(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935185
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】雨水浸透枡
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
E03F1/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-162984(P2012-162984)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-20180(P2014-20180A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌広
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】荒原 隆文
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−032025(JP,A)
【文献】
特開2006−214103(JP,A)
【文献】
特開2012−057388(JP,A)
【文献】
特開平09−242160(JP,A)
【文献】
特開2012−052414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
E03B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され、雨水を内部に貯留して徐々に地中に浸透させるべく使用される雨水浸透枡であって、
上記雨水を内部に貯留するべく中空状とされた枡本体と、該枡本体を覆う透水シートとを備え、
上記枡本体は、上面の周縁部に嵌合溝が凹状に形成されている底板と、該底板の周縁部に立設される筒状の周壁体とを有しており、組み立てに際して該嵌合溝の内側に該周壁体の下端部が嵌入されるように構成されたものであり、
また上記枡本体にあっては該枡本体の内部に貯留された雨水を外部へ排出するべく、上記周壁体に複数の壁部透水孔が貫通形成されるとともに、上記底板に複数の底部透水孔が上記嵌合溝の内側にのみ貫通形成されており、
更に上記枡本体にあっては、上記嵌合溝の内側に上記周壁体の下端部が嵌入された状態における上記底部透水孔を介した上記枡本体の内部から外部への雨水の排出を確保するべく、底部透水孔開放手段が設けられており、
上記透水シートは、透水性を有する材料を用いて形成され、上記底板を覆うべく対応する部位を有しておらず、上記周壁体を覆うべく対応する部位のみによって構成されたものであり、
上記透水シートにあっては、上記周壁体の外面又は内面を被覆する周壁被覆部と、該周壁被覆部の下端から延設されて上記周壁体の下端で該周壁体の内面又は外面に折り返される折返部と、を有しており、
上記枡本体の組み立てに際して上記透水シートの上記折返部が上記周壁体の下端部とともに上記嵌合溝の内側に嵌入されることで、上記折返部で上記底部透水孔を上記嵌合溝の内側から覆うように構成した
ことを特徴とする雨水浸透枡。
【請求項2】
上記底部透水孔開放手段は、上記周壁体の横断面形状を波形状としたうえで、該波形状で該周壁体の内面から外面へ向かって凹む部位に、上記底部透水孔の位置を対応させて構成される
請求項1に記載の雨水浸透枡。
【請求項3】
上記底部透水孔開放手段は、上記周壁体を、その横断面形状を波形状とするか、または平板状とし、かつ内面側の少なくとも下端部に上記底板の嵌合溝の内側に入り込むリブが設けられているものとしたうえで、該リブの上記底部透水孔と対応する位置に、該底部透水孔と上記枡本体の内部とを連通させる連通孔を貫通形成して構成される
請求項1に記載の雨水浸透枡。
【請求項4】
上記枡本体は、更に上記周壁体の上端部に取り付けられる天板を有しており、
上記天板には、上記枡本体の内部に雨水を導くための導水孔が設けられるとともに、上記周壁体の上端部が嵌入される嵌入溝が下面の周縁部に凹状に形成されており、
上記透水シートには、上記周壁被覆部の上端から延設されて上記周壁体の上端で該周壁体の内面又は外面に折り返される上側折返部を設け、
