特許第5934852号(P5934852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934852界面活性剤、その製造方法及びこれを含有してなる水系コーティング剤組成物
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  • 特許5934852-界面活性剤、その製造方法及びこれを含有してなる水系コーティング剤組成物 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934852
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】界面活性剤、その製造方法及びこれを含有してなる水系コーティング剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20160602BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160602BHJP
   B01F 17/54 20060101ALI20160602BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20160602BHJP
   C08G 77/46 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   C09K3/00 Z
   C09D201/00
   C09D5/02
   C09D7/12
   B01F17/54
   !C07F7/18 Y
   !C08G77/46
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-29852(P2012-29852)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-166830(P2013-166830A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】五藤 芳和
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297387(JP,A)
【文献】 特開2008−248113(JP,A)
【文献】 特開2002−138023(JP,A)
【文献】 特開平10−330489(JP,A)
【文献】 特開2007−119653(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/027073(WO,A1)
【文献】 特開2009−262080(JP,A)
【文献】 特開平08−100079(JP,A)
【文献】 特開平10−152560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B01F 17/54
C09D 7/12
C08G 77/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有変性シリコーン(S)と、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)とを化学反応させて得られたシリコーン変性体(Y)からなり、
活性水素含有変性シリコーン(S)が、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S1)、アミノ基含有アミノ変性シリコーン(S2)、カルボキシ基含有カルボキシ変性シリコーン(S3)、水酸基含有カルビノール変性シリコーン(S4)、フェノール性水酸基含有フェノール変性シリコーン(S5)及びメルカプト基含有メルカプト変性シリコーン(S6)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする界面活性剤。

{E(-OA)-Q-{(AO-)H}t−p (1)

一般式(1)において、Eはグリシジル(1,2−エポキシプロピル)基、Hは水素原子、Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OA及びAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜40の整数、tは2〜4の整数、pは1〜3の整数を表し(但し、t≧p)、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)中のオキシアルキレン基(OA及びAO)の総数は10〜80の整数である。
【請求項2】
活性水素含有変性シリコーン(S)が、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S1)である請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
Qが蔗糖の3個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基である請求項1又は2に記載の界面活性剤。
【請求項4】
一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)の使用量が活性水素含有変性シリコーン(S)の重量に基づいて10〜200重量%である請求項1〜のいずれかに記載の界面活性剤。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載された界面活性剤を製造する方法であって、
反応溶媒及び反応触媒なしで、活性水素含有変性シリコーン(S)と、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)とを化学反応させてシリコーン変性体(Y)を得る工程を含むことを特徴とする界面活性剤の製造方法。
【請求項6】
水系コーティング剤及び請求項1〜のいずれかに記載された界面活性剤からなり、この界面活性剤を水系コーティング剤の重量に基づいて0.1〜5重量%含有してなることを特徴とする水系コーティング剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は界面活性剤、その製造方法及びこれを含有してなる水系コーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン等のOA機器用プリンターは、高速対応可能なインキ噴射式印刷が主流となっているが、これには高い湿潤性、レベリング性、浸透性等と共に優れた動的、静的表面張力低下能等が要望されている。このような用途において、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーンは優れたレベリング性、湿潤性、分散性等を持つものの、動的表面張力低下能は満足できるレベルではなかった。
また、インキ等のコーティング剤の用途において、変性シリコーンは、上記の欠点に加えて、ハジキ、ピンホール等に対する信頼性も低いため、これまでは敬遠される傾向があった。
また、高速印刷、高速塗工を必要とする印刷、製紙業界等の分野においても、上記と同様なニーズがあるが、いまだ不十分であった。
【0003】
以上のニーズに対して、アセチレングリコールのエトキシ化体をシリコーン系界面活性剤に配合してなる界面活性剤組成物(特許文献1)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−103457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の界面活性剤組成物は、レベリング性等に優れた成分(シリコーン界面活性剤)と動的表面張力低下能に優れた成分(アセチレングリコールのエトキシ化体)との配合したものであり、得られる性能としては配合したそれぞれ成分の性能の中間的レベルを大きく超えるものではなく、特に動的表面張力低下能等において問題があり、前述のニーズに十分な対応ができていなかった。
すなわち、本発明の目的は、高い表面張力低下能(動的表面張力低下能、静的表面張力低下能)を発揮する界面活性剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に達した。
すなわち、本発明の界面活性剤の特徴は、活性水素含有変性シリコーン(S)と、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)とを化学反応させて得られたシリコーン変性体(Y)からなり、
活性水素含有変性シリコーン(S)が、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S1)、アミノ基含有アミノ変性シリコーン(S2)、カルボキシ基含有カルボキシ変性シリコーン(S3)、水酸基含有カルビノール変性シリコーン(S4)、フェノール性水酸基含有フェノール変性シリコーン(S5)及びメルカプト基含有メルカプト変性シリコーン(S6)からなる群より選ばれる少なくとも1種である点を要旨とする。
【0007】

{E(-OA)-Q-{(AO-)H}t−p (1)
【0008】
一般式(1)において、Eはグリシジル(1,2−エポキシプロピル)基、Hは水素原子、Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基からそれぞれ水素原子を除いた反応残基、OA及びAO(以下、纏めてAOと呼称する)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜40の整数、tは2〜4の整数、pは1〜3の整数を表し(但し、t≧p)、一般式(1)中のAOの総数は10〜80である。
【0009】
本発明の界面活性剤の製造方法の特徴は、上記の界面活性剤を製造する方法であって、
反応溶媒及び反応触媒なしで、活性水素含有変性シリコーン(S)と、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)とを化学反応させてシリコーン変性体(Y)を得る工程を含む点を要旨とする。
【0010】
