(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一平面状に所定の間隔を置いて並行に配置された複数の帯状電極からなる電極群で、互いに逆極性の電圧が印加される第1の電極群と第2の電極群とを交差させ編んで形成される複数の第1の構造体と、
前記第1の電極群と第2の電極群とを交差させ、前記第1の電極面とは異なる重なり状態で編んで形成される複数の第2の構造体とを備え、
前記第1の構造体と前記第2の構造体とは、前記第1の構造体と第2の構造体とにおける前記第1の電極群と第2の電極群との交差位置が互いにそれぞれ一致するように交互に積層され、
隣接する前記第1の構造体と第2の構造体とにおける前記交差位置において、隣接して対向する一対の帯状電極は、印加される前記電圧の極性が同じ場合に、前記交差位置で接合される
ことを特徴とする静電アクチュエータ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《一の実施形態》
図1は、本発明の一の実施形態に係る静電アクチュエータ100の外観図を示し、
図2は、
図1の線分A−A’におけるXZ平面の静電アクチュエータ100の断面図を示す。
【0015】
本実施形態に係る静電アクチュエータ100は、
図3に示すように、銅等の金属膜を誘電体膜で挟んで形成された厚さdの帯状の電極である電極テープ10を用いて積層して形成された積層型静電アクチュエータである。なお、X方向およびY方向に延在する電極テープ10には互いに異なる極性の電圧が印加され、そのことを白とグレーの色で示している。
【0016】
本実施形態の静電アクチュエータ100を形成する各層は、幅Lの電極テープ10を4本1組として、間隔Dを置いて並行に同一平面(XY平面)に配置した2組の電極テープ10を交差させて平織りにして形成される構造体である。
図4は、各層をなす構造体の電極テープ10の平織り状態を示す。
図4に示すように、静電アクチュエータ100は、重なり状態が異なる2種類の構造体(以下、
図4(a)を「第1の平織り構造体」、
図4(b)を「第2の平織り構造体」と称す)を有する。したがって、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを、
図1、
図2に示すように、X方向とY方向とに延在する電極テープ10の交差位置が積層方向(Z方向)で互いにそれぞれ一致するように交互に積層されることで、静電アクチュエータ100が形成される。
【0017】
なお、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを積層するにあたり、
図2に示すように、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体の交差位置に位置し、同じ極性の電圧が印加される一対の電極テープ10の部分に接着剤を塗布して接合する。その結果、電極テープ10自身が有する弾性力や張力等の特性により、極性の異なる電極テープ10間の間隔が維持される。また、XZ平面では、
図2に示すように、X方向に延在する電極テープ10がハニカム構造となり、YZ平面では、
図1に示すように、Y方向に延在する電極テープ10がハニカム構造となる。すなわち、積層された第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とは互いにずれることなく、静電アクチュエータ100は、外力に対して自身の構造自体で形状を安定して維持することができる。
【0018】
一方、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体の交差位置に位置する電極テープ10の部分を積層電極部11とし、静電アクチュエータ100の2組の電極テープ10それぞれに極性の異なる電圧が印加されると、異なる極性の電圧が印加され積層方向で対向する一対の積層電極部11の間には電界が発生する。一対の積層電極部11の間の電界に応じた静電気力が作用し、積層電極部11間の間隙d1が収縮する。その結果、静電アクチュエータ100は、積層方向(Z方向)に収縮し、大きな駆動力を得ることができる。
【0019】
ここで、上記積層電極部11間に作用する単位面積あたりの静電気力の大きさは、これら電極間の距離の2乗に反比例する。したがって、静電アクチュエータ100に大きな作用力を生じさせるには、一対の積層電極部11を互いに近接して組み合わせる必要がある。
【0020】
しかしながら、電極テープ10間の間隔Dを小さくした場合、電極テープ10の積層電極部11間の距離Sが短くなり、積層方向の積層電極部11間の隙間d1は小さくなるが、静電アクチュエータ100の伸縮動作の範囲も小さくなってしまう。一方、間隔Dを大きくした場合、電極テープ10の積層電極部11間の距離Sが長くなり、積層方向の積層電極部11間の隙間d1は大きくできるが、電極テープ10の撓みが生じる。その結果、静電アクチュエータ100は正常に動作できず、大きな駆動力を得ることができない。
【0021】
