特許第5935163号(P5935163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935163レジスト密着性向上剤及び銅配線製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935163
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】レジスト密着性向上剤及び銅配線製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/10 20060101AFI20160602BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160602BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C23G1/10
   C23F1/00 102
   H01L21/30 563
   G03F7/09 501
   H01L21/88 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-79466(P2012-79466)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211346(P2013-211346A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104813
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 了
(72)【発明者】
【氏名】武井 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】安江 秀国
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−547202(JP,A)
【文献】 特開昭61−163693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00
C23G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に形成した銅膜上に感光性レジスト膜を形成する工程、及び、感光性レジスト膜へパターンマスクを介して露光し、現像してなる、レジスト膜が除去された銅膜部分を、エッチング液でエッチングする工程、を含む銅配線製造方法において、銅膜上に感光性レジスト膜を形成する際、有機酸を1.5〜20重量%、塩化物イオンを0.0007〜0.73重量%、アンモニウムイオンを0.00003〜3.7重量%及び残部の水を含有し、かつ、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が、0.1〜10の範囲であるレジスト密着性向上剤を用いて、銅膜表面を処理した後、銅膜上に感光性レジスト膜を形成することを特徴とする銅配線製造方法。
【請求項2】
レジスト密着性向上剤のアンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が、0.5〜5の範囲である請求項1記載の銅配線製造方法
【請求項3】
レジスト密着性向上剤の有機酸の含有量は、1.5〜17重量%である請求項1又は2記載の銅配線製造方法
【請求項4】
レジスト密着性向上剤の有機酸の含有量は、3〜7重量%である請求項3記載の銅配線製造方法
【請求項5】
レジスト密着性向上剤のアンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.6〜4.9の範囲であり、塩化物イオン及びアンモニウムイオンの合計含有量が0.00076〜1.07重量%である請求項4記載の銅配線製造方法
【請求項6】
レジスト密着性向上剤の有機酸は、1価カルボン酸又は多価カルボン酸である請求項1〜5のいずれか記載の銅配線製造方法
【請求項7】
レジスト密着性向上剤の有機酸は、酢酸、蟻酸、酪酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6記載の銅配線製造方法
【請求項8】
レジスト密着性向上剤の塩化物イオン源は、塩酸及び塩化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか記載の銅配線製造方法
【請求項9】
レジスト密着性向上剤のアンモニウムイオン源は、アンモニア水及び塩化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか記載の銅配線製造方法
【請求項10】
レジスト密着性向上剤の塩化物イオン及びアンモニウムイオンの供給源として、塩化アンモニウムを用いる請求項1〜7のいずれか記載の銅配線製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)やエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の表示装置製造等において、基板表面の銅膜から銅配線を形成する工程で、銅膜表面にレジスト膜を形成する際、レジスト膜の銅膜表面への密着性を良好にするために行う銅膜表面処理に好適なレジスト密着性向上剤及び銅配線製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能LCDやELディスプレイでは、アルミニウムに代替する配線材料として銅が使用され始めている。銅が望ましい理由は、アルミニウムと比較して抵抗率が低く、配線を微細化する事が可能であり、その為、開口部を広く設計でき、また、スイッチングが高速に駆動できる等のメリットがある為である。
【0003】
