(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るリニアガイド装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書においては、案内レールを通常に水平にした状態において、案内レールの長手方向を軸方向とし、軸方向に対して水平方向に直角に交差する方向を幅方向とし、軸方向および幅方向に対して垂直に交差する方向を上下方向する。また、このとき、軸方向に延在する上側の面、下側の面、および両側の面を、それぞれ上面、下面、および側面とし、軸方向の端部側の面を端面とする。また、これらの方向および各面の呼称は、スライダおよびスライダに組付けられたボール保持器においては、スライダが案内レールに組付けられた状態において同様とする。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るリニアガイド装置1の構成を、一部を切り欠いて示す斜視図である。また、
図2は、リニアガイド装置1の要部の側面図であり、一部を切り欠いて示している。
【0024】
図1に示すように、リニアガイド装置1は軸方向に延在する断面略角型の案内レール4と、該案内レール4に転動体である鋼球7を介して軸方向に移動可能に組付けられたスライダ10とを備えている。スライダ10は、下面側に軸方向に延在する凹部13が形成され、軸方向から見た断面形状は略コ字状となっている。凹部13はスライダ10の両端面を貫いて形成されている。スライダ10は凹部13が案内レール4を跨いで該案内レール4上に配置されている。
【0025】
案内レール4の一方側の側面4aと上面4cとが交差する稜線部には、鋼球7が転動するための上側転動溝16が軸方向に延在して形成されている。上側転動溝16は断面形状が略1/4円弧状に形成されている。案内レール4の他方側の側面4bと上面4cとの稜線部にも同様の上側転動溝16が形成されている。また、案内レール4の一方側の側面4aの上下方向略中間位置には、鋼球7が転動するための下側転動溝17が軸方向に延在して形成されている。下側転動溝17は断面形状が略1/2円弧状に形成されている。下側転動溝17の底部には、下側転動溝17の全長に亘って逃げ溝18が形成されている。案内レール4の他方側の側面4bの上下方向略中間位置にも、同様の下側転動溝17および逃げ溝18が形成されている。このように、案内レール4には各側面4a、4bにそれぞれ上側および下側の2本ずつ、計4本の転動溝16、17が形成されている。
【0026】
スライダ10は、スライダ本体部19と、スライダ本体部19の軸方向の各端部にそれぞれ着脱可能に取付けられたエンドキャップ22a、22bとから構成されている。スライダ本体部19は、案内レール4の各側面4a、4bに沿ってそれぞれ下方に延在して配置される一対の脚部25a、25bと、一対の脚部25a、25bを案内レール4の上面4c側で連結する胴体部28とから構成されている。各エンドキャップ22a、22bのスライダ本体部19側とは反対側の軸方向端部、すなわちスライダ10の軸方向の最も外側となる各端部には、防塵部品であるサイドシール31a、31bがそれぞれ装着されている。これらのサイドシール31a、31bは、案内レール4とベアリング10との隙間を密封し、外部から塵等の異物が侵入することを防止している。
【0027】
スライダ本体部19の一方の脚部25aの内側面、すなわち案内レール4の一方側の側面4aと対向する面には、該一方側の側面4aに形成された上側転動溝16および下側転動溝17のそれぞれと対向する位置に、鋼球7が転動するための上側転動溝34および下側転動溝35が形成されている。スライダ本体部19の他方の脚部25bの内側面にも同様の上側転動溝34(図示省略)および下側転動溝35(図示省略)が形成されている。案内レール4の上側転動溝16とスライダ本体部19の上側転動溝34とで鋼球7が転動するための上側転動路37が形成されている。また、案内レール4の下側転動溝17とスライダ本体部19の下側転動溝35とで、鋼球7が転動するための下側転動路(図示省略)が形成されている。このように、案内レール4およびスライダ10には、片側にそれぞれ上側および下側の2本ずつ、全部で4本の転動路が形成されている。
【0028】
また、スライダ10の一方の脚部25aには、上側転動路37および下側転動路のそれぞれと平行に脚部25aの肉厚部分を軸方向に貫通する上側直線路40および下側直線路41が形成されている。つまり、一方の脚部25aには2本の直線路40、41が形成されている。スライダ10の他方の脚部25bにも同様に上側直線路40(図示省略)および下側直線路41(図示省略)が形成されている。
【0029】
各エンドキャップ22a、22bは、スライダ本体部19との当接面側であってスライダ本体部19の一対の脚部25a、25bに対応する部分に、鋼球7の上側転動路37と上側直線路40とを連通させる半ドーナツ状の上側湾曲路(図示省略)と、下側転動路(図示省略)と下側直線路41とを連通させる半ドーナツ状の下側湾曲路(図示省略)とが形成されている。各エンドキャップ22a、22bには、片側2つで計4つの湾曲路が形成されている。そして上側直線路40と両端の上側湾曲路とで鋼球7を上側転動路37の一方側の端部から他方側の端部へ送り循環させる上側戻し路が形成され、該上側戻し路と上側転動路37とで環状の上側循環路43が形成されている。同様に、下側直線路41と両端の下側湾曲路とで鋼球7を図示しない下側転動路の一方側の端部から他方側の端部へ送り循環させる下側戻し路が形成され、該下側戻し路と図示しない下側転動路とで環状の下側循環路(図示省略)が形成されている。すなわち、案内レール4およびスライダ10には、全部で4本の循環路が形成されている。環状の上側循環路43および下側循環路には、それぞれ多数の鋼球7が転動自在に装填されている。スライダ10は、これら多数の鋼球7を介して案内レール4上を軸方向に移動する。
