(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気調和機では、背面側補助熱交換器が背面側主熱交換器よりも空気の流れに直交する方向の長さが異なるため、それらを組み合わせた背面側の熱交換器は、背面側主熱交換器と背面側補助熱交換器とが重なる通風抵抗の大きい部分と背面側主熱交換器のみの通風抵抗の小さい部分が存在する。このため、背面側の熱交換器の通風抵抗が不均一となり、熱交換器を通過する空気の風速分布に偏りが生じ、熱交換性能の低下や、騒音の増大などの性能低下を引き起こす可能性がある。
【0005】
図8は、通風抵抗の不均一とそれに伴う風速分布の不均一を示す説明図であり、背面側主熱交換器121と、背面側補助熱交換器122とを、2つの平行な流路壁面126で構成された流路内に設置した場合の単純化モデルである。なお、図中の太実線の矢印は、空気の流線を示している。
図8に示すように、背面側の熱交換器では、背面側補助熱交換器122が背面側主熱交換器121の風上側の一部にのみ設置されているため、通風抵抗の大きな部分と、通風抵抗の小さな部分とが存在することになる。一般的に、空気は通風抵抗の小さな部分の方が流れ易いため、図中に示すとおり、流線が密になっている部分、すなわち風速が大きい部分と、流線が疎になっている部分、すなわち風速が小さい部分が発生する。つまり、風速分布が偏ることになる。
【0006】
図9は、通風抵抗の不均一を改善して風速分布を改善する第1参考図である。
図9では、風速分布の偏りを低減するための方法を示し、
図8において、背面側主熱交換器121の風上側の、背面側補助熱交換器122が存在しない部分に背面側補助熱交換器122と同じ通風抵抗を持つ抵抗体127(例えば、スポンジ状のもの)を設置したものである。これにより、背面側主熱交換器121と、背面側補助熱交換器122と、抵抗体127とで構成される系の通風抵抗が一様になり、風速分布の偏りを低減できる。
【0007】
図10は、通風抵抗の不均一を改善して風速分布を改善する第2参考図である。
図10では、風速分布の偏りを低減するための別の方法を示し、
図9の抵抗体127に替えて、背面側補助熱交換器122が存在しない側の流路壁面126の、上流側に突起部126aを設けるとともに下流側に突起部126bを設け、背面側補助熱交換器122が存在しない部分、すなわち図示右側の通風抵抗を大きくすることで、熱交換器を通過する風速分布の偏りを低減するものである。すなわち、
図10では、流路壁面126の形状を工夫することで、風速分布の偏りを低減することができる。また、この場合には、
図9に示すような抵抗体127を追加する必要が無いので、より低コストに風速分布の偏りを低減することができる。
【0008】
しかしながら、
図10に記載の風速分布の偏りを低減する方法では、製造上のバラツキにより、背面側補助熱交換器122のフィンの配列ピッチが変化する場合などにおいて、風速分布を安定的に低減できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、熱交換器内部の風速分布の偏りを低減し、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも上面に空気吸込口が設けられ、下部に空気吹出口が設けられた筐体と、前記筐体内に設けられた貫流ファンと、前記空気吸込口から前記貫流ファンまでの風路の途中に設けられ、前記貫流ファンの回転軸方向に積層された複数のフィンと、前記複数のフィンを貫通する伝熱管とで構成された熱交換器と、を備えた室内機を有し、前記筐体の前記風路は、前記熱交換器の後方に位置する背面側壁面部と、前記空気吹出口と連続して形成され、前記貫流ファンと前記熱交換器との間に配置されるフロントノーズ部およびバックノーズ部と、を備え、前記熱交換器は、前面側熱交換器と背面側熱交換器とで略逆V字状に構成されるとともに、前記フロントノーズ部および前記バックノーズ部を含めて前記貫流ファンを覆うように配設され、前記背面側熱交換器は、空気の流れ方向の伝熱管の配列数がそれぞれ一定の背面側主熱交換器および背面側補助熱交換器を有し、前記背面側補助熱交換器が前記背面側主熱交換器の風上側に位置して前記背面側壁面部と離間して配置され、前記背面側補助熱交換器の下縁部から前記伝熱管の配列方向に対して直交する方向に沿って前記背面側壁面部までの距離をL1とし、前記背面側補助熱交換器と前記背面側壁面部との間の最短距離をL2とし、前記背面側主熱交換器と前記バックノーズ部の先端との間の距離をL3としたときに、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たしていることを特徴とする。
