(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。尚、本発明の実施の形態は下記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する種々の形態を採ることができ、各実施例に記載された内容を適宜組み合わせることが可能なことはいうまでもない。
[実施例1]
【0018】
図1に示すように、弾球遊技機の一種であるパチンコ機50は、縦長の固定外郭保持枠をなす外枠51にて構成の各部を保持する構造である。外枠51の左側上下には、ヒンジ53が設けられており、該ヒンジ53の他方側には
図3に記載する内枠70が取り付けられており、内枠70は外枠51に対して開閉可能な構成になっている。前枠52には、板ガラス61が取り外し自在に設けられており、板ガラス61の奥には
図2に記載する遊技盤1が内枠70に取り付けられている。
【0019】
前枠52の上側左右及び外枠51の下側左右には、スピーカ66が設けられており、パチンコ機50から発生する遊技音が出力され、遊技者の趣向性を向上させる。また、遊技者の趣向性を向上させるために前枠52に遊技状態に応じて発光する枠側装飾ランプ65も複数設けられている。前枠52の下方には、上皿55と下皿63が一体に形成されている。下皿63の右側には発射ハンドル64が取り付けられており、該発射ハンドル64を時計回りに回動操作することによって発射装置(図示省略)が可動して、上皿55から供給された遊技球が遊技盤1に向けて発射される。
【0020】
下皿63の左側には、遊技者が操作可能な演出ボタン67が備えられており、遊技者が所定期間中に、該演出ボタン67を操作することで後述する演出図柄表示装置6に表示される内容が変化したり、スピーカ66より出力される遊技音が変化したりする。また、このパチンコ機50はいわゆるCR機であって、プリペイドカードの読み書き等を行うためのプリペイドカードユニット(CRユニット)56が付属しており、パチンコ機50には、貸出ボタン57、精算ボタン58及び残高表示器59を有するCR精算表示装置が備わっている。
【0021】
図2は、本実施例のパチンコ機50の遊技盤1の正面図である。なお、このパチンコ機50の全体的な構成は公知技術に従っているので図示及び説明は省略する。
図2に示すように遊技盤1には、公知のガイドレール2a、2bによって囲まれた略円形の遊技領域3が設けられている。この遊技領域3には多数の遊技釘4が打ち付けられている。
【0022】
遊技領域3のほぼ中央部には、センターケース5が配されている。センターケース5は、公知のものと同様に、ワープ入口、ワープ通路、ステージ、演出図柄表示装置6(液晶表示装置であり擬似図柄を表示する。)の画面6aを臨ませる窓5a等を備えている。
窓5aの上側にはドットマトリクスの普通図柄表示装置7及び7セグメントの第1特別図柄表示装置9と第2特別図柄表示装置10と4個のLEDからなる普通図柄保留記憶表示装置8が設置され、下側には第1特別図柄保留記憶表示装置18と第2特別図柄保留数示装置19が設置されている。
センターケース5の向かって左横には普通図柄作動ゲート17が配置されている センターケース5の下方には、第1始動口11と第2始動口12とがユニット化された複合入賞装置13が配置されている。
【0023】
第1始動口11は、いわゆるチャッカーであり、常時入球可能である。
第2始動口12は電動チューリップであり、周知の電動チューリップと同様に開閉変化するが、上方に第1始動口11があるために図示の閉鎖状態では遊技球を入球させることができない。しかし、遊技球が普通図柄作動ゲート17を通過すると行われる普通図柄抽選で当り、普通図柄表示装置7に当りの普通図柄が確定表示されると、第2始動口12は開放されて入球容易になる。
【0024】
複合入賞装置13の下方にはアタッカー式の大入賞口14が配置され、その下方にはアウト穴15が設けられている。また、複合入賞装置13の左側には第1左入賞口31と第2左入賞口32が、右側には第1右入賞口33と第2右入賞口34がガイドレール2bに沿うように設けられている。なお、この第1左入賞口31、第2左入賞口32、第1右入賞口33、第2右入賞口34が、常時、入球率が変化しない普通入賞口である。
【0025】
パチンコ機50の裏面は
図3に示すとおり、前述した遊技盤1を脱着可能に取り付ける内枠70が前述した外枠51に収納されている。この内枠70には、上方から、球タンク71、タンクレール72及び払出装置73が設けられている。この構成により、遊技盤1上の入賞口に遊技球の入賞があれば球タンク71からタンクレール72を介して所定個数の遊技球を払出装置73により前述した上皿55に排出することができる。また、パチンコ機50の裏側には、主制御基板80、払出制御基板81、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83、発射制御装置84、電源基板85が設けられている。なお、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83がサブ制御装置に該当する。