本発明の水系コーティング剤組成物の特徴は、水系コーティング剤及び上記の界面活性剤とからなり、この界面活性剤を水系コーティング剤の重量に基づいて0.1〜5重量%含有してなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の界面活性剤は、高い表面張力低下能(動的表面張力低下能、静的表面張力低下能)を発揮する。
本発明の界面活性剤の製造方法によると、上記の界面活性剤を容易に調製できる。
本発明のコーティング剤組成物は、水系コーティング剤及び上記の界面活性剤を含有するので、表面張力(動的表面張力、静的表面張力)が十分に低い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例3で得た界面活性剤(Y3)、比較例1〜3で得た比較用の界面活性剤(HY1)〜(HY3)について、動的表面張力を計測した結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<活性水素含有変性シリコーン(S)>
活性水素含有変性シリコーン(S)としては、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S1)、アミノ基含有アミノ変性シリコーン(S2)、カルボキシ基含有カルボキシ変性シリコーン(S3)、水酸基含有カルビノール変性シリコーン(S4)、フェノール性水酸基含有フェノール変性シリコーン(S5)及びメルカプト基含有メルカプト変性シリコーン(S6)からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0014】
活性水素含有変性シリコーン(S)は、シリコーンの変性位置により、側鎖型、両末端型及び片末端型に分類でき、これらの何れも使用できるが、好ましいのは側鎖型である。
【0015】
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S1)とは、ポリエーテル由来の水酸基を含有するポリエーテル変性シリコーンであり、これらは市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品等が挙げられる。
【0016】
側鎖型としては、KF−351A、KF−353、KF−354L、KF−615A、KF−640、KF−945、KF−6011、KF−6015、KF−6020及びX−22−2516等(以上、信越化学工業株式会社製);FZ2110、FZ2120、FZ2130、FZ2161、FZ2166、FZ2191、FZ7001、FZ7002、SF8428、SH3771、BY16−027及びBY16−036(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製);TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4452及びTSF4460(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製);SN−WET123、SN−WET125(以上、サンノプコ株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
両末端型としては、X−22−4952等(信越化学工業株式会社製);FZ2203等(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられ、片末端型としては、FZ2122等(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
これらの水酸基含有ポリエーテル変性シリコーンは幅広い曇点(1重量%水溶液法、始濁点)を持つが、たとえば、湿潤性に重点を置く場合、30〜90℃の曇点をもつもの、消泡性、浸透性に重点を置く場合、5〜50℃の曇点をもつものを選択すると、より効果的である。
【0019】
アミノ基含有アミノ変性シリコーン(S2)としては、モノアミン又はジアミン等に由来するアミノ基を含有する変性シリコーンであり、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品等が挙げられる。
【0020】
側鎖型としては、KF868、KF880、KF8002及びX−22−3820W等(以上、信越化学工業株式会社製);FZ3504、FZ3705、FZ3760、SF8417、BY16−213、BY16−850及びBY16−890(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製);TSF4702、TSF4704及びTSF4706(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられる。
【0021】
両末端型としては、KF8010及びPAM−E等(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられ、片末端型としてはTSF4700及びTSF4701(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられる。
【0022】
カルボキシ基含有カルボキシ変性シリコーン(S3)としては、カルボン酸に由来するカルボキシ基を含有する変性シリコーンであり、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品等が挙げられる。
【0023】
側鎖型としては、X−22−3701E(信越化学工業株式会社製);BY16−880(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられ、両末端型としては、X−22−162C等(信越化学工業株式会社製);BY16−750(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製);TSF4770(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられる。
【0024】
水酸基含有カルビノール変性シリコーン(S4)としては、メチルアルコールに由来する水酸基を含有する変性シリコーンであり、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品等が挙げられる。
【0025】
側鎖型としては、X−22−4015及びX−22−4039等(以上、信越化学工業株式会社製);SF8428(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製);TSF4750(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられ、両末端型としては、X−22−160AS及びKF−6001等(以上、信越化学工業株式会社製);BY16−201及びSF8427等(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製);TSF4751(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製)等が挙げられる。
【0026】
フェノール性水酸基含有フェノール変性シリコーン(S5)としては、フェノールに由来する水酸基を含有する変性シリコーンであり、たとえば、以下の商品(両末端型)等が市場から容易に入手できる。
【0027】
X−22−1821(信越化学工業株式会社製);BY16−799及びBY16−150S等(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)。
【0028】
メルカプト基含有メルカプト変性シリコーン(S6)としては、チオアルコールに由来するメルカプト基を含有する変性シリコーンであり、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品等が挙げられる。
【0029】
側鎖型としては、KF−2001及びKF−2004等(以上、信越化学工業株式会社製);BX16−838A(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられ、両末端型としては、、X−22−167B(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
<一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)>
一般式(1)において、非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が挙げられる。これらのうち、耐水性等の観点から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくは蔗糖及びラフィノースであり、供給性及びコスト等の観点から、特に好ましくは蔗糖である。
【0031】
一般式(1)において、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が挙げられる。これらのうち、表面張力低下能等の観点から、オキシプロピレン及びオキシブチレンが好ましい。また、n個のAOは、同じでも異なってもよく、また複数個の(−OA)n及び(AO−)n{以下、これらを纏めて(AO−)nと略する。}は同じでも異なってもよい。
【0032】
(AO−)n内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限ないが、ブロック状、又はブロック状とランダム状との組合せを含むことが好ましい。
【0033】
(AO−)n内に複数種類のオキシアルキレン基を含み、オキシエチレンを含む場合、オキシエチレン基の含有割合(モル%)は、表面張力低下能及び耐水性等の観点からオキシアルキレン基の全モル数に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜25、特に好ましくは3〜25、最も好ましくは3〜20である。
【0034】
(AO−)n内にオキシエチレン基とオキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基とを含む場合、耐水性の観点から、反応残基(Q)から離れた端部にオキシプロピレン又は/及びオキシブチレンが位置することが好ましい。すなわち、(AO−)nにオキシエチレン基とオキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基とを含む場合、反応残基(Q)にオキシエチレン基が直接的に結合していることが好ましい。
