(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長変換部材が、少なくとも前記第一の光及び前記第二の光に対し透明である第一の材料、及び、前記第一の光の少なくとも一部を吸収し、前記第二の光を発光する第二の材料を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体発光装置。
前記第二の材料及び第三の材料の少なくとも一つが、前記第一の光の前記第一の材料における光学波長よりも小さい平均粒子径であることを特徴とする請求項8に記載に半導体発光装置。
前記第二の材料、前記第三の材料及び前記第四の材料の少なくとも一つが、前記第一の光の前記第一の材料における光学波長よりも小さい平均粒子径であることを特徴とする請求項11に記載の半導体発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0046】
以下、本実施の形態に係る半導体発光装置について詳細に説明する。本発明における半導体発光装置は、少なくとも2層以上の半導体層と、発光層とを積層して構成される積層半導体層を有し、第一の光を発光する半導体発光素子と、少なくとも、前記半導体発光素子の一部を覆い、前記第一の光の少なくとも一部を吸収し、第一の光の波長とは異なる第二の光を発光する波長変換部材と、を有して構成される。
【0047】
例えば、本実施の形態の半導体発光装置は、
図1に示す断面模式図にて構成される。
図1に示すように、半導体発光装置500は、半導体発光素子100をパッケージ520の収納部520a内に配置した構成となっている。
【0048】
図1に示す実施の形態では、パッケージ520が、波長変換部材511で充填されている。そのため半導体発光素子100の裏面100aを除く各面が波長変換部材511で覆われた構造となっている。
【0049】
図1に示すように波長変換部材511は、半導体発光素子100からの発光光(第一の光)の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541とそれに含有、分散されている蛍光材(第二の材料)531とを有して構成されている。蛍光材531は、半導体発光素子100から発光される発光光である第一の光の発光中心波長に対する蛍光特性を有しており、第一の光の少なくとも一部を吸収し、第一の光の波長とは異なる第二の光である蛍光を発光する。さらに、充填材541は、前記第二の光である蛍光に対しても実質的に透明であり、後述する第三の光及び第四の光に対しても実質的に透明である。
【0050】
以下、本発明において実質的に透明とは、該当する波長の光に対する吸収がほとんどない状態を指し、具体的には、該当する波長の光に対する吸収率が10%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。あるいは、実質的に透明とは、該当する波長の光の透過率が、80%以上であり、好ましくは、85%以上であり、より好ましくは、90%以上と定義される。
【0051】
充填材541は、有機物又は無機物とすることができ、例えば、エポキシ、アクリルポリマー、ポリカーボネート、シリコーンポリマー、光学ガラス、カルコゲナイドガラス、スピロ化合物、及びこれらの混合物を含む材料から構成することができるが、特に材質を限定するものではない。
【0052】
さらに充填材541は、また、第一の光、第二の光、第三の光、及び第四の光に対して実質的に透明な微粒子を含有しても良い。微粒子を含有することで、耐熱性、耐久性、耐候性、熱寸法安定性が向上し好ましい。
【0053】
充填材541に含有される前記微粒子としては、特に限定されるものではないが、金属酸化物、金属窒化物、ニトリドシリケート、及びこれらの混合物とすることができる。好適な金属酸化物の例としては、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及びこれらの混合物を含むことができる。
【0054】
半導体発光装置500からの発光光は、半導体発光素子100から発光される第一の光と、波長変換部材511からの蛍光である第二の光との混色が観察され、例えば、第一の光が450nm付近に発光中心波長を有する青色、第二の光が590nm付近に主波長を有する黄色蛍光材である場合、半導体発光装置500の発光光は、白色として観察される。
【0055】
第一の光と第二の光の波長は、特に制限されるものではなく、上記したように、半導体発光装置500からの発光色が目的に応じた色を呈するように任意に選択される。ただし、第一の光を吸収し、蛍光である第二の光が得られることから、第二の光の波長は、必ず、第一の光よりも長くなる。
【0056】
また、第一の光、第二の光が共に、可視光である必要はなく、例えば、第一の光が410nm以下の波長を有する紫外光であり、第二の光が緑色であってもよい。この場合、半導体発光装置500からの発光光は、単色光のみ観察されることとなる。半導体発光装置500からの発光光は、目的に応じて種々選択することができ、それに応じて、半導体発光素子100の構成と、蛍光材531の材料とが種々選択される。
【0057】
半導体発光素子100からの発光光の一部は、蛍光材531に吸収され、蛍光を発する。蛍光は、そのまま、半導体発光装置500の系外へ導出されるが、一部は、
図1に示すように散乱され、半導体発光素子100に戻る。このとき、後述する半導体発光素子100に設けられている微細構造層により、蛍光は散乱を受け、半導体発光装置500の系外へ導出される。本実施の形態と異なって、半導体発光素子100に微細構造層が設けられていない場合、半導体発光装置500に戻った光の角度は変わらず、一部は、導光モードとなり、半導体発光装置500の系外へ導出されない現象がおき、結果として、半導体発光装置500の発光効率は低下することとなる。
【0058】
図2は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。半導体発光装置501においては、パッケージ520に設置された半導体発光素子100の発光面の一部が、波長変換部材512で覆われている。
図2に示すようにパッケージ520内は、封止材542で充填されている。波長変換部材512は、半導体発光素子100からの発光光に対して、実質的に透明である充填材541とそれに含有、分散されている蛍光材531とを有して構成されている。
【0059】
図2に示す半導体発光装置501においても、上記した
図1の半導体発光装置500と同様に、半導体発光素子100からの発光光(第一の光)と、蛍光材531からの蛍光(第二の光)とが、半導体発光素子100に設けられた微細構造層により、散乱を受け、半導体発光装置501の系外へ効率的に導出される。
図2の半導体発光装置501においては、
図1の半導体発光装置500よりも、波長変換部材512の体積が少なく、半導体発光素子100からの発光光及び蛍光は、蛍光材531からの散乱を受けにくくなるため、半導体発光素子100に設けられる微細構造層は、より強い散乱性が必要となる。このように、半導体発光装置の構成、用途等により、半導体発光素子100に設ける微細構造層を適宜、設計することができる。
【0060】
図2に示す半導体発光装置501に用いられる封止材542としては、例えば波長変換部材512に用いられる充填材541と同じ透明な部材を用いることができる。
【0061】
図3は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。
図3に示すように、半導体発光装置510は、半導体発光素子100をパッケージ520の収納部520a内に配置した構成となっている。
【0062】
図3に示す実施の形態では、パッケージ520が、波長変換部材511で充填されており、さらに、半導体発光素子100は、その最表面に、凹部または、凸部から構成されるドットを含む微細構造層120を構成要素として備えている。
【0063】
図3に示すように、微細構造層120と波長変換部材511との間には、中間材料121が介在しており、微細構造層120は波長変換部材511に接していない。すなわち中間材料121は、微細構造層120の最表面と波長変換部材511の微細構造層120との対向面との間に厚みを持って形成されている。
【0064】
図3に示すように、中間材料121は、微細構造層120の凸部から構成されるドット間に充填されている。あるいは、ドットが凹部で構成される形態では、凹部内に中間材料121が充填されている。したがって微細構造層120の表面から波長変換部材511に至る空間の全域が、中間材料121で埋まった状態とされている。
【0065】
図3に示す中間材料121は塗布後、硬化して固められている。中間材料121は、微細構造層120の表面のうねりに倣って形成されていてもよいが、
図3に示すように中間材料121(中間層)の表面121aは平坦な面で形成されていてもよい。
【0066】
あるいは、中間材料121が、微細構造層120の凸部から構成されるドット間のみ、または、凹部で形成されたドット内にのみ充填された形態とすることもできる。かかる構成では、微細構造層120の最表面と波長変換部材511の微細構造層120との対向面との間の少なくとも一部が接触する。なお、かかる構成も、微細構造層120と波長変換部材511との間に、中間材料121が介在(充填)された構成と定義される。
【0067】
ただし、微細構造層120と波長変換部材511との間に中間材料121が介在して、微細構造層120が波長変換部材511に非接触の形態であることが好ましい。
【0068】
図3においても波長変換部材511は、半導体発光素子100からの発光光(第一の光)の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541とそれに含有、分散されている蛍光材(第二の材料)531とを有して構成されている。蛍光材531は、半導体発光素子100から発光される発光光である第一の光の発光中心波長に対する蛍光特性を有しており、第一の光の少なくとも一部を吸収し、第一の光の波長とは異なる第二の光である蛍光を発光する。さらに、充填材541は、前記第二の光である蛍光に対しても実質的に透明であり、後述する第三の光及び第四の光に対しても実質的に透明である。
【0069】
前記した微細構造層120のドット間に充填された中間材料121は、半導体発光素子100からの発光光(第一の光)の発光中心波長に対して実質的に透明である。さらに、前記第二の光である蛍光に対しても実質的に透明であり、後述する第三の光及び第四の光に対しても実質的に透明である。
【0070】
中間材料121は、有機物または無機物とすることができ、例えば、エポキシ、アクリルポリマー、ポリカーボネート、シリコーンポリマー、光学ガラス、カルコゲナイドガラス、スピロ化合物、及びこれらの混合物を含む材料から構成することができるが、特に材質を限定するものではない。
【0071】
中間材料121は、充填材541と同じ材質であっても異なる材質であってもどちらであってもよい。ただし、中間材料121と充填材541とを同じ材質としたほうが、効果的に発光特性を向上させることができ好適である。例えば、中間材料121と充填材541とにシリコーン樹脂を選択することができる。
【0072】
さらに、中間材料121は、また、第一の光、第二の光、第三の光、第四の光に対して実質的に透明な微粒子を含有しても良い。微粒子を含有することで、耐熱性、耐久性、耐候性、熱寸法安定性が向上し好ましい。
【0073】
中間材料121に含有される前記微粒子としては、特に限定されるものではないが、微細構造層120のドット間に充填される中間材料121の有効屈折率が増加することは好ましくなく、実質的に、中間材料121と同等かそれ以下の屈折率であることが好ましい。ここで、実質的に同等であるとは、中間材料121との屈折率の差が0.1以下である。屈折率の差が0.1以下であれば、中間材料121に含有される前記微粒子が50%以内の体積分率であるとき、前記微粒子を含む中間材料121の有効屈折率が中間材料121のみの屈折率と同等となるので好ましい。中間材料121に含有される前記微粒子としては、特に限定されるものではなく、金属酸化物、金属窒化物、ニトリドシリケート、及びこれらの混合物とすることができる。好適な金属酸化物の例としては、酸化シリコン、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及びこれらの混合物を含むことができる。また、前記した充填材541に含有される微粒子と同一の材質であってもよい。
【0074】
本実施の形態では、微細構造層120と波長変換部材511との間には、中間材料121が充填されるが、蛍光材(第二の材料)531は含まれていない。微細構造層120が凸部のドットで形成される場合、ドット間には、蛍光材(第二の材料)531が入っていない。また、微細構造層120が凹部のドットで形成される場合、ドット内には、蛍光材(第二の材料)531が入っていない。したがって、微細構造層120と波長変換部材511との間には、中間材料121のみが介在しているか、あるいは、前記微粒子を含む中間材料121が介在した構成となっている。このように蛍光材531が微細構造層120のドット間やドット内に充填されていないために、ドット間やドット内での有効屈折率が増加せず、微細構造層120による、半導体発光素子100からの第一の光に対する回折あるいは散乱の効率が低下しない。その結果として、半導体発光素子100の少なくとも一部を覆うように波長変換部材511を設けても、半導体発光装置500からの光取り出し効率が低下することを防止できる。
【0075】
本実施の形態と異なって、半導体発光素子100の微細構造層120のドット間やドット内に蛍光材531が存在し、ドット間やドット内での有効屈折率が増加すると、微細構造層120による蛍光に対する回折あるいは散乱効率が低下するため、半導体発光装置510の系外への導出が抑制される現象がおき、結果として、半導体発光装置510の発光効率は低下することとなる。
【0076】
図4は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。半導体発光装置508においては、パッケージ520に設置された半導体発光素子100の発光面の一部が、波長変換部材512で覆われている。
図4に示すようにパッケージ520内は、封止材542で充填されている。波長変換部材512は、半導体発光素子100からの発光光に対して、実質的に透明である充填材541とそれに含有、分散されている蛍光材531とを有して構成されている。
【0077】
図4に示す半導体発光装置508においても、上記した
図3の半導体発光装置510と同様に、半導体発光素子100からの発光光(第一の光)と、蛍光材531からの蛍光(第二の光)とが、半導体発光素子100に設けられた微細構造層120により、散乱を受け、半導体発光装置508の系外へ効率的に導出される。
図4の半導体発光装置508においては、
図3の半導体発光装置510よりも、波長変換部材512の体積が少なく、半導体発光素子100からの発光光及び蛍光は、蛍光材531からの散乱を受けにくくなるため、半導体発光素子100に設けられる微細構造層120は、より強い散乱性が必要となる。このように、半導体発光装置の構成、用途等により、半導体発光素子100に設ける微細構造層120を適宜、設計することができる。
【0078】
図4においても、半導体発光素子100に設けられた微細構造層120と波長変換部材512との間には、蛍光材531を含まない中間材料121が介在し、微細構造層120は波長変換部材512に接していない。
【0079】
図4に示す半導体発光装置508に用いられる封止材542としては、例えば波長変換部材512に用いられる充填材541と同じ透明な部材を用いることができる。
【0080】
図5は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。
