特許第5934846号(P5934846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934846
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】球面復号化検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20160602BHJP
【FI】
   H04J15/00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-548151(P2015-548151)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2016-503986(P2016-503986A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】CN2013079929
(87)【国際公開番号】WO2013182167
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】201210566917.9
(32)【優先日】2012年12月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509024525
【氏名又は名称】ゼットティーイー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ペンペン
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2458747(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/005605(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/081411(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101594202(CN,A)
【文献】 鍔木 拓磨、落合 秀樹,Sphere Decodingを用いた符号化MIMO空間多重における尤度生成に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム,2012年 6月14日,112(89),pp.13-18
【文献】 Babak Hassibi and Haris Vikalo,On the sphere-decoding algorithm I. Expected complexity,IEEE Transactions on Signal Processing,2005年 7月18日,Volume:53, Issue:8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得し、前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出し、前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定することと、
深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探し、前記検索パスの通過するノードはいずれも初期二乗半径を半径とする球内にあることと、
1つの検索パスを探し出した後、且つ探し出した検索パスの部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さい場合、前記二乗半径を更新するとともに、前記受信信号を球中心とし、更新した二乗半径が半径である多次元球内において、検索パスを探せないまで、検索パスを改めて探し、最新に記憶された検索パスに対応する候補信号点が最良の信号推定点であることを確定することと、を含む球面復号化検出方法。
【請求項2】
受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得するステップは、
前記受信信号を半定値緩和の検出器で処理し、前記受信信号の近似推定値Xpreを取得することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出するステップは、前記
であり、そのうち、
であり、
Yが前記受信信号であり、
がXpreの硬判定であり、
Qがユニタリ行列であり、Rが上三角行列であることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定するステップは、
星座空間の大きさlの値が前記受信信号の現在のS/N比の増大に従って増加することを確定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探すステップは、
現在ノードのl個のサブノードを生成するとともに、ノードリストを計算し、前記ノードリストにおけるノードの優先レベルの降順に従って、第k層のノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算することと、
ノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))が
よりも大きいかどうかを判断し、
前記ノードのd(x(k,t))が
よりも大きいと、該ノードを除去し、k+1層に戻し、検索されたサブノードを再び拡張し、
前記ノードのd(x(k,t))が
以下であると、kが1に等しくない場合、k−1層に進入して検索し、k=1である場合、1つの検索パスを探し出し、
がベクトルの1つの成分であることと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ノードリストを計算することは、