また、電極テープ10の幅Lについては、小さくした場合、大面積の静電アクチュエータを製造するために、大量の静電アクチュエータ100を製造する必要があり、時間やコストがかかってしまう。一方、幅Lを大きくした場合、電極テープ10の撓みが生じ、静電アクチュエータ100は正常に動作できず、大きな駆動力を得ることができない。
【0022】
そこで、本実施形態では、例えば、電極テープ10の幅Lは2mm以下、および電極テープ10の積層電極部11間の距離S=電極テープ10の厚さd×6〜8とする。だたし、電極テープ10が有する特性等に応じて適宜決められることが好ましい。
【0023】
次に、
図5に基づいて、静電アクチュエータ100の製造方法について説明する。
図5は、電極テープ10の形成方法の一例を示す。
【0024】
電極シートは、
図5(a)に示すように、銅薄膜をPETフィルムで挟まれて作成される。電極シートは、太い破線に沿って帯状に切断される(
図5(b))。帯状に切断された電極シートの切断面(
図5(c)の矢印)をエッチングし、切断面に露出している銅薄膜が除去される。切断面が両側のPETフィルムで接合され(
図5(d))、電極テープ10が生成される(
図5(e))。
【0025】
なお、
図5(c)の工程で銅薄膜の帯状電極の幅が切断面のエッチングによって幅Wとなるように、
図5(b)の工程において、所定のマージンαを予め見込んで電極シートを切断することが好ましい。
【0026】
次に、
図4に示すように、電極テープ10を4本1組として、間隔Dを置いて並行に同一平面(XY平面)に配置し、2組の電極テープ10を交差させて、重なり状態が異なる2種類の第1の平織り構造体および第2の平織り構造体それぞれを複数形成する。それら第1の平織り構造体および第2の平織り構造体に対して、例えば、平織り部分からはみ出した電極テープ10の一端が、
図4に示す点線の位置で切断される。一方、切断しない他方の電極テープ10のはみ出し部分は、エッチング等により誘電体膜を除去され、それぞれの極性の電圧が印加される電圧端子部として用いる。なお、各電極テープ10の電圧端子部を電圧の極性ごとに一纏めに接合することが好ましい。
【0027】
そして、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを積層するにあたり、
図2に示すように、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体の交差位置に位置し、同じ極性の電圧が印加される一対の電極テープ10の部分に接着剤が塗布される。第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とは、交互に積層して接合され、静電アクチュエータ100が形成される。
【0028】
このように、本実施形態では、2組の電極テープ10を交差させて平織りし、重なり状態が異なる第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを交互に積層させることにより、大面積の極板を有する静電アクチュエータ100を容易に且つ低コストで製造することができる。
【0029】
また、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを交互に積層させるだけで、並列に配置した複数の積層電極を形成することができ、ねじれ等の外力からの作用に対しても電極構造を維持することができる。
【0030】
さらに、静電アクチュエータ100は、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体という単純な構造体から形成されることから、極板の大きさや極板間の距離のバラツキを抑えることができ、静電アクチュエータ間の伸縮動作のバラツキを抑えることができる。
《他の実施形態》
本発明の他の実施形態に係る静電アクチュエータは、
図1に示す一の実施形態に係る静電アクチュエータ100と同じである。したがって、本実施形態の静電アクチュエータ100の構成要素のうち、一の実施形態と同じものについては同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
本実施形態の静電アクチュエータ100と一の実施形態のものとの相違点は、
図6に示すように、積層電極部11の誘電体膜の厚さを、積層電極部11間の電極テープ10の誘電体膜の厚さより厚くする。つまり、積層電極部11の誘電体膜を厚くすることにより、積層電極部11部分での電極テープ10の撓みを回避することができ、より大面積の積層電極部11を形成することが可能となる。その結果、静電アクチュエータ100は、より大きな駆動力を発生させることができる。
【0032】
一方、本実施形態の静電アクチュエータ100の製造は、一の実施形態の製造と同じであり、積層電極部11の誘電体膜の厚さを積層電極部11間に位置する電極テープ10の誘電体膜の厚さより厚くする、
図7に示す工程が追加される点が異なる。
【0033】
すなわち、例えば、帯状電極をPETフィルムで挟んで形成された
図5に示す各電極テープ10は、両側のPETフィルム部分のうち、幅Lのプラトー部を残すようにして、
図7(a)に網掛けして示す幅Sの部分を除去する。