また本発明は、少なくとも上面に空気吸込口が設けられ、下部に空気吹出口が設けられた筐体と、前記筐体内に設けられた貫流ファンと、前記空気吸込口から前記貫流ファンまでの風路の途中に設けられ、前記貫流ファンの回転軸方向に積層された複数のフィンと、前記複数のフィンを貫通する伝熱管とで構成された熱交換器と、を備えた室内機を有し、前記筐体の前記風路は、前記熱交換器の後方に位置する背面側壁面部と、前記空気吹出口と連続して形成され、前記貫流ファンと前記熱交換器との間に配置されるフロントノーズ部およびバックノーズ部と、を備え、前記熱交換器は、前面側熱交換器と背面側熱交換器とで略逆V字状に構成されるとともに、前記フロントノーズ部および前記バックノーズ部を含めて前記貫流ファンを覆うように配設され、前記背面側熱交換器は、空気の流れ方向の伝熱管の配列数が一定(略一定)の第1熱交換部と、前記第1熱交換部の風下側を基準に前記背面側壁面部に近い側に位置して前記第1熱交換部の伝熱管の配列数よりも少ない配列数の第2熱交換部と、を備え、前記第2熱交換部の風上側の前記第1熱交換部の下縁部から前記伝熱管の配列方向に対して直交する方向に沿って前記背面側壁面部までの距離をL1とし、前記第1熱交換部と前記背面側壁面部との間の最短距離をL2とし、前記背面側熱交換器と前記バックノーズ部の先端との間の距離をL3としたときに、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換器内部の風速分布の偏りを低減し、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。まず、空気調和機100の全体構成について
図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクルの構成を示す図である。
本実施形態に係る空気調和機100は、室外機1と室内機7とが、接続配管40,40によって接続されることで構成されている。室外機1は、圧縮機2と、四方弁3と、室外熱交換器4と、プロペラファン5と、絞り装置6と、を備えている。室内機7は、室内熱交換器8と、貫流ファン9と、を備えている。
【0015】
空気調和機100において、冷房運転をする場合を例に挙げて、各要素の作用を説明する。冷房運転の場合には、圧縮機2で圧縮された高圧のガス状冷媒は、四方弁3を通って室外熱交換器4に流れ、外気に放熱することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。液状冷媒は、絞り装置6の作用で減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、接続配管40を通じて室内機7へ流れる。室内機7に入った冷媒は、室内熱交換器8で室内空気の熱を吸熱することで蒸発する。室内熱交換器8で蒸発した冷媒は、接続配管40を通じて、室外機1へ戻り、四方弁3を通って再び圧縮機2で圧縮される。
【0016】
暖房運転の場合は、四方弁3により、冷媒流路が切り替えられ、圧縮機2で圧縮された高圧のガス状冷媒は、四方弁3および接続配管40を通って室内機7に流れる。室内機7に入った冷媒は、室内熱交換器8で室内空気に放熱することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。高圧の液状冷媒は、接続配管40を通って室外機1に流れる。室外機1に入った高圧の液状冷媒は、絞り装置6の作用で減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、室外熱交換器4に流れ、室外空気の熱を吸熱することで蒸発し、ガス状冷媒となる。室外熱交換器4でガス状となった冷媒は、四方弁3を通って再び圧縮機2で圧縮される。
【0017】
図2は、一般的なクロスフィンチューブ型の熱交換器の構造を示す概略図である。本実施形態での熱交換器(
図1の室外熱交換器4および室内熱交換器8)は、多数のアルミニウム製のフィン11を、U字状に曲げられた銅製の伝熱管12が貫く構造となっている。
【0018】
フィン11と伝熱管12とは、フィン11に挿入された伝熱管12を液圧または機械的に拡管することにより密着している。また、伝熱管12の端部には、他の伝熱管12の端部と継手部品(リターンベンド)13を介して溶接などで接続され、冷媒の流路を構成している。
【0019】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る空気調和機に用いられる室内機を示す側面断面図であり、
図4は、第1実施形態に係る背面側熱交換器と筐体との位置関係の詳細を示す要部を拡大した側面断面図である。
【0020】
図3に示すように、室内機7は、室内熱交換器8A、貫流ファン9、筐体10などで構成されている。
【0021】
筐体10には、前面に空気吸込口23が、上面に空気吸込口24が、下部に空気吹出口25がそれぞれ設けられている。また、筐体10内には、貫流ファン9が配設されており、空気吸込口23,24から貫流ファン9までの風路の途中にクロスフィンチューブ型の室内熱交換器8Aが配設されている。なお、