【0035】
nは、1〜40の整数であり、好ましくは2〜37の整数、さらに好ましくは2〜33の整数、特に好ましくは3〜30の整数である。この範囲であると、表面張力低下能等がさらに良好となる。複数個のnは異なっていても又は同じでも構わない。
【0036】
一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)中のオキシアルキレン基(AO)の総数は、10〜80の整数が好ましく、さらに好ましくは10〜70の整数、特に好ましくは20〜70の整数、最も好ましくは20〜60の整数である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0037】
tは、2〜4の整数であり、たとえば、蔗糖の場合は3、トレハロースの場合は2、メレチトースの場合は4である。
pは1〜3の整数である。
但し、tの値は、pの値以上である。すなわち、t≧pである。
【0038】
なお、たとえば、pが1の化合物とpが2の化合物との等モル混合物では、見かけ上、p=1.5となるが、この場合であっても、上記の混合物として本発明に含まれる。このように混合物の場合、pは整数ではなく、実数で表すことができ、この実数(P”)としては、1.2〜2.5が好ましく、さらに好ましくは1.2〜2、特に好ましくは1.2〜1.8である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0039】
活性水素含有変性シリコーン(S)とグリシジル化合物(G)との化学反応において、グリシジル化合物(G)の使用量(重量%)は、活性水素含有変性シリコーン(S)の重量に基づいて、10〜200が好ましく、さらに好ましくは10〜150、特に好ましくは20〜150、最も好ましくは20〜100である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0040】
グリシジル化合物(G)の使用量をモル部で表すと、以下の通りであるが、重量%とモル部との量関係が齟齬する場合、重量%を優先する。
グリシジル化合物(G)の使用量(モル部)は、活性水素含有変性シリコーン(S)の活性水素1モル部当たり、0.1〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.4、特に好ましくは0.3〜1、最も好ましくは0.3〜0.8である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0041】
一般式(1)で表されるグリシジル化合物としては次の化合物等が挙げられる。
なお、「P」はオキシプロピレン基、「E」はオキシエチレン基、「B」はオキシブチレン基を表し、これらの添え字(数字)はそれぞれの個数を表す。また、「Q1」は蔗糖から3個の1級水酸基の水素原子を除いた反応残基、「Q2」はトレハロースから2個の1級水酸基の水素原子を除いた反応残基、「Q3」はメレチトースから4個の1級水酸基の水素原子を除いた反応残基、「・」はこの・の前後のオキシアルキレン同士がランダム状に結合していること{たとえば、(−P5・B5)はオキシプロピレン基5個とオキシブチレン基5個がランダム状に結合していること}を、「/」はこの/の前後のオキシアルキレン同士がブロック状に逐次結合していること{たとえば、(−P20/B5)はまずオキシプロピレン基が20個、次いでオキシブチレン基が5個結合していること}を表す。
【0042】
【表1】
【0043】
これらのうち、No.1−1、3−1、4−2、6−1、8−1、13−2、16−1、18−2、24−1又は25−1で表される化合物が好ましく、さらに好ましくはNo.4−2、6−1、8−1、13−2又は24−1で表される化合物である。
【0044】
一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)は、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(GP)とエピハロヒドリン(GE)との化学反応により得ることができる。
【0045】

Q-{(AO-)H} (2)
【0046】
一般式(2)において、H、Q、t、AO、nは一般式(1)におけるそれぞれと同じであり、好ましい範囲も同じである。また、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物中のオキシアルキレン基(AO)の総数は10〜80の整数が好ましく、さらに好ましくは10〜70の整数、特に好ましくは20〜70の整数、最も好ましくは20〜60の整数である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0047】
エピハロヒドリン(GE)としては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。これらのうち、エピクロルヒドリンが好ましい。
【0048】
ポリエーテル化合物(GP)及びエピハロヒドリン(GE)の使用量は、ポリエーテル化合物(GP)/エピハロヒドリン(GE)のモル比が0.25〜1となる量が好ましく、さらに好ましくは0.33〜1となる量である。この比率にすると、後述する脱塩濾過工程が簡便に実施できる。
【0049】
一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(GP)とエピハロヒドリン(GE)との化学反応によりグリシジル化合物(G)を製造する方法としては、アルカリ金属水酸化物(A)の存在下、ポリエーテル化合物(GP)とエピハロヒドリン(GE)とを反応させてグリシジル化合物(G)を得る製造方法において、
アルカリ金属水酸化物(A)、ポリエーテル化合物(GP)及びエピハロヒドリン(GE)の重量に基づいて水の含有量を2〜5重量%に調整して、この反応を開始する反応工程(1)を含むことが好ましい。
【0050】
このような反応工程(1)を含む製造方法によると、副成する中和塩の造粒を促し、中和塩粒子を増大化できるため、脱塩を簡便な濾過工程で実施できる。したがって、このような製造方法によると、特別な水洗処理装置を要せず、又、水洗処理による膨大な量の排水が生じることもなく、環境にもコスト的にも優位性が得られる。また、このような製造方法では、酸触媒を必要としないため、製造設備の腐食等に配慮する必要がない。さらに、このような製造方法により得られるグリシジル化合物(G)にはハロゲン原子(塩素原子等)の含有量が防錆面に影響ないレベルであるため、電子、電気、塗料等の分野に問題なく使用できる。
【0051】
アルカリ金属水酸化物(A)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等が挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、中和塩の造粒(粒子の増大化)の観点からさらに好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0052】
アルカリ金属水酸化物(A)の使用量は、{アルカリ金属水酸化物(A)の塩基当量(eq.)/エピハロヒドリン(GE)のハロゲンの当量(eq.)}比が、0.7〜1.1となる量が好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.0となる量である。この比率にすると、過剰のアルカリ金属水酸化物(A)の中和工程を省くことができ、また過剰のエピハロヒドリン(GE)は減圧下の脱水工程等で除去できる。
【0053】
一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(GP)は、公知の化学反応を適用して製造でき、たとえば、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部と、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)20〜80モル部との化学反応(1)から化合物(a12)を得る方法等により製造できる。
【0054】
非還元性の二又は三糖類(a1)としては、一般式(1)における反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類と同じものが使用でき、好ましい範囲も同じである。
【0055】
アルキレンオキシド(a2)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド等が使用でき、エチレンオキシド(eo)、プロピレンオキシド(po)、ブチレンオキシド(bo)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、得られる表面張力低下能及び耐水性の観点等から、eo、po及びeoとpoとの混合が好ましく、さらに好ましくはeoとpoとの混合である。
【0056】
複数種類のアルキレンオキシドを用いる場合、反応させる順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び使用割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状の組合せを含むことが好ましくい。eoを使用する場合、eoの使用割合(モル%)は、アルキレンオキシドの全モル数に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜25、特に好ましくは3〜25、最も好ましくは3〜20である。eoと、po又は/及びboとを含む場合、非還元性の二又は三糖類(a1)へのeoの反応後にpo及び/又はboを反応させることが好ましい。
【0057】
アルキレンオキシド(a2)の使用量(モル)は、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル当たり、10〜80が好ましく、さらに好ましくは10〜70、特に好ましくは20〜70、最も好ましくは20〜60である。この範囲であると、表面張力低下能がさらに良好となる。