【0030】
スライダ10の凹部13には、
図1および2に示すように、案内レール4の上面4cと平行にボール保持器46が配置されている。ボール保持器46の軸方向の両端部には、
図2に示すように、軸方向に突出する係止部48がそれぞれ形成されている。また、エンドキャップ22a、22bのスライダ本体部19との当接面側には、ボール保持器46の各係止部48と係合する凹部50がそれぞれ形成されている。ボール保持器46は、両端部の係止部48がエンドキャップ22a、22bの凹部50にそれぞれ係合することで、スライダ10に支持されている。ボール保持器46は上側転動路37に位置する鋼球7を支持し、これら鋼球7の上側転動路37からの脱落を防止している。当該ボール保持器46の詳細な構成については後述する。
【0031】
また、スライダ10には、下側転動路に位置する鋼球7を支持するための棒型のボール保持器52が配置されている。棒型のボール保持器52は両端部がエンドキャップ22a、22bにそれぞれ支持され、他の部分は案内レール4の逃げ溝18に収容されている。
【0032】
スライダ10を案内レール4の軸方向に沿って移動させると、上側転動路37および下側転動路(図示省略)にそれぞれ位置する鋼球7は、それぞれ上側転動路37および下側転動路内を転がり移動しつつ案内レール4に対してスライダ10と同じ方向へ移動する。そして各鋼球7が上側転動路37および下側転動路の一方側の端部にそれぞれ到達すると、エンドキャップ22a(または22b)内に設けられた上側湾曲路(図示省略)および下側湾曲路(図示省略)へそれぞれ入っていく。各湾曲路に入った鋼球7はUターンしてそれぞれ上側直線路40および下側直線路41に入り、これら直線路40、41を転動して反対側のエンドキャップ22b(または22a)内に設けられた上側湾曲路(図示省略)、下側湾曲路(図示省略)に到達する。そしてこれらの反対側の湾曲路で再度Uターンして上側転動路37および下側転動路の他方側の端部に戻る。鋼球7は、スライダ10の移動に伴い、上側循環路43および下側循環路内でそれぞれこのような循環を繰り返す。
【0033】
また、案内レール4には、該案内レール4を工作機械等の被取付け部に取付けるためのボルト穴54が設けられている。
【0034】
次に、ボール保持器46の構成について説明する。
図3(a)はボール保持器46の全体の形状を示す下面図である。すなわち、スライダ10に組付けられたボール保持器46を下側から見た状態を示している。
図3(b)は(a)の丸で囲んだ部分の拡大図である。また、
図4は、
図3(a)のI−I線の断面図であり、水平状態のボール保持器46を軸方向から見た状態を示している。なお、
図4中に、ボール保持器46によってスライダ10に保持されている鋼球7を一点鎖線で示している。
【0035】
ボール保持器46は合成樹脂材の射出成形品であり、
図3(a)に示すように、一対の長辺部56R、56Lと一対の短辺部58a、58bとによって長方形の枠型に形成されている(以下、ボール保持器46を「枠型保持器46」という。)。一対の長辺部56R、56Lと一対の短辺部58a、58bとは、同一の平面上に形成されている。枠型保持器46は、スライダ本体部19の胴体部28の下面と案内レール4の上面4cとの間に、長辺部56R、56Lが案内レール4の軸方向と平行で、短辺部58a、58bが案内レール4の幅方向と平行となるように配置される。各長辺部56R、56Lの外側の側面と下面との稜線部には、断面形状が略円弧状のボール保持溝60R、60Lが長辺部56R、56Lの全長に亘ってそれぞれ設けられている。従ってボール保持溝60R、60Lの上側エッジ62R、62Lは長辺部56R、56Lの外側の側面にそれぞれ位置し、下側エッジ64R、64Lは長辺部56R、56Lの下面にそれぞれ位置している。枠型保持器46をスライダ10に組付けた状態において、ボール保持溝60R、60Lのそれぞれの下側エッジ64R、64Lと、上側転動溝34の下側のエッジ66、66との間には、通常の使用時は、鋼球7の直径よりもやや狭い幅の隙間Lが形成される。このような構成によって、各ボール保持溝60R、60Lはスライダ本体部19の脚部25a、25bに形成された上側転動溝34を転動する鋼球7をそれぞれ保持している。
【0036】
各長辺部56R、56Lの内側には、内方すなわち対向する長辺部56L、56Rに向かって延在する平板部68R、68Lがそれぞれ形成されている。各平板部68R、68Lは、両長辺部56R、56L間の中間線までの距離の略1/4〜1/3の距離まで延在している。各平板部68R、68Lの長手方向の中央部には、さらに内方へ向かって両長辺部56R、56L間の中間線付近まで延在する延在部70R、70Lがそれぞれ形成されている。各延在部70R、70Lの中央部には、穴用スナップリングプライヤ等の工具等を使用するための作業用穴72R、72Lがそれぞれ設けられている。各延在部70R、70Lの端部には、
図3(a)、(b)および
図4に示すように、それぞれフック部74R、74Lが形成され、これら一対のフック部74R、74Lは互いに対向している。各フック部74R、74Lの先端の縁部は、
図3(a)、(b)に示すように、長辺部56R、56Lと平行な直線となるように形成されている。各フック部74R、74Lは、通常の使用時は所定の間隔を隔てて対峙しているが、後述するように互いに係合させることが出来るようになっている。また、両長辺部56R、56Lは、各フック部74R、74Lの係合に伴い、弓なりに変形が可能となっている。