図3に示す符号19は、エアフィルタ(不図示)の枠体を示している。
【0022】
室内熱交換器8Aは、前面側熱交換器20と、背面側主熱交換器21(背面側熱交換器)と、背面側補助熱交換器22(背面側熱交換器)とで構成されている。また、前面側熱交換器20と背面側主熱交換器21は、貫流ファン9をその上部から覆うように略逆V字状に配設されている。
【0023】
貫流ファン9は、複数枚のファンブレード9a(一部のみ図示)と円環状の支持板9bとを有し、支持板9bにファンブレード9aが周方向に等間隔に配置されることで構成されている。また、貫流ファン9は、略筒形状を呈し、室内熱交換器8Aに沿って(
図3の紙面垂直方向に沿って)配設されている。なお、貫流ファン9は、モータM(
図1参照)の駆動力によって、
図3において矢印Wで示す時計回り方向に回転するように構成されている。
【0024】
筐体10は、バックケーシング14およびフロントケーシング15を備えている。また、筐体10の前面には、図示しないモータの駆動力によって、フロントパネル16が空気吸込口23を開閉するように回動自在に設けられている。また、筐体10の空気吹出口25には、風向板17が空気吹出口25を図示しないモータの駆動力によって開閉するように回動自在に設けられている。
【0025】
バックケーシング14は、貫流ファン9の背面側に位置するとともに、空気吹出口25に連続して形成され、空気の流路壁面としての湾曲面14sを有している。この湾曲面14sは、凹面が前方を向くように配設され、空気吹出口25の縁部から貫流ファン9に向けて徐々に近づくように湾曲している。
【0026】
また、バックケーシング14は、湾曲面14sの上端部(先端部)14s1から、貫流ファン9と室内熱交換器8Aとの間に突出するバックノーズ部14a(リアガイダともいう)を有している。また、バックノーズ部14aの貫流ファン9側の面は、湾曲面14sと面一となるように形成されている。
【0027】
なお、バックノーズ部14aは、図示していないが、貫流ファン9の軸方向(紙面垂直方向)に沿って、貫流ファン9の一端から他端まで対向するように延びている。
【0028】
また、バックケーシング14は、バックノーズ部14aの後方に、鉛直方向上方に延びる流路壁面14b(背面側壁面部)を有している。なお、流路壁面14bの上部は、前方に突出する凸状の流路壁面14b1となっている。この流路壁面14b1の裏面側には、室内機7を固定するための据付パネルのフック(図示せず)を掛止するための掛止穴が形成されている。
【0029】
また、バックケーシング14は、湾曲面14sの上端部14s1(バックノーズ部14aの基端部)と流路壁面14bの下端部との間に、背面側主熱交換器21の一部が挿入される凹部14cが形成されている。また、凹部14cの底部には、上方に突出して背面側主熱交換器21の下端部を支持する凸条の支持部14dが形成されている。
【0030】
フロントケーシング15は、貫流ファン9の前方に位置し、前面側熱交換器20の下方近傍において、空気の流路壁面として、空気吹出口25に連続して貫流ファン9に向けて延びる壁面15sを有している。また、フロントケーシング15の先端15s1には、略矩形状に曲げ形成されたフロントノーズ部15a(スタビライザともいう)が一体に形成されている。このフロントノーズ部15aは、貫流ファン9の軸方向に沿って、貫流ファン9の一端から他端まで対向するように延びている。
【0031】
貫流ファン9は、バックノーズ部14aとフロントノーズ部15aとで挟まれるように配置されている。すなわち、貫流ファン9は、バックノーズ部14aの先端14a1とフロントノーズ部15aの先端15a1から、貫流ファン9の略半円部分が突出するように配置されている。
【0032】
室内熱交換器8Aの前面側熱交換器20は、貫流ファン9の上方からフロントノーズ部15aの先端15a1よりも下方に延び、当該前面側熱交換器20の下端部20aがフロントケーシング15の上向きの内壁面15s2に当接するように構成されている。
【0033】
図4に示すように、室内熱交換器8Aの背面側主熱交換器21は、側面視略長方形状を呈し、その長手方向が貫流ファン9(
図3参照)の上方から下方に向けて流路壁面14bに向けて傾斜し、さらに下端部21aが流路壁面14bに接している。また、背面側主熱交換器21は、矢印Aで示す空気の流れ方向(配列方向)の伝熱管12の配列数が3列(3段)となるように構成されている。つまり、3列とは、風上側に位置する1列と、風下側に位置する1列と、これらの中間に位置する1列である。
【0034】
なお、本実施形態では、背面側主熱交換器21の下端部21aの角部が流路壁面14bと平行になるように切り欠かれ、背面側主熱交換器21が流路壁面14bに面で接するように構成されている。
【0035】