【0058】
非還元性の二又は三糖類(a1)と、アルキレンオキシド(a2)との付加反応には、公知の方法(特開2004−224945号公報等)等が適用でき、アニオン重合、カチオン重合又は配位アニオン重合等のいずれの形式で実施してもよい。また、これらの重合形式は単独でも、重合度等に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0059】
アルキレンオキシド(a2)の付加反応には公知の反応触媒(特開2004−224945号公報等)等が使用できる。なお、反応溶媒として以下に説明するアミドを用いる場合には反応触媒を用いる必要がない。
【0060】
反応触媒を使用する場合、その使用量(重量%)は、非還元性の二又は三糖類(a1)とアルキレンオキシド(a2)との合計重量に基づいて、0.01〜1が好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.8、特に好ましくは0.05〜0.6である。この範囲であると、経済性(製造の所要時間及び触媒コスト等)及び生成物の純度(単分散性等)等がさらに良好となる。
【0061】
反応触媒を使用する場合、反応触媒は最終的に反応生成物から除去することが好ましく、除去方法としては、合成アルミノシリケート等のアルカリ吸着剤{たとえば、商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)、「キョワード」は同社の登録商標である。}を用いる方法(特開昭53−123499号公報等)、キシレン又はトルエン等の溶媒に溶かして水洗する方法(特公昭49−14359号公報等)、イオン交換樹脂を用いる方法(特開昭51−23211号公報等)及び反応触媒を酸(鉱酸、炭酸ガス等)で中和して生じる中和塩(塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩等)を濾過する方法(特公昭52−33000号公報等)等が挙げられる。
【0062】
反応触媒の残存量は、JIS K1557−4:2007に記載のCPR(Controlled Polymerization Rate)値で管理でき、CPR値が20以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。
【0063】
アルキレンオキシド(a2)の付加反応の工程には、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、活性水素を持たないものが好ましく、さらに好ましくは非還元性の二又は三糖類(a1)、アルキレンオキシド(a2)及び(a2)との反応により生成する生成物を溶解するものが好ましい。
【0064】
このような反応溶媒としては、炭素数3〜8のアルキルアミド及び炭素数5〜7の複素環式アミド等が使用できる。
【0065】
アルキルアミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−プロピルアセトアミド及び2−ジメチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
【0066】
複素環式アミドとしては、N−メチルピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム及びN,N−ジメチルピロールカルボン酸アミド等が挙げられる。
【0067】
これらのうち、アルキルアミド及びN−メチルピロリドンが好ましく、さらに好ましくはDMF、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン、特に好ましくはDMF及びN−メチルピロリドン、最も好ましくはDMFである。
【0068】
反応溶媒を用いる場合、その使用量(重量%)は、非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の重量に基づいて、20〜200が好ましく、さらに好ましくは40〜180、特に好ましくは60〜150である。
【0069】
反応溶媒を用いた場合、反応後に反応溶媒を除去することが好ましい。反応溶媒の残存量(重量%)は、非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の重量に基づいて、0.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.01以下である。なお、反応溶媒の残存量は、内部標準物質を用いるガスクロマトグラフィー法にて求めることができる。
【0070】
反応溶媒の除去方法としては、特開2005−132916号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0071】
反応には公知の反応容器(特開2004−224945号公報等)等が使用できる。反応雰囲気としては、アルキレンオキシド(a2)を反応系に導入する前に反応装置内を真空又は乾燥した不活性気体(アルゴン、窒素及び二酸化炭素等)の雰囲気下とすることが好ましい。また、反応温度(℃)としては80〜150が好ましく、さらに好ましくは90〜130である。反応圧力(ゲージ圧:MPa、以下同じ)は0.8以下が好ましく、さらに好ましくは0.5以下である。
【0072】
反応終点の確認は、次の方法等により行うことができる。すなわち、反応温度を15分間一定に保ったとき、反応圧力の低下が0.001MPa以下となれば反応終点とする。所要反応時間は通常4〜12時間である。
【0073】
反応工程(1)の開始に先立ち、水の含有量(重量%)を、アルカリ金属水酸化物(A)、ポリエーテル化合物(GP)及びエピハロヒドリン(GE)の重量に基づいて、2〜5に調整することが好ましく、さらに好ましくは2.5〜4.5、特に好ましくは3〜4に調整することである。この範囲であると、生成した中和塩は、大きく結晶化し、脱塩濾過工程(例えば、濾紙No.2:ADVANTEC社製、保留粒子径:5μm)にて容易に除去できる。
【0074】
反応工程(1)において、中和塩と共に水が副生するが、反応開始時に水の含有量が上記の範囲であれば、反応途中において、この範囲を上回っても何ら差し支えない。
【0075】
反応系内に水が存在すると、特開平5−163260号公報に記載の副反応が生じ、エーテル結合によりポリエーテル化合物(GP)に導入された一部のグリシジル基(エポキシ基)が他のポリエーテル化合物(GP)の水酸基と開環反応し、結果として部分的に多量体化しやすくなると考えられるが、もし、多量体化しても問題なく使用できる。
【0076】
反応工程(1)の反応終点の確認は、次の方法等により行うことができる。すなわち、反応液のpHを測定し7〜8となれば反応終点とする。所要反応時間は通常3〜12時間である。なお、pHは、反応液を直接リトマス試験紙に付着させて色の変化を観察することにより測定できる(20〜30℃)。
【0077】
反応工程(1)は、塩基による脱ハロゲン化水素反応(Willamson合成法:反応中に逐次生成するハロゲン化水素を塩基により中和することにより反応を駆動する)で適用される反応条件がそのまま適用できる。
反応容器としては、加熱・冷却、撹拌及び滴下(圧入)が可能な反応容器を用いることが好ましい。
反応温度(℃)としては、30〜90程度が好ましく、さらに好ましくは50〜70である。
反応雰囲気としては、エピハロヒドリンを反応系に導入する前に反応装置内を不活性ガス(アルゴン、窒素及び二酸化炭素等)の雰囲気とすることが好ましい。
【0078】
以上の好ましい製造方法には、反応工程(1)に引き続き、反応工程(1)で副生した中和塩を濾過処理により除去する脱塩濾過工程(2)を含むことが好ましく、さらに好ましくは反応工程(1)に引き続き、得られたグリシジル化合物(G)の重量に基づいて、水の含有量を0.2(好ましくは0.1、さらに好ましくは0.05)重量%以下にした後、反応工程(1)で副生した中和塩を濾過処理により除去する脱塩濾過工程(2)を含むことである。
【0079】
濾過は公知の方法が適用でき、通常の自然濾過でも、減圧濾過(吸引濾過)でもよい。濾材や濾過装置も公知のものをそのまま適用できる。
濾過温度(℃)としては、30〜100程度が好ましく、さらに好ましくは50〜90である。
【0080】
反応工程(1)に引き続き、水の含有量を、得られたグリシジル化合物(G)の重量に基づいて、0.2重量%以下にする場合、脱水方法に制限はないが、減圧留去(減圧下脱水)する方法が好ましい。減圧留去(減圧下脱水)すると、もし、過剰のエピハロヒドリン(GE)が残存していても、水と共に除去できる。
減圧留去する場合、圧力{ゲージ圧(以下同じ)}は、−0.05〜−0.098MPa程度が好ましく、温度は、60〜100℃程度が好ましい。
【0081】
水の含有量(重量%)は、公知の方法で測定することができ、たとえば、Karl Fischer法(JIS K0113:2005、電量滴定方法)により求めることができる。
【0082】
反応工程(1)の終了時において、過剰のアルカリ金属水酸化物(A)が残存している場合、これを除去することが好ましい。除去方法としては、ポリエーテル化合物(GP)の製造方法で説明した「アルキレンオキシド(a2)の付加反応に用いることができる反応触媒」の除去方法等が適用できる。これらのうち、アルカリ金属水酸化物を酸(鉱酸、炭酸ガス等)で中和して生じる中和塩(塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩等)を濾過する方法が好ましい。濾過する方法を適用すると、反応工程(1)で副生する中和塩と共に濾過することができるため効率がよい。濾過方法に置き換えて、または濾過方法と共に、アルカリ金属水酸化物(A)をアルカリ吸着剤で処理することにより、さらに残存量を低減させてもよい。
【0083】
なお、アルカリ金属水酸化物を酸で中和する場合、酸としては、鉱酸(塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸等)、有機酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸等)等が使用できる。
【0084】
