特許第5935019号(P5935019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935019
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   G01R15/20 B
   G01R15/20 A
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-152483(P2012-152483)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2013-228353(P2013-228353A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-77783(P2012-77783)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310014322
【氏名又は名称】アルプス・グリーンデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】有馬 将人
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−085381(JP,A)
【文献】 特開2000−088889(JP,A)
【文献】 特開2006−197493(JP,A)
【文献】 特開2007−107972(JP,A)
【文献】 特開2009−139272(JP,A)
【文献】 特表2007−513346(JP,A)
【文献】 特開平11−121253(JP,A)
【文献】 特開2003−315387(JP,A)
【文献】 特開2003−072484(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0231198(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0237853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00−19/32
G01R 33/00−33/26
G01R 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流路に電流が流れたときに発生する磁界を検出する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた溝内に取付けられる取付け部材と、を備えた電流センサであって、
前記取付け部材は、前記溝を形成する内壁と対向する側に突出した爪部がそれぞれ設けられた2つの腕部と、前記2つの腕部の一端部がそれぞれ連結される連結部と、を有し、
前記溝を形成する内壁には、前記爪部と係合する穴部がそれぞれ設けられ、
前記取付け部材の内側に前記被測定電流路が配置され
前記取付け部材は、前記2つの腕部及び連結部の内側で被測定電流路を保持した状態で前記2つの腕部を内側に撓ませることが可能であり、
前記連結部を含む取付け部材の内壁には、円形状の前記被測定電流路の外縁に対応した曲面壁が180°以上にわたり形成されている
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
被測定電流路に電流が流れたときに発生する磁界を検出する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた溝内に取付けられる取付け部材と、を備えた電流センサであって、
前記取付け部材は、前記溝を形成する内壁と対向する側に突出した爪部がそれぞれ設けられた2つの腕部と、前記2つの腕部の一端部がそれぞれ連結される連結部と、を有し、
前記溝を形成する内壁には、前記爪部と係合する穴部がそれぞれ設けられ、
前記取付け部材の内側に前記被測定電流路が配置され
前記取付け部材は、前記2つの腕部及び連結部の内側で被測定電流路を保持した状態で前記2つの腕部を内側に撓ませることが可能であり、
前記連結部を含む取付け部材の内壁は、断面視矩形状の前記被測定電流路の外周面形状と相補形状になるように形成されている
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
前記取付け部材の内壁の前記連結部に凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記連結部に前記筐体を挟む鍔状部が設けられている
ことを特徴とする請求項から請求項いずれかに記載の電流センサ。
【請求項5】
前記鍔状部に切欠きが設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項6】
被測定電流路に電流が流れたときに発生する磁界を検出する磁電変換素子と、
前記磁電変換素子を収容する筐体と、
前記筐体に設けられた溝内に取付けられる取付け部材と、を備えた電流センサであって、
前記取付け部材は、前記溝を形成する内壁と対向する側に突出した爪部がそれぞれ設けられた2つの腕部と、前記2つの腕部の一端部がそれぞれ連結される連結部と、を有し、
前記溝を形成する内壁には、前記爪部と係合する穴部がそれぞれ設けられ、
前記取付け部材は、前記2つの腕部を内側に撓ませることが可能であり、
前記被測定電流路は、前記溝の内壁面と前記連結部の外壁面との間で挟み込まれるように保持される
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項7】
前記溝の底部を形成する前記筐体の内壁面が曲面状に形成されているとともに、前記取付け部材の連結部の外壁面が曲面状に形成されており、
前記取付け部材が前記筐体の前記溝に配され前記爪部と前記穴部とが係合された際に、前記内壁面と前記外壁面との間に円形の空間が形成される
ことを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記取付け部材が前記筐体の前記溝に配され前記爪部と前記穴部とが係合された際に、前記2つの腕部の一部が、前記筐体から突出している
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項9】
前記被測定電流路が前記溝に配設された際に、前記磁電変換素子が前記被測定電流路を中心とした仮想楕円上に複数配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定電流路に流れる電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の制御や監視のために、既設の被測定電流路に後から取り付けられる電流センサが良く知られている。この種の電流センサとして、被測定電流路に流れる電流から生じる磁界を感知するコイルやホール素子等の磁電変換素子を用いた磁気センサが用いることが知られている。
【0003】
上記従来技術として、特許文献1では、既設の被測定電線(被測定電流路)に後から電流センサを取り付けられるような、複数のホール素子809が配置された検査部803を有した断線検出装置が提案されている(従来例1)。図14には、この従来例1である断線検出装置の検査部803の一例の断面図が示されている。図14に示すように、検査部803は、検査部803を被測定電線に沿って動かすためのガイドレールに接合するヒンジ部808と、分割面813で分割できる一対の半円部812(812a、812b)と、一対の半円部812内に配置された複数のホール素子809(図14では4つ)とから構成されている。そして、この検査部803は、一対の半円部812を分割することによって、円環形状が形成された一対の半円部812の中空部814に既設の被測定電線(図示していない)を通して、被測定電線の断線を検出できるとしている。
【0004】
しかしながら、従来例1では、複数のホール素子809を有した検査部803に既設の被測定電線を取り付ける際に、被測定電線を固定する方法が示されておらず、複数のホール素子809と被測定電線との位置関係がずれてしまう虞が生じる。このような構成で複数の磁気センサ(ホール素子809)を用いて既設の被測定電線の電流測定を行う場合、それぞれの磁気センサと被測定電線との位置ずれは、僅かでも測定精度に大きな影響を与えてしまうので、測定精度が悪く、結果として測定精度の要求されない断線検出にしか使えなかった。
【0005】
