(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935230
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】制御されたラジカル支援重合
(51)【国際特許分類】
B05D 3/10 20060101AFI20160602BHJP
B05D 1/34 20060101ALI20160602BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
B05D3/10 E
B05D1/34
C23C16/44 B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-553665(P2014-553665)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公表番号】特表2015-509834(P2015-509834A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2013050325
(87)【国際公開番号】WO2013110502
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】91934
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】514170363
【氏名又は名称】セントレ デ レシェルシェ パブリック−ガブリエル リップマン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】レノブレ,ダミエン
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/034781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00〜 7/26
C23C16/00〜16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコーティングを基材(1)上に形成する方法であって:
真空排気した反応チャンバ(3)内に被コーティング表面(2)を有する基材(1)を配置する工程;
ポリマー形成材料(6)の第1供給源(5)及びラジカル(8)の第2供給源(7)を提供する工程;
を含み、第1供給源(5)及び第2供給源(7)が、反応チャンバ(3)外に互いに分離されて配置されていること、及び
ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)が少なくとも一時的に、同時発生的に及び空間的に分離されて基材(1)の被コーティング表面(2)に導通されており、
ポリマー形成材料(6)とラジカル(8)が基材(1)の被コーティング表面(2)に到達する前に、ポリマー形成材料(6)とラジカル(8)が反応することが回避されること、を特徴とする、方法。
【請求項2】
ポリマー形成材料(6)が第1の導管手段(9)を介して被コーティング表面(2)に導通されており、ラジカル(8)が第2の導管手段(10)を介して被コーティング表面(2)に導通されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)がそれぞれ本質的に垂直に基材(1)の被コーティング表面(2)上に噴霧される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)が、本質的に平行な流れ(13、14)の形で基材(1)の被コーティング表面(2)上に少なくとも部分的に噴霧され、その際ポリマー形成材料(6)の流れ(13)及びラジカル(8)の流れ(14)が空間的に交互に基材(1)の被コーティング表面(2)上に噴霧される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)が、基材(1)の被コーティング表面(2)から2cm未満、好ましくは1cm未満、より好ましくは0.5cm未満の距離(D)まで、導管手段(9、10)によって別々に案内され、その後、基材(1)の被コーティング表面(2)上に噴霧される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従って基材(1)の被コーティング表面(2)上にポリマーコーティングを形成するデバイス(100)であって、該デバイスが:
基材(1)を収容するための反応チャンバ(3);
ポリマー形成材料(6)を提供するための第1供給源(5);
ラジカル(8)を提供するための第2供給源(7);
を具備し、該デバイス(100)が更に:
ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)を各供給源(5、7)から被コーティング表面(2)に同時発生的に及び空間的に分離して導通するための導管システム(4)を具備し、ポリマー形成材料(6)及びラジカル(8)が基材(1)の被コーティング表面(2)に到達する前に、ポリマー形成材料(6)とラジカル(8)が反応することが回避されることを特徴とする、デバイス。
【請求項7】
導管システム(4)が、流体的に分離された第1の導管手段(9)及び第2の導管手段(10)を具備し、その際第1の導管手段(9)は第1供給源(5)と流体連通しており、第2の導管手段(10)は第2供給源(7)と流体連通しており、第1の導管手段(9)はポリマー形成材料(6)を基材(1)の被コーティング表面(2)に噴霧するための複数の第1出口(11)を具備し、第2の導管手段(10)はラジカル(8)を基材(1)の被コーティング表面(2)に噴霧するための複数の第2出口(12)を具備する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
第1出口(11)及び第2出口(12)が、被コーティング表面(2)と向かい合い、好ましくは本質的に平行な平面に本質的に配置される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
第1出口(11)及び第2出口(12)が平面の少なくとも一部に交互に配置される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
導管システム(4)が第1供給源(5)と流体連通する第1入口及び第2供給源(7)と流体連通する第2入口を具備し、その際複数の第1出口(11)が第1入口のみと流体連通しており、複数の第2出口(12)が第2入口のみと流体連通している、請求項7〜9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
出口(11、12)が、複数の第1出口(11)が複数の第2出口(12)の少なくとも2つに隣接するように又はその逆となるように配置される、請求項7〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
出口(11、12)から基材(1)の被コーティング表面(2)までの最小距離(D)が20mm未満、好ましくは10mm未満、より好ましくは5mm未満である、請求項7〜11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
第1の導管手段(9)及び第2の導管手段(10)が、本質的に平行な流れ(13、14)を被コーティング表面(2)上に垂直に噴霧するための本質的に平行な流れを出口(11、12)に供給するように適応される請求項7〜12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
第1の導管手段(9)が複数の第1の平行中空歯(17)を有する第1櫛形部材(15)を具備し、第2の導管手段(10)が複数の第2の平行中空歯(18)を有する第2櫛形部材(16)を具備し、第1及び第2櫛形部材の歯(17、18)が互いに係合しており、第1櫛形部材(15)の歯(17)は複数の第1出口(11’)を具備し、第2櫛形部材(16)の歯(18)は複数の第2出口(12’)を具備する、請求項7〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
出口(11、12)がハニカム状に交互に配置されているか又は市松模様に配置されており;及び/又は
出口(11、12)の断面が:六角形、円形、楕円形、長方形、三角形、星形又は多角形の1つ以上である、請求項7〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコーティング又はフィルムを製造する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーを溶液中で調製することは一般的に知られている。しかし、このような方法は、多くの場合、高額、腐食性又は毒性の溶媒を必要とする。更に、そのような溶液中ではしばしば望ましくない又は制御不可能な反応が起こる。最後に、溶液中でポリマーが生成した後、更にフィルム又はコーティングを形成する必要があり、これは通常、複数の時間がかかるクリーニング及び付着工程を更に必要とする。
【0003】
ポリマーフィルムを直接付着できる別の既知の方法は、化学蒸着(CVD)である。
【0004】
