【実施例】
【0042】
実施例1
3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボヒドラジド(101mg、0.5mmol)、1−[(2−フェニルエチル)]−3−シアノグアニジン(94mg、0.5mmol)、エタノール(2mL)及び5NHCl(0.1mL、0.5mmol)の混合物を18時間撹拌加熱還流した。冷却後、濾過して沈殿物を除去し、濾液を減圧濃縮した。残渣にメタノール(2mL)及び5M NaOMeのメタノール溶液(0.2mL)を加えてアルカリ性にした。混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、CHCl
3;メタノール:25%NH
4OH(100:40:4)で溶出し、1−(3,5−ジアミノ−6−クロロピラジンアミド)−5−[2−(フェニルエチル)ビグアニド(化合物1)を黄色アモルファス粉末を得た(120mg、収率62%)。
【0043】
1H-NMR(500MHz, DMSO-d
6+ D
2O)δ:2.81(2H,t,J=7.5Hz), 3.38(2H,t,J=7.5Hz), 7.22(2H,t,J=6.9Hz), 7.27-7.31(3H,m).
13C-NMR(125MHz DMSO-d
6)δ:36.59, 43.44, 114.42, 118.32, 127.35, 129.56, 130.03, 140.80, 153.81, 155.36, 158.23, 161.60, 163.42.
HR-FAB-MS m/z:391.1510[M+H]
+(Calcd for C
15H
2035ClN
10O:391.1509), 393.1478[M+H]
+(Calcd for C
15H
2037ClN
10O:393.1480).
【0044】
実施例2
1−[(2−フェニルエチル)]−3−シアノグアニジンの代わりに、1−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−3−シアノグアニジンを用いて、実施例1と同様にして、1−(3,5−ジアミノ−6−クロロピラジンアミド)−5−[2−(4−クロロフェニル)エチル]ビグアニド(化合物2)を黄色アモルファス粉末として得た(86mg、収率40%)。
【0045】
1H-NMR(500MHz, DMSO-d
6+ D
2O)δ:2.80(2H,t,J=7.5Hz), 3.36(2H,t,J=7.5Hz), 7.30(2H,br s), 7.34(2H,d,J=8.0Hz).
13C-NMR(125MHz, DMSO-d
6)δ:35.73, 43.27, 113.99, 118.54, 129.47, 131.95, 132.03,139.73, 154.00, 155.50, 158.39, 161.92, 164.51.
HRMS(FAB) m/z: Calcd for C
15H
1935Cl
2N
10O:425.1119(M+1). Found:425.1116(M+1)
+. Calcd for C
15H
1935Cl
37ClN
10O:427.1090(M+1). Found:427.1094(M+1)
+. Calcd for C
15H
1937Cl
2N
10O:429.1060(M+1). Found:429.1107(M+1)
+.
【0046】
実施例3
1−[(2−フェニルエチル)]−3−シアノグアニジンの代わりに、1−[2−(3,4−ジクロロフェニル)エチル]−3−シアノグアニジンを用いて、実施例1と同様にして、1−(3,5−ジアミノ−6−クロロピラジンアミド)−5−[2−(3,4−ジクロロフェニル)エチル]ビグアニド(化合物3)を黄色アモルファス粉末として得た(144mg、収率63%)。
【0047】
1H-NMR(500MHz, DMSO-d
6+ D
2O)δ:2.83(2H,t,J=7.2Hz), 3.38(2H,t,J=7.2Hz), 7.27(1H,br s), 7.53(2H,br s).
13C-NMR(125MHz DMSO-d
6)δ:35.45, 42.98, 113.97, 118.48, 129.99, 130.62, 131.61, 132.06, 132.14, 142.10, 153.96, 155.47, 158.38, 161.57,164.28.
HR-FAB-MS m/z:459.0735[M+H]
+(Calcd for C
15H
1835Cl
3N
10O:459.0729), 461.0736[M+H]
+(Calcd for C
15H
1835Cl
237ClN
10O:461.0700), 463.0711[M+H]
+(Calcd for C
15H
1835Cl
37Cl
2N
10O:463.0671), 465.0660[M+H]
+(Calcd for C
15H
1837Cl
3N
10O:465.0641).
