特許第5935326号(P5935326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935326
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   E02F9/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-2436(P2012-2436)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-142240(P2013-142240A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 啓宏
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−041844(JP,U)
【文献】 特開2010−095845(JP,A)
【文献】 特開平09−025649(JP,A)
【文献】 特開2008−114852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体上に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体上に設けられた機械室を覆う機械室カバーとを備えた建設機械であって、
上下方向に延びる支柱部材と、
前記機械室内に配設され、前記支柱部材の下部を保持して固定する固定部材とを備え、
前記機械室カバーの上面には、前記機械室内に吸気するための吸気口又は該機械室内の空気を排気するための排気口を構成する通気口が形成され、
前記支柱部材の上部は、前記通気口を通って前記機械室カバーよりも上方に延びており、
前記固定部材は、
前記支柱部材の外周面を当接させる保持面と、該支柱部材の下端を当接させる座面とを有する固定基台部と、
前記固定基台部との間で前記支柱部材を挟持する固定ブラケットとを有することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1において、
前記通気口を覆うように前記機械室カバーに対して着脱自在に取り付けられた格子状の通気口カバーを備え、
前記通気口カバーの外周縁の一部と前記通気口の内周縁との間には、所定の隙間が設けられ、
前記支柱部材は、前記隙間を通って前記機械室カバーよりも上方に延びていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下部走行体と、下部走行体上に搭載された上部旋回体と、上部旋回体上に設けられた機械室を覆う機械室カバーとを備えた建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の建設機械では、上部旋回体上に運転室が設けられ、上部旋回体の後方にカウンターウェイト部が設けられている。カウンターウェイト部の後部上面には、反射ミラーの支持部が取り付けられている。反射ミラーは、運転室に座った作業者が上部旋回体の後方下側の視界を確保するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−339874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の建設機械では、締結ボルト等の固定部材を用いて、反射ミラーの支持部をカウンターウェイト部の上面に固定している。そのため、固定部材が露出した状態となり、外観が損なわれてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、支柱部材を固定する固定部材が機械室カバーから露出して外観が損なわれてしまうのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下部走行体と、該下部走行体上に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体上に設けられた機械室を覆う機械室カバーとを備えた建設機械を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上下方向に延びる支柱部材と、
前記機械室内に配設され、前記支柱部材の下部を保持して固定する固定部材とを備え、
前記機械室カバーの上面には、前記機械室内に吸気するための吸気口又は該機械室内の空気を排気するための排気口を構成する通気口が形成され、
前記支柱部材の上部は、前記通気口を通って前記機械室カバーよりも上方に延びており、
前記固定部材は、
前記支柱部材の外周面を当接させる保持面と、該支柱部材の下端を当接させる座面とを有する固定基台部と、
前記固定基台部との間で前記支柱部材を挟持する固定ブラケットとを有することを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、機械室カバーの上面には、通気口が形成される。通気口は、機械室内に吸気するための吸気口又は機械室内の空気を排気するための排気口を構成している。機械室内には、固定部材が配設されている。支柱部材の下部は、固定部材によって保持される。支柱部材の上部は、通気口を通って機械室カバーよりも上方に延びる。
【0010】
このような構成とすれば、固定部材を機械室内に配設することで、機械室カバーによって固定部材が覆われた状態となり、外観を損なうことなく支柱部材を固定することができる。
【0011】
また、機械室カバーに予め形成されている通気口を利用して、支柱部材の上部を機械室カバーよりも上方に延ばすようにしているから、支柱部材を挿通させるための孔を別途形成する必要が無い。
【0012】
さらに、固定部材は、固定基台部と固定ブラケットとを有する。固定基台部は、保持面と座面とを有する。保持面には、支柱部材の外周面が当接される。座面には、支柱部材の下端が当接される。固定ブラケットは、固定基台部との間で支柱部材を挟持させる。
【0013】
このような構成とすれば、支柱部材を固定部材に固定する際に、支柱部材の下端が固定基台部の座面に当接するまで挿通させることで、支柱部材の高さを容易に位置決めすることができる。また、支柱部材の下端を固定基台部の座面で支持することで、固定部材の保持力が弱まった場合でも、支柱部材が下方に落下することを防止できる。