【0026】
主制御基板80、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83は遊技盤1に設けられており、払出制御基板81、発射制御装置84、電源基板85が内枠70に設けられている。なお、
図3では、発射制御装置84が描かれていないが、発射制御装置84は払出制御基板81の下に設けられている。また、球タンク71の右側には、外部接続端子78が設けられており、この外部接続端子78より、遊技状態や遊技結果を示す信号が図示しないホールコンピュータに送られる。なお、従来はホールコンピュータへ信号を送信するための外部接続端子78には、盤用(遊技盤側から出力される信号をホールコンピュータへ出力するための端子)と枠用(枠側(前枠52、内枠70、外枠51)から出力される信号をホールコンピュータへ出力するための端子)の2種類を用いているが、本実施例では、一つの外部接続端子78を介してホールコンピュータへ遊技状態や遊技結果を示す信号を送信している。
【0027】
このパチンコ機50の電気的構成は、
図4のブロック図に示すとおり、主制御基板80を中心にして構成されている。なお、このブロック図には、単に信号を中継するだけのためのいわゆる中継基板及び電源回路等は記載していない。また、詳細の図示は省略するが、主制御基板80、払出制御基板81、演出図柄制御装置82、サブ統合制御装置83のいずれもCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えているが、本実施例では発射制御装置84にはCPU、ROM、RAMは設けられていない。しかし、これに限るわけではなく、発射制御装置84にCPU、ROM、RAM等を設けてもよい。
【0028】
主制御基板80には、第1始動口11に入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ11a、第2始動口12に入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ12a、普通図柄作動ゲート17に進入した遊技球を検出する普通図柄作動スイッチ17a、大入賞口14に入球した遊技球を計数するためのカウントスイッチ14a、第1左入賞口31、第2左入賞口32に入球した遊技球を検出する左入賞口スイッチ31a、第1右入賞口33、第2右入賞口34に入球した遊技球を検出する右入賞口スイッチ33a等の検出信号が入力される。
【0029】
主制御基板80は搭載しているプログラムに従って動作して、上述の検出信号などに基づいて遊技の進行に関わる各種のコマンドを生成して払出制御基板81及びサブ統合制御装置83に出力する。
また主制御基板80は、図柄表示装置中継端子板90を介して接続されている第1特別図柄表示装置9、第2特別図柄表示装置10及び普通図柄表示装置7の表示、第1特別図柄保留記憶表示装置18、第2特別図柄保留数表示装置19及び普通図柄保留記憶表示装置8の点灯を制御する。
【0030】
更に、主制御基板80は、大入賞口ソレノイド14bを制御することで大入賞口14の開閉を制御し、普通電動役物ソレノイド(
図4では普電役物ソレノイドと表記)12bを制御することで第2始動口12の開閉を制御する。
主制御基板80からの出力信号は試験信号端子にも出力される他、図柄変動や大当り等の管理用の信号が外部接続端子78に出力されてホールメインコンピュータに送られる。主制御基板80と払出制御基板81とは双方向通信が可能である。
【0031】
払出制御基板81は、主制御基板80から送られてくるコマンドに応じて払出モータ20を稼働させて賞球を払い出させる。本実施例においては、賞球として払い出される遊技球を計数するための払出センサ21の検出信号は払出制御基板81に入力され、払出制御基板81で賞球の計数が行われる構成を用いる。この他にも主制御基板80と払出制御基板81に払出センサ21の検出信号が入力され、主制御基板80と払出制御基板81の双方で賞球の計数を行う構成を用いることも考えられる。
【0032】
なお、払出制御基板81はガラス枠開放スイッチ35、内枠開放スイッチ36、満杯スイッチ22、球切れスイッチ23からの信号が入力され、満杯スイッチ22により下皿63が満タンであることを示す信号が入力された場合及び球切れスイッチ23により球タンクに遊技球が少ないあるいは無いことを示す信号が入力されると払出モータ20を停止させ、賞球の払出動作を停止させる。なお、満杯スイッチ22、球切れスイッチ23も、その状態が解消されるまで信号を出力し続ける構成になっており、払出制御基板81は、その信号が出力されなくなることに起因して払出モータ20の駆動を再開させる。
