(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態に係る印刷装置を示す平面図、
図2は本発明の一実施の形態に係る印刷装置を示す側面断面図、
図3は本発明の一実施の形態に係るドクターブレード装置を示す図であり、
図3(a)は斜視図、
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図、
図4は本発明の一実施の形態に係るインク保持部を示す分解斜視図である。
【0020】
本実施形態における印刷装置1は、グラビアオフセット印刷法によって基材110に導電性インクMを印刷することにより、配線基板100(
図14(b)参照)を製造する装置である。
【0021】
配線基板100は、基材110と、導体層120と、を備えている。基材110は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等の絶縁性を有する基材である。導体層120は、印刷装置1によって基材110上に転写された導電性インクMを硬化させることにより形成されている。この導体層120は、銀や銅、ニッケル、スズ、ビスマス、亜鉛、インジウム、パラジウム、グラファイト等を含有する導電性材料と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を含有するバインダ樹脂等から構成されている。なお、導体層120を構成する材料からバインダ樹脂を省略してもよい。
【0022】
因みに、
図14(b)において、符号(120)は、導電性インクMを乾燥炉85(後述)で硬化させた後の導体層を示す。また、同図において、符号(100)は、乾燥炉85で硬化した後の導体層120を有する配線基板を示す。本実施形態における「配線基板100」が本発明における「配線基板」の一例に相当し、本実施形態における「基材110」が本発明における「基材」の一例に相当する。
【0023】
なお、本実施形態の導電性インクMは、5Pa・s〜50Pa・sの粘度を有している材料とされている。このような導電性インクMは、上述の導体層120を構成する導電性材料及びバインダ樹脂に加えて、各種添加剤および溶剤を混合して構成されている。溶剤としては、用いるバインダ樹脂の種類に応じて適宜、選択すればよいが、たとえば、バインダ樹脂としてポリエステル系樹脂を用いる場合には、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチルカルビトーレ、酢酸−2−ブトキシエチル、イソブチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、イソホロンなどが挙げられる。添加剤としては、硬化剤、カップリング剤、腐食抑制剤などを例示することができる。本実施形態における「導電性インクM」が本発明における「導電性インク」の一例に相当する。
【0024】
印刷装置1は、
図1及び
図2に示すように、版テーブル10と、基材テーブル20と、ドクターブレード装置30と、ドクター架台40と、ディスペンサ50と、転写ローラ60と、移動機構71,72と、装置フレーム80と、乾燥炉85と、を備えている。
【0025】
版テーブル10は、装置フレーム80に水平に支持されており、移動機構71によりX方向に沿って平行移動が可能となっている。この版テーブル10は、平板状の凹版90(グラビア版)が載置されている保持面11を有している。この保持面11は、特に図示しない複数の吸引口が開口しており、凹版90を吸着保持することが可能となっている。なお、版テーブル10に凹版90を固定する方法は、特にこれに限定されない。因みに、移動機構71としては、たとえば、モータを用いたボールねじ機構等を例示することができる。本実施形態における「版テーブル10」が本発明における「基台」の一例に相当し、本実施形態における「移動機構71」が本発明における「移動機構」の一例に相当する。
【0026】
本実施形態の凹版90は、平板状とされた凹版であり、その上面91に銅等からなる金属層をエッチング等することで凹パターン92が形成されている。この凹パターン92は、配線基板100の導体層120に対応したパターンとされている。このような凹パターン92としては、たとえば、相互に平行に複数の細線を配列するストライプ状のパターンであってもよいし、異なる方向に延在する第1及び第2の細線(不図示)を相互に交差させてなる網目状(メッシュ状)のパターンであってもよい。凹パターンを網目状(メッシュ状)とする場合は、種々の図形単位(たとえば、三角形、四角形等のn角形や、円、楕円、星型等)を繰り返して得られる幾何学模様を、当該凹パターンの単位網目の形状として用いることができる。なお、
