(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
樹脂等からなる微粒子はナノオーダーから数十μmまで大きさを変えることにより様々な特性を発現させることができる。このような微粒子は、例えば、樹脂添加剤、化粧品、インク、トナー、成形材料、スペーサ等として使用され、産業上必要不可欠なものとなっている。
【0003】
従来、微粒子を製造する方法として乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等が知られている。乳化重合法は疎水性のモノマーを水中に分散させ、界面活性剤、重合開始剤の存在下で重合を行うものである。界面活性剤ミセル内部が疎水的であるため、重合はミセル内部で進行し、サブミクロン以下の粒子径の樹脂微粒子を得ることができる。
また、懸濁重合法は疎水性のモノマーを機械的な攪拌によって、懸濁させ、液滴をそのまま樹脂粒子化する方法であり、数μmから数十μmの樹脂微粒子を得ることができる。
更に、分散重合法は有機溶剤中でのソープフリー乳化重合法といえる方法であり、サブミクロンから数μmの粒子径の樹脂微粒子を得るのに適している。
【0004】
一方、近年は、超臨界技術を用いた噴出法により微小な樹脂粒子を製造する方法も研究されている。この技術はRESS法(Rapid Expansion of Supercritical Solution)と呼ばれるものであり、例えば、特許文献1には、超臨界二酸化炭素に樹脂を溶解し、その後急速に大気圧下に噴出することで、析出によって樹脂微粒子を得る技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来の乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法等の方法は、水中や有機溶剤中で樹脂微粒子を得る方法であるため、乾燥した粉体を得るためには、分散媒を蒸発させる工程が必要であり、工程が煩雑となるだけでなく、環境負荷の増大が懸念されていた。
また、従来の方法では、粒度分布が均一な微粒子を製造することは困難であった。
一方、超臨界技術を用いた噴出法により微小な樹脂粒子を製造する技術(RESS法)では、超臨界二酸化炭素を使用するため、乾燥工程が不要で、環境負荷が低いという利点を有している。しかし、予め重合したポリマーを超臨界二酸化炭素に溶解させる必要があり、一般に超臨界二酸化炭素に対するポリマーの溶解度は低いため、RESS法には生産性に課題があった。
【0006】
更に、重合によらない微粒子の合成方法としては、特許文献2に示すように、ポリマーを含んだ溶液を熱風中に噴霧し、液滴中のポリマーを乾燥固化することによって微粒子を得る技術(スプレードライ法)があるが、このような方法も、環境負荷の増加を招くだけでなく、大量の熱風を必要とするためエネルギー負荷増大の問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の微粒子の製造方法について説明する。
【0013】
本発明の微粒子の製造方法は、樹脂フィルムを幅0.05〜500μmの等間隔で切断することで微小片を作製する工程を有する。
【0014】
上記樹脂フィルムとしては、単層のフィルムを用いることも、2層以上の層を有する複合フィルムを用いることもできるが、複合フィルムを用いることが好ましい。
上記複合フィルムを用いることで、異質表面を有する複合微粒子を製造することができる。
【0015】
上記異質半球表面を有する複合微粒子の製造方法としては、例えば、特表2001−500172号公報に示すように、マイクロリアクター法やノズル法と呼ばれる方法が知られている。これらの方法は、それぞれ別のノズル先端から生成した2種の液滴を合体させ、あるいは、マイクロリアクター内の微小路中で2種の液滴を合体させるものである。しかしながら、これらの方法では、(i)生産性が極めて低い、(ii)2液滴を合体させて一個の液滴とするための界面条件や流動条件が複雑であり、安定な操作を確立することは困難である、(iii)ノズルや微小流路を用いて液滴を生成することから、コントロールできる粒子径範囲には限度がある、(iv)ノズルや微小流路を用いて液滴を生成することから、機能発現のために添加できる異種物質が制限され、特に固体粉末はノズルや微小流路を閉塞させるので添加できない、(v)複合微粒子の球体中心に異種物質を包含させることは不可能である、等の問題があった。
しかしながら、本発明の方法を用いることにより、上記(i)〜(v)の問題を解決することが可能となる。
【0016】
