特許第5934845号(P5934845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934845
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】熱交換器の構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/02 20060101AFI20160602BHJP
   F28G 9/00 20060101ALI20160602BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20160602BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20160602BHJP
   F28F 1/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F28D7/02
   F28G9/00 Z
   F28D7/16 Z
   F28F13/12 D
   F28F1/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-540015(P2015-540015)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-500805(P2016-500805A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】CN2013000307
(87)【国際公開番号】WO2014067223
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】201210432100.2
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513016781
【氏名又は名称】鎮海石化建安工程有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100155848
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 東成
(72)【発明者】
【氏名】張賢安
(72)【発明者】
【氏名】王健良
(72)【発明者】
【氏名】胡興苗
(72)【発明者】
【氏名】劉利江
(72)【発明者】
【氏名】呉力俊
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−111897(JP,U)
【文献】 特開2003−014397(JP,A)
【文献】 特開平09−287889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/02−7/16
F28G 1/00−15/10
F28F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封された筐体(1)と、前記筐体(1)内に設置された複数の熱交換チューブ(3)とを備え、前記筐体(1)内には第1チューブプレートと第2チューブプレート(13)とが平行に設置され、各熱交換チューブ(3)の両端が前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレート(13)とにそれぞれ位置決めされた熱交換器の構造において、
各熱交換チューブ(3)は螺旋巻き数が複数巻きの螺旋チューブを構成し、各巻きの螺旋チューブは順に内外に間隔を置いて設置され、各巻きの螺旋チューブ内には更に第1ガスチューブ(4)が同一方向に螺旋状に巻き回されており、前記各第1ガスチューブ(4)における前記筐体(1)の底部を向くチューブ壁には複数の第1気孔(41)が分布しており、前記各第1ガスチューブ(4)の吸気口と排気口はいずれも外部の気体供給源に連通していることを特徴とする熱交換器の構造。
【請求項2】
前記各巻きの螺旋チューブ内には更に第2ガスチューブ(5)が同一方向に螺旋状に巻き回されており、前記各第2ガスチューブ(5)における前記筐体(1)の上部を向くチューブ壁には複数の第2気孔(51)が分布しており、前記各第2ガスチューブ(5)の吸気口と排気口はいずれも外部の気体供給源に連通し、第2ガスチューブ(5)と外部の気体供給源の間にはバルブが設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱交換器の構造。
【請求項3】
前記第2ガスチューブ(5)の開孔率は2〜10%であり、且つ前記第2気孔が均一に分布していることを特徴とする請求項2記載の熱交換器の構造。
【請求項4】