受信信号を円心とし、D2が二乗半径である多次元球内にある星座ノードを探し、部分的ユークリッド距離の小から大順序に従って多次元球内の星座ノードをソートし、多次元球内の星座ノードに対応するノードリストを取得することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得するように設定される前処理ユニットと、
前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出するように設定される二乗半径計算ユニットと、
前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定するように設定される星座空間大きさ確定ユニットと、
深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探し、前記検索パスの通過するノードはいずれも初期二乗半径を半径とする球内にあり、1つの検索パスを探し出した後、且つ探し出した検索パスの部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さい場合、前記二乗半径を更新するとともに、前記受信信号を球中心とし、更新した超球二乗半径が半径である多次元球内に、検索パスを探せないまで、改めて検索パスを探し、最新に記憶された検索パスに対応する候補信号点が最良の信号推定点であることを確定するように設定されるパス検索ユニットと、を備える球面復号化検出装置。
【請求項8】
前記前処理ユニットが受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得することとは、前記受信信号を半定値緩和の検出器で処理し、前記受信信号の近似推定値Xpreを取得することである請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記星座空間大きさ確定ユニットが前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定することとは、星座空間の大きさlの値が前記受信信号の現在のS/N比の増大に従って増加することを確定することである請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記二乗半径計算ユニットが前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出することとは、前記
を計算し、そのうち、
であり、
Yが前記受信信号であり、
がXpreの硬判定であり、
Qがユニタリ行列であり、
Rが上三角行列であることであり、
前記パス検索ユニットが深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探すこととは、現在ノードのl個のサブノードを生成するとともに、ノードリストを計算し、前記ノードリストにおけるノードの優先レベルの降順に従って、第k層のノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算し、ノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))が
よりも大きいかどうかを判断し、
前記ノードのd(x(k,t))が
よりも大きいと、該ノードを除去し、k+1層に戻し、検索されたサブノードを再び拡張し、
前記ノードのd(x(k,t))が
以下であると、kが1に等しくない場合、k−1層に進入して検索し、k=1である場合、1つの検索パスを探し出し、
がベクトルの1つの成分であることである請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信分野に関し、特に球面復号化検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量の研究者が無線MIMO通信システムでの信号検出方法について広範かつ徹底的な研究を行っている。これらの信号検出方法は、最尤検出(Maximum Likelihood Detection、MLD)、ゼロフォーシング(Zero Forcing、ZF)、最小平均二乗誤差(Minimum Mean Square Error、MMSE)検出、半定値緩和検出(Semi-Definite Relaxation、SDR)及び球面復号化(Sphere Decoding、SD)検出等を含む。
【0003】
MLDは最良の性能を有するが、複雑さがインデックス(指数)レベルに達し、ハードウェアでほぼ実現することができない。ZFとMMSE検出については、計算が簡単であるが、ビット誤り性能が非常に悪く、半定値緩和検出については、MLDのベース上に条件緩和処理を与えるため、このような性能には多くの損失がある。SD検出は、MLDに迫るビット誤り性能を有するとともに複雑さは適当で、比較的に理想的な信号検出方法である。
【0004】
標準的な球面復号化検出方法は、その複雑さが依然として高く、ハードウェア設計は実現し難い。SD検出をハードウェアで好ましく実現するために、幾つかの改良版のSD検出が提案されている。Fincke-Pohst SD(FP-SD)は効果的なタクティクスであり、該アルゴリズムは、所定初期半径の超球内にすべての星座格子点を列挙することにより最適信号点を探索する。該アルゴリズムが一回のみの縮小検索空間を行うので、その初期半径Dの選択は比較的敏感である。この欠点について、また、Schnorr-EuchnerアルゴリズムをSDに応用してSE-SDと称することがあり、且つ深さ優先の順序を採用して探索し、複雑さを低下させる面で良好な効果を取得する。
【0005】
中国特許出願公開明細書CN200910084580.6は、深さ優先探索に基づく球面復号化検出方法を開示し、アルゴリズムの複雑さに対して良好な制御を有するが、ツリー検索を制限するノードの最大数がMであるので、信号の性能に対して一定の損失があることを引き起こす。
【0006】
