特許第5935114号(P5935114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 後閑 始の特許一覧

<>
  • 特許5935114-発電装置 図000002
  • 特許5935114-発電装置 図000003
  • 特許5935114-発電装置 図000004
  • 特許5935114-発電装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935114
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 7/00 20060101AFI20160602BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F03B7/00
   F03B17/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-178763(P2011-178763)
(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公開番号】特開2013-40585(P2013-40585A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】510204219
【氏名又は名称】後閑 始
(74)【代理人】
【識別番号】100078097
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 岳雄
(72)【発明者】
【氏名】後閑 始
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−029174(JP,U)
【文献】 実開昭63−063583(JP,U)
【文献】 特開昭62−113865(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097204(WO,A2)
【文献】 特開2012−2220(JP,A)
【文献】 特開昭54−99839(JP,A)
【文献】 特開昭58−183869(JP,A)
【文献】 特開平6−173841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に沿って、横断面形状が上に開いたコ字形で、河川と同じ勾配の用水路を設け、この用水路の始端部に、河川の川底から突出し、河川の水面より下方に位置する筒状の取り入れ口を設け、この取り入れ口より下方の筒部を前記用水路の始端筒部に接続すると共に、その断面積を用水路の設定水面より下の水流の断面積と同じに設定し、以てこの用水路中に河川の水流の一部が常時流れるようにすると共に、この用水路中に、その長さ方向に沿って、水平で用水路の幅方向に延在する水車軸と、この水車軸の外周面にその基端縁を接合させるようにして放射状に結合された複数の平板状の羽根板を有する下掛け求心水車の複数を列設し、一方、用水路を流れる水流の水面が上記水車軸より下方になるようにするため、用水路の始端部に幅が用水路の全幅にわたる絞り板を配設し、他方、上記下掛け求心水車の水車軸の夫々に発電機を連結してなる発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電装置に係り、特に、原子力発電装置のような危険性が無く、しかも火力発電のような地球環境への悪影響が無い、所謂環境に優しい、水力による発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電に用いられる水車には、噴流による衝動水車であるペルトン水車、水の圧力を利用する代表的な反動水車であるフランシス水車、或いはプロペラ様の羽根車であるカプラン水車等種々のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−137253
【特許文献2】特開2001−186663
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の水車を用いた発電装置は、特許文献1或いは2に記載されているように、概して大型で構造も複雑であり、しかも流量、流速が大きい水流でないと発電効率が悪い。
【0005】
また、水流と水車の接触時間が短く、水流の運動エネルギー或いは位置のエネルギーを十分に抽出しないで勢いを残した水流を捨ててしまう、等未だ改良の余地がある。
【0006】
そこで、この発明は、構造が簡単で出力トルクが大きく、しかも流速が小さい水流からでも効率良く発電できる新規な水車を用いた発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、河川に沿って、横断面形状が上に開いたコ字形で、河川と同じ勾配の用水路を設け、この用水路の始端部に、河川の川底から突出し、河川の水面より下方に位置する筒状の取り入れ口を設け、この取り入れ口より下方の筒部を前記用水路の始端筒部に接続すると共に、その断面積を用水路の設定水面より下の水流の断面積と同じに設定し、以てこの用水路中に河川の水流の一部が常時流れるようにすると共に、この用水路中に、その長さ方向に沿って、水平で用水路の幅方向に延在する水車軸と、この水車軸の外周面にその基端縁を接合させるようにして放射状に結合された複数の平板状の羽根板を有する下掛け求心水車の複数を列設し、一方、用水路を流れる水流の水面が上記水車軸より下方になるようにするため、用水路の始端部に幅が用水路の全幅にわたる絞り板を配設し、他方、上記下掛け求心水車の水車軸の夫々に発電機を連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成された請求項1に記載の発電装置は、用水路の側面側から見て水車軸の周りに放射状に配設された羽根板の、水車軸の中心より下方の部分を用水路の下流側に駆動するので、水車軸の中心より上方の部分が空中を空転することと相俟って、複数の水車が同時に同方向に回転して効率良く発電する。
【0009】
また、水車を回そうとする水流、或いは水圧は広い羽根板全面に作用するので、例えばプロペラ水車等と比較して水車軸に発生する回転トルクは格段に大きい。
【0010】
更にまた、各水車は簡単な構造で、しかも用水路中に多数配設することができるので、簡単な構成ながら大電力を取り出すことができる。
【0011】
加えて、風力発電や太陽光発電と異なり用水路を流れる水量は夜昼にわたってほぼ一定であるから、安定して電力を取り出すことができる。
【0012】
