(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鮮鋭化処理部は、前記画像信号に対して前記鮮鋭化処理を実行することにより、前記画像信号が示す画像から、散乱成分の除去と、減衰成分の増幅及び減衰成分の上乗せの少なくとも一方とを行う、請求項1に記載の画像処理装置。
前記差分計算部は、前記複数の画素のそれぞれについて、前記輝度に対して、前記画像信号が示す画像を表示する表示デバイスのMTF特性の逆関数を逆フーリエ変換することによって算出されたフィルタ特性に基づいて生成された前記鮮鋭化フィルタを適用した結果の輝度と、前記輝度計算部が計算した輝度との差分を計算する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、表示装置10の機能構成の一例を概略的に示す機能構成図である。本実施形態に係る表示装置10は、カラー画像表示装置であってよい。表示装置10は、モノクロ画像表示装置であってもよい。表示装置10は、画像入力部20、表示デバイス30及び画像処理部100を備える。
【0013】
画像入力部20は、画像を示す画像信号の入力を受け付ける。画像入力部20は、例えば、PC(Personal Computer)等の外部機器から画像信号の入力を受け付ける。画像入力部20は、外部機器にケーブルを介して接続される接続端子を有してよい。
【0014】
画像入力部20は、RGB画像信号及びYUV画像信号等の任意の種類の画像信号を受け付けてよい。例えば、画像入力部20は、R、G、Bのそれぞれについて8ビットで階調が表現される画像信号を受け付ける。画像入力部20が受け付ける画像信号の階調は8ビットで表現されるものに限られない。
【0015】
表示デバイス30は、画像入力部20が受け付けた画像信号が示す画像を表示する。表示デバイス30は、例えば、液晶パネル、PDP(Plasma Display Panel)又は有機EL(ElectroLuminescence)パネル等の表示パネルを有してよい。
【0016】
画像処理部100は、画像入力部20から画像信号を受信して、当該画像信号に処理を施し、処理を施した画像信号が示す画像を表示デバイス30に表示させる。画像処理部100は、画像処理装置の一例であってよい。画像処理部100は、階調変換部102、色変換部106、鮮鋭化処理部110、ムラ補正部130、階調変換部132、色数拡張部136及び表示制御部138を有する。
【0017】
階調変換部102は、画像入力部20から受信した画像信号の階調を変換する。階調変換部102は、LUT(Lookup table)104を用いて画像信号の階調を変換してよい。LUT104は、入力された画像信号の階調値と、変換後の画像信号の階調値との対応付けを含んでよい。階調変換部102は、LUT104を参照して、入力された画像信号の階調値に対応する階調値を、変換後の画像信号の階調値として出力してよい。
【0018】
LUT104は、R、G、B成分のそれぞれに対応したLUTを含んでよく、任意の階調に対応していてよい。例えば、LUT104は、入力階調が8ビットで構成され、0〜255の256階調それぞれに対応する256個のエントリに、8ビットで表される出力階調を対応付けて格納する。出力階調は、入力階調とは異なるビット数によって表されてもよく、例えば、10ビット、12ビット及び14ビット等で表されてよい。LUT104は、画像処理部100に予め格納されていてよい。LUT104は、例えば、表示装置10のユーザ等によって設定可能であってもよい。
【0019】
色変換部106は、階調変換部102から出力された画像信号に対して色変換処理を実行する。例えば、色変換部106は、R、G、B成分に対応する変換係数で構成される3×3マトリクスにより、特定の色の成分を強めたり弱めたりする。
【0020】
鮮鋭化処理部110は、色変換部106から出力された画像信号に対して鮮鋭化処理を実行する。鮮鋭化処理部110は、鮮鋭化フィルタ111を用いて鮮鋭化処理を実行してよい。鮮鋭化処理部110は、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが、鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも1.0に近づくように鮮鋭化処理を実行する。
【0021】
表示装置10のMTFは、いわゆるディスプレイMTF又は表示系MTFと呼ばれるMTFであってよい。表示装置10のMTFは、表示デバイス30が有する表示パネルの表面処理及び画素構造等に依存する空間周波数の関数であってよい。
【0022】
表示パネルを通過する光は、表示パネルの表面処理及び画素構造によって散乱する。これにより、入力された画像信号が示す画像に対して、表示パネル上に表示された画像は鮮鋭度が低下することになる。これに対して、本実施形態に係る表示装置10によれば、鮮鋭化処理部110が画像信号に対して鮮鋭化処理を施してから、画像信号が示す画像を表示デバイス30に表示させることによって、表示装置10のMTFを1.0に近づけることができる。すなわち、鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10によって表示される画像に比べて、表示される画像の鮮鋭度を、入力された画像信号が示す画像の鮮鋭度に近づけることができる。
【0023】