【0037】
図5(a)は、
図4に示す一対のフック部74R、74Lの拡大断面図である。また、
図5(b)は、一対のフック部74R、74Lの中間位置から見た一方側(
図5(a)の紙面右側とし、以下「一方側」のことを「右側」とする。)のフック部74Rの斜視図である。
【0038】
右側のフック部74Rは、延在部70Rの端部に該端部から対向する他方側(
図5(a)の紙面左側とし、以下「他方側」のことを「左側」とする。)のフック部74Lに向かって突出して形成された基部76Rと、基部76Rから上方に突出する爪部78Rとから構成されている。基部76Rは平板状で、延在部70Rの端部に長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。基部76Rは、厚さは延在部70Rの厚さの略1/2の厚さに形成され、延在部70Rの厚さ方向の下部側に形成されている。爪部78Rは基部76Rの先端、すなわち対向する左側のフック部74L側に、長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。従って、延在部70Rの端部と爪部78Rとの間には、基部76Rによって長辺部56R、56Lと平行に延在する凹部80Rが形成されている。
【0039】
爪部78Rの断面形状は、
図5(a)、(b)に示すように略三角形で、フック部74Lと対向する側の面88Rと、爪部78Rの肉厚部を挟んで、面88Rの背面側の面、すなわち長辺部56Rと対向する側の面90Rとを有している。面88Rと面90Rとの交線で形成される爪部78Rの頂部は、延在部70Rの上面と略同一平面上に位置している。
【0040】
左側のフック部74Lは、延在部70Lの端部に該端部から対向する右側のフック部74Rに向かって突出して形成された基部76Lと、基部76Lから下方に突出する爪部78Lとから構成されている。基部76Lは平板状で、延在部70Lの端部に長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。基部76Lは、厚さは延在部70Lの厚さの略1/2の厚さに形成され、延在部70Lの厚さ方向の上部側に形成されている。爪部78Lは基部76Lの先端、すなわち対向する右側のフック部74R側に、長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。従って、延在部70Lの端部と爪部78Lとの間には、基部76Lによって長辺部56R、56Lと平行に延在する凹部80Lが形成されている。
【0041】
爪部78Lの断面形状は、
図5(a)、(b)に示すように略三角形で、フック部74Rと対向する側の面88Lと、爪部78Lの肉厚部を挟んで面88Lの背面側の面、すなわち長辺部56Lと対向する側の面90Lとを有している。面88Lと面90Lとの交線で形成される爪部78Lの頂部は、延在部70Lの下面と略同一平面上に位置している。
【0042】
このように、右側のフック部74Rと左側のフック部74Lとは、案内レール4の軸方向から見て互いに上下および左右が反対の形状に形成されている。以下、右側のフック部74Rの爪部78Rについて、左側のフック部74Lの爪部78Lと対向する側の面を第1の面88Rとし、長辺部56Rと対向する側の面を第2の面90Rとする。同様に、左側のフック部74Lの爪部78Lについて、右側のフック部74Rの爪部78Rと対向する側の面を第1の面88Lとし、長辺部56Lと対向する側の面を第2の面90Lとする。
【0043】
右側の爪部78Rの第2の面90Rは、
図4および
図5(a)に示すように、一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直となっている。従って、爪部78Rの第1の面88Rは、頂部から基部76Rに向かうに従って左側のフック部74Lの方に近くなるような傾斜となっている。左側のフック部74Lも同様に、左側の爪部78Lの第2の面90Lは、一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直となっており、従って、爪部78Lの第1の面88Lは、頂部から基部76Lに向かうに従って右側のフック部74Rの方に近くなるような傾斜となっている。
【0044】
右側のフック部74Rの凹部80R、すなわち基部76Rには、基部76Rを上下方向に貫く貫通孔92Rが形成されている。貫通孔92Rは上下方向から見た断面が略長方形で、長手方向が長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。従って爪部78Rと貫通孔92Rとは平行に形成されている。貫通孔92Rの長手方向の長さは、平行する爪部78Rの延在する長さよりも少し長く形成されている。また、貫通孔92Rの幅方向の寸法は、爪部78Rの幅方向の寸法よりも少し大きく形成されている。言い換えると、爪部78Rの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Rの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成されている。すなわち、右の爪部78Rと対をなす左の爪部78Lの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Rの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成されている。