【0048】
実施例4
1−[(2−フェニルエチル)]−3−シアノグアニジンの代わりに、1−[3−(4−クロロフェニル)プロピル]−3−シアノグアニジンを用いて、実施例1と同様にして、1−(3,5−ジアミノ−6−クロロピラジンアミド)−5−[3−(4−クロロフェニル)プロピル]ビグアニド(化合物4)を黄色アモルファス粉末として得た(135mg、収率61%)。
【0049】
IR (KBr) cm
-1: 3471, 3318, 3197, 2935, 1604, 1544, 1498, 1427, 1243.
1H-NMR (DMSO-d
6+ D
2O, 500MHz,)δ:1.76 (2H, quintet, J=7.5 Hz), 2.61 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.13 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.11 (2H, t, J=6.9 Hz), 7.25 (2H, d, J=7.5 Hz), 7.32 (2H, d, J=7.5 Hz).
13C-NMR(DMSO-d
6,125 MHz)δ:32.0,32.98,41.31,114.13,118.42,129.46,131.48,131.60,142.01,153.91,155.43,158.61,161.76,164.10.
HR-FAB-MS m/z: 439.1276 [M+H]
+ (Calcd for C
16H
2135Cl
2N
10O: 439.1276),
441.1244 [M+H]
+ (Calcd for C
16H
2135Cl
37ClN
10O: 441.1246), 443.1284 [M+H]
+ (Calcd for C
16H
2137Cl
2N
10O: 443.1217).
【0050】
実施例5
1−[(2−フェニルエチル)]−3−シアノグアニジンの代わりに、1−[2−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]−3−シアノグアニジンを用いて、実施例1と同様にして、1−(3,5−ジアミノ−6−クロロピラジンアミド)−5−[2−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル]ビグアニド(化合物5)を黄色アモルファス粉末として得た(135mg、収率59%)。
【0051】
IR (KBr) cm
-1: 3324, 3205,1612, 1546, 1504, 1425, 1328, 1241.
1H-NMR (DMSO-d
6 +D
2O, 500MHz,) δ:2.90 (2H, t, J=7.5 Hz), 3.39 (2H, t, J=7.5 Hz), 7.53-7.64 (4H, m).
13C-NMR(DMSO-d
6, 125MHz) δ:36.36,40.96,115.02,118.05, (124.09,124.12 or 124.1,d,J
C-F=3.8Hz),(124.56,126.73,128.89,129.94 or 127.81,q,J
C-F=271.0Hz),(126.59,126.62 or 126.0,d,J
C-F=3.8Hz), (129.94,130.18,130.43,130.68 or 130.30,q,J
C-F=31.27Hz), 130.58,134.36,142.49,153.64,155.20,157.98,161.39,162.56.
HR-FAB-MS m/z: 459.1382 [M+H]
+ (Calcd for C
16H
1935ClF
3N
10O: 459.1383), 461.1371 [M+H]
+ (Calcd for C
16H
1937ClN
10O: 461.1353).
【0052】
実施例6〜27
実施例1〜5と同様にして、表1に示す化合物を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
試験例1
本発明化合物がNMDA受容体に及ぼす影響を二電極膜電位固定法(Voltage Clamp法)により測定した。
(1)NMDA受容体を発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞の準備
卵母細胞の発現試験例のスキームを
図1に示す。この方法は、益子らの方法(Masuko T.et al.,Mol.Pharmacol.,55:957−969(1999);Masuko T.et al.,Nuerosci.Lett.,371:30−33(2004);Masuko T.et al.,Chem.Pharm.Bull.,53(4):444−447(2005))に従って行うことができる。卵母細胞には、NMDA受容体のNR1サブユニット及びNR2サブユニットのcRNAを1:5の割合(NR1が0.1−4ng、NR2が0.5−20ng)で注入し、NMDA受容体を発現した卵母細胞を得た。
(2)この卵母細胞を培地(96mM NaCl,2 mM KCl,1mM MgCl
2,1.8mM CaCl
2,5mM Na−HEPES,2.5mMピルビン酸ナトリウム、50mg/mLゲンタマイシン、pH=7.5)中で1〜3日間19℃で培養した。