上記のような複合微粒子は、半球部分で異なる物性を付与できるため、例えば、一方の半球体表面が黒色で他の半球体表面が白色の微粒子、いわゆる白黒二色ポールはディスプレーに利用できる。また、一方の半球体表面が親水性で、他方の半球体表面が疎水性である複合微粒子は、界面活性粒子として分散系の安定剤として利用でき、また、複合微粒子の構成成分としても利用可能である。
【0017】
上記樹脂フィルムとしては、基材にポリマーを含有するペーストを塗工、乾燥することにより得られるものや、基材に重合性モノマーを含有するペーストを塗工した後、重合反応させることにより得られるものを用いることができる。
【0018】
上記複合フィルムとしては、例えば、
(a)重合性モノマーを含有するペーストを基材樹脂フィルムに塗工した後、重合反応させることにより得られるもの、
(b)ポリマーを含有するペーストを基材樹脂フィルムに塗工、乾燥することにより得られるもの、
(c)2以上の各層フィルムを作製した後、上記各層フィルムを貼り合せることにより得られるもの、
を用いることが好ましい。
【0019】
上記(c)の方法としては、例えば、
(c1)1以上の各層樹脂フィルムと、1以上の重合性モノマーを含有する前駆体フィルムと有する2以上の各層フィルムを作製し、上記各層フィルムを貼り合せた後、重合反応させる方法、
(c2)1以上の各層樹脂フィルムと、1以上の有機溶剤を含有する溶剤含有フィルムと有する2以上の各層フィルムを作製し、上記各層フィルムを貼り合せた後、乾燥する方法、
を用いることが好ましい。
上記方法は、用いられる原料の材質によって適宜選択される。例えば、重合性モノマーを用いる場合は、フィルムを貼り合せた後に重合することによって、強固な貼り合せ界面が形成されるので、(c1)の方法が好ましく、天然由来のポリマーを原料に用いる場合は(c2)の方法が好ましい。
【0020】
上記(c1)の前駆体フィルムを作製する方法としては、例えば、
(c1−1)ポリマー、重合性モノマー及び有機溶剤を含有するペーストを塗工した後、上記有機溶剤を乾燥する方法、
(c1−2)異なる2種の重合性モノマーを含有するペーストを塗工した後、一方の重合性モノマーを重合させる方法、
を用いることが好ましい。
また、上記(c2)の溶剤含有フィルムを作製する方法としては、例えば、
(c2−1)重合性モノマー及び有機溶剤を含有するペーストを塗工した後、重合反応させる方法、
を用いることが好ましい。
上記の方法についても、前項と同様に、用いられる原料の材質によって適宜選択される。
【0021】
上記ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、飽和ポリエステル、ポリ乳酸等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ポリイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂等の熱硬化性樹脂、セルロース、多糖類、各種脂肪酸エステル、ゼラチン、タンパク質、等の天然物由来の高分子化合物が挙げられる。
上記重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、スチレン誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等の付加重合性モノマー、カプロラクタム、ジカルボン酸とジアミン、エーテルとカルボン酸、乳酸、アルコキシシラン、ウレタンモノマー、エポキシモノマー等の重縮合・重付加重合性モノマー等が挙げられる。
【0022】
上記重合性モノマーを含有するペーストには、重合性モノマーに加えて、有機溶剤、水、粘度調整剤、表面張力調整剤等を含有することが好ましい。
また、上記重合性モノマーを含有するペーストには、色彩、帯電性、導電性、熱伝導性、官能基、磁性等の物性を呈する物質を添加してもよい。
【0023】
上記重合性モノマーを含有するペーストを塗工する方法としては、例えば、キャスト法、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法、インクジェット法等が挙げられる。
また、上記重合性モノマーを含有するペーストがイオン交換ゲル化能や架橋作用を呈する物質を含む場合はゲル化させることが好ましい。
【0024】
上記樹脂フィルムは、芯物質が等間隔で配置されていることが好ましい。
また、上記樹脂フィルムが複合フィルムである場合は、層間に芯物質が等間隔で配置されていることが好ましい。
上記芯物質が等間隔で配置されていることで、例えば、異質球面をもつマイクロカプセルや柱状マイクロカプセルを作製することができる。
【0025】
上記芯物質としては、例えば、医薬品、硬化剤、触媒、農薬、香料、発泡剤等が挙げられる。具体的には例えば、銀粒子、アスコルビン酸水溶液等が挙げられる。
【0026】
上記樹脂フィルムの厚みは、0.05〜1000μmであることが好ましい。