【0045】
貫通孔92Rの左側、すなわち左側の爪部78L側の内壁94Rは、爪部78Rの第2の面90Rと同一平面上に連続する面となっている。つまり、爪部78Rの第2の面90Rと貫通孔92Rの内壁94Rとは1つの平面をなし、当該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直となっている。
【0046】
左側のフック部74Lの凹部80L、すなわち基部76Lには、基部76Lを上下方向に貫く貫通孔92Lが形成されている。貫通孔92Lは上下方向から見た断面が略長方形で、長手方向が長辺部56R、56Lと平行に延在して形成されている。従って爪部78Lと貫通孔92Lとは平行に形成されている。貫通孔92Lの長手方向の長さは、平行する爪部78Lの延在する長さよりも少し長く形成されている。また、貫通孔92Lの幅方向の寸法は、爪部78Lの幅方向の寸法よりも少し大きく形成されている。言い換えると、爪部78Lの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Lの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成されている。すなわち、左の爪部78Lと対をなす右の爪部78Rの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Lの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成されている。
【0047】
貫通孔92Lの右側、すなわち右側の爪部78R側の内壁94Lは、爪部78Lの第2の面90Lと同一平面上に連続する面となっている。つまり、爪部78Lの第2の面90Lと貫通孔92Lの内壁94Lとは1つの平面をなし、当該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直となっている。
【0048】
両フック部74R、74Lが係合する際、後述するように、右の貫通孔92Rには、左のフック部74Lの爪部78Lが挿入され、左の貫通孔92Lには右のフック部74Rの爪部78Rが挿入される。本実施形態では、上述のように、右の爪部78Rの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Lの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成され、左の爪部78Lの延在する長さおよび幅寸法は、貫通孔92Rの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりも、それぞれ小さく形成されている。つまり、爪部78Rは貫通孔92Lに挿入できる大きさに形成され、爪部78Lは貫通孔92Rに挿入できる大きさに形成されている。
【0049】
次に、スライダ10への鋼球7の装填方法、あるいはスライダ10からの鋼球7の取り出し方法について説明する。鋼球7の装填は、一対のフック部74R、74Lを係合させて行う。
図6は本実施形態に係る一対のフック部74R、74Lの断面図であり、(a)は各フック部の対向する面どうしが接触している状態を示し、(b)は互いに係合している状態を示している。また、
図7は、フック部74R、74Lが互いに係合している状態における枠型保持器46の形状を示す下面図である。
【0050】
枠型保持器46をスライダ10に組付けた状態すなわち
図4の状態で、枠型保持器46の各延在部70R、70Lの作業用穴72R、72L(
図4参照)に、穴用スナップリングプライヤ等の工具を差し込む。そして、工具を操作して作業穴72R、72Lを互いに近づける。すると、一対のフック部74R、74Lは互いに近づき、同時に枠型保持器46の各長辺部56R、56Lは中心部がそれぞれ内側に引っ張られ、
図7に示すように、弓なりに撓んだ状態に弾性変形する。工具を操作して作業穴72Rと72Lとをさらに近づけていくと、各長辺部56R、56Lの変形は大きくなっていく。そして爪部78R、78Lの相互に対向している第1の面88R、88Lどうしが接触すると、その後は各爪部78R、78Lの第1の面どうし88R、88Lは摺動して、互いに異なる方向に移動を始める。すなわち、第1の面88Rと88Lとは互いに傾斜しているので、右側の爪部78Rの第1の面88Rは略下方に向かって移動し、左側の爪部78Lの第1の面88Lは略上方に向かって移動する。すると右側の延在部70Rおよびフック部74Rの基部76Rは、
図6(a)に示すように、下方に反るように弾性変形する。同様に、左側の延在部70Lおよびフック部74Lの基部76Lは、上方に反るように弾性変形する。同時に、各長辺部56R、56Lの変形はさらに大きくなっていく。そして互いの爪部78R、78Lの頂部どうしが接触している状態では、各延在部70R、70Lおよび基部76R、76Lの変形量は最大になる。
【0051】
各爪部78R、78Lの頂部が相互に相手の爪部78L、78Rの頂部を乗り越えると、今度は右側の爪部78Rが略上方に、左側の爪部78Lが略下方に向かって互いに移動する。同時に各延在部70R、70Lおよび基部76R、76Lはそれぞれ元の形状に戻るように変化する。そして、右側の爪部78Rは、左側のフック部74Lの貫通孔92Lに下側から上方に向かって挿入される。爪部78Rの延在方向の長さおよび幅寸法は、貫通孔92Lの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりもそれぞれ小さく形成されているので、貫通孔92Lに挿入され易くなっている。右側の爪部78Rが左側の貫通孔92Lに挿入されると、爪部78Rの第2の面90Rは、貫通孔92Lのフック部74R側の内壁94Lに引っ掛かる。言い換えると、爪部78Rの第2の面90Rは、左側の爪部78Lの第2の面90Lと貫通孔92Lの内壁94Lとで形成される1つの平面に引っ掛かる。
