特許第5935316号(P5935316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935316
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】塗工印刷用紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/36 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   D21H19/36 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-280598(P2011-280598)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129939(P2013-129939A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】304040072
【氏名又は名称】丸住製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳永 和史
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−322097(JP,A)
【文献】 特開2008−196090(JP,A)
【文献】 特開2007−270407(JP,A)
【文献】 特開2004−195914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主体とした基材に、顔料と接着剤を含む塗料を塗工した塗工印刷用紙であって、白色度65〜75%の機械パルプを10質量%以上、上質古紙脱墨パルプを20質量%以上配合して抄紙した基材に、蛍光染料を含まない塗料を少なくとも片面に5〜8g/m塗工した、坪量が40〜60g/m白色度75〜85%、不透明度85〜95%、蛍光強度1.0%以下、灰分25〜35%であることを特徴とする塗工印刷用紙。
【請求項2】
前記塗料に含まれる顔料100質量部のうち、炭酸カルシウムが70〜100質量部であることを特徴とする請求項1に記載の塗工印刷用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光強度が低く、白色度、不透明度が高い、古紙パルプを配合した塗工印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗工印刷用紙は、通常、白色度アップを目的に蛍光染料を含む塗料を塗工しているため、食品包装の用途には使用されない。このような用途には非塗工紙が使用される。
通常、回収された古紙には蛍光染料が含まれており、脱墨や漂白処理しても、古紙パルプには蛍光染料が残る。蛍光染料を使用していない古紙を大量に収集することは困難であるから、食品包装の用途には非塗工紙の中でも原料に古紙パルプを使用していない、バージンパルプ100%の用紙が使用される。
【0003】
印刷用紙に蛍光染料が使用される理由は、第一に印刷上がりが美麗になるので、より白い印刷用紙が求められること、第二にパルプの漂白には限度があり、特に白色度が高い領域になると、漂白薬品の効果が頭打ちになってくるので、少量の添加量で白色度を上げる効果が高い蛍光染料の使用は、製造上有利であること、が挙げられる。
【0004】
蛍光染料は、他の紙用染料と同様に食品添加物ではないので、紙を容器包装等の用途で使用する場合、食品に蛍光染料が混入しないような包装設計にする必要がある。
一般の紙用染料は、脱墨、洗浄、漂白等の古紙処理により、比較的容易に色を取り除くことができるが、蛍光染料は、これらの処理によってある程度は除去可能であるが、残った少量の蛍光染料でも、ブラックライトの照射により発光して、検知が容易であることもあり、蛍光染料は一般の紙用染料よりも紙への混入や使用が厳しく制限される要因になっている。
【0005】
一方、印刷用紙の軽量化が進んでいることは周知のとおりである。軽量化に際しては、紙のこわさや不透明度の低下が問題となってくる。これらの対策として、機械パルプの増配が有効である。しかし、機械パルプは、クラフトパルプと異なり、リグニンを多く含むので、漂白が難しく、高い白色度の機械パルプを製造するにはコストが嵩んでしまう。
【0006】
したがって、古紙パルプ配合で蛍光染料の使用がなく、白色度、こわさ、不透明度が高いことを満足する、軽量化した塗工印刷用紙の製造は困難であった。
【0007】
蛍光強度を抑えることを課題とした、古紙パルプ配合の塗工印刷用紙についての先行技術文献は見つからなかったが、紙の蛍光反応に関わるものとしては次の文献があった。
特許文献1:古紙原料を主体とした2層以上の板紙において、表層又は表層と表下層に蛍消剤を添加する。食品包装容器に使用できる無蛍光板紙。
特許文献2:蛍光顕微鏡で観察される蛍光強度が110以下とし、ステルスバーコード印刷の読み取り、仕分けに問題をおこさない、古紙を多配合した再生葉書用紙。古紙パルプに蛍光消色処理を施してもよい。
【0008】
特許文献1については、蛍消剤という新たな薬品を添加する必要があるし、古紙に含まれる蛍光物質は単一成分ではなく、複数の種類があるので、蛍消剤を使用しても蛍光染料が残ることが予想される。
特許文献2については、蛍光強度を低くする方法として、多層抄きにより抄紙し、表層を蛍光物質を含まないクラフトパルプで構成し、表層以外を古紙パルプで構成することや、蛍消剤を添加することが開示されているが、単層抄きの塗工印刷用紙には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−188788号公報
【特許文献2】特開2010−47894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、蛍光染料を使用しなくても白色度が高く、軽量化されてもこわさ、不透明度が高い、食品包装用途などに適している、古紙パルプを配合した塗工印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、塗料に蛍光染料を使用せず、パルプ配合、填料の添加率、塗料の塗工量、灰分などの諸条件を特定することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