ムラ補正部130は、鮮鋭化処理部110から出力された画像信号に対してムラ補正を実行する。ムラ補正部130は、例えば、表示デバイス30が有する表示パネル全体の輝度が均一になるように輝度ムラを補正する。
【0024】
階調変換部132は、ムラ補正部130から出力された画像信号の階調を変換する。階調変換部132は、受信した画像信号の階調をLUT134を用いて変換してよい。LUT134は、入力された画像信号の階調値と、変換後の画像信号の階調値との対応付けを含んでよい。階調変換部132は、LUT134を参照して、画像信号の階調値に対応する階調値を変換後の画像信号の階調値として出力してよい。
【0025】
LUT134は、R、G、B成分のそれぞれに対応したLUTを含んでよく、任意の階調に対応していてよい。例えば、LUT104は、入力階調が8ビットで構成され、0〜255の256階調それぞれに対応する256個のエントリに、8ビットで表される出力階調を対応付けて格納する。入力階調は、出力階調とは異なるビット数によって表されてもよく、例えば、10ビット、12ビット及び14ビット等で表されてよい。LUT104は、予め格納されていてよい。
【0026】
階調変換部132は、LUT134を用いて、表示デバイス30の表示特性に応じたγ補正を実行すべく、画像信号の階調を変換してよい。階調変換部132は、LUT134を用いて、表示デバイス30のγ特性を相殺するγ補正を実行すべく、画像信号の階調を変換してよい。例えば、予め表示デバイス30のγ特性が測定されて、測定されたγ特性の逆関数に相当するγ特性のデータがLUT134に格納されて、当該LUT134を用いて階調変換部132は画像信号の階調を変換する。
【0027】
色数拡張部136は、階調変換部132から出力された出力値に対して、必要に応じて色数拡張処理を実行する。色数拡張部136は、例えば、階調変換部132から出力された出力値に対してディザリングを実行する。また、色数拡張部136は、例えば、階調変換部132から出力された出力値に対してFRC(Frame Rate Control)を実行する。表示制御部138は、色数拡張部136から出力された画像信号が示す画像を表示デバイス30に表示させる。
【0028】
本実施形態において、鮮鋭化処理部110は、階調変換部102と階調変換部132との間であれば、いずれの位置に配置されてもよい。例えば、鮮鋭化処理部110は、階調変換部102と色変換部106との間に配置される。鮮鋭化処理部110は、階調変換部102から出力された画像信号に対して鮮鋭化処理を実行し、結果を色変換部106に対して出力してよい。また、例えば、鮮鋭化処理部110は、ムラ補正部130と階調変換部132との間に配置される。鮮鋭化処理部110は、ムラ補正部130から出力された画像信号に対して鮮鋭化処理を実行し、結果を階調変換部132に対して出力してよい。
【0029】
鮮鋭化処理部110を階調変換部102よりも前に配置した場合、鮮鋭化処理を施した画像信号に対して階調変換部102による階調変換が施されることになる。この場合、鮮鋭化処理部110が、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも1.0に近づくように鮮鋭化処理を実行したにも関わらず、階調変換部102によって任意に階調が変換されることになる。したがって、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも1.0に近づくことを担保できなくなる。これに対して、本実施形態に係る鮮鋭化処理部110は、階調変換部102による階調変換の後に鮮鋭化処理を実行するので、適切に、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFを、鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも1.0に近づけることができる。
【0030】
なお、画像処理部100が、階調変換部102、色変換部106、ムラ補正部130、階調変換部132、色数拡張部136及び表示制御部138のすべてを備えることは必須ではない。例えば、画像処理部100は、階調変換部102及び鮮鋭化処理部110のみを有してもよい。また、画像処理部100は、階調変換部102、鮮鋭化処理部110及び階調変換部132のみを有してもよい。
【0031】
図2及び
図3は、鮮鋭化フィルタ111の生成方法を説明するための説明図である。MTF
D142は、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFの一例を示す。
図2に示すとおり、MTF
D142は、空間周波数が高いほど低い値を示す。MTF
D142は、表示デバイス30上にラインを表示するLSF(Line Spread Function)による方法及び信号発生器による正弦波画像パターンを表示する正弦波による方法等によって測定されてよい。MTF
D−1144は、MTF
D142の逆関数を表す。
【0032】
フィルタ特性152は、鮮鋭化フィルタ111のフィルタ特性を示す。フィルタ特性152は、MTF