アルカリ金属水酸化物(A)の残存量は、JIS K1557−4:2007に記載のCPR(Controlled Polymerization Rate)値で管理することができる。CPR値は、20以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。
【0085】
<活性水素含有変性シリコーン(S)とグリシジル化合物(G)との化学反応>
本発明の界面活性剤を構成するシリコーン変性体(Y)は、活性水素含有変性シリコーン(S)と、一般式(1)で表されるグリシジル化合物(G)との化学反応により得られる。この反応(付加反応)には、公知の反応触媒(特開2004−224945号公報等)及び/又は公知の反応溶媒(特開2003−160752号公報等)等が使用できる。一方、この反応において、反応溶媒及び反応触媒なしでも製造できる。後者の場合、加熱、攪拌、密閉、脱水等可能な反応槽に所定量の活性水素含有変性シリコーン(S)とグリシジル化合物(G)とを仕込み、攪拌しつつ脱水、昇温し、120〜150℃、2〜8時間で反応が完結する。
【0086】
反応の終点は、エポキシ基の消滅により行うことができる。エポキシ基の定量としては、過塩素酸と第四級アンモニュウム塩(CTAB)とからハロゲン化水素(HB)を発生させてこれとエポキシ基とを反応させるセチルトリメチルアンモニュウムブロマイド(CTAB)法(JIS K7236:ISO3001:1999に準拠)が適用できる。
【0087】
動的表面(界面)張力低下能とは、界面活性剤等を添加することにより、新たな界面が形成された後、比較的短時間で表面張力を低下させる能力のことであり、ジェミニ型界面活性剤に代表される性能である。動的表面張力とは、新たな界面が形成されてから10分の1秒(100ミリ秒、または10Hzとも表記する)程度の後に測定される表面張力のことであり、通常の界面活性剤は動的表面張力低下能が低く、界面が新たに形成された場合、10分の1秒程度の経過では殆ど表面張力が低下しない(動的表面張力低下能が低い)。なお、動的表面張力の測定法としては、バブルプレッシャー法が一般的であり、例えばクルス社製のBP2バブルプレッシャー動的表面張力計等を用いて測定できる。
【0088】
本発明の界面活性剤の動的表面張力{mN/m、0.2重量%水溶液、25℃、表面寿命(泡寿命)100ミリ秒(10Hz)}は、30〜45を示し、さらに好ましくは30〜43、特に好ましくは30〜42、最も好ましくは30〜40を示す。
【0089】
静的表面張力は、例えば協和界面科学(株)製の自動表面張力計CBVP−Z型を用いて測定できる。本発明の界面活性剤の静的表面張力{mN/m、0.2重量%水溶液、25℃}は、20〜30を示し、さらに好ましくは20〜28、特に好ましくは20〜26、最も好ましくは20〜25を示す。
【0090】
先に述べたジェミニ型界面活性剤に於いては、一般的に動的表面張力低下能には優れるものの、静的表面張力低下能は通常の界面活性剤に劣る。本発明の界面活性剤は、動的表面張力低下能及び静的表面張力低下能の両方に優れており、水性コーティング剤組成物{界面活性剤、水、樹脂バインダー及び必要により着色剤を含有してなる。例えば、水性塗料、紙塗工塗料及び水性インキ等}用界面活性剤として適しており、高速塗工用水性コーティング剤組成物用界面活性剤として好適であり、特に、高速塗工用水性塗料(カーテンフローコート等)、高速塗工用紙塗工液、高速印刷用水性インキ又は噴射式インキ等用の界面活性剤として最適である。
【0091】
本発明の界面活性剤を水性コーティング剤組成物に適用した場合、ハジキ等の塗膜欠損を効果的に抑えることができる。また、水性コーティング剤組成物の高速塗工時における被塗布面へのなじみ、ぬれ性等を飛躍的に改善できるので、優れた塗工適性(膜切れ及び平滑性等の向上)を発揮する。
【0092】
本発明の界面活性剤を水性コーティング剤組成物に適用する場合、本発明の界面活性剤は、水性コーティング剤組成物の製造工程のうち、顔料分散工程、レットダウン工程及び/又は各種調整剤(粘度調整剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、消泡剤、分散剤、保水剤及び流動特性改質剤等)の添加工程等に添加してもよく、原料樹脂エマルションに添加しておいてもよく、また製造後の水性コーティング剤組成物に添加してもよい。
【0093】
本発明の界面活性剤を水性コーティング剤組成物に適用する場合、本発明の界面活性剤の添加量(重量%)は、水性コーティング剤の重量に基づいて、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.1〜4、特に好ましくは0.2〜3.5、最も好ましくは0.5〜3である。
【0094】
本発明の界面活性剤を含有する水性コーティング剤組成物は、通常の方法により被塗装体に塗装又は印刷することができ、ハケ塗り、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ロールコート塗装、カーテンフローコート塗装、グラビア印刷及びインキ噴射式印刷等の塗装方法又は印刷方法等が適用できる。これらのうち、高速塗工性を発揮できるという観点から、カーテンフローコート塗装、グラビア印刷及びインキ噴射式印刷が好適である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0096】
<製造例1>
加熱、攪拌、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖{台糖(株)製}342部(1モル部)及びN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する。)800部を投入した後、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し、次いで0.02MPaになるまで排出する操作を3回繰り返した(以下、窒素置換と略する。)。さらに、攪拌しつつ100℃まで昇温した後、この温度にてプロピレンオキシド(po)290部(5モル部)を4時間かけて滴下した。次いでこの温度にてブチレンオキシド(bo)360部(5モル部)を4時間かけて滴下し、引き続き同温度にて3時間攪拌を続けて残存するブチレンオキシド(bo)を反応させた。次いでDMFを減圧(−0.05〜−0.098MPa:以下、単に「減圧」と略する。)下に留去し、ポリエーテル化合物(GP1){蔗糖/(po)5モル/(bo)5モル付加物}を得た。
【0097】
上記と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP1)992部(1モル部)及び水酸化ナトリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製、純度約97重量%、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。以下同じである。}40部(1モル部)及び水35部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、これらの混合物にエピクロルヒドリン(GE1){ダイソー(株)製、以下同じである。}111部(1.2モル部)を3時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7{リトマス試験紙(TOYO ROSHI CO.LTD製、製品名:UNIV PH 1−11)による。以下同じ。}となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下、残存するエピクロルヒドリンの留去及び脱水(水分:0.03%以下、以下、単に減圧下脱水と略する。)した後、No.2濾紙{東洋濾紙(株)製、保留粒子径:5μm、以下同じである。}による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G1){蔗糖/(po)5モル/(bo)5モル/(GE1)1モル付加物}を得た。
【0098】
<製造例2>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖342部(1モル部)及びDMF800部を投入した後、窒素置換を実施した。さらに、これらの混合物を攪拌しながら100℃まで昇温した後、この温度にてプロピレンオキシド(po)870部(15モル部)を7時間かけて滴下し、引き続き同温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させた。次いでDMFを減圧下に留去し、ポリエーテル化合物(GP2){蔗糖/(po)15モル付加物}を得た。
【0099】
次いで、製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP2)1212部(1モル部)及び水酸化カリウム3部{試薬特級、和光純薬工業(株)製、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。以下同じである。}を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてブチレンオキシド(bo)360部(5モル部)を3時間かけて滴下し、さらにこの温度にて2時間攪拌を続けて残存するブチレンオキシド(bo)を反応させて、粗反応液状物を得た。この粗反応液状物にイオン交換水30部を添加して、攪拌しながら90℃まで昇温した後、キョーワード700{協和化学工業(株)製}50部を加え、この温度にて1時間攪拌し、次いで濾紙を用いてキョーワード700を取り除き、さらに減圧下、120℃にて1時間脱水{以下、単にキョーワード処理と略する。}して、ポリエーテル化合物(GP3){蔗糖/(po)15モル/(bo)5モル付加物}を得た。
【0100】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP3)1572部(1モル部)及び水酸化ナトリウム40部(1モル部)及び水70部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)111部(1.2モル部)を3時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G2){蔗糖/(po)15モル/(bo)5モル/(GE1)1モル付加物}を得た。
【0101】