CVDの1種は、蒸着重合(VDP)である。VDPによると、開始剤又は酸化剤を使用することなく、基材の表面で2つのモノマー間の縮合反応が開始される。具体的には、モノマーが、温度制御された基材の表面で揮発する。このような方法は、溶媒に不溶なモノマーの重合を可能にし、生成鎖長をある程度制御する。しかし、VDPによると、モノマーの濃度及び被コーティング試料の表面へのモノマーの流動を制御することが困難である。特に、試料表面への吸着と長いポリマー鎖の形成の間で競争があり、低温では吸着が優先され、高温では長いポリマー鎖の形成が優先される。これは、この方法によるコポリマーの組成の制御が困難な理由の1つにすぎない。
【0005】
別の既知の重合方法は、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)である。この技術は主に、無機フィルムを比較的低温及び高い付着速度で付着するために使用されてきた。残念ながら、プラズマチャンバに注入されたモノマーは、プラズマによって、プラズマ中の電子、イオン又はラジカルによるイオン化又は断片化をうける。更に、このようなプラズマポリマーは多くの場合不規則であり、かなり短い鎖長を有する。さらに、頻繁に架橋し、ランダムに終端する。プラズマ重合はラジカル及びモノマーの断片のランダムな多重再結合を招く。プラズマ重合の分野で知られる技術革新は、パルスプラズマモードの使用である。その場合、(数マイクロ秒の)短いプラズマパルスが分子を活性化し、ラジカルを生成し、重合反応を開始することができる。パルスの後、残留するラジカルがプラズマOFF時間(典型的には数十マイクロ秒)の間に純粋な化学的ラジカル鎖反応を開始する。この場合、より化学的に規則的な生成物が予想されるが、化学重合中の連鎖成長は、成長鎖の末端で新規モノマーがラジカルに付加する可能性が低いことによって制限される。更に、通常の真空条件下(例えば、約10Pa)では、隣接するラジカルの再結合による連鎖成長の不活化が予想される。これは、プラズマOFFの間に活性ラジカル部位のかなりの喪失を招く。それ故、新たな開始ラジカルを生成するためにプラズマを再点火する。得られるポリマーフィルムは、液相でのラジカル重合によって得られる相当物に近い構造及び組成を有するが、プラズマON時間に誘導された繰り返し可能な不規則性を示す。このような問題を回避する必要がある。
【0006】
ポリマーコーティングを付着するための方法で他に知られているのは、開始剤化学蒸着(iCVD)である。この方法は、開始剤を熱分解して、共注入したモノマーの重合開始を支援するフリーラジカルを生成することを基本とする。一般的に、iCVDは、加熱フィラメント(例えば、200℃〜550℃)のネットワークを使用して開始剤分子を熱分解し、重合反応を開始できるラジカルを生成する。続いて、このラジカルがモノマーと共にキャリア基材へと拡散する。残念ながら、熱分解はモノマーの分解も生じる可能性があり、制御が困難である。さらに、開始剤の熱分解は、生成するポリマーの品質を低下し、ポリマー形成の制御を妨害する可能性のある更に望ましくないイオン又は作用剤を生じる可能性がある。更に、基材表面に到達するラジカル及びモノマーの量は制御が困難である。他のiCVD方法では、開始剤をUV照射によって活性化することができる(光開始CVD)。しかしながら、既知のiCVD法はすべて、重合反応を十分に制御することができない。特に、フリーラジカルは、蒸着の前に制御不能に再結合する。
【0007】
最後に、オキシダント化学蒸着(oCVD)という方法が最新技術において知られている。具体的には、モノマーがオキシダント種と反応する。oCVDは、エネルギー的開始(例えば、熱的又は光学的)によるオキシダントとモノマーの間の自発的反応を用いる。しかし、オキシダントは揮発性がきわめて低く、蒸気相への注入は、非常に特異な種類の反応器を必要とする困難な問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、既知の方法は複数の欠点を伴う。要約すると、これらの方法は多くの場合、生成するポリマーの鎖長を十分に制御することができない。もう1つの問題は、ポリマー及び/又はポリマー形成材料の分解で、これは生成するポリマーコーティングに望まれる機能特性の喪失につながる可能性がある。特に、上記方法のいくつかは反応チャンバ内でプラズマを利用し、その結果、影響を受けやすいポリマー又は前駆体(すなわち、特に有機材料)の分解を生じる。
【0009】
更に、ポリマー形成材料の濃度を開始剤と関連づけて十分に制御することは常に可能であるとは限らず、そのため層厚及び鎖長の制御が困難になる。
【0010】
その他の方法は、複数の連続するコーティング工程を必要とし、時間がかかるため、こうした方法は大量生産の目的では興味を持たれない。