【0033】
また、払出制御基板81は遊技球等貸出装置接続端子24を介してプリペイドカードユニットと交信することで払出モータ20を作動させ、貸し球を排出する。払出された貸し球は払出センサ21に検出され、検出信号は払出制御基板81に入力される。なお、遊技球等貸出装置接続端子24は精算表示基板25とも双方向通信可能に接続されており、精算表示基板25には、遊技球の貸出しを要求するための球貸ボタン、精算を要求するための返却ボタン、残高表示器が接続されている。
【0034】
また、払出制御基板81は、外部接続端子78を介して賞球に関する情報、枠(内枠、前枠)の開閉状態を示す情報などをホールコンピュータに送信するほか、発射制御装置84に対して発射停止信号を送信する。
なお本実施例では遊技球を払い出す構成であるが、入賞等に応じて発生した遊技球を払い出さずに記憶する封入式の構成にしても良い。
【0035】
発射制御装置84は発射モータ30を制御して、遊技球を遊技領域3に遊技球を発射させる。なお、発射制御装置84には払出制御基板81以外に発射ハンドルからの回動量信号、タッチスイッチ28からのタッチ信号、発射停止スイッチ29から発射停止信号が入力される。
回動量信号は、遊技者が発射ハンドルを操作することで出力され、タッチ信号は遊技者が発射ハンドルを触ることで出力され、発射停止スイッチ信号は、遊技者が発射停止スイッチ29を押すことで出力される。なお、タッチ信号が発射制御装置84に入力されていなければ、遊技球は発射できないほか、発射停止スイッチ信号が入力されているときには、遊技者が発射ハンドルを触っていても遊技球は発射できないようになっている。
【0036】
サブ統合制御装置83はサブ制御装置に該当し、主制御基板80から送信されてくるデータ及びコマンドを受信し、それらを演出表示制御用、音制御用及びランプ制御用のデータに振り分けて、演出表示制御用のコマンド等は演出図柄制御装置82に送信し、音制御用及びランプ制御用は自身に含まれている各制御部位(音声制御装置及びランプ制御装置としての機能部)に分配する。そして、音声制御装置としての機能部は、音声制御用のデータに基づいて音LSIを作動させることによってスピーカからの音声出力を制御し、ランプ制御装置としての機能部はランプ制御用のデータに基づいてランプドライバを作動させることによって各種LED、ランプ26を制御する。 また、サブ統合制御装置83には、演出ボタン67が接続されており、遊技者が演出ボタン67を操作した際には、その信号がサブ統合制御装置83に入力される。
【0037】
サブ統合制御装置83と演出図柄制御装置82とは双方向通信が可能である。
演出図柄制御装置82は、サブ統合制御装置83から受信したデータ及びコマンド(共に主制御基板80から送信されてきたものとサブ統合制御装置83が生成したものとがある)に基づいて演出図柄表示装置6を制御して、擬似図柄等の演出画像を画面6aに表示させる。
【0038】
図5に電源基板85と、主制御基板80、払出制御基板81を含む遊技機各部との間の給電および信号系を示す。各パチンコ遊技機の電源基板85は、パチンコ店側に設けられたAC24V電源を電源スイッチ671を介して電源生成回路672が受けており、電源生成回路672が、図示の主制御基板81、払出制御基板81を含む遊技機各部に給電する。電源スイッチ671はオンまたはオフの操作をするとその状態を保持するタイプが用いられる。
【0039】
電源生成回路672における全波24V出力は電源電圧監視回路673に入力し、電源電圧監視回路673による全波24V出力の有無の検出結果に基づいてリセット信号発生回路674がリセット信号を出力もしくは解除する。すなわち、電源電圧監視回路673は所定の基準電圧以上の非出力状態が所定の時間、維持すれば全波24V出力停止と判断し、リセット信号発生回路674は全波24V出力停止との判断に応じてリセット信号を出力する。一方、全波24V出力が開始されるとリセット信号は解除される。ここで、リセット信号の出力とはロウレベルの信号を出力することであり、解除とはロウレベルからハイレベルに変化することをいう。なお、リセット信号の解除は、全波24V出力の検出時点から遅延時間Ta の後なされる。
【0040】
リセット信号発生回路674の出力は主制御基板81、払出制御基板81それぞれのCPU611、621のリセット端子に出力される。
【0041】
電源電圧監視回路673の出力を入力として停電信号発生回路675が設けてあり、停電等の電源遮断時に停電信号を各制御基板CPU611、621のNMI端子に出力するようになっている。停電信号は電源遮断に伴ってハイレベルからロウレベルに変化する信号であり、リセット信号が出力するに先立って出力するように出力タイミングが設定されている。