図7(b)に示すように、電極テープ10には、幅Lのプラトー部と幅Sの溝部12とが交互に現れる構造が形成される。なお、このように積層電極部11と溝部12とを一体形成する方法は、例えば、リソグラフィー技術を利用して微細な静電アクチュエータを製造する場合に特に有効である。また、溝部12の幅Sは可変長であり、間隔Sとともに、電極テープ10が有する特性等に応じて適宜決められることが好ましい。
【0034】
このように、本実施形態では、2組の電極テープ10を交差させて平織りし、重なり状態が異なる第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを交互に積層させることにより、大面積の極板を有する静電アクチュエータ100を容易に且つ低コストで製造することができる。
【0035】
また、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを交互に積層させるだけで、並列に配置した複数の積層電極を形成することができ、ねじれ等の外力からの作用に対しても電極構造を維持することができる。
【0036】
さらに、静電アクチュエータ100は、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体という単純な構造体から形成されることから、極板の大きさや極板間の距離のバラツキを抑えることができ、静電アクチュエータ間の伸縮動作のバラツキを抑えることができる。
【0037】
また、積層電極部11の誘電体を厚くすることにより、積層電極部11部分での電極テープ10の撓みを回避することができ、大面積の積層電極部11を形成することができる。
《実施形態の補足事項》
(1)上記実施形態では、4本1組とする2組の電極テープ10を用いて、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体を形成したが、本発明はこれに限定されず、4つ以外の複数の電極テープ10を1組とする2組から、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体を形成してもよい。また、2組の電極テープ10の本数は互いに異なってもよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、2組の電極テープ10を90度で交差させたが、本発明はこれに限定されず、90度以外の角度で交差させてもよい。
【0039】
(3)上記実施形態では、第1の平織り構造体および第2の平織り構造体の積層数を4つとしたが、静電アクチュエータ100に要求される可動範囲や収縮時の力の大きさに応じて積層数を適宜決めることが好ましい。
【0040】
(4)上記実施形態では、隣接する第1の平織り構造体および第2の平織り構造体の交差位置に位置し、同じ極性の電圧が印加される一対の電極テープ10の部分に接着剤を塗布し、第1の平織り構造体と第2の平織り構造体とを積層したが、本発明はこれに限定されない。例えば、接合される電極テープ10の部分の接合側の誘電体膜をエッチング等により除去し、誘電体膜が除去された金属膜に伝導性の接着剤を塗布して接合したり、誘電体膜が除去された金属膜を溶着したりしてもよい。これにより、少なくとも積層方向の各電極テープ10の電圧端子部を印加される電圧の極性ごとに一纏めに接合する必要がなくなり、静電アクチュエータ100の構成を簡素化することができる。
【0041】
(5)上記他の実施形態では、帯状電極を挟んだPETフィルムのうち、所定の部分を除去することにより積層電極部11および溝部12を形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、帯状電極を薄い絶縁体フィルムで覆って形成された電極テープ10に、
図8に示すように、1辺の長さLを持つ正方形の板状の部材を、所望の幅Sを有する溝部12が形成されるように接合し、積層電極部11と溝部12とを交互に形成してもよい。
【0042】
また、電極テープ10に別の部材を組み合わせて積層電極部11を形成してもよい。例えば、シリカ(SiO
2)等のPET樹脂と比べて剛性の高い物質からなる板状部材を、電極テープ10に接合して積層電極部11を形成する場合、PET樹脂等を用いて積層電極部11を形成した場合と比べて、積層電極部11の厚みを薄くすることができる。これにより、対向する一対の積層電極部11間の距離を短くして、静電アクチュエータ100の作用力の増大を図ることができる。
【0043】
さらに、ガラス繊維を混ぜて硬くした樹脂からなる板状部材を上述したようにして接合して電極テープ10を形成してもよい。また、電極テープの両面に所望の幅Sを有する溝部12が形成されるように、1辺の長さLを持つ正方形の領域に紫外線硬化樹脂を塗布し、硬化することで積層電極部11を形成してもよい。また、電極テープ10の両面全体に紫外線硬化樹脂を塗布し、積層電極部11を形成したい領域のみ紫外線を照射して硬化させることで積層電極部11を形成してもよい。
【0044】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。