また、背面側主熱交換器21の下端部21aは、凹部14c内に挿入され、背面側主熱交換器21の風下側(下流側)の縁部21bとバックノーズ部14aとの間に狭隘部S1が形成されるように構成されている。
【0036】
また、背面側補助熱交換器22の下縁部22a1は、背面側主熱交換器21を挟んで、バックノーズ部14aの先端14a1と対応する位置に形成されている。
【0037】
図3に戻って、室内熱交換器8Aが、フロントノーズ部15aおよびバックノーズ部14aを含めて貫流ファン9を覆い、かつ、前面側熱交換器20の下端部20aおよび背面側主熱交換器21が筐体10(内壁面15s2および流路壁面14b)に当接するように配設されている。これにより、貫流ファン9を作動させたときに、空気吸込口23,24から流入した室内空気が、必ず室内熱交換器8Aを通り、室内熱交換器8Aで内部の冷媒と熱交換し、空気吹出口25から吹き出され、空調機能を実現する。
【0038】
図4に示すように、室内熱交換器8Aの背面側補助熱交換器22は、いわゆるサブクーラとして機能するものであり、背面側主熱交換器21の風上側(空気の流れの上流側)に配設されている。この背面側補助熱交換器22は、矢印Aで示す空気の流れ方向の伝熱管12の配列数が1列となるように構成されている。
【0039】
また、背面側補助熱交換器22は、背面側主熱交換器21の長手方向(
図3の側面視)よりも短く形成され、背面側主熱交換器21の風上側の一部に重ねられている。また、背面側補助熱交換器22は、流路壁面14bから離間している。なお、背面側補助熱交換器22は、流路壁面14bに近い側の端部(下端部22a)の角部が、流路壁面14bと平行になるように切り欠かれている。
【0040】
このように、背面側補助熱交換器22と流路壁面14bとは接していないため、これらを通過する空気の経路は、矢印Aで示す背面側補助熱交換器22と背面側主熱交換器21の両方を通過するものと、矢印Bで示す背面側主熱交換器21のみを通過するものが存在する。
【0041】
ところで、第1実施形態では、背面側主熱交換器21に背面側補助熱交換器22が存在しない部分の背面側主熱交換器21の上流側には、流路壁面14bと背面側補助熱交換器22との間に狭隘部S2が形成されている。また、背面側主熱交換器21の下流側には、バックノーズ部14aと、背面側主熱交換器21との間に狭隘部S1が形成されている。これら2つの狭隘部S1,S2は、空気の流れを阻害する通風抵抗になっていると考えられるので、これら2つの狭隘部S1,S2の通風抵抗の合計と、背面側補助熱交換器22の通風抵抗を一致させることにより、背面側主熱交換器21および背面側補助熱交換器22を通過する空気(矢印A)の風速分布と、背面側主熱交換器21のみを通過する空気(矢印B)の風速分布との偏りを低減できる。
【0042】
そこで、第1実施形態では、背面側主熱交換器21の上流側の背面側補助熱交換器22が重ならない部分である、背面側補助熱交換器22の下縁部22a1から伝熱管12の配列方向(矢印A,Bの方向)に直交する方向に沿って流路壁面14bまでの距離をL1とし、背面側主熱交換器21の上流側の狭隘部S2の寸法、すなわち、背面側補助熱交換器22と流路壁面14bとの最短距離をL2とし、背面側主熱交換器21の下流側の狭隘部S1の寸法、すなわち、背面側主熱交換器21とバックノーズ部14aの先端14a1との間の距離をL3としたときに、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たすように設定したものである。
【0043】
図5は、L3/L1とL2/L1との関係を示した図である。
図5は、2つの狭隘部S1,S2(
図4参照)の通風抵抗の合計が、背面側補助熱交換器22の通風抵抗と一致する条件を、計算により求めたものである。この計算では、伝熱管12の直径(外径φ)や、フィン11の配列ピッチPf(隣り合うフィン11の間隔)について異なる様々な背面側補助熱交換器を適用した場合について行ったものである。なお、この凡例内の数値の単位はmmである。また、
図5の縦軸は、最短距離L2を距離L1で無次元化したものであり、
図5の横軸は、距離L3を距離L1で無次元化したものである。
【0044】
図5に示す各種の線は、2つの狭隘部S1,S2の通風抵抗の合計が、背面側補助熱交換器22の通風抵抗と一致する場合、すなわち風速分布が低減する条件を示している。
図5に示すように、L3/L1が0.55以下の領域では、背面側補助熱交換器22の仕様によって、最適なL2/L1が大きく異なるが、L3/L1が0.55を超える領域では、最適なL2/L1は約0.4〜0.6の範囲に収斂していることが確認できる。
【0045】