そこで、特許文献2では、電力線(被測定電流路)917を固定する方法を備えた貫通形電流検出器900が提案されている(従来例2)。図15は、この従来例2である貫通形電流検出器900の一例を示した図であり、図15Aは、貫通形電流検出器900の斜視図であり、図15Bは、貫通形電流検出器900の分解斜視図である。図15A及び図15Bに示すように、貫通形電流検出器900は、2つの下コアー905A及び下コアー905Bやプリント基板906やホール素子907を収容するケース901Aと、上コアー904を収容する上カバー912と、下コアー905A及び905Bを保持する下コアホルダ902Aと、上コアー904を保持する上コアホルダ903Aとから主に構成されている。そして、上カバー912をケース901Aに被せた際に、下コアホルダ902Aの溝部902aと上コアホルダ903Aの溝部903aとで形成された円筒状の空間が生じ、この空間に電力線917を挿通する。更に、つまみ913に形成された窓913aにケース901Aの右側のフック909bを嵌合させ、電力線917を固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−228700号公報
【特許文献2】特開平11−251167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来例2では、貫通形電流検出器900の電力線917への取付け作業が容易で、短い作業時間で着脱することができるとしているが、電力線917を所望の位置にしかも確実に固定できないという課題があった。例えば、電力線917に負荷が加えられた場合、窓913aとフック909bとの嵌合が簡単に外れ、電力線917から貫通形電流検出器900が外れてしまう虞がある。また、溝部902aと溝部903aとで電力線917を強く挟持していない構成なので、電力線917がずれる可能性があり、ホール素子907と電力線917との位置関係がずれてしまう虞も生じる。従来例2では、上コアー904及び下コアー905A、905Bを用いて電力線917の磁束を収束してホール素子907で検出するようにしているので、この位置ズレはある程度許されるが、特に、従来例1のようにコアーを用いない場合、磁気センサと被測定電線との位置ずれは、僅かでも測定精度に大きな影響を与えてしまうので、測定精度が悪くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、被測定電流路が所望の位置に確実に配され固定される電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電流センサは、被測定電流路に電流が流れたときに発生する磁界を検出する磁電変換素子と、前記磁電変換素子を収容する筐体と、前記筐体に設けられた溝内に取付けられる取付け部材と、を備えた電流センサであって、前記取付け部材は、前記溝を形成する内壁と対向する側に突出した爪部がそれぞれ設けられた2つの腕部と、前記2つの腕部の一端部がそれぞれ連結される連結部と、を有し、前記溝を形成する内壁には、前記爪部と係合する穴部がそれぞれ設けられ、前記取付け部材の内側に前記被測定電流路が配置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、被測定電流路及び取付け部材が筐体の溝に配された際に、被測定電流路が筐体の溝に固定支持されるとともに、取付け部材の腕部に設けられた爪部と筐体の溝を形成している内壁に設けられた穴部とが係合するので、被測定電流路及び取付け部材が筐体の溝より外れようとしても、爪部と穴部の係合により、その動きが阻害される。これにより、被測定電流路と取付け部材とを筐体の溝に挿入するだけで、簡単に被測定電流路を所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路を確実に固定することができる。したがって、被測定電流路が所望の位置に確実に配され固定される電流センサを提供することができる。
【0011】
また、本発明の電流センサは、前記取付け部材が、前記2つの腕部及び連結部の内側で被測定電流路を保持した状態で前記2つの腕部を内側に撓ませることが可能なことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、取付け部材が2つの腕部及び連結部の内側で被測定電流路を保持した状態で2つの腕部を内側に撓ませることが可能なので、筐体に対する取付け部材の取付け及び筐体からの取付け部材の取り外しを容易に行うことができる。すなわち、取付け部材は、2つの腕部を内側に撓ませた状態で溝内に導入され、爪部と穴部とが係合する位置で各腕部の撓み解除させて筐体に取付けられる。そのため、被測定電流路は筐体外部から最も遠い内側部分で保持されるので、筐体外部に力が加わった場合でも、被測定電流路が筐体外部に容易に外れることがなく、被測定電流路を確実に保持することができる。一方、取付け部材を筐体から取り外す場合には、2つの腕部を内側に撓ませて爪部と穴部との係合を解除すれば、溝内から取付け部材を筐体外部に容易に導出させることができる。
【0013】
また、本発明の電流センサは、前記連結部を含む取付け部材の内壁には、円形状の前記被測定電流路の外縁に対応した曲面壁が180°以上にわたり形成されていることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、円形状の被測定電流路の外縁に対応した曲面壁が180°以上にわたり内壁に形成されているので、取付け部材の2つの腕部を広げこの曲面壁に囲まれた部分に被測定電流路を配設した後、被測定電流路が180°以上にわたる曲面壁に保持されるようになる。このため、そのまま取付け部材を筐体に配した際に、被測定電流路が外れようとしても、2つの腕部が筐体の溝を形成している内面により拘束されるので、曲面壁に囲まれた部分から被測定電流路が外れることが難しくなる。これにより、簡単な構成で、被測定電流路を所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路をより確実に固定することができる。
【0015】
また、本発明の電流センサは、前記連結部を含む取付け部材の内壁が、断面視矩形状の前記被測定電流路の外周面形状と相補形状になるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、連結部を含む取付け部材の内壁が断面視矩形状の被測定電流路の外周面形状と相補形状になるように形成されているので、断面視矩形状の被測定電流路を保持した際には、被測定電流路の外周面に対して内壁を広範囲に当接(接触)させた状態で確実に保持することができる。
【0017】
また、本発明の電流センサは、前記取付け部材の内壁の前記連結部に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、取付け部材の内壁の連結部に形成された凹部を遊び部分として内壁の変形が容易になるので、各腕部を撓ませて爪部と穴部との係合を解除し、筐体から取付け部材を簡単に取り外すことができる。
【0019】
また、本発明の電流センサは、前記連結部に前記筐体を挟む鍔状部が設けられていることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、連結部に設けられた鍔状部が筐体を挟むため、取付け部材が筐体に対して垂直の方向に移動するのが阻害される。これにより、取付け部材が筐体の溝から外れることが防止できる。更には、鍔状部と筐体との隙間を最小限にすることで、取付け部材のガタツキ(微少な動き)をも防止できる。
【0021】
また、本発明の電流センサは、前記鍔状部に切欠きが設けられていることを特徴としている。
【0022】
この構成によれば、鍔状部に切欠きが設けられているので、この切欠きが遊び部分となり、鍔状部の変形が容易になる。これにより、取付け部材の腕部を容易に開くことができ、被測定電流路を曲面壁に囲まれた部分に容易に配設することができる。
【0023】
また、本発明の電流センサは、前記被測定電流路が、前記溝の内壁面と前記連結部の外壁面との間で挟み込まれるように保持されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、被測定電流路は溝の内壁面と連結部の外壁面との間で挟み込まれるように保持されるので、被測定電流路を確実に保持することができる。
【0025】
また、本発明の電流センサは、前記溝の底部を形成する前記筐体の内壁面が曲面状に形成されているとともに、前記取付け部材の連結部の外壁面が曲面状に形成されており、前記取付け部材が前記筐体の前記溝に配され前記爪部と前記穴部とが係合された際に、前記内壁面と前記外壁面との間に円形の空間が形成されることを特徴としている。
【0026】
この構成によれば、溝の底部を形成する筐体の内壁面と取付け部材の連結部の外壁面との間に円形の空間が形成されるので、その空間に被測定電流路を配設することができる。このため、内壁面と外壁面とで被測定電流路を挟持することができ、取付け部材を筐体に配した際に、被測定電流路が外れようとしても、取付け部材により被測定電流路が筐体の溝部分から外れることが難しくなる。これにより、簡単な構成で、被測定電流路を固定することができるとともに、被測定電流路をより確実に固定することができる。特に、円形状の被測定電流路の場合、内壁面及び外壁面の曲面形状により、被測定電流路の外縁を支持することができるので、より所望の位置に被測定電流路を配設することができる。ここで、溝の底部は、溝を形成する内壁面のうち筐体の最も内側に位置する部分であって、溝内に導入される取付け部材の先端部側と対峙する内壁面を指すものである。
【0027】
また、本発明の電流センサは、前記取付け部材が前記筐体の前記溝に配され前記爪部と前記穴部とが係合された際に、前記2つの腕部の一部が、前記筐体から突出していることを特徴としている。
【0028】
この構成によれば、取付け部材が筐体の溝に配され爪部と穴部とが係合された際に、2つの腕部の一部が、筐体から突出しているので、2つの腕部を内側に移動させることにより、爪部が穴部から外れる方向に移動し、爪部と穴部との係合を解除することができる。これにより、簡単な構成で、取付け部材を筐体の溝から取り外すことができ、被測定電流路を簡単に取り外せることができる。
【0029】
また、本発明の電流センサは、前記被測定電流路が前記溝に配設された際に、前記磁電変換素子が前記被測定電流路を中心とした仮想楕円上に複数配置されていることを特徴としている。
【0030】
この構成によれば、磁電変換素子が被測定電流路を中心とした仮想楕円上に複数配置されているので、それぞれの磁電変換素子の検出値を合算することができる。これにより、被測定電流路の位置が多少ずれても、測定精度を低下しにくくすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電流センサは、被測定電流路及び取付け部材が筐体の溝に配された際に、被測定電流路が筐体の溝に固定支持されるとともに、取付け部材の腕部に設けられた爪部と筐体の溝を形成している内面に設けられた穴部とが係合するので、被測定電流路及び取付け部材が筐体の溝より外れようとしても、爪部と穴部の係合により、その動きが阻害される。このことにより、被測定電流路と取付け部材とを筐体の溝に挿入するだけで、簡単に被測定電流路を固定することができるとともに、被測定電流路を確実に固定することができる。したがって、被測定電流路が所望の位置に確実に配される電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る電流センサを示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電流センサを説明するための図であって、図2Aは、図1に示すY2側から見た正面図であり、図2Bは、図2Aに示す正面図のカバーを省略した図である。
図3】第1実施形態に係る電流センサを説明するための図であって、図3Aは、図1に示すX1側から見た側面図であり、図3Bは、図1に示すZ2側から見た底面図である。
図4】第1実施形態に係る電流センサの筐体を説明するための図であって、図4A及び図4Bは、それぞれ見る角度を変えた筐体の斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態の電流センサの取付け部材を説明する図であって、図5Aは、図1に示すY2側から見た取付け部材の正面図であって、図5B及び図5Cは、それぞれ見る角度を変えた取付け部材の斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る電流センサを示す分解斜視図である。
図7】第2実施形態に係る電流センサを説明するための図であって、図7Aは、図6に示すY2側から見た正面図であり、図7Bは、図7Aに示す正面図のカバーを省略した図である。
図8】第2実施形態に係る電流センサを説明するための図であって、図8Aは、図6に示すX1側から見た側面図であり、図8Bは、図6に示すZ2側から見た底面図である。
図9】第2実施形態に係る電流センサの筐体を説明するための図であって、図9A及び図9Bは、それぞれ見る角度を変えた筐体の斜視図である。
図10】第2実施形態に係る電流センサの取付け部材を説明するための図であって、図10Aは、図6に示すY2側から見た取付け部材の正面図であって、図10B及び図10Cは、それぞれ見る角度を変えた取付け部材の斜視図である。
図11】第1実施形態に係る電流センサの変形例1を説明するための図であって、電流センサの正面図である。
図12】第1実施形態に係る電流センサの変形例2を説明するための図であって、図12A図1に示すY2側から見た正面図であり、図12B図12Aに示す正面図のカバーを省略した図である。
図13】変形例2に係る電流センサの取付け部材を説明するための図であって、図13A図1に示すY2側から見た正面図であって、図13B及び図13Cはそれぞれ見る角度を変えた取付け部材の斜視図である。
図14】従来例1における断線検出装置の検査部の一例の断面図である。
図15】従来例2における貫通形電流検出器の一例を示した図であり、図15Aは、貫通形電流検出器の斜視図であり、図15Bは、貫通形電流検出器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0034】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電流センサ101を示す分解斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電流センサ101を説明するための図であって、図2Aは、図1に示すY2側から見た正面図であり、図2Bは、図2Aに示す正面図のカバー11Kを省略した図である。図3は、第1実施形態に係る電流センサ101を説明するための図であって、図3Aは、図1に示すX1側から見た側面図であり、図3Bは、図1に示すZ2側から見た底面図である。図4は、第1実施形態に係る電流センサの筐体11を説明するための図であって、図4A及び図4Bは、それぞれ見る角度を変えた筐体11の斜視図である。図5は、第1実施形態に係る電流センサの取付け部材13を説明するための図であって、図5Aは、図1に示すY2側から見た取付け部材13の正面図であって、図5B及び図5Cは、それぞれ見る角度を変えた取付け部材13の斜視図である。
【0035】
図1から図3に示すように、電流センサ101は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気(磁界)を検出する複数の磁電変換素子15と、被測定電流路CBが配設される溝M11を有した筐体11と、筐体11に固定可能な取付け部材13と、を備えて構成されている。また、電流センサ101には、筐体11の収納部11sに収納される配線基板16と、配線基板16に搭載される磁電変換素子15からの電気信号を取り出すため取出し端子(図示省略)を有したコネクタCN1と、が設けられている。
【0036】
図1図2及び図4に示すように、筐体11は、一面側が開口した箱状に形成されると共に、複数の磁電変換素子15が搭載された配線基板16を収容するケース11Cと、ケース11Cの開口部側を覆うカバー11Kと、から構成されている。筐体11には、その一辺側から中心側に向かって切り欠かれるように、U字状(凹状)の溝M11が形成されている。この溝M11内に、取付け部材13及び被測定電流路CBが配設されるように構成されている。また、溝M11を形成している筐体11の内面(内周面)には、後述する取付け部材13の爪部13tが係合される穴部11hが左右にそれぞれ設けられている。
【0037】
筐体11は、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いて形成されている。合成樹脂素材を用いているので、射出成形等により、筐体11を容易に作製することができる。
【0038】