【0011】
技術的問題は、基材上にポリマーコーティングを形成する先進の方法を提供することである。
【0012】
特に、その方法は、ポリマー鎖長、架橋及び/又はコーティング厚の制御の改良が可能である必要がある。
【0013】
さらに、方法は、高速で、実施が容易であり、経済的である必要がある。
【0014】
本発明の別の目的は、上記の欠点の少なくとも1つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の技術的問題は、請求項1に記載の方法によって解決される。この方法は、基材上にポリマーコーティングを形成することを目的とし、真空排気した反応チャンバ内に被コーティング表面を有する基材を提供する工程並びにポリマー形成材料の第1供給源及びラジカルの第2供給源も提供する工程を含む。特に、第1供給源及び第2供給源は互いに及び反応チャンバから分離されている。ポリマー形成材料及びラジカルは(少なくとも一時的に)同時発生的に(同時に)導通されているが、基材表面と空間的に分離されており(別個であり)、好ましくは、その結果ポリマー形成材料とラジカルの反応は、これらが基材表面に到達する前に回避される。
【0016】
2つの別々の材料供給源が提供されることから、所望量のラジカル及びポリマー形成材料(例えば、モノマー)を製造すること、及びそれらを反応チャンバ内の基材に提供することが可能である。ポリマー形成材料及びラジカルを空間的に分離した状態に保つことによって(例えば、流体的に別個の導管手段によって)、両供給源材料の早期反応を避けることができる。ポリマー形成材料及びラジカルは、基材表面上で反応する。望ましくない観測不可能又は制御不可能な反応チャンバ内での事前反応が回避される。この方法は、重合反応を開始するポリマー形成材料及びラジカルの独立制御を提供する。更に、この方法は、適切な圧力及び温度範囲において、(反応チャンバから)独立して生成したラジカルによって開始される純粋な化学重合を招く。ラジカル供給源は、例えば、プラズマ、熱分解系等であることができる。
【0017】
好ましくは、生成するポリマーは有機ポリマーである。このような有機化合物及び対応する供給源材料又は前駆体(例えば、モノマー)は、特に敏感であり、付着工程中に破壊又は分解されてはならない。
【0018】
蒸気相ポリマー成長の分野の科学者の大部分は、現実的にいかなる種類のガス状又は部分揮発性有機前駆体も「重合」する可能性があると確信している。
【0019】
一般的に、蒸着されたコーティング又はフィルムを、更なる使用のために基材から除去することも可能である。
【0020】
本発明の態様によると、ポリマー形成材料は第1の導管手段を介して被コーティング試料表面に導通又は案内されており、ラジカルは第2の導管手段を介して被コーティング試料表面に導通されている。換言すれば、ポリマー形成材料及びラジカルはそれぞれ、被コーティング基材表面の近くに運ばれる。
【0021】
本発明の別の態様によると、ポリマー形成材料及びラジカルをそれぞれ本質的に垂直に試料表面に噴霧する。
【0022】
本発明の別の態様によると、ポリマー形成材料及びラジカルを、それぞれ別個の又は重複しない流れの形で試料表面上に噴霧する。
【0023】
ラジカル及びポリマー形成材料を表面上に直接噴霧することによって、両物質の反応が回避される。
【0024】
本発明の更に別の態様によると、ポリマー形成材料及びラジカルは、本質的に平行な(好ましくは分離した又は重複しない)流れ又は噴流の形で基材表面上に噴霧され、その際ポリマー形成材料の流れとラジカルの流れは、空間的に交互に基材表面上に噴霧される。換言すると、ポリマー材料の流れのそれぞれは少なくとも1つのラジカルの流れに隣接してもよく、又はその逆であってもよい。ポリマー形成材料の流れ又は噴流は、ポリマー形成材料の蒸気を含んでもよい。ラジカルの流れ又は噴流は、キャリアガスも含んでよい。例えば、キャリアガスは不活性ガス又は希ガスであってもよい。ポリマー材料の流れは、不活性又は希ガスのようなキャリアガスも含んでよい。流れを基材表面上に交互に供給することで、ポリマーコーティングの均質な形成が可能になる。
【0025】
本発明の更に別の態様によると、ポリマー形成材料及びラジカルは、基材表面から10cm未満、好ましくは5cm未満、更により好ましくは2cm未満であるが、好ましくは0.1cm以上の距離まで、導管(導通)手段を介して別々に導通される。その後、ポリマー形成材料及びラジカルは、基材表面上に噴霧される。
【0026】