また、用水路の始端部に絞り板を配設し、用水路を流れる水流の水面が上記水車軸より下方になるようにしたので、大雨や台風により河川が増水したときでも水車が停まることは無い、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の発電装置の線図的縦断面図。
図2】その横断面図。
図3】羽根板の拡大側面図。
図4】用水路の始端部の線図的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
河川に沿って河川と同じ勾配の用水路を設け、この用水路中に、その長さ方向に沿って、水平で用水路の幅方向に延在する水車軸と、この水車軸の外周面にその基端縁を接合させるようにして放射状に結合された複数の平板状の羽根板を有する下掛け求心水車の複数を列設し、一方、用水路を流れる水流の水面が上記水車軸より下方になるようにするため、用水路の始端部に絞り板を配設したので、簡単な構成で大容量の発電が可能になった。
【実施例1】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1において符号1は用水路を示し、この用水路1は河川に沿って、横断面形状が上に開いたコ字形の、例えばコンクリート製の樋のような導水路で、断面積に制限は無いが平方米(平方メートル)単位が望ましい。
【0016】
上記用水路1の下半分の部分には、矢印方向(図で左方から右方)に水流が流れている。また、この用水路は水平ではなく、河川と同じ勾配を有し、右方に向かって下がるものとする。
【0017】
用水路1中には全体を符号2で示す水車が配設されている。図面を明瞭にするため、図1においてはこの水車は一つしか示されていないが、実際には用水路1中に多数の水車2、2が列設されている。
【0018】
この水車2は、図1及び図2に示すように、両端を小径にした段付の水車軸3と、この水車軸3の外周面にその基端縁を接合させるようにして、複数(図示の実施例では8枚)の平板状の羽根板4、4を放射状に結合したものである。
【0019】
上記羽根板4を水車軸に結合するには、例えば図3に示すように、その基端縁(図3で下端縁)に水車軸の外周面に隙間なく接合できる断面が円弧の一部をなす接合片5を一体に連設する。
【0020】
そして、この接合片5の長さ方向(図3の紙面方向、あるいは羽根板4の幅方向)に沿って複数のビス穴(図示せず)を穿設し、一方、水車軸3の所定の角度位置における母線に沿って上記ビス穴に対応する複数のねじ孔(図示せず)を形成し、ビスに寄って羽根板4を水車軸に固定する。
【0021】
同様にして水車軸の外周面の所定の角度位置に羽根板をねじ止めし、図1及び図2に示すような水車(外掛け求心水車)2を構成する。
【0022】
なお、図示の実施例では角羽根板4の自由端縁部(図3で上端縁部)が浅い樋状に成形されているが、これは平板状にしても良い。
【0023】
上記のように構成された水車は、図2に示すように断面矩形の水車保持枠6の一対の側板7、7に形成された図示しない軸穴に水車軸3の両端の小径部を回転可能に嵌合させるようにして、水車保持枠6に支持されている。
【0024】
なお、上記一対の側板7、7を相互に連結するように、水車保持枠6の天板8及び基板9が側板7、7を介して相互に連結され、全体として断面矩形の水車保持枠6が形成されている。
【0025】
なお、水車保持枠の剛性を高めるため、天板8、一対の側板7、7及び基板9を相互に結合するには、例えば、これらをL型ブラケットを介してねじ止めし、或いは溶接する。
【0026】
また、水車を装着した水車保持枠6を用水路1中に固定するには、例えば、用水路底面に少なくとも3個のステンレス製のボルトを埴設し、一方、これに対応して水車保持枠の基板9に同数のボルト孔を穿設し、基板9をナットにより用水路底面にボルト止めする(図示せず)。
【0027】
一方、側板を貫通して側板外面に突出した水車軸の小径部を、シール装置付のベアリングに嵌合させた状態で発電機11に接続し、発電機11からの出力を防水構造のコード線を介して図示しない制御装置に接続する。
なお、上記したシール装置付のベアリングは市販されている。
【0028】
或いはまた、上記側板を貫通して側板外面に突出した水車軸3の小径部に第1傘歯車を装着し、鉛直軸の下端に装着され、第1傘歯車と噛み合い係合する第2傘歯車の回動を上記鉛直軸を介して用水路の水面上に配設された発電機に伝達する(図示せず)。
【0029】
上記のように構成されたこの発明の一実施例による発電装置は、図1から明らかなように、矢印方向の水流に対し、水面12が水車軸3の中心より下方にあるときには水車は力強く回転し、その回転は発電機11に伝達されて発電が行われる。
【0030】
一方、河川の増水により用水路中の水量が増大すると、水面12が水車軸3を浸漬してその中心を越える。
【0031】
すると、水車軸の中心より上方の水流は水車の回転にブレーキを掛ける方向に作用するから、発電の効率が落ち、水車の全体が水中に没すると水車が停止する。
【0032】
本発明による発電装置は、増水しても水流が水車軸を浸漬しないように、用水路の始端部に絞り板13が配設されている。
【0033】
図示の実施例における絞り板13は、断面矩形の用水路の天井から斜めに垂下した板状体で、その側端縁は用水路の側壁内面に接合され、下端縁は設定された水面12に近接してこれに臨んでいる。
【0034】
このように構成することにより、河川の増水により水面12が上昇すると、水流の絞り板13の下端縁を超えた部分は絞り板13の上流側に滞留し、絞り板13を潜った水流のみが用水路1の下流に流れていくので、絞り板より下流側の水面は設定した値に保たれる。
【0035】
このような絞り板は、例えば温泉場における源泉を各旅館に分配する樋の流れ始めの部分に用いられており、その分配機能が確かめられている。
【0036】
ちなみに、図示の実施例における用水路の始端部は、図4に示すように、河川の川底14から突出し、河川の水面15より下方に位置する取り入れ口16を有し、この取り入れ口16より下方の筒部は前記用水路1の始端筒部に接続されると共に、その断面積は用水路1の設定水面12より下の水流の断面積と同じに設定されている。
【0037】
したがって、河川の増水の始めには絞り板13の下端縁によりこそげられた水流は絞り板13の上流側に滞留するが、すぐにその滞留分の上方の空気が上記筒部を通って河川中に放出される結果、図4に示すように、絞り板より上流側の非圧縮性の水柱の圧力が高まるので、河川の水が取り入れ口から入り難くなる。
【0038】
そのため、用水路1中の水面12のレベルが設定値に保たれる。
【符号の説明】
【0039】
1 用水路
2 水車
3 水車軸
4 羽根板
5 接合片
6 保持枠
7 側板
8 天板
9 基板
11 発電機
12 水面
13 絞り板
14 川底
15 河川の水面
16 取り入れ口
図1
図2
図3
図4