中国特許出願公開明細書CN201010515931.7は、QR前処理の深さ優先に基づくSD検出アルゴリズムを開示し、該方法は高S/N比領域と低次変調のMIMOを採用する信号検出のみに適合し、低S/N比領域の信号検出に適用しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は球面復号化検出方法及び装置を提供し、ビット誤り性能を低減しないうえに、計算の複雑さを低下させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術問題を解決するために、本発明の実施例に係る球面復号化検出方法は、
受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得し、前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出し、前記受信信号の現在のS/N比(信号対雑音比)により星座空間(constellation space)の大きさlを確定することと、
深さ優先と球面制約規則(sphere constraint rule)に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探し、前記検索パスの通過するノードはいずれも初期二乗半径を半径とする球内にあることと、
1つの検索パスを探し出した後、且つ探し出した検索パスの部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さい場合、前記二乗半径を更新するとともに、前記受信信号を球中心とし、更新した二乗半径が半径である多次元球内には、検索パスを探せないまで、検索パスを改めて探し、最新に記憶された検索パスの対応する候補信号点が最良の信号推定点であることを確定することと、を含む。
【0009】
選択的に、受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得するステップは、
前記受信信号を半定値緩和の検出器で処理し、前記受信信号の近似推定値Xpreを取得することを含む。
【0010】
選択的に、前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出するステップは、前記
であり、そのうち、
であり、
Yが前記受信信号であり、
がXpreの硬判定であり、
Qがユニタリ行列であり、
Rが上三角行列であることを含む。
【0011】
選択的に、前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定するステップは、
星座空間の大きさlの値が前記受信信号の現在のS/N比の増大に従って増加することを確定することを含む。
【0012】
選択的に、深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探すステップは、
現在ノードのl個のサブノードを生成するとともに、ノードリストを計算し、前記ノードリストにおけるノードの優先レベルの降順に従って、第k層のノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算することと、
ノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))が
よりも大きいかどうかを判断し、
前記ノードのd(x(k,t))が
よりも大きいと、該ノードを除去し、k+1層に戻し、検索されたサブノードを再び拡張し、
前記ノードのd(x(k,t))が
以下であると、kが1に等しくない場合、k−1層に進入して検索し、k=1である場合、1つの検索パスを探し出し、
がベクトルの1つの成分であることと、を含む。
【0013】
選択的に、ノードリストを計算することは、
受信信号を円心とし、D2が二乗半径である多次元球内にある星座ノードを探し、部分的ユークリッド距離の小から大の順序に従って多次元球内の星座ノードをソートし、多次元球内の星座ノードの対応するノードリストを取得することを含む。
【0014】
選択的に、球面復号化検出装置であって、前処理ユニット、二乗半径計算ユニット、星座空間大きさ確定ユニット及びパス検索ユニットを備え、
前記前処理ユニットは、受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得するように設定され、
前記二乗半径計算ユニットは、前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出するように設定され、
前記星座空間大きさ確定ユニットは、前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定するように設定され、
前記パス検索ユニットは、深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探し、前記検索パスの通過するノードはいずれも初期二乗半径を半径とする球内にあり、1つの検索パスを探し出した後、且つ探し出した検索パスの部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さい場合、前記二乗半径を更新するとともに、前記受信信号を球中心とし、更新した超球二乗半径が半径である多次元球内に、検索パスを探せないまで、改めて検索パスを探し、最新に記憶された検索パスの対応する候補信号点が最良の信号推定点であることを確定するように設定される。
【0015】
選択的に、前記前処理ユニットが受信信号を前処理し、前記受信信号の信号近似推定値Xpreを取得することとは、前記受信信号を半定値緩和の検出器で処理し、前記受信信号の近似推定値Xpreを取得することである。
【0016】
選択的に、前記星座空間大きさ確定ユニットが前記受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定することとは、星座空間の大きさlの値が前記受信信号の現在のS/N比の増大に従って増加することを確定することである。
【0017】
選択的に、前記二乗半径計算ユニットが前記Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出することとは、前記
