(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態に係るタクシーの最適配置システムの一例について、図面を参照して説明する。
【0028】
まず、本実施形態におけるタクシーの最適配置システムの構成の概要を、
図1を参照して説明する。
図1はタクシーの最適配置システムの構成を説明する図である。本実施形態におけるタクシーの最適配置システムを運用するタクシー事業者(以下、事業者という)は、複数の運転者及び複数の車両を保有し、所定の営業区域において営業の認可を受けた法人である。
【0029】
本実施形態におけるタクシーの最適配置システムは、
図1に示すように、管理センター10に設けられた基地局100と、複数の車両20にそれぞれ搭載された移動局200とが、無線300及びネットワーク回線500を介して相互に通信可能に接続されている。この無線300及びネットワーク回線500は、本実施形態における基地局100と移動局200とを相互に通信可能に接続した通信手段の一例である。
【0030】
詳細は後述するが、本実施形態においては、管理センター10の基地局100は、複数の車両20に搭載された移動局200から最新の車両識別情報及び車両位置情報を、通信手段を介して取得し、取得した車両識別情報に応じた最適な車両の移動を指示する。
【0031】
無線300は、基地局100に設置された無線アンテナ101と、移動局200に設置された無線アンテナ201とを介して音声による交信を行うものであり、例えば、電話予約における迎車サービスが発生した場合に、基地局100に駐在するオペレータは、お客様の氏名、迎車位置(住所)及び迎車時間などを、指示対象となる車両20の移動局200へ音声で指示する。また、無線300にはアナログ通信方式やデジタル通信方式のものがあり、何れの通信方式を用いてもよいが、本実施形態では限られたタクシー無線の周波数を効率良く利用する為のデジタル通信方式が用いられる。また、無線300にデジタル通信方式を用いることで、音声データだけではなく画像データなども基地局100と移動局200との双方向に送受信可能とすることができる。
【0032】
ネットワーク回線500は、周知の公衆通信回線(携帯電話通信回線、インターネット回線など)であり、本実施形態における基地局100と移動局200との通信手段は、上記の無線300だけではなく、ネットワーク回線500によっても接続されている。そして、ネットワーク回線500を介して、後述の車両位置検出手段や車両状態識別手段などにより生成された最新の車両識別情報や車両位置情報が、移動局200から基地局100へ送信される。また、基地局100から移動局200へは、これも後述の配車手段により決定された移動先の地区情報が送信される。
【0033】
タクシーの最適配置システムにおける基地局100の構成の概要を、
図2を参照して説明する。
図2はタクシーの最適配置システムにおける基地局100の構成を説明する図である。
【0034】
基地局100は、記憶部110(地図データ記憶手段111、実車実績記憶手段112、係数記憶手段113、会員情報記憶手段114)、制御部120、無線通信制御部130、外部通信I/F制御部140、電話予約登録部150、表示装置160、入力装置170などで構成されている。
【0035】
制御部120は、図示しない演算装置としてのCPUや記憶装置としてのROM、RAM、HDD(Hard Disk Draiver)、などから構成されており、ROM又はHDDに予め記憶されている各種手段(後述の需要予測算出手段、配車手段など)を実行するための各種プログラムをCPUが読み出して実行する。また、入力装置170に対する所定の操作に応じて、本実施形態におけるタクシーの最適配置システムに係る各種情報を表示装置160に表示させる制御を実行する。
【0036】
記憶部110は、大容量のHDDや不揮発性のフラッシュメモリなどで構成され、タクシーの最適配置システムを運用するための各種データ(地図データ記憶手段111、実車実績記憶手段112、係数記憶手段113、会員情報記憶手段114など)を記憶する機能を有する。
【0037】
記憶部110における地図データ記憶手段111は、少なくとも営業圏が含まれた全体の地図データ(
図7参照)と、複数の地区(以下、エリアという)毎に区画された地図データ(
図9参照)とを記憶している。実車実績記憶手段112は、複数のエリア毎に、月別、曜日別、時間帯別に発生した実車台数を実車実績情報として記憶している。
【0038】
係数記憶手段113は、月係数及び曜日係数等の各種係数を記憶している。月係数は、
図11に示すように年間を通した月単位の実車実績の平均値に対して、各月の実車実績の増減比率を示すものであり、月毎の実車実績の増減割合の比率が設定されている。曜日係数は、
図12に示すように年間を通した曜日単位の実車実績の平均値に対して、各曜日の実車実績の増減比率を示すものであり、曜日毎の実車実績の増減割合の比率が設定されている。なお、
図11及び
図12に示す月係数及び曜日係数は、営業圏の市場動向の変化に応じてその都度変更されるものである。
【0039】
会員情報記憶手段114は、登録された会員の目的地別の行先ルート(以下、習慣的ルートという)を含む個人情報などが記憶されている。
【0040】
無線通信制御部130は、基地局100に設置された無線アンテナ101と移動局200に設置された無線アンテナ201を介して、基地局100と複数の移動局200との音声による交信を制御するものである。具体的には、基地局100の無線通信制御部130は、無線300を介して接続された複数の移動局200に対して一斉に音声を発信することができるとともに、複数の移動局200からの音声を受信することができる。
【0041】