図1に示す例では、凹版90の凹パターン92としてY軸方向に沿ったものしか図示していないが、実際にはこの凹パターン92はY軸方向のみならず多種多様な方向に沿って延在している。本実施形態における「凹版90」が本発明における「凹版」の一例に相当し、本実施形態における「凹パターン92」が本発明における「凹パターン」の一例に相当する。
【0027】
基材テーブル20は、装置フレーム80に水平に支持されており、移動機構72によりX方向に沿って平行移動が可能となっている。この版テーブル10は、被印刷体である基材110が載置される保持面21を有している。上述の版テーブル10の保持面11と同様に、この保持面21にも複数の吸引口が開口しており、基材110を吸着保持することが可能となっている。なお、基材テーブル20に基材110を固定する方法は、特にこれに限定されない。因みに、移動機構72としては、たとえば、モータを用いたボールねじ機構等を例示することができる。
【0028】
この基材テーブル20の待機位置の近傍には、吸着装置(不図示)が並設されており、当該吸着装置により基材テーブル20上に載置された基材110が乾燥炉85に移送される。なお、乾燥炉85としては、たとえば、IR(遠赤外線)乾燥炉や熱風乾燥炉等を例示することができる。基材110上に転写された印刷パターン(導電性インクM)は、この乾燥炉85を通過することで加熱され、硬化することで、配線基板100の導体層120が形成される。
【0029】
ドクターブレード装置30は、凹版90の上方に当該凹版90と対向して配置されている。このドクターブレード装置30は、凹版90の上面91に摺接して、当該凹版90に形成された凹パターン92に導電性インクMを充填し、当該凹版90の上面91上に残余する導電性インクMを掻き取るために用いられるものである。本実施形態における「ドクターブレード装置30」が本発明における「ドクターブレード装置」の一例に相当する。
【0030】
ドクターブレード装置30は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ブレード本体31と、ブレードホルダ32と、インク保持部33と、当て板381と、固定具382と、を有している。ブレード本体31は、先端部311において、凹版90の上面91と摺接可能となっており、基端部312側において、ブレードホルダ32により支持されている。本実施形態における「ブレード本体31」が本発明における「ブレード本体」の一例に相当する。
【0031】
ブレードホルダ32は、ブレード本体31の基端部312側から当該ブレード本体31を支持しており、第1のホルダ部材321と、当該第1のホルダ部材321に対向する第2のホルダ部材322と、を有している。第1及び第2のホルダ部材321,322の間には、間隙が形成されている。これら第1及び第2のホルダ部材321,322は、相互に略平行に配設されており、この第1及び第2のホルダ部材321,322の間にブレード本体31を挿入し、当該ブレード本体31を表裏から挟み込むことで、ブレード本体31を支持することができるようになっている。
【0032】
第1のホルダ部材321は、ブレード本体31の前面(すなわち、ドクターブレード装置30の進行方向側の面)と接触して、当該ブレード本体31を支持している。一方、第2のホルダ部材322は、当て板381を介してブレード本体31の後面(すなわち、ドクターブレード装置30の進行方向側に対して反対側の面)を第1のホルダ部材321側に向かって押圧することで当該ブレード本体31を支持している。本実施形態における「ブレードホルダ32」が本発明における「ブレードホルダ」の一例に相当する。
【0033】
インク保持部33は、ドクターブレード装置30の進行方向において、ブレード本体31よりも前方に設けられ、当該ブレード本体31と一定の間隔を空けて配置されている。ドクターブレード装置30によりドクタリングを行う際には、このインク保持部33がブレード本体31に先行して導電性インクMと接触する。
【0034】
インク保持部33は、
図3(a),
図3(b)及び
図4に示すように、支持部34と、可動部35と、支軸36と、付勢機構37と、を有している。支持部34は、底璧341と一対の側壁342,342とでコ字状に形成されたブラケットである。底璧341は、第1のホルダ部材321の先端に固定されている。この底璧341は、可動部35よりも若干大きな幅を有しており、その両端に側壁342,342が立設されている。側壁342,342のそれぞれには、支軸36が挿通可能な挿通口342a,342aが形成されている。支軸36は、上述の挿通口342a,342aに跨って挿通固定されている。なお、底璧341を省略して、側壁342,342を第1のホルダ部材321の先端に直接固定してもよい。また、第1のホルダ部材321と支持部34とを一体的に形成してもよい。