D−1144を逆フーリエ変換することによって得られる。係数例158は、鮮鋭化フィルタ111の係数の例を示す。鮮鋭化フィルタ111は、MTFの0周波数成分を1.0とするべく、係数の合計が1.0になるように生成されてよい。例えばまず、水平及び垂直の各方向のMTFの逆数から、水平及び垂直の各方向の1次元フィルタ係数(Fh、Fv)が計算される。1次元フィルタ係数Fh154及び1次元フィルタ係数Fv156はその一例を示す。そして、1次元フィルタ係数(Fh、Fv)の行列積を計算することによって、2次元フィルタである鮮鋭化フィルタ111が生成される。1次元フィルタ係数Fh154、1次元フィルタ係数Fv156及び係数例158に示される数値は一例であり、他の数値であってもよい。またここでは、フィルタのサイズが5×5である場合を例示しているが、これに限らず、鮮鋭化フィルタ111のサイズは他のサイズであってもよい。
【0033】
図4は、鮮鋭化処理部110の機能構成の一例を概略的に示す機能構成図である。鮮鋭化処理部110は、輝度計算部112、差分計算部114、色判定部116、マスク生成部118、セレクタ120、色判定制御部122、オーバーフロー抑制部124、及び輝度変更部126を含む。なお、鮮鋭化処理部110がこれらのすべての構成を含むことは必須とは限らない。
【0034】
輝度計算部112は、鮮鋭化処理部110に対して入力された入力画像信号が示す画像の複数の画素のそれぞれの輝度を計算する。差分計算部114は、入力画像信号が示す画像の複数の画素のそれぞれについて、輝度計算部112が計算した輝度と、当該輝度に対して鮮鋭化フィルタ111を適用した結果の輝度との輝度差分を計算する。
【0035】
色判定部116は、入力画像信号が示す複数の画素のうち、彩度が予め定められた閾値より高い画素を判定する。マスク生成部118は、色判定部116によって彩度が予め定められた閾値より高いと判定された画素が、鮮鋭化フィルタ111の範囲内に存在する画素に対するマスクを生成する。例えば、マスク生成部118は、鮮鋭化フィルタ111のサイズが5×5の場合、一の画素の周囲5×5画素の範囲内に、彩度が予め定められた閾値より高いと判定された画素が存在する場合に、当該一の画素に対するマスクを生成する。
【0036】
セレクタ120は、入力画像信号が示す画像の複数の画素のうち、マスク生成部118によってマスクが生成された画素については0を、それ以外の画素については差分計算部114によって計算された輝度差分を、オーバーフロー抑制部124に対して出力する。
【0037】
色判定制御部122は、色判定部116を制御する。色判定制御部122は、例えば、入力画像信号が示す画像がカラー画像でなくモノクロ画像である場合に、色判定部116を無効化する。また、例えば、表示装置10がモノクロ画像表示装置であり、例えば画像入力部20によってカラー画像がモノクロ画像に変換された上で画像処理部100に入力されるモードが有効になっている場合に、色判定部116を無効にする。なお、画像処理部100がモノクロ画像表示装置用である場合、画像処理部100は、色判定部116、マスク生成部118及びセレクタ120を備えなくてもよい。
【0038】
オーバーフロー抑制部124は、入力画像信号が示す画像の複数の画素のうち、セレクタ120から出力された輝度差分を適用することによって、画素値が上限値又は下限値を超える画素を特定する。画素に輝度差分を適用するとは、当該画素の輝度値が輝度差分の値の分変化するように、当該画素の画素値を変更することであってよい。入力画像信号として輝度情報のみが入力された場合、画素に輝度差分を適用するとは、画素の輝度値に輝度差分を加算することであってよい。複数の画素のそれぞれに適用する値を適用差分と呼ぶ場合がある。
【0039】
オーバーフロー抑制部124は、特定した画素に対して適用差分を適用した結果の当該画素の画素値が上限値又は下限値を超えないように、適用差分の値を調整する。オーバーフロー抑制部124は、特定した画素については、調整後の適用差分の値を、それ以外の画素については、セレクタ120から出力された適用差分の値を、輝度変更部126に対して出力する。
【0040】
輝度変更部126は、オーバーフロー抑制部124から出力された適用差分に基づいて、入力画像信号のそれぞれの輝度を変更する。輝度変更部126は、オーバーフロー抑制部124によって特定された画素については、オーバーフロー抑制部124によって調整された適用差分を適用する。輝度変更部126は、オーバーフロー抑制部124によって特定されなかった画素については、セレクタ120によって出力された輝度差分を適用する。すなわち、輝度変更部126は、マスク生成部118によってマスクが生成されなかった画素については、差分計算部114によって計算された輝度差分を適用し、マスク生成部118によってマスクが生成された画素については、輝度を変更しない。
【0041】
図5は、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理の概念を示す概略図である。入力画像信号160は入力画像信号の輝度値を表し、散乱成分162は表示デバイス30の表示特性によって散乱される成分を示し、減衰成分164は表示デバイス30の表示特性によって減衰される成分を示す。
【0042】
本実施形態に係る鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理によれば、差分計算部114が計算した輝度差分に基づいて入力画像信号の輝度を変更することにより、表示デバイス30によって表示される画像から、散乱成分162の除去と、減衰成分164の増幅又は上乗せとが行われる。これにより、入力画像信号の鮮鋭度を精確に再現することができる。
【0043】