<製造例3>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP2){蔗糖/(po)15モル付加物}1212部(1モル部)及び水酸化カリウム4部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)870部(15モル部)を4時間かけて滴下し、さらにこの温度にて2時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。この粗反応液状物にイオン交換水35部を添加して、攪拌しながら90℃まで昇温した後、60部のキョーワード700を加え、この温度にて1時間攪拌した。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP4){蔗糖/(po)30モル付加物}を得た。
【0102】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP4)2082部(1モル部)及び酸化ナトリウム48部(1.2モル部)及び水70部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)139部(1.5モル部)を4時間で滴下した。次いでこの温度にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G3){蔗糖/(po)30モル/(GE1)1モル付加物80モル%と、蔗糖/(po)30モル/(GE1)2モル付加物20モル%との混合物;P”=1.2}を得た。
【0103】
<製造例4>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP2){蔗糖/(po)15モル付加物}1212部(1モル部)及び水酸化カリウム5部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)1450部(25モル部)を5時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(PO)を反応させて、粗反応液状物を得た。この粗反応液状物にイオン交換水45部を添加して、攪拌しながら90℃まで昇温した後、65部のキョーワード700を加え、この温度にて1時間攪拌した。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP5){蔗糖/(PO)40モル付加物}を得た。
【0104】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP5)2662部(1モル部)及び水酸化ナトリウム60部(1.5モル部)及び水110部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)167部(1.8モル部)を4時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G4){蔗糖/(po)40モル/(GE1)1モル付加物50モル%と、蔗糖/(po)40モル/(GE1)2モル付加物50モル%との混合物;P”=1.5}を得た。
【0105】
<製造例5>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP2){蔗糖/(po)15モル付加物}1212部(1モル部)及び水酸化カリウム7部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)2610部(45モル部)を7時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。この粗反応液状物にイオン交換水80部を添加して、攪拌しながら90℃まで昇温した後、100部のキョーワード700を加え、この温度にて1時間攪拌した。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP6){蔗糖/(po)60モル付加物}を得た。
【0106】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP6)3822部(1モル部)及び水酸化ナトリウム80部(2モル部)及び水140部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)213部(2.3モル部)を5時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G5){蔗糖/(po)60モル/(GE1)2モル付加物}を得た。
【0107】
<製造例6>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖342部(1モル部)及びDMF800部を投入した後、窒素置換を実施した。さらに、これらの混合物を攪拌しながら100℃まで昇温した後、この温度にてエチレンオキシド(eo)440部(15モル部)を3時間かけて滴下し、次いでプロピレンオキシド(po)580部(10モル部)を6時間かけて滴下し、引き続き同温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(PO)を反応させた。次いでDMFを減圧下に留去し、ポリエーテル化合物(GP7){蔗糖/(eo)10モル/(po)10モル付加物}を得た。
【0108】
次いで、製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP7)1362部(1モル部)及び水酸化カリウム9部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)2900部(50モル部)を8時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP8){蔗糖/(eo)10モル/(po)60モル付加物}を得た。
【0109】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP8)4262部(1モル部)及び水酸化ナトリウム72部(1.8モル部)及び水180部を仕込み、これらを60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)185部(2モル部)を4時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G6){蔗糖/(eo)10モル/(po)60モル/(GE1)1モル付加物20モル%と、蔗糖/(eo)10モル/(po)60モル/(GE1)2モル付加物80モル%との混合物;P”=1.8}を得た。
【0110】
<製造例7>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、トレハロース{試薬特級、和光純薬工業(株)製、以下同じである。}504部(1モル部)及びDMF1000部を投入した後、窒素置換を実施した。これらの混合物を攪拌しながら100℃まで昇温し、次いでこの温度にて、プロピレンオキシド(po)870部(15モル部)を6時間かけて滴下し、引き続きこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させた。次いでDMFを減圧下に留去し、ポリエーテル化合物(GP9){トレハロース/(po)15モル付加物}を得た。
【0111】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP9)1374部(1モル部)及び水酸化カリウム3部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてブチレンオキシド(bo)360部(5モル部)を3時間かけて滴下し、さらにこの温度にて2時間攪拌を続けて残存するブチレンオキシド(bo)を反応させて、粗反応液状物を得た。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP10){トレハロース/(po)15モル/(bo)5モル付加物}を得た。
【0112】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP10)1734部(1モル部)及び水酸化ナトリウム60部(1.5モル部)及び水80部を仕込み、これらの混合物を60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)167部(1.8モル部)を5時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G7){トレハロース/(po)15モル/(bo)5モル/(GE1)1モル付加物50モル%と、トレハロース/(po)15モル/(bo)5モル/(GE1)2モル付加物50モル%との混合物;P”=1.5}を得た。
【0113】
<製造例8>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP9){トレハロース/(po)15モル付加物}1374部(1モル部)及び水酸化カリウム6部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)1450部(25モル部)を5時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP11){トレハロース/(po)40モル付加物}を得た。
【0114】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP11)2824部(1モル部)と、水酸化ナトリウム60部(1.5モル部)及び水100部を仕込み、これらの混合物を60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)167部(1.8モル部)を5時間で滴下した。次いで60℃にて5時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G8){トレハロース/(po)40モル/(GE)1モル付加物50モル%と、トレハロース/(po)40モル/(GE)2モル付加物50モル%との混合物;P”=1.5}を得た。
【0115】