【0035】
可動部35は、ブレード本体31の幅に対応した幅を有する板状の部材である。この可動部35は、凹版90の上面91と摺接可能な先端部351と、当該先端部351とは反対側の端部に形成された挿通口352と、を有している。挿通口352は、支軸36が挿通可能となっており、当該挿通口352に支軸36を挿通することで、可動部35が回転可能に保持される。
【0036】
付勢機構37としては、たとえば、ねじりコイルスプリング371を用いることができる。ねじりコイルスプリング371は、コイル部372と、トーションアーム373,374と、を有している。本実施形態では、左右の側壁342,342に添えて、それぞれの側壁342,342の内側にねじりコイルスプリング371,371を1つずつ配置している。
【0037】
ねじりコイルスプリング371,371は、次のように、側壁342,342と可動部35の間に介装されている。すなわち、コイル部372,372に支軸36を挿通し、一方のトーションアーム373,373を側壁342,342側に係止させ、他方のトーションアーム374,374を可動部35側に係止させている。
【0038】
これにより、可動部35(すなわち、先端部351)がブレード本体31に接近する方向に向かって回転すると、このねじりコイルスプリング371,371により、当該可動部35をブレード本体31から離反させる方向に付勢する付勢力が可動部35に対して印加される。
【0039】
一方、可動部35がブレード本体31から離反する方向に向かって回転すると、ねじりコイルスプリング371,371により、当該可動部35をブレード本体31に接近させる方向に付勢する付勢力が可動部35に対して印加される。なお、可動部がブレード本体31から離反する方向に向かって回転するのを規制する規制ピン(不図示)を、側壁342,342に設けてもよい。
【0040】
本実施形態のドクターブレード装置30は、ブレード本体の前面が凹版90に臨むように傾斜させた姿勢で、凹版90の上方に当該凹版90と対向して配置される。この姿勢でドクターブレード装置30を凹版90に接触させると、インク保持部33に対してブレード本体31に接近する方向に押圧力(すなわち、ドクター圧)が印加される。このドクター圧がねじりコイルスプリング371,371の付勢力よりも大きい(具体的には、支軸36を中心とした可動部35において、ドクター圧による回転モーメントが付勢力による回転モーメントよりも大きい)と、可動部35が支軸36を中心に回転する。そして、可動部35の先端部351は、下記(2)式を満たすように、ブレード本体31の先端部311近傍に接触する。
1mm≦A≦5mm・・・(2)
但し、上記(2)式において、Aは、インク保持部33に対して、ブレード本体31に接近する方向に押圧力が印加されたとき、ブレード本体31の延在方向におけるブレード本体31の先端部311と、可動部35の先端部351がブレード本体31に接触する接触点Pと、の間の距離である。
【0041】
上記(2)式のように先端部311と接触点Pとの間の距離が1mm以上とされることで、可動部35と凹版90との間の隙間を導電性インクMが通過してブレード本体31の前方に入り込むので、当該ブレード本体31によるドクタリングが可能となる。一方、上記(2)式のように先端部311と接触点Pとの間の距離5mm以下とされることで、導電性インクMの圧力を可動部35の先端部351で受け止めることが可能となる。また、この場合では、可動部35に導電性インクMが付着するので、ブレード本体31と当該可動部35とが離反した際に、合わせて導電性インクMをブレード本体31から離反させる機能を当該可動部35に付与することができる。
【0042】
本実施形態において、ブレード本体31の先端部311近傍とは、当該先端部311から接触点Pまでの距離が、上記(2)式を満たすことを意味する。
【0043】
なお、可動部35の先端部351を、ブレード本体31の先端部311のより近傍に接触させるため、当該可動部35の突出量をブレード本体31突出量よりも大きくしてもよい。すなわち、ドクター圧が印加された状態では、可動部35はブレード本体31の延在方向に対して傾斜した姿勢となるため、この傾きを考慮して当該可動部35の突出量をブレード本体31の突出量に対して大きくしてもよい。
【0044】