更に、本発明は、好ましくは本発明の態様に従う方法によって、基材表面上にポリマーコーティング又はフィルムを形成するデバイスに関する。このようなデバイスは、被コーティング基材を収容するための反応チャンバ;ポリマー形成材料を提供するための第1供給源(例えば、モノマー又はオリゴマー);ラジカルを提供するための第2供給源(例えば、プラズマラジカルのプラズマ源);及び好ましくはポリマー形成材料とラジカルの反応が、それらが基材表面に到達する前に回避されるように、ポリマー形成材料及びラジカルを、それぞれの供給源から被コーティング基材表面まで同時発生的に及び空間的に分離して導通するための導管システムを具備する。
【0027】
本発明の更に別の態様によると、前記導管システムは流体的に分離された第1及び第2の導管手段を具備し、ここで第1の導管手段は第1供給源と流体連通し、第2の導管手段は第2供給源と流体連通する。更に、第1の導管手段はポリマー形成材料を基材表面上に噴霧するための複数の第1出口を具備してもよく、第2の導管手段はラジカルを基材表面上に噴霧するための複数の第2出口を具備してもよい。
【0028】
本発明の更に別の態様によると、第1出口及び第2出口は、本質的に、被コーティング基材表面と向い合う1つの平面内に配置される。
【0029】
本発明の更に別の態様によると、第1出口及び第2出口は、基材表面と向い合う1つの平面内に交互に配置される。このように空間的に交互な第1及び第2出口の配置の結果、ポリマー形成材料及びラジカルが基材表面に均質に提供される。
【0030】
本発明の更に別の態様によると、導管システムは、第1供給源と流体連通する第1入口及び第2供給源と流体連通する第2入口を具備し、ここで複数の第1出口は第1入口のみと流体連通し、複数の第2出口は第2入口のみと流体連通する。換言すると、第1及び第2の導管手段は、互いに流体連通するのでなく、流体的に分離されている。
【0031】
本発明の更に別の態様によると、出口は、複数の第1出口が複数の第2出口の少なくとも2つの出口に包囲されるか若しくは隣接するように、又はその逆となるように、配置される。
【0032】
本発明の更に別の態様によると、出口から試料表面までの最小距離又は通常距離は、100mm未満、好ましくは50mm未満、更により好ましくは20mm未満であるが、好ましくは1mmを超える。
【0033】
本発明の更に別の態様によると、第1の導管手段及び第2の導管手段は、本質的に平行な流れを被コーティング基材表面上に垂直に噴霧するために、本質的に平行な流れを出口に供給するように適応される。
【0034】
本発明の更に別の態様によると、第1の導管手段は、複数の第1平行歯を有する第1櫛形部材を具備し、第2の導管手段は、複数の第2平行歯を有する第2櫛形部材を具備し、第1及び第2櫛形部材の歯が互いに係合しており、第1櫛形部材の歯は複数の第1出口を具備し、第2櫛形部材の歯は複数の第2出口を具備する。この導管手段又は導管システムの特異な設計は、それぞれ、そのような手段の製造を簡素化する。更に、導管手段の1つを、第2手段を変更する必要なく、交換することができる。これは、導管手段が異なる材料で汚染されるのを回避する効果もある。
【0035】
本発明の更に別の態様によると、出口はハニカム状又は市松模様に交互に配置される。
【0036】
一般的に出口は任意の断面を有してもよいが、好ましくは、六角形、円形、楕円形、長方形、三角形、星形又は多角形の断面である。
【0037】
本発明の上記の態様の特徴はすべて、組合せても互いに置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下に、本発明の実施形態の図を簡単に説明する。詳細は、発明を実施するための形態で述べる。図は、本発明を例示することを目的としており、限定的な意味で理解されるべきではない。
【0039】
【
図1】本発明の実施形態による付着原理の概略図である;
【
図2】付着プロセス及びそれぞれの導管システムの概略的側面図である、
【
図3d】出口を具備する櫛様導管手段の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明によるデバイス100の実施形態を概略的に示す。被コーティング基材1はデバイス100の反応チャンバ3内に置かれている。更に、デバイス100は、ポリマー形成材料6を提供するための第1材料供給源5を具備する。第1材料供給源5は、不活性ガス(例えば、窒素)又は希ガス、及び製造するポリマー材料に応じてモノマー、オリゴマー若しくは前駆体材料6を含んでもよい。更に、デバイス100は第2材料供給源7、すなわち、ラジカル供給源8を具備する。
【0041】
このような供給源7は、例えば、プラズマラジカル供給源7であってもよい。ただし、例えば、放射又は加熱システムによるラジカル8の生成のように、分離した供給源7におけるラジカル提供には他の可能性もある。先行技術に関して既に上に記載したように、ラジカルはポリマー形成材料6の重合を支援又は誘発してもよい。