【0052】
同様に、左側の爪部78Lは、右側のフック部74Rの貫通孔92Rに上側から下方に向かって挿入される。爪部78Lの延在方向の長さおよび幅寸法は、貫通孔92Rの長手方向の長さおよび幅方向の寸法よりもそれぞれ小さく形成されているので、貫通孔92Rに挿入され易くなっている。左側の爪部78Lが右側の貫通孔92Rに挿入されると、爪部78Lの第2の面90Lは、貫通孔92Rのフック部74L側の内壁94Rに引っ掛かる。言い換えると、爪部78Lの第2の面90Lは、右側の爪部78Rの第2の面90Rと貫通孔92Rの内壁94Rとで形成される1つの平面に引っ掛かる。
【0053】
こうして、
図6(b)に示すように、各爪部78R、78Lが対向するフック部74L、74Rの貫通孔92L、92Rにそれぞれ挿入される。さらに詳細には、爪部78Rの第2の面90Rおよび爪部78Lの第2の面90Lが、それぞれ貫通孔92Lのフック部74R側の内壁94Lおよび貫通孔92Rのフック部74L側の内壁94Rに引っ掛かり合う。この引っ掛かり合いによって一対のフック部74R、74Lが互いに係合する。フック部74R、74Lが互いに係合状態になると、各延在部70R、70Lおよび基部76R、76Lの変形は、それぞれ元の形状に戻る。
【0054】
フック部74R、74Lが互いに係合している状態においては、
図6(b)に示すように、右側の爪部78Rの第2の面90Rは、全面が貫通孔92Lの内壁94Lに接触して引っ掛かっている。同様に左側の爪部78Lの第2の面90Lは、全面が貫通孔92Rの内壁94Rに接触して引っ掛かっている。このように、各爪部78R、78Lの引っ掛かり面である第2の面90R、90Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ無駄がなく引っ掛かっている。さらに、従来よりも、互いに接触して引っ掛かり合う面積が増えているので、フック部74R、74Lの係合は外れにくくなっている。
【0055】
フック部74R、74Lが互いに係合したら、工具を作業穴72R、72Lから抜く。工具を作業穴72R、72Lから抜いても、
図7に示すように、枠型保持器46の長辺部56R、56Lは弓なりに撓んだ状態に弾性変形した状態が維持される。長辺部56R、56Lはフック部74R、74Lの係合によって弾性変形しているので、元の形状に戻ろうとする。このため、一対のフック部74R、74Lには互いを引き離す方向の力が加わっている。しかし、本実施形態では、このような力が加わった状態であっても、各爪部78R、78Lの第2の面90R、90Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ全面が引っ掛かり、互いに広い面積で接触して引っ掛かり合っているので、係合は容易には外れない。
【0056】
フック部74R、74Lが互いに係合し、各長辺部56R、56Lが内側に弓なりに変形すると、各長辺部56R、56Lの中央部では、ボール保持溝60R、60Lの下側エッジ64R、64Lと、ベアリング本体部19の脚部25a、25bに形成された上側転動溝34の下側のエッジ66、66との間の隙間が
図4に示すLよりも広がり、鋼球7の直径よりも広い幅となる。そして、フック部74R、74Lは上記のような状態で係合しているので、この広い幅が保持される。従って、作業者は、当該広い隙間から鋼球7をベアリング10に容易に装填することが出来る。また、鋼球7の入替え時には、ベアリング10から鋼球7を容易に取り出すことが出来る。そして作業中であってもフック部74R、74Lの係合が外れにくく、作業性良く、安全に鋼球7の装填作業あるいは取り出し作業を行うことが出来る。作業終了後は工具を作業穴72R、72Lに差し込んで操作し、フック部74R、74Lの係合を解除する。なお、実際の鋼球7の装填作業あるいは取り出し作業は、ベアリング10を上下略逆さ、つまり
図4の状態を上下略逆さにした状態で行うこととなる。
【0057】
このように本実施形態によれば、各フック部74R、74Lの爪部78R、78Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。また、各フック部74R、74Lは互いに広い面積で接触して引っ掛かり合って係合しており、そのため係合が外れにくいので、爪部78R、78Lの大きさは従来と比較して小さくすることができる。すなわち、爪部78R、78Lの延在方向の長さおよび幅方向の寸法は、本実施形態に係る枠型保持器46と同等サイズの従来の枠型保持器の爪部よりも、それぞれ小さくすることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態の各実施例に係るリニアガイド装置は、第1実施形態とは枠型保持器の各フック部の爪部の構成が異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に各実施例を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成は、同じ符号を用いて説明し、重複する説明は省略する。
【0059】
(第1実施例)
図8(a)は、第2実施形態の第1実施例に係るボール保持器の一対のフック部のうち、一方のフック部174Rの断面図である。
【0060】