図5の半導体発光装置502では、パッケージ520に設置された半導体発光素子100は、
図1と同様に波長変換部材513で覆われている。波長変換部材513は、第一の光である半導体発光素子100からの発光光の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541と、それに含有、分散されている蛍光材531、及び蛍光材532とで構成されている。
【0081】
蛍光材532は、半導体発光素子100から発光される発光光である第一の光の発光中心波長に対する蛍光特性を有しており、第一の光の少なくとも一部を吸収し、第一の光、及び第二の光の波長とは異なる第三の光である蛍光を発光する第三の材料である。半導体発光装置502からの発光光は、半導体発光素子100から発光される第一の光と、波長変換部材からの蛍光である第二の光と、第三の光との混色にて観察される。例えば、第一の光が450nm付近に発光中心波長を有する青色、第二の光が545nm付近に主波長を有する緑色、第三の光が700nm付近に主波長を有する赤色の場合、半導体発光装置502の発光光は、白色として認識される。
【0082】
さらに、前記した充填材541は、第二の光及び第三の光に対しても実質的に透明である。
【0083】
第一の光と第二の光、及び第三の光の波長は、特に制限されるものではなく、上記したように、半導体発光装置502からの発光色が目的に応じた色を呈するように任意に選択される。ただし、第一の光を吸収し、蛍光である第二の光と第三の光が得られることから、第二の光と第三の光の波長は、必ず、第一の光よりも長くなる。
【0084】
図5の半導体発光装置502において、第二の光、及び第三の光の一部は、散乱され、半導体発光素子100に戻る。そして、半導体発光素子100に設けられている微細構造層により、散乱を受け、半導体発光装置502の系外へ導出される。このような作用により、半導体発光装置502の発光効率を向上させることができる。
【0085】
図5に示す半導体発光装置502では、
図2に示す半導体発光装置501と同様に、半導体発光素子100の発光面の一部を、充填材541内に蛍光材531、532が分散された波長変換部材513で覆い、さらにパッケージ520内を
図2の封止材542で充填した構成とすることもできる。
【0086】
図6は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。
図6の半導体発光装置509では、パッケージ520に設置された半導体発光素子100が、
図5と同様に波長変換部材513で覆われている。波長変換部材513は、第一の光である半導体発光素子100からの発光光の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541と、それに含有、分散されている蛍光材(第二の材料)531、及び蛍光材(第三の材料)532とで構成されている。
【0087】
図6においては、半導体発光素子100に設けられた微細構造層120と波長変換部材513との間には、蛍光材531、532を含まない中間材料121が介在し、微細構造層120は波長変換部材513に接していない。
【0088】
図6の半導体発光装置509において、第二の光、及び第三の光の一部は、散乱され、半導体発光素子100に戻る。そして、半導体発光素子100に設けられている微細構造層120により、散乱を受け、半導体発光装置509の系外へ導出される。このような作用により、半導体発光装置509の発光効率を向上させることができる。
【0089】
図6に示す半導体発光装置509では、半導体発光素子100の発光面の一部を、充填材541内に蛍光材531、532が分散された波長変換部材513にて、
図4に示す半導体発光装置508と同じ様に覆い、さらにパッケージ520内を
図4の封止材542で充填した構成とすることもできる。この場合も、半導体発光素子100の表面に設けられた微細構造層120と波長変換部材513との間には、蛍光材531、532を含まない中間材料121が介在しており、微細構造層120と波長変換部材513とは直接接しない構造となる。
【0090】
図7は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。
図7の半導体発光装置503は、パッケージ520に設置された半導体発光素子100が、波長変換部材514で覆われた構成となっている。波長変換部材514は、第一の光である半導体発光素子100からの発光光の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541と、それに含有、分散されている蛍光材531、蛍光材532、及び蛍光材533とで構成されている。
【0091】
蛍光材533は、半導体発光素子100から発光される発光光である第一の光の発光中心波長に対する蛍光特性を有しており、第一の光の少なくとも一部を吸収し、第一の光、及び、第二の光、さらに、第三の光の波長とは異なる第四の光である蛍光を発光する。半導体発光装置503からの発光光は、半導体発光素子100から発光される第一の光と、波長変換部材514からの蛍光である第二の光、第三の光、及び第四の光との混色として観察される。例えば、第一の光が360nm付近に発光中心波長を有するUV光、第二の光が545nm付近に主波長を有する緑色、第三の光が700nm付近に主波長を有する赤色、第四の光が、436nm付近に主波長を有する青色の場合、半導体発光装置503の発光光は、白色として認識される。
【0092】
さらに、前記した充填材541は、第二の光、第三の光、及び第四の各光に対しても、実質的に透明である。
【0093】
第一の光、第二の光、第三の光、及び第四の光の波長は、特に制限されるものではなく、上記したように、半導体発光装置503からの発光色が目的に応じた色を呈するように任意に選択される。ただし、第一の光を吸収し、蛍光である第二の光、第三の光、第四の光が得られることから、第二の光、第三の光、第四の光の波長は、必ず、第一の光よりも長くなる。
【0094】
図7に示す半導体発光装置503において、第二の光、第三の光、及び第四の光の一部は、散乱され、半導体発光素子100に戻る。そこで、半導体発光素子100に設けられている微細構造層により、散乱をうけ、半導体発光装置503の系外へ導出される。このような作用により、半導体発光装置503の発光効率を向上させることができる。
【0095】
図8は、本実施の形態に係る半導体発光装置の他の例を示す断面模式図である。
図8の半導体発光装置515は、パッケージ520に設置された半導体発光素子100が、波長変換部材514で覆われた構成となっている。波長変換部材514は、第一の光である半導体発光素子100からの発光光の発光中心波長に対して実質的に透明な第一の材料である充填材541と、それに含有、分散されている蛍光材(第二の材料)531、蛍光材(第三の材料)532、及び蛍光材(第四の材料)533とで構成されている。
【0096】
図8においては、半導体発光素子100に設けられた微細構造層120と波長変換部材514との間に、蛍光材531、532、533を含まない中間材料121が介在し、微細構造層120は波長変換部材514に接していない。
【0097】
さらに、前記した充填材541、及び中間材料121は、第二の光、第三の光、及び第四の各光に対しても、実質的に透明である。
【0098】
図8に示す半導体発光装置515においても、第二の光、第三の光、及び第四の光の一部は、散乱され、半導体発光素子100に戻る。そこで、半導体発光素子100に設けられている微細構造層120により、散乱をうけ、半導体発光装置515の系外へ導出される。このような作用により、半導体発光装置515の発光効率を向上させることができる。
【0099】
蛍光材531、蛍光材532、及び蛍光材533としては、第一の光の少なくとも一部を吸収し、所定の蛍光を発光すれば、特に限定されるものではなく、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、硫黄置換アルミン酸塩、非置換アルミン酸塩、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン化物、アルカリ土類金属アルミン酸塩、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、セレン化物、硫化物、窒化物、酸窒化物及びこれらの混合物が挙げられる。これらの材料に、例えば、Ce、Eu等のランタノイド系元素をドープし、賦活することができる。また、Ce、Euに加えて、Tb、Cu、Ag、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Ti、Mgから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0100】
各蛍光材531、532、533は、第一の光の充填材(第一の材料)541における光学波長よりも小さい平均粒径であることが好ましい。第一の光の第一の材料における光学波長よりも小さい平均粒径であるいわゆるナノ粒径の蛍光粒子であると、蛍光粒子による光散乱性を減少させ、半導体発光装置からの光取り出し効率を向上させることができる。さらに、ナノ粒径の蛍光粒子であるために、半導体発光素子から発光された一次発光(第一の光)を効率的に波長変換できるため、さらに光取り出し効率を向上させることができる。ここで、本発明における平均粒径とは、蛍光粒子の一次粒子の質量平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用し、JIS Z8827に記載の方法で求めることができる。
【0101】
図5、
図6においては、蛍光材531、532の少なくともいずれか一つが、第一の光の充填材(第一の材料)541における光学波長よりも小さい平均粒子径であればよいが、全ての蛍光材531、532が、第一の光の充填材(第一の材料)541における光学波長よりも小さい平均粒子径であることが好ましい。
【0102】
また
図7、
図8においては、蛍光材531、532、533の少なくともいずれか一つが、第一の光の充填材(第一の材料)541における光学波長よりも小さい平均粒子径であればよいが、全ての蛍光材531、532、533が、第一の光の充填材(第一の材料)541における光学波長よりも小さい平均粒子径であることが好ましい。
【0103】
各蛍光材531、532、533は粒子状であることが好ましい。ただし球状に限定されるものでなく、多角形状、楕円体等であってもよい。
【0104】
次に、本実施の形態の半導体発光装置の一部を構成する半導体発光素子100について、詳細に説明する。
【0105】
図9は、本実施の形態に係る半導体発光装置における半導体発光素子の断面模式図である。
図9に示すように、半導体発光素子100においては、半導体発光素子用基材101の一主面に設けられた二次元フォトニック結晶102上にn型半導体層103、発光層104及びp型半導体層105が順次積層されている。なお、半導体発光素子用基材101上に順次積層されたn型半導体層103、発光層104及びp型半導体層105を、積層半導体層110と称する。ここで「主面」とは、半導体発光素子用基材101や層を構成する広い面を指し、例えば、積層半導体層110を積層する際の積層面(形成面)あるいは積層面に対する逆面である。「主面」には、半導体発光素子用基材と層との間や層間の界面、半導体発光素子用基材101や層の露出表面、露出裏面が含まれる。
【0106】
フォトニック結晶とは、屈折率(誘電率)が周期的に変化するナノ構造体であり、二次元フォトニック結晶とは、二次元の周期構造体を指す。
【0107】
図9に示すように、p型半導体層105上には透明導電膜106が形成されている。また、n型半導体層103表面にカソード電極107が、透明導電膜106表面にアノード電極108がそれぞれ形成されている。なお、
図9においては、半導体発光素子用基材101の一主面に設けられた二次元フォトニック結晶102上に積層半導体層110を形成したが、半導体発光素子用基材101の二次元フォトニック結晶102が設けられた面と相対する他の一主面上に積層半導体層110を形成してもよい。
【0108】
図10は、本実施の形態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面模式図である。
図10に示すように、半導体発光素子300においては、半導体発光素子用基材301上にp型半導体層302、発光層303、及び、n型半導体層304を順次積層している。そしてn型半導体層304の一主面(露出表面)に二次元フォトニック結晶305が設けられている。
【0109】
また
図10に示すように、半導体発光素子用基材301のp型半導体層302と接する主面とは反対側の主面にアノード電極306が、n型半導体層304の表面にカソード電極307がそれぞれ形成されている。
【0110】
図10においては、図示しない基材上に、n型半導体層304、発光層303、p型半導体層302を順次積層後、半導体発光素子用基材301に貼着し、前記基材を剥離する半導体発光素子の製造方法が採用される。前記基材を剥離後、アノード電極306、カソード電極307を各々形成し、本実施の形態の半導体発光装置における半導体発光素子が得られる。基材上に、n型半導体層を設けた後、n型半導体層との界面で剥離するために、二次元フォトニック結晶305が転写、形成されている。
【0111】
図11は、本実施の形態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面模式図である。
図11に示すように、半導体発光素子200においては、
図9で示した透明導電膜106の主面上(露出表面)に二次元フォトニック結晶201が形成されている。後述するように、本実施の形態の二次元フォトニック結晶においては、少なくとも2つ以上の周期を有する必要がある。
図11に示すように、半導体発光素子200において、構成要素として、半導体発光装置の異なる主面に夫々、二次元フォトニック結晶102、201が設けられ、2つ以上の二次元フォトニック結晶102、201を備える場合、各々の二次元フォトニック結晶102、201に2つ以上の周期を有する必要はなく、周期の異なる2つ以上の二次元フォトニック結晶102、201を、半導体発光装置の構成要素としても良い。半導体発光素子から発光された光、及び、波長変換部材から発光された光は、半導体発光装置内での透過、反射、回折、及び散乱により、二次元フォトニック結晶を構成している界面の回折、散乱効果を受けることとなる。この効果は、同一界面である必要はなく、異なる界面、あるいは、同一界面、いずれでも同様の効果を奏する。そのため、2つ以上の周期を異なる界面に設けること、あるいは、同一界面に設けることの、いずれによっても本発明の効果を発現することができる。
【0112】
図9から
図11に示した半導体発光素子100、200、300は、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に、本実施の形態を適用した例であるが、積層半導体層の積層構造はこれに限定されるものではない。また、半導体発光素子用基材とn型半導体層との間に、図示しないバッファ層や、非ドープ半導体層を設けてもよい。また、半導体発光素子用基材と半導体層との界面に図示しない反射層を設けてもよい。
【0113】
次に、
図12を参照して、第1の実施の形態に係る半導体発光素子用基材の構成について詳細に説明する。
図12は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子用基材1の一例を示す斜視模式図である。
図12に示すように、半導体発光素子用基材1は、概して平板形状を有しており、基材11と、この基材11の一主面上に設けられた微細構造層12(二次元フォトニック結晶)と、を備えている。微細構造層12は、基材11の主面から上方に突出する複数の凸部13(凸部列13−1〜13−N)を含む。凸部13は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