<製造例9>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、メレチトース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}504部(1モル部)及びDMF1000部を投入した後、窒素置換を行った。その後、これらの混合物を攪拌しながら110℃まで昇温した後、この温度にてエチレンオキシド(eo)440部(10モル部)とプロピレンオキシド(po)290部(5モル部)の混合液を3時間かけて滴下し、さらにこの温度にて2時間攪拌を続けて残存するエチレンオキシド(eo)及びプロピレンオキシド(po)を反応させた。次いでDMFを減圧下に留去し、ポリエーテル化合物(GP12){メレチトース/(eo)10モル・(po)5モルのランダム付加物}を得た。
【0116】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP12)1234部(1モル部)及び水酸化カリウム9部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)2610部(45モル部)を7時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP13){メレチトース/(eo)10モル・(po)5モル/(po)45モル付加物}を得た。
【0117】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP12)3844部(1モル部)、水酸化ナトリウム80部(2モル部)及び水130部を仕込み、これらの混合物を60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)213部(2.3モル部)を5時間で滴下した。次いで60℃にて6時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G9){メレチトース/(eo)10モル・(po)5モル/(po)45モル/(GE1)2モル付加物}を得た。
【0118】
<製造例10>
ポリエーテル化合物(GP12)1234部(1モル部)及び水酸化カリウム10部を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧のまま100℃にてプロピレンオキシド(po)3770部(65モル部)を10時間かけて滴下し、さらにこの温度にて3時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシド(po)を反応させて、粗反応液状物を得た。次いでキョーワード処理して、ポリエーテル化合物(GP14){メレチトース/(eo)10モル・(po)5モル/(po)65モル付加物}を得た。
【0119】
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ポリエーテル化合物(GP14)5004部(1モル部)と、水酸化ナトリウム120部(3.0モル部)及び水150部を仕込み、これらの混合物を60℃にて攪拌しながら、エピクロルヒドリン(GE1)305部(3.3モル部)を5時間で滴下した。次いで60℃にて6時間攪拌を続け、反応液のpHが7となったのを確認した。次いで80℃にて減圧下脱水した後、濾紙による吸引濾過を行い、グリシジル化合物(G10){メレチトース/(eo)10モル・(po)5モル/(po)65モル/(GE1)3モル付加物}を得た。
【0120】
<製造例11>
(1)ハイドロジェンポリシロキサン(HP1)の製造
加熱、攪拌、冷却、滴下、コンデンサー及び真空ポンプによる減圧の可能な反応容器に、オクタメチルシクロテトラシロキサン{試薬特級、東京化成工業(株)製}1628部(5.5モル部)、テトラメチルテトラハイドロシクロテトラシロキサン{試薬特級、東京化成工業(株)製}360部(1.5モル部)、ヘキサメチルジシロキサン{試薬特級、東京化成工業(株)製}210部(1.3モル部)及び水酸化ナトリウム1部(0.025モル部)を仕込み、90℃にて6時間攪拌を続けた。
【0121】
次いで、25℃に冷却し、蟻酸1.5部(0.025モル部)を仕込み、0.5時間攪拌した後、減圧しながら、20℃/1時間の割合で昇温させ、140℃/−0.095MPaにてさらに2時間ストリッピングして、ハイドロジェンポリシロキサン(HP1)を得た。H−NMR分析及びIR分析により、ハイドロジェンポリシロキサン(HP1)が下記構造を有することを確認した{Meはメチル基、Siはケイ素原子、Oは酸素原子、Hは水素原子を表す。}。
【0122】
【化1】
【0123】
(2)アリルアルコール/(eo)15モル/(po)2モル付加体(AA1)の製造
製造例1と同様な耐圧反応容器に、アリルアルコール{試薬特級、和光純薬工業(株)製}59部(1モル部)及び水酸化カリウム1.1部を仕込んだ後、液温20℃にて、0.4MPa(ゲージ圧)になるまで窒素による加圧と、0.02MPa(ゲージ圧)程度までの窒素の排出とを3回繰り返した。次いで100℃にて攪拌しつつ、エチレンオキシド(eo)660部(15モル部)を3時間かけて滴下した。次いでプロピレンオキシド(po)116部(2モル部)を2時間かけて滴下し、さらに120℃にて2時間反応させた。次いでキョーワード処理して、アリルアルコール/(eo)15モル/(po)2モル付加体(AA1)を得た。
【0124】
(3)水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S101)の製造
加熱、攪拌、冷却、滴下、コンデンサー及び真空ポンプによる減圧の可能な反応容器に、上記(1)で得たハイドロジェンポリシロキサン(HP1)1186部(1モル部)、上記(2)で得たアリルアルコール/(eo)15モル/(po)2モル付加体(AA1)1670部(2モル部)、イソプロピルアルコール2000部及び塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(塩化白金酸の含有量:5×10−6%)2部を仕込み、還流下7時間攪拌を続けた。次いで減圧下、90〜100℃にて脱溶剤を実施して、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S101)を得た。
【0125】
<実施例1>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、製造例11で得た水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S101)100部(活性水素0.07モル部含有)と、製造例1で得たグリシジル化合物(G1)20部(0.019モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y1)を得た。
【0126】
<実施例2>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、水酸基含有変性シリコーン(S101)100部(活性水素0.07モル部含有)と、製造例5で得たグリシジル化合物(G5)150部(0.038モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けて、エポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y2)を得た。
【0127】
<実施例3>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、水酸基含有変性シリコーン(S101)100部(活性水素0.07モル部含有)と、製造例2で得たグリシジル化合物(G2)50部(0.031モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けて、エポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y3)を得た。
【0128】
<実施例4>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S102){SNウェット125、サンノプコ株式会社製}100部と、製造例3で得たグリシジル化合物(G3)100部を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けて、エポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y4)を得た。
【0129】
<実施例5>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S102)100部と、製造例1で得たグリシジル化合物(G1)10部を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けて、エポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y5)を得た。
【0130】
<実施例6>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S102)100部と、製造例4で得たグリシジル化合物(G4)40部を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて6時間攪拌を続けて、エポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y6)を得た。
【0131】
<実施例7>
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S103){SH3771、活性水素1モル当たりの分子量(水酸基当量=活性水素当量)800、東レ・ダウコーニング株式会社製}100部(活性水素0.125モル部含有)と、製造例8で得たグリシジル化合物(G8)100部(0.034モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて7時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y7)を得た。
【0132】
<実施例8>