例えば、診断用医用モニタ等では、医療機器としての安全性、有効性を図るために物理評価(定量評価)が重要となるが、画像に対して任意に鮮鋭化処理を施した場合、定量評価を阻害することになる。画像が本来有する鮮鋭度を適切に表現できない場合があるからである。これに対して、本実施形態に係る画像処理部100によれば、表示デバイス30の表示特性によって低下する分の鮮鋭度を適切に補正することができるので、入力画像信号が示す画像の鮮鋭度を適切に表現することができる。
【0044】
図6は、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFの例を概略的に示す。
図6のMTF172及びMTF174が示すように、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFは、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTF
D142よりも1.0に近い。
【0045】
鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFがMTF
D142よりも1.0に近いとは、空間周波数帯域全体に渡って1.0に近いことであってよい。また、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFがMTF
D142よりも1.0に近いとは、空間周波数帯域全体におけるMTFの平均値が1.0に近いことであってよい。また、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFがMTF
D142よりも1.0に近いとは、空間周波数帯域全体における一部の領域において1.0により近いことであってもよい。
【0046】
MTF172は、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが、空間周波数帯域全体に渡って絶対的に1.0に近づく場合の例を示す。MTF174は、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが、空間周波数帯域の一部において絶対的に1.0に近づく場合の例を示す。鮮鋭化処理部110は、例えば、MTF174が示すように、中間の空間周波数まではMTFが1.0になり、空間周波数が高くなるにつれてMTFが1.0よりも低くなっているように鮮鋭化処理を実行してもよい。
【0047】
鮮鋭化処理部110は、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFがMTF
D142よりも1.0に近づけば、1.0以外の値に近づくように鮮鋭化処理を実行してもよい。鮮鋭化処理部110は、例えば、鮮鋭化フィルタ111を調整することによって、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが1.0以外の値に近づくようにしてよい。
【0048】
図7は、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理のタイミングの違いによる処理結果の相違について説明するための説明図である。Frontγ(γ
f)202は、階調変換部102によるγ補正を示す。Rearγ(γ
r)204は、階調変換部132によるγ補正を示す。Panelγ(γ
p)206は、表示デバイス30のγ特性を示す。Frontγ202、Rearγ204及びPanelγ206は、いずれも非線形関数である。
【0049】
FrontFilter212、MidFilter214及びRearFilter216は、鮮鋭化処理部110の配置例を示す。FrontFilter212は、階調変換部102による階調変換の前に鮮鋭化処理を実行する場合の配置を示す。MidFilter214は、階調変換部102による階調変換の後であり、かつ、階調変換部132による階調変換の前に鮮鋭化処理を実行する場合の配置を示す。RearFilter216は、階調変換部132による階調変換の後に鮮鋭化処理を実行する場合の配置を示す。
【0050】
Rearγ204は、数式1及び数式2に示すように、出力信号OとRearγ204とが線形関係になるように調整している。
【0053】
Frontγ202は、数式3に示すように、例として、Rearγ204入力信号がγ=2となるように調整している。
【0055】
鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理を実行しない場合、出力信号O
n(x)は数式4によって表される。
【0057】
鮮鋭化処理部110は、数式5に示す計算を実行する。
【0058】
【数5】
ただし、x:座標、B:フィルタ範囲、c(Δx):フィルタ係数。
【0059】
出力信号O
n(x)に対して線形にフィルタ係数を適用できれば、設計したとおりに鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFが、鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも1.0に近づくように処理できる。
【0060】
数式6は、鮮鋭化処理部110をFrontFilter212として配置した場合の計算式を示す。
【0062】
数式6によれば、係数c(Δx)がFrontγ202の影響を受けることが示される。クロスターム(...)により、係数、画素間で相互作用が起きる。このように、鮮鋭化処理部110をFrontFilter212として配置した場合、出力信号O