上記枡本体の組み立てに際して上記透水シートの上記上側折返部が上記周壁体の上端部とともに上記嵌入溝の内側に嵌入されるように構成した
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の雨水浸透枡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を一時的に貯留し、その貯留した雨水を地中に浸透させて排出する雨水浸透枡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような雨水浸透枡として、コンクリート製の重量が嵩むものに代わり、例えば特許文献1に示されるような、合成樹脂製の軽量なものが提供されている。この特許文献1には、合成樹脂製の面板部材と側板部材とを、凹凸嵌合によって結合する構成とすることにより、嵩張ることのない態様で輸送し、輸送コスト低減を図ることが開示されている。
また上記のような合成樹脂製の雨水浸透枡として、より簡易な構成とするべく、底板と該底板の周縁に立設された複数の側板からなる周壁により、枡本体を中空の箱状とし、該枡本体の内部に雨水を一時的に貯留するとともに、該底板や該周壁に透水孔を貫設しておき、該透水孔から雨水を徐々に地中に浸透させるように構成したものが提供されている。このような雨水浸透枡においては、透水孔から枡本体の内部に土砂等の異物が侵入することを防止するため、不織布等からなる透水シートで枡本体の全体を被覆している。この透水シートは、主に一枚の大きなシート材で構成され、いわば風呂敷のように用いることで枡本体の全体を包み込むものであるが、上記雨水浸透枡を設置するべく地面に掘削された狭小な穴内で枡本体を包み込む作業が極めて煩雑となっていた。
そこで、特許文献2に示されるように、透水シートを、底板を被覆する底板用透水シートと、周壁を被覆する周壁用透水シートとに分けることで、枡本体を包み込む作業を簡易化した雨水浸透枡が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3400439号公報
【特許文献2】特開2007−32025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の透水シートを底板用と周壁用に分けた雨水浸透枡は、穴の底に底板用透水シートを敷設し、該底板用透水シート上に底板を置き、周壁を該底板に取り付けるという設置作業を必要とするが、底板用透水シートと底板の位置がずれることがあり、狭小な穴内での位置の修正が煩雑であるという問題がある。また上記雨水浸透枡を工場内等である程度組み立てた状態とし、これを施工現場に搬送することも考えられたが、浸透枡の保管時や搬送時に透水シートが破れないように、該透水シートを別途包装材で保護する必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、設置作業を簡単で容易なものとすることが可能な雨水浸透枡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の雨水浸透枡は、地中に埋設され、雨水を内部に貯留して徐々に地中に浸透させるべく使用される雨水浸透枡であって、上記雨水を内部に貯留するべく中空状とされた枡本体と、該枡本体を覆う透水シートとを備え、上記枡本体は、上面の周縁部に嵌合溝が凹状に形成されている底板と、該底板の周縁部に立設される筒状の周壁体とを有しており、組み立てに際して該嵌合溝の内側に該周壁体の下端部が嵌入されるように構成されたものであり、また上記枡本体にあっては該枡本体の内部に貯留された雨水を外部へ排出するべく、上記周壁体に複数の壁部透水孔が貫通形成されるとともに、上記底板に複数の底部透水孔が上記嵌合溝の内側にのみ貫通形成されており、更に上記枡本体にあっては、上記嵌合溝の内側に上記周壁体の下端部が嵌入された状態における上記底部透水孔を介した上記枡本体の内部から外部への雨水の排出を確保するべく、底部透水孔開放手段が設けられており、上記透水シートは、透水性を有する材料を用いて形成され、上記底板を覆うべく対応する部位を有しておらず、上記周壁体を覆うべく対応する部位のみによって構成されたものであり、上記透水シートにあっては、上記周壁体の外面又は内面を被覆する周壁被覆部と、該周壁被覆部の下端から延設されて上記周壁体の下端で該周壁体の内面又は外面に折り返される折返部と、を有しており、上記枡本体の組み立てに際して上記透水シートの上記折返部が上記周壁体の下端部とともに上記嵌合溝の内側に嵌入されることで、上記折返部で上記底部透水孔を上記嵌合溝の内側から覆うように構成したことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の雨水浸透枡の発明において、上記底部透水孔開放手段は、上記周壁体の横断面形状を波形状としたうえで、該波形状で該周壁体の内面から外面へ向かって凹む部位に、上記底部透水孔の位置を対応させて構成されることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の雨水浸透枡の発明において、上記底部透水孔開放手段は、上記周壁体を、その横断面形状を波形状とするか、または平板状とし、かつ内面側の少なくとも下端部に上記底板の嵌合溝の内側に入り込むリブが設けられているものとしたうえで、該リブの上記底部透水孔と対応する位置に、該底部透水孔と上記枡本体の内部とを連通させる連通孔を貫通形成して構成されることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の雨水浸透枡の発明において、上記枡本体は、更に上記周壁体の上端部に取り付けられる天板を有しており、上記天板には、上記枡本体の内部に雨水を導くための導水孔が設けられるとともに、上記周壁体の上端部が嵌入される嵌入溝が下面の周縁部に凹状に形成されており、上記透水シートには、上記周壁被覆部の上端から延設されて上記周壁体の上端で該周壁体の内面又は外面に折り返される上側折返部を設け、上記枡本体の組み立てに際して上記透水シートの上記上側折返部が上記周壁体の上端部とともに上記嵌入溝の内側に嵌入されるように構成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕
本発明の雨水浸透枡は、周壁体の下端部が嵌入される嵌合溝を底板の周縁部に設け、枡本体の内部に貯留された雨水を外部へ排出する底部透水孔を、該嵌合溝の内側にのみ形成している。また透水シートには、周壁体の外面又は内面を被覆する周壁被覆部と、周壁体の下端で該周壁体の内面又は外面に折り返される折返部とが設けられている。該透水シートの折返部は、周壁体の下端部とともに上記嵌合溝に嵌入され、該嵌合溝の内側から該底部透水孔を覆うように構成されている。従って本発明の雨水浸透枡は、該透水シートの折返部により、底部透水孔を介した枡本体の内部から外部への雨水の排出を許容しつつ、枡本体の外部から内部への土砂等の侵入を規制することができるため、底部透水孔を枡本体の外部から透水シートで覆う必要がなく、透水シートとして枡本体の底板を覆うべく対応する部位を有していない。そして、本発明の雨水浸透枡によれば、底板用の透水シートを敷設する作業を省略することができ、また設置時等に透水シートと底板の位置ずれも気にしなくてよいため、設置作業が簡単で容易なものとすることができる。
更に本発明の雨水浸透枡は、工場等で組み立てた状態とし、これを施工現場にてそのまま設置できるという利点を有する。すなわち、従来の雨水浸透枡であれば、少なくとも穴の底で底板用の透水シートを敷設する作業を要したが、本発明の雨水浸透枡は底板用の透水シートを必要としないため、施工現場に搬入された雨水浸透枡を略そのまま穴内に設置することができる。
組み立てた状態の雨水浸透枡を保管や搬送等する場合、透水シートは、雨水浸透枡の底面や底部の角部が何れかの箇所に当たったり擦れたりすることで破れることが多い。本発明の雨水浸透枡において、周壁体は、その下端部が底板の周縁部に設けられた嵌合溝に嵌入される構成となっており、周壁体の外面は、底板の外周面に比べ、枡本体の内部寄りに位置しており、透水シートの折返部は嵌合溝の内側に位置している。従って、枡本体の周壁体の外面を透水シートで被覆した状態で保管や搬送等しても、何れかの箇所に当たったり擦れたりしやすい底面や底部の角部で透水シートが外部に露出しておらず、また周壁体の外面よりもまず先に底板の外周面が当たったり擦れたりするため、保管時や搬送時等に透水シートが破れにくい。このため、枡本体の周壁体の外面を透水シートで被覆した場合に、該周壁体の外面のみを簡易的に包装等するのみで、搬送等に耐えるものとすることが可能であるとともに、施工現場における雨水浸透枡の組み立て作業を簡易なものとすることができる。