【0114】
微細構造層12は、基材11の主面上に別途形成してもよいし、基材11を直接加工して形成してもよい。
【0115】
なお、
図12においては、微細構造層12の微細構造が複数の凸部13で構成される例について示しているが、これに限られず、微細構造層12の微細構造は複数の凹部で構成されていてもよい。
【0116】
図13は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材の他の例を示す斜視模式図である。
図13に示すように、半導体発光素子用基材1aは、概して平板形状を有しており、基材11aと、この基材11aの一主面上に設けられた微細構造層12a(二次元フォトニック結晶)と、を備えている。微細構造層12aは、微細構造層12aの表面Sから基材11aの裏面に向けて陥没した複数の凹部14(凹部列14−1〜14−N)を含む。凹部14は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
【0117】
微細構造層12aは、基材11aの主面上に別途形成してもよいし、基材11aを直接加工して形成してもよい。
【0118】
以下、半導体発光素子用基材1、1aにおける微細構造層12、12aの微細構造を構成する凸部13又は凹部14を「ドット」と称する。
【0119】
本実施の形態においては、上記ドットの径やピッチはナノオーダーである。この構成によれば、ナノオーダーの凹凸構造が半導体発光素子用基材1、1aの表面に設けられることにより、半導体発光素子用基材1、1aの表面に半導体層を形成する際に、半導体層のCVD成長モードが乱され、相成長に伴う転位欠陥が衝突して消滅し、転位欠陥の低減効果を生じさせることができる。そして半導体結晶内の転位欠陥が低減することにより、半導体発光素子の内部量子効率IQEを高めることが可能となる。
【0120】
本実施の形態の半導体発光素子においては、前記したドット間のピッチ、ドット径、ドット高さのいずれかにより制御された二次元フォトニック結晶が形成されている。本実施の形態において、屈折率が周期的に変化するフォトニック結晶により、結晶内部の伝播光に対する反射、透過、回折特性を制御することができる。
【0121】
本実施の形態の半導体発光素子用基材の一主面に形成されたドットの径やピッチはナノオーダーであり、伝播光の波長と概ね同程度である。そのため、本実施の形態においてフォトニック結晶の特性を決定するのは、構造に起因した屈折率を平均化した有効屈折率分布の周期的な変化である(有効媒質近似)。有効屈折率分布が、半導体発光素子用基材の主面内で繰り返されているため、二次元フォトニック結晶が形成される。
【0122】
さらに、本実施の形態の半導体発光素子用基材においては、前記した二次元フォトニック結晶の周期が、少なくとも、各々1μm以上の2つ以上の異なる周期を有する。あるいは、第一の光の光学波長の6倍以上であり、且つ、第二の光の光学波長の6倍以上の、少なくとも2つ以上の周期を有している。二次元フォトニック結晶が、1μm以上の2つ以上の異なる周期、あるいは、第一の光、及び第二の光の光学波長の6倍以上の周期を有するために、光回折性よりも光散乱性が強まることになる。そのため、本実施の形態の半導体発光素子においては、半導体層中からの発光、及び、波長変換部材からの発光に対し、光散乱性を強く発現させることができ、この光散乱性によって導波モードを解消し、光取り出し効率LEEを高めることが可能となる。
【0123】
さらに、同時に、強い光散乱性により、その発光特性における角度依存性は弱まり、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
【0124】
本実施の形態では、二次元フォトニック結晶の周期が、各々1μm以上であるとともに、第一の光の光学波長の6倍以上であり、且つ、第二の光の光学波長の6倍以上の、少なくとも2つ以上の周期を有していることがより好ましい。これにより、より効果的に、光回折性よりも光散乱性を強めることができ、光取り出し効率LEEをより高めることが可能となる。
【0125】
なお、
図12及び
図13は、本実施の形態の二次元フォトニック結晶を有する微細構造層を、半導体発光素子用基材1、1aに適用した一例であるが、半導体発光素子を構成するいずれかの界面に適用する場合も同様であり、以下も同様である。すなわち二次元フォトニック結晶は、半導体発光素子用基材の一主面に設けられることに限定されず、半導体発光素子内の一か所以上に設けられ、半導体発光素子の最表面にも設けられる。
【0126】
ドット間のピッチ、ドット径、ドット高さで制御された二次元フォトニック結晶について、図面によりさらに、詳細に説明する。
【0127】
図14は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1の平面模式図であり、半導体発光素子用基材1の表面(一主面)に形成された二次元フォトニック結晶を示している。
【0128】
図14に示すように、ドット(凸部13又は凹部14)は、半導体発光素子用基材1の主面内の第1方向D1において、複数のドットが不定間隔のピッチPyで配列された複数のドット列(凸部列13−1〜13−N又は凹部列14−1〜14−N;
図12、
図13参照)を構成する。また、各ドット列は、半導体発光素子用基材1の主面内で第1方向D1に直交する第2方向D2において、不定間隔のピッチPxで配置されている。
【0129】
さらに、第1方向D1において、ドット間の不定間隔のピッチPyが周期的に増減する。また、第1方向D1に直交する第2方向D2における不定間隔のピッチPxが周期的に増減する。第1方向D1及び第2方向D2の両方において不定間隔のピッチPy、Pxが周期的に増減してもよいし、第1方向D1及び第2方向D2のどちらか一方にて、不定間隔のピッチPy、Pxが周期的に増減する構成としてもよい。このように各ドットの間隔を増減させることで、ドット間のピッチで制御された二次元フォトニック結晶を形成することができる。なんとなれば、個々のドットの大きさ、ピッチは、発光波長と同程度以下であるため、光学的には、個々のドットの存在は、有効媒質近似により有効屈折率で代替される。
図14においては、第1方向D1において、ドット間の不定間隔のピッチPyが周期的に増減しているため、前記有効媒質近似により、光としては、不定間隔のピッチPyの周期的増減の周期を感じることになり、あたかも、より大きな凹凸構造が存在することと等価な挙動を示す。
【0130】
さらに
図15を用いて、ドット間の不定間隔のピッチPxが周期的に増減した第2方向D2におけるドット列の配置例について詳細に説明する。
図15は、第2方向D2におけるドット列の配置例を示す模式図である。
図15に示すように、第2方向D2におけるドット列は、8列ずつ特定の間隔(ピッチPx)で配置されており、かつ、8列のドット列が繰り返し配置されている。この複数(z)のドット列で構成された単位を、長周期単位Lxz(ただし、zは正の整数であり、xはx方向であることを指す)と称する。
【0131】
本実施の形態においては、この長周期単位Lxzが、1μm以上、あるいは、半導体発光素子から発せられる光学波長の6倍以上である必要がある。なお、互いに異なるピッチPyで不定間隔に配置された第1方向D1におけるドットについても、長周期単位Lyzを使用し、以下の説明と同様に配置できる。
【0132】
ピッチPxは、隣接するドット列間の距離である。ここで、長周期単位Lxzにおける少なくとも隣接する4個以上、m個以下のドット列間のピッチPxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)には、次の式(1)の関係が成り立つ。
Px1<Px2<Px3<…<Pxa>…>Pxn (1)
【0133】
なお、各ドットの直径は、ピッチPxnより小さい。ピッチPx1からPxnまでの長さは、長周期単位Lxzを構成する。
【0134】
図15は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。この場合、n=7、a=3となるため、長周期単位L1において、ドット列間のピッチPxnには、次の式(2)の関係が成り立っている。
Px1<Px2<Px3>Px4>Px5>Px6>Px7 (2)
【0135】
また、長周期単位LxzにおけるピッチPxは、ピッチPxの最大値(Px(max))と、最小値(Px(min))との差で表される最大位相ずれδが、(Px(min))×0.01<δ<(Px(min))×0.66、好ましくは、(Px(min))×0.02<δ<(Px(min))×0.5、より好ましくは、(Px(min))×0.1<δ<(Px(min))×0.4、を満たすよう設定されている。
【0136】
例えば、
図15に示す長周期単位L1においては、各ドット列間のピッチPxnは次のように表される。
Px1=Px(min)
Px2=Px(min)+δa
Px3=Px(min)+δb=Px(max)
Px4=Px(min)+δc
Px5=Px(min)+δd
Px6=Px(min)+δe
Px7=Px(min)+δf
【0137】
ただし、δaからδfの値は、Px(min)×0.01<(δa〜δf)<Px(min)×0.5を満たす。隣接する長周期単位L2についても同様である。
【0138】
また、長周期単位Lxz、あるいは長周期単位Lyzにおけるzの最大値は、4≦z≦1000、好ましくは、4≦z≦100、より好ましくは、4≦z≦20、を満たすよう設定されている。
【0139】
なお、第1方向D1及び第2方向D2における長周期単位Lxz及びLyzは互いに同一である必要はない。
【0140】
本実施の形態の半導体発光素子用基材1における第1方向D1においては、上記した長周期単位Lyzを有するドット群が少なくとも1個以上配列され、第2方向D2においては、上記した長周期単位Lxzを有するドット列群が少なくとも1個以上配列されることが好ましい。
【0141】
ピッチPyの不定期間隔に配置された配置は、上記にて説明した互いに異なるピッチPxで不定間隔に配置された第2方向D2におけるドット列の配置例において、ドット列をドットと読み替えることで定義される。
【0142】
本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1においては、微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドットは、第1方向D1、第2方向D2ともに上記にて説明したような不定間隔のピッチPx、Pyで配置することもできるし(
図14参照)、第1方向D1、第2方向D2のいずれか一方のみを上記にて説明したような不定間隔のピッチで配置し、他方を一定間隔のピッチで配置することもできる(
図16参照)。
図16は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材の別の例を示す平面模式図である。なお、
図16においては、第1方向D1におけるドットが不定間隔のピッチで配置され、第2方向D2におけるドット列が一定間隔のピッチに配置されている。
【0143】
図14、
図16において図示した二次元フォトニック結晶は、非周期のドット(ドット列)から形成された二次元フォトニック結晶であるが、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1においては、二次元フォトニック結晶を構成するドットのパターンは、周期的であってもよい。個々のドットの周期性は、前記したように有効媒質近似によりキャンセルされるので、長周期単位Lxzが、本実施の形態の半導体発光素子用基材の効果を発現するために必要であり、個々のドットの周期/非周期は重要ではない。
【0144】
周期的ドットパターンの例として、
図17、
図18、
図19、
図20を例として挙げる。これらの配置例においては、隣接する各ドット列間(
図19、
図20)、一つ置きのドット列同士(
図17、
図18)がそろった配置となっており、ドットパターンは周期的に配列されている。なお、
図17〜
図20は、それぞれ、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材の別の例を示す平面模式図である。
【0145】
さらに、本実施の形態の半導体発光素子においては、ドットパターンによる二次元フォトニック結晶は、少なくとも半導体発光素子を構成するいずれかの主面の一軸方向に第一の光、及び第一の光の周期と異なる第二の光の光学波長の6倍以上の周期を有することが好ましく、具体的には、
図16、
図18、
図20のような二次元フォトニック結晶である。
【0146】
又は、二次元フォトニック結晶の周期は、少なくとも独立する二軸方向に周期的であることが好ましく、具体的には、
図14、
図17、
図19のような二次元フォトニック結晶である。
【0147】
図14、
図17、
図19では、独立する二軸方向が互いに直交している例であるが、必ずしも直交する必要はなく、任意の角度で配置させることができる。さらに、独立する3軸方向のパターンとしてもよく、この場合は、ドットの粗密により形成される二次元フォトニック結晶は、三角格子配列とすることができる。
【0148】
また、第1方向D1におけるドット間距離、あるいは第2方向D2におけるドット列間距離のいずれか一方が一定間隔で配置される場合には、一定間隔のピッチに対する不定間隔のピッチの比が、特定の範囲内にあることが好ましい。
【0149】
ここで、第1方向D1におけるドットが一定間隔のピッチPycで配置され、第2方向D2におけるドット列が不定間隔のピッチPxで配置される例について説明する。この場合には、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、85%〜100%の範囲内にあることが好ましい。一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が85%以上であれば、隣接するドット間の重なりが小さくなるため好ましい。また、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が100%以下であれば、ドットを構成する凸部13の充填率が向上するため好ましい。なお、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、90%〜95%の範囲内にあることが、より好ましい。
【0150】
また、1つの長周期単位LxzあるいはLyzは、発光層内で発生した光の屈折率の長周期の変動が、ナノオーダーから遠ざかり、光散乱が生じやすくなるため好ましい。一方、十分な光取り出し効率LEEを得るためには、長周期単位Lxz、あるいはLyzは、1001個以下のドットから構成される(属するピッチPx又はPyが1000以下である)ことが好ましい。
【0151】
本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1(1a)には、以上のような微細構造層12(12a)の微細構造の関係を満足する二次元フォトニック結晶が形成されている。これにより、光散乱効果が十分となり、かつ、ドット(凸部13又は凹部14)の間隔が小さくなるため転位欠陥の低減効果が生じることとなる。その結果、ナノオーダーの凹凸で半導体層中の転位欠陥を減らすと同時に、ナノオーダーの周期性が乱れることとなり、半導体層中からの発光に対し、光散乱性を強く発現することができる。
【0152】
さらに、二次元フォトニック結晶であるにも関わらず、その光回折性が抑制され、より工業的用途に好適なランバーシアン発光に近づくことになる。
【0153】