外部通信I/F制御部140は、ネットワーク回線500により基地局100と移動局200との通信を制御するものである。このネットワーク回線500を介して、後述の車両位置検出手段や車両状態識別手段などにより生成された最新の車両識別情報や車両位置情報(以下、車両情報ともいう)が移動局200から基地局100へ送信される。また、基地局100から移動局200へは、これも後述の配車手段により決定された車両の移動先のエリアが送信される。
【0042】
電話予約登録部150は、お客様からの電話予約を受け付けるものであり、図示しない公衆電話回線網を介した電話によるお客様の乗車予約を、当該お客様の迎車位置(例えば、住所など)の近距離に位置する空車車両に割り当てる予約配車手段として機能する。予約配車手段は電話予約のお客様を待たせることなく、空車車両を手配することができる周知の最適車両検索自動配車システムである。具体的には、予約配車手段は、お客様からの電話予約を受け付けると、当該お客様が指定する迎車位置に基づいて、最も早くお迎えにいける空車車両を検索して決定し、当該空車車両に対してお客様への迎車を指示する。
【0043】
電話予約登録部150は、お客様が会員として登録されていた場合、記憶部110の会員情報記憶手段114に予め登録されている会員情報(会員毎に予め決められた目的地などに到達するための習慣的ルート等)を、お客様の迎車に向かう車両の移動局200に、本実施形態にかかる通信手段を介して迎車の指示と併せて送信する。これにより、迎車を指示され会員情報を受信した車両の運転手は、当該会員情報を利用して、速やかに会員であるお客様の習慣的ルートを把握することができる。また、流し営業中の空車車両に乗車したお客様が会員だった場合は、会員であることの指示を受けた運転手からの要請に応じて、基地局100は、記憶部110の会員情報記憶手段114に予め登録されている会員情報を、会員であるお客様が実車状態となった車両に発信することで、当該車両の運転手は、速やかにお客様の習慣的ルートを把握することができる。
【0044】
つまり、本実施形態におけるタクシーの最適配置システムでは、当該タクシーの最適配置システム配下の全ての車両の移動局200に、基地局100から会員情報を送信できるため、決まった運転手が運転する車両だけではなく、全ての運転手が運転する車両で、会員となったお客様が満足できるサービスを均一で提供することが可能である。
【0045】
表示装置160は、表示部分にタッチパネルセンサなどの機能有する複数の液晶ディスプレーから構成されている。制御部120は、後述の入力装置170の操作に応じて、現在稼働中の複数の車両の最新の車両情報を、少なくとも営業圏が含まれた全体の地図データ(
図7参照)に重ねて表示装置160に表示することで、本実施形態におけるタクシーの最適配置システムの稼働状況を基地局100に常駐する管理者が容易に把握できる構成としている。
【0046】
また、表示装置160には、入力装置170の所定の操作(エリア別、月別、曜日別、時間帯別などの指定)に応じて、該当するエリア別の乗車実績を含む地図データ(
図9参照)を表示させることもできる。このようにエリア別の周回ルートにおける実車実績を、任意(エリア、時間、日毎、曜日、月別)に抽出して集計し、管理者が一目で把握できるように表示装置160に表示することで、エリアや周回ルートの分析を行うことができ、エリアや周回ルートの選定や変更に役立てることができる。
【0047】
入力装置170は、キーボード、マウス、タッチパネルセンサなどの各種入力機器から構成されており、基地局100に常駐する管理者により所定の操作を行うことが可能な構成としている。制御部120は、基地局100の管理者による入力装置170の所定の操作に応じて、上述したタクシーの最適配置システムの稼働状況、エリア別の乗車実績を含む地図データなどを表示装置160に表示させる制御を行う。
【0048】
タクシーの最適配置システムにおける移動局200の構成の概要を、
図3を参照して説明する。
図3はタクシーの最適配置システムにおける移動局200の構成を説明する図である。
【0049】
移動局200は、車両位置検出手段210、車両状態識別手段220、表示手段230、制御部250、無線通信制御部240、外部通信I/F制御部260などで構成されている。
【0050】
車両位置検出手段210は、周知のGPS(Global Positioning System)の機能を有する。つまり、複数のGPS衛星が発信する電波を利用し、移動局200が搭載された車両位置情報(緯度・経度・高度など)を数cmから数十mの誤差で割り出すことができる。なお、車両位置検出手段210としては、GPSに限られるものではなく車両の現在位置を割り出すことができるものであればよい。ここで検出された車両位置情報は、外部通信I/F制御部260を介して基地局100に送信される。
【0051】
車両状態識別手段220は、現在の車両識別情報を示すものであり、周知のタクシーメータが用いられる。車両状態識別手段220は、詳細は後述するが、複数の操作スイッチを有しており、運転者が複数の操作スイッチを操作することにより、現在の車両識別情報が確定する。この車両識別情報には、乗車(賃走ともいう)、空車、迎車、休憩などの現在の車両の状態を示す情報であり、例えば、空車から乗車へと車両識別状態が切り換わったことを契機として、外部通信I/F制御部260を介して移動局200から基地局100へ送信される。
【0052】
表示手段230は、例えば、液晶ディスプレーなどの表示部分にタッチパネルセンサの機能を有し、指で操作する携帯情報端末(所謂、タブレット型端末)などが用いられ、現在の車両位置情報及びその周辺の地図情報などを表示する機能を有する。本実施形態における表示手段230は、少なくとも営業圏が含まれた地図データを表示可能としている。これにより、表示手段230は、所定のエリアへの基地局100からの移動指示を受信すると、移動先のエリア名をメッセージなどの文字情報で表示するとともに、当該エリアの地図データや車両の周回ルートなどを表示可能としている。
