【実施例】
【0066】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムおよび積層構造の層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO
4やOsO
4などを使用した染色技術を用いた。
【0067】
層厚みの具体的な算出方法は、上記装置で撮影した4万倍の写真画像をビットマップファイル(BMP)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel 2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ4(間引き4)でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
【0068】
(2)分光反射率の測定
積層フィルムの5cm四方のサンプルについて、日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)を用いて、入射角度φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250nm〜1200nm、スリットは5nm(可視)/10nm(赤外)とし、ゲインは2と設定し、1nm刻みで、走査速度を600nm/分で測定した。サンプル測定時は、サンプルの裏面からの反射による干渉をなくすために、サンプルの裏面を日東電工製の黒のビニルテープ(登録商標)を貼り合わせた。なお、可視光と赤外光の検出器の切替波長は、850nmとする。
【0069】
(3)振動波形の振幅ΔR
(2)項の測定で得られた1nm刻みでの分光反射率曲線(曲線A)のデータを、波長に対する反射率のデータとして20点移動平均処理を行った。次に得られた波長259.5〜1190.5nmの範囲の1nm毎とのデータを線形補間することで、波長260〜1190nmの範囲の1nm毎のデータに変換して20点移動平均分光反射率曲線(曲線B)を得た。波長区間400〜700nmにおいて、曲線Aと曲線Bの差分(曲線Aにおける反射率−曲線Bにおける反射率)をとり、振動波形得た。この振動波形から反射率差の最大値Rmaxと最小値Rminを求め、(1)式を利用して、ΔRを算出した。なお、実施例16と実施例17については、偏光特性があるため、(9)項の測定で得られた分光反射率曲線を用いて、最大反射方向と最小反射方向を平均した分光反射率曲線を採用し、同様の数値処理を行った。
【0070】
(4)粒子の占有面積率と平均二次粒径
(1)項により得られた画像をパソコン内部へ取り込んだ。次に、画像処理ソフトImage-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、必要であれば、画像処理を行った。画像処理は、粒子の形状を鮮明にするために行うものであり、例えば、ソフト付属の2値化およびローパスフィルタ処理などを行った。
【0071】
粒子の占有面積率の求め方は、得られた厚み−幅方向断面写真(撮影倍率2万倍)について、20層分のマトリックス樹脂層について解析をした。上記同様に2値化などの画像処理により粒子とマトリックス樹脂を区別し、粒子の面積を求める。すわなち、Count/Sizeダイアログボックスの測定メニューから、測定項目のうち、“Area(面積)”を選択し、Countボタンを押し、自動測定を行った。こうして20層分の粒子に関して断面積を求めた。同様に、粒子を含めたマトリックス樹脂層についても、断面積を求めた。得られた粒子の面積を粒子の面積を含めたマトリックス樹脂層の面積で割り、100を乗じることにより、粒子の占有面積率を求めた。一方、平均二次粒径については、マトリックス樹脂20層内に包含されている粒子について、処理ソフトを用いてフイルム厚み方向の粒子の径を測長し、その平均を求めた。なお、二次粒径の形態をとっていない有機粒子については、一次粒径または分散径を測定した。
【0072】
(5)測色値(明度L*(SCI)、明度L*(SCE))
積層フィルムの幅方向中央部から5cm×5cmで切り出し、積層フィルムの裏面からの反射光をなくすために、次いでサンプルの裏面を日東電工製の黒のビニルテープ(登録商標)を貼り合わせ、コニカミノルタ(株)製CM−3600dを用いて、測定径φ8mmのターゲットマスク(CM−A106)条件下で、正反射光を除去したSCE方式および正反射光を含めたSCI方式でそれぞれ、L*,a*,b*値を測定し、n数5の平均値を求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。さらに、彩度C*は、SCIのa*,b*のそれぞれの2乗の和の平方根として求めた。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM−A103
ゼロ校正ボックス:CM−A104
(6)屈折率
熱可塑性樹脂からなる粒子の屈折率は、JIS K7142(1996)A法に従って測定した。すなわち、溶融状態からプレスし、その後、急冷却することで、シートを作製し、サンプルとした。
【0073】
