sim Kおよび角膜波面乱視のORAsdよりも有意に小さい。Man K、Sim K、CorWおよびCorTに対応する平均ORAマグニチュードはそれぞれ0.67D、0.69D、0.74Dおよび0.60Dであり、このことは、CorTのORAマグニチュードが最も小さいことを示している(ブートストラップされた全ての未処理のp値が<0.001であった)。Man K、Sim K、CorWおよびCorTに対応する平均乱視マグニチュードはそれぞれ0.96D、1.02D、1.12Dおよび0.84Dであり、このことは、CorT乱視マグニチュードが、角膜平面において0.75Dである平均屈折円柱マグニチュードに最も近いことを示している。
【0164】
ヘミディビジョンCorTの生成例
図23には、不正乱視を有するまだ治療を受けていない右眼の軸方向曲率データが示されている。この眼の環.#.Kが表7に示されている。この例について、使用可能な全ての環に対して等しい重み付けを使用して、全体のCorTを計算する。CorTのフラットメリジアンは@134および314度であり、そのため角膜をこの位置で分割する。表7には、新たなヘミディビジョン環.#.Kも示されている。これらの半メリジアンは、
図23の軸方向曲率データ上に重ねられて示されている。この例では、CorT半メリジアン@74および197度が、Sim K半メリジアン@75および193度とたまたま一致している。信頼できない環15〜17に対する半環.#.K
1値は、ヘミディビジョンCorTに対して最小限の影響しか持たないことに留意されたい。これは、これらのそれぞれの半環の有効点の比率が、CorTが斟酌する角膜全体と比較して非常に小さいためである。
【0165】
図23は、軸方向曲率データを示す。左側の画像は環7のみを示し、右側の画像は全ての測定データを示す。破線は、分割メリジアン@134および314度を示し、実線は、ヘミディビジョン環.7.K(左)およびCorT(右)の半メリジアンを示す。
【0166】
【表7-1】
【表7-2】
表7は、
図23に対応する環.#.K値およびヘミディビジョン環.#.K値を示す。内側の4つの環の環.#.Kのスティープメリジアンは、それよりも周辺の環のそれとは異なる。ヘミディビジョン環.#.K半メリジアンの分離角は、環0での約180°から始まり(表の太字の半メリジアンを参照されたい)、環番号が大きくなるにつれて小さくなり、ついには環12でわずか94°になる(表の最下行の太字の半メリジアンを参照されたい)。測定データが断片的であるときには半環.#.Kが信頼できないことに留意されたい(例えば環15〜17に対する半環.#.K
1)。
【0167】
コンピュータ支援ビデオケラトグラフィは、多数の同心環を提供し、その大部分は、現在、模擬角膜曲率測定に関して示されているように角膜乱視の定量化に寄与しない。
【0168】
これらの乱視値の結合は、用手角膜曲率測定、3mmゾーンだけから取得される模擬角膜曲率測定または角膜波面から導き出されたパラメータを使用するよりも顕性屈折円柱によりぴったりと相関することによって角膜全体をより良好に表現する値(CorT)の導出を可能にする。このことは、顕性屈折円柱が眼の全乱視を査定するためのベンチマークであるときにはCorTが角膜乱視の正確な表現であるという前提を補強する。環データを包括的に包含するCorTを計算する記載された方法は、エキシマレーザ、LRI、円環レンズインプラント、インプランタブルコンタクトレンズおよび角膜内リングを含む角膜乱視矯正手術に対する患者の適合性を査定する際に追加の安全性および正確さを提供する。
【0169】
CorTを使用する利点の1つは、結果として生じるORAマグニチュードが、用手角膜曲率測定、模擬角膜曲率測定および角膜波面乱視の代替角膜尺度を使用することによって生み出されるものよりも小さいことである。このことは、ORAの推定値が、通常存在すべき値よりも大きいことを示している可能性がある。これは、これらの他の角膜乱視の尺度が、角膜のより幅広い領域にわたって実際に知覚される角膜乱視を一貫して表現しないためである。しかしながら、CorTを顕性屈折円柱とともに使用したときであっても、望ましいマグニチュードよりも大きなORAマグニチュードを有する範囲外の眼が依然として存在する。1.00Dよりも大きいマグニチュードは、屈折パラメータだけを使用して乱視を矯正する際に達成可能な受け入れ可能な矯正結果を制限することがある。そのため、外科医は、眼を治療しないこと、球面相当分だけを治療すること、またはベクトルプランニングを使用することに決めることができる。ベクトルプランニングは、治療において角膜パラメータと屈折パラメータとを結合して、そのような場合に残る結果として生じる角膜乱視の量を最適化し、最大限に低減させ、同時に潜在的に不満足な矯正結果を回避する。このような患者には、術前に、患者の既存の球円柱屈折誤差が完全に矯正されるという期待を現実的なレベルにまで下げなければならないことがあることを伝えることができる。
【0170】
CorTの乱視マグニチュードは顕性屈折円柱のそれに最も近い。このことは、CorTパラメータを使用したORAsdおよびORAマグニチュードも最も小さいという本発明の発明者らの知見と矛盾しない。このことは、CorTが、Man K、Sim KおよびCorWよりもよく屈折円柱に一致することを裏付ける。
【0171】
それぞれのヘミディビジョンのプラシド環から得られた多数の乱視値のベクトル求和は、それがアーチファクトであるかまたは実際の異常値であるのかにかかわらず、異常な測定値の単独の影響を低減させる。異常値は、コンピュータ支援ビデオケラトグラフィなどの自動化された測定プロセスで予想されうる。
【0172】
角膜全体の乱視値とヘミディビジョン乱視値の両方を知ることは、角膜乱視矯正結果の一貫性をより高めることにつながりうる。導き出されたヘミディビジョン値を使用して、角膜のトポグラフィ差異を計算することもできる。角膜全体またはそれぞれのヘミディビジョンに対する角膜パラメータを含む治療は、現在臨床的に使用可能な変動性がより小さいパラメータに依存することができる。これは、日常のレーザ視力矯正プロセスにおいて全体的な視力矯正結果の質をさらに向上させる機会を提供する。
【0173】
結語
本明細書では、大脳処理を含む眼の全屈折円柱を定量化する顕性屈折円柱によく一致する角膜トポグラフィ乱視(CorT)と呼ばれる角膜乱視を定量化する新たな方法を説明した。多数の眼にわたる眼残余乱視(ORA)の範囲に基づいて比較したとき、ORA、マグニチュード、マグニチュードの標準偏差、および角膜乱視値と屈折乱視値の平均差は、CorTが、一般的に使用されている角膜乱視の他の3つの尺度、すなわち用手角膜曲率測定、模擬角膜曲率測定および角膜波面乱視よりも大幅に有利に顕性屈折円柱と整列することを立証する。本発明の発明者らはさらに、角膜の乱視を2つのヘミディビジョンに対して別々に考慮することを可能にする2つのヘミディビジョンCorT値を角膜に対して生成する一貫した方法を記載した。これらの2つのヘミディビジョンCorT値は、角膜不規則性のベクトル尺度であるトポグラフィ差異の値を導き出すことを可能にする。CorT、ORAおよびトポグラフィ差異を、意思決定および同意プロセスにおける基本的な術前パラメータとして使用して、外科医が乱視手術を計画するときに、肯定的な視力矯正結果を達成するのを助けることができる。