厚みが0.05μm未満であると、フィルムの強度が小さくなり、裁断後に基材から剥離するのが困難になることがあり、1000μmを超えると、フィルムの強度が大きくなりすぎて精密裁断が困難になる。より好ましくは0.15〜100μmである。
【0027】
本発明では、上記樹脂フィルムを幅0.05〜500μmの等間隔で切断する。
上記切断幅が0.05μm未満であると、レーザー等の精密な裁断機を用いても得られる微粒子の粒子径均一性が低くなり、500μmを超えると、得られる微粒子の分散性や粉体流動性が悪くなる。好ましい下限は0.15μm、好ましい上限は100μmである。
なお、上記切断の方法としては、樹脂フィルムの長手方向に等間隔で切断してもよく、樹脂フィルムの長手方向と垂直方向に等間隔で切断してもよい。また、切断面が正方形になるように切断してもよく、矩形状や円形になるように切断してもよい。
更に、上記幅0.05〜500μmの等間隔で切断した後、更に切断面と垂直方向に切断してもよい。
【0028】
上記樹脂フィルムを切断した微小片の形状は特に限定されず、例えば、立方体形状、略立方体形状、四角柱形状、略四角柱形状、円柱形状等が挙げられる。
【0029】
上記樹脂フィルムの切断方法としては、例えば、公知のレーザー式切断機、微細切断機等を用いることができる。特に、エキシマレーザー式精密切断機が好ましい。
【0030】
本発明の微粒子の製造方法では、微小片の中心に上記芯物質が位置するように上記樹脂フィルムを切断することが好ましい。これにより、均質なシェル膜厚みを持ち、芯物質の保持性高いマイクロカプセルが得られる。
【0031】
本発明の微粒子の製造方法では、微小片を作製する工程を行った後、上記微小片を溶融する工程を行うことが好ましい。
上記微小片を溶融する方法としては、例えば、上記微小片を、樹脂フィルムを構成する樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する方法や、樹脂フィルムを構成する樹脂と相溶性のない溶媒に添加して溶融する方法等が挙げられる。
なお、溶融した後、球状としてから重合、乾燥、又はゲル化をさらに継続してもよい。特に、樹脂フィルムが複合フィルムである場合は、樹脂フィルム調製前の重合反応時間と、樹脂フィルム調製後の重合反応時間とを調整することで、複合フィルムの剥離を防止でき、良好な異質半球表面を有する複合微粒子を効率良く調製することができる。
【0032】
上記樹脂フィルムを構成する樹脂と相溶性のない溶媒に添加して溶融する方法を用いる場合、上記溶媒としては、例えば、エチレングリコール等を用いることができる。また、ポリビニルアルコール、リン酸三カルシウム等を添加してもよい。
【0033】
本発明の微粒子の製造方法の一実施例を
図1に示す。なお、
図1は複合フィルムを用いて異質半球表面を有する複合微粒子を作製する場合である。
【0034】
この2種類の異質半球表面を有する複合微粒子の製造法は、機能性発現物質を重合性モノマー、水、有機溶媒などの溶媒に溶解或いは分散させて溶液を調製する工程、この溶液中で重合、乾燥、又はゲル化を実施してフィルムを調製する工程、2種類のフィルムを貼り合せて重合、乾燥、又はゲル化を実施する工程、合体化した複合フィルムを切断する工程、微小片を溶媒中で溶融球状化し、重合、乾燥、又はゲル化を実施する工程、からなる。これらの工程は極めて単純であり、一連のプロセスとして構築することが容易であることから、目的とする異質半球面をもつ複合微粒子を高回収率で大量に製造することができる。
また、
図2に示すように、重合性モノマー、水、有機溶媒などの溶媒に溶解或いは分散させた溶液をシートに塗工した後、乾燥又は重合させることで複合フィルムを作製することもできる。
【0035】
また、複合微粒子の大きさは、それぞれのフィルムの厚さと切断寸法によって決まることから、粒子径制御は極めて容易である。例えば、複合微粒子の粒子径を0.05〜1000μmの範囲で制御可能である。特にレーザー式切断機を用いた場合は高い寸法精度で切断が可能であり、粒子径の揃った粒子径分布が単分散の複合微粒子を調製することができる。また、複合フィルムを略立方体形状に切断すれば球状の複合微粒子を得ることができ、複合フィルムを略四角柱形状に切断すれば円柱状の複合微粒子を得ることができる。
また、異なる物性のフィルムを独自に調製し、これを合体させることから、それぞれの半球表面に多種多様な機能を付与することができる。
【0036】