このように、前記距離L1,L2,L3の関係が、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)となるように設定することにより、様々な背面側補助熱交換器22の仕様に対しても安定的に風速分布の偏りを低減できる。よって、空調能力の大小に応じて背面側補助熱交換器22の伝熱管12の外径φや、フィン11の配列ピッチPfを変更した場合であっても、風速分布の偏りを安定的に低減できる。また、製造上のバラツキにより、背面側補助熱交換器22のフィン11の配列ピッチPfを変更する場合などにおいても、安定的に風速分布を低減できる。すなわち、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機100(
図1参照)を提供することができる。
【0046】
ちなみに、第1実施形態では、背面側補助熱交換器22の伝熱管12の外径φは7mmで、フィン11の配列ピッチPfは1.5mm、L2/L1=0.48、L3/L1=0.62である。このように、距離L1,L2,L3の関係を設定することにより、背面側主熱交換器21と背面側補助熱交換器22を流れる空気の風速分布の偏りを低減し、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機100を提供することができる。
【0047】
なお、
図5において、背面側補助熱交換器22の伝熱管12の外径φが7mmで、フィン11の配列ピッチPfが1.5mmの場合、L3/L1を0.45としたときには、L2の値をかなり大きな値に設定しなければならなくなる。
【0048】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る空気調和機に用いられる室内機を示す側面断面図であり、
図7は、第2実施形態に係る背面側熱交換器と筐体との位置関係の詳細を示す
図6の一部を拡大した側面断面図である。
【0049】
図6に示すように、第2実施形態は、第1実施形態の室内熱交換器8Aに替えて室内熱交換器8Bとしたものである。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。室内熱交換器8Bは、前面側熱交換器20と、背面側熱交換器31とで構成されている。
【0050】
図7に示すように、背面側熱交換器31は、空気の流れ方向(矢印A、配列方向)の伝熱管12の配列数が4列の第1熱交換部31Aと、第1熱交換部31Aの風下側(下流側)を基準にして流路壁面14bに近い側に位置して第1熱交換部31Aの伝熱管12の配列数よりも少ない配列数の第2熱交換部31Bと、を備えている。このように構成することにより、第1実施形態では、背面側主熱交換器21(
図4参照)と背面側補助熱交換器22(
図4参照)とを別個に形成して組み付けていたものを、第2実施形態では、両者を一体に構成することで、空気調和機100(
図1参照)の製造工程を簡略化できる。
【0051】
すなわち、第1熱交換部31Aの伝熱管12の配列数は、4列となるように設定され、第2熱交換部31Bの伝熱管12の配列数は、3列となるように設定され、第2熱交換部31Bの配列数が第1熱交換部31Aの配列数よりも少なくなるように構成されている。
【0052】
また、背面側熱交換器31は、第1熱交換部31Aから第2熱交換部31Bにかけて風上側の位置が空間的に低くなる部分、すなわち、空気の流れ方向の伝熱管12の配列数が4列から3列に変化する部分を有する。よって、第2実施形態の場合においても第1実施形態と同様に、背面側熱交換器31には、矢印Aで示す方向に空気が流れる通風抵抗の大きな部分と、矢印Bで示す方向に空気が流れる通風抵抗の小さな部分とが存在する。このため、背面側熱交換器31のみで考えれば、第1実施形態で説明した場合と同様に、背面側熱交換器31を通過する空気の風速が不均一となる可能性がある。
【0053】
そこで、第2実施形態では、この風速の不均一を低減するため、背面側熱交換器31の伝熱管12の配列数が少なくなっている部分、すなわち伝熱管12の配列数が3列の部分において風上側に突出する第1熱交換部31Aの下縁部31aから空気の流れ方向(矢印B)に直交する方向に沿って流路壁面14bまでの距離L1、背面側熱交換器31の、空気の流れ方向(矢印A)の伝熱管12の配列数が多い部分、すなわち伝熱管12の配列数が4列の部分と、流路壁面14bとの最短距離L2、背面側熱交換器31と、バックノーズ部14aの先端14a1との距離L3の関係が、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たすように構成されている。具体的にはL2/L1=0.48、L3/L1=0.69となっている。
【0054】
これにより、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、背面側熱交換器31を流れる空気の風速分布の偏りが低減され、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機100(
図1参照)を提供することが可能になる。