ケース11Cは、一面側が開口した箱状に形成され、内部に配線基板16を収容可能な収納部11sが形成されている。また、ケース11Cには、その一辺側からケース11Cの中心側に向かって切り欠かれた凹部111が形成されている。この凹部111は、取付け部材13を収容可能な大きさで形成されると共に取付け部材13の外殻形状と相補形状に形成されている。本実施形態では、凹部111の奥壁112は、後述する取付け部材13の連結部13Jの外周面の形状に対応するように湾曲して形成されている。また、奥壁112の両端部にそれぞれ連なる内側壁113は、取付け部材13の一対の腕部13A、13Bを収容可能な距離だけ離間して、平行に形成されている。各内側壁113には、取付け部材13を取り付けるための一対の切欠き114が、それぞれ対峙する位置に形成されている。各切欠き114は、凹部111の入り口側近傍に設けられ、ケース11Cの開口部側から収納部11sの収納面(底面部)側に向かって垂直方向に切り欠かれるように形成されている。本実施形態では、各切欠き114は側面視矩形状に形成されており、入り口側の外側壁に連なる位置に、対向して形成されている。この切欠き114は、ケース11Cの開口部がカバー11Kによって塞がれることで上述した穴部11hを構成する。
【0039】
カバー11Kは、薄板部材で形成され、一方の辺部にケース11Cの凹部111と同一形状の凹部115が形成されている。すなわち、カバー11Kの凹部115も、ケース11Cの凹部111と同様に、取付け部材13を収容可能な大きさに形成されると共に取付け部材13の外殻形状と相補形状に形成されている。このカバー11Kに形成された凹部115とケース11Cに形成された同一形状の凹部111とによって、上記溝M11が構成される。また、カバー11Kの凹部115が形成された辺部と反対側の辺部には、コネクタCN1の一部を筐体11外部に露出させるための開口部116が形成されている。
【0040】
配線基板16は、例えば、一般に広く知られている両面のプリント配線板が用いられており、ガラス入りのエポキシ樹脂からなるベース基板上には、銅(Cu)等の金属箔をパターニングして、配線パターンが形成されている。配線基板16は、収納部11sの収納面(底面部)と相似形状に形成されており、ケース11Cの凹部111と相補形状の切欠き16kが形成されている。この切欠き16k内には、上記ケース11Cの内側壁113を挟んで、被測定電流路CBが挿通されて配設される。図1及び図2Bに示すように、配線基板16の切欠き16k近傍には、複数(図2Bでは8個)の磁電変換素子15が搭載(配置)されている。なお、本実施形態では、配線基板16にガラス入りのエポキシ樹脂からなるプリント配線板を用いたが、これに限定されるものではなく、絶縁性のリジット基板であれば良く、例えばセラミック配線板を用いても良い。
【0041】
磁電変換素子15は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気(磁界)を検出する電流センサ素子であって、例えば、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子という)を用いることが可能である。この磁電変換素子15は、説明を容易にするため詳細な図示は省略したが、GMR素子をシリコン基板上に作製した後、切り出されたチップを熱硬化性の合成樹脂でパッケージングし、信号の取り出しのためのリード端子がGMR素子と電気的に接続されて構成されている。そして、このリード端子により、配線基板16にはんだ付けがされている。
【0042】
図1及び図2Bに示すように、8個の磁電変換素子15は、配線基板16の切欠16kを挟んで配設されている。本実施形態では、図2Bに示すように、被測定電流路CBが後述する筐体11の溝M11に配設された際に、8個の磁電変換素子15が被測定電流路CBを中心とした仮想楕円IS1上に配置されている。これにより、それぞれの磁電変換素子15の検出値を合算することができるので、被測定電流路CBの位置が多少ずれても、測定精度を低下しにくくすることができる。
【0043】
図1から図5に示すように、取付け部材13は、2つの腕部13A、13Bと、2つの腕部13A、13Bを可動可能に支持して連結している連結部13Jとから構成されている。具体的には、取付け部材13は、概略U字状に形成されており、長尺の板状に形成された一対の腕部13A、13Bと、各腕部13A、13Bの一端部がそれぞれ接続される連結部13Jと、から構成されている。この取付け部材13には、腕部13A、13Bの自由端部(他端部)側から腕部13A及び13B間に被測定電流路CBが導入され、連結部13Jの内壁近傍で被測定電流路CBが配設される。また、取付け部材13は、筐体11の溝M11内に導入可能な大きさで形成されると共に、その外殻形状が溝M11の内周面形状(つまり、ケース11Cの凹部111及びカバー11Kの凹部115の内周面形状)と相補形状に形成されている。この取付け部材13は、筐体11と同様に、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いて形成されている。合成樹脂素材を用いているので、射出成形等により、取付け部材13を容易に作製することができる。
【0044】
一対の腕部13A、13Bは、連結部13Jの両端部からそれぞれ平行に延在している。具体的には、腕部13A、13B及び連結部13Jとの連結部分は、溝M11内への導入・導出及び取付け部材13への被測定電流路CBの導入が可能な程度に、腕部13A及び13B同士が対向する方向への撓みを許容するように構成されている。また、図1図2B及び図5に示すように、2つの腕部13A、13Bの外側には、爪部13tが形成されている。具体的には、各腕部13A及び13Bの外側面には、外方に向かって突出した爪部13tがそれぞれ形成されている。上述したように、この一対の爪部13tは、溝M11を形成する筐体11の内面(内側壁113)に設けられた各穴部11hとそれぞれ係合されるように構成されている。各爪部13tは、腕部13A及び13Bの外側面において、筐体11に取付けられた際に腕部13A及び13Bの自由端部側が筐体11外部に露出可能な位置に形成されている。各腕部13A及び13Bの露出部分は、取付け部材13に対する被測定電流路CBの着脱、及び筐体11に対する取付け部材13の着脱の際に供される部分となる。また、各爪部13tは、腕部13A及び13Bの自由端部側に向かって広がるように形成されており、腕部13A及び13Bの爪部13t形成面に対して垂直方向に延在する当接面131と、この当接面131に連なる傾斜面132とから構成されている(図5A参照)。この爪部13tの当接面131が、ケース11Cの内側壁113に形成された切欠き114の入り口側端面(本実施形態では入り口側の外側壁)に当接することで、溝M11の形成方向(図1図2に示すZ軸方向)に位置決めされた状態で、取付け部材13が筐体11に対して固定される。
【0045】
また、図5に示すように、連結部13Jを含む取付け部材13の内壁には、180°以上にわたり曲面壁13sが形成されている。この曲面壁13s内部に形成される空間内に、被測定電流路CBが配設される。この曲面壁13sは、被測定電流路CBが円形状の場合、被測定電流路CBの外縁に対応した曲面になっている。すなわち、曲面壁13sは、被測定電流路CBの空間(保持空間)に対する導入(導出)口を確保した状態で、保持空間内に保持される被測定電流路CBの外周面の形状(断面形状)と相補形状に形成されている。曲面壁13sは、連結部13J近傍の取付け部材13の内壁の厚さを、被測定電流路CBの外周面の形状に合わせて腕部13A及び13Bの自由端部側に比べて肉厚に形成することで、被測定電流路CBの外周面形状に対応した形状になるように形成されている。これにより、被測定電流路CBを保持した際に、被測定電流路CBの外周面に対して曲面壁13sを広範囲に当接(接触)させた状態で保持することができる。
【0046】
また、曲面壁13sは、被測定電流路CBの保持空間の導入(導出)口側が、保持空間内の最大径に対して幅狭になるように形成されている。上述したように、腕部13A、13B及び連結部13Jとの連結部分は、取付け部材13への被測定電流路CBの導入が可能な程度に、腕部13A及び13B同士が対向する方向への撓みを許容するように構成されている。従って、曲面壁13sの保持空間内に被測定電流路CBを配設する際には、腕部13A及び13Bを互いに離間する方向に押し広げ、保持空間の導入口を被測定電流路CBの最大径部分が通過する程度まで広げることで、被測定電流路CBを保持空間内に容易に導入することができる。保持空間内に被測定電流路CBを導入した後は、腕部13A及び13B同士が平行となる初期状態まで復帰して、保持空間の導入口が保持空間内の最大径よりも幅狭な状態に戻る。これにより、一端、導入口から導入された被測定電流路CBが、保持空間外部に容易に抜け出ることがない。なお、内壁の肉厚部分を調整することで、異なる径寸法の被測定電流路CBに対応した曲面壁13sを形成することも可能である。
【0047】