【0053】
制御部250は、図示しない演算装置としてのCPUや記憶装置としてのROM、RAM、HDD(Hard Disk Draiver)、などから構成されており、ROM又はHDDに予め記憶されている各種手段(車両の現在位置や車両状態の送信手段など)を実行するための各種プログラムをCPUが読み出して実行する。
【0054】
無線通信制御部240は、基地局100に設置された無線アンテナ101と移動局200に設置された無線アンテナ201を介して、基地局100との音声による交信を制御するものである。具体的には、無線通信制御部240は、無線300を介して接続された基地局100からの音声による指示に対して音声により応答する。
【0055】
外部通信I/F制御部260は、ネットワーク回線500により基地局100と移動局200との通信を制御するものである。このネットワーク回線500を介して、車両位置検出手段210や車両状態識別手段220などにより生成された最新の車両位置情報や車両識別情報が移動局200から基地局100へ送信される。また、基地局100から移動局200へは、配車手段により決定された移動先のエリア情報(メッセージ情報、地図、周回ルートなどの画像情報)が送信される。
【0056】
ここで、
図10を用いて上述した移動局200が備える車両状態識別手段220の構成を説明する。車両状態識別手段220としては、周知のタクシーメータなどが用いられるが、本実施形態における車両状態識別手段220は、管理センター10の基地局100が配下の複数の車両の状態を詳細に把握するための複数(例えば、11個)の各種ボタンが設けられている。
【0057】
図10に示すように、車両状態識別手段220は、現在の運賃などを表示する表示部221と、車両状態を基地局100に送信するための複数のボタンから構成されたボタン部222とを備えている。
【0058】
表示部221は、お客様が乗車して目的地へ移動している状態での現在の運賃や、車両状態(例えば、お客様が乗車して目的地へ移動している状態である賃走など)を、乗車したお客様が視認できるように表示する。
【0059】
ボタン部222は、車両の状態を詳細に設定するための運転手により操作される11個のボタンで構成される。
図10に示すように、ボタンB1「予備」は機能拡張用の予備ボタンである。ボタンB2「回送」は、車両状態が回送中である場合に操作される。ボタンB3「観貸」は、当該車両が観覧の為に貸切られている場合に操作される。ボタンB4「休憩」は、運転手が食事、燃料補充等のための休憩を開始時する場合に操作される。ボタンB5「到着」は、当該車両が迎車指示のあったお客様の指定場所に到着した場合に操作される。ボタンB6「トイレ」は、運転手がトイレ休憩中に操作される。ボタンB7「了解」は、基地局100からの電話予約のお客様の迎車指示を受信した場合、又は、配置指示を受信した場合に操作される。
【0060】
ボタンB8「乗込」は、基地局100からの配置指示を受信した車両が、同時に乗車の意思を表示したお客様を発見した場合に操作される。これにより、基地局100から配置指示を受信した車両は、ボタンB8を操作することで、配置指示を遵守できなかった場合でも、その旨を基地局100は把握することができ、代替の空車車両を検索して配置指示をやり直すことができ、当該車両は、乗車の意思を表示したお客様を拒否することなく実車させることが可能となる。
【0061】
ボタンB9「閉局」は、勤務時間が終了した場合に操作され、このボタンB9を操作することにより、基地局100からに指示対象車両からは除外されることになる。ボタンB10「実車」は、お客様の乗車開始時に操作される。なお、このボタンB10「
実車」は、お客様に実車して頂くことが出来た位置情報を、実車実績情報として収集するためのものである。ボタンB10の操作により実車実績情報を移動局200から受信した基地局100は、月別、曜日別及び時間帯別に営業圏内のエリア別の実車実績情報として実車実績記憶手段112に記憶する。
【0062】
ボタンB11「発見」は、お客様が実車中であり、目的地に移動中の車両が乗車待ちのお客様を発見した場合に操作される。このボタンB11「発見」は、当該車両が空車状態であれば、実車して頂くことが出来たお客様を発見した位置情報を乗車待ち実績情報として収集するためのものである。ボタンB11の操作により乗車待ち実績情報を移動局200から受信した基地局100は、月別、曜日別及び時間帯別に当該営業圏内のエリア別の実車実績情報として実車実績記憶手段112に記憶することにより、より多くの市場データ収集することが可能となり、その後の当該エリアにおける需要予測の算出に反映させることが可能となる。なお、このボタンB11は、タクシーの最適配置システムを運用する事業者の営業圏内のエリアを走行中の車両でのみ有効である。
【0063】
上述してきたように、移動局200の車両状態識別手段220が備えるボタン部222の複数のボタン(11個のボタンB1〜B11)を、運転手が状態の変化に応じて操作したことを契機として、この車両識別情報(つまり、実車、空車、発見など)と、上記車両位置検出手段210が検出した車両位置情報とが、外部通信I/F制御部260を介して基地局100に送信される。これにより基地局100は、配下の複数の車両の最新の車両状態(車両識別情報及び車両位置情報)を正確に把握すること可能となる。
【0064】
