【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0043】
(実施例1〜11、比較例1〜10)
NBR層及びIIR層の2層構造のゴム積層体の接着性及び製造作業性(ロール作業性及び耐ブリード性)について、試験を行った。
【0044】
本実施例および比較例では、NBR層の配合材料及び配合割合を変えて試験を行った。表1にはNBR層の配合材料及び配合割合を示し、表2にはIIR層の配合材料及び配合割合を示している。また、表1には、ゴム積層体の試験結果(接着性)及び製造作業性の試験結果(ロール作業性及び耐ブリード性)を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、試験条件及び試験結果を説明する。
[実験条件]
1.NBR層用材料の調整及び成形
NBRに、酸化亜鉛、ステアリン酸、FEFカーボン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリカ及びDBU塩を添加し(表1参照)、これらをニーダー及びロールを用いて混練することにより、NBR層用材料を調整し、これをシート状に成形した。ここで、表1の「−」は、該当する成分を添加していないことを示す。また、表1の「フェノール樹脂」はレゾール型フェノール樹脂である。さらに、表1の「エポキシ樹脂A」はビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、「エポキシ樹脂F」はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
2.IIR層用材料の調整及び成形
IIRに、酸化亜鉛、ステアリン酸、FEFカーボン、フェノール樹脂及びシリカを添加し(表2参照)、これらをニーダー及びロールを用いて混練することにより、IIR層用材料を調整し、これをシート状に成形した。ここで、表2の「フェノール樹脂」はレゾール型フェノール樹脂である。
3.ゴム積層体の作製
上記1,2で得られたシート状の成形体を積層し、加熱して架橋させることにより、2層構造のゴム積層体を作製した。
【0048】
ここで、上記成分には下記の製品を用いた。
・NBR:日本ゼオン製 (製品名)Nipol 1052J
・IIR:JSR製 (製品名)JSR BUTYL 365
・酸化亜鉛:正同化学工業製 (製品名)酸化亜鉛 3種
・ステアリン酸:新日本理化学工業製 (製品名)ステアリン酸 50S
・FEFカーボン:キャボットジャパン製 (製品名)ショウブラック N550
・硫黄:細井化学工業製 (製品名)微粉硫黄 500メッシュ
・TS:大内新興化学工業製 (製品名)ノクセラー TS(TS−P)
・過酸化物:日本油脂製 (製品名)パーブチル P(登録商標)
・フェノール樹脂:田岡化学工業製 (製品名)タッキロール 250−I
・エポキシ樹脂A:三菱化学製 (製品名)jER 828
・エポキシ樹脂F:三菱化学製 (製品名)jER 806
・シリカ:トクヤマ製 (製品名)トクシール 233
・DBU塩:ダイソー製 (製品名)P−152
【0049】
[試験結果]
<接着力、剥離状態>
ゴム積層体を所定の大きさの試験片に形成し、これを用いて剥離試験(JIS K6256−1)を行った。表1には、剥離試験の結果として、2つのゴム層の「剥離状態」を示している。「剥離状態」には、試験片を引張試験装置に取り付け、NBR層の一端及びIIR層の一端(同じ側の一端)を互いに反対の方向に引っ張ったときのゴム界面の架橋接着の度合いを示している。表1では、両層を引っ張っても2つのゴム層が界面で剥離せず、一方のゴム層がすべて破壊したときを「◎」とし、すべてではないが大部分が破壊したときを「○」とし、界面剥離が起こらなかったが、一方のゴム層に他方のゴム層の一部が接着残存したとき(他方のゴム層が部分的に破壊したとき)を「△」とした。また、界面剥離が起こったときを「×」とした。
【0050】
<ロール作業性>
NBR層用材料の調整において、ロールを用いて材料を混練した際のロール作業性を確認した。ロール作業に問題がなかったときを「○」とし、NBR層用材料が粘着性を示し、粘着成分がロール表面に残留したときを「△」とした。また、NBR層用材料が粘着性を示し、材料がロール表面に接着してロール表面から離れなかったときを「×」とした。
【0051】
<ブリード性>
NBR層用材料の調整において、ロールを用いて材料を混練した際のエポキシ樹脂によるブリード性を確認した。ブリードが起こらなかったときを「○」とした。そして、ブリードが起こったが、ブリード量が少なかったときを「△」とし、ブリード量が比較的多かったときを「×」とした。
【0052】
表1,2から、実施例1〜11では、NBR層とIIR層との接着性が良好であるとともに、ロール作業性及びブリード性に問題がなかった。また、同種のフェノール樹脂及びエポキシ樹脂を用いた、実施例2と実施例6〜10とを比較すると、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂が同じ含有量であるが、シリカ及びDBU塩を添加した実施例6〜10では、シリカ及びDBU塩を添加していない実施例2よりも接着性が向上した。さらに、実施例2と実施例11とでは、用いたエポキシ樹脂の種類が異なるものの、同等の接着性を示した。
【0053】
一方、比較例1,2では、NBR層にフェノール樹脂及びエポキシ樹脂でなく別の架橋剤を添加したため、NBR層とIIR層とが殆ど接着せず界面剥離が起こったと考えられる。
【0054】
また、比較例3では、NBR層のフェノール樹脂含有量及びエポキシ樹脂含有量が少なすぎたため、実施例1〜11よりも接着性が低下したと考えられる。
【0055】
さらに、比較例4〜10では、実施例1〜11との配合割合の相違から、実施例1〜11よりも製造作業性が低下した。なお、比較例4,5では、フェノール樹脂含有量及びエポキシ樹脂含有量が多すぎたため、ロール作業性及び耐ブリード性が低下したと考えられる。また、比較例6〜9では、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂のうち一方の含有量が多すぎたため、ロール作業性および/または耐ブリード性が低下したと考えられる。
【0056】
また、比較例10では、シリカ添加量が多かったため、NBR層用材料の粘着性が高くなり、ロール作業性が低下したと考えられる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0058】
例えば、本実施形態では、フレキシブルホース100は、2層のゴム積層体を用いて形成されているが、NBR層とIIR層との3層以上のゴム積層体を用いて形成されてもよい。
【0059】
また、繊維補強層3は、ブレード編みの1層で形成されているが、ブレード編みの2層で形成されてもよく、スパイラル編みの層で形成されてもよい。これらの場合は、各繊維補強層の間に、さらにゴム層が追加されてもよい。
【0060】
また、本実施形態及び本実施例では、NBR層にフェノール樹脂及びエポキシ樹脂が含有されている場合について説明したが、NBR層及びIIR層の両層にフェノール樹脂及びエポキシ樹脂が含有されてもよい。また、IIR層に、フェノール樹脂が含有されなくてもよい。
【0061】
さらに、本実施形態及び本実施例では、フレキシブルホースの製造において、
図2に示すように、NBR層用成形体と、IIR層用成形体とを別々に押出成形(S5A,S5B)して積層(S5B)したが、
図3に示すように、NBR層用成形体とIIR層用成形体とを同時に押出成形して積層(S5)してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、NBR層とIIR層とのゴム積層体が自動車等の冷媒輸送用ホースに用いられる場合について説明したが、上記積層体の用途は自動車等の冷媒輸送用ホースに限られず、パッキンや他の用途のホースに用いてもよい。
【0063】
さらに、NBR層及びIIR層の含有成分は、本実施形態及び本実施例に示すものに限られない。また、NBR層にシリカ、DBU塩が含有されていなくてもよい。また、ホースとして要求される強度及び伸延性等のゴム特性や作業性をさらに向上させるため、NBRに過酸化物等の架橋剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、着色剤等の市販されている配合剤を必要に応じて添加してもよい。