隣接する二巻きの前記螺旋チューブの螺旋方向は互いに逆方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱交換器の構造。
【請求項5】
前記第1気孔(41)は開孔率が2〜10%であり、且つ均一に分布していることを特徴とする請求項4記載の熱交換器の構造。
【請求項6】
前記各巻きの螺旋チューブ内には、同一方向に螺旋状に巻き回された熱交換チューブ(3)が複数備えられていることを特徴とする請求項5記載の熱交換器の構造。
【請求項7】
前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレート(13)の間に位置するとともに、両端がそれぞれ前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレート(13)に支持された芯体(2)を更に備え、前記各巻きの螺旋チューブは当該芯体(2)を中心に螺旋状に巻き回されたことを特徴とする請求項4記載の熱交換器の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業機器分野に関し、具体的には熱交換器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネ、排出削減及び原油の品質劣化を背景に、熱交換器等の冷却機器を通過した原料媒体は一般に汚れており、粘度が高い。汚れた高粘度の媒体は、熱交換器を通過する際に、熱交換器の内壁に堆積するほか、重要なこととして、熱交換器内での媒体の流動性及び流動分布の均一性に影響を及ぼす。もし、熱交換器の筐体内における媒体が気液二相であって、気液二相が2つのチューブ口からそれぞれ熱交換器の筐体内に流入する場合には、高粘度の媒体は媒体二相の均一な混合に必ず影響を及ぼす。混合が不均一であれば、流体に偏流を生じさせるだけでなく、熱交換器の熱交換効率にも影響して熱交換効果が技術的な要求を満たさなくなり、機器の長期的な安定運転を阻むおそれがある。また、機器の熱交換効率を向上させるために、チューブ束等の熱交換部材は緊密に配置されて間隔が狭くなりがちなことから、熱交換器の筐体内における流体の混合が不均一となって、熱交換効率に影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術における現状を鑑みて、安定的に運転可能であるとともにサイクルが長く、且つ熱交換効率が良好で、適用範囲の広い熱交換器の構造を提供することを解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記技術的課題を解決するために以下の技術方案を用いた。即ち、本発明は、密封された筐体と、前記筐体内に設置された複数の熱交換チューブとを備え、前記筐体内には第1チューブプレートと第2チューブプレートとが平行に設置され、各熱交換チューブの両端が前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレートとにそれぞれ位置決めされた熱交換器の構造において、
前記各熱交換チューブは螺旋巻き数が複数巻きの螺旋チューブを構成し、各巻きの螺旋チューブは順に内外に間隔を置いて設置され、各巻きの螺旋チューブ内には更に第1ガスチューブが同一方向に螺旋状に巻き回されており、前記各第1ガスチューブにおける前記筐体の底部を向くチューブ壁には複数の第1気孔が分布しており、前記各第1ガスチューブの吸気口と排気口はいずれも外部の気体供給源に連通していることを特徴としている。
【0005】
その改良として、前記各巻きの螺旋チューブ内には第2ガスチューブが同一方向に螺旋状に巻き回されており、前記各第2ガスチューブにおける前記筐体の上部を向くチューブ壁には複数の第2気孔が分布しており、前記各第2ガスチューブの吸気口と排気口はいずれも外部の気体供給源に連通し、第2ガスチューブと外部の気体供給源の間にはバルブが設けられていてもよい。当該構造は、システムに圧力低下が生じたり、ホットエンドの温度差が明らかに拡大したりした場合に選択的に第2気孔が開放されて、攪動(disturbance)の強化を可能とする。
【0006】
前記第2ガスチューブの開孔率が2〜10%であり、且つ前記第2気孔が均一に分布していることがより好ましい。この場合には、より良好な攪動の効果が得られる。
【0007】
熱交換効果を保証するためには、隣接する二巻きの前記螺旋チューブの螺旋方向は互いに逆方向とされる。
【0008】
上記各方案において、前記第1気孔は開孔率が2〜10%であり、且つ均一に分布していることが好ましい。同様の理由により、この開孔構造においてもより良好な攪動の効果が得られる。
【0009】