一方、無機物や架橋高分子からなる粒子の屈折率は、JIS K7142(1996)B法に従って測定した。また、A層およびB層の屈折率については、延伸・熱処理により配向や熱結晶化が伴うため、各実施例または比較例の製膜条件と同様の条件でフィルムストレッチャー(ブルックナー社製KARO-IV)を用いて逐次二軸延伸後、熱処理することにより得られたフィルム面内の二軸の延伸方向の屈折率をJIS K7142(1996)A法に従って測定した。屈折率は、二軸延伸方向の平均値を採用した。なお、熱可塑性樹脂B層においては、熱処理時に溶融するため、厚み50μmのカプトンフィルム(東レデュポン製)で挟んで、オーブンを用いて約30秒間熱処理を行った。実施例16、17の熱可塑性樹脂A層については、面内異方性があるため、延伸方向に沿って測定した屈折率と延伸方向と垂直な方向に沿って測定した屈折率の2つを表1中に示した。
【0074】
(7)正反射性の目視評価
A4サイズでサンプルを切り出した。次いで、CIEで定めるF10の発光スペクトルを有する蛍光灯、およびサンプルをのせる黒色の厚紙を準備した。準備した蛍光灯を斜め45度の入射角で黒色の厚紙の上のサンプルを照射し、反射により映し出された観察者の像の鮮明度合いを観察し、正反射性を判断した。以下の基準に基づいて、評価した。
○:白濁感がなく、鏡面反射による像は鮮明に見える。
△:少し白濁感があるが、鏡面反射による像は見える。
×:白濁感があり、鏡面反射による像が少しぼけている。あるいは見えない。
【0075】
(8)干渉縞の目視評価
フィルム幅方向中央部からA4サイズでサンプルを切り出した。次いで、CIEで定めるF10の発光スペクトルを有する蛍光灯、およびサンプルをのせる黒色の厚紙を準備した。準備した蛍光灯と黒色の厚紙の上のサンプルと目視方向の関係が正反射となるように設置して、干渉縞の発生状況を観察した。さらに、F10光源の透過光でも確認した。以下の基準に基づいて、評価した。
◎:透過光および反射光において、干渉縞が確認できない。
○:反射光において、干渉縞は確認できないが、透過光において、干渉縞は、僅かに確認できる。
△:反射光において、緑や赤の干渉縞がぼけて僅かに確認できるが、問題ない程度である。
×:反射光において、緑や赤の干渉縞が鮮明に見える。
【0076】
(9)偏光成分をもつ入射光に対する反射率測定
サンプルをフィルム幅方向中央部から5cm×5cmで切り出した。日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率を行った。反射率測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。反射率測定では、サンプルのMD(Machine Direction)方向が上下となるように配置し、積分球の後ろに設置した。また、付属のグランテーラ社製偏光子を設置して、偏光成分を0〜180°において、5度刻みで回転させた方位角でサンプルに垂直に直線偏光を入射して、波長250〜1500nmの反射率を測定した。測定条件:スリットは5nm(可視)/10nm(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/min.で測定し、方位角0〜180度における反射率Rを得た。これらの測定結果から、波長550nmでの反射率の最小値(Rmin)と最大値(Rmax)を測定し、その差を求めた。なお、副白板は、付属の酸化アルミニウムを用いた。
【0077】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂Aとして、以下のものを準備した。
(樹脂A−1)テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応層に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを得た。280℃ せん断速度100-Sの粘度 2000poise
(樹脂A―2)ナフタレン2,6-ジカルボン酸ジメチルエステル(NDC)とエチレングリコール(EG)を常法により重縮合して得たIV=0.43のポリエチレンナフタレート(PEN)。290℃ せん断速度100-Sの粘度 4500poise
(樹脂A−3)IV=0.74 シクロヘキサンジメタノールを9mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PETG)。280℃ せん断速度100-Sの粘度 3300poise 。
【0078】
一方、非晶性である熱可塑性樹脂Bとしては、以下のポリエステル樹脂を準備した。
(樹脂B−1)IV=0.74(シクロヘキサンジメタノール(CHDM)30モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。280℃ せん断速度100-Sの粘度 3500poise
(樹脂B−2)樹脂B−1に樹脂A−1を樹脂A−1が添加後の樹脂B−2全体の10重量%となるよう添加し、ポリマーブレンドした共重合ポリエチレンテレフタレート。280℃ せん断速度100-Sの粘度 3300poise