【0014】
の発明は、第1の発明において、
前記通気口を覆うように前記機械室カバーに対して着脱自在に取り付けられた格子状の通気口カバーを備え、
前記通気口カバーの外周縁の一部と前記通気口の内周縁との間には、所定の隙間が設けられ、
前記支柱部材は、前記隙間を通って前記機械室カバーよりも上方に延びていることを特徴とするものである。
【0015】
の発明では、格子状の通気口カバーが通気口を覆うように取り付けられる。通気口カバーは、機械室カバーに対して着脱自在である。通気口カバーの外周縁の一部と通気口の内周縁との間には、所定の隙間が設けられる。この隙間には、支柱部材が挿通される。
【0016】
このような構成とすれば、通気口カバーを取り外して機械室内のメンテナンス等を行う場合に、通気口カバーが支柱部材と干渉することがない。具体的に、通気口カバーの格子間を通るように支柱部材を上方に延ばし、支柱部材の上部にミラーを取り付けた構成では、通気口カバーを取り外そうとしても、通気口カバーの格子部分が支柱部材のミラーに干渉してしまう。そのため、支柱部材やミラーを固定部材から取り外した後で通気口カバーを取り外す作業が必要となり、手間が掛かってしまうという問題がある。
【0017】
これに対し、本発明では、通気口カバーの外周縁の一部と通気口の内周縁との隙間に支柱部材を挿通させているから、通気口カバーを取り外す際に、支柱部材が邪魔になることがなく、機械室内のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固定部材を機械室内に配設することで、機械室カバーによって固定部材が覆われた状態となり、外観を損なうことなく支柱部材を固定することができる。
【0019】
また、機械室カバーに予め形成されている通気口を利用して、支柱部材の上部を機械室カバーよりも上方に延ばすようにしているから、支柱部材を挿通させるための孔を別途形成する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。
図2】建設機械を車両後方から見たときの斜視図である。
図3】排気口周辺の構成を示す平面図である。
図4】支柱部材の取付状態を示す平面断面図である。
図5】支柱部材の取付状態を示す側面断面図である。
図6】本実施形態2に係る建設機械を車両後方側から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。図1に示すように、建設機械10は、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回可能な上部旋回体2が搭載された油圧ショベルである。
【0023】
上部旋回体2は、車体フレームとしての旋回フレーム3と、旋回フレーム3の前端側に設けられて土砂等の掘削作業を行うアタッチメント4と、キャブ5と、機械室6と、カウンターウエイト7とを備えている。本実施形態の建設機械10は、小旋回型であり、旋回半径が小さくなるように、旋回フレーム3は相対的に小さく構成されている。旋回フレーム3の後部の外郭線は、上方から見て円弧状に形成されている。
【0024】
なお、本実施形態では、図1において、図面左側のアタッチメント4が配置された側を車両前側、紙面手前側のキャブ5が配置された側を車両左側とし、以下の説明では前後左右等の方向は特に言及しない限り、これに従うものとする。
【0025】
アタッチメント4は、基端側が旋回フレーム3に設けられた一対の縦板(図示省略)に回動可能に取り付けられたブーム11と、ブーム11の先端側に回動可能に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端側に回動可能に取り付けられたバケット13とを備えている。ブーム11、アーム12、及びバケット13は、油圧制御された油圧シリンダ14の伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。
【0026】
キャブ5は、その内部に運転シートや各種制御機器、操作機器等が装備された矩形箱型の運転室であり、アタッチメント4の左側に隣接して位置するように上部旋回体2の前部左側に配設されている。
【0027】
機械室6は、旋回フレーム3の後部に設けられている。機械室6は、その周囲が機械室カバー20で覆われている。機械室6内には、図示しないエンジン、ラジエータ、油圧機器等が密集した状態で収容されている。この建設機械10では、機械室6の後部に、アタッチメント4との間で前後のバランスを確保するカウンターウエイト7が配設され、機械室6の後部を覆っている。つまり、カウンターウエイト7の後部の外郭線は、旋回フレーム3に対応して、上方から見て円弧状に形成されている。機械室カバー20の左側面には、ラジエータ等をメンテナンスする際に開閉する開閉扉25が設けられている。
【0028】
図2は、建設機械を車両後方から見たときの斜視図である。図2に示すように、機械室カバー20の上面には、機械室6内に吸気するための吸気口21と、機械室6内の空気を排気するための排気口22とが形成されている。吸気口21は、機械室カバー20上面の車両左側に形成されている。排気口22は、機械室カバー20上面の車両右側に形成されている。
【0029】
ここで、吸気口21から機械室6内に吸い込まれた空気は、ラジエータを通って冷却され、エンジンの冷却に利用される。エンジンを冷却した後の空気は、排気口22を通って外部に排気される。このように、吸気口21及び排気口22は、空気の流通経路となる通気口を構成している。
【0030】
吸気口21及び排気口22は、格子状の通気口カバー23によってそれぞれ覆われている。つまり、吸気口21及び排気口22を通る空気は、通気口カバー23の格子間を通って吸排気されることとなる。通気口カバー23は、機械室カバー20に対して着脱自在に取り付けられている。通気口カバー23の外周縁の一部(図3の右側部)と排気口22の内周縁との間には、所定の隙間が設けられている(図3参照)。この隙間には、上下方向に延びる支柱部材30が挿通されている。
【0031】