なお、基地局100が配下の複数の移動局200の車両状態を把握する方法としては、上述したように車両の状態の変化を契機として移動局200から基地局100へ最新の車両状態を送信するだけではなく、例えば、基地局100が配下の複数の移動局200へ所定時間(例えば、3分)の間隔でポーリング(状態報告指示)して、そのポーリングを受信した移動局200が、最新の車両状態を基地局100へ応答するようにしてもよい。このようにすることで、基地局100は所定時間間隔での配下の複数の移動局200の最新の車両状態を把握することができ、一定時間(例えば、30分)車両状態に変化のない車両などを検出して、その対策を講じることも可能となる。
【0065】
本実施形態における基地局100及び移動局200で構成されたタクシーの最適配置システムの動作を、
図4〜9を参照して説明する。
【0066】
図4に示すように、まず、基地局100は、月別、曜日別、時間帯別の実車実績情報をエリア毎に収集する(S101)。基地局100は、実車実績を移動局200から受信した際に、当該移動局200を搭載した車両の位置情報に基づいて、エリア毎に、月別、曜日別、時間帯別に実車実績情報として基地局100の実車実績記憶手段112に記憶している。
【0067】
本実施形態においては、営業圏の地図データは、エリア1〜エリア53の53のエリアに区画(
図7参照)されている。そして、エリア毎に実車実績情報が記憶されている。エリア毎の実車実績情報としては、
図8に示すように、「エリア19」では月別「12月度」、曜日別「日曜日」、時間帯別「17:00〜17:15」において、合計で23回の実車実績が発生したことが実車実績記憶手段112に記憶されている。
【0068】
このように、基地局100の実車実績記憶手段112には、事業者が運用する複数の車両の実車実績情報が、所定期間(例えば、7年)分累積されて記憶されている。また、実車実績情報は、所定時間(例えば、午前零時)を契機として、最新の実車実績情報が日毎に記憶更新されるようにしている。これにより、本実施形態においては、最新の実車実績情報に基づいて、後述の配車手段により効率のよい配車を実現可能としている。
【0069】
基地局100は、
図5に示すように、エリア毎に収集した実車実績情報に基づいて、曜日別、時間帯(例えば、15分)別にポイントデータとして抽出する(S102)。ここで抽出したポイントデータは、エリア別、エリア内のルート別、曜日別、時間帯別に実車実績情報がポイントとして抽出される。エリア内のルートは、エリア毎に、一つのルート(例えば、エリア02はルートAのみ)や複数のルート(例えば、エリア01はルートA、Bの二つ、エリア03はルートA、B、Cの三つ)が設定されている。なおエリア内のルート数には特に制限はなく、車両がルートを1周する周回時間(例えば、略15分)を基準としてルート数が決定される。
【0070】
基地局100は、抽出したポイントデータ(実車実績情報)に基づいて、エリア毎に周回ルートを決定する(S103)。例えば、
図9に示すように、「エリア19」においては、「Aルート」と「Bルート」との二つの周回ルートが設定されている。
図8に示すように、「エリア19」における「12月度」、「日曜日」、「17:00〜17:15」では、「Aルート」のほうが「Bルート」と比較してポイントデータが多い、従って、「エリア19」における「12月度」、「日曜日」、「17:00〜17:15」では、ポイントデータの多い「Aルート」が、「エリア19」を周回する車両の周回ルートとして指示される。
【0071】
なお、エリア毎に作成される周回ルートは、当該周回ルートを1周する周回時間(例えば、略15分)が略均一になるように作成されている。また、エリア毎に作成される周回ルートの数は特に限定されるものでなく、エリア毎に抽出したポイントデータに応じて、一ルート又は複数の周回ルートが作成されることになる。
【0072】
つまり、上記周回ルートは、所定の時間帯にお客様が乗車する確率の高い複数地点を連結した一定路線である。また、周回ルートは、ここに配車された全空車車両が一定方向(例えば、左車線に沿った左回りの周回方向)に流して周回し、お客様の実車実績の向上を狙うことになる。
【0073】
基地局100は、エリア別、曜日別、時間帯別に抽出した実車実績情報に基づいて、現在時刻における需要台数(以下、需要予測台数という。)を予測し、この需要予測台数の多い順に複数のエリアを決定する(S104)。このとき、基地局100は、エリア別、曜日別、時間帯別(現在時刻が含まれる時間帯)に抽出した実車実績情報と、係数記憶手段113に記憶されている月係数及び曜日係数とを乗算した数値を需要予想台数として算出する。
【0074】
なお、需要予測台数を算出する際に、上記月係数だけではなく、月係数及び曜日係数と同様に、天気係数(天候に応じた実車実績情報を補正する係数)などの各種係数も係数記憶手段113に記憶しておき、この各種係数に基づいて需要予測台数を変化させて算出することもできる。これにより、需要予測台数を実際のエリアの状況(お客様として見込める人員の数)に応じた数値とすることができる。
【0075】
上述してきたS102〜S104は、基地局100において、実車実績情報と上述した月係数(月毎の実車実績の増減割合を示す係数)及び曜日係数(曜日毎の実車実績の増減割合を示す係数))とに基づいて、現在時刻における複数のエリア毎の需要予測を算出する需要予測算出手段として機能する。なお、需要予測は、基地局100の制御部120において所定時間(例えば、15分)ごとに行われ、以下、時間毎に変化する常に最新の重要予測に基づいて空車車両の配置が実行されることになる。
【0076】
基地局100の需要予測算出手段は、
図6に示すように、曜日別「日曜日」、現在時刻「17:00」において、「需要予測台数」の多い順に複数(例えば、8個)の「エリア名」、「周回ルート」、「需要予測台数」、「適正車両台数」、「周回車両台数」、「過不足車両台数」を決定する。以下、
図6を用いて、上記各項目について説明する。
【0077】
「エリア名」は、上述した営業圏を53に区画したエリアを識別するための番号(