銅配線を製造する方法としては、一般的には、基板表面に蒸着又はメッキ等により銅膜を形成した後、銅膜上への感光性のレジスト膜の形成、レジスト膜へのパターンマスクを介しての露光、露光後のレジスト膜の現像、現像によりレジスト膜が除去された銅膜部分のエッチング、その後のレジスト膜剥離、等を経て、銅配線を形成する方法が用いられる。
【0004】
この場合において、銅膜表面にレジスト膜を形成する際には、その後のエッチング工程において正確にレジストパターンどおりの配線を形成するために、銅表面とレジスト膜との極めて高度の密着性が要求される。従来、レジスト膜を銅膜上に密着性よく形成するためになされている技術的検討としては、レジストの技術的課題の検討と、銅膜の表面処理方法の検討とがある。
【0005】
このうち、銅膜の表面処理に対する検討としては、例えば、銅膜表面の汚れや酸化皮膜の除去処理、及び銅表面粗化処理等が挙げられ、そのために銅膜表面を物理研磨するか、又は化学薬品による化学研磨(ソフトエッチング)が行われる。物理研磨においては、研磨を行ったブラシや研磨された表面に付着したパーティクルを除去する目的で有機酸及びアンモニウム化合物を含有する洗浄液等が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示された技術は、銅による相互配線をCMP技術で平坦化した後、半導体基板を洗浄し、汚染物を除去する工程を含む製造方法において適用することを目的とするものであり、この汚染物としても、研磨で生じたパーティクルを含む汚染物を対象としており、レジスト塗布前の銅膜表面処理に関して何ら言及がないばかりか、汚染物を除去して研磨による平坦表面を確保することを目指すものであり、レジストの密着性向上を図る課題は全く意図されていず、その可能性も不明なままである。しかも、LCDやELディスプレイ製造においては基板サイズが大きいため、物理研磨の適用は困難であり、そもそも、大規模基板にも適用可能な技術を開示するものではない。
【0006】
一方、化学研磨においては、フッ化アンモニウム及び酢酸アンモニウム等を含有する洗浄液(例えば、特許文献2参照。)、硫酸系洗浄液、塩酸系洗浄液(例えば、特許文献3参照。)等の洗浄液を用いて化学処理をする方法等が知られている。特許文献2に開示された技術においては、ドライエッチング後の生成物を除去する目的で洗浄液が使用されており、エッチング前のレジストパターン形成工程において使用することをなんら意図したものではなく、その可能性も不明なままである。また特許文献3に開示された技術においては、銅表面を酸化して形成した酸化銅層を介して樹脂と接着する樹脂パッケージ製造において、導電性を確保するためにリード端子の銅表面の酸化銅層を除去する目的で洗浄液が使用されており、樹脂との接着強度を高めるためにむしろ酸化銅層を形成しており、洗浄によりレジストの密着性向上を図る課題は全く意図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−506295号公報
【特許文献2】特開2004−342632号公報
【特許文献3】特開2009−260280号公報
【0008】
本発明者による検討の結果、このような洗浄液を用いて銅膜の表面処理を行った基板に感光性レジスト膜を形成した場合、エッチングにおけるサイドエッチング量は、表面処理を施さなかったものと殆ど差が無く、従って、レジスト膜の銅表面への密着性向上には寄与しない事が判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基板表面の銅膜表面処理において、特に、LCDやELディスプレイ等の表示装置製造等における銅膜から銅配線を形成する工程で、銅膜表面にレジスト膜を形成する際、レジスト膜の銅膜表面への密着性を良好にし、エッチング液によるエッチング時のサイドエッチング量を低減し、レジストパターンに忠実な銅配線を形成するために行う銅膜表面処理のためのレジスト密着性向上剤及び銅配線製造方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有機酸を1.5〜20重量%、塩化物イオンを0.0007〜0.73重量%、アンモニウムイオンを0.00003〜3.7重量%及び残部の水を含有し、かつ、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が、0.1〜10の範囲であるレジスト密着性向上剤である。
本発明はまた、基板表面に形成した銅膜上に感光性レジスト膜を形成する工程、及び、感光性レジスト膜へパターンマスクを介して露光し、現像してなる、レジスト膜が除去された銅膜部分を、エッチング液でエッチングする工程、を含む銅配線製造方法において、銅膜上に感光性レジスト膜を形成する際、上記レジスト密着性向上剤を用いて、銅膜表面を処理した後、銅膜上に感光性レジスト膜を形成することを特徴とする銅配線製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の構成により、LCDやELディスプレイ等の表示装置等におけるエッチングによる銅配線形成に適用した場合に、銅膜とレジストとの密着性を向上させるので、エッチング液でのエッチング時のサイドエッチング量を低減することができ、レジストパターンに忠実な銅配線を製造する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、塩化物イオン0.066重量%、アンモニウムイオン0.034重量%に固定し、有機酸(クエン酸)濃度を変化させたレジスト密着性向上剤におけるサイドエッチング量の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のレジスト密着性向上剤は、有機酸を1.5〜20重量%、塩化物イオンを0.0007〜0.73重量%、アンモニウムイオンを0.00003〜3.7重量%及び水を含有し、かつ、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比、すなわち[塩化物イオンモル濃度]/[アンモニウムイオンモル濃度]で表される比の値が、0.1〜10の範囲である。