を計算し、そのうち、
であり、
Yが前記受信信号であり、
はXpreの硬判定であり、
Qがユニタリ行列であり、
Rが上三角行列であることである。
【0018】
前記パス検索ユニットが深さ優先と球面制約規則に従って、前記星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探すこととは、現在ノードのl個のサブノードを生成するとともに、ノードリストを計算し、前記ノードリストにおけるノードの優先レベルの降順に従って、第k層のノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算し、ノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))が
よりも大きいかどうかを判断し、
前記ノードのd(x(k,t))が
よりも大きいと、該ノードを除去し、k+1層に戻し、検索されたサブノードを再び拡張し、
前記ノードのd(x(k,t))が
以下であると、kが1に等しくない場合、k−1層に進入して検索し、k=1である場合、1つの検索パスを探し出し、
はベクトルの1つの成分であることである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の実施例は、
球面復号化検出に基づくS/N比適応のMIMO信号検出方法であり、半定値緩和の検出器により前処理を行い、1つの緊密な初期二乗半径及びツリー検索のトラバーサル順序を導出し、小さい初期二乗半径はツリー検索にアクセスされるノードの数を減少することができ、プリ検出信号に最も近い星座格子点を採用して検索を始め、それにより、ツリー検索から最適信号格子点を探し出す時間を高速化し、
さらに重要なことは、S/N比の異なりにより検索星座格子点の数を調整し、信号品質(ビット誤り性能)の不変を保持する場合には、ツリー検索にアクセスされるノードの数を効果的に減少したので、本発明の実施例はシステムの演算時間を減少し、システムのリアルタイム処理能力を向上させる特徴を有する同時に、端末装置の電力消費を低下させ、端末の待機時間を延長する利点を有する、という有益な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施例のシステムモデルである。
図2図2は、本発明の実施例の球面復号化検出方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施例の実現において検索パスを探すフローチャートである。
図4図4は、本願の実現方法での異なるS/N比で星座空間大きさの選択方法図である。
図5図5は、本発明の実施例の実現方法のビット誤り性能の解析チャートである。
図6図6は、本発明の実施例の実現方法の複雑さシミュレーション解析チャートである。
図7図7は、本発明の実施例の球面復号化検出装置のアーキテクチャ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に合わせて本発明の実施例を詳しく説明する。なお、矛盾が生じない場合、本出願における実施例及び実施例での特徴を互いに任意に組み合わせることができる。
【0022】
図1に示すように、以下、4送信4受信のMIMO無線通信システムを例として、本文方法の原理を説明し、
4送信4受信のMIMO無線通信システムのチャンネルモデルは
であり、
Yが4×1の受信信号の多重列ベクトルであり、Xが4×1の送信信号の多重列ベクトルであり、Hが4×4の独立かつ同一に分布されたレイリーフェージング通信路の伝送行列であり、Hの要素
であり、
CN(0,1)は平均値が0で分散が1である複素ガウス分布を表し、
が4×1理想的な付加的複素ガウスホワイトノイズ列方向
である。
【0023】
数値を計算しやすくするために、上記コンプレックスチャンネルモデルを、
という実数チャンネルモデルに変換し、
球面復号化検出のツリー検索過程において、モデルは
で表すことができ、
計算しやすくするために、チャンネルマトリックスHをQR分解し、即ちH=QRであり、Qがユニタリ行列であり、Rが上三角行列である場合、上式は、
に相当し、だたし、
であり、
はマトリックスのノームを表し、
をマトリックスに表す形式は、
である。
【0024】
上記モデルから分かるように、SD検出の本質は1つのツリー検索の過程であり、即ち一つのツリーに星座格子点の検索を実行し、1つの最短の検索パスを探し出し、その対応する値からなるベクトルは探索しようとする信号推定値である。
【0025】
以下、図面に合わせて本発明の実施例を詳しく説明する。
【0026】
従来の検出方法の複雑さが高く、特に低S/N比領域においてSD検出アルゴリズムの複雑さが非常に大きく、ハードウェア設計は実現し難い。又はハードウェアに設計することができても、コストが大きく、リアルタイム性能が悪いか又は電力消費が大きいので、大規模な商用からも遠い。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る球面復号化検出方法は、以下のステップを含む。
【0028】
ステップ201:端末装置は受信信号Yを1つの次善の半定値緩和の検出器で前処理し、1つの信号近似推定値Xpreを取得する。
【0029】
半定値緩和の検出器の実現方法は、
半定値緩和の検出実質はMLDのうえに制約条件を対応的に緩和し、それを多項式時間内に半正定値計画問題を解決できることに変換することであり、その本質は1つの凸最適化の問題であることである。
【0030】
MLDは、
と記述することができ、
2ノームの定義により、
であり、
そのうち、
であり、
はマトリックスの跡を表す。
このように、MLDは
に変換することができ、
そのうち、
であり、Eはすべて1である列ベクトルを表す。上式での(b)式を緩和処理することにより、MLD検出問題が凸最適化問題に変換されることができ、即ち、
であり、
そのうち、
は1つの対称且つ正定であるマトリックスを表す。
【0031】