図7参照)である。なお、「エリア名」としてはエリアの番号などの他に、該当するエリアの地名(例えば、「赤坂」、「板付」)などを用いてもよい。「周回ルート」は、これも上述した空車車両の周回ルート(
図9参照)であり、「エリア19」においてはAルートが周回ルートとして決定されている。「需要予測台数」は、エリア別、曜日別、時間帯別(現在時刻が含まれる時間帯)に抽出した実車実績情報と、係数記憶手段113に記憶されている月係数及び曜日係数とを乗算した数値である。なお、
図6に示す「需要予測台数」の数値は、小数点以下を四捨五入した数値である。
【0078】
「適正車両台数」は、「需要予測台数」に所定係数(例えば、0.8)を乗算して算出した数値である。そして、該当するエリアに「適正車両台数」に該当する空車車両の台数を配置することで、実車実績の向上を図ることが可能となる。このように、「需要予測台数」ではなく「適正車両台数」を該当するエリアの周回ルートに配置する空車車両の台数とすることで、同じタクシー事業が運用する空車状態の車両(以下、空車車両ともいう。)が、同一エリアの周回ルートで乗車待ちのお客様を取り合うことなく、お客様を効率良く獲得することが可能となる。なお、「適正車両台数」の数値は、小数点以下を四捨五入した数値である。
【0079】
「周回車両台数」は、現在時点での該当するエリアの周回ルートに既に配車された空車車両の台数である。「過不足車両台数」は、現在時点での該当するエリアの「適正車両台数」に対する「周回車両台数」の過不足分の車両の台数である。つまり、
図6に示すように、「エリア19」においては、「適正車両台数」が12台に対して「周回車両台数」が9台であるので、3台分の空車車両が不足していることになる。このため、不足している3台分の空車車両を、他のエリアから「エリア19」へ移動させることが必要となる。また、「エリア23」においては、「適正車両台数」が7台に対して「周回車両台数」が8台であるので、1台分の空車車両が超過していることになる。このため、「エリア23」を周回中の空車車両のうち1台の空車車両を他のエリアへ移動させる必要がある。
【0080】
上述したように、本実施形態における基地局100の需要予測算出手段は、「需要予測台数」の多い複数(例えば、8個)のエリア(「エリア名」)、当該エリアにおける「周回ルート」及び当該周回ルートに配置する最適な台数である「適正車両台数」を決定する。この「エリア名」、「周回ルート」及び「適正車両台数」が需要予測算出手段により算出される需要予測である。
【0081】
以下、
図4を用いたタクシーの最適配置システムの動作の説明に戻る。
基地局100は、上記需要予測算出手段により決定されたエリア別、曜日別、現在時刻の時間帯別の需要予測(「エリア名」、「周回ルート」及び「適正車両台数」、
図6参照)に基づいて、空車車両の移動先エリア(以下、配置先エリアという)を決定し、当該配置先エリアから所定の距離内に位置する空車車両を検索し、該当する空車車両に対して配置先エリアへの移動を指示する(ステップS105)。このステップS105は、本実施形態における基地局100における配車手段として機能する。
【0082】
配車手段により検索対象となる空車車両は、配置先エリアから所定の距離内に位置する実車から空車へと車両識別情報が変更された空車車両、又は、既に配置先として指定されたエリア(以下、配車元エリアという)を一定時間(例えば、15分)空車状態で周回中の車両を優先して検索対象としている。また、配車手段は、所定時間(例えば、15分)間隔で実行される。これは、本願出願人のシミュレーションによれば、自動配置指示の間隔が15分間隔の方が、30分、1時間間隔で実行した場合と比較して、例えば、「約70%〜80%の確率」の高確率で、しかも、「30分に一回」の高頻度でお客様を効率良く獲得できるという結果が得られたためである。
【0083】
実車から空車へと車両識別情報が変更された空車車両の移動局200には、実車から空車へと車両識別情報が変更された営業圏内のエリアを第一候補とし、需要予測算出手段により決定された「適正車両台数」が多い近距離のエリアを第二候補として移動指示が送信される。移動指示を受信した移動局200の表示手段230は、例えば、
図7に示すように、「エリア19」への移動メッセージが表示される(S105)。
【0084】
また、基地局100は、該当する空車車両に対して配置先エリアへの移動を指示する場合に、移動指示だけではなく、配置先エリアへの移動メッセージとともに、配置先エリアへ最短時間で移動可能な移動ルートが指定された地図データを指示することもできる。これにより、
図13に示すように、移動指示を受信した移動局200の表示手段230に、上述した配置先エリアへの移動メッセージとともに、配置先エリアへの最短時間で移動可能な移動ルート(図中の実線表示)が指定された地図データが表示されるので、例えば、運転手が経験の浅い初心者でも、表示された移動ルートに従うことで、最短時間で配置先エリアへの移動が可能となる。
【0085】
つまり、基地局100は、配車手段により、複数の車両の移動局200から受信した最新の車両状態(車両位置情報及び車両識別情報)に基づいて、需要予測算出手段により算出した需要予測の多い配置先エリアの近距離に位置する空車車両を検索し、該当する空車車両に対して、配置先エリアを移動先として指定するとともに、当該配置先エリアにおける車両の周回ルートを指定する。
【0086】
配車手段を具体的に説明すると、基地局100は、複数の車両に搭載されている移動局200から受信した最新の車両状態が記憶され、配車先エリアに「エリア19」が決定されたとする。すると、
図7に示す配置先エリアである「エリア19」の中心部Cから半径Hの所定距離内の空車車両(特に、実車から空車へと車両識別情報が変更された空車車両、又は、配置元エリアを一定時間(例えば、15分)空車状態で周回中の車両を優先して)を検索する。そして、