請求項1に係る発明は、パルプを主体とした基材に、顔料と接着剤を含む塗料を塗工した塗工印刷用紙であって、白色度65〜75%の機械パルプを10質量%以上、上質古紙脱墨パルプを20質量%以上配合して抄紙した基材に、蛍光染料を含まない塗料を少なくとも片面に5〜8g/m塗工した、白色度75〜85%、不透明度85〜95%、蛍光強度1.0%以下、灰分25〜35%であることを特徴とする塗工印刷用紙。である。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記塗料に含まれる顔料100質量部のうち、炭酸カルシウムが70〜100質量部であることを特徴とする。請求項1に記載の塗工印刷用紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗工印刷用紙によれば、蛍光染料を使用しなくても白色度が高く、軽量化されてもこわさ、不透明度が高い、食品包装用途に適した塗工印刷用紙を提供することができる。また、蛍光染料を使用していないので、使用後の古紙の利用分野の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の塗工印刷用紙の製造には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートの各工程からなる抄紙機を用いる。抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の単層抄きの抄紙機を適宜使用できるが、オントップ型やギャップフォーマ型のツインワイヤー抄紙機を使用するのが紙の表裏差が少なくなるので望ましい。
【0016】
本発明の塗工印刷用紙には、原料パルプとして、クラフトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ等が使用できる。クラフトパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等が使用できる。
【0017】
また、古紙パルプとしては、新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプ等の古紙脱墨パルプ(DIP)が使用できるが、上質古紙脱墨パルプを、全原料パルプのうち20質量%以上使用する。上質古紙脱墨パルプとは、上質系古紙を原料として、BKP代替を目的とした古紙パルプであり、上質系古紙としては、色上、ケント、模造、チラシ等がある。上質古紙脱墨パルプを20質量%以上使用することにより、古紙を配合しても白色度を高くすることができる。資源の有効利用のためには古紙パルプの配合率は高いほうが望ましい。
【0018】
機械パルプとしては、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等を使用することができる。白色度65〜75%の機械パルプを全原料パルプのうち10質量%以上使用する。白色度65〜75%の機械パルプを使用することで、塗工印刷用紙の白色度を高くすることができるが、白色度75%を超えると漂白のためのコストが嵩んでしまう。機械パルプを10質量%以上配合することにより、こわさを高くすることができる。
【0019】
本発明の塗工印刷用紙には、白色度、不透明度向上を目的に填料を添加する。填料の種類は特に限定されず、一般に塗工印刷用紙に使用されている填料を使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレー、ホワイトカーボン、シリカ等の無機填料やプラスチックピグメント等を使用することができる。なかでも、白色度が高い、炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。填料の添加量には特に制限は無いが、填料の添加量が過剰になると紙の強度が低下するので、引張り強さ等を加味して添加量を決めるのが望ましい。
【0020】
本発明の塗工印刷用紙では、原料パルプに硫酸バンド、サイズ剤、嵩向上剤、紙力増強剤等を添加することができる。サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸等のサイズ剤が使用できる。紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できる。
【0021】
本発明の塗工印刷用紙では、原紙にカチオン化澱粉を添加してもよい。添加率としては原料パルプに対し0.2〜1.0質量部程度である。カチオン化澱粉を添加することにより、引張り強さ、伸びやこわさが向上し、コーターでの断紙や印刷機での断紙を防止することができる。カチオン化澱粉の添加量が0.2質量部より少ないと添加の効果が低く、1.0質量部より多いと効果が頭打ちとなるほか、地合いが悪くなったり、抄紙機のフェルト汚れによる搾水不良のトラブルを起こすことがある。
【0022】
その他、湿潤紙力増強剤、歩留向上剤、染料、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤等の添加剤も使用することができる。
【0023】
本発明の塗工印刷用紙は原紙の両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗料を塗工する。
塗料の塗工装置としては、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等が用いられる。使用する顔料としては、炭酸カルシウムを主体に用いるのが白色度が高くなるので望ましく、塗料に含まれる顔料100質量部のうち、炭酸カルシウムが70〜100質量部とするのが白色度が高くなるので望ましい。そのほか、使用する顔料に特に制限は無いが、塗工印刷用紙に従来から用いられている、カオリン、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料等を1種類以上混合して使用することができる。
【0024】