【0042】
好ましくは、供給源5、7のいずれも、材料6、8を1bar未満の圧力で基材表面2に提供できる。
図1に示すように、供給源5及び7はいずれも、互いから及び反応チャンバ3から離れている。しかし、供給源5及び7のいずれも、各供給源5、7からの材料が反応チャンバ3に制御不可能な状態で入る可能性がない限り、反応チャンバ内に設置できる。換言すると、両方の供給源5、7からの材料6、8は、導管手段9、10を介して試料表面2に案内されるのであって、特に、反応チャンバ3を通る制御不可能な拡散によって案内されるのではない。
【0043】
使用ラジカル8及び/又はラジカル供給源7によっては、ラジカル8の量は、例えば導管手段10を通る飛行時間によって制御される。例えば、遊離イオンはラジカルよりも寿命が短いことから、ラジカル供給源7から出口12までの導管手段の長さを、イオンがすでに分子に再結合しているように(重合プロセスとは関係なく)選択することによって、プラズマラジカル供給源7で発生するイオンの到着を避けることが可能である。別の方法として、又は追加して、導管手段内の圧力及び/又は導管手段を通る流速を調節することによっても制御が可能である。
【0044】
同様に、基材表面2に到達するポリマー形成材料6の量を、導管手段を通る圧力及び/又は流速を制御することによって制御することができる。
【0045】
例えば、ポリマー形成材料6は、次の物質の1つ以上を含んでもよい:EDOT、ピロール、エチル−グリコール、メタノール、モノグリム、テトラグリム、NIPAM及びプロピルアミン。これらの物質は、ラジカル供給源7においてラジカル8を生成するためにも使用できる。いずれの種類の有機物質も、この方法で重合できることから、上記は非包括的なリストである。
【0046】
更に、ラジカル8は、次の1つ以上であってもよく:四フッ化炭素、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化水素及び三フッ化ホウ素、又は供給源7においてメタン若しくはアンモニアから形成されてもよい。ラジカルは、ポリマー形成材料から直接得ることもできる。
【0047】
製造されたポリマーコーティング又はフィルムは、例えば、上記の物質から得られるポリマーであってもよい。具体的には、ポリ−EDOT、ポリピロール、ポリエチル−グリコール、ポリメタノール、ポリモノグリム、ポリテトラグリム、ポリNIPAM及びポリプロピルアミンである。ただし、上記の材料又は物質は、例示目的で記載されているに過ぎず、制限的意味で理解されてはならない。本発明の原理は、独立請求項の範囲に入る非常に多様な材料及び物質に適用できる。
【0048】
試料表面2にラジカル8及びポリマー形成材料6を提供する好ましい様式を
図2に示す。図示した導管システム4は、ポリマー形成材料6及びラジカル8の基材表面2への決定された又は定義された適用を可能にする。導管システム4は、ポリマー形成材料6を第1供給源5から第1出口11へ導通又は案内するための第1の導管手段9、及びラジカル8を第2供給源7から第2出口12へ導通又は案内するための第2の導管手段10を具備する。それ故、ポリマー形成材料6及びラジカルの流れは、導管システム4において(流体的に)互いに分離されている。
【0049】
一般的に、導管手段9、11は、チャネル又はラインの形で提供されてもよい。このようなチャネルは、例えば、円形、卵形、又は多角形のような、任意の断面形状を有してもよい。
【0050】
更に、導管システム4及び/又は導管手段9、10は加熱可能であってもよく、その際、基材表面2上でのポリマー形成材料6の縮合を促進するように、被コーティング表面2の温度は導管手段9、10の温度、特に出口11、12の温度よりも低く選択される。
【0051】
それ故、反応チャンバは約0℃〜約150℃の温度を有してもよい。好ましくは、導管システム4は加熱可能である。好ましくは、そのような加熱は、200℃までの温度を、例えば導管システム4の表面上でのポリマー縮合を避けるために提供してもよい。基材は、好ましくは約0℃〜約80℃、好ましくは約10℃〜約60℃の温度を有してもよい。ただし、ポリマー又はポリマー形成材料6の分解を避けるため、導管システム4及び反応チャンバ3のいずれも170℃を超える温度に加熱してはならない。
【0052】
特に、ポリマー形成材料6又は反応チャンバ3若しくは導管手段9、10中のポリマーの熱分解は、そのような反応が材料の制御不可能な分解を生じ、その結果生成したポリマーコーティングに悪影響を及ぼすことから、避けるべきである。
【0053】