図6に示すように、「エリア19」においては3台分の「過不足車両台数」があるため、「エリア19」の近距離に位置する3台の空車車両に対して「エリア19」への移動を指示する。このとき、半径Hの所定距離内に位置する「エリア22」を周回中の空車車両であっても、
図6に示すように「エリア22」を周回している空車車両は、「適正車両台数」(10台)」に対して「周回車両台数」(9台)と「適正車両台数」に不足しているため、移動対象の車両から除外する。
【0087】
これは、「適正車両台数」の多い配置先エリアから半径Hの所定距離内に位置し、配置元エリアを周回中の空車車両であっても、配置元エリアを周回中の空車車両の台数が「適正車両台数」に満たない場合は、移動させることで配置元エリアの実車実績(お客様の獲得)が下がる可能性がある。このため、基地局100は、「適正車両台数」に満たないエリアを走行中の空車車両は自動配置指示の対象からは除外して、他のエリアを周回中の空車車両又は当該エリアに近距離で実車から空車へと車両状態が変化した空車車両を再検索して、該当する空車車両に対して「エリア19」への移動を指示する。
【0088】
なお、始業時(つまり、車両基地からの出庫時)の車両の配置は、基地局100が予め定めた配置先エリアへの移動指示が送信される。その後、1回でも実車になった車両はお客様の降車位置(目的地)まで移動して料金の精算後に再び空車車両となる。このときの車両状態の変化(つまり、実車状態から空車状態への変化)は移動局200から基地局100に送信され、基地局100は、近距離に位置する「需要予測台数」の多い配置先エリアに対する移動指示を、空車車両となった車両の移動局200に対して送信する。
【0089】
移動指示を受信した車両は、表示手段230に表示(
図7参照)された配置先エリアへ向かって移動をする(S106)。
【0090】
配置先エリアに到着した空車車両は、移動指示されたエリアの周回ルートを周回する(S107)。この周回ルートは、エリア毎に複数の周回ルート(Aルート又はBルート)が作成(
図9参照)されている場合があり、基地局100は、移動指示を送信する空車車両に対して、配置先エリアだけではなく、当該配置先エリアにおける周回ルートまで指示する。これにより、配置先エリアに到着した車両の表示手段230には周回ルートが表示される。
【0091】
ここで、
図9を用いて移動局200の表示手段230に表示される周回ルートを説明する。
図9に示すように、移動局200の表示手段230には、周回ルートを示す地図データM1が表示されている。この地図データM1には、周回ルートの進行方向を示すルート矢印M2と、実際に車両の進行方向を変更するときの目印となる建造物名b、c(□□デパート、△△ビルなど)、道路に名付けられた道路名a(◎◎通りなど)、十字路の交差点名d(○○交差点)等が表示されている。また、周回ルートを指示するメッセージデータM3も地図データM1と合わせて表示手段230に表示される。このメッセージデータM3は、「***個別メッセージ***、★★Aルートに進んでください★★、◎◎通りを西に左折、□□デパートを左折、△△ビルを左折、○○交差点を左折」というように、空車車両の周回手順を具体的に説明する為の複数行の文字データが表示される。
【0092】
上記実施形態では、移動局200の表示手段230に、周回ルートを示す地図データM1とメッセージデータM3とを同時に表示しているが、表示手段230の表示態様はこれに限定されるものではなく、表示手段230を複数(例えば、2個)設け、一方に地図データM1を表示し、他方にメッセージデータM3を表示するようにしてもよい。
【0093】
以下、
図4を用いたタクシーの最適配置システムの動作の説明に戻る。
配置先エリアの定められた周回ルートを周回中の空車車両は、手を上げて乗車意思を示したお客様を発見すると、速やかにお客様を乗車させ、目的地へと移動を開始する(S108)。このとき、空車から実車状態に変化した車両の移動局200は、現在の車両状態(車両位置情報及び車両識別情報)及びお客様の目的地を基地局100に送信する。車両状態の変化を受信した基地局100は、当該車両を、今まで滞在していたエリアの「周回車両台数」から除外する。
【0094】
また、お客様を乗車させた車両の表示手段230には、
図14に示すように、現在地から目的地までの移動ルートを、点線で示す移動ルートA、実戦で示す移動ルートB及び一点鎖線で示す移動ルートCのように複数の移動ルートを表示させることもできる。このように、目的地までの移動ルートを複数の移動ルートの中からお客様に選択してもらうことで、例えば、お客様はいつも通勤や買い物などで利用している日常の移動ルートに従って目的地まで移動することができ、お客様に対して安心感を与えることが可能となる。
【0095】
一般に、タクシーを利用する場合には、経験豊富な運転手は、曜日や時間帯に応じて混雑具合の異なる複数の移動ルートを把握しているため、複数の移動ルートの中から目的地まで最短時間の移動ルートを自ら選択する場合がある。しかしながら、運転手が選択した移動ルートが、お客様が日常利用する移動ルートと異なった場合に、お客様への説明が十分でないと、お客様に不信感を与えトラブルの原因になる虞がある。
【0096】
また、初心者などの運転手は地理に不案内なため、お客様に移動ルートを訪ねてお客様が指定した移動ルートを目的地までの移動ルートとすることもあるが、これでは、運転手が地理に不案内なことを露呈するばかりか、お客様に対して移動ルートをこまめに指示してもらう必要があり、とてもお客様に安心して目的地まで乗車してもらうことはできない。そこで、