本実施形態の可動部35の幅は、ブレード本体31の幅に対応した幅とされており、先端部351をブレード本体31の先端部311の近傍に接触させることで、ブレード本体31の先端部311近傍において、当該先端部351によりブレード本体31の前方が覆われるようになる。
【0045】
一方、ドクターブレード装置30を凹版90から離反させると、インク保持部33を凹版90に押し付けていたドクター圧が開放されるので、ねじりコイルスプリング371,371の付勢力により可動部35の先端部351がブレード本体31から離反される。
【0046】
本実施形態における「インク保持部33」が本発明における「インク保持部」の一例に相当し、本実施形態における「支持部34」が本発明における「支持部」の一例に相当し、本実施形態における「可動部35」が本発明における「可動部」の一例に相当し、本実施形態における「先端部351」が本発明における「先端部」の一例に相当し、本実施形態における「支軸36」が本発明における「支軸」の一例に相当し、本実施形態における「付勢機構37」が本発明における「付勢手段」の一例に相当する。
【0047】
当て板381は、ブレード本体31の延在方向において、第2のホルダ部材322の先端よりも一部が突出して配置されており、第2のホルダ部材322によるブレード本体31の支持を補強する機能や、凹版90に印加するドクター圧を均一にする機能を有している。
【0048】
第1及び第2のホルダ部材321,322は、固定具382により連結されている。固定具382は、ブレード本体31がブレードホルダ32から脱落することを防止するためのものであり、当該ブレード本体31の幅方向に沿って、略等間隔に配列された締め付けボルトからなっている。この固定具382である締め付けボルトを締め付けることで、ブレード本体31をブレードホルダ32に固定することができる。
【0049】
図1及び
図2に戻り、ドクター架台40は、ドクターブレード装置30が脱着可能な架台である。このドクター架台40は、上下動できる機構を有しており、版テーブル10に保持された凹版90に対して接近又は離反が可能となっている。ドクター架台40を上下動させる機構としては、たとえば、モータ等を用いたラックアンドピニオンギア機構等を例示することができる。
【0050】
ドクター架台40を下降させ、ブレード本体31の先端部311を凹版90の上面91と接触させた状態で、移動機構71により版テーブル10を−X方向に移動させることで、当該ブレード本体31により凹版90上の導電性インクMのコーティング、掻き取りが実行される。
【0051】
なお、本実施形態では、版テーブル10を移動機構71により水平移動させているが、ドクター架台40と版テーブル10とが、相対的に移動可能となっていれば、特に上述に限定されない。たとえば、特に図示しないが、移動機構によりドクター架台が版テーブルに対して水平移動してもよいし、ドクター架台及び版テーブルのそれぞれに移動機構を設け、これらの移動機構の同期駆動下において、当該ドクター架台及び版テーブルを相対移動させてもよい。
【0052】
ディスペンサ50は、導電性インクMを凹版90上に供給する装置であり、ドクターブレード装置30の近傍に設けられている。このディスペンサ50は、ドクターブレード装置30と共にZ方向に沿って移動可能となっている。なお、本実施形態では、ドクターブレード装置30とディスペンサ50とは同期駆動下において動作させているが、それぞれ独立して動作させてもよい。また、この場合には、ディスペンサ50を動作させた後にドクターブレード装置30を動作させてもよい。本実施形態における「ディスペンサ50」が本発明における「供給装置」の一例に相当する。
【0053】
転写ローラ60は、ブランケット胴61と、ブランケット62と、を備えている。ブランケット胴61は、その中心軸で回転可能に支持されている。ブランケット62は、たとえば、シリコーンゴム等から構成されており、特に図示しない粘着層を介してブランケット胴61の外周に捲回されている。この転写ローラ60は、特に図示しないモータ等により回転駆動が可能となっている。また、転写ローラ60は、たとえば、特に図示しないラックアンドピニオンギア機構等によりZ方向において上下動が可能となっている。この場合、転写ローラ60を下降させることで、版テーブル10に載置された凹版90、或いは、基材テーブル20上に載置された基材110と接触可能となっている。本実施形態における「転写ローラ60」が本発明における「転写体」の一例に相当する。
【0054】
次に、印刷装置1を用いた配線基板100の製造方法について説明する。
図5は本発明の一実施の形態に係る配線基板の製造方法を示す工程図である。
【0055】
本実施形態の配線基板100の製造方法は、
図5に示すように、印刷工程S10と、乾燥工程S60と、を備えている。以下の説明では、まず、印刷工程S10について、