(樹脂B−3)IV=0.72(スピログリコール(SPG)20モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)30モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。280℃ せん断速度100-Sの粘度 2300poise
(樹脂B−4)IV=0.7(イソフタル酸(IPA)25モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−5)樹脂B−1に樹脂A−1を樹脂A−1が添加後の樹脂B−5全体の35重量%となるよう添加し、ポリマーブレンドした共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−6)樹脂B−3に樹脂A−1を樹脂A−1が添加後の樹脂B−6全体の20重量%となるよう添加し、ポリマーブレンドした共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−7)ポリメタクリル酸メチル(PMMA) 住友化学社製 タイプ LG−2。
(樹脂B−8)IV=0.65 テレフタル酸成分を50mol%共重合したポリエチレンナフタレート。
【0079】
(粒子)
有機粒子となる以下の樹脂を準備した。
【0080】
PMP:ポリ(4−メチルペンテン−1)(TPX)三井化学製 タイプ DX820
COC:ノルボルネンとエチレンの共重合体である環状オレフィンコポリマー
ポリプラスチック社製TOPAS 8007 ガラス転移点 79℃
高粘度MXDナイロン:三菱瓦斯化学製 タイプ S6121 メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応から得られる結晶性のポリアミド。280℃ せん断速度100-Sの粘度 3500poise ガラス転移点 89℃
MXDナイロン:三菱瓦斯化学製 タイプ S6001 メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応から得られる結晶性のポリアミド。280℃ せん断速度100-Sの粘度 2000poise ガラス転移点 89℃
PS:ポリスチレン 日本ポリスチレン製 タイプ HF77 ガラス転移点 96℃
280℃ せん断速度100-Sの粘度 2000poise
低粘度PS :ポリスチレン 日本ポリスチレン製 タイプ 679 ガラス転移点 93℃
280℃ せん断速度100-Sの粘度 1000poise
低粘度MBS:スチレン−ブタジエン−メタクリル酸共重合体 電気化学社製 タイプ TH−11 ガラス転移点91℃
MBS :スチレン−ブタジエン−メタクリル酸共重合体 電気化学社製 タイプ TH−21 ガラス転移点91℃
MS :スチレン−メタクリル酸共重合体 電気化学社製 タイプ TX800LF
PCT/I:イソフタル酸10モル%共重合したポリシクロジメチレンテレフタレート
PAR:ポリアリレート ユニチカ Uポリマー タイプ U8000
PEI:サビック社製 ポリエーテルイミド タイプ DT1810EV。
BPEF:テレフタル酸/エチレングリコール/シクロヘキサンジカルボン酸/ビスフェノキシエタノールフルオレン成分=60/45/40/65のモル濃度で重合した4元共重合ポリエステル。ガラス転移点 115℃ 。
【0081】
以下に示す、無機粒子を練り込んだ樹脂Cを準備した。
【0082】
(樹脂C−1)凝集シリカ:平均粒径が2.5μmの粒子を樹脂A−1に粒子が添加後の樹脂C−1全体の2質量%となるように添加した粒子入りポリエチレンテレフタレート
(樹脂C−2)凝集シリカ:平均粒径が4μmの粒子を樹脂A−1に粒子が添加後の樹脂C−2全体の6質量%となるように添加した粒子入りポリエチレンテレフタレート
(樹脂C−3)アルミナ:平均粒径が0.17μmの粒子を樹脂A−1に粒子が添加後の樹脂C−3全体の2%となるように添加した粒子入りポリエチレンテレフタレート。
【0083】
なお、各実施例、比較例で用いた樹脂は表1に記載のとおりの組み合わせとした。
【0084】
[実施例1]
熱可塑性樹脂Aとして樹脂A−1、熱可塑性樹脂Bとして樹脂B−1にMXDナイロンを5重量%添加したものを、それぞれ、2台の単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて、混練した。次いで、それぞれ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1.07/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、269個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である801層積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層流とした。積層流とする方法は、特開2007−307893号公報〔0053〕〜〔0056〕段の記載に従って行った。なお、スリット板間の境界層は、A層同士の合流層とするため、スリット板内のスリット数は、803個となる。ここでは、スリット長さは、全て一定とし、スリット幅(間隙)のみ変化させることにより、層厚み分布に傾斜構造を持たせた。得られた積層流は、熱可塑性樹脂Aが401層、粒子を含んだ熱可塑性樹脂Bが400層であり、厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有していた。積層装置のスリット板の間隙から算出される狙いの層厚み分布パターンは、