【0042】
また、電源基板85は、コンデンサを含み構成されたバックアップ電源生成回路678によりDC5Vのバックアップ電源(VBB)を生成する構成となっており、バックアップ電源(VBB)出力は各制御基板CPU611、621のバックアップ端子(VBB) に出力され、停電時には後述するように各制御基板CPU611、621のRAMの記憶内容を保持する。
【0043】
電源基板85はまた、RAMクリアスイッチ676を備えている。RAMクリアスイッチ676はCPU611、621の各RAM615,625に記憶されている内容をクリアするために設けられる。
【0044】
RAMクリアスイッチ676には押下時のみオンする押し釦タイプのものが用いられ、上記リセット信号の解除時にRAMクリアスイッチ676がオンであれば、RAMクリア信号発生回路677が、ハイレベルの信号であるRAMクリア信号を主制御基板80、払出制御基板81それぞれの入力ポート613、623に所定時間(後述)の間、出力する。すなわち、RAMクリア信号はリセット信号が解除される電源投入時のみ出力される。ここで電源スイッチ671のオンからリセット信号解除までの遅延時間Ta は例えば100msに設定され、RAMクリア信号を発生せしめるにはRAMクリアスイッチ676を押下しながら電源スイッチ671をオンすることになる。なお、各制御基板CPU611、621は入力ポート613、623におけるRAMクリア信号の有無をデータバスを介して監視する。
【0045】
図6にRAMクリアスイッチ676を押下しながら電源スイッチ671をオンし電源基板85から給電を開始した時の電源基板85、主制御基板80および払出制御基板81の各部の作動状態を示す。
【0046】
電源スイッチ671のオン(電源投入時)から時間Ta 経過後にリセット信号が解除され、このリセット信号解除が有効になると、主制御基板CPU611がセキュリティチェックを開始する。図示はされていないが、払出制御基板のCPU621もリセット信号解除が有効になった時点からセキュリティチェックを行なう。セキュリティチェック時間T1 はCPUの種類、システムクロック周波数等にもよるが、本具体例において主制御基板CPU611では185msとした。なお、セキュリティチェックとは、周知のごとくワンチップマイコンである各CPU611、621等が遊技の進行内容を書き込んだROMの内容が正規の内容であるか否かをチェックすることである。
【0047】
パチンコ機50においては、主制御基板CPU611のセキュリティチェック時間T1 は、払出制御基板CPU621のセキュリティチェックに要する時間より長く掛かる。このため、主制御基板CPU611のセキュリティチェック完了時には払出制御基板CPU621はセキュリティチェックが完了し、主制御基板CPU611がROMに書き込まれたプログラムにしたがって遊技の制御を開始する時には、払出制御基板CPU621は既に遊技の制御を実行している。この結果、電源投入後、主制御基板CPU611が直ちに払出制御基板CPU621にデータを送信しても、払出制御基板CPU621はセキュリティチェックを終え自身の制御を実行しているので確実にデータを受信することができる。
【0048】
一方、RAMクリアスイッチ676を押しながら電源スイッチ671をオンしているので、リセット信号が解除された時点から所定時間の間RAMクリア信号が出力されることになる。この「所定時間」は、リセット信号が解除された時点からRAMクリアスイッチ676が押されるのが停止(一般には、操作者がRAMクリアスイッチ676から手を離すことにより実現)されるまでの時間に、T3 を加えた時間である。ここで、T3 とは、電源投入時にRAMクリアスイッチ676が押されていた場合に、主制御基板CPU611のセキュリティチェックが終了して、後述する電源投入時の処理を開始する(正確には同処理のS10(
図8参照)を実行する)時点で、主制御基板CPU611がRAMクリア信号を確実に検知するために確保された時間である。一般に、操作者が電源スイッチ671をオンしてからRAMクリアスイッチ676から手を離すまでの時間は、主制御基板CPU611のセキュリティチェックに要する時間よりも十分長いと考えられるが、操作者が性急にRAMクリアスイッチ676から手を離した場合を考慮して、主制御基板CPU611のセキュリティチェックに要する185msよりも長い時間である300msをT3 としている。これは、RAMクリア信号発生回路677が、RAMクリアスイッチ676が押されるのが停止されるのを検知すると、そこから更にT3 の後にRAMクリア信号を停止することにより実現される。これにより、RAMクリア信号が停止される時点は、操作者がRAMクリアスイッチ676から手を離した時点に対応して変化する。
【0049】
また、電源スイッチ671、RAMクリアスイッチ676は、
図7に示すように、いずれも電源基板85の一方の面に固定されており、電源基板85は、これらスイッチ671、676固定面側から樹脂を成形した箱状のカバーにより覆われている。電源スイッチ671およびRAMクリアスイッチ676はカバーから露出されて互いに近接配置されている。このため、カバーを外すことなく、片手で両スイッチ671,676を同時に操作可能となっている。
【0050】
電源投入時に主制御基板80のCPU611により実行される処理について
図8を用いて説明する。電源スイッチ671が操作されてパチンコ機50が通電状態になり、リセット信号が解除され、CPU611自身のセキュリティチェックが終了すると、本処理が起動され、電源投入の初期処理を実行する(S5)。そしてRAMクリア信号がオンか否かを判定する(S10)。RAMクリア信号は、上述したように、リセット信号の解除時にRAMクリアスイッチ676がオン状態であればH(オン)になるものなので、これは実質的に、電源投入時にRAMクリアスイッチ676がオン状態だったか否かを判定していることになる。
【0051】
RAMクリア信号がオンではなかったとき(S10:no)は、パチンコ機50を電源断時の状態に復旧する。そのためにまず、電源断時の発生情報が正常か否かを判定し(S15)、正常であれば(S15:yes)、RAMの判定値を算出し(S20)、その判定値が正常か否かを判定する(S25)。ここでRAMの判定値とは、電源断時にRAMに保存された値で、S25では、S20で算出された値と、RAMに保存された値が一致するか否かを判定する。判定値が正常、すなわち判定値が保存された値と一致していれば(S25:yes)、電源復帰時の処理(例えば、電源断時の発生情報をクリアしたり、サブ統合制御装置83を電源断時の遊技状態に復帰させるためのコマンドを送信したりする)を行なう(S30)。そして割り込み設定を行い(S35)、メインルーチンに移行する。
【0052】
RAMクリア信号がオンだったとき(S10:yes)は、パチンコ機50を初期状態に戻す。そのためにまず、S40の無限ループにてRAMクリア信号がオフになるのを待つ。オフになったらRAMの全てを0クリアし(S45)、初期値乱数設定処理を実行する(S50)。こうして初期値乱数設定処理が終了するとRAMの初期設定を行い(S55)、割り込み設定を行い(S60)、メインルーチンに移行する。
【0053】
初期値乱数設定処理を
図10に示す。本処理が起動すると、まずハード乱数を取得する(S200)。ハード乱数とは、主制御基板80のCPU611が備える乱数生成回路616(
図5参照)により発生される乱数値である。乱数生成回路616は、CPU611の通電と略同時に起動(
図6も参照)し、0〜65535の値を、1周期内では重複なく一定の規則(例えば0→1→2→・・・→65535→0→・・・)で更新し生成する。なお、CPU611の乱数生成回路616の周期は50msとなっている。電源投入から初期値乱数設定処理(S50)を実行するまでの時間は、S40の無限ループを何回繰り返すかによって変化する。この繰り返し回数は、RAMクリアスイッチ676を押しながら電源スイッチ671をオンにしてから、RAMクリアスイッチ676を押すのをやめるまでの時間(以下、操作時間という)によって決まることになる。これ以外の要因としては、温度変化などによるCPU611の動作クロックの周期変化も考えられるが、操作時間のばらつきの方が圧倒的に大きいので、操作時間が支配的となる。操作時間は上記操作の都度、変化すると考えられるので、初期値乱数設定処理でソフト乱数の初期値として設定される値は毎回異なると期待できる。
【0054】
こうして取得したハード乱数を、大当り決定用乱数の最大値+1で割った余り(αとする)を算出する(S205)。パチンコ機50では大当り決定用乱数の最大値は349となっており(後述)、S205では349+1、すなわち350でハード乱数の取得値を割ることになる。例えばS200で取得したハード乱数が65000だった場合、350で割ると商が185、余りが250となるので、α=250である。S210では、このαをソフト乱数の初期値として設定し、終了(
図8の処理にリターン)する。
【0055】
メインルーチンを
図9に従って説明する。なお、
図8ではメインルーチンを、電源投入時の処理に引き続き実行される処理であるかのように示したが、実際にはメインルーチンは、S35またはS60までの処理を実行した後、約2ms毎のハード割り込みにより繰り返し実行される。本実施形態では、当該メインルーチンが1回起動されるごとにS100〜S155までの1回だけ実行される処理を「本処理」と称し、この本処理を実行して余った時間内に時間の許す限り繰り返し実行されるS160の処理を「残余処理」と称する。「本処理」は上記割り込みにより定期的に実行されることになる。