また、図1から図5に示すように、取付け部材13には、連結部13Jの側端部のそれぞれから筐体11に沿った方向(図3Aに示すZ1方向)に延設された鍔状部13hが設けられている。すなわち、連結部13Jの外周縁部には、一対の鍔状部13hが、筐体11の溝M11の奥壁13J近傍部分を厚み方向に挟むことが可能な程度に離間して形成されている。筐体11の溝M11内に取付け部材13を配設した場合には、一対の鍔状部13hによって筐体11が挟み込まれるので、取付け部材13は筐体11の厚み方向に位置決めされる。各鍔状部13hは、連結部13Jの外周縁部に沿うように形成されており、鍔状部13hの中間部分には切欠き13kが形成されている。
【0048】
次に、以上のように構成された電流センサ101を被測定電流路CBに取付け及び取り外し手順(方法)の一例について説明する。
【0049】
先ず、取付け部材13の左右の腕部13A、13Bを押し広げ、取付け部材13の保持空間の導入口を被測定電流路CBの最大径部分が通過する程度まで広げる。そして、被測定電流路CBを各腕部13A、13Bの自由端部側から腕部13A及び13B間に導入し、保持空間の導入口を通過させて取付け部材13の円形状の保持空間に配設する。このとき、腕部13A、13B及び連結部13Jとの連結部分は、腕部13A及び13B同士が対向する方向への撓みを許容するため、被測定電流路CBを保持空間内に容易に導入することができる。また、鍔状部13hに切欠き13kが形成されているので、この切欠き13kが遊び部分となって、鍔状部13hの変形が容易になる。これにより、一対の腕部13A、13Bを容易に開くことができ、被測定電流路CBを曲面壁13sに囲まれた部分(保持空間)に容易に配設することができる。そして、保持空間内に被測定電流路CBを導入されると、腕部13A及び13B同士が平行となる状態まで復帰して、保持空間の導入口が保持空間内の最大径よりも幅狭な状態に戻る。このとき、保持空間内の被測定電流路CBは、180°以上にわたって形成された曲面壁13sに保持されている。すなわち、曲面壁13sが被測定電流路CBの外周面形状と相補形状に形成されているので、当該被測定電流路CBの外周面に対して曲面壁13sを広範囲で当接させた状態で、被測定電流路CBは保持される。また、曲面壁13sは、保持空間の導入口側が保持空間内の最大径に対して幅狭に形成されているので、一端、保持空間内に導入された被測定電流路CBが保持空間外部に容易に抜け出ることなく、保持空間内部で確実に保持される。
【0050】
次に、筐体11の溝M11と取付け部材13の連結部13Jを対向させて、筐体11に対して取付け部材13を相対的にスライドさせながら、取付け部材13が筐体11の溝M11に収まるようにして取り付ける。このとき、取付け部材13の一対の鍔状部13hのそれぞれを、ケース11C及びカバー11Kの外側に位置するようにして、筐体11を挟みこむように取り付ける。そして、筐体11の内側面(溝M11内)に設けられた一対の穴部11hは、取付け部材13の腕部13A、13Bに設けられた一対の爪部13tとそれぞれ係合する。このとき、各鍔状部13hが筐体11を厚み方向に挟み込むことにより取付け部材13は、筐体11の厚み方向に位置決めされると共に、爪部13tの当接面131が切欠き114の入り口側端面(入り口側の外側壁の背面側)に度当たりして、筐体11に対する取付け方向(図1及び図2に示すZ軸方向)に位置決めされた状態で、筐体11に対して取り付けられる。このようにして、被測定電流路CBが筐体11の溝M11の所望の位置に配設されるようになる。従って、筐体11内に収容されている複数の磁電変換素子15と被測定電流路CBとの位置決めが確実に行われる。
【0051】
また、被測定電流路CBに何らかの負荷がかかった場合でも、被測定電流路CB及び取付け部材13が筐体11の溝M11より外れようとしても、爪部13tと穴部11hの係合及び鍔状部13hの筐体11の厚み方向における挟み込みにより、筐体11の面内方向及び厚み方向において、その動きが阻害される。また、筐体11外部側から力がかけられた場合でも、取付け部材13は、筐体11の内側に形成された溝M11内で、爪部13tと穴部11hとが係合されているので、被測定電流路CBを保持した取付け部材11が筐体11から容易に外れることがない。これにより、被測定電流路CBと取付け部材13とを筐体11の溝に挿入するだけで、簡単に被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBを確実に固定することができる。従って、被測定電流路CBが所望の位置に確実に配され固定される電流センサ101を提供することができる。
【0052】
また、円形状の被測定電流路CBの外縁に対応した曲面壁13sが180°以上にわたり内壁に形成されているので、被測定電流路CBの外周面が180°以上にわたる曲面壁13sによって広範囲で保持される。そのため、被測定電流路CBに何らかの負荷がかかり、被測定電流路CB及び取付け部材13が筐体11の溝より外れようとしても、2つの腕部13A、13Bが、筐体11の溝M11を形成している内面により拘束されるので、曲面壁13sに囲まれた部分から被測定電流路CBが外れることが難しくなる。また、曲面壁13sは、保持空間の導入口側が保持空間内の最大径に対して幅狭に形成されているので、一端、保持空間内に導入された被測定電流路CBが保持空間外部に容易に抜け出ることない。これにより、簡単な構成で、被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBをより確実に固定することができる。
【0053】
また、連結部13Jの両側端部には、筐体11(連結部13Jの外縁部)に沿った方向(図3Aに示すZ1方向)に延設された鍔状部13hが設けられているので、それぞれの鍔状部13hが筐体11を厚み方向に挟みこみ、取付け部材13が筐体11に対して垂直方向(図3Aに示すY1−Y2方向)に移動することが抑制される。これにより、取付け部材13が筐体11の溝M11から外れることが防止できる。更には、鍔状部13hと筐体11との隙間を最小限にすることで、取付け部材13のガタツキ(微少な動き)をも防止できる。
【0054】
一方、電流センサ101を被測定電流路CBから取り外す場合には、筐体11外部に露出している一対の腕部13A、13Bの自由端部側を内側に(互いに近づく方向に)移動させることにより、各腕部13A及び13Bがわずかに撓んで、爪部13tが穴部11hから外れる方向に移動し、穴部11hと爪部13tとの係合が解除される。そして、そのままの状態で、筐体11に対して取付け部材13を相対的にスライドさせながら、取付け部材13を筐体11の溝M11から外すようにする。この際には、図2及び図3に示すように、2つの腕部13A、13Bの一部、つまり先端側が、筐体11から突出しているので、安全上の理由から作業者が手袋をしているような状態であっても、簡単な構成で、取付け部材13を筐体11の溝M11から取り外すことができる。そして、取付け部材13の各腕部13A及び13Bを外方に押し広げて、保持空間の導出口を被測定電流路CBの最大径部分が通過する程度まで広げ、被測定電流路CBを導出口から保持空間外部に移動し、各腕部13A及び13B間から取付け部材13外部に取り出す。このときも、取付け部材13への被測定電流路CBの取付け時と同様に、腕部13A、13B及び連結部13Jとの連結部分が腕部13A及び13B同士が対向する方向への撓みを許容するため、被測定電流路CBを保持空間外部に容易に導出して、被測定電流路CBを簡単に取付け部材13から取り外すことができる。
【0055】
以上により、本発明の第1実施形態の電流センサ101は、被測定電流路CB及び取付け部材13が筐体11の溝M11に配された際に、被測定電流路CBが筐体11の溝M11に固定支持されるとともに、取付け部材13の腕部13A、13Bに設けられた爪部13tと筐体11の溝M11を形成している内面に設けられた穴部11hとが係合するので、被測定電流路CB及び取付け部材13が筐体11の溝M11より外れようとしても、爪部13tと穴部11hの係合により、その動きが阻害される。すなわち、爪部13tと穴部13hとが係合して筐体11に対して取付け部材13が取付けられることで、当該溝M11及び取付け部材13が協働して被測定電流路CBを保持するので、被測定電流路及び取付け部材13が筐体11の溝M11から外れようとしても、爪部13tと穴部13hの係合によってその動きが抑制される。これにより、被測定電流路CBと取付け部材13とを筐体11の溝M11に挿入するだけで、簡単に被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBを確実に固定することができる。
【0056】