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S103)100部(活性水素0.125モル部含有)と、製造例7で得たグリシジル化合物(G7)80部(0.044モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y8)を得た。
【0133】
<実施例9>
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S104){X−22−6266、活性水素1モル当たりの分子量(水酸基当量=活性水素当量)1200、信越化学工業株式会社製}100部(0.083モル部含有)と、製造例8で得たグリシジル化合物(G8)30部(0.01モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて5時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y9)を得た。
【0134】
<実施例10>
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン(S104)100部(活性水素0.083モル部含有)と、製造例3で得たグリシジル化合物(G3)40部(0.019モル部)を仕込み、120℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて6時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y10)を得た。
【0135】
<実施例11>
アミノ基含有アミノ変性シリコーン(S201){KF−864、活性水素1モル当たりの分子量(活性水素当量)3800、信越化学工業株式会社製}100部(活性水素0.026モル部含有)と製造例10で得たグリシジル化合物(G10)200部(0.039モル部)を仕込み、80℃にて1時間減圧脱水した。次いで100℃にて2時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y11)を得た。
【0136】
<実施例12>
カルボキシ基含有カルボキシ変性シリコーン(S301){X−22−3701E、活性水素1モル当たりの分子量(カルボキシ当量=活性水素当量)4000、信越化学工業株式会社製}100部(活性水素0.025モル含有)と製造例6で得たグリシジル化合物(G6)150部(0.034モル部)を仕込み、100℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて6時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y12)を得た。
【0137】
<実施例13>
水酸基含有カルビノール変性シリコーン(S401){SF8428、活性水素1モル当たりの分子量(水酸基当量=活性水素当量)1600、東レ・ダウコーニング株式会社製}100部(活性水素0.063モル部含有)と製造例9で得たグリシジル化合物(G9)180部(0.046モル部)を仕込み、100℃にて1時間減圧脱水した。次いで130℃にて6時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y13)を得た。
【0138】
<実施例14>
フェノール性水酸基含有フェノール変性シリコーン(S501){BY16−150S、活性水素1モル当たりの分子量(水酸基当量=活性水素当量)1550、東レ・ダウコーニング株式会社製}100部(活性水素0.065モル部含有)と製造例9で得たグリシジル化合物(G9)200部(0.051モル部)を仕込み、100℃にて1時間減圧脱水した。次いで120℃にて6時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y14)を得た。
【0139】
<実施例15>
メルカプト基含有メルカプト変性シリコーン(S601){KF−2001、活性水素1モル当たりの分子量(メルカプト当量=活性水素当量)1900、信越化学工業株式会社製}100部(活性水素0.053モル部含有)と製造例10で得たグリシジル化合物(G10)150部(0.029モル部)を仕込み、80℃にて1時間減圧脱水した。次いで100℃にて4時間攪拌を続けてエポキシ基の消失を確認し、本発明の界面活性剤(Y15)を得た。
【0140】
<比較例1>
製造例11で得た水酸基含有ポリーテル変性シリコーン(S101)100部と、サーフィノール465{信越化学工業株式会社製、アセチレングリコールのエトキシ化体}100部を均一に混合して、比較用の界面活性剤(HY1)を得た。
【0141】
<比較例2>
水酸基含有ポリーテル変性シリコーン(S101)100部と、製造例4で得たグリシジル化合物(G2)50部を均一に混合して、比較用の界面活性剤(HY2)を得た。
【0142】
<比較例3>
水酸基含有ポリーテル変性シリコーン(S101)を比較用の界面活性剤(HY3)とした。
【0143】
実施例1〜15で得た本発明の界面活性剤(Y1)〜(Y15)及び比較例1〜3で得た比較用の界面活性剤(H1Y)〜(HY3)について、次のようにして性能評価した。
【0144】
1.表面張力の評価
動的表面張力、静的表面張力を以下の方法により測定した。
【0145】
<動的表面張力>
評価試料{本発明の界面活性剤(Y1)〜(Y15)及び比較例1〜3で得た比較用の界面活性剤(HY1)〜(HY3)}を脱イオン水に溶解して0.2%の水溶液を調製し、25±0.2℃(液温、室温)において、クルス社製のバブルプレッシャー型動的表面張力計クルスBP−2を用いて、表面寿命50Hz(20ミリ秒)〜0.1Hz(10秒)における表面張力を測定し、10Hz(100ミリ秒)における動的表面張力を表2に記載した。
また、実施例3で得た界面活性剤(Y3)、比較例1〜3で得た比較用の界面活性剤(HY1)〜(HY3)について、動的表面張力を計測した結果を図1(グラフ)に示した{横軸が表面寿命(ミリ秒)であり、縦軸が表面張力(mN/m)である}。
【0146】
<静的表面張力>
評価試料を脱イオン水に溶解して0.2%の水溶液を調製し、25±0.2℃(液温、室温)において、協和界面科学(株)製の自動表面張力計CBVP−Z型を用いて表面張力を測定した。
【0147】
【表2】
【0148】
2.塗工液カーテンの耐膜切れ性及び平滑度の評価
評価試料を含むカーテン塗工液を次のようにして調製し、塗工液カーテンの耐膜切れ性及び平滑度を評価して、これらの結果を表4に示した。
【0149】
(1)カーテン塗工液の調製
インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー{日本精器(株)製、モデルED}を用いて、表3の組成にて作成した。
【0150】
【表3】
【0151】
注1:重質炭酸カルシウム、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン製
注2:1級カオリン、エンゲルハード(株)製
注3:2級カオリン、白石工業(株)製
注4:軽質炭酸カルシウム、白石工業(株)製
注5:分散剤、サンノプコ(株)製
注6:増粘剤、サンノプコ(株)製
注7:SBRラテックス、ジェイエスアール(株)製
注8:脱イオン水
注9:界面活性剤;評価試料{用界面活性剤(Y1)〜(Y15)及び(HY1)〜(HY3)}、なお、ブランクでは脱イオン水を用いた。
【0152】
作成したカーテン塗工液は、JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応する)に準拠して分散度を測定し、5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0153】
(2)塗工液カーテンの耐膜切れ性
カーテン塗工液をカーテンフローコーター(フローコータ FL−W6G、アネスト岩田社製)にて塗工速度200m/分、塗工量(乾燥時の坪量)15g/mの条件で、坪量64g/mの上質巻き取りロール紙に塗工し、カーテン塗工する際に発生する膜切れの回数(1分間当たりの発生回数)を数え、膜切れ回数を表4に示した。数値が小さい程、耐膜切れ性(塗工性)に優れているといえる。
【0154】
(3)平滑度
カーテン塗工液を塗工した上質巻き取りロール紙をカレンダー処理(オートドライヤー L−3D、ジャポー社製、130℃、1分間、処理圧力0.3kg/cm)して、カーテン塗工紙を得た。このカーテン塗工紙をスムースター平滑度試験機(東英電子工業(株)製、形式SM−6A)を用いて平滑度を25±0.2℃、50±5%相対湿度条件下にて、測定し、平滑度を表4に示した。数字が小さいほど平滑性に優れているといえる。
【0155】
【表4】
【0156】
3.インキの耐ハジキ性の評価
(1)評価用インキの調製
スーパーエコビュア{水性グラビアインキ、プラスチックフィルム用、サカタインクス(株)製}100部に、評価試料{界面活性剤(Y1)〜(Y15)及び(HY1)〜(HY3)}を1部添加(ブランクは脱イオン水を1部添加した)し、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて2000rpm×2分間攪拌した後、脱泡機{あわとり練太郎(株)製、モデルAR−250}にて1分間脱泡して評価用インキを調製した。
【0157】
(2)耐ハジキ性の評価
評価用インキを、アセトンにて脱脂したポリエステルフィルム(縦:150mm、横:150mm、厚み:0.10mm、東レルミラーL−100T60、東レ(株)製)上にアプリケーターを用いてウェット膜厚0.076mmにて塗布(7cm×10cm)して、塗布直後のハジキ痕の数を数えて、この数を耐ハジキ性とした。これらの結果を表5に示した。
【0158】
【表5】
【0159】
本発明の界面活性剤は、比較用の界面活性剤に比較して、優れた表面張力低下能(動的表面張力低下能、静的表面張力低下能)を発揮し、膜切れ回数及び平滑度とも良好であり、さらに耐ハジキ性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の界面活性剤は、あらゆる用途に用いることができるが、特に水性コーティング液用として適しており、さらに高速で塗工又は印刷される塗料、インキ等に好適である。
図1