また、2種類のフィルムを合体させる前に、一方のフィルム上に芯物質となる第三の成分を塗布、コートし、或いはインクジェット方式などのワンショット射出法で等間隔に第三の成分の粒子を置き、微小片の中心に第三の成分の粒子が位置するように複合フィルムを切断し、その後、微小片を溶融することにより、球状の複合微粒子の中心部に、この第三の成分をカプセル化することができる。このとき、ワンショット射出法により第三の成分の射出量を制御することにより、複合微粒子中における第三の成分の含有量を均一、かつ任意に制御することができる。また、この方法によれば第三の成分のカプセル化効率を100%とすることが可能であることから、この方法は第三の成分が高価である場合に好適に用いられる。また、フィルムの厚さ、第三の成分の載置位置、フィルムの切断位置を制御することにより、シェルとコアとが同心であってシェル厚が均一なコアシェル型マイクロカプセルを容易に調製することができる。
【0037】
さらに、2種類のフィルム厚を等しくすることにより、球状粒子の赤道を境界面とした異質半球表面を形成することができる。
【0038】
以下、本発明の異質表面を有する複合微粒子の製造方法について、重合性モノマーを用いた場合を例にとって、
図3を参照しながら説明する。なお、
図3において、「フィルム」を「シート」と表記している。重合性モノマーからなるモノマー混合物A、B、Cに、重合開始剤A、B、C、添加物A、B、Cをそれぞれ添加、混合し、所定時間重合する。それぞれのモノマー混合物A、B、Cをシャーレに注入してキャスト法にてシート化し、さらに予備塊状重合を所定時間行い、シートA、B、Cを得る。つぎに、これらのシートを貼り合わせて一定時間重合を実施して、複合シートを作成する。2枚のシートA、Bからは二層構造の複合シートが、3枚のシートA、B、Cからは三層構造の複合シートが調製される。
つぎに、複合シートを切断機で所定の大きさに切断(シートカッティング)して微小片とし、この微小片を連続相(例えば80℃の水相)中に投入して溶融、冷却する。ここで、二層構造の複合シートを略立方体形状に切断することにより、異質半球面をもつ複合微粒子(I)を調製することができる。三層構造の複合シートを略立方体形状に切断することにより、三層構造複合微粒子(III)を調製することができる。なお、
図4に、三層構造の複合シートを略立方体形状に切断することにより、三層構造複合微粒子を調製する場合を示す。
二層構造の複合シートを略四角柱形状に切断することにより、柱状複合微粒子(IV)を調製することができる。また、2枚のシートA、Bを貼り合せる前に、一方のシート上に芯物質を載置することにより、異質球面をもつマイクロカプセル(II)や柱状マイクロカプセル(V)を調製することができる。
【0039】
本発明の異質表面を有する複合微粒子の製造方法によれば、情報記録材料(導電性−絶縁性、黒色−白色、負帯電−正帯電)、文房具(黒色−白色)、医薬品(負帯電−正帯電、親水性−疎水性)、接着剤・塗料(磁性−非磁性、導電性−絶縁性、熱伝導性−非熱伝導性)などの分野に有用な複合微粒子を製造することができる。また、種々の芯物質を包含させることにより、農業、化粧品、土木・建築、食品などの分野に利用可能である。特に本発明の異質表面を有する複合微粒子の製造方法によれば、品質が均一であって高付加価値の複合微粒子が得られる。
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0041】
(実施例1)
ポリメチルメタクリレート2.5g、ポリイソブチルメタクリレート2.5g、MEK(メチルエチルケトン)5g、ブタノール5g、界面活性剤としてネオゲンR(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.01gの混合溶液をシャーレに注入してキャスト法にてフィルム化し、厚み50μmのシートを得た。
次いで、このシートをエキシマレーザー式精密切断機(光源ArFレーザー、波長193nm)を用いて、切断幅50μmで縦横直交方向に切断し(50μm角)、50μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。
得られた微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相としては、エチレングリコール100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。得られた粒子の平均粒子径は55μm、CV値は4%であった。
【0042】
(比較例1)
レーザー式切断機を用いず、シートを遊星ボールミル(フリッチュジャパン社製、P−7)で粉砕することにより、微小片を作製した以外は、実施例1と同様の方法で粒子を作成した。得られた粒子の平均粒子径は35μm、CV値は112%であった。
【0043】
(比較例2)
ポリメチルメタクリレート2.5g、ポリイソブチルメタクリレート2.5g、MEK(メチルエチルケトン)25g、ブタノール25gを含有する混合溶液をラボ噴霧乾燥機(日本ビュッヒ社製、B−290)を用いて乾燥粉体化した。得られた粒子の平均粒子径は30μm、CV値は45%であった。