また本発明の雨水浸透枡は、嵌合溝の内側に周壁体の下端部が嵌入された状態での底部透水孔を介した枡本体の内部から外部への雨水の排出を確保するために底部透水孔開放手段が設けられる。該底部透水孔開放手段として、周壁体の横断面形状を波形状とし、該波形状で該周壁体の内面から外面へ向かって凹む部位に底部透水孔の位置を対応するように構成した場合、横断面形状を波形状とすることで該周壁体の強度の向上を図りつつ、該底部透水孔の位置を対応させるという簡易な構成で、底部透水孔からの雨水の排出を確実に確保することができる。他に、例えば横断面形状を波形状とするか、または平板状とした周壁体の下端部に補強のための板状のリブを設けたりする場合であって、該リブが上記底板の嵌合溝の内側に入り込む場合であっても、該底部透水孔開放手段として、該リブの底部透水孔と対応する位置に連通孔を貫通形成するという簡易な構成で、底部透水孔からの雨水の排出を確実に確保することができる。
また上記枡本体は、上記底板と上記周壁体に加え、雨水を導くための導水孔が設けられた天板を設けて構成されるが、該天板の下面の周縁部に周壁体の上端部が嵌入される嵌入溝を設け、更に透水シートに上側折返部を設け、該上側折返部を周壁体の上端部とともに上記嵌入溝の内側に嵌入することで、透水シートを簡易な構成で周壁体の表面上に固定することができるとともに、上記した折返部と同様に、搬送時等に透水シートを破れにくくすることができる。
【0008】
〔効果〕
本発明にあっては、簡単で容易に設置することができる雨水浸透枡を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】組み立てた状態の雨水浸透枡を示す部分拡大縦断面図。
【
図3】底板の嵌合溝に周壁体の下端を嵌入した状態を示す部分拡大横断面図。
【
図4】実施形態の雨水浸透枡を設置した状態を示す概略図。
【
図5】別形態の雨水浸透枡を設置した状態を示す概略図。
【
図6】(a),(b)は別形態の周壁体を示す部分拡大斜視図。
【
図7】別形態の枡本体を示す(a)は周壁体の斜視図、(b)は底板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の雨水浸透枡を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、雨水浸透枡10は、雨水を貯留するための枡本体11と、該枡本体11の外面を覆う透水シート12とを備えている。
前記枡本体11は、平面視で略正方形状をなす底板15と、四角筒状をなす周壁体16と、平面視で略正方形状をなす天板17とにより、中空の四角箱状に形成されている。また枡本体11は、軽量化を図るべく、底板15、周壁体16及び天板17が合成樹脂を材料に用いて形成されている。
【0011】
前記底板15の上面の周縁部には、周壁体16の下端部を嵌合するための嵌合溝21が、上記周壁体16の平面形状と対応するように平面視で四角環状に、かつ縦断面形状が凹字状となるように形成されている。該嵌合溝21の内側で内底面には、複数の底部透水孔22Aが貫通形成されている。該底部透水孔22Aは、枡本体11の内部に貯留された雨水を地中へ排出するためのものであり、該嵌合溝21の内側にのみ設けられており、該該嵌合溝21の内側を除く底板15の他の箇所には設けられていない。
【0012】
前記周壁体16は、4枚の側板16Aを連結して構成されたものである。つまり該側板16Aは、一側縁に凹凸状をなす嵌合雌部25が設けられるとともに、他側縁に該嵌合雌部25と対応する凹凸状をなす嵌合雄部26が設けられており、これら嵌合雌部25及び嵌合雄部26を相互に嵌合することにより、側板16A同士を連結することが可能となっている。
上記周壁体16において、側板16Aは、横断面形状が波形状とされており、土圧に耐えられる剛性を付与されている。また側板16Aには、補強のためのリブ27が設けられている。