要求される熱交換に応じて、前記各巻きの螺旋チューブ内に、同一方向に螺旋状に巻き回された熱交換チューブを複数備えてもよい。いうまでもなく、各巻きの螺旋チューブは1つの熱交換チューブのみを螺旋状に巻き回す構成でもよい。
【0010】
更に、前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレートの間に位置するとともに、両端がそれぞれ前記第1チューブプレートと前記第2チューブプレートとに支持された芯体を備え、前記各巻きの螺旋チューブが当該芯体を中心に螺旋状に巻き回されていてもよい。これにより、各巻きの螺旋チューブが巻き回された後により安定し、且つ組み立てが容易になる。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明は筐体内に第1ガスチューブを設置したため、筐体内の流体を内部から攪動できる。そして、第1ガスチューブが螺旋状チューブ束そのものの内部に配置されたため、覆われる面積が大きく、プロセスガスが各気孔内から三次元の立体の網目状に吐出し、筐体の流体を全方位に攪動する。これより、流体媒体が汚れていたり高粘度であったり、更にはチューブ間隔及び螺旋の巻き間隔が緊密であったとしても、流体媒体を継続的に均一に混合でき、筐体内における流体の堆積を効果的に回避し、熱伝導効率を高め、熱交換効果を改善する。特に、筐体内の熱交換媒体が二相混合媒体の場合には、熱交換媒体を更に均一に混合する作用が奏されるため、偏流の発生を回避し、機器における長期的な安定運転を効果的に保証する。
【0012】
また、本発明が提供する2つのガスチューブは、設備運休のメンテナンス時にパージチューブとしても使用できる。そして、良好なパージ効果を奏するので、機器詰まりによる効果低下のおそれを効果的に低減させる。また、機器底部の不純物堆積空間及び作業員用孔と合わせて用いることで、従来のパージ構造では除去不可能であった不純物を除去できる。特に、取外しできない熱交換器において、内部の洗浄、パージ及びメンテナンスに適している。
【0013】
また、熱交換チューブは、螺旋状の内外配置構造を採用しているため、いろいろな粘度の原料を十分且つ均一に混合できる。そして、良好な混合効果を奏するので、熱交換効率をより一層向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例における組み立て構造を示す平面模式図である。
図2】本発明の実施例における第1(第2)ガスチューブの平面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と実施例を組み合わせて本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施例では縦型熱交換器を例に説明するが、本発明の技術は横型熱交換器にも同様に適用できる。当該熱交換器の構造は密封構造の筐体1を備える。
【0017】
筐体1は、直立する筒体11と、筒体11の両端に設けられた上蓋(図示しない)及び下蓋12とを備えてなる。筐体1における筒体11の両端には、互いに平行な第1チューブプレート(図示しない)と第2チューブプレート13とが更に設けられている。筐体1には、チューブ入口(図示しない)、チューブ出口14、筐体気相入口15、筐体液相入口16、筐体出口(図示しない)及びドレン排出口17が設けられており、当該ドレン排出口17は、設備運休のメンテナンス時に、メンテナンス員用孔として用いることができる。筐体1には気体入口18及び気体出口(図示しない)が更に設けられている。第1チューブプレート及び第2チューブプレート13には、後述する熱交換チューブ3の両端が挿通されるチューブ孔が複数設けられている。
【0018】
芯体2が第1チューブプレートと第2チューブプレート13の間に位置し、芯体2の両端はそれぞれ第1チューブプレートと第2チューブプレート13とによって支持される。
【0019】
熱交換チューブ3は複数本あり、これら熱交換チューブ3は複数組に分けられる。各組は、熱交換チューブ3を1本備えてもよいし複数本備えてもよく、必要に応じて設定できる。熱交換チューブ3は各組ごとに芯体2を中心として螺旋状に巻き回され、順に内外に間隔を置いて設置された螺旋巻き数が複数巻きの螺旋チューブを形成する。本実施例では、内外に隣接する二巻きの螺旋チューブの螺旋方向は互いに逆方向である。これら熱交換チューブ3の入口端と出口端はそれぞれ第1チューブプレート及び第2チューブプレート13の対応するチューブ孔を貫通して、チューブ入口及びチューブ出口14に連通している。螺旋チューブの巻き数は、熱交換器の規模や実際の必要性に応じて設定すればよく、例えば2巻き、5巻き乃至は更に多数回巻きとすることができる。
【0020】