【0044】
(実施例2)
[白黒微粒子の製造]
モノマー混合物A,Bとして、スチレンとエチルヘキシルアクリレートの混合物をそれぞれ5g、重合開始剤A,Bとして、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)をそれぞれ0.5g、添加物Aとして、白色顔料である二酸化チタン(TiO
2)粉末を0.6g、添加物Bとして、黒色顔料であるマグネタイト(Fe
3O
4)粉末を0.5g、モノマー混合物A,Bに添加する溶媒としてMEKをそれぞれ10g、モノマー混合物A,Bに添加する界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)をそれぞれ0.05g用いて、
図2に示すフローに従って複合微粒子を製造した。
モノマー混合物Aに重合開始剤A、添加物A、界面活性剤を加えて混合し、所定時間予備塊状重合した。その後、この混合モノマーをシャーレに注入してキャスト法にてフィルム化し、さらに予備塊状重合を継続し、シートAを得た。シートAの厚みは110μmであった。同様に、モノマー混合物Bに重合開始剤B、添加物B、界面活性剤を加えて混合し、所定時間、予備塊状重合した。その後、この混合モノマーをシャーレに注入してキャスト法にてフィルム化し、さらに予備塊状重合を継続し、シートBを得た。シートBの厚みは130μmであった。
【0045】
重合終了後、シートAとシートBの2種類のフィルムを貼り合せて30分間加熱重合を実施し、厚み210μmの複合フィルムを作製した。
次いで、この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅150μmで縦横直交方向に切断し(150μm角)、150μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。この微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、エチレングリコール100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。
【0046】
その後、残存モノマーを消費するために重合を継続した後、冷却することにより、一方の半球体が黒色で他方の半球体が白色である、平均粒子径170μm、CV値5%の二色複合微粒子が得られた。
【0047】
(実施例3)
シートAの作製において、混合モノマーをガラス上にスピンコートした後、予備重合した以外は、実施例2と同様にしてシートAを作製した。得られたシートAの厚みは0.10μmであった。このシートAの上に、実施例2と同様のモノマーBの混合モノマーをスピンコートし、10分間加熱重合を行うことによって、厚み0.19μmの複合シートを得た。
【0048】
この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅0.15μmで縦横直交方向に切断し(0.15μm角)、0.15μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。得られた微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、エチレングリコール100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。
【0049】
その後、残存モノマーを消費するために重合を継続した後、冷却することにより、一方の半球体が黒色で他方の半球体が白色である、平均粒子径0.16μm、CV値10%の二色複合微粒子が得られた。
【0050】
(比較例3)
実施例2において、複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅1500μmで縦横直交方向に切断し(1500μm角)、1500μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た以外は実施例2と同様にして粒子を作製した。しかしながら、冷却後に得られた粒子は扁平状のままであり、流動性が著しく劣る粉体が得られた。なお、粒子の平均粒子径は450μm、CV値は135%であった。
【0051】
(比較例4)
複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅0.04μm(0.04μm角)で切断することで微小片を得た以外は実施例3と同様にして粒子を作製した。
しかしながら、冷却することにより得られた粒子は、二色構造が不鮮明な粒子が観察された。なお、粒子の平均粒子径は0.06μm、CV値は63%であった。