そして周壁体16を構成する側板16Aには、枡本体11の内部に貯留された雨水を地中へ排出するための複数の壁部透水孔22Bが貫通形成されている。
【0013】
前記天板17の中央部には、導水孔29が透設されている。この導水孔29は、雨水を枡本体11の内部に導くためのものである。また天板17の下面の周縁部には、周壁体16の上端部を嵌入するための嵌入溝30が、上記周壁体16の平面形状と対応するように平面視で四角環状に、かつ縦断面形状が凹字状となるように形成されている(
図2を参照)。
【0014】
前記透水シート12は、不織布、透水性フィルム、織布、編布等といった透水性材料からなるシート材を裁断して形成されたものである。該透水シート12は、前記底部透水孔22A及び前記壁部透水孔22Bを被覆し、前記底部透水孔22A及び前記壁部透水孔22Bを介して枡本体11の内部から外部へ雨水が排出されることを許容し、枡本体11の外部から内部へ土砂が入り込むことを規制するものである。
前記透水シート12は、上記周壁体16を覆うべく対応する部位のみによって構成されており、底板15を覆うべく対応する部位を有していない。
【0015】
上記透水シート12は、その横幅が周壁体16の外周回りの長さよりも若干長くなり、縦幅が周壁体16の縦幅よりも長くなるように、帯状に形成されている。該透水シート12の上下方向の中央部は、周壁体16の外面を被覆する周壁被覆部31とされている。また透水シート12の下端縁部は、周壁体16の下端で該周壁体16の内面に折り返すことができるようになっており、折返部32とされている。更に透水シート12の上端縁部は、周壁体16の上端で該周壁体16の内面に折り返すことができるようになっており、上側折返部33とされている。
【0016】
図2に示すように、上記透水シート12の折返部32は、周壁体16の下端で内面に折り返した状態で、該周壁体16の下端部とともに、底板15の嵌合溝21の内側に嵌入されている。上記透水シート12の上側折返部33もまた、折返部32と同様に、周壁体16の上端で内面に折り返した状態で、該周壁体16の上端部とともに、天板17の嵌入30の内側に嵌入されている。透水シート12は、折返部32及び上側折返部33が周壁体16の下端部及び上端部とともに嵌合溝21及び嵌入30に嵌入されることで、枡本体11の外面上に固定され、位置ずれを抑制される。そして嵌合溝21の内側に嵌入された折返部32は、該嵌合溝21の内側で上記底部透水孔22Aを覆っている。
【0017】
上記枡本体11には、嵌合溝21の内側に周壁体16の下端部が嵌入された状態において、底部透水孔22Aを介した枡本体11の内部から外部への雨水の排出を確保するべく、底部透水孔開放手段が設けられている。すなわち、
図3に示すように、底部透水孔開放手段として、上記周壁体16の側壁16Aは、横断面形状が波形状とされている。一方、底板15において、底部透水孔22Aは、波形状とされた該周壁体16の内面から外面へ向かって凹む部位、つまりは内面上で凹む部位と対応する位置となるように形成されている。その結果、周壁体16の下端部が底板15の嵌合溝21に嵌入された状態にあって、底部透水孔22Aは、枡本体11の内部に向けて開口された状態を確保されている。そして、枡本体11の内部で底部に貯留された雨水は、上記透水シート12の折返部32によって邪魔されることなく、底部透水孔22Aを介して外部へ排出される。
【0018】
図4に示すように、上記天板17の導水孔29には、立管部材35が接続される。該立管部材35は、図中で下方から順番に、導水管接続筒36、アジャスター37、蓋38を備えており、これらは互いに連結されている。これらのうち、該導水管接続筒36が前記導水孔29に挿入される。該導水管接続筒36は、雨水を集めるための導水管39を接続可能に構成されている。導水管39を通過した雨水は、該導水管接続筒36及び導水孔29を介して枡本体11の内部へ送り込まれ、貯留されるようになっている。
なお導水管接続筒36と、導水孔29とのとの間には、カゴ(図示略)が介装されており、雨水中のゴミは、カゴによって除去されるようになっている。