測定日には、卵母細胞中にK
+−BAPTAを注入した後、記録用バッファー(96mM NaCl,2mM KCl,1.8mM BaCl
2,10mM Na−HEPES,pH=7.5)を用いて後述の二電極膜電位固定法により受容体の活性を測定した。
尚、NR1には1種類、NR2にはNR2A〜NR2Dの4種類の遺伝子が存在し、NMDA受容体にはNR1/NR2A,NR1/NR2B,NR1/NR2C,NR1/NR2Dのサブタイプがあるが、脳内においてはNR1/NR2Aが最も広く発現していると考えられているため、以下の試験では、NR1/NR2Aに対する活性阻害効果を測定した。
【0055】
(3)二電極膜電位固定法
二電極膜電位固定法は、益子らの方法(Masuko T.et al.,Nuerosci.Lett.,371:30−33(2004))に従った。二電極電位固定用増幅器CEZ−1250(日本光電)を用いて卵母細胞の膜全体を通過する電流を測定した。電極に3Mの塩化カリウムを満たし、抵抗は0.4−4MΩとした。また、測定の際は、NMDA受容体のアゴニストとしてグルタミン酸とグリシンを添加した。
(4)上記方法により得られた卵母細胞に、種々の濃度の化合物を添加し、固定電位をVh=−70mV(静止膜電位)とし、NR1/NR2Aに対する活性阻害効果を測定した。
(5)対照化合物としてメマンチン及びアミロライドを使用して、同様に測定した。例数4〜5の卵母細胞から得た値の平均値±S.E.M.を測定値とし、これらの結果から求められたIC
50の値を表2に示す。
【0056】
試験例2
本発明化合物がASIC1aに及ぼす影響を二電極膜電位固定法(Voltage Clamp法)により測定した。
【0057】
(1)ASIC1aを発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞の準備
HEK293細胞からRNeasy Protect Mini Kit(QIAGEN)を用いて、total RNAを調製した。次に、High Fidelity RNA PCR kit(TAKARA)を用いて、first strand cDNAを合成し、このfirst strand cDNAを鋳型としてPCR法を行った。PCRのプライマーはsense;ATGGAACTGAAGGCCGAGGAG(配列番号1)とantisense;TCAGCAGGTAAAGTCCTCGAACGT(配列番号2)を用い、反応条件は、95℃30秒、55℃30秒、72℃90秒を1サイクルとし、30サイクル行った。PCR産物はPCR2.1ベクターに挿入させ、さらにpcDNA3.1(−)ベクターにサブクローニングした。BamHI酵素で直鎖化されたASIC1a プラスミドからmMessage mMachine Kits(Ambion)を用いて、capped cRNAを合成した。ASIC1aをコードするcapped cRNAを卵母細胞に10ngずつ注入し、培地(96mM NaCl,2mM KCl,1mM MgCl
2,1.8mM CaCl
2,5mM Na−HEPES,2.5mMピルビン酸ナトリウム、50mg/mLゲンタマイシン、pH=7.5)中で19℃で2〜3日間インキュベーションした。
(2)ASIC1aの活性測定は標準的な細胞外溶液(96mM NaCl,2mM KCl,1.8mM CaCl
2,1mM MgCl
2,10mM MES or 5mM Na−HEPES)を用い、pH=7.5からpH=6.0に変化させることにより誘発された電流量を二電極膜電位固定法により測定した。
(3)試験例1と同様にして、例数4〜5の卵母細胞を用いて得られた結果からIC
50を求めた。その結果を表2に示す。
【0058】
試験例3
SH−SY5Yを用いて細胞毒性試験を行った。この試験においても対照化合物としてメマンチン及びアミロライドを使用した。
SH−SY5Y神経芽細胞腫細胞系をAmerican Type Culture Collectionより購入した。細胞は、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100U/mL)、及び非働化ウシ胎児血清(Gibco)を加えた培地で培養した。細胞は37℃のCO
2インキュベーター内に維持され、空気95%とCO
2 5%の条件に保たれた。
アラマーブルーアッセイ
未分化SH−SY5Y細胞にさまざまな濃度の化合物1、2、3を24時間暴露した。アラマーブルーのストック溶液は96穴のウエルプレートに移され、最終アッセイボリュームが100μL/wellとなるようにし、アラマーブルーの最終濃度を10%とした。6時間後、還元されたアラマーブルーを波長570nmで測定した。生存率(%)は、薬物無添加の細胞のミトコンドリアの呼吸活性を100%とし、化合物1、2、3を24時間暴露した細胞の呼吸活性を相対値で表した。呼吸活性が50%になったときの化合物1、2、3の濃度をIC
50とし、表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
また、前記実施例4〜27の化合物は、30μM濃度でASIC1a及びNR1/NR2Aに対する阻害活性を有することが確認された。
表2から明らかなように、本発明化合物は、アミロライド及びメマンチンに比べて強力にNMDA受容体及びASIC1aを阻害した。またその細胞毒性は、弱かった。