【0052】
(実施例4)
[マイクロカプセル型微粒子の製造]
モノマー混合物A,Bとして、スチレンモノマーとエチルヘキシルアクリレートの混合物をそれぞれ5g、重合開始剤A,Bとして、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)をそれぞれ0.5g、芯物質Cとして、銀粒子、モノマー混合物A,Bに添加する界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)をそれぞれ0.05g用いて、
図3に示すフロー及び
図5に従って複合微粒子を製造した。
【0053】
シートAとシートBの作成までは実施例2と同様にして操作を行った。ただし、シートAおよびシートBの厚みをそれぞれ15μmとなるようにキャストを行った。そして、切断機で切断する間隔に合せて25μmの間隔で等間隔に、シートA上に粒子径3μmの銀粒子を置いた。その後、シートAとシートBの2種類のフィルムを貼り合せて60分間の重合を実施した後に、この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅25μmで縦横直交方向に切断し(25μm角)、25μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。得られた微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、エチレングリコール100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。この際、複合フィルムから連続層に脱離する銀粒子は見られなかった。
その後、残存モノマーを消費するために重合を継続した後、冷却することにより、芯物質として銀粒子を中心部に包含した、平均粒子径26μm、CV値8%のマイクロカプセルの形態を有する複合微粒子が得られた。
【0054】
(実施例5)
芯物質の銀粒子の配置において、5〜30μmの不均一な間隔としたこと以外は実施例4と同様にマイクロカプセル型粒子を作成した。その結果、銀粒子は必ずしもカプセルの中心部のみに配置せず、粒子を球状化する際、複合フィルムから連続層に脱離する銀粒子が観察された。
【0055】
(実施例6)
芯物質の銀粒子の配置において、15μmの等間隔としたこと以外は実施例4と同様にマイクロカプセル型粒子を作成した。その結果、銀粒子は必ずしもカプセルの中心部には配置せず、粒子を球状化する際、複合フィルムから連続層に脱離する銀粒子が観察された。
【0056】
(実施例7)
[(親水性−疎水性)両親媒性微粒子の製造]
疎水性モノマー混合物Aとして、スチレン5.0g、親水性モノマー混合物Bとして、2−ヒドロキエチルメタクリレート5.0g、添加物Aとして、白色顔料である二酸化チタン(TiO
2)粉末を0.1g、添加物Bとして、黒色顔料であるマグネタイト(Fe
3O
4)粉末を0.1g、重合開始剤A、Bとして、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)をそれぞれ0.5g、モノマー混合物A、Bに添加する溶媒としてMEKをそれぞれ10g、モノマー混合物A、Bに添加する界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)をそれぞれ0.05g用いて、
図3に示すフローに従って複合微粒子を製造した。
即ち、モノマー混合物Aに重合開始剤A、溶媒、界面活性剤を加えて混合し、70℃にて所定時間重合した。その後、このポリマー溶液をシャーレに注入してキャスト法にて溶剤を乾燥しながらフィルム化し、疎水性シートAを得た。シートAの厚みは23μmであった。同様に、モノマー混合物Bに重合開始剤B、溶剤、界面活性剤を加えて混合し、70℃にて所定時間重合した。その後、このポリマー溶液をシャーレのシートA上に注入してキャスト法にてフィルム化し、シートBを積層して厚み43μmの複合フィルムを作製した。シートB部分の厚みは20μmであった。
【0057】
次いで、この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅100μmで縦横直交方向に切断し(100μm角)、100μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。この微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、水100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。その後冷却することにより、一方の半球体が黒色で他方の半球体が白色である、平均粒子径41μm、CV値4%の二色複合微粒子が得られた。