n(x)に対して線形にフィルタ係数を適用できない。
【0063】
数式7は、鮮鋭化処理部110をMidFilter214として配置した場合の計算式を示す。
【0065】
数式7によれば、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理を実行しない場合の出力信号O
n(x)に対して、線形にフィルタ係数を適用できることが示される。
【0066】
数式8は、鮮鋭化処理部110をRearFilter216として配置した場合の計算式を示す。
【0068】
数式8において、γ
p(x)は非線形関数であるので、加法性が成立せず、線形にフィルタ係数を適用できないことが示される。
【0069】
以上の通り、本実施形態に係る鮮鋭化処理部110によれば、階調変換部102による階調変換の後であり、かつ、階調変換部132による階調変換の前に鮮鋭化処理を実行することにより、線形にフィルタを適用することができるので、鮮鋭化処理を実行する場合の表示装置10のMTFを、鮮鋭化処理を実行しない場合の表示装置10のMTFよりも適切に1.0に近づけることができる。
【0070】
図8は、オーバーフロー抑制部124による処理について説明するための説明図である。R成分180、G成分182及びB成分184は、入力画像信号が示す複数の画素のうちの一の画素のRGB成分を示す。
【0071】
オーバーフロー抑制部124は、R成分180、G成分182及びB成分184のうちの最大値と上限値との差分値186と、R成分180、G成分182及びB成分184のうちの最小値と下限値との差分値188とを計算する。そして、オーバーフロー抑制部124は、計算した差分値のうち値が小さいものを最小差分値として、当該画素に対して差分計算部114が計算した輝度差分の値と、最小差分値とを比較する。そして、オーバーフロー抑制部124は、輝度差分の値が最小差分値より大きい場合に、当該画素に適用する適用差分の大きさを最小差分値の大きさとする。
【0072】
なお、オーバーフロー抑制部124は、数式9によって、複数の画素のそれぞれの補正可能範囲を制限してもよい。
【0073】
【数9】
ただし、(x、y):実領域における座標、m(x、y):補正値の最大値、n(x、y):入力信号レベル(8ビット)。
【0074】
図9及び
図10は、オーバーフロー抑制部124によるオーバーフロー抑制について説明するための説明図である。
図9は、黒い背景に1ピクセルの白いラインを有する画像を示すサンプルの画像信号の輝度成分190を示す。フィルタ係数192は、サンプルの画像信号に対して適用する鮮鋭化フィルタ111の係数の一例を示す。
【0075】
図10は、サンプルの画像信号に対してフィルタ係数192を用いた鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理が施された場合の出力信号の輝度成分194を示す。ここでは、鮮鋭化処理部110による鮮鋭化処理後の画素値が上限値を上回る又は下限値を下回るレンジオーバーが発生した場合の出力信号の輝度成分を示す。
【0076】
図10に示すように、レンジオーバーが発生しなければ振幅強調成分196が現れるべきところ、レンジオーバーによって輝度が飽和するために、振幅強調成分196が現れず、MTF抑制成分198のみが現れる場合がある。MTF抑制成分198とは、MTF
D−1144を逆フーリエ変換した場合に生成される、MTFが高くなりすぎることを防止する特性を有する成分である。このように、レンジオーバーが発生すると、MTF抑制成分198のみが機能して、結果としてMTFが低下してしまう場合がある。それに対して、本実施形態に係る画像処理部100によれば、オーバーフロー抑制部124によって、画像信号が示す画像の複数の画素に対して適用差分を適用した結果の画素値が上限値又は下限値を超えないように適用差分が調整されるので、このような事態の発生を防止することができる。
【0077】
以上の説明において、画像処理部100の各部は、ハードウエアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよい。また、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが画像処理部100として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体又はネットワークに接続された記憶装置から、画像処理部100の少なくとも一部を構成するコンピュータにインストールされてよい。
【0078】
コンピュータにインストールされ、コンピュータを本実施形態に係る画像処理部100として機能させるプログラムは、CPU等に働きかけて、コンピュータを画像処理部100の各部としてそれぞれ機能させる。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータに読込まれることにより、ソフトウエアと画像処理部100のハードウエア資源とが協働した具体的手段として機能する。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】入力された画像信号の階調を変換する第1階調変換部と、第1階調変換部によって階調が変換された画像信号に対して鮮鋭化処理を実行する鮮鋭化処理部とを備える画像処理装置を提供する。