続いて、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1(1a)の微細構造層12(12a)の二次元フォトニック結晶を構成するドット形状(凹凸構造)について説明する。凸部13及び凹部14の形状は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されず、用途に応じて適時変更可能である。凸部13及び凹部14の形状としては、例えば、ピラー形状、ホール形状、円錐形状、角錐形状及び楕円錘形状等を用いることができる。
【0154】
上記したのは、本実施の形態における二次元フォトニック結晶がドットの間隔で構成されている場合であるが、ドット径の大小で構成されてもよい。具体的には、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1(1a)の微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)においては、ドットの各々の直径が、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減することが好ましい。
【0155】
以下、ピッチに対応して増減するドットの直径の例について、詳細に説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子用基材においては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上でm個以下のピッチを構成するドット径Dyn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(3)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット径Dy1〜Dynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、かつピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上でm個以下のピッチを構成するドット径Dxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(4)の関係を満たすとともに、第2方向D2において、ドット径Dx1〜Dxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。本実施の形態においては、この長周期単位Lxz、あるいはLyzが、1μm以上であり、あるいは、半導体発光素子から発せられる第一の光、及び第二の光の光学波長の6倍以上である必要がある。なお、以下の説明は、Lxzについて述べるが、Lyzについても同様である。
Dy1<Dy2<Dy3<…<Dya>…>Dyn (3)
Dx1<Dx2<Dx3<…<Dxa>…>Dxn (4)
【0156】
図21は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。
図21は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材の第2方向D2におけるドットの配置例を示す模式図である。この場合、n=7、a=3となるため、長周期単位L1において、ドット列を構成する各ドット径Dxnには、上記式(4)の関係が成り立っている。
【0157】
図21においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット径が小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット径が大きくなっている。増減するドット径の増減範囲は、大きすぎると隣接するドットと接するようになり好ましくなく、小さすぎると、光取り出し効率LEEが低下するため好ましくない。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均径に対し、±20%以内であると、光取り出し効率LEEが増加し好ましい。
【0158】
上記構成により、ドットの体積が長周期単位Lxzで増減することになり、二次元フォトニック結晶を構成することになる。なんとなれば、有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができ、誘電率は、屈折率の2乗となるからである。つまり、媒質の体積が長周期単位Lxzで変化することで、有効屈折率が長周期単位Lxzで変化することになる。
【0159】
本実施の形態では、1μm以上、あるいは、第一の光及び第二の光の光学波長の6倍以上の周期をもつ二次元フォトニック結晶が形成されるため、発光光に対する光散乱性が大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。
【0160】
次に、本実施の形態の半導体発光素子において、二次元フォトニック結晶がドット高さにより制御される例について説明する。
【0161】
本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1(1a)においては、前記した二次元パターンに同期して微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)の、各ドットの各々の高さが、ピッチPy及び/又はピッチPxに対して増減することが好ましい。
【0162】
本実施の形態に係る半導体発光素子用基材1(1a)においては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上でm個以下のピッチを構成するドット高さHyn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(5)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット高さHy1〜Hynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上でm個以下のピッチを構成するドット高さHxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(6)の関係を満たすとともに、かつ、第2方向において、ドット高さHx1〜Hxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。本実施の形態においては、この長周期単位Lxz、あるいはLyzが、1μm以上であり、あるいは、半導体発光素子から発せられる第一の光、及び第二の光の光学波長の6倍以上である必要がある。なお、以下の説明は、Lxzについて述べるが、Lyzについても同様である。
Hy1<Hy2<Hy3<…<Hya>…>Hyn (5)
Hx1<Hx2<Hx3<…<Hxa>…>Hxn (6)
【0163】
図22は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。
図22は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材の第2方向D2におけるドットの配置例を示す模式図である。この場合、n=7、a=3となるため、長周期単位L1において、ドット列を構成する各ドットの高さHxnには、上記式(6)の関係が成り立っている。
【0164】
図22においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット高さが小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット高さが大きくなっている。増減するドット高さの増減範囲は、大きすぎるとその部分における光取り出し効率LEEのムラが大きくなり好ましくなく、小さすぎると、ドット高さの増減による光取り出し効率LEEの向上効果が低下するため好ましくない。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均高さに対し、±20%以内であると、光取り出し効率LEEがムラなく増加し好ましい。
【0165】
上記構成により、ドットの体積が長周期単位Lxzで増減することになり、二次元フォトニック結晶を構成することになる。なんとなれば、有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができ、誘電率は、屈折率の2乗となるからである。つまり、媒質の体積が長周期単位Lxzで変化することで、有効屈折率が長周期単位Lxzで変化することになる。
【0166】
本実施の形態では、1μm以上、あるいは、第一の光及び第二の光の光学波長の6倍以上の周期をもつ二次元フォトニック結晶が形成されるため、発光光に対する光散乱性が大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。
【0167】
以上は、同一主面内に1つの周期を有する二次元フォトニック結晶の場合であり、
図11に例示したように、半導体発光素子を構成するいずれかの主面に、異なる周期の二次元フォトニック結晶102、201を少なくとも2つ以上設けることで、本実施の形態の半導体発光装置とすることも可能である。
【0168】
次に、同一主面内に2つ以上の周期を有する二次元フォトニック結晶の場合について述べる。
図23は、
図17と同様に、ドット間隔が長周期を有するドットで構成される二次元フォトニック結晶の平面模式図である。
図23に示す二次元フォトニック結晶においては、各々直行するD1方向のピッチPyとD2方向のピッチPxで構成される長周期が異なっている。この構成においては、例えば、D1方向の周期は、1μm以上、あるいは、第一の光の光学波長の6倍以上であり、D2方向の周期は、1μm以上、あるいは第二の光の光学波長の6倍以上と設定することができ、同一主面内で異なる2つ以上の周期を有する二次元フォトニック結晶となる。
【0169】
この構成によれば、例えば、D1方向は、第一の光の回折、散乱に好適な長周期とすることができ、D2方向は、第二の光の回折、散乱に好適な長周期とすることができる。
【0170】
図24は、同一主面内に2つ以上の周期を有する二次元フォトニック結晶の別の平面模式図である。
図24に示す二次元フォトニック結晶においては、D1方向のピッチPyの長周期に2種類の長周期が重なっている。そのため、周期が1μm以上、あるいは、第一の光及び第二の光の光学波長の6倍以上の周期をもつ二次元フォトニック結晶を形成することが可能となり、第一の光及び第二の光に対する光散乱性を各々増強させることができ、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。
図24においては、D1方向のピッチPyとD2方向のピッチPxは同一であるが、本実施の形態の半導体発光素子においては、必ずしも同一である必要はなく、適宜、変えることができる。
【0171】
例えば、
図23で例示した二次元フォトニック結晶のように、D1方向とD2方向の長周期を変えることができ、1)D1方向のみに2つ以上の長周期を形成し、D2方向に1つの長周期とする、あるいは、2)D1方向及びD2方向に2つ以上の長周期を形成し、各々の長周期のうち、1つの長周期のみ同一とする等が挙げられる。
【0172】
さらに、
図11に例示したように、半導体発光素子を構成するいずれかの主面に、異なる周期の二次元フォトニック結晶102、201を少なくとも2つ以上設ける場合にも、各々の長周期を2つ以上形成する。あるいは、D1方向、D2方向で長周期を変えて形成する、D1方向に2つ以上の長周期を形成する等、適宜、選択することで、本実施の形態の半導体発光装置とすることができる。
【0173】
また、上記した本実施の形態に係る半導体発光装置において、ピッチPx及びピッチPyは、それぞれ100nm以上1000nm以下であることが好ましい。ピッチPx、Pyがこの範囲内にあると、ナノオーダーの凹凸が、本実施の形態の半導体発光装置を構成する半導体発光素子用基材の表面に設けられることにより、半導体発光素子用基材の表面に半導体層を設けた場合の半導体層中の転位欠陥数を減らすことができる。ピッチPx、Pyは、100nm以上であることにより、半導体発光素子の光取り出し効率LEEが向上し、発光効率向上に寄与する転位欠陥の減少の効果が現れる。また、ピッチPx、Pyが1000nm以下であることにより、転位欠陥数の低減効果が維持される。
【0174】
続いて、本実施の形態に係る半導体発光装置により、光取り出し効率LEEが向上する原理について説明する。
【0175】
本実施の形態では、半導体発光素子と波長変換部材とを有して構成される半導体発光装置において、半導体発光素子は微細構造層を構成要素として備え、微細構造層は二次元フォトニック結晶を構成している。そして、二次元フォトニック結晶は、1μm以上、あるいは、第一の光の光学波長の6倍以上及び、第二の光の光学波長の6倍以上の少なくとも2つ以上の周期を有している。ここで第一の光は、半導体発光素子から発光され、第二の光は、波長変換部材にて第一の光の少なくとも一部が吸収されて発せられる、第一の光とは異なる波長の光である。なお、
図5〜
図8の実施の形態のように、第三の光、第四の光・・・が存在する場合には、二次元フォトニック結晶は、1μm以上の各光の散乱性に最適な周期、あるいは、各光の光学波長の6倍以上の2つ以上の周期を有している。
【0176】
前記のとおり、半導体発光素子を形成するいずれかの界面に、ナノオーダーの凹凸(ドット)の微細構造層により構成される二次元フォトニック結晶を設けることにより、光散乱により導波モードを解消することによる光取り出し効率LEEの改善の効果が得られる。
【0177】
複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べることにより、長周期単位Lxzごとに屈折率が変化し、長周期単位Lxzを構成する複数のドットが1単位となって繰り返された場合と同じ効果を生じることとなる。換言すると、波長と同程度の複数のドットの場合、平均的な屈折率分布で光の挙動を説明できるため(有効媒質近似)、空間の平均屈折率分布を計算すると、あたかも、長周期単位Lxzの複数のドットが1単位として繰り返されたように光に作用する。このように長周期単位Lxzで並べられた複数のドットは、光散乱効果を奏する。
【0178】
このように二次元フォトニック結晶の周期を調整・制御することで、発光光に対する光散乱性を大きくでき、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。この結果、半導体発光装置の発光効率を向上させることができる。さらには、発光分布の角度依存性を少なくし、工業用途として適用容易な半導体発光装置を提供することができる。
【0179】
本実施の形態において、1μm以上、あるいは、各光の光学波長の6倍以上の二次元フォトニック結晶を備えた半導体発光装置とすることで、後述する実験結果に示すように、1μm以上、及び光学波長の6倍以上の周期をもたない従来の構造に比べて、半導体発光装置としての高い発光効率を得ることができるとわかった。さらに、発光特性において、角度依存性がほとんどないことがわかり、工業実用上、好適な半導体発光装置にできることがわかった。
【0180】
また二次元フォトニック結晶の周期は、200倍以下であることが好適である。二次元フォトニック結晶の周期が、200倍を超える周期であると、半導体発光装置を構成する半導体発光素子の外形に比べ、十分に小さな二次元フォトニック結晶でなくなるため、半導体発光素子間の性能差が大きくなり好ましくない。なんとなれば、半導体発光素子上に形成される二次元フォトニック結晶の密度が、半導体発光素子間で変動しやすくなるためである。
【0181】