図14に示すように、目的地まで複数の移動ルート(移動ルートA〜C)がある場合に、表示手段230に地図データとともに複数の移動ルートを表示し、さらに、お客様自らに移動ルートを選択させることで、目的地までの移動においてお客様に安心感を与え、トラブルの発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0097】
また、上述したように、表示手段230に液晶ディスプレーなどの表示部分にタッチパネルセンサを搭載したタブレット型端末を用いた場合、会員登録したお客様が乗車したときに、
図15に示すように、表示手段230のタッチパネルセンサ機能を利用して、お客様の氏名、会員番号、電話番号(
図15中の「0901234567」等)を入力することで、基地局100の会員情報記憶手段114に予め登録されている会員情報(お客様の目的地までの習慣的ルートが指示された地図データを含む)を、基地局100から受信することもできる。これにより、会員であるお客様を乗車した車両の表示手段230には当該会員情報を利用したお客様の目的地までの習慣的ルート(目的地別行先ルート)などを表示させることができ、当該車両の運転手は、会員登録したお客様の目的地が表示手段230に表示された習慣的ルートであった場合は、当該習慣的ルートに従って目的地まで移動することで、会員登録したお客様にさらに安心して利用してもらうことが可能となる。
【0098】
また、基地局100は、配置先エリアの周回ルートを周回中の空車車両に対して、お客様からの電話予約による迎車指示を行う場合がある。これは、上述したように、基地局100の予約配車手段による配置指示(つまり、電話予約のお客様を迎車するための移動指示)が、配置先エリアの周回ルートを周回中の空車車両に対して行われた場合である(S109)。このとき、配置指示を受信した車両は、今まで滞在していた配置先エリアの「周回車両台数」から除外される。
【0099】
また、予約配車手段は、電話予約の客様が会員として登録されていた場合、会員情報記憶手段114に予め登録されている会員情報(お客様の目的地までの習慣的ルートが指示された地図データを含む)をお客様の迎車に向かう車両の移動局200に、迎車の指示と併せて発信する。これにより、迎車を指示され会員情報を受信した車両の運転手は、当該会員情報を利用して、速やかにお客様の目的地までの習慣的ルート(目的地別行先ルート)などを把握することができる。
【0100】
電話予約による配置指示を受けた車両はお客様のお迎え場所に移動して、お客様を乗車させ、目的地へと移動を開始する(S110)。このとき、配置指示を受けた車両は、基地局100の予約配車手段による配置指示を受けた時点で、空車から予約の車両識別状態となり、お客様を迎車して乗車させた時点で、予約から実車の車両識別状態となる。この車両識別状態の変化は車両位置情報とともに、車両の移動局200から基地局100に送信される。
【0101】
お客様の目的地に到着した車両は、料金の精算が終了した時点で、車両識別状態が実車から空車へ変化し、この車両識別状態の変化は、車両の移動局200から現在の車両位置情報とともに基地局100に送信される(S111)。
【0102】
基地局100は、空車となった車両に対して、上述したS105に戻り、新たな配置先エリアを指示する。このとき、基地局100は、空車となった車両の移動局200から受信した最新の車両位置情報が、例えば、営業圏外であった場合は、最も近距離であって、かつ、上述した需要予測算出手段で算出された重要予測の多い営業圏内のエリアを配置先エリアとして指示する。以下、
図4に示すS105〜S111を繰り返し実行することで、空車車両に対する実車実績の向上を図ることができるタクシーの最適配置システムとすることができる。
【0103】
上述してきたように、本実施形態においては、基地局100は、実車実績記憶手段112(
図2参照)に記憶されている乗車実績情報に基づいて、需要予測算出手段により需要予測を算出し、この需要予測の多いエリアを優先的に配置先エリアとして決定し、この配置先エリアの近傍に位置する空車車両(以下、対象車両という)を決定し、当該対象車両の移動局200に対して、決定された配置先エリアへの移動及び配置先エリアにおける周回ルートを指示している。
【0104】
ここで、基地局100は、対象車両に搭載されている移動局200との通信により、配置先エリアへの移動指示後の対象車両の車両情報(車両識別情報及び車両位置情報)を営業実績情報として収集する営業実績収集手段と、収集した営業実績情報を記憶する営業実績記憶手段と、営業実績記憶手段に記憶した営業実績情報に基づいて、当該対象車両の営業実績を評価する営業実績評価手段と、を備えることもできる。
【0105】
この営業実績評価手段は、基地局100に常駐する管理者が、上述した入力装置170を用いて、集計期間、対象者車両及び運転手氏名などの指定を行った場合に、該当する対象車両の営業実績情報を営業実績記憶手段より抽出し、営業実績表(
図16参照)を作成して表示装置160に表示させる機能を有するものである。以下、
図16を参照して、営業実績評価手段により作成される営業実績表の一例を説明する。
【0106】
図16に示す営業実績表は、「2012/04/01〜2012/04/30」までの一か月間の集計期間、対象車両「8号車」及び運転手氏名「トマト太郎」が管理者により指定されたときの営業実績表である。この集計期間や対象車両及び運転手氏名は、基地局100に常駐する管理者が、入力装置170によって任意に設定可能としている。また、対象車両「8号車」及び運転手氏名「トマト太郎」は、個別ではなく複数の車両で構成される班単位などで設定することも可能である。
【0107】
図16に示すように、営業実績表の略左半分には、営業日ごとの業務時間(例えば、昼営業6:00〜18:00)における対象車両の車両情報が表示されている。この車両情報は、「移動:配置先エリアへの移動時間」、「周回:配置先エリアの周回ルートにおける周回時間」、「休憩:運転手のトイレや食事休憩時間」、「実車:お客様が実車したときの目的地までの移動時間」を、1時間ごとに種類の異なる横棒による棒グラフとして表示されている。