図5〜
図15を参照しながら、詳細に説明する。本実施形態における「印刷工程S10」が本発明における「印刷工程」の一例に相当し、本実施形態における「乾燥工程S60」が本発明における「乾燥工程」の一例に相当する。
【0056】
図6は本発明の一実施の形態に係る配線基板の製造方法を示す図であり、充填工程の詳細を示すフローチャート、
図7(a),
図7(b),
図8,
図9(a),及び
図9(b)は
図6のステップを示す図、
図10は、
図9(b)のX部の部分拡大図、
図11(a)、
図11(b)、及び
図12は本発明の一実施の形態に係る配線基板の製造方法を示す図であり、受理工程の説明をするための断面図、
図13(a),
図13(b),
図14(a),及び
図14(b)は本発明の一実施の形態に係る配線基板の製造方法を示す図であり、転写工程の説明をするための断面図、
図15は
図13(b)のXV部の部分拡大図である。
【0057】
本実施形態の印刷工程S10は、
図4に示すように、準備工程S20と、充填工程S30と、受理工程S40と、転写工程S50と、を備えている。本実施形態における「準備工程S20」が本発明における「第1の工程」の一例に相当し、本実施形態における「受理工程S40」が本発明における「第4の工程」の一例に相当し、本実施形態における「転写工程S50」が本発明における「第5の工程」の一例に相当する。
【0058】
準備工程S20では、本実施形態のドクターブレード装置30を準備する。次いで、充填工程S30では、
図7(a)に示すように、まず、所定の待機位置で待機させたドクターブレード装置30を下降(−Z方向に移動)させ(
図6のステップS31)、ブレード本体31の先端部311を凹版90に接近させる。
【0059】
この際、凹版90上の導電性インクMを掻き取る姿勢でドクターブレード装置30を配置すると、ブレード本体31は、凹版90の上面91に対して、所定の角度だけ傾斜した姿勢となる。
【0060】
本実施形態では、上述の姿勢でドクターブレード装置30を凹版90に接近させると、まず、ブレード本体31の前方に位置するインク保持部33が凹版90と接触し、当該インク保持部33に対してドクター圧が印加される。そして、ドクター圧が付勢機構37の付勢力よりも大きくなると、可動部35が支軸36を中心に回転し始める。そして、可動部35が凹版90に押され、ブレード本体31に接近する方向に回転して、当該可動部35の先端部351がブレード本体31の先端部311近傍に接触する。
【0061】
そして、
図7(b)に示すように、特に図示しないディスペンサから凹版90上に導電性インクMを供給する。そして、ドクターブレード装置30を凹版90に当接させた状態で、版テーブル10を図中−X方向に沿って移動させる(
図6のステップS32)。なお、ドクターブレード装置の下降(すなわち、ステップS31)が行われる前に、導電性インクの供給を行ってもよい。
【0062】
本実施形態では、
図8に示すように、可動部35の先端部351をブレード本体31の先端部311近傍に接触させながら、当該先端部351を凹版90上で摺動させる(
図6のステップS33)。ここでは、相互に摺接する先端部351と凹版90との間の隙間を通過した導電性インクMに対して、ドクターブレード装置30によるドクタリングが行われる。具体的には、ブレード本体31の先端部311が凹版90上を摺動し、凹版90の上面91上に塗布された導電性インクMを掻き取ると共に、凹パターン92に当該導電性インクMを充填する。凹版90上でブレード本体31に掻き取られた導電性インクMは、当該ブレード本体31の前方に貯留される。なお、本実施形態における「ステップS33」が本発明における「第2の工程」の一例に相当する。
【0063】
この際、本実施形態では、ブレード本体31の先端部311近傍において、可動部35の先端部351が当該ブレード本体31の前方を覆っているため、貯留される導電性インクMは、可動部35(特に、先端部351)に付着して、当該可動部35の前方に貯留される。
【0064】
そして、
図9(a)に示すように、全ての凹パターン92に対して導電性インクMの充填が完了すると、版テーブル10を停止する(
図6のステップS34)。そして、
図9(b)に示すように、ドクターブレード装置30を上昇(+Z方向に移動)させ、凹版90に対して当該ドクターブレード装置30を離反させる(
図6のステップS35)。なお、本実施形態における「ステップS35」が本発明における「第3の工程」の一例に相当する。
【0065】
ドクターブレード装置30を上昇させると、