MLDは半定値緩和により最終に凸最適化問題になるので、内点法を採用して解を求めることができ、且つ多項式の複雑さを有する。
【0032】
半定値緩和検出器を選択して前検出する優位性は、
前検出によって、その後設定された初期二乗半径の多次元球内に最適信号点を検索することが失敗しないことを確保することができることである。
【0033】
半定値緩和前検出は従来のZF検出及びMMSE検出よりもより良いビット誤り性能を有し、特に低S/N比領域で、半定値緩和前検出がZF、MMSE前検出よりもより良いビット誤り性能を有し、このようにより小さい半径を導出することができ、それにより早めに必要としない信号点を事前に排除し、探索しようとする最適信号点を早めに探し出す。
【0034】
低S/N比であっても、高S/N比であっても、低次変調を採用しても高次変調を採用しても、半定値緩和検出の計算の複雑さは一定的なものである。ZF、MMSEは低次変調と高S/N比で複雑さが低く、高次変調又は低S/N比の環境にあると、複雑さを急速に向上させる。
【0035】
ステップ202:端末装置はチャンネルマトリックスHをQR分解し(計算しやすくするために)、ステップ201における信号近似推定値XpreによりSDで検出した初期二乗半径D2を導出し、
2の解を求める方法は
であり、
そのうち、
であり、
がXpreの硬判定である。
【0036】
ステップ203:端末装置は受信信号Yの現在のS/N比の大きさにより有限星座空間大きさlを確定し、
l個の星座格子点の分布は図4に示す。lの可能な値が、9、13、21、37、55、64である。
【0037】
本実施形態において、異なるS/N比でlの値は以下の表に従って対応する。
【0038】
異なるS/N比で、検索星座格子点の大きさを制限する優位性は、従来の球面検出方法のビット誤り性能と他の次善検出は低S/N比で差が小さく、言い換えると、低S/N比領域では、本当に役に立つ信号点が少ないので、星座空間の大きさを制限することを考えることができ、S/N比の異なりにより星座空間の大きさを調整(減少)し、このように、ビット誤り性能を保持する条件で対応するS/N比範囲のアルゴリズム複雑さを大幅に低減することができることである。
【0039】
ステップ204:端末装置はツリーのルートノード(k=8)からリーフノード(k=1)まで深さ優先の順序と球面制約規則に従って、大きさがlの星座空間において条件を満たす検索パスを順次探す。
【0040】
深さ優先とは、ツリー検索を実行する過程において、ツリーの各層から1つの条件を満たすノードを探し出した後、本層からすべての条件を満たすノードを続いて探し出すことなく、次の層に進入して検索することである。
【0041】
球面制約とは、球外にあるツリーのノードを除去することである。
【0042】
条件を満たす検索パスとは、ツリーのルートノードからツリーのリーフノードまで、通過するすべてのノードが必ず球内の検索パスにあることである。
【0043】
ツリーの各層でのノードの検索順序は、ノードリストの順序に従って検索することである。
【0044】
ノードリストの計算方法は、まず、受信信号を円心とし、D2が二乗半径の多次元球内にある星座ノードを探し、続いて部分的ユークリッド距離に従って小から大の順序でソートし、優先検索された星座ノードのノードリストを取得することができることである。
【0045】
第k層の第t個のノードのユークリッド距離δ(x(k))及び部分的ユークリッド距離和の計算方法は、
であり、そのうち、
である。
【0046】
図3に示すように、ノードリストに従って最適パスを確定する方法は、
ステップ301:端末装置は現在ノードのl個のサブノードを生成するとともに、l個のサブノードの対応するノードリストを計算する、
ステップ302:端末装置は第k層のノード(ノードリストから取り、優先レベルの高いものから開始)の部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算する、
ステップ303:端末装置は
であるかどうかを判断し、
であると、ステップ304を実行し、
d(x(k,t))が
以下であると、ステップ305を実行し、
はベクトルの1つの成分である、
ステップ304:端末装置は該ノードを除去し、上の層(k+1)に戻し、再び現在のノード検索のサブノードを拡張し、ステップ301を実行する、
ステップ305:端末装置はkが1に等しいかどうかを判断し、kが1に等しくないと、ステップ306を実行し、k=1であると、ステップ307を実行する、
ステップ306:次の層(k−1)に進入して検索する、
ステップ307:k=1であるまで、即ちツリー検索がリーフノードに到達するまで、端末装置は上記ステップを実行し、この際、1つの完全な検索パスを探し出し、該パスの対応する値は1つの候補信号点X=(x1,x2,…,x8)である、
を含む。
【0047】
ステップ205:端末装置は1つの完全な検索パスを探し出すと、部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さいかどうかを判断し、部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さいと、ステップ206を実行し、部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径の以上であると、ステップ207を実行する。
【0048】
ステップ206:端末装置は二乗半径を更新し、検索パスの部分的ユークリッド距離和を更新した二乗半径とし、受信信号を球中心とし、更新した二乗半径の多次元球内に、ステップ204の方法に従って、最近回の更新半径から1つの完全な検索パスを探し出すことができず、即ちツリーのリーフノードを探し出すことができないまで、続いて最良のツリー検索パスを検索し、ステップ207を実行する。
【0049】
ステップ207:端末装置は最新に記憶された検索パスの対応する候補信号点を最良の信号推定点とし、これで検索は終わる。
【0050】
以下、シミュレーションにより本実施形態のSD検出の効果を検証する。