【0108】
営業実績表の略右半分には、基地局100から移動局200への配置先エリアへの指示回数などの営業関連の情報が、営業日単位で集計されて表示されている。この「指示/営業関連」の集計情報は、「エリア指示:配置先エリアへの移動指示をした回数」、「エリア移動:配置先エリアへ移動した回数」、「周回:配置先エリアの周回ルートに到着して周回した回数」、「周回HIT:周回ルートを周回中にお客様を獲得した回数」、「営回:お客様が実車した総回数」、「出庫時間:車両基地(営業所等)から出庫した時間」、「帰庫時間:車両基地(営業所等)に帰庫した時間」、「稼働時間:営業走行に要した時間」「休憩時間:稼働時間内に運転手が食事休憩等に要した合計時間」などである。
【0109】
このように、対象車両(運転手)毎に営業実績を任意に集計して表示装置160に営業実績表として表示することで、管理者は、運転手毎の様々な問題点を把握することが可能となる。
図16から把握できる問題点としては、例えば、営業実績から配置先エリアへの移動時間が所定時間(例えば、15分)より長い、営業回数が全体の平均標準回数(例えば、22回)より少ない(
図16中の営回が○で囲まれた箇所)、休憩時間が長いなどがある。
【0110】
そして、問題点が明らかになることで、管理者は問題点の解決手段を運転手個別に指導することが可能となる。つまり、配置先エリアへの移動時間が所定時間(例えば、15分)より長い場合は、運転手が営業圏内の地理に慣れてなく、移動局200の表示手段230に、地図データとして表示された配置先エリアへの最短時間で移動可能な移動ルート(
図13参照)に従って移動できていないことが考えられるため、移動ルートに従って移動するように指導することが可能となる。
【0111】
このように、基地局100に、営業実績収集手段、営業実績記憶手段及び営業実績評価手段を備えることで、本実施形態のタクシーの最適配置システムをより効率よく運用することができ、乗車実績の向上を図ることが可能となる。また、
図16に示す営業実績表のように、営業実績情報を運転手毎に個別集計して表示することで、管理者は、運転手毎の様々な問題点の解消を図ることが可能となるので、この営業実績収集手段、営業実績記憶手段及び営業実績評価手段は、運転手の能率の良い効率的な稼働行動を評価するシステムとして機能することになる。
【0112】
以上、上述してきた本実施形態におけるタクシーの最適配置システムによれば、上述した需要予測算出手段により算出した営業圏内のエリア別、曜日別、時間別の需要予測に基づいて、「適正車両台数」の多いエリアを優先的に配置先エリアとして決定し、この配置先エリアの近傍に位置する空車車両に対して、当該配置先エリアへの移動を指示している。これにより、空車車両の移動に要する時間の短縮や、移動に伴う燃料等の消耗を抑えることができる。
【0113】
また、所定時間(15分)毎の現在時刻において、需要予測算出手段により算出される需要予測の多いエリアを配置先エリアとしているため、最もお客様を獲得できる確率の高いエリアに、効率よく空車車両を配車することができ、特に、実車から空車へと車両識別情報が変更された空車車両、又は、配置元エリアを一定時間(例えば、15分)空車状態で周回中の車両を優先して需要予測の多い配置先エリアへの移動対象とするため、空車車両の実車実績の向上を図ることができる。なお、本願出願人によるタクシーの最適配置システムのシミュレーションによれば、本実施形態の本需要予測(つまり「適正車両台数」)を満たすように空車車両を移動させることを所定時間(15分)毎に実行することで、高確率(約70%〜80%の確率)で、しかも、高頻度(30分に一回)で、空車状態の車両を実車状態の車両とする(つまり、お客様を獲得する)ことが可能となるという結果が得られている。
【0114】
さらに、本実施形態においては、単純に「適正車両台数」の多い配置先エリアに、「適正車両台数」を満たす数の空車車両を配置するだけではなく、当該配置先エリアにおいて、最もお客様を獲得する可能性の高い周回ルートを決定し、当該周回ルートに沿って、空車車両を周回させているため、経験の浅い初心者等の運転手の車両でも、お客様の実車実績を向上させる確率の高い効率のよい流し営業を行うことが可能となる。また、運転手は、最も重要な実車実績の向上(つまり、お客様の獲得)に神経を消耗することがなく、その分、一段上の接客サービスなどを提供することが可能となる。
【0115】
また、電話予約による迎車サービスにおいて、移動局200に備えられた表示手段230は、予め登録されている会員情報に基づいた習慣的ルート(目的地別行先ルート)を表示するため、例えば、予め会員として登録されたお客様であれば、いつも利用する習慣的ルートを運転手が容易に確認することができ、必ずしも決まった運転手でなくても会員となったお客様が満足できるサービスを均一に提供することができる。
【0116】
また、空車状態(お客様が乗車可能な状態)で、手を上げて乗車意思を示したお客様を発見して乗車させた実車実績情報だけではなく、例えば、実車中の走行中の車両においても、手を上げて乗車意思を示したお客様を発見した場合は、実車実績の可能性があったとして、移動局200ら基地局100へ乗車待ち実績情報として送信することができるので、営業圏内のエリアの実車実績情報を正確に把握することにつながるとともに、後日同一地点における実車実績の蓄積により、タクシーの最適配置システムの精度及び完成度を向上させることができ、さらに、お客様を獲得する可能性の高い効率のよいタクシーの最適配置システムを提供することができる。
【0117】
以上、実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。