特に、本実施形態では、取付け部材13が一対の腕部13A、13B及び連結部13Jの内側で被測定電流路CBを保持した状態で溝M11内に導入されて取付けられるので、被測定電流路CBは筐体11外部から最も遠い内側部分で保持される。そのため、筐体11外部に力が加わった場合でも、被測定電流路CBが筐体11外部に容易に外れることがなく、被測定電流路CBを確実に保持することができる。
【0057】
また、取付け部材13が筐体11の溝M11に配され爪部13tと穴部11hとが係合された際に、2つの腕部13A、13Bの一部が、筐体11から突出しているので、2つの腕部13A、13Bを内側に移動させることにより、爪部13tが穴部11hから外れる方向に移動し、爪部13tと穴部11hとの係合を解除することができる。これにより、簡単な構成で、取付け部材13を筐体11の溝M11から取り外すことができ、被測定電流路CBを簡単に取り外せることができる。
【0058】
また、円形状の被測定電流路CBの外縁に対応した曲面壁13sが180°以上にわたり内壁に形成されているので、取付け部材13の2つの腕部13A、13Bを広げこの曲面壁13sに囲まれた部分に被測定電流路CBを配設した後、被測定電流路CBが180°以上にわたる曲面壁13sに保持されるようになる。このため、そのまま取付け部材13を筐体11に配した際に、被測定電流路CBが外れようとしても、2つの腕部13A、13Bが筐体11の溝M11を形成している内面により拘束されるので、曲面壁13sに囲まれた部分から被測定電流路CBが外れることが難しくなる。これにより、簡単な構成で、被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBをより確実に固定することができる。
【0059】
また、連結部13Jの側端部のそれぞれから筐体11に沿った方向に延設された鍔状部13hが設けられているので、それぞれの鍔状部13hが筐体11を挟むようになり、取付け部材13が筐体11に対して垂直の方向に移動することが阻害される。これにより、取付け部材13が筐体11の溝M11から外れることを防止できる。更には、鍔状部13hと筐体11との隙間を最小限にすることで、取付け部材13のガタツキ(微少な動き)をも防止できる。
【0060】
また、鍔状部13hに切欠き13kが設けられているので、この切欠き13kが遊び部分となり、鍔状部13hの変形が容易になる。これにより、取付け部材13の腕部(13A、13B)を容易に開くことができ、被測定電流路CBを曲面壁13sに囲まれた部分に容易に配設することができる。
【0061】
また、磁電変換素子15が被測定電流路CBを中心とした仮想楕円IS1上に複数配置されているので、それぞれの磁電変換素子15の検出値を合算することができる。これにより、被測定電流路CBの位置が多少ずれても、測定精度を低下しにくくすることができる。
【0062】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る電流センサ102を示す分解斜視図である。図7は、第2実施形態に係る電流センサ102を説明するための図であって、図7Aは、図6に示すY2側から見た正面図であり、図7Bは、図7Aに示す正面図のカバー21Kを省略した図である。図8は、第2実施形態に係る電流センサ102を説明するための図であって、図8Aは、図6に示すX1側から見た側面図であり、図8Bは、図6に示すZ2側から見た底面図である。図9は、第2実施形態に係る電流センサの筐体21を説明するための図であって、図9A及び図9Bは、それぞれ見る角度を変えた筐体21の斜視図である。図10は、第2実施形態に係る電流センサの取付け部材23を説明するための図であって、図10Aは、図6に示すY2側から見た取付け部材23の正面図であって、図10B及び図10Cは、それぞれ見る角度を変えた取付け部材23の斜視図である。
【0063】
図6から図8に示すように、電流センサ102は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子25と、被測定電流路CBが配設される溝M21を有した筐体21と、筐体21に固定可能な取付け部材23と、を備えて構成されている。また、電流センサ102には、筐体21の収納部21sに収納される配線基板26と、配線基板26に搭載される磁電変換素子25からの電気信号を取り出すため取出し端子(図示省略)を有したコネクタCN2と、が設けられている。
【0064】
図6図7及び図9に示すように、筐体21は、一面側が開口した箱状に形成されると共に、複数の磁電変換素子25が搭載された配線基板26を収容するケース21Cと、ケース21Cの開口部側を覆うカバー21Kと、から構成されている。筐体21には、その一辺側から中心側に向かって切り欠かれるように、U字状(凹状)の溝M21が形成されている。この溝M21内に、取付け部材23及び被測定電流路CBが配設されるように構成されている。また、溝M21を形成している筐体21の内面(内周面)には、後述する取付け部材23の爪部23tが係合される穴部21hが左右にそれぞれ設けられている。更に、溝M21の底部を形成する筐体21の内壁面21iが曲面状に形成されている。ここで、溝M21の底部とは、筐体21の最も内側(中心側)に近い位置の内壁面21iであって、溝M21内に導入される取付け部材23の先端部側と対峙する内壁面21iを指すものである。この内壁面21iは、被測定電流路CBの外周面の形状と相補形状に形成されている。
【0065】
筐体21は、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いて形成されている。合成樹脂素材を用いているので、射出成形等により、筐体21を容易に作製することができる。
【0066】
ケース21Cは、一面側が開口した箱状に形成され、内部に配線基板26を収容可能な収納部21sが形成されている。また、ケース21Cには、その一辺側からケース21Cの中心側に向かって切り欠かれた凹部211が形成されている。この凹部211は、取付け部材23を収容可能な大きさで形成されている。凹部211の奥壁212は、被測定電流路CBの外周面に対応するように湾曲して形成されている。すなわち、奥壁212は、被測定電流路CBの外周面形状と相補形状に形成されており、ケース21Cの開口部がカバー21Kによって塞がれることで、奥壁212及びカバー21Kの凹部215の奥壁部分とによって後述する筐体21の内壁面21iが構成される。また、奥壁212の両端部にそれぞれ連なる内側壁213は、取付け部材23の一対の腕部23A、23Bを収容可能な距離だけ離間して、平行に形成されている。各内側壁213には、取付け部材23を取り付けるための一対の切欠き214が、それぞれ対峙する位置に形成されている。各切欠き214は、凹部211の入り口側近傍に設けられ、ケース21Cの開口部側から収納部21sの収納面(底面部)側に向かって垂直方向に切り欠かれるように形成されている。本実施形態では、各切欠き214は側面視矩形状に形成されており、入り口側の外側壁に隣接する位置に対向して形成されている。この切欠き214は、ケース21Cの開口部がカバー21Kによって塞がれることで上述した穴部21hを構成する。
【0067】
カバー21Kは、薄板部材で形成され、一方の辺部にケース21Cの凹部211と同一形状の凹部215が形成されている。すなわち、カバー21Kの凹部215も、ケース21Cの凹部211と同様に、取付け部材23を収容可能な大きさに形成されている。このカバー21Kに形成された凹部215と、ケース21Cに形成された同一形状の凹部211とによって、上記溝M21が構成される。また、カバー21Kの凹部215が形成された辺部と反対側の辺部には、コネクタCN2の一部を筐体21外部に露出させるための開口部216が形成されている。
【0068】
配線基板26は、例えば、一般に広く知られている両面のプリント配線板を用いられており、ガラス入りのエポキシ樹脂からなるベース基板上には、銅(Cu)等の金属箔をパターニングして、配線パターンが形成されている。配線基板26は、収納部21sの収納面(底面部)と相似形状に形成されており、ケース21Cの凹部211と相補形状の切欠き26kが形成されている。この切欠き26k内には、上記ケース21Cの内側壁213を挟んで、被測定電流路CBが挿通されて配設される。図6及び図7Bに示すように、配線基板26の切欠き26k近傍には、複数(図7Bでは8個)の磁電変換素子25が搭載(配置)されている。なお、本実施形態では、配線基板26にガラス入りのエポキシ樹脂からなるプリント配線板を用いたが、これに限定されるものではなく、絶縁性のリジット基板であれば良く、例えばセラミック配線板を用いても良い。
【0069】