【0014】
上記有機酸としては、水溶性の有機酸であればよく、例えば、酢酸、蟻酸、酪酸等から選ばれる1価カルボン酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸等から選ばれる多価カルボン酸等を挙げることができ、これらの中には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等から選ばれる不飽和結合を含有するカルボン酸が含まれる。これらの有機酸は、1種類のみでもよく、複数種類を併用してもよい。これらのうち、好ましくは、クエン酸である。
【0015】
上記有機酸の配合量としては、レジスト密着性向上剤に対して1.5〜20重量%であり、好ましくは1.5〜17重量%であり、より好ましくは3〜7重量%である。1.5重量%未満及び20重量%を超過する場合においては、サイドエッチング量の低減に寄与せず、銅膜とレジストとの密着性向上効果は得られない。
【0016】
上記塩化物イオンにおいて、その供給源としては、例えば、塩酸、アルカリ化合物の塩酸塩等を挙げることができる。上記アルカリ化合物の塩酸塩としては、例えば、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機アルカリ化合物塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩等の有機アルカリ化合物塩酸塩等が挙げられる。これらの塩化物イオン供給源は、1種類のみでもよく、複数種類を併用してもよい。これらのうち、好ましくは、金属による汚染の問題やコストの面を考慮して、塩酸、塩化アンモニウムである。
【0017】
上記塩化物イオン供給源の配合量としては、レジスト密着性向上剤に対して塩化物イオンが0.0007〜0.73重量%となる配合量であり、好ましくは0.0007〜0.066重量%である。
【0018】
上記アンモニウムイオンにおいて、その供給源としては、例えば、アンモニア水、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のハロゲン化アンモニウム等が挙げられる。これらのアンモニウムイオン供給源は、1種類のみでもよく、複数種類を併用してもよい。これらのうち、好ましくは、アンモニア水、塩化アンモニウムである。
【0019】
上記アンモニウムイオン供給源の配合量としては、レジスト密着性向上剤に対してアンモニウムイオンが0.00003〜3.7重量%となる配合量であり、好ましくは0.00003〜0.74重量%である。
【0020】
上記塩化物イオン及び上記アンモニウムイオンの供給源としては、塩化アンモニウムが好ましく用いられる。
【0021】
アンモニウムイオン及び塩化物イオンが、上記範囲未満及び上記範囲を超過する場合においては、サイドエッチング量の低減に寄与せず、銅膜とレジストとの密着性向上効果は得られない。
【0022】
本発明のレジスト密着性向上剤において、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.1〜10の範囲であり、好ましくは、0.1〜5の範囲であり、より好ましくは0.5〜5の範囲である。アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.1〜10を外れる範囲で塩化物イオン又はアンモニウムイオンが含有される場合は、サイドエッチング量の低減に寄与せず、銅膜とレジストとの密着性向上効果は得られない。
【0023】
また本発明のレジスト密着性向上剤においては、有機酸が3〜7重量%であり、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.6〜4.9であり、塩化物イオン及びアンモニウムイオンの合計含有量が0.00076〜1.07重量%とすることが望ましい。
【0024】
本発明のレジスト密着性向上剤においては、上述の必須成分以外に、本発明の目的を達成する範囲で、その他成分を配合しても良い。上記その他成分としては、例えば、
界面活性剤等を挙げることができる。
【0025】
本発明のレジスト密着性向上剤において、水の配合量は、レジスト密着性向上剤に対して上記有機酸、塩化物イオン、アンモニウムイオン、該当する場合は更にその他の成分、の配合量の残部である。水としては、不純物の含有量ができるだけ少ないものが好ましく、一般には純水が使用される。
【0026】
好ましい配合例としては、例えば、以下のとおり。
(1)有機酸が1.5重量%以上20重量%以下、塩化物イオンが0.0007重量%以上0.73重量%以下、アンモニウムイオンが0.00003重量%以上3.7重量%以下、及び残部の水を含有し、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.1以上10以下の範囲であるレジスト密着性向上剤。
(2)有機酸が1.5重量%以上20重量%以下、塩化物イオンが0.0007重量%以上0.73重量%以下、アンモニウムイオンが0.00003重量%以上0.74重量%以下、及び残部の水を含有し、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.5以上5以下であるレジスト密着性向上剤。
(3)有機酸が1.5重量%以上17重量%以下、塩化物イオンが0.0007重量%以上0.73重量%以下、アンモニウムイオンが0.00003重量%以上3.7重量%以下、及び残部の水を含有し、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.1以上10以下であるレジスト密着性向上剤。
(4)有機酸が3重量%以上7重量%以下であり、塩化物イオンとアンモニウムイオンの合計量が0.00076〜1.07重量%であり、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.6以上4.9以下であるレジスト密着性向上剤。