図10に示すように、導電性インクMが、当該導電性インクMの自重によってドクターブレード装置30の先端からつらら状に垂れ下がる。本実施形態では、貯留される導電性インクMは、可動部35に付着しているため、当該可動部35の先端部351からつらら状の導電性インクM(以下、「つらら」と称する。)が垂れ下がる。
【0066】
また、ドクターブレード装置30を上昇させることで、インク保持部33を凹版90に押し付けていたドクター圧が開放されるので、付勢機構37の付勢力により可動部35の先端部351がブレード本体31から離反される。結果として、先端部351がブレード本体31から離反するのに合わせて、大半の導電性インクMがブレード本体31から離反される。
【0067】
凹版90の凹パターン92に対する導電性インクMの充填が完了すると、受理工程S40に移行する。受理工程S40では、まず、
図11(a)に示すように、移動機構71により版テーブル10を−X方向に沿って移動させ、転写ローラ60の下方に配置する。そして、転写ローラ60を待機位置から下方に移動させ、当該転写ローラ60を版テーブル10上に載置される凹版90に押し付ける。そして、
図11(b)に示すように、転写ローラ60を右回り(時計回り)に回転させると共に、移動機構71により版テーブル10を−X方向に沿って移動させる。これにより、転写ローラ60が凹版90上を転動して、当該凹版90の凹パターン92に充填されていた導電性インクMが転写ローラ60のブランケット62に受理され、当該ブランケット62上に導体層120に対応した印刷パターンが保持される。そして、
図12に示すように、転写ローラ60を上昇して待機位置に退避させると共に、版テーブル10を転写ローラ60の下方からX方向に沿って移動させ、待機位置に退避させる。本実施形態における「導体層120に対応した印刷パターン」が本発明における「印刷パターン」の一例に相当する。
【0068】
凹版90の凹パターン92に充填された導電性インクMが転写ローラ60に受理されると、転写工程S50に移行する。転写工程S50では、まず、
図13(a)に示すように、移動機構72により基材テーブル20を+X方向に沿って移動させ、転写ローラ60の下方に配置する。そして、
図13(b)に示すように、転写ローラ60を待機位置から下方に移動させ、当該転写ローラ60を基材テーブル20上に載置される基材110に押し付ける。そして、
図14(a)に示すように、転写ローラを右回り(時計回り)に回転させると共に、移動機構72により基材テーブル20を−X方向に沿って移動させる。これにより、転写ローラ60が基材110上を転動して、当該転写ローラ60のブランケット62上に保持されていた導体層120に対応した印刷パターンが基材110に転写される。そして、
図14(b)に示すように、転写ローラ60を上昇させて待機位置に退避させると共に、基材テーブル20を転写ローラ60の下方から−X方向に沿って移動させ、待機位置に退避させる。
【0069】
印刷工程S10が完了すると、乾燥工程S60に移行する。この乾燥工程S60では、乾燥炉85(
図1参照)を用いて印刷パターンを加熱して硬化させることで、基材110上に導体層120が形成される。これにより、配線基板100を得ることができる。
【0070】
なお、本実施形態の印刷装置1は、複数の配線基板100を連続して製造する際に用いられるものであり、転写工程S50への移行(具体的には、版テーブル10の待機位置への待機完了)に合わせて、次の配線基板100を製造するため充填工程S30を再度行う(
図13(a),
図13(b),
図14(a)及び
図14(b)参照)。したがって、ドクターブレード装置30を再度下降させ、当該ドクターブレード装置30を凹版90に接触させる。
【0071】
2回目以降の充填工程では、待機している状態のドクターブレード装置からつららが垂れ下がっている(
図13(a)参照)。従来では、ブレード本体の先端からつららが垂れ下がるため、当該ブレード本体を凹版に再度押し付けると、つららが潰れて凹版上に押し広がり、ブレード本体の後方に導電性インクMが回り込む、いわゆる裏回りが生じる問題があった。
【0072】
これに対して、本実施形態では、大半の導電性インクMは、可動部35に付着しており、当該可動部35の先端部351からつららが垂れ下がっている。また、待機するドクターブレード装置30(すなわち、ドクター圧が印加されていない状態)では、付勢機構37の付勢力により先端部351をブレード本体31から離反して位置させている。これにより、
図15に示すように、ドクターブレード装置30を凹版90に接触させた際、当該先端部351から垂れ下がるつららが潰れて凹版90上に押し広がっても、インク保持部33(具体的には、先端部351)から離反して配置されたブレード本体31の後方に回り込むのを抑制している。結果として導電性インクMの裏回りによる印刷不良の発生が抑制されている。