本実施例においても、基部176Rから突出する爪部178Rの第2の面190Rと、貫通孔92Rの他方のフック部174L(図示省略)側の内壁94Rとは1つの平面をなし、該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に形成されている。しかし、第1実施形態のフック部74Rと比較して、第1の面188Rと第2の面190Rとのなす角が小さく形成されている。従って、本実施例では、第1の面188Rは、第1実施形態のフック部74Rの第1の面88Rよりも傾斜が急になっている。図示は省略するが、他方のフック部174Lの構成は、フック部174Rの上下および左右を反対にした構成である。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0061】
本実施例においても、第1実施形態と同様に、各爪部178R、178Lが対向するフック部174L、174Rの貫通孔92L、92Rにそれぞれ挿入される。さらに詳細には、爪部178Rの第2の面190Rおよび爪部178Lの第2の面190Lが、それぞれ貫通孔92Lのフック部174R側の内壁94Lおよび貫通孔92Rのフック部174L側の内壁94Rに引っ掛かり合う。この引っ掛かり合いによって一対のフック部174R、174Lが互いに係合する。そして各爪部178R、178Lの引っ掛かり面である第2の面190R、190Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ無駄がなく引っ掛かり、互いに広い面積で接触して引っ掛かり合っているので、フック部174R、174Lの係合は外れにくくなっている。
【0062】
このように、本実施例によれば、各フック部174R、174Lの爪部178R、178Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。また、各フック部174R、174Lは互いに広い面積で接触して引っ掛かり合って係合しており、そのため係合が外れにくいので、爪部178R、178Lの延在方向の長さおよび幅方向の寸法は、本実施例に係る枠型保持器46と同等サイズの従来の枠型保持器の爪部よりも、それぞれ小さくすることができる。
【0063】
(第2実施例)
図8(b)は、第2実施形態の第2実施例に係るボール保持器の一対のフック部のうち、一方のフック部274Rの断面図である。
【0064】
本実施例においても、基部276Rから突出する爪部278Rの第2の面290Rと、貫通孔92Rの他方のフック部274L(図示省略)側の内壁94Rとは1つの平面をなし、該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に形成されている。しかし、第1実施形態のフック部74Rと比較して、第1の面288Rと第2の面290Rとのなす角が大きく形成されている。従って、本実施例では、第1の面288Rは、第1実施形態のフック部74Rの第1の面88Rよりも傾斜が緩くなっている。図示は省略するが、他方のフック部274Lの構成は、フック部274Rの上下および左右を反対にした構成である。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0065】
本実施例においても、第1実施形態と同様に、各爪部278R、278Lが対向するフック部274L、274Rの貫通孔92L、92Rにそれぞれ挿入される。さらに詳細には、爪部278Rの第2の面290Rおよび爪部278Lの第2の面290Lが、それぞれ貫通孔92Lのフック部274R側の内壁94Lおよび貫通孔92Rのフック部274L側の内壁94Rに引っ掛かり合う。この引っ掛かり合いによって一対のフック部274R、274Lが互いに係合する。そして各爪部278R、278Lの引っ掛かり面である第2の面290R、290Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ無駄がなく引っ掛かり、互いに広い面積で接触して引っ掛かり合っているので、フック部274R、274Lの係合は外れにくくなっている。
【0066】
このように、本実施例によれば、各フック部274R、274Lの爪部278R、278Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。また、各フック部274R、274Lは互いに広い面積で接触して引っ掛かり合って係合しており、そのため係合が外れにくいので、爪部278R、278Lの延在方向の長さおよび幅方向の寸法は、本実施例に係る枠型保持器46と同等サイズの従来の枠型保持器の爪部よりも、それぞれ小さくすることができる。
【0067】
(第3実施例)
図8(c)は、第2実施形態の第3実施例に係るボール保持器の一対のフック部のうち、一方のフック部374Rの断面図である。
【0068】
本実施例においては、基部376Rから突出する爪部378Rの断面形状は略5角形となっている。この断面形状は、以下の各面の断面によって形成されている。すなわち、基部76Rの端部から一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に延在する第1の面388Rと、第1の面388Rと平行に延在し、貫通孔92Rの内壁94Rと1つの平面をなす第2の面390Rと、第1の面388Rおよび第2の面390Rの各上辺から、それぞれ交差する方向に斜め上方に延在する第3の面396Rおよび第4の面398Rと、第1の面388Rおよび第2の面390Rの各下辺どうしを結び、基部76の上面と一致する面である。本実施例においても、貫通孔92Rの内壁94Rと第2の面390Rとは1つの平面をなし、該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に形成されている。図示は省略するが、他方のフック部374Lの構成は、フック部374Rの上下および左右を反対にした構成である。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0069】