アジャスター37は、筒状をなしており、枡本体11の上面から地表までの高さに合わせ、適宜長さ調節される。蓋38は、メンテナンス時等に開放されることにより、枡本体11の内部の状態を確認するために設けられたものである。
さらに工場等で雨水浸透枡10が事前組み立てされる場合は、枡本体11において周壁体16から底板15及び天板17が外れてしまうことを防止するための固定バンド40が設けられている。
【0019】
上記雨水浸透枡10の設置方法について説明する。
さて、雨水浸透枡10を設置する場合には、まず掘削された穴の底面に底板15を載せ、雨水浸透枡10の設置位置を決める。また、穴の外部においては、予め側板16A同士を連結して周壁体16を形成し、該周壁体16の外面に透水シート12を巻き付け、さらに透水シート12の折返部32及び上側折返部33を内面へ折り返しておく。その後、穴の内部において、周壁体16の下端部を底板15の嵌合溝21に嵌入し、また周壁体16の上端部に天板17を嵌合して、透水シート12の上下両端部を固定した後、該天板17の導水孔29に立管部材35を取り付け、穴を埋め戻すことにより、雨水浸透枡10の設置が完了する。
また上記雨水浸透枡10においては、穴の外部あるいは工場等の施工現場以外の箇所で立管部材35を取り付ける前の状態、つまり枡本体11の周壁体16の外面が透水シート12によって被覆され、さらに固定バンド40によって周壁体16に対する底板15及び天板17の脱着が防止された状態まで組み立て、これを掘削された穴内にそのまま入れてもよい。
【0020】
上記雨水浸透枡10の設置作業において、底板15用の透水シートを敷設する必要はなく、当然、底板15用の透水シートと底板15の位置ずれを気にする必要はなく、位置ずれを修正する必要もない。また透水シート12の装着は、周壁体16の外面に巻き付けるのみという簡易な作業で終了し、穴の外で作業することが可能であり、狭い穴内で作業せずともよく、行いやすい。結果、上記雨水浸透枡10は、設置に際しての組み立て作業を穴の外部で行うことができ、また穴内での作業は、ほぼ立管部材35を取り付ける作業のみである。従って、設置作業が非常に簡単で、容易である。
【0021】
本発明の雨水浸透枡10は、上記した構成に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
図5に示すように、立管部材35において、導水管接続筒36を省略するとともに、周壁体16及び透水シート12に導水管39を接続するための接続孔36Aを透設してもよい。このように構成した場合、穴の掘削深さを浅くすることができる。
図6(a)に示すように、側板16Aの下端部に補強のための枠リブ41を設けてもよい。このような枠リブ41を設けた場合、底部透水孔開放手段として、底部透水孔22Aを塞いでしまう枠リブ41において、該底部透水孔22Aと対応する位置に、該底部透水孔22Aと枡本体11の内部とを連通させる連通孔42を貫通形成する。なお
図6(b)に示すように、側板16A(周壁体16)を平板状としてもよく、またこの場合、枠リブ41は平板状とした側板16A(周壁体16)の内面側の下端部に設けるものとして、該枠リブ41に連通孔42を貫通形成する。
図7(a)に示すように、周壁体16を円筒状としてもよく、また該周壁体16に応じて
図7(b)に示すように、底板15を円板状としてもよい。なお、円筒状とした該周壁体16は、底部透水孔開放手段として、例えば周壁体16の内側に横断面形状が波形状の芯部43を設けることで、底部透水孔22Aを塞ぐことなく開放させることができる。
また周壁体16は、四角筒状、円筒状の他にも、筒状であれば、三角筒状、五角筒状、六角筒状などの多角筒状としてもよい。
あるいは上記周壁体16は、4枚の側板16Aによって四角筒状とすることに限らず、例えば平面視でL字状をなす側板を2枚組み合わせて四角筒状としてもよい。
上記浸透枡10においては、周壁体16の外面を透水シート12で被覆する構成としたが、これに限らず、周壁体16の内面を透水シート12で被覆する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 雨水浸透枡
11 枡本体
12 透水シート
15 底板
16 周壁体
16A 側板
17 天板
21 嵌合溝
22A 底部透水孔
22B 壁部透水孔
32 折返部