この粒子が分散したスラリーに、ヘキサン100gを添加し、攪拌した後一時間静置して観察すると、粒子は水とヘキサンの界面に局在し、粒子の白い疎水性部分はヘキサン層に、粒子の黒い親水性部分は水と接するように配置されているのが観察され、両親媒性粒子であることが確認された。
【0058】
(実施例8)
[(親水性−疎水性)両親媒性微粒子の製造]
疎水性ペースト混合物Aとして、ポリスチレン5.0g、白色顔料である二酸化チタン(TiO
2)粉末を0.1g、溶媒としてMEKを10g、界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)を0.05g用いた。ペースト混合物Aをシャーレに注入したのち、70℃にて溶剤を乾燥し、キャスト法にてフィルム化し、疎水性シートAを得た。シートAの厚みは53μmであった。
他方、親水性ペースト混合物Bとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製メトローズ60SH)5.0g、黒色顔料であるマグネタイト(Fe
3O
4)粉末を0.1g、溶媒としてイオン交換水を10g、界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)を0.05g用いた。ペースト混合物Bをシャーレに注入したのち、70℃にて溶媒を乾燥し、キャスト法にてフィルム化し、親水性シートBを得た。シートBの厚みは45μmであった。
【0059】
シートAとシートBの2種類のフィルムを貼り合せて10kNの圧力でプレスし、厚み80μmの複合フィルムを作製した。
次いで、この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅80μmで縦横直交方向に切断し(80μm角)、80μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。この微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、水100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。
【0060】
その後、冷却することにより、一方の半球体が黒色で他方の半球体が白色である、平均粒子径76μm、CV値4%の二色複合微粒子が得られた。この二色複合粒子のスラリーに、メタノール10gを添加して24時間攪拌し続けると、一部の粒子で白色部分と黒色部分の剥離が見られた。
【0061】
(実施例9)
[(親水性−疎水性)両親媒性微粒子の製造]
疎水性ペースト混合物Aとして、スチレン2.5g、ポリスチレン2.5g、白色顔料である二酸化チタン(TiO
2)粉末を0.1g、重合開始剤として、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を0.3g、溶媒としてMEKを10g、界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)を0.05g用いた。ペースト混合物Aをシャーレに注入したのち、50℃にて溶剤を乾燥し、キャスト法にてフィルム化し、疎水性シートAを得た。シートAの厚みは55μmであった。
一方、親水性ペースト混合物Bとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製メトローズ60SH)5.0g、黒色顔料であるマグネタイト(Fe
3O
4)粉末を0.1g、溶媒としてイオン交換水を10g、界面活性剤として、Span80(ソルビタンモノオリエート)を0.05g用いた。ペースト混合物Bをシャーレに注入したのち、70℃にて溶媒を乾燥し、キャスト法にてフィルム化し、親水性シートBを得た。シートBの厚みは48μmであった。
【0062】
シートAとシートBの2種類のフィルムを貼り合せたのち、70℃で60分間加熱重合を実施し、冷却後10kNの圧力でプレスして、厚み82μmの複合フィルムを作製した。
次いで、この複合フィルムをエキシマレーザー式精密切断機を用いて、切断幅80μmで縦横直交方向に切断し(80μm角)、80μm角の大きさの四角柱形状の微小片を得た。この微小片を80℃の連続相中に投入して溶融して球状にした。ここで、連続相として、水100gにポリビニルアルコール0.5gとリン酸三カルシウム2.5gを溶解したものを用いた。
【0063】
その後、冷却することにより、一方の半球体が黒色で他方の半球体が白色である、平均粒子径78μm、CV値6%の二色複合微粒子が得られた。この二色複合粒子のスラリーに、メタノール10gを添加して24時間攪拌し続けても、白色部分と黒色部分の剥離は見られなかった。