本実施例においても、第1実施形態と同様に、各爪部378R、378Lが対向するフック部374L、374Rの貫通孔92L、92Rにそれぞれ挿入される。さらに詳細には、爪部378Rの第2の面390Rおよび爪部378Lの第2の面390Lが、それぞれ貫通孔92Lのフック部374R側の内壁94Lおよび貫通孔92Rのフック部374L側の内壁94Rに引っ掛かり合う。これらの引っ掛かり合いによって一対のフック部374R、374Lが互いに係合する。そして各爪部378R、378Lの引っ掛かり面である第2の面390R、390Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ無駄がなく引っ掛かり、互いに広い面積で接触して引っ掛かり合っているので、フック部374R、374Lの係合は外れにくくなっている。
【0070】
このように、本実施例によれば、各フック部374R、374Lの爪部378R、378Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。また、各フック部374R、374Lは互いに広い面積で接触して引っ掛かり合って係合しており、そのため係合が外れにくいので、爪部378R、378Lの延在方向の長さおよび幅方向の寸法は、本実施例に係る枠型保持器46と同等サイズの従来の枠型保持器の爪部よりも、それぞれ小さくすることができる。
【0071】
(第4実施例)
図8(d)は、第2実施形態の第4実施例に係るボール保持器の一対のフック部のうち、一方のフック部474Rの断面図である。
【0072】
本実施例においては、基部476Rから突出する爪部478Rの断面形状は略長方形となっている。この断面形状は、以下の各面の断面によって形成されている。すなわち、基部76の端部から一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に延在する第1の面488Rと、第1の面と平行に延在し、貫通孔92Rの内壁94Rと1つの平面をなす第2の面490Rと、第1の面488Rおよび第2の面490Rの各上辺を結ぶ第3の面496Rと、第1の面488Rおよび第2の面490Rの各下辺どうしを結び、基部76の上面と一致する面である。本実施例においても、貫通孔92Rの内壁94Rと第2の面490Rとは1つの平面をなし、該平面は一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して略垂直に形成されている。図示は省略するが、他方のフック部474Lの構成は、フック部474Rの上下および左右を反対にした構成である。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施例においても、第1実施形態と同様に、各爪部478R、478Lが対向するフック部474L、474Rの貫通孔92L、92Rにそれぞれ挿入される。さらに詳細には、爪部478Rの第2の面490Rおよび爪部478Lの第2の面490Lが、それぞれ貫通孔92Lのフック部474R側の内壁94Lおよび貫通孔92Rのフック部474L側の内壁94Rに引っ掛かり合う。これらの引っ掛かり合いによって一対のフック部474R、474Lが互いに係合する。そして各爪部478R、478Lの引っ掛かり面である第2の面490R、490Lは、貫通孔92L、92Rの内壁94L、94Rにそれぞれ無駄がなく引っ掛かり、互いに広い面積で接触して引っ掛かり合っているので、フック部474R、474Lの係合は外れにくくなっている。
【0074】
このように、本実施例によれば、各フック部474R、474Lの爪部478R、478Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。また、各フック部474R、474Lは互いに広い面積で接触して引っ掛かり合って係合しており、そのため係合が外れにくいので、爪部478R、478Lの延在方向の長さおよび幅方向の寸法は、本実施例に係る枠型保持器46と同等サイズの従来の枠型保持器の爪部よりも、それぞれ小さくすることができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。第3実施形態の各実施例に係るリニアガイド装置は、第1実施形態とは枠型保持器の各フック部の貫通孔の形状が異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に各実施例を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成は、同じ符号を用いて説明し、重複する説明は省略する。
【0076】
(第1実施例)
図9(a)は、第3実施形態の第1実施例に係るボール保持器の要部の下面図である。すなわち、スライダ10に組付けられたボール保持器46の要部を下側から見た状態を示している。
【0077】
本実施例に係る保持器の各フック部574R、574Lに形成された貫通孔592R、592Lは、
図9(a)に示すように、下方から見た形状が、長手方向に一対の平行線を有する略長円形に形成されている。各貫通孔の592R、592Lの長手方向は、それぞれ一対の長辺部56R、56Lと平行となっている。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0078】