なお本実施の形態に係る半導体発光装置においては、ドットの各々の直径を、ピッチに応じて増減させることができる。空間の平均屈折率分布は、構成単位の体積分率に依存し変化するため、長周期単位Lxzの複数のドットにおいて、各ドットの体積が変化するとそれだけ、平均屈折率分布の変化が大きくなり、同じ長周期単位Lxzでも、より光散乱効果が高まることとなる。この効果は、ドット間のピッチが狭い場合、ドットの直径を大きく、ドット間のピッチが広い場合、ドットの直径を小さくすることでより顕著となる。
【0182】
さらに、本実施の形態にかかる半導体発光装置においては、ドットの高さもドット間のピッチに応じて増減させることができる。この場合も上記した理由と同様、ドット間のピッチが狭い場合、ドット高さを大きくし、ドット間のピッチが広い場合、ドット高さを小さくすると、長周期単位Lxz内の平均屈折率分布が大きくなり、光散乱効果を増加させることになる。
【0183】
さらに、複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べた配列において、上記したドットの各々の直径とドットの高さの両方を、ピッチに応じて増減させると、有効媒質近似により記述される屈折率分布の差がさらに大きくなるため好ましい。この場合、ドット間のピッチが狭い場合、ドットの直径とドットの高さを大きくし、ドット間のピッチが広い場合、ドットの直径とドットの高さを小さくすると、空間の平均屈折率分布において、構成単位の体積分率の差が大きくなり、より光散乱効果が高まり好ましい。
【0184】
本実施の形態に係る半導体発光装置において、適用される半導体発光素子用基材の材質は、半導体発光素子用基材として使用できるものであれば特に制限はない。例えば、サファイア、SiC、SiN、GaN、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン、GaP、GaAs等の半導体発光素子用基材を用いることができる。なかでも半導体層との格子マッチングの観点から、サファイア、GaN、GaP、GaAs、SiC半導体発光素子用基材等を適用することが好ましい。さらに、単体で用いてもよく、これらを用いた半導体発光素子用基材本体上に別の半導体発光素子用基材を設けたヘテロ構造の半導体発光素子用基材としてもよい。
【0185】
本実施の形態に係る半導体発光素子においては、n型半導体層の材質は、半導体発光素子に適したn型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、及び、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。
【0186】
また、本実施の形態に係る半導体発光素子においては、p型半導体層の材質は、半導体発光素子に適したp型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、及び、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。
【0187】
本実施の形態に係る半導体発光素子においては、透明導電膜の材質は、半導体発光素子に適した透明導電膜として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、Ni/Au電極等の金属薄膜や、ITO、ZnO、In
2O
3、SnO
2、IZO、IGZO等の導電性酸化物膜等を適用できる。特に、透明性、導電性の観点からITOが好ましい。
【0188】
次に、本実施の形態の半導体発光装置に係る半導体発光素子について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子においては、上述の本実施の形態に係る半導体発光素子用基材を構成に含む。本実施の形態に係る半導体発光素子用基材を構成に入れることで、内部量子効率IQEの向上、電子注入効率EIEの向上、光取り出し効率LEEの向上を図ることができる。
【0189】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、半導体発光素子用基材主面上に、少なくとも2層以上の半導体層と発光層とを積層して構成される積層半導体層を有する。そして、積層半導体層が最表面に位置する半導体層の主面から面外方向(例えば主面に対して略直交する方向)に延在する複数の凸部又は凹部から構成されるドットを含む二次元フォトニック結晶を備え、この二次元フォトニック結晶が、上述の実施の形態に係る半導体発光素子用基材の二次元フォトニック結晶構造に相当する。積層半導体層については、
図9、
図10、
図11を用いて説明した通りである。
【0190】
本実施の形態に係る半導体発光素子において、半導体層としては、半導体発光素子に適した半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体等に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。また、n型半導体層、p型半導体層には、適宜、図示しないn型クラッド層、p型クラッド層を設けることができる。
【0191】
発光層としては、半導体発光素子として発光特性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、発光層として、AsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO等の半導体層を適用できる。また、発光層には、適宜、特性に応じて種々の元素をドープしてもよい。
【0192】
これらの積層半導体層(n型半導体層、発光層、及びp型半導体層)は、半導体発光素子用基材の表面に公知の技術により成膜できる。例えば、成膜方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等が適用できる。
【0193】
次に、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、前記した、本実施の形態の半導体発光素子用基材上に、半導体層を設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする。
【0194】
前記したように、主面に二次元フォトニック結晶を有する半導体発光素子用基材の、二次元フォトニック結晶を有する主面側に、n型半導体層、発光層、p型半導体層を形成する。本実施の形態の半導体発光素子の製造方法においては、半導体発光素子用基材上に、半導体層を設ける工程が含まれていればよく、得られる半導体発光素子中に、半導体発光素子用基材が含まれている必要はない。具体的には、半導体発光素子用基材上に半導体層を設けた後、半導体発光素子用基材を除去する方法が挙げられる。
【0195】
図25で上記工程を説明する。
図25は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の各工程を示す断面模式図である。
【0196】
図25Aに示す積層半導体層123は、半導体発光素子用基材1上に、n型半導体層30、発光層40、p型半導体層50が順次積層されている。さらに、p型半導体層50上に、さらにp電極層60及び支持体70が順次積層されている。
【0197】
支持体70としては、Si、Ge、GaAs、Fe、Ni、Co、Mo、Au、Cu、又は、Cu−W等からなる導電性基板を用いることができる。また、
図25Aでは、積層半導体層123は素子面に垂直な方向に導通を取る構成となっているが、平行電極型でもよい。この場合、支持体70は絶縁性基板でもよい。支持体70とp電極層60との接合には、低融点金属であるAu−Sn、Au−Si、Ag−Sn−Cu、Sn−Bi等の金属共晶や、又は低融点金属ではないが、Au層、Sn層、Cu層等を用いることもできる。なお、p電極層60上に直接めっき、スパッタ、蒸着等によって金属層を形成して支持体70としてもよい。さらに、支持体70のp電極層60と面していない面に、図示しない裏面電極を設けてもよい。
【0198】
積層半導体層123から、
図25Bに示すように、半導体発光素子用基材1を剥離(リフトオフ)することにより、n型半導体層30の剥離面に、二次元フォトニック結晶20が反転した二次元フォトニック結晶80を有する半導体発光素子600が得られる。この場合、反転した二次元フォトニック結晶80が、得られる半導体発光素子600に適した構造となるよう、反転元となる二次元フォトニック結晶20の構造が適宜設計される。
【0199】
半導体発光素子用基材1の剥離には、例えばレーザリフトオフ、ケミカルリフトオフ等が採用される。レーザリフトオフの場合、照射されるレーザは、半導体発光素子用基材1を透過し、n型半導体層30を透過しない波長が用いられる。また、ケミカルリフトオフの場合は、二次元フォトニック結晶20上に薄いエッチング層を積層し、ケミカルエッチングによって、半導体発光素子用基材1を剥離する方法が挙げられる。
【0200】
続いて、半導体発光素子600は、
図25Cに示すように、二次元フォトニック結晶80を含むn型半導体層30の表面上に、n電極層90を設ける。
【0201】
本実施の形態の半導体発光素子用基材上に半導体層を順次積層する工程、あるいは、上記のように得られた積層半導体層から、半導体発光素子用基材をリフトオフする工程の後、さらに、デバイスプロセスを行い、電極等を適宜形成し、半導体発光素子とする。
【0202】
続いて、本実施の形態に係る半導体発光装置において、微細構造層を半導体発光素子用基材に適用する場合の製造方法について説明する。ただし、以下に示す製造方法は一例であって、半導体発光素子用基材の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0203】
図26は、本実施の形態の半導体発光素子用基材1(1a)の製造方法の一例を示す概略説明図である。
【0204】
図26に示すように、露光装置400は、レジスト層が被覆されたロール状部材401を図示しないロール把持部により把持しており、回転制御部402と、加工ヘッド部403と、移動機構部404と、露光制御部405と、を備えている。回転制御部402は、ロール状部材401の中心を軸として、ロール状部材401を回転させる。加工ヘッド部403は、レーザ光を照射して、ロール状部材401のレジスト層を露光する。移動機構部404は、加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に沿って、制御速度で移動させる。露光制御部405は、回転制御部402によるロール状部材401の回転と同期した基準信号に基づいて、加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御する。
【0205】
露光装置400によるロール状部材401の加工は、ロール状部材401を回転させた状態で、加工ヘッド部403からパルスレーザを照射することにより行う。加工ヘッド部403は、パルスレーザを照射しながら、移動機構部404によって、ロール状部材401の長軸方向に沿って移動する。ロール状部材401の回転数及びパルスレーザの周波数から、回転方向におけるロール状部材401の外周面のレジスト層に任意のピッチでパターン406が記録される。これが、ロールツーロールナノインプリントモールドにおける第1方向D1のピッチPyとなる。
【0206】
さらに、ロール状部材401の長軸方向に沿って走査しているため、任意の位置からロール状部材401が1周すると、加工ヘッド部403が長軸方向にずれることになる。これがロールツーロールナノインプリントモールドにおける第2方向D2のピッチPxとなる。ロール状部材401の周長に比較して、パターン406のピッチPy、Pxは、ナノメートルオーダーと非常に小さいので、第1方向D1のピッチPyを維持しながら、長軸方向でみると第1方向D1のシフト量がずれた列状パターンを形成することができる。さらに、上述したように、パターン406のピッチPy、Pxは、ロール状部材401の周長に比較して非常に小さいので、第1方向D1と第2方向D2は実質的に直交する。
【0207】
ロール状部材401は、円筒状に形成された部材に回転軸が備えられているものであり、材質としては、金属、カーボンコア、ガラス、石英等が適用できる。ロール状部材401は、高回転が可能な加工精度が必要とされることから、材質は、金属、カーボンコア等が好ましい。さらに、レーザ露光される円筒表面部のみ、異なる材料で被覆することもできる。特に、熱反応型レジストを使用するときは、断熱効果を高めるために金属よりも熱伝導率が低い材料を適用することが好ましく、ガラス、石英、酸化物、窒化物等が挙げられる。円筒表面に被覆した層を、後述するレジスト層をマスクとしてエッチングするエッチング層として、使用することも可能である。
【0208】
ロール状部材401を被覆するレジストは、レーザ光により露光されるものであれば、特に限定されるものではなく、光硬化型レジスト、光増幅型レジスト、熱反応型レジスト等が適用できる。特に、熱反応型レジストは、レーザ光の波長よりも小さい波長でパターン形成できるので好ましい。
【0209】
熱反応型レジストは、有機レジスト又は無機レジストであることが好ましい。これらのレジストにより形成されたレジスト層は、単層構造であっても、複数のレジスト層を組み合わせた多層構造であってもよい。なお、どのようなレジストを選択するかは、工程や要求加工精度等によって適宜変更することができる。例えば、有機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を形成する際に、ロールコーター等で塗布できるため工程が簡便となる。ただし、スリーブ上に塗布するためレジストの粘性に制限があり、塗布厚精度や制御あるいは多層にコーティングすることは難しい。
【0210】
有機レジストとしては、(株)情報機構発刊 「最新レジスト材料ハンドブック」や(株)工業調査会 「フォトポリマーハンドブック」にあるように、ノボラック樹脂又はノボラック樹脂とジアゾナフトキンとの混合物、メタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0211】
一方、無機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を、抵抗加熱蒸着法や電子ビームスパッタ法、CVD法等の気相法等によって設けることが好適である。これらの方法は、基本的に真空プロセスになるため、スリーブ上に形成するには工数が掛かるが、膜厚が精度良く制御でき、また、多層に積層することが容易である。
【0212】
無機レジスト材料は、反応させる温度によって種々選択することができる。例えば、無機レジスト材料としては、Al、Si、P、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、Ag、Au及びこれらの合金が挙げられる。また、無機レジスト材料は、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Ba、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、La、Ce、Sm、Gd、Tb、Dyの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭化物、硫化物、硫酸化物、フッ化物、塩化物や、これらの混合物を適用してもよい。
【0213】
ロール状部材401を被覆するレジストとして熱反応型レジスト材料を使用した場合、下記のパターンを形成する露光前に、レジストをパターン形成時よりも低い温度で処理する予備加熱を施してもよい。予備加熱を加えることで、パターン形成時のパターン分解能を向上させることが可能となる。予備加熱によりパターン分解能が向上するメカニズムの詳細は不明だが、熱反応型レジスト材料の熱エネルギーによるレジスト層を形成する材料の変化が複数の反応に基づく場合、予備加熱により、パターン形成時の反応以外を事前に終了させることで、パターン形成反応が単純となり、パターン分解能が向上すると推測される。