本発明では塗料に前記顔料とともに、接着剤を、顔料の接着能を向上させパイリングなどの表面強度に纏わるトラブルを回避するために配合する。使用する接着剤は、塗工印刷用紙に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗工印刷用紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0025】
本発明の塗工印刷用紙は、原紙の両面に、ブレード塗工方式により塗料を塗工するのが好ましい。ブレード塗工方式は、ブレードで塗料を掻き落とすので、平滑性が高くなり、印刷適性が良くなることと、塗工量の調整範囲が広いことで有利である。
【0026】
塗料を塗工する前工程で、紙力増強剤を含む塗工液を塗工することもできる。このようにすると、こわさを高くすることができるし、紙力増強剤の目止め作用により塗料の均一塗工が可能となり、印刷適性を向上させることができる。
【0027】
本発明の塗工印刷用紙は、蛍光染料を含まない塗料を少なくとも片面に5〜8g/m塗工している。塗料の塗工量が片面当たり5g/mより少ないと、塗料による原紙の被覆が不十分となるため、印刷適性が悪くなったり蛍光強度が強くなることがある。塗料の塗工量が片面当たり8g/mより多いと、塗工印刷用紙の軽量化が難しくなる。
【0028】
このようにして本発明の印刷用紙は、古紙を使用しても、蛍光染料を含まない塗料を所定量塗工しているので、蛍光強度が1.0%以下となる。したがって、蛍消剤使用など特別な処理をすることなく、蛍光強度の低い塗工印刷用紙を得ることができる。蛍光強度が1.0%以下であれば、蛍光強度は一般の塗工印刷用紙より極めて弱いものとなり、包装材としての用途が増えることになる。
【0029】
塗料を塗工後の乾燥方法としては、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。本発明の塗工印刷用紙の製造に際しては、ドライヤーで乾燥後に、カレンダー装置により平滑化処理する。カレンダー装置としては、チルドカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。要求される平滑度に応じて、ニップ数やニップ圧、ロール温度、ロール材質、ロール硬度等を設定する。
【0030】
本発明の塗工印刷用紙は、坪量(JISP8124)が40〜60g/mとされている。坪量は大きいほどこわさには有利であるが、省資源という点から60g/m以下が好ましく、55g/m以下がさらに好ましい。坪量40g/m未満ではこわさや不透明度が不足する。このようにして得られる塗工印刷用紙は、白色度(JISP8148)75〜85%、不透明度(JISP8149)85〜95%とされる。白色度が75%より低いと印刷の見映えの点で劣り、不透明度が85%より低いと裏抜けが目立つようになる。白色度と不透明度は高いほうが望ましいが、要求される品質と経済性を考慮すると上限は前述した程度である。
【0031】
塗料を塗工する前工程でカレンダーにて平滑化処理を行うこともできる。この場合、塗料を塗工する前の平滑度が高過ぎると、紙の密度が高くなるため、塗料の浸透が悪くなり、塗工量が不均一になったり、水分や坪量のプロファイルが悪化してしわ入りや印刷時のばたつきの原因となる。塗料を塗工する前の平滑度が低過ぎると塗工ムラが発生しやすくなる。
【0032】
本発明の塗工印刷用紙の灰分は、塗工後で25〜35%である。灰分が25%より低いと、白色度、不透明度が不足して印刷適性が悪くなる。灰分が35%より高いと強度やこわさが不足し、軽量化が難しくなる。塗工印刷用紙の灰分は、原紙(塗工前)灰分と塗料の塗工量によって決まってくるが、原紙(塗工前)で5〜15%とするのが望ましい。5%より低いと白色度が低くなり、15%より高いと、塗工量が少なくなって、印刷適性が悪くなるし、軽量化を進めた塗工印刷用紙での紙の強度やこわさが不足する。以上のようにして、本発明の塗工印刷用紙が得られる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明の効果を具体的に表す。なお、%は特に断りのない限り質量%を表し、内添薬品の添加量は絶乾パルプ100質量部に対する固形分または有効成分で表し、塗料に使用する薬品は、顔料100質量部に対する固形分または有効成分で表す。
【0034】
(実施例1)
NBKP30質量%(510mlCSF、白色度81%)、LBKP10質量%(220mlCSF、白色度83%)、TMP30質量%(65mlCSF、白色度68%)、上質古紙脱墨パルプ30質量%(160mlCSF、白色度78%)からなるパルプ分散液に、歩留向上剤(商品名 DR8500 ハイモ株式会社製)を0.06質量部、硫酸バンド0.9質量部(有姿)、軽質炭酸カルシウム(商品名 TP−121−6S 奥多摩工業株式会社製)、カチオン化澱粉(商品名 ジェルトロン24 ジー・エス・エル・ジャパン株式会社製)0.4質量部を添加して抄紙した。なお、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が10%となるように添加した。塗工装置では、ショートドゥエルタイプのブレードコーターを用いて、以下のような、顔料と接着剤を含む塗料を原紙の両面に塗工した。
重質炭酸カルシウム(商品名 ハイドロカーブ90HS 備北粉化工業株式会社製)100質量部、SBラテックス(商品名 スマーテックスPA8008 日本エイアンドエル株式会社製)4.6質量部、尿素燐酸エステル化澱粉(商品名 スターコート16 日本食品化工株式会社製)7.7質量部、分散剤(商品名 アロンT50 東亞合成株式会社製)15質量部(対顔料)、塗工量片面当たり8.0g/mで両面に塗工後、乾燥し、ソフトカレンダー1ニップ処理(線圧50kN/m、ロール温度130℃)を行い、坪量52.3g/m、水分5.5%の塗工印刷用紙を得た。
【0035】
(実施例2)
使用するパルプをNBKP30質量%、LBKP20質量%、TMP20質量%、上質古紙脱墨パルプ30質量%とした以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0036】
(実施例3)