貫通孔592R、592Lをこのような形状としても、各爪部78R、78Lが対向するフック部574L、574Rの貫通孔592L、592Rにそれぞれ挿入され、第1実施形態と同様の効果を発揮する。従って、本実施例によれば、各フック部574R、574Lの爪部78R、78Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。
【0079】
(第2実施例)
図9(b)は、第3実施形態の第2実施例に係るボール保持器の要部の下面図である。すなわち、スライダ10に組付けられたボール保持器46の要部を下側から見た状態を示している。
【0080】
本実施例に係る保持器の各フック部674R、674Lに形成された貫通孔692R、692Lは、
図9(b)に示すように、下方から見た形状が略台形状に形成されている。略台形状の短辺の長さが、それぞれ各爪部78R、78Lの延在する長さに対応している。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0081】
貫通孔692R、692Lをこのような形状としても、各爪部78R、78Lが対向するフック部674L、674Rの貫通孔692L、692Rにそれぞれ挿入され、第1実施形態と同様の効果を発揮する。従って、本実施例によれば、各フック部674R、674Lの爪部78R、78Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。
【0082】
(第3実施例)
図9(c)は、第3実施形態の第3実施例に係るボール保持器の要部の下面図である。すなわち、スライダ10に組付けられたボール保持器46の要部を下側から見た状態を示している。
【0083】
本実施例に係る保持器の各フック部774R、774Lに形成された貫通孔792R、792Lは、
図9(c)に示すように、下方から見た形状が、平行する一対の長辺を含む略6角形状に形成されている。略6角形状の一対の長辺の長さが各爪部78R、78Lの延在する長さに対応している。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0084】
貫通孔792R、792Lをこのような形状としても、各爪部78R、78Lが対向するフック部774L、774Rの貫通孔792L、792Rにそれぞれ挿入され、第1実施形態と同様の効果を発揮する。従って、本実施例によれば、各フック部774R、774Lの爪部78R、78Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。
【0085】
(第4実施例)
図9(d)は、第3実施形態の第4実施例に係るボール保持器の要部の下面図である。すなわち、スライダ10に組付けられたボール保持器46の要部を下側から見た状態を示している。また、
図9(e)は、第3実施形態の第4実施例に係るボール保持器の、一方のフック部874Rの断面図である。
【0086】
本実施例に係る保持器の各フック部874R、874Lに形成された貫通孔892R、892Lは、
図9(d)に示すように、下方から見た形状は第1実施形態と同様に略長方形であるが、一部の内壁が一対の長辺部56R、56Lによって規定される平面に対して傾斜している。
図9(e)に示すように、貫通孔892Rの内壁のうち、長辺部56R側の内壁895Rは、上方から下方に向かうに従って他方側のフック部874Lに近づくような傾斜を有している。同様に、貫通孔892Lの内壁も、長辺部56L側の内壁895L(図示省略)は、下方から上方に向かうに従ってフック部874Rに近づくような傾斜を有している。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0087】
貫通孔892R、892Lをこのような形状としても、各爪部78R、78Lが対向するフック部874L、874Rの貫通孔892L、892Rにそれぞれ挿入され、第1実施形態と同様の効果を発揮する。従って、本実施例によれば、各フック部874R、874Lの爪部78R、78Lが互いに引っ掛かりやすく、かつ外れにくいボール保持器46、および該ボール保持器46を備えたリニアガイド装置1を提供することができる。
【0088】
以上で本発明の各実施形態および実施例についての説明を終えるが、本発明は上記各実施形態および実施例に限定されない。爪部および貫通孔の形態は適宜変形が可能である。例えば、各実施形態および実施例では、各爪部の引っ掛かり面が対向するフック部の貫通孔の内壁に引っ掛かり合う構成であるが、各爪部の引っ掛かり面どうしも一部が引っ掛かり合うようにしても良い。また、2実施形態の各実施例に係る爪部の形状と、第3実施形態の各実施例に係る貫通孔の形状とをそれぞれ組み合わせたフック部としても良い。
【0089】
なお、各爪部の相互に対向する側の面は、第1実施形態および第2実施形態の第1〜第3実施例のように、所定の傾斜を有している方が互いに係合させやすい。すなわち、第1実施形態および第2実施形態の第1〜第2実施例においては、第2の面と第1の面とのなす角が30°以上の傾斜を有していれば互いに係合させやすい。また、第2実施形態の第3実施例においては、第2の面の延長面と第3の面の延長面とのなす角が30°以上の傾斜を有していれば互いに係合させやすい。また、第2実施形態の第4実施例のように、第2の面と第3の面とのなす角が90°であっても構わない。ただし、第2実施形態の第4実施例において、第2の面と第3の面とのなす角が90°よりも大きくなると、互いに係合させにくくなってしまう。