【0214】
ロール状部材401を被覆するレジストを予備加熱する方法としては、特に制限されるものではなく、ロール状部材401の全体を加熱する方法や、ロール状部材401にレーザでパターニングするよりも低い出力でロール表面全体を走査し、レジストに熱エネルギーを照射する方法等が挙げられる。
【0215】
ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用すると、後述する回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の直径が、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストを使用した場合に、ピッチに対応してドットの直径が増減する明確なメカニズムは不明であるが、つぎのように推測される。
【0216】
熱反応型レジストの場合、照射部に照射されたレーザの熱エネルギーによりレジスト層を形成する材料に変化が生じ、エッチング特性が変わることでパターンが形成される。この時、照射された熱はレジスト層の変化にすべて使われるのではなく、一部は蓄熱され隣接する領域に伝熱される。そのため、隣接する領域での熱エネルギーは、照射エネルギーに加え、隣接する領域からの伝熱エネルギーが加わることになる。ナノオーダーのパターン形成では、この伝熱エネルギーの寄与は無視できず、伝熱の寄与は、パターンを形成するドット間距離に反比例するため、結果として、得られるパターン径は、隣接するドット間距離の影響を受ける。
【0217】
ここで、ドット間距離が位相変調により変わると、上記した伝熱エネルギーの寄与が、ドット毎に異なることになり、ドット間距離が広いと、伝熱エネルギーの寄与が小さくなり、ドット径が小さくなり、ドット間距離が狭いと、伝熱エネルギーの寄与が大きくなるため、ドット径が大きくなる。
【0218】
また、ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用し、後述するエッチング層を設け、パターンの加工深さを制御すると、前記したと同様、回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の高さが、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストとエッチング層を併用した場合に、ピッチPxに対応してドットの直径が増減するメカニズムは不明であるが、上記した、ドット間距離に応じてドット径が増減することから説明が可能である。
【0219】
すなわち、ナノオーダーのパターニングにおいて、ドット径に応じて、エッチング深さは増減し、ドット径が広くなるとエッチング深さは深くなり、ドット径が狭くなるとエッチング深さが浅くなる傾向がある。特に、エッチング手法がドライエッチングにおいて顕著である。これは、エッチャントの交換、あるいは、エッチング生成物の離脱が迅速に行われないためであると考えられる。
【0220】
前記したように、熱反応型レジストを使用すると、ドット間距離が広いとドット径が小さくなり、ドット間距離が狭いと、ドット径が大きくなる。ドット径に応じて、エッチング深さが増減する傾向があるため、結果として、ドット間距離が広いと、ドット深さは浅くなり、ドット間距離が狭いと、ドット深さが深くなる。
【0221】
以上ドット間距離と、ドット径、ドット深さの増減の影響は、平均ピッチが小さくなると顕著である。これは、上記した伝熱エネルギーの影響が大きくなるためと推定される。
【0222】
本実施の形態においては、ロール状部材401を被覆するレジスト層を利用してそのままロールツーロールナノインプリントモールドとして適用してもよく、また、レジスト層をマスクとして、ロール状部材401の表面をエッチングすることによりパターンを形成してもよい。
【0223】
ロール状部材401にエッチング層を設けることで、パターンの加工深さを自由に制御でき、かつ、熱反応レジスト層の厚みを加工に最適な膜厚に選択することができる。すなわち、エッチング層の厚みを制御することで、加工深さを自由に制御できる。また、加工深さはエッチング層で制御できることから、熱反応型レジスト層は露光や現像が容易な膜厚を選択すればよい。
【0224】
露光を行う加工ヘッド部403に用いるレーザは、波長150nm以上550nm以下が好ましい。また、波長の小型化及び入手の容易さから、半導体レーザを使用することが好ましい。半導体レーザの波長は、150nm以上550nm以下であることが好ましい。波長が150nmより短い場合には、レーザの出力が小さくなり、ロール状部材401を被覆するレジスト層を露光することが困難なためである。一方、波長が550nmより長い場合には、レーザのスポット径を500nm以下にすることができず、小さな露光部を形成することが困難なためである。
【0225】
一方、スポットサイズが小さな露光部を形成するためには、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、ガスレーザを使用することが好ましい。特に、XeF、XeCl、KrF、ArF、F
2のガスレーザは、波長が351nm、308nm、248nm、193nm、157nmと短く、非常に小さなスポットサイズに集光することができるため好ましい。
【0226】
また、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波を用いることができる。Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波の波長は、それぞれ532nm、355nm、266nmであり、小さなスポットサイズを得ることができる。
【0227】
ロール状部材401の表面に設けられたレジスト層に微細パターンを露光により形成する場合、ロール状部材401の回転位置精度が非常に高く、初めに焦点深度内に部材表面があるようにレーザの光学系を調整しておけば製造は容易である。しかしながら、ナノインプリントに適合するほどのロール寸法精度、回転精度を保持することは非常に困難である。そのため、露光に用いるレーザは対物レンズにより収束されロール状部材401表面が焦点深度の中に絶えず、存在するようにオートフォーカスがかけられていることが好ましい。
【0228】
回転制御部402は、ロール状部材401をロールの中心を軸に回転させる機能を有する装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、スピンドルモーター等が好適である。
【0229】
加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に移動させる移動機構部404としては、制御された速度で加工ヘッド部403を移動できれば特に制限されるものではなく、リニアサーボモーター等が好適に挙げられる。
【0230】
図26に示す露光装置400では、ロール状部材401の表面上に形成される露光パターンが回転制御部402の回転(例えば、スピンドルモーターの回転)と同期した基準信号に基づいて、位相変調させたパルス信号により露光制御部405で露光部の位置を制御している。基準信号としては、スピンドルモーターの回転に同期したエンコーダーからの出力パルスを用いることができる。
【0231】
回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号は、例えば、次のように制御することができる。
【0232】
図27は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材を形成する露光装置におけるスピンドルモーターのZ相信号を基準信号として基準パルス信号、変調パルス信号を設定した一例を説明する説明図である。
図27A〜
図27Cを用いて、スピンドルモーターのZ相信号と、基準パルス信号、変調パルス信号との関係を説明する。Z相信号を基準とし、そのm倍(m>2の整数)の周波数のパルス信号が基準パルス信号であり、n倍(m/n>kかつk>1の整数)の周波数のパルス信号が変調パルス信号となる。基準パルス信号、変調パルス信号のいずれも、Z相信号の周波数の整数倍であるために、ロール状部材401が中心軸周りに1回転する時間内に整数のパルス信号が存在することになる。
【0233】
図28は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材を形成する露光装置における基準パルス信号と変調パルス信号から、位相変調パルス信号を設定した一例を説明する説明図である。
図28を用いて、基準パルス信号と変調パルス信号、位相変調パルス信号との関係を説明する。基準パルス信号の位相を変調パルス信号の波長で周期的に増減させると、位相変調パルス信号となる。例えば、基準パルス周波数fY0を次の式(7)で表わし、変調周波数fYLを次の式(8)で表わすと、周波数変調させた変調パルス信号fYは次の式(9)で表せられる。
fY0=Asin(ω0t+φ0) (7)
fYL=Bsin(ω1t+φ1) (8)
fY=Asin(ω0t+φ0+Csin(ω1t)) (9)
【0234】
また、次の式(10)で表わすように、基準パルス周波数fY0に、変調パルス信号から得られるサイン波を加算することでも位相変調パルス信号fY’を得ることができる。
fY´=fY0+C´sin(t・fYL/fY0×2π) (10)
【0235】
さらには、基準パルスのパルス波長LY0に、変調パルス信号の波長LYLから得られるサイン波を加算することで、位相変調パルス信号の波長LYを得ることができる。
【0236】
図28に示すように、得られる位相変調パルス信号は、変調パルス信号の信号間隔に応じて、基準パルス信号のパルス間隔が周期的に増減した信号となる。
【0237】
また、
図24に示したように、D1方向、あるいはD2方向に2つの長周期を形成するためには、例えば、式(10)に、もう一つ変調パルスの周期を加え、式(11)のようにすることで、可能となる。
fY”=fY0+C”sin(t・fYL/fY0×2π+t・fYL’/fY0×2π) (11)
【0238】
式(11)では、基準パルス周波数fY0に、二つの周期を有する変調パルス信号から得られるサイン波を加算し、位相変調パルス信号fY”を得ている。式(11)における二つの変調周波数fYL、fYL’が各々、本実施の形態の半導体発光装置における二つの長周期となる。
【0239】
このとき本実施の形態では、1μm以上、あるいは、第一の光の光学波長の6倍以上及び第二の光の光学波長の6倍以上の長周期となるように、変調パルス信号を調整・制御して位相変調パルス信号を得る。
【0240】
また、露光装置400においては、位相変調したパルス信号によらず、一定周波数の基準パルス信号を用いて加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御し、移動機構部404による加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減させる構成としてもよい。この場合には、例えば、
図29に示すように、加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減する。
図29は、本実施の形態に係る半導体発光素子用基材を形成する露光装置におけるレーザ光を照射する加工ヘッド部の移動速度の一例を説明する説明図である。
図29に図示した移動速度は、基準移動速度±σの移動速度の例である。この移動速度は、ロール状部材401の回転と同期させることが好ましく、例えば、Z相信号における速度が
図29に示す速度となるように制御する。
【0241】
以上は、パターン406(
図26参照)が周期的な位相変調で制御された場合であるが、周期的でなくランダムな位相変調によってパターン406を形成することもできる。例えば第1方向D1においては、ピッチPyは、パルス周波数に反比例するので、パルス周波数に、最大位相ずれが1/10になるようにランダム周波数変調を行うと、ピッチPyは、ピッチPyの1/10の変動幅δ1(最大変動幅)を有し、ランダムにピッチPyが増減したパターンを得ることができる。
【0242】
回転と同期した基準信号の制御頻度については、ロール1周毎等、複数回以上の頻度による基準信号により、変調パルス信号を制御してもよく、露光初期に設定した初期の基準信号のみで制御してもよい。初期の基準信号のみで制御する場合、回転制御部402の回転数に変調が生じた場合、露光パルス信号に位相変調が生じることとなる。なんとなれば、ナノオーダーの回転制御であるため、回転制御部402のわずかな電位変動でも、ナノオーダーのピッチ変動が生じ、それが積算されるためである。仮に500nmピッチのパターンピッチの場合、ロール外周長が250mmであると、50万回のレーザ露光となり、1万回毎に1nmのずれでも、50nmのずれとなる。
【0243】
同じピッチ、同じ長周期でも、基準信号の制御頻度の調整により、
図14及び
図17に示す配置の微細構造を作成することが可能となる。
図14に示す配置の微細構造を形成する場合は、基準信号の制御頻度を下げており、
図17に示す配置の微細構造を形成する場合は基準信号の制御頻度を上げている。そのため、
図17に示す配置においては、該当するドットの第2方向の位相(位置)がそろっており、
図14に示す配置においては、該当するドットの第2方向の位相(位置)にずれが生じる。
図16及び
図18に示す配置の関係も同様である。
【0244】
露光装置400により、表面に設けられたレジスト層が露光されたロール状部材401を現像し、現像したレジスト層をマスクとして、ドライエッチングによりエッチング層をエッチングする。エッチング後、残渣のレジスト層を除去すると、ロールツーロールナノインプリントモールドを得ることができる。
【0245】
上記のように得られたパターン406を、所定の半導体発光素子用基材に転写し、半導体発光素子用基材を得る方法としては特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法により所定の半導体発光素子用基材表面にパターンを転写し、転写パターン部分をマスクとして、ドライエッチングにより半導体発光素子用基材をエッチングすることでパターン406を半導体発光素子用基材に転写することができる。具体的には、パターン406を形成したロール状部材401を円筒型モールド(ロールツーロールナノインプリントモールド)として用いる。半導体発光素子用基材の表面側に有機材料からなるレジスト層を形成し、このレジスト層に円筒型モールドを押し付けて、パターン406をレジスト層に転写した後、レジスト層及び半導体発光素子用基材を表面側からエッチングすることで半導体発光素子用基材の表面側に微細凹構造層を形成し、半導体発光素子用基材とすることができる。
【0246】
また、円筒型モールド(ロール状部材401)からパターン406を直接半導体発光素子用基材に転写するのではなく、パターン406を一度フィルムに転写し、樹脂モールドを形成してから、この樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法により半導体発光素子用基材上にパターンを形成し、半導体発光素子用基材を得る方法も挙げられる。この方法によれば、モールドの利用効率を高めて、半導体発光素子用基材の平坦性を吸収できるため、パターンを半導体発光素子用基材に転写する方法としては、樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法がより好ましい。
【0247】