図4に示すような1つの傾斜構造が逆傾斜となっている構成とした。なお、傾斜構造の傾斜度は2.5とした。傾斜度は、傾斜構造において、厚膜層を除く、最大層厚みを最小層厚みで除した値である。
【0085】
次いで、該積層流をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、縦延伸機で95℃、3.3倍の延伸を行い、コロナ処理を施し、#8のメタリングバーで数平均粒径80nmのコロイダルシリカ5重量部に対して、酢酸ビニル・アクリル系樹脂および架橋剤125重量部の水系塗剤をコーティングし、易接着層(易滑面)を付与した。両端部をクリップで把持するテンターに導き105℃、4.2倍横延伸した後、次いで230℃、240℃の順で約20秒間熱処理を施し、150℃で約3%のTDリラックス(フィルム幅方向に弛緩処理)を実施し、厚み90μmの積層フィルムを得た。易接着層の厚みは、100nmであり、その屈折率は、1.52であった。このフィルムの物性を測定した結果を表1に示す。
【0086】
得られた積層フィルムの層厚み分布は、両最外層を除き、表面から260層分、裏面から数えて260層分のそれぞれにおいて、層の層厚みが40nm〜150nmの範囲に全て入り、かつA層およびB層とも最外層側から層厚みが単調増加していく傾斜構造を有していた。フィルム厚み方向中央部の残りの267層分についても、層の層厚みが30nm〜300nmの範囲に全て入り、かつ層厚みが単調増加する傾斜構造を有していた。それぞれ、熱可塑性樹脂A層と熱可塑性樹脂B層が、交互に801層積層された構造を有しており、
図4にみられる傾斜構造を有していた。なお、両最外層の厚みは、1.7μmであった。得られた積層フィルムの彩度C*は、3.2であり、無彩色であった。また、分光反射率曲線に、多少はさざ波状の振幅がみられるものの、波長400〜700nm範囲の反射率は約60%と一定であり、光沢感があり、干渉縞も問題ないレベルであった。さらに、フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は、空隙も見られず、目的としたA層とB層の界面におけるうねり構造が形成されていることを確認した。粒子は、縦、横に伸ばされた扁平状の形状をしていた。面内方向の粒径は、5〜15μm程度であった。
【0087】
[
参考例2]
熱可塑性樹脂Bを表1記載のようにB−2へ変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。ほぼ実施例1と同様の干渉縞低減効果を得た。
【0088】
[
参考例3]
粒子を高粘度MXDナイロンとして、その濃度を表1記載のように変更した以外は、実施例2と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。フィルム断面形状を観察したところ、所々に僅かな空隙が見られる。実施例1と比べると光散乱による白濁感が多少感じるが、光沢があり、干渉縞は、見られなかった。面内方向の粒径は、3〜10μm程度であった。
【0089】
[実施例4]
熱可塑性樹脂A−1をA−2に変更し、熱可塑性樹脂BをB−4へ変更し、290℃で溶融押出する以外は、実施例3と同様にして、未延伸フィルムを得た。次いで、縦延伸温度145℃で3.1倍、次いで、実施例1と同様にしてコーティングを行い、横延伸温度155℃、3.6倍延伸、熱処理温度240℃、150℃で約3%のTDリラックスを実施し、厚み90μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムは、波長400〜700nm範囲の反射率は約96%と一定であり、干渉縞がなく、光沢感が優れるフィルムであった。
【0090】
[実施例5〜6]
粒子をPSへ、その濃度を表1記載の通り変更し、縦延伸温度を100度に変更する以外は、実施例3と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。実施例1と同様に、光沢感があり、干渉縞がないフィルムを得た。さらに、フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は、空隙も見られず、層中の粒子箇所では、層の厚みが厚くなり、うねり構造が形成されていることを確認した。
【0091】
[
参考例7〜8]
熱可塑性樹脂Bおよび粒子を表1記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムは、いずれも正面からは無彩色で、干渉縞が消失したものであったが、実施例1と比べて、光沢感が少し劣るものであった。フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は空隙が部分的に見られた。また、層の厚み方向の粒子の二次粒径も大きく、分散性が悪かった。
[実施例9]