【0056】
マイコンによるハード割り込みが実行されると、まず正常割り込みであるか否かが判断される(S100)。この判断処理は、メモリとしてのRAMの所定領域の値が所定値であるか否かを判断することにより行われ、マイコンにより実行される処理が本処理に移行したとき、通常の処理を実行して良いのか否かを判断するためのものである。正常割り込みでない場合としては、電源投入時又はノイズ等によるマイコンの暴走等が考えられるが、マイコンの暴走は近年の技術の向上によりほとんど無いものと考えて良いので、たいていが電源投入時である。電源投入時にはRAMの所定領域の値が所定値と異なる値となっている。
【0057】
正常割り込みでないと判断されると(S100:no)、初期設定(例えば前記メモリの所定領域への所定値を書き込み、特別図柄及び普通図柄を初期図柄とする等のメモリの作業領域への各初期値の書き込み等)が為され(S105)、残余処理(S160)に移行する。
【0058】
正常割り込みとの肯定判断がなされると(S100:yes)、初期値乱数更新処理が実行される(S110)。この処理は、初期値乱数の値についてこの処理を実行する毎に+1するインクリメント処理であり、この処理実行前の初期値乱数の値に+1するが、この処理を実行する前の乱数値が最大値である「349」のときには次回の処理で初めの値である「0」に戻り、「0」〜「349」までの350個の整数を繰り返し昇順に作成する。
【0059】
S110に続く大当り決定用乱数更新処理(S115)は、初期値乱数更新処理と同様に処理を実行する毎に+1するインクリメント処理であり、最大値である「349」のときは次回の処理で初めの値である「0」に戻り、「0」〜「349」までの350個の整数を繰り返し昇順に作成する。なお、大当たり決定用乱数の最初の値は、初期値乱数設定処理で設定された値となる。前述の例では、α=250であったから、大当り決定用乱数は「250」「251」「252」・・・「349」「0」「1」・・・と更新されていく。
【0060】
なお、大当り決定用乱数が1巡(350回、更新されること)すると、そのときの前記初期値乱数の値を大当り決定用乱数の初期値にし、大当り決定用乱数は、その初期値から+1するインクリメント処理を行う。そして、再び大当り決定用乱数が1巡すると、その時の初期値乱数の値を大当り決定用乱数の初期値にする動作を行なう。つまり、この一連の動作を繰り返し続けることになる。前述の例では大当り決定用乱数が「249」になると1巡であるから、「249」の次は前記初期値乱数の値となる。仮に初期値乱数の値が「87」だったとすると、「249」「87」「88」・・・「349」「0」「1」・・・「86」と変化していき、「86」の次は新たな前記初期値乱数の値となる。
大当り図柄決定用乱数更新処理(S120)は「0」〜「9」の10個の整数を繰り返し作成するカウンタとして構成され、本処理毎に+1され最大値を超えると初めの値である「0」に戻る。
【0061】
S120に続く当り決定用乱数更新処理(S125)は、「0」〜「5」の6個の整数を繰り返し作成するカウンタとして構成され、本処理毎で+1され最大値を超えると初めの値である「0」に戻る。なお、当選することとなる値の数は通常確率状態時、高確率状態時ともに3であり、値は「0」、「3」、「5」である。 なお、この当り決定用乱数更新処理は普通図柄の抽選に使用し、その他の初期値乱数、大当り決定用乱数、大当り図柄決定用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン決定用乱数は特別図柄の抽選に使用する。
【0062】
リーチ判定用乱数更新処理(S130)は、「0」〜「228」の229個の整数を繰り返し作成するカウンタとして構成され、本処理毎で+1され最大値を超えると初めの値である「0」に戻る。なお、通常確率状態時で変動時間短縮機能未作動時に当選する値の数は21で、値は「0」〜「20」であり、通常確率状態時で変動時間短縮機能作動時に当選する値の数は5で、値は「0」〜「4」であり、高確率状態時に当選する値の数は6で、値は「0」〜「5」である。
【0063】
変動パターン決定用乱数更新処理(S135)は、「0」〜「1020」の1021個の整数を繰り返し作成するカウンタとして構成され、本処理毎で+1され最大値を超えると初めの値である「0」に戻る。なお、大当り決定用乱数、大当り図柄決定用乱数、当り決定用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン決定用乱数を、前述のハード乱数に対してソフト乱数と呼ぶ(
図6も参照)。
【0064】