円筒型モールドから樹脂モールドにパターン406を転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が適用できる。直接ナノインプリント法としては、所定温度で加熱しながら円筒型モールドのパターン406に熱硬化性樹脂を充填し、円筒型モールドを冷却してから硬化した熱硬化性樹脂を離型して転写する熱ナノインプリント法や、円筒型モールドのパターン406に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、円筒型モールドから硬化した光硬化性樹脂を離型して転写する光ナノインプリント法が挙げられる。
【0248】
円筒型モールド(ロール状部材401)は、シームレスの円筒状モールドであるため、特に、ロールツーロールナノインプリントにより樹脂モールドを連続転写することに好適である。
【0249】
また、パターン406を転写した樹脂モールドから電鋳により電鋳モールドを作製し、この電鋳モールドによりナノインプリントリソグラフィ法によりパターンを形成する方法も挙げられる。電鋳モールドを形成した場合は、元型となる円筒型モールドの寿命を延ばす点で好ましく、電鋳モールドを一度形成する方式においても、半導体発光素子用基材の平坦性を吸収できるため、さらに樹脂モールドを形成する方法が好ましい。
【0250】
さらに、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パターン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パターン転写物を複数製造すること、又は、(2)特に硬化性樹脂組成物を転写材として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得て、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパターン反転転写することのいずれか一方、あるいは両方を意味する。また(+)は雄型、(−)は雌型を指す。
【0251】
レジスト層により半導体発光素子用基材の表面側にパターンを形成したのち、レジスト層をマスクとして、エッチングにより半導体発光素子用基材に凹凸を形成する。エッチング方法としては、レジスト層をマスクとして半導体発光素子用基材に凹凸を形成できれば、特に限定されるものではなく、ウェットエッチング、ドライエッチング等が適用できる。特に、半導体発光素子用基材の凹凸を深く形成できるためドライエッチング法が好ましい。ドライエッチング法の中でも異方性ドライエッチングが好ましく、ICP−RIE、ECM−RIEが好ましい。ドライエッチングに使用する反応ガスとしては、半導体発光素子用基材の材質と反応すれば、特に限定されるものではないが、BCl
3、Cl
2、CHF
3、あるいはこれらの混合ガスが好ましく、適宜、Ar、O
2等を混合できる。
【0252】
上記のように得られたパターン406を、半導体発光素子用基材以外、例えば、
図11に記載した半導体発光素子200の二次元フォトニック結晶201に適用する方法としては、上記と同様に、特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法により所定の透明導電膜表面にパターンを転写し、転写パターン部分をマスクとして、エッチングにより透明導電膜をエッチングすることで、パターン406を透明導電膜に転写することができる。
【0253】
また、透明導電膜表面に、透明導電膜と実質的に同等の屈折率を有する膜を形成し、その膜に上記と同様に、パターン406を転写し、本実施の形態の半導体発光装置における半導体発光素子とすることができる。
【実施例】
【0254】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。なお、下記実施の形態における材料、使用組成、処理工程等は例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜変更して実施することが可能である。そのため、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0255】
[実施例1]
(円筒状金型作製(樹脂モールド作製用鋳型の作製))
円筒状金型の半導体発光素子用基材としては、直径80mm、長さ50mmの円筒型石英ガラスロールを用いた。この円筒型石英ガラスロール表面に、次の方法により半導体パルスレーザを用いた直接描画リソグラフィ法により微細構造(微細凹凸構造)を形成した。
【0256】
まず、この石英ガラス表面の微細構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、CuOを用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。以上のように作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光し、2種類の長周期を有する円筒状金型を作成した。
【0257】
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
円筒状金型A:
X軸方向のピッチPx:398nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:40nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL :3.98μm
Y軸方向のピッチPy:460nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:46nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL :4.60μm
円筒状金型B
X軸方向のピッチPx:398nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:40nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL :1.99μm
Y軸方向のピッチPy:460nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:46nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL :2.33μm
【0258】
Y軸方向のピッチPyは次のように決定される。スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、線速度sから周長Lが計算され、次の式(12)が得られる。
L=T×s (12)
【0259】
目標のピッチをPyとして、L/Pyが整数になるように目標ピッチPyの0.1%以下の値を足して調整し、実効ピッチPy’を次の式(13)によって得る。
L/Py’=m (mは整数) (13)
【0260】
目標のピッチPyと実効ピッチPy’とは、厳密にはPy≠Py’であるが、L/Py≒10
7であるので、|Py−Py’|/Py’≒10
−7となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。同様に、長周期単位PyLも、L/PyLが整数になるように実効長周期単位PyL’を次の式(14)によって得る。
L/PyL’=n (nは整数) (14)
【0261】
この場合も、厳密にはPyL≠PyL’であるが、L/PyL≒10
5であるので、|PyL−PyL’|/PyL’≒10
−5となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
【0262】
次に実効ピッチPy’から、式(15)、(16)により、基準パルス周波数fy0、変調周波数fyLが算出される。
fy0=s/Py’ (15)
fyL=s/PyL’ (16)
【0263】
最後に、式(15)、(16)から、スピンドルモーターのZ相信号からの経過時間tにおけるパルス周波数fyが、式(17)のように決定される。
fy=fy0+δ1×sin(t×(fyL/fy0)×2π)(17)
【0264】
X軸方向の軸送り速度は次のように決定される。スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、X軸方向のピッチPxから、軸方向の基準送り速度Vx0が次の式(18)のように決定される。
Vx0=Px/T (18)
【0265】
X軸方向の長周期単位PxLから、時刻tにおける軸送り速度Vxを次の式(19)で決定し、スキャンする。
Vx=Vx0+Vδ2・sin(Px/PxL×t×2π)(19)
【0266】
ここで、Vδ2は、x軸方向の長周期単位PxLにおける速度変動幅であり、長周期単位PxLのピッチ変動幅δ2、X軸方向のピッチPx、軸方向の基準送り速度Vx0により、次の式(20)で示される。
Vδ2=δ2×Vx0/Px (20)
【0267】
次に、レジスト層を現像し、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF
6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒状金型から、残渣のレジスト層のみをpH=1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒モールド(転写用モールド)を作製した。
【0268】
(樹脂モールドの作製)
得られた2種類の円筒状の石英ガラスロール表面(転写用モールド)に対し、デュラサーフ(登録商標、以下同じ)HD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を施した。
【0269】
次に、得られた円筒モールドからリール状樹脂モールドを作製した。OPTOOL(登録商標、以下同じ) DAC(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure(登録商標、以下同じ) 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
【0270】
次いで、円筒モールド(円筒状金型)に対し、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm
2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0271】
樹脂モールドを走査型電子顕微鏡で観察したところ、断面形状がφ400nm、h800nmの凸部がつぎの長周期構造を有する周期構造で形成されている2種類の樹脂モールドA、及び樹脂モールドBを得た。
【0272】
樹脂モールドA:
X軸方向のピッチPx:398nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:40nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL :3.98μm
Y軸方向のピッチPy:460nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:46nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL :4.60μm
樹脂モールドB:
X軸方向のピッチPx:398nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:40nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL :1.99μm
Y軸方向のピッチPy:460nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:46nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL :2.33μm
【0273】
(電子顕微鏡)
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
【0274】
(反転樹脂モールドの作製)
次に、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。
【0275】
次いで、上記リール状樹脂モールドに、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm
2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に樹脂モールドA、樹脂モールドBの微細構造が反転転写されたシート状の透明樹脂モールドA、シート状の透明樹脂モールドB(長さ200mm、幅300mm)を得た。
【0276】
(ナノインプリントリソグラフィ:サファイア基板)
φ2”厚さ0.33mmのC面サファイア半導体発光素子用基材上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作成した。
【0277】
(感光性樹脂組成物)
感光性樹脂組成物としては、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(OXT−221、東亜合成社製)20重量部、3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3、4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬社製)80重量部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(アロニックス(登録商標、以下同じ)M−101A、東亜合成社製)50重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニックスM−211B、東亜合成社製)50重量部、DTS−102(みどり化学社製)8重量部、1、9−ジブトキシアントラセン(アントラキュア(登録商標)UVS−1331、川崎化成社製)1重量部、Irgacure 184(Ciba社製)5重量部及びOPTOOL DAC HP(20%固形分、ダイキン工業社製)4重量部、を混合して使用した。
【0278】
レジスト層を形成したサファイア半導体発光素子用基材上に、透明樹脂モールドBを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/サファイア半導体発光素子用基材を、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、C面状にパターンが形成されたレジスト/サファイア積層体を得た。
【0279】
(エッチング:サファイア半導体発光素子用基材)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でサファイア半導体発光素子用基材をエッチングした。
エッチングガス:Cl
2/(Cl
2+BCl
3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
【0280】
エッチング後、サファイア半導体発光素子用基材の断面を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ400nm、h=250nmの凸部が、ナノインプリントに使用した透明樹脂モールドBと同様の長周期構造を含む周期構造として形成されていることがわかった。
【0281】
(半導体発光素子の形成)
得られたサファイア半導体発光素子用基材上に、MOCVDにより、(1)GaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア半導体発光素子用基材上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。上記構成により、半導体層からの発光は460nmであり、GaN層(屈折率:2.46)中の光学波長は、187nmであった。
【0282】
(ナノインプリント:ITO)