一般的に、チャンバ3は、10mbar未満、好ましくは0.1mbar〜10mbarのオーダーの圧力に真空排気されてもよい。基材又は試料1は、平坦な形状を有し、1cm未満、好ましくは0.1μm〜3mmの厚さを有してもよい。試料の横方向のサイズは、1cm〜100cmのオーダーであってもよい。ただし、このサイズは、限定的な意味と理解してはならず、むしろ例示的な目的を有する。
【0054】
ポリマー形成材料6及びラジカル8は、導管システム4の出口11、12を通って流れるときに、基材表面2に垂直に当たる平行な噴流又は流れを形成してもよい。噴流13、14は、基材表面2に近づくにつれて広がる円錐形を有してもよい。このような噴流13、14を基材1の表面2に提供することは、両材料が基材表面2に達する前にポリマー形成材料6とラジカル8が反応するのを回避する。
【0055】
好ましくは、出口11、12の幅は0.5mm〜約30mmであり、出口11、12と基材表面2の間の最小距離Dは、好ましくは3mm〜50mmである。
【0056】
導管システム4の出口11、12は、被コーティング基材表面2に本質的に平行な平面に本質的に配置されてもよい。換言すると、出口11、12は被コーティング表面と向かい合う。
【0057】
図3a〜
図3cは、出口又は開口部11、12がとりうる配置を数種類示す。具体的には、出口11、12は、ラジカル及びポリマー形成材料を基材表面2上に均質に供給するため、交互状に配置されてもよい。
【0058】
例えば、出口は、以下の断面の1つ以上を有してもよい:円形(11、12、11”’、12”’)、卵形、長方形(11’、12’)、三角形、六角形(11”、12”)、多角形、円形、十字形、星形、スリット等。好ましくは、ポリマー形成材料6の出口は、少なくとも2つの隣接するラジカル8の出口を有するか、又はその逆である。
【0059】
図3aに示すように、出口は円形状を有してもよく,一列に配置されてもよい。一般的に、出口は等距離で配置されてもよい。出口の配置は、本質的にハニカム状(
図3c参照)又は市松模様(
図3b参照)等であってもよい。
【0060】
図3dに示すように、導管システム4は2つの櫛形(中空)部材15、16を具備してもよい。櫛形部材15、16のそれぞれは、好ましくは供給源5、7の1つのみと流体連通する。好ましくは櫛形部材15、16のそれぞれは、互いに流体連通する複数の(中空)歯17、18を具備する。歯17、18はそれぞれ複数の出口又は開口部を具備してもよい。いずれの場合も、1つの櫛形部材は、両方の供給源5又は7の1つの材料のみを基材表面2に適用するように適応されている。好ましくは、歯17、18は基材表面2に平行に配置され、基材表面2に向き合う開口部11”’、12”’を有する。好ましくは両部材15、16は互いにかみ合うか又は係合する。特に、両部材15、16の歯17、18は互いにかみ合うか係合する。この配置は実質的に導管システムの製造を簡素化する。さらに、この配置は、櫛型部材15、16を互いに置換し、例えば出口の位置、形状、及び/又はサイズを変更することができる。特に、複数の櫛形部材は、各出口が異なる断面又は歯上の異なる出口位置を有して提供されてもよい。
【0061】
本発明を、本発明を実施する最良の形態に言及して説明した。明らかに、本明細書を読み、理解した際に他への修正及び変更が起こるであろう。このような修正及び変更を、添付の特許請求の範囲又は同等の範囲内にある限り、すべて包含することを意図する。
【0062】
いかなる場合も、上記の実施形態は制限的意味で理解されてはならない。特に、上記実施形態の特徴は、互いに置換又は組み合わせされてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 基材/試料
2 被コーティング基材表面
3 反応チャンバ
4 導管システム
5 第1供給源/モノマー供給源/ポリマー形成材料供給源
6 ポリマー形成材料/モノマー材料
7 第2供給源/ラジカル供給源
8 ラジカル
9 第1の導管手段
10 第2の導管手段
11 第1供給源によって供給される出口
11’ 第1供給源によって供給される代替出口
11” 第1供給源によって供給される代替出口
11”’ 第1供給源によって供給される代替出口
12 第2供給源によって供給される出口
12’ 第2供給源によって供給される代替出口
12” 第2供給源によって供給される代替出口
12”’ 第2供給源によって供給される代替出口
13 スプレーコーン/ポリマー形成材料の流れ
14 スプレーコーン/ラジカルの流れ
15 第1供給源によって供給される櫛様導管手段
16 第2供給源によって供給される櫛様導管手段
100 デバイス
D 出口と被コーティング試料表面の間の距離