続く入賞確認処理(S140)では、第1始動口11、第2始動口12の入賞の確認及びパチンコ機50に設けられ主制御基板80に接続された各スイッチ類の入力処理が実行される。
本実施例では、遊技球が第1始動口11、第2始動口12に入賞すると大当り決定用乱数、大当り図柄決定用乱数、変動パターン決定用乱数、リーチ判定用乱数など複数の乱数を取得されるのだが、保留記憶できる数を第1始動口11と第2始動口12それぞれ4個までとしており、第1保留記憶が満タンである4個のときに遊技球が第1始動口11に入賞又は第2保留記憶が満タンである4個のときに遊技球が第2始動口12に入賞しても賞球が払出されるだけで、前記複数の乱数は保留記憶されない構成になっている。
【0065】
続いて、大当りか否かを判定する条件成立判定手段としての当否判定処理(S145)を行う。この当否判定処理(S145)が終了すると、続いて画像出力処理等の各出力処理(S150)が実行される。
【0066】
各出力処理(S150)では、遊技の進行に応じて主制御基板80は演出図柄制御装置82、払出制御基板81、発射制御装置84、サブ統合制御装置83、大入賞口ソレノイド14b等に対して各々出力処理を実行する。即ち、入賞確認処理(S140)により遊技盤1上の各入賞口に遊技球の入賞があることが検知されたときには賞球としての遊技球を払い出すべく払出制御基板81に賞球データを出力する処理を、遊技状態に対応したサウンドデータをサブ統合制御装置83に出力する処理を、パチンコ機50に異常があるときにはエラー中であることを報知すべく演出図柄制御装置82にエラー信号を出力する処理を各々実行する。
【0067】
続く不正監視処理(S155)は、普通入賞口(第1左入賞口31、第2左入賞口32、第1右入賞口33、第2右入賞口34)に対する不正が行われていないか監視する処理であり、所定時間内における入賞口への遊技球の入球が予め決定された規定数よりも多いか否かを判断して、多かった場合には不正と判断され、その旨を報知する処理である。つまり、不正判断手段は、主制御基板80に設けている。
【0068】
本処理に続く前述の残余処理は、初期値乱数更新処理(S160)から構成されるが、前述したS110と全く同じ処理である。この処理は無限ループを形成し、次の割り込みが実行されるまで時間の許される限り繰り返し実行される。前述したS100〜S155までの本処理を実行するのに必要とされる時間は、大当り処理を実行するか否か、特別図柄の表示態様の相違等により割り込み毎に異なる。この結果、残余処理を実行する回数も割り込み毎に異なり、
図9に示された割り込み処理が1回実行されることにより初期値乱数に更新される値も一律ではなくなる。これにより、初期値乱数が大当り決定用乱数と同期する可能性は極めて小さくなる。大当たり決定用乱数が1巡したときの、初期値乱数の値(0〜349の350通り)が、同程度に発生するとすれば、同期する確率はわずか1/350である。また、前述した当り決定用乱数更新処理(S125)も残余処理内において実行するよう構成しても良い。
【0069】
以上のように構成されたパチンコ機50によれば、たとえRAMクリアスイッチ676を押しながら電源スイッチ671をオンにしても、RAMクリアスイッチ676を押すのをやめた際(より正確には、RAMクリアスイッチ676を押すのをやめてからT3 後。更に正確には、この時間T3 が経過し、RAMクリア信号がオフになったことを主制御基板CPU611が検知(
図8のS40参照)して、更にRAMの全てを0クリア(
図8のS45参照)した後)のハード乱数の値に基づいて、大当たり決定用乱数の初期値が決定される。TaやT3 の値はRAMクリアの操作ごとにほぼ一定であるが、リセット信号が解除されてからRAMクリアスイッチ676がオフになる(操作者がRAMクリアスイッチ676を押すのをやめる)までの時間は毎回異なる。このため、ハード乱数の値が、以前と同じハード乱数の値になることは殆ど無く、大当たり決定用乱数の初期値もRAMクリア操作を行なうごとに異なると期待することができる。従って、RAMクリア操作を行なうことにより大当たりを狙うという不正行為が極めて困難になる。
【0070】
ハード乱数は、50msで0〜65535の値を一巡するという極めて高速な更新を行なうため、操作者が、電源スイッチ671のオン操作と同時にRAMクリアスイッチ676から手を離す癖を持っていたとしても、同じ値になることは殆ど無い。なお、操作者が電源スイッチ671のオン操作よりも先にRAMクリアスイッチ676から手を離してしまった場合は、S10でnoと判定されてパチンコ機50の復旧動作が始まるので、RAMクリアを利用した不正行為が行なわれる心配は無い。RAMクリアが必須ならば、そのパチンコ機50の通電を再び遮断し(例えば電源スイッチ671をオフにし)、RAMクリア操作を行なえばよい。
【0071】