実施例1の熱可塑性樹脂BをB−6へ変更し、有機粒子をMBSへ変更し、表1の記載内容に変更し、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムの彩度C*は、2であり、無彩色であった。また、分光反射率曲線に、波長400〜700nm範囲の反射率は約72%と一定であり、光沢感があり、反射光および透過光でも干渉縞は、問題ないレベルであった。さらに、フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は、空隙も見られず、目的としてたA層とB層の界面におけるうねり構造が形成されていることを確認した。MBS有機粒子は、面内方向には、2〜15μmレベルの大きさを有する縦、横に伸ばされた扁平状の形状をしていた。
【0092】
[実施例10]
実施例9の有機粒子であるMBS粒子を表1の記載の低粘度MBS粒子に変更する以外は、実施例9と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムの彩度C*は、2であり、無彩色であった。また、分光反射率曲線に、波長400〜700nm範囲の反射率は約72%と一定であり、光沢感があり、干渉縞も問題ないレベルであった。さらに、フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は、空隙も見られず、目的としたA層とB層の界面におけるうねり構造が形成されていることを確認した。但し、実施例9に比べては、うねり構造の凹凸は弱いものであった。
【0093】
[実施例11]
粒子とその濃度を表1の記載に変更した以外は、実施例10と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムは、いずれも正面からは無彩色で、正反射性も良好であった。ただし、干渉縞が、僅かにみられた。断面形状を観察すると、うねり構造を形成しており、懸念していた空隙もなかった。
【0094】
[実施例12]
日本触媒製のPETフィルム用ハードコート剤KAYANOVA−FOP4100(溶剤 トルエン、MEK、紫外線硬化樹脂固形分率50%)の溶剤に、MEKで固形分率30%まで希釈して、以下に示す割合で色素を添加し、#20のバーコーターで均一に実施例11の積層フィルム上に塗布した。100℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥して溶剤を除去した後、低圧水銀ランプで照射強度500mJ/cm2でUV効果を行い、着色ハードコート層を形成した積層フィルムを得た。塗布厚みを測定すると10μmであった。その分光反射率曲線および干渉縞の観察を行った結果、振動波形の振幅ΔRは、5となり、L*(SCI)は70、L*(SCE)は20ままとなり、振幅ΔRが減少した。塗工前のもとと比べて、反射率の低下はみられるが、光沢感があり、干渉縞は全くなく、より金属メッキ感を醸し出すことができた。なお、彩度C*は、2.2の無彩色であった。
「着色層」
色素: TY235(ADEKA製) 0.09%
: TAP15(ADEKA製) 0.5%
: Yellow2G(日本化薬製) 0.2% 。
【0095】
[実施例13]
日本触媒製IR−G205(溶剤トルエン、酢酸エチル、アクリル固形分率29%)の溶剤に、固形分率に対して、以下に示す割合で色素を添加し、#30のバーコーターで均一に干渉縞が鮮明に見える比較例8の積層フィルム上に塗布した。80℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥して溶剤を除去した後、着色層を形成した積層フィルムを得た。乾燥後の塗布厚みを測定すると13μmであった。その分光反射率曲線および干渉縞の観察を行った結果、振動波形の振幅ΔRは9となり、L*(SCI)は70、L*(SCE)は12となり、振幅ΔRが減少した。着色層を形成する前の分光反射率曲線(
図5中23)と比べて、着色層を形成した後の分光反射率曲線(
図5中24)では、反射率の低下はみられるが、光沢感があり、干渉縞は殆どみられず、金属メッキ感を醸し出すことができた。なお、彩度C*は、3.2の無彩色であり、問題のない程度であった。
【0096】
また、
図5中に矢印で示した着色層の吸収スペクトルの吸収ピークを反映した波長520〜580nm、波長420〜480nm、波長580〜640nmのいずれの範囲にも、低反射率の極小ピーク領域が観測されることが分かる。
「着色層」
色素: TY235(ADEKA製) 0.09%
: TAP15(ADEKA製) 0.5%
: Yellow2G(日本化薬製) 0.2% 。
【0097】
[
参考例14]
熱可塑性樹脂A−1をA−3へ変更し、熱可塑性樹脂B−2をB−7へ変更し、それぞれの押出温度を260℃とし、粒子とその濃度を表1の記載に変更し、さらに熱処理温度を210℃に変更した以外は、実施例5と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムは、いずれも正面からは無彩色で、少し光散乱による白濁感が見られた。ただし、干渉縞は、全く見られなかった。断面形状を観察すると、空隙が所々で確認された。