第1ガスチューブ4は筐体内をエアパージするために用いられ、ホットエンドの温度差に影響しないことを前提に機器運転時には常に開いている。これにより、筐体内の流体が攪動されて、筐体内を通過する物の流れに攪動流(turbulent flow)を生じさせ、筐体内における流体の混合状況を改善し、筐体1内での流体堆積を防止する。第1ガスチューブ4は芯体2を中心に螺旋状に巻き回されており、複数本設けてもよいが、その本数は螺旋チューブの巻き数に等しい。即ち、螺旋チューブの各巻きごとに第1ガスチューブ4が1本設けられており、第1ガスチューブ4と、当該第1ガスチューブ4が位置する巻きの熱交換チューブ3との螺旋方向は同じである。第1ガスチューブ4における筐体1の底部を向くチューブ壁には複数の第1気孔41が均一に分布している。図2には第1気孔41の一部のみを示しているが、本実施例では、各第1ガスチューブ4における第1気孔41の開孔率は7%である。開孔率は具体的状況に合わせて設定すればよく、例えば、チューブ内の流体成分、組成、熱交換器の規模等の状況に応じて2〜10%の間で具体的に設定される。第1ガスチューブ4の吸気口は、第2チューブプレート13を貫通して筐体1の気体入口18に連通しており、第1ガスチューブ4の排気口は、第1チューブプレートを貫通して筐体1の気体出口に連通している。気体入口18と気体出口はいずれも外部の気体供給源に連通しており、本実施例ではプロセスガスと連通している。
【0021】
第2ガスチューブ5はチューブ内をエアパージするために用いられ、主としてシステムの圧力低下が増大した場合や、ホットエンドの温度差が明らかに拡大した場合に選択的に開放され、第1ガスチューブ4内から吐出される気流と協働して攪動を強化させる効果をもたらす。第2ガスチューブ5もまた芯体2を中心に螺旋状に巻き回されており、複数本設けてもよいが、その本数は螺旋チューブの巻き数に等しい。即ち、螺旋チューブの各巻きごとに第2ガスチューブ5が1本設けられており、第2ガスチューブ5と、当該第2ガスチューブ5が位置する巻きの熱交換チューブ3との螺旋方向は同じである。第2ガスチューブ5における筐体1の上部を向くチューブ壁には複数の第2気孔51が均一に分布している。本実施例では、各第2ガスチューブ5における第2気孔51の開孔率は7%である。開孔率は具体的状況に合わせて設定すればよく、例えば、チューブ内の流体の組成、熱交換器の規模など具体的状況に応じて2〜10%の間で具体的に設定される。第2ガスチューブ5の吸気口は、第2チューブプレート13を貫通して筐体1の気体入口18に連通しており、第2ガスチューブ5の排気口は、第1チューブプレートを貫通して筐体1の気体出口に連通している。また、第2ガスチューブ5における気体の流通と遮断を制御するバルブ(図示しない)が設けられており、選択的に開放される。
【0022】
当該熱交換器の動作原理は、次の通りである。
【0023】
熱交換器が正常に動作している場合には、第1ガスチューブ4は常に開いており、プロセスガスが各第1気孔41から吐出し、筐体内の流体を三次元の全方位に攪動して筐体内の流体を十分均一に混合するとともに、汚物が各熱交換チューブ3の表面や筐体1の内壁に堆積する可能性を低下させる。これにより、熱交換効率を効果的に高めて、機器の長期的な安定運転を保証する。
【0024】
システムの圧力低下が増大したり、ホットエンドの温度差が明らかに拡大したりした場合には、第2ガスチューブ5のバルブが開放制御される。これにより、プロセスガスを第1気孔41と第2気孔51から同時に吐出して、筐体内の流体の攪動を強化し、システムの圧力低下を安定化させるとともに、ホットエンドの温度差のバランスをとる。
【0025】
機器の運転停止状態で筐体内をパージする必要がある場合には、プロセスガス又はパージ用気体を第1気孔41及び第2気孔51から直接吹き込むことで機器をパージする。なお、従来技術におけるパージチューブは、一般に熱交換チューブ3の底部に設けられており、底部のパージチューブに近接した領域ではパージ効果が良好であるが、パージチューブから離間した底部では効果に劣っており、特に、熱交換チューブ3の外壁に堆積した汚物は除去できない。本願の技術方案はこのような課題を完全に回避しており、パージ面積が大きいだけでなく、パージ効果も良好である。また、死角がないため、熱交換チューブ3の外側に汚物が堆積して詰まることによる熱交換チューブ3の効果喪失のおそれを大幅に低減している。また、メンテナンス員用孔と合わせることで、通常のパージ構造では除去不可能な不純物を除去できる。
【0026】
機器の運転停止状態で機器を化学洗浄したい場合には、筐体1の気体入口18を洗浄液パイプに接続し、洗浄液を第1気孔41と第2気孔51から吐出させればよい。これにより、洗浄液の流速が加速され、化学洗浄効果が向上する。
図1
図2