磁電変換素子25は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気(磁界)を検出する電流センサ素子であって、例えば、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子という)を用いることが可能である。この磁電変換素子25は、説明を容易にするため詳細な図示は省略したが、GMR素子をシリコン基板上に作製した後、切り出されたチップを熱硬化性の合成樹脂でパッケージングし、信号の取り出しのためのリード端子がGMR素子と電気的に接続されて構成されている。そして、このリード端子により、後述する配線基板26にはんだ付けがされている。
【0070】
図6及び図7Bに示すように、8個の磁電変換素子25は、配線基板26の切欠き26kを挟んで配設されている。本実施形態では、図7Bに示すように、被測定電流路CBが後述する筐体21の溝M21に配設された際に、8個の磁電変換素子25が被測定電流路CBを中心とした仮想楕円IS2上に配置されている。これにより、それぞれの磁電変換素子25の検出値を合算することができるので、被測定電流路CBの位置が多少ずれても、測定精度を低下しにくくすることができる。
【0071】
図6から図10に示すように、取付け部材23は、2つの腕部23A、23Bと、2つの腕部23A、23Bを可動可能に支持して連結している連結部23Jとから構成されている。具体的には、取付け部材23は、概略U字状に形成されており、長尺の板状に形成された一対の腕部23A、23Bと、各腕部23A、23Bの一端部がそれぞれ接続される連結部23Jと、から構成されている。取付け部材23は、筐体21の溝M21内に導入可能な大きさで形成されている。この取付け部材23は、筐体21と同様に、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いて形成されている。合成樹脂素材を用いているので、射出成形等により、取付け部材23を容易に作製することができる。
【0072】
一対の腕部23A、23Bは、連結部23Jの両端部からそれぞれ平行に延在している。具体的には、腕部23A、23B及び連結部23Jとの連結部分は、溝M11内への導入・導出が可能な程度に、腕部23A及び23B同士が対向する方向への撓みを許容するように構成されている。また、図6図7B及び図10に示すように、2つの腕部23A、23Bの外側には、爪部23tが形成されている。具体的には、各腕部23A及び23Bの外側面には、外方に向かって突出した爪部23tがそれぞれ形成されている。上述したように、この一対の爪部23tは、溝M21を形成する筐体21の内面(内側壁213)に設けられた各穴部21hとそれぞれ係合されるように構成されている。各爪部23tは、腕部23A及び23Bの外側面において、筐体21に取付けられた際に腕部23A及び23Bの自由端部側が筐体21外部に露出可能な位置に形成されている。各腕部23A及び23Bの露出部分は、筐体21に対する取付け部材23の着脱の際に供される部分となる。また、各爪部23tは、腕部23A及び23Bの自由端部側に向かって広がるように形成されており、腕部23A及び23Bの爪部23t形成面に対して垂直方向に延在する当接面231と、この当接面231に連なる傾斜面232とから構成されている(図10A参照)。この爪部23tの当接面231が、ケース21Cの内側壁213に形成された切欠き214の入り口側端面(本実施形態では入り口側の外側壁)に当接することで、溝M21の形成方向(図6図7に示すZ軸方向)に位置決めされた状態で、取付け部材23が筐体21に対して固定される。
【0073】
図10に示すように、連結部23Jの外壁面23wは曲面状に形成されている。具体的には、外壁面23wは、腕部23A及び23Bの自由端部側に凹むように湾曲して形成されている。そのため、筐体21に対して取付け部材23を取り付けた際には、上述した溝M21の底部を形成する筐体21の内壁面(奥壁)21iとこの外壁面23wとの間に円形状の空間が形成されることになる。すなわち、筐体21の内壁面21i(ケース21Cの奥壁)と連結部23Jの外壁面23wとによって、被測定電流路CBの外周面形状に対応した相補形状の保持空間が形成される。保持空間内では、被測定電流路CBの外周面の一方側(奥側)が筐体21の内壁面21iに当接して保持され、被測定電流路CBの外周面の他方側(入り口側)が連結部23Jの外壁面23wに当接して保持されることになる。すなわち、被測定電流路CBは、筐体21の内壁面21iと連結部材23J(取付け部材23)の外壁面23wとによって挟み込まれて保持される。これにより、被測定電流路CBを保持した際に、筐体21の内壁面21i(溝M21の奥壁)及び連結部23Jの外壁面23wを広範囲に当接(接触)させた状態で確実に保持することができる。
【0074】
次に、以上のように構成された電流センサ102を被測定電流路CBに取付け及び取り外し手順(方法)の一例について説明する。
【0075】
先ず、被測定電流路CBを筐体21の溝M21に挿入して、溝M21の底部を形成する筐体21の内壁面21iに押しあてるようにして、被測定電流路CBを溝M21に配設する。このとき、内壁面21iは被測定電流路CBの外周面形状と相補形状に形成されているので、内壁面21iの曲面と円形状の被測定電流路CBの外縁(外周面)とが広い領域で当接される。
【0076】
次に、筐体21の溝M21と取付け部材23の連結部23Jを対向させて、筐体21に対して取付け部材23を相対的にスライドさせながら、取付け部材23が筐体21の溝M21に収まるようにして取り付ける。このとき、爪部23tが溝M21の内側壁213間に位置する状態まで、筐体21外部に露出している一対の腕部23A及び23Bの自由端部側を互いに近づく方向に撓ませて、取付け部材21を溝M21内に導入させていく。腕部23A、23B及び連結部23Jの連結部分は、腕部23A及び23B同士が対向する方向への撓みを許容するため、取付け部材23を筐体21の溝M21内に容易に導入することができる。そして、筐体21の内面に設けられた穴部21hは、取付け部材23の腕部23A、23Bに設けられた爪部23tと係合する。このとき、筐体21の内壁面21iと取付け部材23(連結部23J)の外壁面23wとの間に形成された円形の保持空間に、被測定電流路CBが挟持されるようになる。これにより、被測定電流路CBが筐体21の溝M21の所望の位置に配設される。従って、筐体21内に収容されている複数の磁電変換素子25と被測定電流路CBとの位置決めが確実に行われる。
【0077】
また、被測定電流路CBに何らかの負荷がかかった場合でも、被測定電流路CB及び取付け部材23が筐体21の溝M21より外れようとしても、爪部23tと穴部21hの係合により、その動きが阻害される。また、筐体21外部側から力がかけられた場合でも、取付け部材23は、筐体21の内側に形成された溝M21内で、爪部23tと穴部21hとが係合されているので、溝M21内部で筐体21の内壁面21i及び取付け部材21の外壁面23wに挟まれた被測定電流路CBが、筐体21外部に外れることがない。これにより、被測定電流路CBと取付け部材23とを筐体21の溝M21に挿入するだけで、簡単に被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBを確実に固定することができる。従って、被測定電流路CBが所望の位置に確実に配され固定される電流センサ102を提供することができる。
【0078】
また、溝M21の底部を形成する筐体21の内壁面21iと取付け部材23の連結部23Jの外壁面23wとの間には、円形の空間が形成されている。そのため、特に、円形状の被測定電流路CBを保持する場合には、内壁面21i及び外壁面23wの曲面形状により、被測定電流路CBの外縁を支持することができるので、より所望の位置に被測定電流路CBを配設することができる。
【0079】
一方、電流センサ102を被測定電流路CBから取り外す場合には、筐体21外部に露出する一対の腕部23A、23Bの自由端部を内側に(互いに近づく方向に)移動させることにより、各腕部23A及び23Bがわずかに撓んで、爪部23tが穴部21hから外れる方向に移動し、穴部21hと爪部23tとの係合が解除される。そして、そのままの状態で、筐体21に対して取付け部材23を相対的にスライドさせながら、取付け部材23を筐体21の溝M21から取付け部材23を外すようにする。この際には、図7及び図8に示すように、2つの腕部23A、23Bの一部、つまり先端側が、筐体21から突出しているので、安全上の理由から作業者が手袋をしているような状態であっても、簡単な構成で、取付け部材23を筐体21の溝M21から容易に取り外すことができ、被測定電流路CBを簡単に取り外せることができる。
【0080】