ここで本実施例の構成と、本発明の構成要件との対応関係を示す。S110〜S115の処理が本発明の「第1乱数発生手段」に相当し、S145の処理が本発明の「制御手段」に相当し、RAMクリアスイッチ676が本発明の「クリアスイッチ」に相当し
、S10の処理およびRAMクリア信号発生回路677が本発明の「推定手段」に相
当し、乱数生成回路616が本発明の「第2乱数発生手段」に相当し、S50の処理が本発明の「初期値設定手段」に相当し、S30の処理が本発明の「復旧手段」に相当に相当する。なお、RAMクリア信号発生回路677は本発明の「非操作信号出力手段」にも相当する。
【0072】
[他の実施例]
上記実施例では、ハード乱数を用いて大当り決定用乱数の初期値を決定していたが、これに替えてハード乱数で初期値乱数の初期値を決定しても良い。こうすると、ハード乱数の値が初期値乱数に影響を与えるので、1巡目だけではなく、2巡目以降の大当たり決定乱数にも影響を与えることになる。この場合、1巡目の大当り決定用乱数の初期値は、初期値乱数の値とするとよい。また、ハード乱数の値を大当り乱数の初期値に設定する際の算出を、S205で行なった演算以外の方法にて行なってもよい。例えば、第2乱数の値と、これに対応する第1乱数の初期値として設定すべき数値とを対応づけたテーブルを予め用意しておき、このテーブルを参照することにより第1乱数の初期値を設定してもよい。ただしこうすると、第1乱数の初期値として設定し得る数(前記実施例では350通り)だけテーブルのデータも用意する必要があり、このテーブルを格納するためのROM等が容量を圧迫する可能性がある。この点、前記実施例では、ハード乱数の値を大当たり決定用乱数の最大値+1で割った際の余りを算出しているので、記憶容量が少なくて済む。なお、この算出を行なう際には、ハード乱数の値を大当たり決定用乱数の最大値+1で実際に除算してもよいが、ハード乱数の値から大当たり決定用乱数の最大値+1を繰り返し減算し、算出値がマイナスになったら大当たり決定用乱数の最大値+1を加えることにより算出してもよい。
RAMクリアにより0クリアされるのは、CPU611のRAM615及びCPU621のRAM625であったが、それ以外の箇所にある不揮発性のRAM(例えば主制御基板61にあるが、CPU611の外部に設けられた不揮発性のRAMや、払出制御基板81など他の図示しない基板に設けられた不揮発性のRAM)やRAM以外の記憶媒体の記憶内容をクリアしてもよい。また、払出制御基板81のRAM(RAM625に限らない)の記憶内容をクリアするには、RAMクリア信号を契機としてクリアしてもよいし、主制御基板61のCPU611からクリアする旨のコマンドを払出制御基板81に送信し、このコマンドの受信を契機としてクリアしてもよい。
【0073】
リセット信号は、リセット信号発生回路674から直接、主制御基板80および払出制御基板81に入力していたが、所定の遅延回路を介して双方もしくは一方に入力するように構成してもよい。例えば、パチンコ機50では、セキュリティチェックに要する時間が、主制御基板CPU611の方が払出制御基板CPU621よりも長かったので、遅延回路は不要であったが、払出制御基板CPU621の方がセキュリティチェックに長時間を要する場合には、リセット信号は適切な遅延回路を介して主制御基板CPU611に入力されるようにすれば、起動した主制御基板CPU611が直ちに払出制御基板CPU621にデータを送信しても、払出制御基板CPU621はセキュリティチェックを終えた状態にすることができる。 また、上記実施例ではいずれも信号をハイアクティブとして構成したが、一部(または全て)の信号をローアクティブとして構成し直しても構わない。例えば、RAMクリア信号をローアクティブとし、RAMクリアを行なう時点を、RAMクリア信号の立ち上がりを待って行なうように構成してもよい。
【0074】
また、上記実施例では、RAMクリア信号を、電源スイッチ671をオンにした際にRAMクリアスイッチ676がオンになっていたか否かの判定と、RAMクリアスイッチ676がオフになったか否かの判定との、双方に用いていたが、それぞれ別の信号を用いて判定するようにしても良い。例えば、RAMクリア信号は、上記と同様、リセット信号の解除時にRAMクリアスイッチ676がオンであれば、RAMクリア信号発生回路677が発生させるものとし、これとは別に、このRAMクリア信号がハイの状態において、RAMクリアスイッチ676がオフになると、T3 の後に所定の信号を発生し、CPU611がこの信号を検出するとRAMの全てを0クリアしてハード乱数を取得するように構成してもよい。
また、前記実施例では、電源スイッチ671およびRAMクリアスイッチ676を、電源基板85に設けていたが、別の箇所(例えば主制御基板61や払出制御基板62など)に双方または一方を設けてもよい。