【0073】
本実施形態のドクターブレード装置30、印刷装置1、導電性インクMの印刷方法、及び配線基板100の製造方法は、以下の効果を奏する。
【0074】
本実施形態では、ブレード本体31に接近する方向へのインク保持部33に対する押圧力(すなわち、ドクター圧)が印加されると、ブレード本体31の先端部311近傍において、当該インク保持部33の先端部351によりブレード本体31の前方を覆い、導電性インクMを当該先端部351に付着させる。そして、押圧力が開放されると、先端部351をブレード本体31から離反する方向に付勢する付勢力により、当該先端部351をブレード本体31から離反させる。
【0075】
この際、先端部351がブレード本体31から離反するのに合わせて、導電性インクMがブレード本体31から離反されるので、当該ブレード本体31の先端部311から導電性インクMがつらら状に垂れ下がるのを抑制することができる。これにより、導電性インクMの裏回りによる印刷不良の発生を抑制できる。
【0076】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0077】
図16は本発明の一実施の形態に係るドクターブレード装置の変形例を示す断面図である。
【0078】
たとえば、
図16に示すように、インク保持部33は、板状の弾性部材39であってもよい。この弾性部材39は、ブレード本体31に対して一定の間隔を介して配置されており、ブレードホルダ32(具体的には、第1のホルダ部材321の先端)に支持、固定される固定端部391と、当該固定端部391と反対側の端部である自由端部392と、を有している。
【0079】
本例では、ブレード本体31に接近する方向への弾性部材39に対する押圧力が印加されると、当該押圧力により弾性部材39が変形して、自由端部392がブレード本体31の先端部311近傍に接触する。この際、弾性部材39に生じた変形に対応する弾性力が発生する。そして、押圧力が開放されると、この弾性力により弾性部材39が元の状態に戻ろうとするため、自由端部392がブレード本体31から離反させる方向に付勢させる。これにより、導電性インクMの裏回りによる印刷不良の発生が抑制されている。
【0080】
本例における「弾性部材39」が本発明における「弾性部材」の一例に相当し、本例における「固定端部391」が本発明における「第1の端部」の一例に相当し、本例における「自由端部392」が本発明における「第2の端部」の一例に相当する。
【0081】
また、上述の例の他に、付勢機構37として、ブレード本体と可動部との間にコイルスプリングを介装して用いてもよい。或いは、付勢機構37として、ブレード本体と可動部のそれぞれに、同極を対向させた磁石を配置して用いてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、転写ローラ60を用いており、凹版90から当該転写ローラ60に導電性インクMを受理し(すなわち、受理工程S40)、導電性インクMを受理した転写ローラ60から基材110に転写している(すなわち、転写工程S50)が、特に上述に限定されない。たとえば、凹版から基材に直接、導電性インクを転写してもよい。
【0083】
また、本実施形態の印刷装置1は、1つのドクターブレード装置30を有していたが、特にこれに限定されず、2つのドクターブレード装置を有していてもよい。この場合、特に図示しないが、一方のドクターブレード装置を、凹版の凹パターンに導電性インクを充填するコーティング用のドクターブレード装置として用いて、他方のドクターブレード装置を、凹版の上面に残余する導電性インクを掻き取る掻き取り用のドクターブレード装置として用いてもよい。このコーティング用のドクターブレード装置及び掻き取り用のドクターブレード装置のいずれについても、本発明を適用することができる。
【解決手段】平板状の凹版90上を摺動するドクターブレード装置30は、ブレード本体31と、ドクターブレード装置30の摺動方向において、ブレード本体31の前方に設けられたインク保持部33と、を備え、インク保持部33は、ブレード本体31に接近する方向へのインク保持部33に対する押圧力が印加されたとき、ブレード本体31の先端部311近傍と接触し、ブレード本体31の先端部311近傍において、ブレード本体31の前方を覆う先端部351と、押圧力が開放されたとき、先端部351をブレード本体31から離反する方向に付勢する付勢力により先端部351をブレード本体31から離反させる付勢機構37と、を有する。