【0098】
[実施例15]
熱可塑性樹脂A−1に粒子を添加し、粒子とその濃度を表1の記載に変更する以外は、実施例5と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムの彩度C*は、2.5であり、無彩色であった。また、分光反射率曲線に、波長400〜700nm範囲の反射率は約60%と一定であり、光沢感があり、干渉縞も問題ないレベルであった。さらに、フィルムの断面を観察したところ、粒子周辺は、空隙も見られず、目的としたA層とB層の界面におけるうねり構造が形成されていることを確認した。粒子は、縦、横に伸ばされた扁平状の形状をしていた。
【0099】
[実施例16]
実施例9と同様にして、未延伸フィルムを得た。次いで、縦延伸を105℃で2段階的に、到達倍率2.5倍で延伸し、実施例1と同様にしてコーティングを行い、横延伸温度110℃、4.5倍延伸、熱処理温度210℃、150℃で約3%のTDリラックスを実施し、厚み90μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムは、殆ど干渉縞がなく、偏光特性をもつ光沢感が優れたフィルムであった。フィルム幅方向中央部における面内方向の反射率の最大値は、フィルム幅方向であり、長手方向は、最小値であった。波長550nmにおいて、最大値と最小値の反射率の差は、35%であった。
【0100】
[実施例17]
熱可塑性樹脂Aとして、A−2を用い、熱可塑性樹脂Bとして、B−8を用いて、290℃で溶融押出し、実施例4と同様にして、未延伸フィルムを得た。次いで、縦延伸をパスし、実施例1と同様の易接着層をコーティングし、横延伸温度150℃、5倍延伸、熱処理温度140℃で約3%のTDリラックスを実施し、厚み90μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムは、干渉縞がなく、偏光特性をもつ光沢感が優れたフィルムであった。フィルム幅方向中央部における面内方向の反射率の最大値は、フィルム幅方向であり、長手方向は、最小値であった。波長550nmにおいて、最大値と最小値の反射率の差は、85%であった。フィルム長手方向は、90%近く透過しており、非常に偏光特性の強いフィルムが得られた。また、実施例4と比較し、透過光でも干渉縞が殆どみえなくなっていることを確認した。
【0101】
[比較例1]
実施例2において、粒子を用いないこと以外は、同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの彩度C*は、3.2であり、無彩色であった。また、分光反射率曲線に、振幅ΔRが非常に強い振動波形がみられ、光沢感が強く、かつ干渉縞が鮮明に見えるレベルであった。
【0102】
[比較例2〜7]
比較例2は、樹脂A−1に(樹脂C−3)を24重量%、比較例3〜4は、樹脂A−1に(樹脂C−1)を4重量%、8重量%と添加する量を変更したときの検討結果である。表1に記載以外の製膜条件は、比較例1と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。得られた積層フィルムは、いずれも正面からは無彩色であった。粒子マスターバッチである(樹脂C−1)の樹脂Aへの添加量を増加させるにつれて、拡散反射性が増加し、フィルム表面が白濁し、像の鮮明さが失われていき、結果、比較例4の(樹脂C−1)の8%添加では、干渉縞が消失した。しかしながら、一方、白濁感が強く正反射性が劣るため、本発明の課題を解決するレベルには至らなかった。
【0103】
断面形状を観察すると、粒子周辺の一部に空隙が散見されたが、粒子は、層を突き破るのではなく、凝集体の形状は、楕円体であり、厚み方向にも数μmもある粒径が保たれていた。
【0104】
比較例5〜7は、凝集シリカの平均二次粒径が大きい(樹脂C−2)マスターバッチに変更し、樹脂A−1への添加量を4重量%、5重量%、8重量%と増加させた検討であるが、いずれも、干渉縞は消失するものの、拡散反射が酷く、マット調の積層フィルムであり、本発明の課題を満足するものではなかった。
【0105】
[比較例8〜12]
熱可塑性樹脂Bおよび粒子を表1の記載に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。その結果を表1に示す。
【0106】
比較例8の積層フィルムは、反射率が74%程度、可視光領域に平均してあり、非常に光沢感のあるものであったが、干渉縞は、非常に強くでるものであった。
【0107】
比較例9の積層フィルムは、マット感があり、断面形状を観察すると、粒子周辺には大きな空隙が形成されていた。
【0108】
比較例10の積層フィルムでは、粒子と熱可塑性樹脂Bの相溶性がよく、断面形状を観察しても、粒子を確認することができず、積層界面にうねり構造に似たものも形成されていないことを確認した。
【0109】
比較例11〜12の積層フィルムは、断面形状を観察しても、粒子周辺に空隙がなく、サブμmレベルの分散特徴を有していたが、粒子とマトリックス樹脂の屈折率差が大きいため、比較例9の積層フィルムと同じく、正反射性のない白濁したマット調となった。
【0110】
【表1】