以上により、本発明の第2実施形態の電流センサ102は、被測定電流路CB及び取付け部材23が筐体21の溝M21に配された際に、被測定電流路CBが筐体21の溝M21に固定支持されるとともに、取付け部材23の腕部23A、23Bに設けられた爪部23tと筐体21の溝M21を形成している内面に設けられた穴部21hとが係合するので、被測定電流路CB及び取付け部材23が筐体21の溝M21より外れようとしても、爪部23tと穴部21hの係合により、その動きが阻害される。すなわち、爪部23tと穴部23hとが係合して筐体21に対して取付け部材23が取付けられることで、当該溝M21及び取付け部材23が協働して被測定電流路CBを保持するので、被測定電流路CB及び取付け部材23が筐体21の溝M21から外れようとしても、爪部23tと穴部23hの係合によってその動きが抑制される。特に本実施形態では、被測定電流路CBは溝M21の内壁面21iと連結部23Jの外壁面23wとの間で挟み込まれるように保持されるので、被測定電流路CBを確実に保持することができる。これにより、被測定電流路CBと取付け部材23とを筐体21の溝M21に挿入するだけで、簡単に被測定電流路CBを所望の位置に配設できるとともに、被測定電流路CBを確実に固定することができる。
【0081】
また、取付け部材23が筐体21の溝M21に配され爪部23tと穴部21hとが係合された際に、2つの腕部23A、23Bの一部が、筐体21から突出しているので、2つの腕部23A、23Bを内側に移動させることにより、爪部23tが穴部21hから外れる方向に移動し、爪部23tと穴部21hとの係合を解除することができる。これにより、簡単な構成で、取付け部材23を筐体21の溝M21から取り外すことができ、被測定電流路CBを簡単に取り外せることができる。
【0082】
また、溝M21の底部を形成する筐体21の内壁面21iと取付け部材23の連結部23Jの外壁面23wとの間に円形の空間が形成されるので、その空間に被測定電流路CBを配設することができる。このため、内壁面21iと外壁面23wとで被測定電流路CBを挟持することができ、取付け部材23を筐体21に配した際に、被測定電流路CBが外れようとしても、取付け部材23により被測定電流路CBが筐体21の溝M21部分から外れることが難しくなる。これにより、簡単な構成で、被測定電流路CBを固定することができるとともに、被測定電流路CBをより確実に固定することができる。特に、円形状の被測定電流路CBの場合、内壁面21i及び外壁面23wの曲面形状により、被測定電流路CBの外縁を支持することができるので、より所望の位置に被測定電流路CBを配設することができる。
【0083】
また、磁電変換素子25が被測定電流路CBを中心とした仮想楕円IS2上に複数配置されているので、それぞれの磁電変換素子25の検出値を合算することができる。これにより、被測定電流路CBの位置が多少ずれても、測定精度を低下しにくくすることができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0085】
<変形例1>
図11は、第1実施形態に係る電流センサ101の変形例1を説明するための図であって、電流センサC111の正面図である。上記第1実施形態の取付け部材13を、図11に示すように、外径の小さい被測定電流路CCBの外縁に対応した曲面壁C13sを有した取付け部材C13にしても良い。すなわち、曲面壁C13sは、連結部13J近傍の取付け部材13の内壁の厚さを、外径の小さい被測定電流路CCBの外周面形状に合わせて肉厚に形成することで、被測定電流路CCBの外周面形状に対応した形状になるように構成されている。これにより、外径の小さい被測定電流路CCBであっても、曲面壁C13sの曲率半径の小さい取付け部材C13にすることで、それ以外の部品を共通して電流センサC111を作製することができる。このことは、被測定電流路の外径が大きくなった場合にも言え、被測定電流路の種類に応じて対応が可能と言える。すなわち、取付け部材13の内壁の肉厚部分を調整することで、異なる径寸法の被測定電流路に対応した曲面壁を形成することが可能である。
【0086】
<変形例2>
図12は、第1実施形態に係る電流センサ101の変形例2を説明するための図である。図12Aは、電流センサC112の正面図であり、図12Bは、図12Aに示すカバー11Kを省略した図である。図13は、第1実施形態に係る電流センサC112の取付け部材C23を説明するための図であり、図13A図1に示すY2側から見た正面図であり、図13B及び図13Cはそれぞれ見る角度を変えた取付け部材の斜視図である。
【0087】
図12及び図13に示す電流センサC112では、連結部13Jを含む取付け部材C23の内壁C23sは、断面視矩形状の被測定電流路CB2の外周面形状と相補形状になるように形成されている。すなわち、内壁C23sは、被測定電流路CB2の空間(保持空間)に対する導入(導出)口を確保した状態で、保持空間内に保持される被測定電流路CCB2の外周面形状と相補形状に形成されている。上述した変形例1に係る曲面壁C13sと同様に、内壁C23sは、連結部13J近傍の取付け部材C23の内壁の厚さを被測定電流路CB2の外周面形状(矩形形状)に合わせて調整することで、被測定電流路CB2の外周面形状に対応した矩形形状になるように構成されている。これにより、矩形状の被測定電流路CB2を保持した際に、矩形状の保持空間内において、被測定電流路CB2の外周面に対して内壁C23sを広範囲に当接(接触)させた状態で被測定電流路CB2を確実に保持することができる。特に、取付け部材C23の内壁C23sを保持対象である被測定電流路CB2の外周面形状に対応させて形成することで、筐体11を変えることなく、取付け部材C23を交換するだけで、筐体11に取付け部材C23及び被測定電流路CB2を保持させることができる。
【0088】
また、内壁C23sの奥側(保持空間の導入口と対向する側)面には、溝M11の奥壁に向かって切り欠かれた凹部C23kが形成されている。この凹部C23kは、内壁C23sの奥側面の中間位置に、鍔状部13hに形成された切欠き13kと対向するように形成されている。これにより、筐体11から取付け部材C23を取り外す際に、凹部C23kが遊び部分となって内壁C23sの変形が容易になるので、取付け部材C23の腕部13A及び13Bを容易に閉じることができる。すなわち、筐体11に取付け部材C23を取り付ける際には、鍔状部13hに形成された切欠き13kが遊び部分となって鍔状部13hの変形を容易にする一方、筐体11から取付け部材C23を取り外す際には、凹部C23kが遊び部分となって内壁C23sの変形が容易になる。これにより、腕部13A及び13Bの撓みと協働して筐体11に対する取付け部材C23の着脱をさらに容易に行うことができる。
【0089】
<変形例3>
上記第1実施形態では、鍔状部13hを設けるように好適に構成したが、鍔状部13hが無くても良い。また、鍔状部13hに切欠き13kを設けるように好適に構成したが、切欠き13kが無くても良い。
【0090】
<変形例4>
上記実施形態では、磁電変換素子25を8個、配置するように構成したが、8個に限るものではなく、例えば磁電変換素子25を2個、4個、6個等でも良い。
【0091】
<変形例5>
上記実施形態では、磁電変換素子25が仮想楕円IS1、IS2上に配設されるように構成したが、仮想楕円IS1、IS2に限らず、例えば、四角形状や、中央が窪んだ形状の仮想の軌道上に配設されるように構成しても良い。
【0092】
<変形例6>
上記実施形態では、磁電変換素子(15または25)としてGMR素子を好適に用いたが、磁気の方向を検知できる磁気検出素子であれば良く、MR(Magneto Resistive) 素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、ホール素子等であっても良い。但し、ホール素子等の場合は、GMR素子やMR素子の感度軸と異なるので、使用するホール素子の感度軸に合わせて、実装に工夫が必要である。
【0093】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
11、21 筐体
11h、21h 穴部
21i 内壁面
13、C13 取付け部材
13J、23J 連結部
13h 鍔状部
13s、C13s 曲面壁
13t、23t 爪部
23w 外壁面
15、25 磁電変換素子
CB、CCB 被測定電流路
CN1、CN2 コネクタ
IS1、IS2 仮想楕円
M11 溝
M21 溝
101、102、C111 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15