支柱部材30の上部は、排気口22(具体的には、通気口カバー23と排気口22との隙間)を通って機械室カバー20よりも上方に延びている。支柱部材30の上部には、キャブ5に座った作業者が上部旋回体2の後方下側の視界を確保するためのミラー31が取り付けられている。支柱部材30の下部は、後述する固定部材35によって保持されている。
【0032】
このように、支柱部材30を通気口カバー23と排気口22との隙間に挿通させているから、通気口カバー23を取り外す際に、通気口カバー23が支柱部材30やミラー31と干渉することがない。具体的に、通気口カバー23の格子間を通るように支柱部材30を上方に延ばした構成では、支柱部材30やミラーを固定部材35から取り外した後で通気口カバー23を取り外す作業が必要となる。これに対し、本実施形態の構成では、支柱部材30やミラー31を取り外すことなく、通気口カバー23を取り外すことができるため、機械室6内のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0033】
図4は、支柱部材の取付状態を示す平面断面図、図5は側面断面図である。図4及び図5に示すように、支柱部材30の下部は、機械室6内に配設された固定部材35によって保持固定されている。固定部材35は、固定基台部36と、固定ブラケット37と、締結ボルト38とを備えている。
【0034】
固定基台部36は、カウンターウエイト7によって構成されている。固定基台部36は、支柱部材30の外周面を当接させるために垂直方向に延びる保持面36aと、支柱部材30の下端を当接させるために水平方向に延びる座面36bとを有する。保持面36a及び座面36bは、カウンターウエイト7の内周面の一部を切り欠くことで形成され、互いに直交している。保持面36aには、締結ボルト38を締結させるための締結孔36cが形成されている。
【0035】
固定ブラケット37は、締結ボルト38を挿通させる挿通孔37aと、湾曲凹部37bとを有する。挿通孔37aは、固定基台部36の締結孔36cに対応して形成されている。湾曲凹部37bは、支柱部材30と略同じ曲率半径で湾曲して窪んでいる。
【0036】
支柱部材30の下部は、固定基台部36の保持面36aと、固定ブラケット37の湾曲凹部37bとの間で挟持されている。そして、締結ボルト38を締め付けることにより、支柱部材30が締結固定される。
【0037】
このような構成とすれば、機械室カバー20によって固定部材35が覆われた状態となり、外観を損なうことなく支柱部材30を固定することができる。
【0038】
また、機械室カバー20に予め形成されている排気口22を利用して、支柱部材30の上部を機械室カバー20よりも上方に延ばすようにしているから、支柱部材30を挿通させるための孔を別途形成する必要が無い。
【0039】
また、支柱部材30を固定部材35に固定する際に、支柱部材30の下端が固定基台部36の座面36bに当接するまで挿通させることで、支柱部材30の高さを容易に位置決めすることができる。さらに、支柱部材30の下端を固定基台部36の座面36bで支持することで、固定部材35の保持力が弱まった場合でも、支柱部材30が下方に落下することを防止できる。
【0040】
支柱部材30の下端部には、保持面36a側の一部が面取りされた面取り部30aが形成されている。そして、支柱部材30を固定部材35に取り付ける際には、この面取り部30aが固定基台部36の保持面36a側に位置するように調整することで、支柱部材30のミラー31の角度調整を容易に行うことができる。
【0041】
《実施形態2》
図6は、本実施形態2に係る建設機械を車両後方側から見たときの斜視図である。前記実施形態1との違いは、作業者が手摺りとして使用するハンドレール33を排気口22に挿通させて取り付けるようにした点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0042】
図6に示すように、ハンドレール33は、1本のパイプ部材を屈曲させることによって形成されている。具体的に、ハンドレール33は、上下方向に延びる2つの支柱部材30と、2本の支柱部材30の上端部に跨るように水平方向に延びる手摺り部材32とを有している。
【0043】
ここで、2本の支柱部材30の上部は、排気口22を通って機械室カバー20よりも上方に延びている。2本の支柱部材30の下部は、機械室6内に配設された固定部材35によって固定されている。
【0044】
なお、本実施形態2では、作業者が手摺りとして使用するハンドレール33を排気口22に挿通させて取り付けた形態について説明したが、作業者が上部旋回体2上から転落するのを防止するためのガードレールを同様に取り付けた形態であってもよい。
【0045】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0046】
本実施形態では、支柱部材30を排気口22に挿通させて取り付けるようにした形態について説明したが、支柱部材30を吸気口21に挿通させて取り付けるようにした形態であってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、カウンターウエイト7の内周面の一部を切り欠くことで固定基台部36を形成し、この固定基台部36に支柱部材30を固定するようにした形態について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、作動油タンク等にブラケットを取り付けることで固定基台部36を形成してもよい。また、カウンターウエイト7とは別体の部材によって固定基台部36を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、支柱部材を固定する固定部材が機械室カバーから露出して外観が損なわれてしまうのを防止することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0049】
1 下部走行体
2 上部旋回体
6 機械室
10 建設機械
20 機械室カバー
21 吸気口(通気口)
22 排気口(通気口)
23 通気口カバー
30 支柱部材
35 固定部材
36 固定基台部
36a 保持面
36b 座面
37 固定ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6