(5)有機酸が1.5重量%以上17重量%以下であり、塩化物イオンとアンモニウムイオンの合計量が0.00077〜4.42重量%であり、アンモニウムイオンに対する塩化物イオンのモル濃度比が0.1以上5以下であるレジスト密着性向上剤。
【0027】
本発明のレジスト密着性向上剤は、上記各成分の所要量を常法により混合、例えば、常温(例えば、25℃)で撹拌混合、することにより調製する事ができる。
【0028】
本発明のレジスト密着性向上剤は、銅表面のレジスト密着性向上を目的とする用途に使用可能である。具体的には、例えば、基板表面に形成した銅膜上に感光性レジスト膜を形成する工程、及び、感光性レジスト膜へパターンマスクを介して露光し、現像してなる、レジスト膜が除去された銅膜部分を、エッチング液でエッチングする工程、を含む銅配線製造方法、詳細には、例えば、基板表面に形成した銅膜上への感光性レジスト膜の形成工程、感光性レジスト膜へのパターンマスクを介しての露光工程、露光後のレジスト膜の現像工程、及び、現像によりレジスト膜が除去された銅膜部分のエッチング液によるエッチング工程を含む銅配線製造方法、において、銅膜上への感光性レジスト膜を形成する前に用いて、銅膜表面を洗浄した後、銅膜上に感光性レジスト膜を形成することで、基板にパターニングする際にレジストと銅膜との密着性を向上させ、エッチングによるサイドエッチング量を低減させることでレジストパターンを忠実に再現した銅配線製造方法を構成することができる。この場合において、基板表面に形成した銅膜上へ感光性レジスト膜を形成する工程、及び、感光性レジスト膜へパターンマスクを介して露光した後、現像してなる、レジスト膜が除去された銅膜部分をエッチング液でエッチングする工程等は、それぞれ、公知の工程を採用することができる。
【0029】
また、本発明のレジスト密着性向上剤を用いて、表面処理をした銅膜上に感光性レジスト膜を形成し、エッチング液でエッチングすることにより銅配線を形成する銅配線形成方法において、感光性レジストの銅膜表面への密着性を良好にするために、銅膜表面に感光性レジストを塗布する前に予め行う銅膜表面処理を、レジスト密着性向上剤で銅膜表面を処理することにより、密着性を向上させた銅配線形成方法を構成することができる。感光性レジストの銅膜表面への密着性を良好にするために予め行う銅膜表面処理方法として、本発明のレジスト密着性向上剤を用いることは、本発明者により初めて達成された手法である。
【0030】
これらの場合において、銅膜の処理条件としては、レジスト密着性向上剤の温度は、室温(例えば25℃)でもよく又は加熱(例えば30〜40℃)してもよく、基板処理時間は、一般に、例えば、1〜10分である。処理は、浸漬方法、浸漬撹拌方法、シャワー方法等の方法を用いることができる。また、処理が終了後、必要に応じて純水によるリンス工程でレジスト密着性向上剤を洗浄してもよい。
【0031】
本発明のレジスト密着性向上剤、それを用いた本発明の銅配線製造方法、銅配線形成方法は、いずれも、LCDやELディスプレイ等の表示装置製造等における大型基板の銅配線形成に好適に適用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
表1に実施例1〜19及び表2に比較例1〜20に用いた各評価液の組成、及びこれらの評価液を用いて以下の評価を行ったその結果を示した。
【0034】
1.サイドエッチング量測定
Si基板上にTi膜を形成し、さらに銅膜(1000Å)を形成した基板を、2カ月間、23℃で静置し、銅表面に汚染を付与した。その基板を35℃の評価液に2分間浸漬させた後、常法によって、感光性レジスト膜を形成し、マスクを介して露光後、レジストの現像を行い、レジストが除去された銅膜部分のエッチング液によるエッチングを施した。得られたエッチング形状について、走査型電子顕微鏡を用いた断面形状観察により、エッチングによるサイドエッチング量を比較した。なお、サイドエッチング量は比較例1(評価液は純水)と比較して相対的な数値を以下記号で記載した。
AAA:比較例1の60%未満のサイドエッチング量
AA:比較例1の60%以上、80%未満のサイドエッチング量
A:比較例1の80%以上、100%未満のサイドエッチング量
B:比較例1の100%以上、120%未満のサイドエッチング量
C:比較例1の120%以上のサイドエッチング量
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例1〜19の結果より、本発明のレジスト密着性向上剤は、比較例1と比較するとサイドエッチングの量が低減する事から、銅膜とレジストとの密着性向上に寄与する事が判明した。一方、比較例2〜20に示す組成物においては、何れの場合においても、比較例1と比較するとサイドエッチング量がほぼ同程度又はより大きくなった事から、銅膜とレジストとの密着性に影響が無いか又は銅膜とレジストとの密着性を悪化させる事が判明した。
【0038】
また、図1に塩化物イオン0.066重量%、アンモニウムイオン0.034重量%に固定し、有機酸(クエン酸)濃度を変化させた場合におけるサイドエッチング量の変化を示した。図1よりクエン酸濃度が1.5重量%以上20重量%以下、塩化物イオン濃度が0.066重量%、アンモニウムイオン濃度が0.034重量%において、サイドエッチング量が比較例1(評価液は純水)と比較して相対的に低減する事から、レジスト密着性が向上したことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のレジスト密着性向上剤は、銅膜とレジストとの密着性を向上させる事によりエッチングにおけるサイドエッチング量を低減させる事が可能な為、LCDやELディスプレイ等の製造工程において、オーバーエッチングやレジストの剥がれに起因する製品不良を抑制でき、歩留まりを向上させる。
図1