使用するパルプをNBKP25質量%、LBKP10質量%、TMP45質量%、上質古紙脱墨パルプ20質量%とし、塗料の塗工量片面当たり6.0g/mで両面に塗工した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0037】
(実施例4)
塗料の塗工量片面当たり8.0g/mで両面に塗工し、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が5%となるように添加した以外は、実施例3と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0038】
(実施例5)
使用するパルプをNBKP40質量%、LBKP30質量%、TMP10質量%、上質古紙脱墨パルプ20質量%とし、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が8.0%となるように添加した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0039】
(実施例6)
塗料の塗工量片面当たり5.0g/mで両面に塗工し、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が15.0%となるように添加した以外は実施例5と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0040】
軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が5.0%となるように添加し、塗料に含まれる顔料を、重質炭酸カルシウム(商品名 ハイドロカーブ90HS 備北粉化工業株式会社製)70質量部、2級カオリン(製品名 KCS、株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製)30質量部とし、坪量を49.0g/mとした意外は実施例3と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0041】
(比較例1)
塗料の塗工量片面当たり4.5g/mで両面に塗工した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0042】
(比較例2)
使用するパルプをNBKP40質量%、LBKP30質量%、TMP5質量%、上質古紙脱墨パルプ25質量%とし、塗工量片面当たり6.0g/mで両面に塗工した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0043】
(比較例3)
使用するTMPの白色度60%とし、塗料の塗工量片面当たり6.0g/mで両面に塗工した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0044】
(比較例4)
塗料の塗工量片面当たり7.0g/mで両面に塗工したことと、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が4%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0045】
(比較例5)
塗料の塗工量片面当たり10.0g/mで両面に塗工し、軽質炭酸カルシウムは、原紙(塗工前)の灰分が5%となるように添加した以外は実施例1と同様にして塗工印刷用紙を得た。
【0046】
以上の実施例、比較例で得られた塗工印刷用紙と、市販の塗工印刷用紙(坪量52.3g/m)の評価結果を表1と表2に示す。
【0047】
なお、試験方法と評価方法は次のとおりである。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙−坪量測定方法
(灰分)JISP8251:2003紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(蛍光強度)日本電色工業株式会社製の分光式白色差計PF−10を用い、パルスキセノンランプを光源として使用し、JIS P8148(2001年)に従って測定する白色度において、光路に420nmカットオフフィルターを挿入しない場合から同フィルターを挿入した場合の白色度を引いた値を蛍光強度とした。
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照射法
(こわさ評価)JISP8143:2009紙−こわさ試験方法―クラークこわさ試験機法によりクラークこわさ縦を測定し、次の基準で評価した。
◎:25cm/100以上、○:23cm/100以上25cm/100未満、×:22cm/100未満
(印面評価)
オフセット輪転印刷機を用い、印刷速度700rpm、紙面温度120℃で4色印刷(オフ輪用プロセスインキ 墨・紅・藍・黄)を行い、各塗工印刷用紙の印面を次の基準で相対評価した。
◎:優れる、○:良い、×:印面にムラがみられた。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1に示したように、本発明の実施例1〜7では、いずれも、白色度、不透明度が高く、こわさ評価、印面評価が良好で、蛍光強度が小さいものとなっている。
【0051】
比較例1は、塗工液の片面当たりの塗工量が4.5g/mと少なく、灰分が21.5%と低いので、印面評価が悪く、蛍光強度がやや高くなっている。
比較例2は、機械パルプ配合率が5質量%と少ないため、不透明度が低く、こわさ評価が悪くなっている。
比較例3は、機械パルプの白色度が60%と低いので、白色度が低くなっている。
比較例4は、原紙灰分が4.0%と低く、灰分が24.8%と低いので、白色度が低く、印面評価が悪くなっている。
比較例5は、塗工液の片面当たりの塗工量が10.0g/mと多く、灰分が35.2%と高いので、こわさの評価が悪くなっている。
市販品は、坪量、白色度、不透明度が実施例の塗工印刷用紙と同程度のものであるが、蛍光強度が3.0%と高くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のオフセット印刷用紙は、チラシやカタログ用途に使用される。また、蛍光強度が低いので、食品の包装用途にも適している。