【0051】
シミュレーション環境:単一ユーザで、4送信4受信のMIMO通信システムで、チャンネル推定が理想的なチャンネル推定であり、受信端ではチャンネルの状態情報が既知のものであり、発信端は信号をチャンネル符号化せず、64QAMを採用して変調し、チャンネルが無相関フラットレイリー(Rayleigh)フェージング通信路である。
【0052】
シミュレーション内容とシミュレーション結果:
本実施形態のSD-PRO信号検出方法は、従来のSD検出及び従来の検出とともにビット誤り性能解析及び平均複雑さ解析を行う。
【0053】
図5から分かるように、本実施形態は、基本的に従来のSD検出のビット誤り性能を保持し、即ち性能損失が小さくて無視することができる。
【0054】
図6から分かるように、本実施形態のSD検出方法は、より小さい計算複雑さを有し、特に低S/N比領域において、計算複雑さの低減幅が大きい。
【0055】
図7に示すように、本実施形態は、球面復号化検出装置を更に提供し、前処理ユニット、二乗半径計算ユニット、星座空間大きさ確定ユニット及びパス検索ユニットを含み、
前処理ユニットは、受信信号を前処理し、受信信号の信号近似推定値Xpreを取得するように設定され、
二乗半径計算ユニットは、Xpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出するように設定され、
星座空間大きさ確定ユニットは、受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定するように設定され、
パス検索ユニットは、深さ優先と球面制約規則に従って、星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探し、検索パスの通過するノードはいずれも初期二乗半径を半径とする球内にあり、1つの検索パスを探し出した後、探し出した検索パスの部分的ユークリッド距離和が現在の二乗半径よりも小さい場合、二乗半径を更新し、受信信号を球中心とし、更新した超球二乗半径が半径である多次元球内に、検索パスを探せないまで、改めて検索パスを探し、最新に記憶された検索パスの対応する候補信号点が最良の信号推定点であることを確定するように設定される。
【0056】
前処理ユニットが受信信号を前処理し、受信信号の信号近似推定値Xpreを取得することは、受信信号を半定値緩和の検出器で処理し、受信信号の近似推定値Xpreを取得することである。
【0057】
星座空間大きさ確定ユニットが受信信号の現在のS/N比により星座空間の大きさlを確定することは、星座空間の大きさlの値が受信信号の現在のS/N比の増大に従って増加することを確定することである。
【0058】
二乗半径計算ユニットがXpreにより球面復号化検出の初期二乗半径D2を導出することは、
を計算し、そのうち、
であり、
Yが受信信号で、
がXpreの硬判定であり、
Qがユニタリ行列であり、
Rが上三角行列である
ことである。
【0059】
パス検索ユニットが深さ優先と球面制約規則に従って、星座空間の大きさlと初期二乗半径D2により検索パスを探すことは、現在ノードのl個のサブノードを生成し、ノードリストを計算し、ノードリストにおけるノードの優先レベルの降順に従って、第k層のノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))を計算し、
ノードの部分的ユークリッド距離和d(x(k,t))が
よりも大きいかどうかを判断し、
ノードのd(x(k,t))が
よりも大きいと、該ノードを除去し、k+1層に戻し、検索されたサブノードを再び拡張し、
ノードのd(x(k,t))が
以下であると、kが1に等しくない場合、k−1層に進入して検索し、k=1である場合、1つの検索パスを探し出し、
はベクトルの1つの成分であることである。
【0060】
当業者は、上記方法における全部又は一部のステップは、プログラムが関連のハードウェアを指令することにより完成することができ、前記プログラムはコンピュータ読取可能記憶媒体、例えば読み出し専用メモリ、ディスク又はCDなどに記憶することができることを理解することができる。選択的に、上記実施例の全部又は一部のステップは、1つ又は複数の集積回路を採用して達成することもできる。対応的には、上記実施例における各モジュール/ユニットはハードウェアの形式で達成してよく、ソフトウェア機能モジュールの形式で達成してもよい。本発明の実施例はいずれの特定形式のハードウェアとソフトウェアの組み合わせに限定されたものではない。
【0061】
以上の実施例はただ本願の技術的解決手段を説明するためのものであり,それを限定するためのものではない。ただ、好ましい実施例を参照して本願を詳しく説明したものである。当業者は、本願の技術的解決手段に変更又は等価切り替えを行うことができ、本願の技術的解決手段の趣旨と範囲を逸脱しない限り、いずれも本願の請求の範囲に含まれるべきであることを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の実施例は球面復号化検出に基づくS/N比適応のMIMO信号検出方法であり、半定値緩和の検出器により前処理を行い、1つの緊密な初期二乗半径及びツリー検索のトラバーサル順序を導出し、小さい初期二乗半径はツリー検索にアクセスされるノードの数を減少することができ、プリ検出信号に最も近い星座格子点を採用して検索を始め、それにより、ツリー検索から最適信号格子点を探し出す時間を高速化し、さらに重要なことは、S/N比の異なりにより検索星座格子点の数を調整し、信号品質(ビット誤り性能)の不変を保持する場合には、ツリー検索にアクセスされるノードの数を効果的に減少したので、本発明の実施例はシステムの演算時間を減少し、システムのリアルタイム処理能力を向上させる特徴を有する同時に、端末装置の電力消費を低下させ、端末の待機時間を延長する利点を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7