次に、表面に形成されたITO層に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、前記感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作成した。
【0283】
レジスト層を形成したITO上に、透明樹脂モールドAを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/ITO層/積層半導体層/サファイア半導体発光素子用基材を、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、ITO表面パターンが形成されたレジスト/ITO/積層半導体層を得た。
【0284】
(エッチング:ITO層)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でITO層をエッチングした。
【0285】
エッチングガス:Cl
2/(Cl
2+BCl
3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
【0286】
エッチング後、ITO面上を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ400nm、h=50nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドAと同様の長周期構造を含む周期構造として形成されていることがわかった。ITO層の半導体層からの発光460nmに対する、ITO層(屈折率:2.0)中の光学波長は、230nmであった。さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
【0287】
(半導体発光装置)
上記のように得られた半導体発光素子をパッケージに配置し、電極パッドにAuワイヤを介して電気的に接続した。次に、パッケージ内をシリコーン樹脂に650nmの主波長を有するCaAlSiN
3:Eu(蛍光材)を混合した波長変換部材で充填した。
【0288】
この状態で、カソードとアノードの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。表4には、比較例1の半導体発光装置からの発光出力を1としたときの発光出力比が示されている。実施例1では、比較例1と比較して、半導体発光素子からの発光に、回折特有のバラツキは観察されず、発光角度依存性はほとんどないことがわかった。
【0289】
[実施例2]
実施例1と同様に作成した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
【0290】
円筒状金型C
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向のピッチPx:260nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:26nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL1 :2.60μm
Y軸方向のピッチPy:300nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:30nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL1 :2.60μm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL2 :1.30μm
【0291】
Y軸方向のピッチPyは次のように決定される。スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、線速度sから周長Lが計算され、次の式(12)が得られる。
L=T×s (12)
【0292】
目標のピッチをPyとして、L/Pyが整数になるように目標ピッチPyの0.1%以下の値を足して調整し、実効ピッチPy’を次の式(13)によって得る。
L/Py’=m (mは整数) (13)
【0293】
目標のピッチPyと実効ピッチPy’とは、厳密にはPy≠Py’であるが、L/Py≒10
7であるので、|Py−Py’|/Py’≒10
−7となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。同様に、長周期単位PyL1も、L/PyL1が整数になるように実効長周期単位PyL1’、PyL2’を次の式(21)、式(22)によって得る。
L/PyL1’=n (nは整数) (21)
L/PyL2’=m (mは整数) (22)
【0294】
この場合も、厳密にはPyL1≠PyL1’、PyL2≠PyL2’であるが、L/PyL1≒10
5であるので、|PyL1−PyL1’|/PyL1’≒10
−5、|PyL2−PyL2’|/PyL2’≒10
−5なり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
【0295】
次に実効ピッチPy’から、式(15)、式(23)、式(24)により、基準パルス周波数fy0、変調周波数fyLが算出される。
fy0=s/Py’ (15)
fyL1=s/PyL1’ (23)
fyL2=s/PyL2’ (24)
【0296】
最後に、式(15)、式(23)、式(24)から、スピンドルモーターのZ相信号からの経過時間tにおけるパルス周波数fyが、式(25)のように決定される。
fy=fy0+δ1×sin(t×(fyL1/fy0)×2π+t×(fyL2/fy0)×2π) (25)
【0297】
次に実施例1と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
【0298】
樹脂モールドを走査型電子顕微鏡で観察したところ、断面形状がφ250nm、h500nmの凸部がつぎの長周期構造を有する周期構造で形成されている樹脂モールドCを得た。
【0299】
樹脂モールドC:
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向のピッチPx:260nm
X軸方向のピッチPxに対する変動幅δ2:26nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期単位PxL1 :2.60μm
Y軸方向のピッチPy:300nm
Y軸方向のピッチPyに対する変動幅δ1:30nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL1 :2.60μm
変動幅δ1のY軸方向の長周期単位PyL2 :1.30μm
【0300】
以下、実施例1と同様に、サファイア半導体発光素子用基材表面に樹脂モールドCのパターンを転写し、半導体発光素子を作製した。
【0301】
上記のように得られた半導体発光素子をパッケージに配置し、電極パッドにAuワイヤを介して電気的に接続した。次に、パッケージ内をシリコーン樹脂に650nmに主波長を有するCaAlSiN
3:Eu(蛍光材)、530nmに主波長を有するβ−SiAlON:Eu(蛍光材)を各々混合した波長変換部材で充填した。
【0302】
20mAにおける実施例2の発光出力比を表4に示す。実施例1と同様、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
【0303】
[実施例3]
実施例2と同様の半導体発光素子をパッケージに配置し、電極パッドにAuワイヤを介して電気的に接続した。次に、パッケージ内を、シリコーン樹脂に下記の主波長を有する蛍光材を混合した波長変換部材で充填した。
530nm β−SiAlON:Eu
580nm Ca−α―SiAlON:Eu
650nm CaAlSiN
3:Eu
【0304】
20mAにおける実施例3の発光出力比を表4に示す。実施例3では、実施例1、実施例2と同様、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
【0305】
[比較例1]
実施例1と同様の条件で通常のフラットなサファイア半導体発光素子用基材上に半導体発光素子を形成した後、実施例1と同様の波長変換部材で封止し発光出力を測定した。
【0306】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノパターンの微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。X軸方向、Y軸方向のピッチは同じで、ピッチ変動がない六方配列とした。
X軸方向のピッチPx:398nm
Y軸方向のピッチPy:460nm
【0307】
その後、実施例1と同様の方法で、半導体発光装置を形成し、発光出力を測定した。得られた半導体発光素子からの発光においては、回折構造特有の回折光が強く観察され、発光角度分布が大きかった。
【0308】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で、半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノパターンの微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。X軸方向、Y軸方向のピッチは同じで、ピッチ変動がない六方配列とした。
X軸方向のピッチPx:260nm
Y軸方向のピッチPy:300nm
【0309】
その後、実施例1と同様の方法で、半導体発光装置を形成し、発光出力を測定した。得られた半導体発光素子からの発光においては、回折構造特有の回折光が強く観察され、発光角度分布が大きかった。
【0310】
実施例1、2、3における、二次元フォトニック結晶の周期と、光学波長の関係をまとめて表1、表2及び表3に表示した。
【0311】
いずれの実施例においても、1μm以上の周期を2つ以上有することがわかった。また、光学波長の6倍以上の周期を有し、かつ、その周期が2つ以上あることがわかった。
【0312】
実施例1
【表1】
【0313】
実施例2
【表2】
【0314】
実施例3
【表3】
【0315】
表4には、比較例1の出力を1とした際の、各試料の発光出力比が示されている。表4から、本実施の形態に係る半導体発装置(実施例1〜実施例3)によれば、従来の平坦なサファイア半導体発光素子用基材(比較例1)、従来の光学波長の6倍以上の周期をもたない二次元フォトニック結晶を有するサファイア半導体発光素子用基材(比較例2)に比べ、サファイア半導体発光素子用基材上に成膜した半導体層中の転位欠陥数を減らすことができ、また、周期性が乱れた凹凸パターンに起因する光散乱により導波モードを解消して光取り出し効率を上げることができるため、高い発光効率を有する半導体発光素子を得ることができることがわかった。さらに、発光素子からの発光特性において、角度依存性がほとんどないことがわかり、工業実用上、好適な発光素子である。
【0316】
角度依存性は、20mAにおける発光状況を目視で観察し、特定角度に強い発光光が観察される、あるいは、観察角度により発光色が変化する場合を角度依存性が強いとして×として評価した。
【0317】
また、20mAにおける3次元の発光状況を配光分光装置(IMS5000−LED、朝日分光社製)で測定し、仰角45度における円周方向の発光強度分布の変動係数(変動係数=標準偏差/平均値)で示した。
【0318】
表4に示すように変動係数は、比較例2及び比較例3で10%を超えており、一方、実施例1〜実施例3では、角度依存性がない平坦基板の比較例1と同等の変動係数を示し、4%よりも小さくできることがわかった。これにより、実施例では、特定角度に強い発光光が観察されておらず、角度依存性がほとんどないことがわかった。
【0319】
【表4】
【0320】
[実施例4]
(積層半導体の形成)
サファイア半導体発光素子用基材上に、MOCVDにより、(1)GaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。上記構成により、半導体層からの発光は460nmであり、ITO層の膜厚は、600nmとした。
【0321】
(ナノインプリント:ITO)
次に、表面に形成されたITO層に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、前記感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作成した。
【0322】
レジスト層を形成したITO上に、透明樹脂モールドCを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/ITO層/積層半導体層/サファイア半導体発光素子用基材を、70mm×t10mmの2枚の透明シリコーン板(硬度20)で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、ITO表面パターンが形成されたレジスト/ITO/積層半導体層を得た。
【0323】
(エッチング:ITO層)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でITO層をエッチングした。
エッチングガス:BCl
3
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.2Pa
アンテナ:150w
バイアス:50w
【0324】
エッチング後、ITO面上を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ230nm、h=250nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドCと同様の周期構造として形成されている微細構造層が得られ、2つの異なる周期を有する二次元フォトニック結晶が形成されていることがわかった。
【0325】
上記のように得られた半導体発光素子をパッケージに配置し、電極パッドにAuワイヤを介して電気的に接続した。次に、パッケージ内に配置された半導体発光素子の微細構造層の表面のみを覆うように、前記微細構造層の表面を中間材料としてのシリコーン樹脂(屈折率1.53)で封止し、その後、前記シリコーン樹脂を硬化させた。続いて、パッケージ内を、第一の材料としてのシリコーン樹脂(屈折率)と下記の主波長を有する蛍光材とを混合した波長変換部材により充填した。使用した蛍光材の平均粒径は、いずれも200nmであった。
530nm β−SiAlON:Eu
580nm Ca−α―SiAlON:Eu
650nm CaAlSiN
3:Eu
【0326】
[実施例5]
実施例4と同様に得られた半導体発光素子をパッケージ内に封止する際、実施例4に使用したシリコーン樹脂(屈折率1.5)に650nmの主波長を有するCaAlSiN
3:Eu(蛍光材)を混合した波長変換部材のみで充填した。
【0327】
[比較例4]
実施例4と同様の条件でサファイア半導体発光素子用基材上に半導体発光素子を形成した後、ITO層表面に微細構造層を設けずに、実施例1と同様の波長変換部材で封止し発光出力を測定した。
【0328】
表5には、比較例4の出力を1とした際の、各試料の発光出力比が示されている。表5から、微細構造層と波長変換部材との間に、中間材料としてのシリコーン樹脂を介在させた実施例4は、微細構造層を波長変換部材に接して形成した実施例5に比べ、半導体発光素子中の導波モードを解消し、さらに、蛍光光の散乱性を増加させ、光取り出し効率をあげることができるため、高い発光効率を有する半導体発光素子を得ることができる。さらに、2つの異なる周期を有する二次元フォトニック結晶を形成することで、導波モードの解消と、散乱性が増加するために、さらに、光取り出し効率を上げた半導体発光素子を得ることができ、工業実用上、好適な発光素子である。
【0329】
【表5】
【0330】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。